説明

充填剤入りポリイミドおよびそれに関係する方法

本開示は概して、フィルム、繊維およびその他の物品の形に形成可能である充填剤入りポリイミドに関する。充填剤入りポリイミドはカバーレイの利用分野において有用であり、有利な誘電特性、機械特性および光学的特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、フィルム、繊維および他の物品において使用可能である充填剤入りポリイミドに関する。本開示の充填剤入りポリイミドは、有利な誘電特性および光学特性のため、カバーレイフィルムなどのエレクトロニクスの利用分野において有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業において、カバーレイは例えばフレキシブルプリント回路基板、電子部品または集積回路パッケージ用のリードフレーム向けの保護用カバーフィルムとして一般に使用されている。カバーレイは、擦り傷、酸化および汚染による損傷を防止することができる。しかしながら、このようなカバーレイは、例えばカバーレイにより保護された電子部品の美観あるいは望まれない目視検査や不正加工に対する安全性などにとって、不十分な電気特性(例えば絶縁耐力)、不十分な機械的強度または不十分な光学特性に起因して、問題を含むものであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改善された機械特性、電気特性および/または光学特性を有するカバーレイに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、i.非晶質炭素ドメインを含むポリイミド(以下「充填剤入りポリイミド」と呼ぶ)を作り出すためのポリイミド前駆体中のポリアクリロニトリルの配合物と;ii.充填剤入りポリイミドを製造するための方法と、iii.このような充填剤入りポリイミドから製造された物品、に向けられている。
【0005】
本発明の1つの態様は、ポリアクリロニトリルとポリイミド前駆体の配合物を含む組成物において、
ポリイミド前駆体が、
i)ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、
ii)ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンと、
から誘導されており;
ポリイミド前駆体が配合物中で連続相を形成しており;
ポリアクリロニトリルが配合物中の不連続相内でドメインを形成しており;
ポリアクリロニトリル対ポリイミド前駆体の重量比が約1:2〜1:50であり;
ポリアクリロニトリルのドメインサイズが、少なくとも1つの次元において(任意選択的に2つの次元において、そして同じく任意選択的に3つの次元全てにおいて)2μm以下である;
組成物である。
【0006】
本発明の別の態様は、
a)連続ポリイミド相[なお、ポリイミドは、ポリイミドの合計二無水物含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、ポリイミドの合計ジアミン含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンと、から誘導されている]と;
b)実質的に非晶質炭素のドメインを含む分散炭素相と;
を含む充填剤入りポリイミドポリマーにおいて、炭素ドメインの平均サイズが、2μm以下であり;かつ
分散炭素相対ポリイミド相の重量比が約1:2〜1:50である、充填剤入りポリイミドポリマーである。
【0007】
本発明の別の態様は、
a)ポリアクリロニトリル(PAN)と第1の溶媒とを含む第1の溶液を、第2の溶媒とポリイミド前駆体とを含む第2の溶液中に分散させて、ポリイミド前駆体が連続相を形成しPANがPANドメインからなる不連続相を形成するPAN/ポリイミド前駆体配合物を形成するステップであって、
ポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンとから誘導されており;
PAN対ポリイミド前駆体の重量比は約1:2〜1:50であり;
PANドメインの平均サイズは、少なくとも1つの次元において(任意選択的に2つの次元において、そして同じく任意選択的に3つの次元全てにおいて)2μm以下であるステップと;
b)PAN/ポリイミド前駆体配合物を300〜500℃に加熱して、PANドメインを実質的に非晶質炭素のドメインに転換させ、ポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるステップと;
によって得られた充填剤入りポリイミドポリマーである。
【0008】
本発明の別の態様は、
a)ポリアクリロニトリル(PAN)と第1の溶媒とを含む第1の溶液を、第2の溶媒とポリイミド前駆体とを含む第2の溶液中に分散させて、ポリイミド前駆体が連続相を形成しPANがPANドメインからなる不連続相を形成するPAN/ポリイミド前駆体配合物を形成するステップであって、
− ポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンとから誘導されており;
− PAN対ポリイミド前駆体の重量比は約1:2〜1:50であり;
− PANドメインの平均サイズは、少なくとも1つの次元において(任意選択的に2つの次元において、そして同じく任意選択的に3つの次元全てにおいて)2μm以下であるステップと;
b)PAN/ポリイミド前駆体配合物からフィルムを形成するステップと;
c)PAN/ポリイミド前駆体配合物フィルムを300〜500℃に加熱して、PANドメインを実質的に非晶質炭素のドメインに転換させ、ポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるステップと;
によって得られた充填剤入りポリイミドフィルムである。
【0009】
本発明の別の態様は、充填剤入りポリイミドフィルムと、このフィルムの少なくとも一方の面にコーティングされた接着剤とを含むカバーレイである。
【0010】
本発明の別の態様は、
