説明

保護部材及び可搬型機器

【課題】可搬型機器の外側面に接触することなく配置することにより、強度設計が容易で交換頻度を増すことなく可搬型機器に作用する衝撃を確実に緩和することができるとともに、保護部材にストラップとしての機能をも備えることができようにし、修理コスト及び製造コストの低廉化を実現する。
【解決手段】可搬型機器10の周囲を包囲する保護部2A〜2Fを腕部3〜8を介して可搬型機器10に接触させることなく配置した。可搬型機器10を落下させた際には床面等に保護部2A〜2Fが衝突し、保護部2A〜2Fに生じた衝撃が腕部3〜8で緩衝されて可搬型機器10に伝わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場内で使用される教示操作用ペンダント等の可搬型機器を、落下時等における衝撃から保護する保護部材、及びこの保護部材を備えた可搬型機器に関する。
【背景技術】
【0002】
工場内に設置された装置に動作条件等を設定入力する際に用いられる教示操作用ペンダント等の可搬型機器は、操作者が把持した状態で移動しながら使用される。このため、可搬型機器は、操作者が誤って落下させる可能性がある。可搬型機器に落下時の床面との衝突等による衝撃が直接作用すると、筐体や内部の電気回路が破損する。
【0003】
そこで、従来の可搬型機器には、保護部材が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。保護部材は、可搬型機器が床面等に落下した際に、床面等に衝突して変形又は破壊し、可搬型機器への衝撃を吸収することで、可搬型機器に作用する衝撃を緩和して可搬型機器の破損を防止する。
【0004】
また、可搬型機器の非操作時の運搬性を考慮して、可搬型機器にはストラップが装着される場合がある。ストラップは、保護部材とは別に可搬型機器に取り付けられる。
【特許文献1】特開平11−179688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保護部材は、可搬型機器の筐体に、接着又はネジ止めによって直接固定されていた。このため、落下時の床面との衝突等による衝撃を保護部材に充分に吸収させようとすると、保護部材の強度を低くしなければならず、保護部材が容易に変形又は破壊してしまい、保護部材の交換の頻度が高くなって修理コストが高騰する。一方、保護部材の交換頻度を低くして修理コストの低廉化を図ろうとすると、保護部材に高い強度を与える必要があり、可搬型機器を衝撃から保護することができない。この結果、保護部材の強度設計が煩雑になる問題がある。特に、教示操作用ペンダントでは、近年、耐衝撃性の試験における落下距離が延長されており、緩和すべき衝撃が増大する傾向にあり、強度設計がさらに煩雑になる。
【0006】
また、従来の可搬型機器には保護部材とは別にストラップが取り付けられていたため、部品点数の増加によって可搬型機器の製造コストが高騰する問題がある。
【0007】
この発明の目的は、可搬型機器の外側面に接触することなく配置することにより、強度設計が容易で交換頻度を増すことなく可搬型機器に作用する衝撃を確実に緩和することができ、修理コストの低廉化を実現できる保護部材及びこの保護部材を備えた可搬型機器を提供することにある。
【0008】
この発明の別の目的は、保護部材にストラップとしての機能をも備えることができようにして、製造コストの低廉化を実現できる保護部材及びこの保護部材を備えた可搬型機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、この発明の保護部材は、保護部と腕部とを備える。保護部は、可搬型機器の外側面に、接触することなく対向する。腕部は、保護部をその一部で可搬型機器の外側面に接続する。
【0010】
この構成では、保護部が、腕部を介して可搬型機器の外側面との間に間隙を設けて配置される。操作者が可搬型機器を落下させた際に、床面等との衝突で保護部に作用した衝撃は、腕部で緩衝されて可搬型機器に伝わる。腕部の材質及び断面形状を適当に選択することにより、保護部に床面等からの衝撃によって変形や破壊を生じない程度の強度を与えた場合にも、可搬型機器に大きな衝撃が作用することがない。
【0011】
この構成において、保護部の少なくとも一部で可搬型機器の外側面との間には、可搬型機器の前面から裏面側に貫通する空間を形成してもよい。操作者は、可搬型機器の外側面と保護部との間の空間に前面から裏面側に向かって手を挿入することで、可搬型機器を把持することができる。可搬型機器の外側面と保護部との間に操作者の片方の掌を挟持させることで、保護部材とは別体のストラップを装着することなく可搬型機器を容易に運搬できる。
