説明

充填剤を含有する非発泡の固体エラストマー成形品およびその製造方法

本発明は、充填剤を含有する非発泡の固体エラストマーポリウレタン成形品、その製造方法およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を含有する非発泡の固体エラストマーポリウレタン成形品、その製造方法およびその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
固体の透明ポリウレタン(PUR)エラストマーは、かなり以前から既知であり、適切な調節により広範な種類の用途に用いられてきた。本発明においては特に、ポリウレタンゲル(DE−A 10024097)が挙げられる。
【0003】
概して、ポリウレタンゲルは高い比重を有する透明物質である。これは特別な機械的特性、例えば良好な衝撃吸収性などを特徴とする。該粘弾性挙動は特に薄い層において示される。本発明においては、この例として、かかとのクッションパッドにおけるPURゲルの使用を挙げることができる。しかしながら、該層が非常に厚い場合には、物質のエネルギー吸収が非常に高いことが観測される。しかしながら、低い減衰挙動は、生理学的な理由のため、特に該用途においてより有益である(Dissertation Walther M.、Zusammenhaenge zwischen der subjektiven Beurteilung von Laufschuhen, den Materialdaten, sowei kinetischen und kinematischen Parametern des Gangzyklus、University of Wuerzburg、2001年)。
【0004】
これらの形状安定性ゲルの他の欠点にはその製造が包含される。この場合には長鎖ポリオールを低い指数でポリイソシアネートと反応させる。このため、いわゆる硬化不足の結果として、得られるプロセス時間は非常に長時間となる。さらに、成形品は粘着性表面を有するため、該ゲルは、非粘着性表面を得るためにさらなる処理工程において異なった型の被覆物で覆われる必要がある。
【0005】
固体PUR材料ならびにPURゲルの比重を低下させるため、特定の比較的軽い充填剤、例えばコルクグラニュール、装飾金属フレーク、ポリウレタングラニュールまたはポリウレタンフロックなど、紡織繊維、例えばサイザル麻、編織布片など、発泡物質、例えばEVAなど、または特定の比較的重い充填剤、例えば皮革ペレットなど、または発泡ゴム(TR)を用いることが多い。用いる充填剤に応じて、これらの成形品の密度は、低くなるか、あるいは高くなるが、好ましくは低いものである。PURゲルの場合には、充填剤の組み込みも成形品の魅力的な外観に起因して用いられる。さらに、充填剤は、機械的特性を向上させるために、材料コストの低減または他の方法で使用することができない原料の再循環を可能とすることに貢献するために、PUR材料に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10024097号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Walther M.、論文「Zusammenhaenge zwischen der subjektiven Beurteilung von Laufschuhen, den Materialdaten, sowei kinetischen und kinematischen Parametern des Gangzyklus」、ビュルツブルグ大学、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のPURゲルの欠点、例えば長い離型時間、粘着性表面および高い減衰挙動などを有さないが、同時に、光学的に興味深くおよび魅力的な外観と具体的に調節可能な弾性を有するエラストマーポリウレタン成形品を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本発明の目的は、ポリウレタンに基づく特別な成形品によって達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、
a)a1)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および官能価2を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール、および
a2)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および2より大きく6まで、好ましくは3〜6の官能価を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール
を含むポリオール成分、
b)600〜2000の範囲のヒドロキシル価を有する鎖延長剤および/または架橋剤、
c)触媒、
d)必要に応じて、添加剤
を含むポリオール調製物(A)をイソシアネート成分(B)と、
ポリウレタンエラストマーに対して10〜40重量%の1〜10nmの直径を有する充填剤の存在下に、
イソシアネート成分(B)中のNCO基と成分a)、b)およびc)中のイソシアネート基と反応可能な水素原子の合計との当量比を0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、特に0.98:1〜1.05:1に維持しながら反応させることによって得られる、無気泡の外観と非粘着性表面を有し、20〜60%の反発弾性(DIN 53512に従って測定)を有するポリウレタンエラストマーから作られた充填剤含有固体成形品を提供する。
【0011】
本発明はまた、
a)a1)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および官能価2を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール、および
a2)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および2より大きく6まで、好ましくは3〜6の官能価を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール
を含むポリオール成分、
b)600〜2000の範囲のヒドロキシル価を有する鎖延長剤および/または架橋剤、
c)触媒、
d)必要に応じて、添加剤
を含むポリオール調製物(A)をイソシアネート成分(B)、および