a)ポリアクリロニトリル(PAN)と第1の溶媒とを含む第1の溶液を、第2の溶媒とポリイミド前駆体とを含む第2の溶液中に分散させて、ポリイミド前駆体が連続相を形成しPANがPANドメインからなる不連続相を形成するPAN/ポリイミド前駆体配合物を形成するステップであって、
ポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンとから誘導されており;PAN対ポリイミド前駆体の重量比は約1:2〜1:50であり;PANドメインの平均サイズは、少なくとも1つの次元において(任意選択的に2つの次元において、そして同じく任意選択的に3つの次元全てにおいて)2μm以下であるステップと;
b)PAN/ポリイミド前駆体配合物から繊維を形成するステップと;
c)PAN/ポリイミド前駆体配合物繊維を300〜500℃に加熱して、PANドメインを実質的に非晶質炭素のドメインに転換させ、ポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるステップと;
によって得られた充填剤入りポリイミド繊維である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例2の条件にしたがってPANとPMDA/ODAの配合物から、そして実施例3の条件にしたがってPANおよびPPD/BPDAの配合物から調製されたフィルムの可視光学密度範囲内の光学密度のグラフである。
【図2】試料A3のSEM断面である。
【図3】試料C3のSEM断面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の論述は、本発明の好ましい実施形態のみを対象としており、以下の開示内には本発明の全体的範囲を限定するように意図されたものは何もない。本発明の範囲は、本明細書の最後に提示されているクレームによってのみ定義されなくてはならない。
【0013】
定義
本明細書中で使用される「含む(comprises、comprising、includes、including)」「有する(has、having)またはその任意の他の変形形態は、非排他的包含を網羅するように意図されている。例えば、要素リストを含む方法、プロセス、物品または装置は、必ずしもそれらの要素に限定されず、明示的にリストアップされていない、または、このような方法、プロセス、物品または装置に固有の他の要素を包含してよい。さらに、別段の明示的記述のないかぎり「または」とは、排他的「または」ではなく包含的「または」を意味する。例えば条件AまたはBは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)、Bが真である(または存在する)、およびAとBの両方が真である(または存在する)状態のいずれか1つにより満たされる。
【0014】
同様に、「a」または「an」の使用は、本発明の要素または構成要素を記述するために用いられる。これは単に便宜的に、かつ本発明の一般的意味を示すために行われているに過ぎない。この記述は、1つまたは少なくとも1つを包含するものとみなされなくてはならず、単数は、他の意図が明らかである場合を除き、複数をも含んでいる。
【0015】
本明細書中で使用される「二無水物」は、技術的には二無水物ではないかもしれないが、それでもジアミンと反応して、それ自体ポリイミドに転換され得るポリアミド酸を形成すると考えられる二無水物、その前駆体または誘導体を包含するように意図されている。
【0016】
本明細書中で使用される「ジアミン」は、技術的にはジアミンではないかもしれないが、それでも二無水物と反応して、それ自体ポリイミドに転換され得るポリアミド酸を形成すると考えられるジアミン類、その前駆体または誘導体を包含するように意図されている。
【0017】
「前駆体」および「ポリアミド酸」は互換的に使用されてよく、本明細書中で使用されている通り化学量論的過剰のジアミンを用いて調製可能であり、およそ40〜100ポアズの溶液粘度を提供する比較的低分子量のポリアミド溶液を意味するように意図されている。
【0018】
量、濃度または他の値またはパラメータが好適な上限値と好適な下限値の範囲、好適な範囲またはリストのいずれかとして提供されている場合、これは、範囲が別個に開示されているか否かとは無関係に、いずれかの範囲上限または好適上限値といずれかの範囲下限または好適下限値の任意の対で形成される全ての範囲を特定的に開示するものと理解されなくてはならない。本明細書中に数値範囲が列挙されている場合には、別段の記載のないかぎり、その範囲はその端点ならびにこの範囲内の全ての整数および分数を包含するように意図されている。1つの範囲を定義する場合に列挙された具体的値に本発明の範囲を限定することは、意図されていない。
【0019】
一部のポリマーについて記述する際には、出願人らが時として、これらのポリマーを製造するのに使用されるモノマーまたはそれらの製造に使用されるモノマーの量によってそのポリマーに言及しているということを理解すべきである。このような記述は、最終的ポリマーを記述するのに用いられる特定の命名法を含んでいない、あるいは製法限定(product−by−process)専門用語を含んでいない場合があるものの、モノマーおよび量に対するこのような言及は、文脈が別段の指示または暗示を与えているのでないかぎり、そのポリマーがこれらのモノマーから製造されることを意味するものと解釈されるべきである。
【0020】
ポリアミド酸溶液
ポリアミド酸溶液は、適切な溶媒中でポリイミド前駆体を形成する二無水物成分とジアミン成分から形成される。したがって、ポリアミド酸溶液はポリイミド前駆体と溶媒を含む。一部の実施形態では、ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンである。一部の実施形態では、芳香族二無水物は、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);
4,4’−オキシジフタル酸無水物、
3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