【0012】
この場合に、腕部は、可搬型機器の把持部を除く範囲に保護部を接続するようにしてもよい。操作者は、腕部によって妨げられることなく空間に手を挿入することができる。
【0013】
また、保護部と腕部とを一体に形成してもよい。可搬型機器を衝撃から保護する保護部材が最小の部品点数で構成され、可搬型機器の組立作業を簡略化してコストの低廉化を図ることができる。
【0014】
さらに、保護部が、可搬型機器の連続する複数の外側面を一体的に包囲するようにしてもよい。可搬型機器の周囲を保護部で包囲することができ、落下時の種々の姿勢に対応して可搬型機器を衝撃から保護することができる。
【0015】
この発明の可搬型機器は、上記の何れかの保護部材が接続されている。保護部に床面等からの衝撃によって変形や破壊を生じない程度の強度を与えた場合にも、大きな衝撃が作用することがなく、保護部材の交換頻度を増加させることなく装置の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、腕部の材質及び断面形状を適当に選択することにより、保護部に床面等からの衝撃によって変形や破壊を生じない程度の強度を与えた場合にも、可搬型機器に大きな衝撃が作用することを防止することができる。保護部材の交換頻度を増加することなく、可搬型機器を衝撃から保護することができる。
【0017】
また、保護部の少なくとも一部で可搬型機器の外側面との間に可搬型機器の前面から裏面側に貫通する空間を形成することで、可搬型機器の外側面と保護部との間に操作者の片方の掌を挟持させることができ、保護部材とは別体のストラップを装着することなく可搬型機器を容易に運搬できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1(A)〜(D)は、この発明の実施形態に係る保護部材を備えた可搬型機器の正面図、左側面図、平面図及び底面図である。可搬型機器10は、一例として、工場内に設置されている装置に動作条件等を設定入力する際に用いられる教示操作用ペンダントである。可搬型機器10は、前面11に、キーシート部21、非常停止用押しボタンスイッチ22及びディスプレイ部23を露出して備えている。キーシート部21には複数のキーが配置されている。複数のキーのそれぞれは、操作者の手指による押圧によって設定条件等に関する数値等の設定入力を受け付ける。非常停止用押しボタンスイッチ22は、押圧操作された際に動作を停止させる信号を発生する。ディスプレイ部23は、動作条件等の設定内容等の情報を表示する。
【0019】
可搬型機器10は、操作時に左右の側面12,13が操作者の両手で把持される。操作者は、両手の親指を前面11に対向させ、他の指を可搬型機器10の背面14に対向させて可搬型機器10を把持し、キーシート部21を両手の親指で押圧操作する。
【0020】
可搬型機器10の底面16からは、ケーブル24が延出している。ケーブル24は、可搬型機器10の内部に収納されている電気部品に接続される信号線や電源線を内包している。
【0021】
可搬型機器10は、この発明の保護部材であるプロテクタ1を備えている。プロテクタ1は、可搬型機器10の左右の側面12,13、上面15、底面16の4面に、接触することなく対向する保護部2A〜2F、保護部2A〜2Fのそれぞれをその一部で可搬型機器10に接続する腕部3〜8を備え、一例として、樹脂を素材として、これらを一体的に形成している。
【0022】
保護部2A,2Bは、可搬型機器10の上面15に接触することなく対向している。保護部2C,2Dのそれぞれは、可搬型機器10の左側面12及び右側面13のそれぞれに接触することなく対向している。保護部2E,2Fは、可搬型機器10の底面16に接触することなく対向している。
【0023】
保護部2A〜2Fは、順に接続されており、可搬型機器10の側面12,13、上面15、底面16の連続する4面を一体的に包囲している。保護部2A,2Bは、上面15側で前面11の手前側に延出している。保護部2E,2Fは、底面16側で前面11の手前側に延出している。また、保護部2C,2Dは、側面12,13側で背面14の背後に延出している。
【0024】
腕部3,4は、それぞれ保護部2A,2Bの一部から延出している。腕部5,6は、それぞれ保護部2C,2Dの一部から延出している。腕部7,8は、それぞれ保護部2E,2Fの一部と共通である。
【0025】
図2は、上記可搬型機器の組立図である。腕部3と腕部4とは、取付部9Aで連結されている。腕部5と腕部6とは、取付部9Bで連結されている。腕部7及び腕部8には、それぞれ取付部9C,9D(取付部9Dは図2には現れない。)が形成されている。