ポリウレタンエラストマーに対して10〜40重量%の1〜10nmの直径を有する充填剤と、
イソシアネート成分(B)中のNCO基と成分a)、b)およびc)中のイソシアネート基と反応可能な水素原子の合計との当量比を0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、特に0.98:1〜1.05:1に維持しながら混合し、および該混合物を金型内に設置し、多くとも5分間硬化させることを特徴とする、無気泡の外観と非粘着性表面を有し、20〜60%の反発弾性(DIN 53512に従って測定)を有するポリウレタンエラストマーの充填剤含有固体成形品の製造方法を提供する。
【0012】
PUR化学から既知のジイソシアネート、好ましくは芳香族ジイソシアネートをイソシアネート成分として用い得る。4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または変性4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(例えばカルボジイミド化またはアロファネート化によるもの)および10〜112のOH価を有する1以上のポリエーテルポリオールおよび135g/mol〜700g/molの分子量を有するポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールから作られたプレポリマーを特に好適に用いる。
【0013】
成分a1)、a2)、b)、c)およびd)はよく知られている。これらはポリウレタン化学に用いられる化合物である。
【0014】
成形品が充填剤を用いずに製造された場合、ポリウレタンは1050〜1200kg/mの密度を有する。
【0015】
コルクグラニュール、皮革ペレット、装飾金属フレーク、ポリウレタングラニュール、ポリウレタンフロック、紡織繊維、例えばサイザル麻、編織布片など、発泡材料、例えばEVAなど、発泡ゴム(TR)およびガラス繊維を充填剤として用い得る。
【0016】
充填剤含有固体エラストマーポリウレタン成形品は、例えば工業用物品および消費者用物品、特に靴底および靴の中敷きに用いられる。
【0017】
本発明を、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
成形品を製造するために、2つの成分A(ポリオール成分)および成分B(イソシアネート成分)をスクリュー(Kloeckner Desma、アチム)を用いて一緒にブレンドする。充填剤を該反応混合物中に計量する。ポリオール、充填剤およびイソシアネートを含む反応混合物を開放金型に設置し、硬化する。
【0019】
30℃の物質温度を有する成分Aを、30℃の物質温度を有するNCOプレポリマーBとブレンドした。充填剤を該反応混合物に添加した。該混合物を、アルミニウム製のヒンジ付き金型(寸法200×70×10mm)中に設置し、50℃に予備加熱し、該ヒンジ付き金型を密閉した。成形品を数分後に離型した。
【0020】
このようにして製造された成形品のショアA硬度は、24時間貯蔵した後、DIN53505に従って決定した。また、反発弾性はDIN53512に従って決定した。さらに、DIN53579、第IV番に従って押し込み試験を成形品上で実施した。
【0021】
実験結果を以下、表1にまとめる。
【0022】
出発物質:
ポリエーテルポリオール:
1)トリプロピレングリコールおよびOH価163を有するプロピレンオキシドに基づくポリエーテルポリオールの混合物。
2)スターターとしてプロピレングリコールを用いる、OH価28を有し、およびプロピレンオキシド70%およびエチレンオキシド30%単位および第一級OH基90%を有するポリエーテルポリオール。
3)スターターとしてグリセリンを用いる、OH価56を有し、およびプロピレンオキシド86%およびエチレンオキシド14%単位および第一級OH基約45%を有するポリエーテルポリオール。
4)スターターとしてソルビトールを用いる、OH価28を有し、およびプロピレンオキシド82%およびエチレンオキシド18%単位および第一級OH基85%を有するポリエーテルポリオール。
5)スターターとしてグリセリンを用いる、OH価27を有し、およびプロピレンオキシド78%およびエチレンオキシド22%単位および第一級OH基90%を有するポリエーテルポリオール。
6)スターターとしてトリメチロールプロパンを用いる、OH価56を有し、およびプロピレンオキシド40%およびエチレンオキシド60%単位および90%を越える第一級OH基を有するポリエーテルポリオール。
イソシアネート成分:
1)66重量部の4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(4,4’−MDI)、NCO含量30%を有する5重量部の変性4,4’−MDI(部分カルボジイミド化によって調製)および29重量部のポリエーテルポリオール1)を反応させることによって製造された、NCO含量19.8%を有するプレポリマー。
2)NCO含量31.5%を有するポリマー含有プレポリマー(Desmodur 44V10L、Bayer MaterialScience AG製の市販製品)。
【0023】
実施例1(本発明による)
ポリオール成分は、
3712.50重量部の二官能性ポリエーテルポリオール2)、
1125.00重量部のポリエーテルポリオール3)、
75.00重量部のエチレングリコール中Dabco、
25.00重量部のジエチレングリコール、
50.00重量部のトリエタノールアミン、
12.50重量部のジメチル−ビス−[(1−オキソ−ネオデシル)オキシ]スタンナン
からなるものであった。
該ポリオール成分100重量部を、24重量部のプレポリマー1および粒度1mmを有する14重量部のコルクグラニュールとブレンドした(指数98)。
【0024】
実施例2(本発明による)
ポリオール成分は、
3712.50重量部の二官能性ポリエーテルポリオール2)、
1125.00重量部のポリエーテルポリオール4)、
75.00重量部のエチレングリコール中Dabco、
25.00重量部のジエチレングリコール、
50.00重量部のトリエタノールアミン、
12.50重量部のジメチル−ビス−[(1−オキソ−ネオデシル)オキシ]スタンナン
からなるものであった。
該ポリオール成分100重量部を、25重量部のプレポリマー1および粒度1mmを有する14重量部のコルクグラニュールとブレンドした(指数98)。
【0025】
実施例3(比較)
ポリオール成分は、
4038.00重量部の二官能性ポリエーテルポリオール2)、
500.00重量部のポリエーテルポリオール5)、
350.00重量部の1,4−ブタンジオール、
25.00重量部のエチレングリコール、