ビスフェノールA二無水物、および
それらの混合物からなる群から選択されている。
【0021】
一部の実施形態において、芳香族ジアミンは、
3,4’−オキシジアニリン(3,4’−ODA)、
1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(RODA)、
4,4’−オキシジアニリン(4,4’−ODA)、
1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、
1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジデン、
4,4’−ジアミノビフェニル、
4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
9,9’−ビス(4−アミノ)フッ素、および
それらの混合物からなる群から選択されている。
【0022】
別の実施形態において、ジアミンは、1,4−ジアミノベンゼンであり、二無水物は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。別の実施形態において、ジアミンは、4,4’−オキシジアニリンであり、二無水物は、ピロメリット酸二無水物である。さらに別の実施形態において、ジアミンは、1,4−ジアミノベンゼンおよび1,3−ジアミノベンゼンの混合物であり、二無水物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0023】
一部の実施形態において、ポリイミド前駆体は、10〜90モル%のビフェニルテトラカルボン酸二無水物と;90〜10モル%のピロメリット酸二無水物と;10〜90モル%の1,4−ジアミノベンゼンと;90〜10モル%の4,4’−オキシジアニリンと;から誘導されている。
【0024】
一部の実施形態において、ジアミン成分は、1,4−ジアミノベンゼンおよび4,4’−オキシジアニリンから選択される。二無水物成分はピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選択される。
【0025】
別の実施形態においては、ジアミンは1,4−ジアミノベンゼンPPDおよび4,4’−オキシジアニリンODAの混合物であり、二無水物はピロメリット酸二無水物PMDAおよび3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物BPDAの混合物である。一実施形態において、ポリイミドは10〜90モル%または30〜50モル%のビフェニルテトラカルボン酸二無水物;90〜10モル%または70〜50モル%のピロメリット酸二無水物;10〜90モル%または60〜80モル%の1,4−ジアミノベンゼンおよび90〜10モル%または40〜20モル%の4,4’−オキシジアニリンから誘導される。
【0026】
溶媒
ポリアミド酸溶液を形成するための適切な溶媒は、重合用反応物質とポリアミド酸重合生成物の一方または両方を溶解できなくてはならない。溶媒は、全ての重合用反応物質およびポリアミド酸重合生成物と実質的に非反応性であるべきである。適切な溶媒としては、スルホキシド溶媒(例えばジメチルスルホキシドおよびジエチルスルホキシド)、ホルムアミド溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジエチルホルムアミド)、アセトアミド溶媒(例えばN,N−ジメチルアセトアミドおよびN,N−ジエチルアセトアミド)、ピロリドン溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドンおよびN−ビニル−2−ピロリドン)、フェノール溶媒(例えばフェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール類、およびカテコール)、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホンおよびガンマ−ブチロラクトンが含まれる。これらの溶媒は、キシレンおよびトルエンなどの芳香族炭化水素、またはジグリム、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール、酢酸メチルエーテルおよびテトラヒドロフランなどのエーテル含有溶媒と組合せて使用することもできる。
【0027】
ポリアミド酸溶液−形成
ポリアミド酸溶液は一般に、無水溶媒(dry solvent)中にジアミンを溶解させ、不活性雰囲気中で制御された温度および撹拌条件下で二無水物をゆっくりと添加することによって作製される。一実施形態では、ジアミンは、溶媒中5〜15重量パーセントの溶液として存在し、ジアミンおよび二無水物は通常、およそ等モル量で使用される。
【0028】
例えば(a)ジアミン成分と二無水物成分を予め混合し、次に撹拌しながら溶媒に分量の形で混合物を添加する方法、(b)ジアミンおよび二無水物成分の撹拌混合物に対して溶媒を添加する方法、(c)溶媒に専らジアミンのみを溶解させ次に二無水物を添加する方法、(d)溶媒中に専ら二無水物成分のみを溶解させ次にアミン成分を添加する方法、(e)ジアミン成分と二無水物成分を溶媒中に別個に溶解させ、次にこれらの溶液を反応装置中で混合する方法、(f)過剰のアミン成分を伴うポリアミド酸と過剰の二無水物成分を伴う別のポリアミド酸とを予め形成し、その後反応装置内で、特に非ランダムまたはブロックコポリマーを作り出すような形で互いに反応させる方法、および(g)特定の一分量のアミン成分と二無水物成分を最初に反応させ、次に残留ジアミン成分を反応させるか、またはその逆を行なう方法、(h)溶媒の一部分または全量のいずれかに対して任意の順序で複数の成分を部分的にまたは全体的に添加する方法であって、同じく任意の成分の一部または全てを溶媒の一部または全ての中に溶液として添加することも可能である方法、そして(i)二無水物成分の1つをジアミン成分の1つとまず反応させて、第1のポリアミド酸を得、次にもう1つの二無水物成分ともう1つのアミン成分を反応させて第2のポリアミド酸を得、その後フィルムまたは繊維の形成に先立ち、数多くの方法のうちのいずれか1つでポリアミド酸を組合わせる方法、などの数多くの形成実施形態が可能である。
