充電装置及び印刷システム
【課題】複数の電池をほぼ同時に略満充電とすることで、複数電池を機器に同時装着する使用者の利便性を向上するとともに、電池寿命の向上を図る。
【解決手段】特定種類の複数の電池パックB1〜B4をそれぞれ装着する複数の装着部201a〜201dと、複数の装着部に装着された複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する検出スイッチSWa〜SWdと、特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値Imaxを複数の電池パックB1〜B4それぞれに分配するための分配比k1〜k4を、残容量取得結果に応じて設定する。また、複数の装着部201a〜201dそれぞれに装着された各電池パックB1〜B4に対し、設定された分配比k1〜k4に応じた電流値の定電流を供給し、充電を行う。
【解決手段】特定種類の複数の電池パックB1〜B4をそれぞれ装着する複数の装着部201a〜201dと、複数の装着部に装着された複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する検出スイッチSWa〜SWdと、特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値Imaxを複数の電池パックB1〜B4それぞれに分配するための分配比k1〜k4を、残容量取得結果に応じて設定する。また、複数の装着部201a〜201dそれぞれに装着された各電池パックB1〜B4に対し、設定された分配比k1〜k4に応じた電流値の定電流を供給し、充電を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式の電池手段に対して充電を行うための充電装置及びこれを備えた印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の電池に対し充電を行う充電装置が、既に知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、複数のリチウムイオン電池に対し順次充電が行われる。そして、最初に充電が行われている1本のリチウムイオン電池が満充電近くになって定電流充電から定電圧充電に切り替わり、充電電流が次第に小さくなるとき、その減少値に相当する充電電流を用いて別のリチウムイオン電池が同時に予備充電される。これにより、複数のリチウムイオン電池の充電時間の短縮が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−308123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、複数の電池が1つずつ順次充電されていくことから、例えば複数の電池を同時に機器に装着して使用したい使用者は、最後の電池が満充電になるまで(それ以外の電池が満充電になっていたとしても)待たねばならず、使い勝手が悪かった。また、複数の電池を上記のように1つずつ充電していく際、各電池に対して、許容される最大充電電流値で充電が行われることから、電池寿命の低下を招いていた。
【0005】
本発明の目的は、複数の電池をほぼ同時に略満充電とすることで、複数電池を機器に同時装着する使用者の利便性を向上するとともに、電池寿命の向上を図れる、充電装置及び印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、特定種類の複数の電池手段をそれぞれ装着する複数の装着部と、前記複数の装着部に装着された前記複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する残容量情報取得手段と、前記特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値を前記複数の電池手段それぞれに分配するための分配比を、前記残容量情報取得手段での取得結果に応じて設定する、分配比設定手段と、前記複数の装着部それぞれに装着された各電池手段に対し、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて前記所定の充電電流値を分配供給して充電を行う電流制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本願発明の充電装置は、複数の装着部を備えている。各装着部には、それぞれ1つの特定種類の電池手段が装着され、充電装置全体では、複数の電池手段に対し、いわゆる定電流方式による充電処理が実行される。具体的には、残容量情報取得手段が、複数の装着部に装着された複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する。これにより、各電池手段の残容量がそれぞれどれくらいであるか、が充電装置側で認識される。このとき、上記特定種類に対し上記定電流方式で充電を行うための所定の充電電流値が予め定められており、分配比設定手段は、当該所定の充電電流値を各電池手段に分配するための分配比を、上記認識された各電池手段の残容量に応じて、設定する。そして、電流制御手段が、上記設定された分配比に応じて上記所定の充電電流値を各電池手段にそれぞれ分配供給することで、上記複数の電池手段の充電を行う。
【0008】