2.50重量部のDabco、
40.00重量部の2−エチルヘキサン酸でブロックされたDabco、
30.00重量部のトリエタノールアミン、
1.50重量部のジブチル錫ジラウレート、
3.00重量部のジブチル錫スルフィド、
10重量部の水
からなるものであった。
該ポリオール成分100重量部を、48重量部のプレポリマー1および粒度1mmを有する5重量部のコルクグラニュールとブレンドした(指数98)。
【0026】
実施例4(比較)
ポリオール成分は、
1000重量部の三官能性ポリエーテルポリオール6)、
10重量部のジプロピレングリコール中Dabco
からなるものであった。
該ポリオール成分100重量部を、5重量部のプレポリマー2および粒度1mmを有する15重量部のコルクグラニュールとブレンドした(指数60)。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から分かるように、本発明による実施例1および2は、
1)より良好な離型特性(より短い離型時間)、
2)乾燥した非粘着性表面を有する無気泡の外観、
3)はるかに小さい変形ひいては低エネルギー吸収、
4)ほぼ同一の硬度値に対して、反発レジリエンスのための具体的に調節可能な値
を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)a1)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および官能価2を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール、および
a2)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および2より大きく6まで、好ましくは3〜6の官能価を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール
を含むポリオール成分、
b)600〜2000の範囲のヒドロキシル価を有する鎖延長剤および/または架橋剤、
c)触媒、
d)必要に応じて、添加剤
を含むポリオール調製物(A)をイソシアネート成分(B)と、
ポリウレタンエラストマーに対して10〜40重量%の1〜10nmの直径を有する充填剤の存在下に、
イソシアネート成分(B)中のNCO基と成分a)、b)およびc)中のイソシアネート基と反応可能な水素原子の合計との当量比を0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、特に0.98:1〜1.05:1に維持しながら反応させることによって得られる、無気泡の外観と非粘着性表面を有し、20〜60%の反発弾性(DIN 53512に従って測定)を有するポリウレタンエラストマーから作られた充填剤含有固体成形品。
【請求項2】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または変性4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(例えばカルボジイミド化またはアロファネート化によるもの)および10〜112のOH価を有する1以上のポリエーテルポリオールおよび135g/mol〜700g/molの分子量を有するポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールから作られたプレポリマーをイソシアネート成分(B)として用いる、請求項1に記載のエラストマー成形品。
【請求項3】
a)a1)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および官能価2を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール、および
a2)45%以上の第一級OH基を有し、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドでアルコキシル化することによって得られる、20〜112のOH価および2より大きく6まで、好ましくは3〜6の官能価を有する少なくとも1つのポリエーテルポリオール
を含むポリオール成分、
b)600〜2000の範囲のヒドロキシル価を有する鎖延長剤および/または架橋剤、
c)触媒、
d)必要に応じて、添加剤
を含むポリオール調製物(A)をイソシアネート成分(B)、および
ポリウレタンエラストマーに対して10〜40重量%の1〜10nmの直径を有する充填剤と、
イソシアネート成分(B)中のNCO基と成分a)、b)およびc)中のイソシアネート基と反応可能な水素原子の合計との当量比を0.8:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.15:1、特に0.98:1〜1.05:1に維持しながら混合し、および該混合物を金型内に設置し、多くとも5分間硬化させることを特徴とする、請求項1または2に記載の無気泡の外観および非粘着性表面を有し、20〜60%の反発弾性(DIN 53512に従って測定)を有するポリウレタンエラストマーの充填剤含有固体成形品の製造方法。
【請求項4】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または変性4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(例えばカルボジイミド化またはアロファネート化によるもの)および10〜112のOH価を有する1以上のポリエーテルポリオールおよび135〜700g/molの分子量を有するポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを含むプレポリマーをイソシアネート成分(B)として用いることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工業用物品および消費者用物品、特に靴底および靴の中敷きのための、請求項1または2に記載の充填剤含有固体エラストマーポリウレタン成形品の使用。

【公表番号】特表2010−501684(P2010−501684A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525955(P2009−525955)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007375
【国際公開番号】WO2008/025469
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】