【0029】
二無水物およびジアミン成分は、典型的に、0.90〜1.10の芳香族二無水物対芳香族ジアミンモル比で組合わされる。分子量は、二無水物とジアミン成分のモル比を調整することによって調整可能である。
【0030】
一実施形態において、ポリアミド酸溶液は約5、10または12%〜約12、15、20、25、27、30重量%の濃度で有機溶媒中に溶解される。
【0031】
充填剤入りポリイミドをフィルムとして使用する予定である場合には、ポリアミド酸溶液を、(i)1種以上の脱水剤、例えば脂肪酸無水物(例えば無水酢酸)および芳香族酸無水物;および(ii)1種以上の触媒、例えば脂肪族第3アミン(例えばトリエチルアミン)、芳香族第3アミン(例えばジメチルアニリン)および複素環第3アミン(例えばピリジン、ピコリンおよびイソキノリン)を含めた転換化学物質と組合せてもよい。無水物脱水材料は多くの場合、コポリアミド酸中において過剰モル量のアミド酸で使用される。使用される無水酢酸の量は典型的に、コポリアミド酸1当量あたり約2.0〜3.0モルである。一般に、匹敵する量の第3アミン触媒が使用される。
【0032】
ポリアクリロニトリル
本発明において使用するためには、ポリアクリロニトリル(PAN)ポリマーを、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)またはN−メチルピロリドン(NMP)などの溶媒中に溶解させなくてはならない。PAN溶液は、選択された溶媒中でPANを加熱することによって形成可能である。ポリイミド前駆体中でPANの分散を形成するためには、5〜25wt%のPAN溶液が有用である。
【0033】
一部の実施形態において、ポリアクリロニトリルはホモポリマーである。別の実施形態において、ポリアクリロニトリルは、最高10モルパーセントのアクリル酸メチル、酢酸ビニル、メタクリル酸、イタコン酸またはそれらの混合物を伴うコポリマーである。ポリアクリロニトリルは例えばSigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis、MO、USA)から市販されている。
【0034】
配合物の形成
本発明の一態様は、ポリアクリロニトリルがポリイミド前駆体の連続相中で不連続な分散相を形成している、ポリアクリロニトリルとポリイミド前駆体の配合物にある。これらの相はポリマーおよび/または前駆体に加えて溶媒を含んでいてよい。
【0035】
配合物は、PAN溶液とポリイミド前駆体溶液を混合することによって形成される。最良の結果を得るために、例えばプラネタリー遠心ミキサーと共に高せん断混合ステップが用いられる。配合物は、PANとポリイミドを1:2〜1:50または1:5〜1:50または1:10〜1:50の重量比で含む。
【0036】
典型的には、PAN相の平均ドメインサイズは、SEMにより規定されている通り、0.1〜2μm、好ましくは0.25〜0.75μmである。
【0037】
ポリマー配合物フィルムの形成
配合物を、ガラス、金属またはポリマー基板またはエンドレスベルトまたは回転ドラムなどの支持体上に流延または塗布してフィルムを得ることができる。次に、空気中または窒素中で80〜200℃で加熱することによって溶媒含有フィルムを自立型フィルムへと転換させることができる。一部の実施形態において、フィルムは次に支持体から分離され、窒素中で300〜500℃で連続して加熱(硬化)しながら幅出しなどにより配向させられ、ポリイミド前駆体がポリイミドに転換されPANが実質的に非晶質炭素へと転換されている充填剤入りポリイミドフィルムを提供する。一部の実施形態では、400℃という硬化温度が使用される。他の実施形態では、フィルムは硬化プロセス全体を通して支持体上にとどまっている。
【0038】
硬化の後、充填剤入りポリイミドフィルムは有色度が高くなり、その色は褐色から黒色の範囲内にある。より高いPAN対ポリイミド前駆体比を使用することおよび/または硬化ステップ中の加熱をより強く(すなわちより高温でかつ/またはより長時間)することにより、さらに強い色調が達成される。したがって色の強さは、温度、硬化時間またはその両方を調整することによって微調整可能である。
【0039】
典型的に、硬化したフィルムには光沢があるが、流延の前にプロセスのいずれかの段階でつや消し剤を添加することによりつや消し仕上げを得ることが可能である。典型的なつや消し剤としては、非晶質シリカ、例えば沈降シリカ、例えば沈降シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻質シリカおよびシリカゲルが含まれる。他のつや消し剤としては、有機ポリマー粒子(例えばポリイミド粉末)、無機粒子、ステアリン酸金属塩およびナノ粒子が含まれる。
【0040】
一部の実施形態において、(例えばフレックス回路内の導体トレースを見えないように隠すために)望ましい光学密度(不透明度)は、2以上である。2という光学密度は、1×10-2または1%の光がフィルムを通して透過されることを意味するように意図されている。
【0041】
配合物には乾燥および転換ステップ中に除去しなければならない溶媒が含まれていることから、流延フィルムは一般に、望まれない収縮を回避するため、乾燥中拘束されていなければならない。連続生産においては、例えば拘束用のテンタークリップまたはピンを用いてテンターフレーム内で、フィルムの縁部を保持することができる。あるいは、フィルムをその初期寸法から200パーセント程度延伸させることもできる。フィルム製造においては、長手方向または横方向またはその両方で延伸を行なうことができる。所望される場合、一定程度の限定的な収縮を可能にするために、拘束を提供することもできる。
【0042】
フィルムを乾燥させイミド化を誘発して同一ステップ内でポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるために、短時間、高温を使用することができる。一般に、薄いフィルムについては、より厚いフィルムの場合に比べて所要の熱および時間が少ない。