これにより、残容量が比較的多い(=未充電容量が比較的少ない)電池手段に対しては分配比を小さくして比較的少ない電流が供給されるようにするとともに、残容量が比較的少ない(=未充電容量が比較的多い)電池手段に対しては分配比を大きくしてなるべく多くの電流が供給されるようにすることができる。この結果、残容量の多少に応じ、複数の電池手段すべてをほぼ同時に略満充電状態とすることができる。この結果、例えば複数の電池手段を同時に機器に装着して使用したい使用者にとって、特に利便性が高い。また、所定の充電電流値を分配比に応じて分配して供給することにより、各電池手段に供給される電流値は、上記所定の充電電流値よりも必ず小さくなる。この結果、当該所定の充電電流値そのものを各電池手段に順次供給して急速充電する手法に比べ、電池の劣化を抑制して耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の電池手段をほぼ同時に略満充電とすることで、複数電池手段を機器に同時装着する使用者の利便性を向上するとともに、電池寿命の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の充電装置により充電された電池を使用するプリンタの概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1中F−F断面による断面図、及び、G−G断面による断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の充電装置の概略構成を表す平面図である。
【図4】充電装置の電気的構成を表す回路図である。
【図5】CPUにより実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図6】充電電流値を分配するために実行されるデューティ制御の説明図である。
【図7】複数の電池パックを1個ずつ最速充電する変形例を表す説明図である。
【図8】複数の電池パックを同時並行して充電する実施形態の手法を表す説明図である。
【図9】電池パックの装着又は取り外しをサーミスタで検出する変形例における電気的構成を表す回路図である。
【図10】電池パックの装着又は取り外しを電圧の変化を用いて検出する変形例における電気的構成を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、充電式のプリンタに使用されるバッテリ電源を充電可能な充電装置に関する実施形態である。
【0012】
<プリンタ>
まず、本実施形態の充電装置の充電処理対象であるバッテリ電源が使用されるプリンタ(印刷装置)について、図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2では、図1中の右下方向を右方、左上方向を左方、右上方向を後方、左下方向を前方、上方向を上方、下方向を下方、と定義する(各図の矢印の図示参照)。
【0013】
プリンタ1は、充電可能なバッテリ電源(詳細は後述)を電源として駆動可能であり、外部機器(図示せず)より受信した印刷データに対応した印刷を実行する。このプリンタ1と、後述する充電装置200とにより、本実施形態の印刷システムを構成している。
【0014】
プリンタ1は、装置外郭を構成する略箱形形状の筐体100を備えている。この筐体100は、装置外郭上部を構成するトップカバー101と、装置外郭下部を構成するアンダーカバー102とを備えている。トップカバー101は、固定部101Aと開閉蓋101Bとを備えている。
【0015】
トップカバー101の開閉蓋101Bの下方(筐体100の内部)には、ロール収納部161が設けられている(図2参照)。このロール収納部161には、ロール紙Sが両端部を支持部材(図示せず)によって回転可能に軸支されて収納されており、これによってロール収納部161から連続的にロール紙S(被印字媒体)を供給可能である。このとき、開閉蓋101Bはヒンジ部Hを介しアンダーカバー102の後端部に対して回転可能に連結されており、開閉蓋101Bを開き状態とすることで、ロール収納部161を装置外部に露出させ、ロール紙Sの装着や交換を容易に行うことができる。トップカバー101の前後方向略中央部には、印字後のロール紙Sを排出するための排出口107が設けられている。
【0016】
開閉蓋101Bの前方側端部には、プラテンローラ111(搬送手段)が回転自在に支持されている。プラテンローラ111は、開閉蓋101Bが上記閉じ状態にあるときに、ロール紙Sを搬送する。
【0017】
上記のように搬送されるロール紙Sに対し、プラテンローラ111に所定の圧接力で接触するサーマルラインヘッド112(印字手段)によって、所望の印字が形成される。このとき、上記プラテンローラ111を回転駆動する駆動力を発生する駆動モータが筐体100の内部に設けられており、開閉蓋101Bの閉じ状態において、上記モータの駆動力が図示しないギア機構によってプラテンローラ111に伝達される。なお、上記駆動モータは、筐体100内部の後方にかけて配置された制御基板170(図2(a)参照)によって、その駆動が制御される。
【0018】
筐体100内の制御基板170の下方には、アンダーカバー102の下面側から上記バッテリ電源が挿入されて配置されるバッテリ電源収納部163(図2(a)参照)が備えられている。なお、バッテリ電源収納部163では、図示を省略するが、安定性や重心配置の観点から、上記バッテリ電源は横置きに収納されている。そして、上記制御基板170は、上記バッテリ電源収納部163に収納されたバッテリ電源から供給される電力を用いつつ、サーマルラインヘッド112及び上記駆動モータ等の制御を行う。なお、バッテリ電源は、この例ではリチウムイオン電池を備えている。
【0019】
<プリンタの概略動作>