【0026】
取付部9Aには、ネジ孔31A,31Bが形成されている。取付部9Bには、ネジ孔32A,32Bが形成されている。取付部9C,9Dには、それぞれネジ孔33A,33Bが形成されている。
【0027】
可搬型機器10の背面14、上面15、底面16には、それぞれ2箇所にネジ穴が形成されている。合計6本のネジをそれぞれネジ孔31A,31B,32A,32B,33A,33Bを介して可搬型機器10の背面14、上面15、底面16のネジ穴に螺合させことにより、プロテクタ1が可搬型機器10に固定される。
【0028】
プロテクタ1の保護部2A〜2Fは、それぞれの一部を腕部3〜8によって可搬型機器の前面11及び側面12,13を除く面に接続される。
【0029】
以上の構成により、可搬型機器10の周囲がプロテクタ1の保護部2A〜2Fによって包囲される。可搬型機器10を落下させた際には、保護部2A〜2Fが床面等に衝突し、可搬型機器10が直接床面に衝突することがない。床面等との衝突によって保護部2A〜2Fの何れかに作用した衝撃は、腕部3〜8の何れかで緩衝されて可搬型機器10に伝わる。このため、保護部2A〜2Fに床面等との衝突による衝撃で容易に変形や破壊を生じない程度の充分な強度を与えても、可搬型機器10に過大な衝撃が作用することがなく、修理コストの低廉化を実現しつつ、可搬型機器10の破損を防止できる。
【0030】
図3は、プロテクタが装着された可搬型機器の斜視図である。可搬型機器10の側面12,13のそれぞれとプロテクタ1の保護部2C,2Dのそれぞれとの間には、可搬型機器10の前面11から背面14に貫通する空間41が形成されている。空間41は、操作者の手が挿入できる程度の大きさにされている。腕部5,6(腕部5は図3に現れない。)は、空間41を避けて配置されている。
【0031】
可搬型機器10の操作時に、操作者は、左右の空間41に挿入した両手で側面12,13を把持することができる。また、可搬型機器10の運搬時に、操作者は、左右何れかの空間41に挿入した片手の掌を側面12又は13に圧接させ、甲を保護部2C又は2Dの内側面に圧接させることで保護部2C又は2Dをストラップ代わりに用いることができる。プロテクタ1とは別部品のストラップを、可搬型機器10に取り付ける必要がなく、部品点数を削減して製造コストの低廉化を図ることができる。
【0032】
なお、腕部3〜8は、保護部2A〜2Fと同一素材によって一体形成したが、これに限るものではなく、例えば、バネ材等の金属材料によって構成した腕部3〜8を、保護部2A〜2Fの樹脂成形時にインサート成形することもできる。また、腕部3〜8の断面形状や長さは、可搬型機器10の質量や保護部2A〜2Fの強度に応じて適宜設定することができる。
【0033】
上記の実施形態は一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)〜(D)は、この発明の実施形態に係る保護部材を備えた可搬型機器の正面図、左側面図、平面図及び底面図である。
【図2】上記可搬型機器の組立図である。
【図3】プロテクタが装着された可搬型機器の斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 プロテクタ(保護部材)
2A〜2F 保護部
3〜8 腕部
10 可搬型機器
11 前面(操作面)
12,13 側面
14 背面
15 上面
16 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型機器の外側面に、接触することなく対向する保護部と、
前記保護部をその一部で前記可搬型機器の外側面に接続する腕部と、
を備えた保護部材。
【請求項2】
前記保護部は、少なくとも一部で前記可搬型機器の外側面との間に、前記可搬型機器の前面から裏面側に貫通する空間を有する請求項1に記載の保護部材。
【請求項3】
前記腕部は、前記可搬型機器の把持部を除く範囲に前記保護部を接続する請求項2に記載の保護部材。
【請求項4】
前記保護部と前記腕部とを一体に形成した請求項1乃至3の何れかに記載の保護部材。
【請求項5】
前記保護部は、前記可搬型機器の連続する複数の外側面を一体的に包囲する請求項1乃至4の何れかに記載の保護部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の保護部材が接続された可搬型機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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