【0043】
フィルムの厚みは、フィルムの意図された用途または最終的な利用分野の仕様に応じて調整されてよい。一般に、フィルムの厚みは、2、3、5、7、8、10、12、15、20または25μmから約25、30、35、40、45、50、60、80、100、125、150、175、200、300、400または500μmの範囲であることが好ましい。好ましくは、厚みは約8〜約125μmである。
【0044】
孤立した炭素ドメインの均一分散は電気伝導率を低減させるだけでなく、均一な色強度を生み出す傾向をさらに有している。一部の実施形態において、PAN誘導炭素の平均粒径は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5および2.0μmというサイズのうちのいずれか2つの間(およびこの2つを含んでいてよい)にある。フィルムの厚みは、具体的用途に適合させることができる。
【0045】
ポリマー配合物繊維の形成
充填剤入りポリイミド繊維もポリアクリロニトリルおよびポリイミド前駆体の配合物から製造することができる。繊維を配合物から紡糸し、その後加熱してポリイミド前駆体を連続ポリイミド相に、そしてポリアクリロニトリルを不連続炭素相に転換させることができる。紡糸直後に繊維上で高温イミド化/炭化ステップを実施することができる。あるいは、繊維から作った糸、布地または物品を適切な温度まで加熱することができる。
【0046】
カバーレイ
本明細書中で記述されている充填剤入りポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント回路基板、電子部品または集積回路パッケージのリードフレーム用のカバーレイフィルムとして使用可能である。
【0047】
接着剤
一実施形態において、カバーレイフィルムは、ひとたび適用された時点でその配置を維持するための接着剤層を充填剤入りポリイミドフィルムと共に含んでいる。接着剤層を形成するのに有用な接着剤の例としては、熱可塑性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂およびそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態において、接着剤は、ポリイミド分解温度よりも低い温度で流動しボンディングすることのできるポリイミド樹脂である。一実施形態において、接着剤は、任意にはさらに熱硬化性接着剤例えばエポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂を含んでいる、ポリイミド熱可塑性樹脂である。熱可塑性成分と熱硬化性成分を両方共有する接着剤の場合、接着剤層中の熱硬化性樹脂の含有量は一般に、熱硬化性樹脂以外の樹脂成分100重量部分あたり5〜400重量部分、好ましくは50〜200重量部分の範囲内にある。
【0048】
一実施形態において、接着剤はエポキシ樹脂および硬化剤で構成され、任意選択的にさらに追加の成分、例えばエラストマー強化剤、硬化促進剤、充填剤および難燃剤を含む。
【0049】
一部の実施形態において、接着剤は、ビスフェノールAエポキシ樹脂;ビスフェノールFエポキシ樹脂;ビスフェノールSエポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;ビフェニルエポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂;アラルキルエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂;、多官能エポキシ樹脂;ナフタレンエポキシ樹脂;リン含有エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されたエポキシ樹脂である。
【0050】
一部の実施形態において、エポキシ接着剤は硬化剤を含んでいる。適切な硬化剤としては、ノボラックフェノール樹脂;アラルキルフェノール樹脂;ビフェニルアラルキルフェノール樹脂;多官能フェノール樹脂;窒素含有フェノール樹脂;ジシクロペンタジエンフェノール樹脂;およびリン含有フェノール樹脂からなる群から選択されたフェノール化合物が含まれる。
【0051】
別の実施形態において、硬化剤は、ジアミノビフェニル化合物、例えば4,4’−ジアミノビフェニルおよび4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル;ジアミノジフェニルアルカン化合物、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエタン;ジアミノジフェニルエーテル化合物、例えば4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびジ(4−アミノ−3−エチルフェニル)エーテル;ジアミノジフェニルチオエーテル化合物、例えば4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテルおよびジ(4−アミノ−3−プロピルフェニル)チオエーテル;ジアミノジフェニルスルホン化合物、例えば4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよびジ(4−アミノ−3−イソプロピルフェニル)スルホン;およびフェニレンジアミン類からなる群から選択された芳香族ジアミン化合物である。一実施形態において、硬化剤は、グアニジン類、例えばジシアンジアミド(DICY);および脂肪族ジアミン類、例えばエチレンジアミンおよびジエチレンジアミンからなる群から選択されたアミン化合物である。
【0052】
以下の実施例では、全ての部分および百分率は、別段の指示のないかぎり重量部分および重量百分率である。
【実施例】
【0053】
本明細書中の材料、方法および例は、例示的なものにすぎず、特記のないかぎり限定を意図されたものではない。本明細書中で記述されているものと類似のまたは均等の方法および材料を本発明の実践または試験において使用することができるものの、本明細書中では適切な方法および材料が記載されている。