上記構成において、印刷時には、PC端末や携帯電話等の上記外部機器より、プリンタ1に対し、無線通信(又は有線通信や赤外線通信でもよい)を介して、印刷データが送信される。また、上記駆動モータの駆動力に基づくプラテンローラ111の回転によってロール収納部161からロール紙Sが繰り出される。繰り出されたロール紙Sは、サーマルラインヘッド112とプラテンローラ111との間に挿通され、そのロール紙Sに対しサーマルラインヘッド112が上記印刷データに基づいた所望の態様の印刷を行う。印刷後のロール紙Sは、排出口107から筐体100の外部へと排出される。このとき、メインシャーシ部材150には、排出口107の内側において当該排出口107に沿うように固定歯160が取り付けられている。使用者は、上記のようにして印刷が完了し排出口107から排出されたロール紙Sの端部を、この固定歯160を用いて手動で切断することができる。
【0020】
<充電装置>
本実施形態では、上記バッテリ電源収納部163に収納されるバッテリ電源に対し、充電装置によって充電処理が行われる。このバッテリ電源としては、この例では、充電可能なリチウムイオン電池等の特定種類の複数の充電池をまとめて1パックとした、電池手段としての電池パックが用いられる。
【0021】
<充電装置の概略構成>
本実施形態の充電装置では、複数の上記電池パックに対し、同時に充電処理を行うことができる。すなわち、図3に示すように、本実施形態の充電装置200は、例えば4パックの電池パックB1,B2,B3,B4が個々に装着されるワンタッチホルダー式(落とし込みタイプ)の4つの装着部201a,201b,201c,201dを備えた充電装置本体204と、アダプタ202と、プラグ203と、を有している。充電装置本体204は、アダプタ202に接続され、またアダプタ202はプラグ203を介してコンセント(AC電源)に接続される。これにより、充電装置本体204の装着部201a,201b,201c,201dにそれぞれ装着されている各電池パックB1,B2,B3,B4に対し、いわゆる定電流方式による充電処理が行われる(詳細は後述)。
【0022】
<充電装置の電気的構成>
図4は、充電装置200の電気的構成を図4により説明する。図4において、充電装置200は、定電流回路15(定電流生成手段)と、定電圧回路16と、メインスイッチSW0と、CPU12と、電圧検出部13と、装着検出部14と、4つの電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4と、検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdと、上記装着部201a,201b,201c,201dと、を有している。なお、図示の煩雑を避けるため、便宜上、各装着部201a,201b,201c,201dには1つの電池シンボルのみをそれぞれ記載している(後述の図9、図10も同様)。
【0023】
定電流回路15及び定電圧回路16は、上記コンセント(AC電源)等からなる電源11に対し、互いに並列に接続されている。これら定電流回路15及び定電圧回路16は、CPU12によって切り替えられる上記メインスイッチSW0によって、選択的に上記電源11に接続される。定電流回路15は、上記電源11から供給される電力に基づき、所定の充電電流値の定電流を生成する。定電圧回路16は、上記電源11から供給される電力に基づき、所定の定電圧を生成する。
【0024】
装着部201a,201b,201c,201dは、それぞれ、充電用端子(図示せず)を備えている。各充電用端子は、上記電池パックB1〜B4が各装着部201a〜201dへ装着されたときに各電池パックB1〜B4の端子に導通する。なお、以下適宜、電池パックB1、B2,B3,B4を互いに特に区別しない場合は単に「電池パックB」と称する。同様に、装着部201a,201b,201c,201dを特に区別しない場合は単に「装着部201」と称する。各装着部201a,201b,201c,201dには、押圧式の上記検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdが設けられている。各検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdの一方側は装着検出部14に接続されるとともに他方側は接地されている。そして、各装着部201a〜201dに電池パックB1〜B4が装着されると検出スイッチSWa〜dが導通状態となり、電池パックB1〜B4が取り外されると非導通状態となる。装着検出部14は、この状態の変化によって装着部201a〜dに対する電池パックB1〜B4の装着又は取り外しを検出し、対応する検出信号を上記CPU12に入力する。
【0025】
また、各電池パックB1,B2,B3,B4には、図示しないクーロンメータ(残容量情報検出手段)が備えられている。それぞれのクーロンメータが公知の手法により検出した各電池パックB1,B2,B3,B4の残容量情報は、装着部201a,201b,201c,201dへの装着時に、図示しない適宜の信号経路を介し、上記装着検出部14によって取得される。なお、クーロンメータを使用する代わりに、公知の手法により各電池パックB1,B2,B3,B4に所定量の放電を実行させ、その際の電圧降下量によって各電池パックB1,B2,B3,B4の残容量情報を取得しても良い。
【0026】
電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、メインスイッチSW0に接続され、定電流回路15又は定電圧回路16から供給された電流を、各装着部201a〜dの上記充電用端子を介して各電池パックB1〜B4へ供給する。その際、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、それぞれCPU12の制御信号によりON・OFF作動し、定電流回路15で生成された定電流を、予め設定された分配比に応じて各電池パックB1,B2,B3,B4に分配供給する。具体的には、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、CPU2012の制御に基づき、通電する時間比率によって各電池パックB1,B2,B3,B4に電流を分配供給する、デューティ制御を行う(詳細は後述)。