【0054】
別段の指示のないかぎり、全ての材料は、Sigma−Aldrich Chemical Company、St.Louis、MO、USAから入手された。
【0055】
表面光沢度はHoribaハンディ光沢計(型式:IG−310)を用いて測定された。可視光学密度は、X−rite(Grand Rapids、MI USA)製のX−rite339を用いて測定された。
【0056】
PAN−PI配合物は、THINKY製プラネタリー遠心ミキサー(型式:ARE−310)を用いて混合した。
【0057】
誘電定数および損失正接は、ASTM D−2520によって決定した。100mm×100mmの試料の厚みを測定し、次にフィルムを矩形導波管空洞内に置いた。最初の6個の奇モード共振(2.2GHz、3.4GHz、5.0GHz、6.8GHz、8.6GHzおよび10.4GHz)の周波数変化によって、誘電定数を測定した。測定した各共振における品質係数の変化を比較することによって、損失正接を決定した。Damaskos Model 003 Test FixtureをAnritsu 37000 series Vector Network Analyzerと併用した。
【0058】
体積および表面抵抗率−ASTM−D−247:A Hewlett Packard 16008A Resistivity CellをHewlett Packard 4329A High Resistance Meterと併用した。
【0059】
実施例1−Hポリマー中のPAN
ガラス製広口びん内において4時間85℃で、9.2gのジメチルホルムアミド(DMF)中にポリアクリロニトリル(PAN、0.92g)を溶解させた。得られた10wt%のPAN溶液を、ホットプレート上で磁気撹拌器を用いて連続撹拌した。
【0060】
約40〜100ポアズの粘度を有する固形分17wt%で、DMAC中0.98:1のモル比のピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−オキシジフェニルアミン(ODA)から、標準的方法を用いてポリアミド酸を調製した。この溶液に対して、DMAC中6wt%のPMDAの調製したばかりの溶液を小分量の形で添加して、ポリアミド酸の分子量を増分的に増大させた。最終粘度はおよそ477ポアズであり、10wt%と37wt%のPANおよびPMDA/ODA前駆体配合物を調製するためにそれを使用した。
【0061】
ポリマー溶液(ポリアミド酸39.9gとPAN1.082g)を組合せ、1分間2000RPMでプラネタリー遠心ミキサーを用いて室温で混合した。ポリマー配合物のフィルムを、10ミルのBYK−Gardner棒型アプリケータを用いて7インチ×7インチのガラス板上に流延し、90℃で45分間、ホットプレート上で空気乾燥した。その後フィルムを450℃で20分間窒素下で硬化させた。フィルムの色は黒色であった。
【0062】
実施例2−PMDA/ODA中のPAN
ガラス製広口びん内において4時間90℃で、ジメチルホルムアミド(9.5g)中にポリアクリロニトリル(0.5069g)を溶解させた。得られた5.1wt%のポリマー溶液を、磁気撹拌器を用いてホットプレート上で連続撹拌した。この溶液を、表1に記載されているPANとPMDA/ODA前駆体の複数の配合物の調製のための原液として使用した。
【0063】
約40〜100ポアズの粘度を有する固形分20.6wt%で、DMAC中0.98:1のモル比のPMDAとODAから標準的方法を用いてポリアミド酸を調製した。このポリアミド酸溶液に対して、DMAC中6wt%のPMDAの調製したばかりの溶液を小分量の形で添加して、ポリマーの分子量を増分的に増大させた。最終粘度はおよそ1500ポアズであり、表1に記載されているPANとPMDA/ODA前駆体のさまざまな配合物を調製するための原液として、186.1gのポリアミド酸溶液を使用した。
【0064】
【表1】

【0065】
各配合物を、プラネタリー遠心ミキサーを用いて室温で30秒間2000RPMで2回混合した。さまざまなPANおよびPMDA/ODA配合物から製造したフィルムを、10ミルのBYK−Gardner棒型アプリケータを用いて7インチ×7インチのガラス板上に流延した。90℃で45分間、ホットプレート上でフィルムを空気乾燥し、表1に記載の通り窒素下で硬化させた。
【0066】
フィルムの色は、ポリイミドの自然色から暗褐色まで変動し、2wt%超のPANの場合または硬化温度および/または硬化時間を増大させるとより暗い色が得られた。硬化したフィルムの光沢は、PMDA/ODA中のPANのwt%と共に減少した。
【0067】
可視光学密度は、PMDA/ODA中のPANのwt%と共に上昇し、実施例2は2.6という最高密度を有する。比較例Cと比較例Dの間の可視密度の0.43という差異は、高温でより長時間フィルムを硬化するとより有色度の高いフィルムがもたらされるということを実証している。
【0068】
実施例2は、標準的方法により調製されたポリイミドフィルムに比べた誘電定数、損失正接または体積抵抗率の有意な変化を一切示していない。平均誘電定数は、2.17GHzで3.6の範囲内にあり、10.4GHzで3.5までわずかに減少した。平均損失正接は、2.17GHzでの0.016から10.4GHzでの0.022までの範囲であった。体積抵抗率は1015(Ω−cm)超であった。
【0069】
実施例3−BPDA/PPDポリマー中のPAN
ガラス製広口びん内において3.5時間85℃で、ジメチルホルムアミド(40.55g)中にポリアクリロニトリル(8.1g)を溶解させた。得られた19.95wt%のPAN溶液を、ホットプレート上で磁気撹拌器を用いて連続撹拌した。この溶液を、表2に記載されているPANとBPDA/PPD前駆体のさまざまな配合物の調製のための原液として使用した。
【0070】
約40〜100ポアズの粘度を有する固形分17wt%で、DMAC中0.98:1のモル比の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および1,4−ジアミノベンゼン(PPD)から標準的方法を用いてポリアミド酸(48.8g)を調製した。このポリアミド酸溶液に対して、DMAC中6wt%のPMDAの調製したばかりの溶液を小分量の形で添加して、ポリマーの分子量を増分的に増大させた。最終粘度はおよそ650ポアズであり、表2に記載されているPANとBPDA/PPD前駆体のさまざまな配合物を調製するための原液として、それを使用した。
【0071】
【表2】

【0072】
各配合物を、プラネタリー遠心ミキサーを用いて室温で30秒間2000RPMで2回混合した。さまざまなPANおよびBPDA/PPD配合物から製造したフィルムを、10ミルのBYK−Gardner棒型アプリケータを用いて7インチ×7インチのガラス板上に流延した。90℃で45分間、ホットプレート上でフィルムを空気乾燥し、表2に記載の通り窒素下で硬化させた。フィルムは色が黒色であり、可撓性を有し、完全に不透明であった。
【0073】
流延方向に直交する硬化したフィルムの断面をマッピングするために、走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用した。図2に示された試料A3のSEM断面は、幅約1μm未満の炭素ドメインの均一分布を示している。同様に、炭素ドメインの近くまたは周囲の数多くの空隙が、SEM断面内に見える。空隙の幅は炭素ドメインの幅より小さい。図3に示されている試料C3のSEM断面は、断面中により多くの炭素ドメインが見えるという点において、ポリイミド中のより高いPANのwt%と一貫性を有する。同様に、炭素ドメインの近くまたは周囲にはより多くの空隙が存在する。試料C3中の炭素ドメインは、試料A3中のドメインよりも大きい。試料C3中の少数のドメインは、ドメインの集合として現われている。興味深いことに、試料A3またはC3中に形成されたドメインのいずれも浸透しておらず、網状組織も形成しなかったが、このことは、ポリイミド内のPANの存在によって誘電定数、損失係数および体積抵抗率が変化せずにとどまったという観察事実と一貫している。
【0074】
図1は、実施例2の条件にしたがってPANとPMDA/ODAの配合物からおよび実施例3の条件にしたがってPANとBPDA/PPDの配合物から調製されたフィルムの可視光学密度範囲内の光学密度のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリロニトリルとポリイミド前駆体の配合物を含む組成物において、
前記ポリイミド前駆体が、
a.前記ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、
b.前記ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンと、
から誘導されており;
前記ポリイミド前駆体が前記配合物中で連続相を形成しており;
前記ポリアクリロニトリルが前記配合物中の不連続相内でドメインを形成しており;
ポリアクリロニトリル対ポリイミド前駆体の重量比が約1:2〜1:50であり;
前記ポリアクリロニトリルの前記ドメインサイズが、少なくとも1つの次元において2μm以下である;
組成物。
【請求項2】
a.前記芳香族二無水物が、
ピロメリット酸二無水物、
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
4,4’−オキシジフタル酸無水物、
3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
ビスフェノールA二無水物、および
それらの混合物からなる群から選択されており;
b.前記芳香族ジアミンが、
3,4’−オキシジアニリン、
1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
4,4’−オキシジアニリン、
1,4−ジアミノベンゼン、
1,3−ジアミノベンゼン、
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジデン、
4,4’−ジアミノビフェニル、
4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
9,9’−ビス(4−アミノ)フッ素、および
それらの混合物からなる群から選択されている;
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジアミンが1,4−ジアミノベンゼンであり、前記二無水物が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジアミンが4,4’−オキシジアニリンであり、前記二無水物が、ピロメリット酸二無水物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体が、10〜90モル%のビフェニルテトラカルボン酸二無水物と;90〜10モル%のピロメリット酸二無水物と;10〜90モル%の1,4−ジアミノベンゼンと;90〜10モル%の4,4’−オキシジアニリンと;から誘導されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジアミンが、1,4−ジアミノベンゼンおよび1,3−ジアミノベンゼンの混合物であり、前記二無水物が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
a)連続ポリイミド相であって、
前記ポリイミドは、
i.前記ポリイミドの合計二無水物含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と;
ii.前記ポリイミドの合計ジアミン含有量に基づいて、少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンと;
から誘導されている連続ポリイミド相と;
b)実質的に非晶質炭素のドメインを含む分散炭素相と;
を含む充填剤入りポリイミドポリマーであって、前記炭素ドメインの平均サイズが、少なくとも1つの次元において2μm以下であり;かつ
前記分散炭素相対ポリイミド相の重量比が1:10〜1:50である、充填剤入りポリイミドポリマー。
【請求項8】
a)ポリアクリロニトリル(PAN)と第1の溶媒とを含む第1の溶液を、第2の溶媒とポリイミド前駆体とを含む第2の溶液中に分散させて、前記ポリイミド前駆体が連続相を形成し前記PANがPANドメインからなる不連続相を形成するPAN/ポリイミド前駆体配合物を形成するステップであって、
前記ポリイミド前駆体は、前記ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、前記ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンとから誘導されており;
PAN対ポリイミド前駆体の前記重量比は約1:2〜1:50であり;
前記PANドメインの前記平均サイズは、少なくとも1つの次元において2μm以下であるステップと;
b)前記PAN/ポリイミド前駆体配合物を300〜500℃に加熱して、前記PANドメインを実質的に非晶質炭素のドメインに転換させ、前記ポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるステップと;
によって得られた充填剤入りポリイミドポリマー。
【請求項9】
a)ポリアクリロニトリル(PAN)と第1の溶媒とを含む第1の溶液を、第2の溶媒とポリイミド前駆体とを含む第2の溶液中に分散させて、前記ポリイミド前駆体が連続相を形成し前記PANがPANドメインからなる不連続相を形成するPAN/ポリイミド前駆体配合物を形成するステップであって、
前記ポリイミド前駆体は、前記ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、前記ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンとから誘導されており;
PAN対ポリイミド前駆体の前記重量比は約1:2〜1:50であり;
前記PANドメインの前記平均サイズは、少なくとも1つの次元において2μm以下であるステップと;
b)前記PAN/ポリイミド前駆体配合物からフィルムを形成するステップと;
c)前記PAN/ポリイミド前駆体配合物フィルムを300〜500℃に加熱して、前記PANドメインを実質的に非晶質炭素のドメインに転換させ、前記ポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるステップと;
によって得られた充填剤入りポリイミドフィルム。
【請求項10】
前記フィルムの厚みが2〜500μmである、請求項9に記載の充填剤入りポリイミドフィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の充填剤入りポリイミドフィルムと、前記フィルムの少なくとも一方の面にコーティングされた接着剤とを含むカバーレイ。
【請求項12】
前記接着剤が、熱可塑性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂およびその組合せからなる群から選択されている、請求項11に記載のカバーレイ。
【請求項13】
前記接着剤が、任意選択によりエポキシ樹脂およびフェノール樹脂から選択された熱硬化性接着剤をさらに含むポリイミド熱可塑性樹脂である、請求項11に記載のカバーレイ。
【請求項14】
前記接着剤が、ビスフェノールAエポキシ樹脂;ビスフェノールFエポキシ樹脂;ビスフェノールSエポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;ビフェニルエポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂;アラルキルエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;ナフタレンエポキシ樹脂;リン含有エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂およびそれらの混合物からなる群から選択されたエポキシ樹脂である、請求項11に記載のカバーレイ。
【請求項15】
a)ポリアクリロニトリル(PAN)と第1の溶媒とを含む第1の溶液を、第2の溶媒とポリイミド前駆体とを含む第2の溶液中に分散させて、前記ポリイミド前駆体が連続相を形成し前記PANがPANドメインからなる不連続相を形成するPAN/ポリイミド前駆体配合物を形成するステップであって、
前記ポリイミド前駆体は、前記ポリイミド前駆体の合計二無水物含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族二無水物と、前記ポリイミド前駆体の合計ジアミン含有量に基づいて少なくとも50モルパーセントの芳香族ジアミンとから誘導されており;
PAN対ポリイミド前駆体の前記重量比は約1:2〜1:50であり;
前記PANドメインの前記平均サイズは、少なくとも1つの次元において2μm以下であるステップと;
b)前記PAN/ポリイミド前駆体配合物から繊維を形成するステップと;
c)前記PAN/ポリイミド前駆体配合物繊維を300〜500℃に加熱して、前記PANドメインを実質的に炭素のドメインに転換させ、前記ポリイミド前駆体をポリイミドに転換させるステップと;
によって得られた充填剤入りポリイミド繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−507486(P2013−507486A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533271(P2012−533271)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051594
【国際公開番号】WO2011/044210
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】