【0027】
電圧検出部13は、各装着部201a,201b,201c,201dに供給される電流の電圧値を検出可能であり、対応する検出信号を上記CPU12の所定の入力ポートに入力する。
【0028】
<制御手順>
次に、CPU12により実行される制御手順を図5により説明する。例えば、前述したように、図3に示すアダプタ202がプラグ203を介してコンセント(AC電源)に接続されたとき(図4で示す電源11がON状態となったとき)に、図5に示すフローが開始される。
【0029】
図5において、まず、ステップS10において、CPU12は、検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdを介した装着検出部14での検出結果に基づき、装着部201a,201b,201c,201dのいずれかに対し、新たに装着された電池パックB1,B2,B3,B4があるかどうかを判定する。
【0030】
新たに装着された電池パックB1,B2,B3,B4が無い場合にはステップS10の判定が満たされず(ステップS10:NO)、判定が満たされるまでループ待機する。一方、新たに装着された電池パックB1,B2,B3,B4があった場合には、ステップS10の判定が満たされ(ステップS10:YES)、ステップS20に移行する。
【0031】
ステップS20では、CPU12は、前述したようにクーロンメータから装着検出部14に入力された、この時点で装着されているn個(上記図4の例では4個)の電池パックB1,B2,B3,B4それぞれの残容量を取得する。なお、この残容量とは、各電池パックB1〜B4それぞれにおいて、全容量から、未充電容量を差し引いたものである。これら取得された各電池パックB1〜B4の残容量は、適宜の箇所(例えば制御基板170に別途設けたメモリ等)に記憶される。なお、このステップS20が各請求項記載の残容量情報取得手段として機能する。その後、ステップS30に移行する。
【0032】
ステップS30では、CPU12は、上記ステップS20で取得されたn個の電池パック全ての残容量取得情報に基づき、分配比k1,k2,・・・、knを設定する。上記の例ではn=4であることから、電池パックB1〜B4についての分配比k1,k2,k3,k4が設定される。詳細には、上記残容量情報の取得結果に応じ、残容量が比較的多い電池パックB1,B2,B3,B4に対しては供給電流値は小さい値となり、残容量が比較的少ない電池パックB1,B2,B3,B4に対しては供給電流値は大きい値となるように、分配比k1,k2,k3,k4の設定が行われる。
【0033】
例えば、満充電状態を残容量100%としたとき、電池パックB1の残容量70%(すなわち未充電容量30%)であり、電池パックB2の残容量50%(未充電容量50%)であり、電池パックB3の残容量40%(未充電容量60%)であり、電池パックB4の残容量30%(未充電容量70%)であった場合を考える。この場合、この例では、各電池パックB1〜B4の未充電容量を基準として、それら全部の電池パックB1〜B4の未充電容量合計に占める各電池パックの未充電容量の比率によって、分配比が決定される。すなわち、
電池パックB1(未充電容量30%)の分配比k1は、
k1=(30)/(30+50+60+70)
=3/21
電池パックB2(未充電容量50%)の分配比k2は、
k2=(50)/(30+50+60+70)
=5/21
電池パックB3(未充電容量60%)の分配比k3は、
k4=(60)/(30+50+60+70)
=6/21
電池パックB4(未充電容量70%)の分配比k4は、
k4=(70)/(30+50+60+70)
=7/21
に設定される。このステップS30が各請求項記載の分配比設定手段として機能する。その後、ステップS40に移行する。
【0034】
ステップS40では、CPU12は、メインスイッチSW0を定電流回路15側へ切り替える(既に定電流回路15側へ切り替えられている場合はそのままとする)。その後、ステップS50に移行する。
【0035】
ステップS50では、CPU12は、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4を作動させ、上記ステップS40で設定した各分配比k1、k2、・・・、knに応じた定電流により、n個の電池パックを同時並行して充電する。この例では上記のようにn=4であり、特定種類の充電池(この例ではリチウムイオン電池)に対して予め定められた公知の充電電流値Imaxに対し上記分配比k1、k2、・・・、knを乗じた電流値が、各電池パックB1〜B4にそれぞれ供給される。すなわち、
電池パックB1(分配比k1)に対しては、
k1×Imax
=3/21×Imax
電池パックB2(分配比k2)に対しては、
k2×Imax
=5/21×Imax
電池パックB3(分配比k3)に対しては、
k3×Imax
=6/21×Imax
電池パックB4(分配比k4)に対しては、
k4×Imax
=7/21×Imax
の電流値が供給される。
【0036】
具体的には、前述の通電時間の比率設定によるデューティ制御が行われる。すなわち、ある時間周期ごとの、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4それぞれの導通時間(通電時間)の時間比率が、互いに3:5:6:7となるように、制御される。図6には、1[sec]周期の間に上記時間比率を実現した例を示しており、この例では、CPU12からの制御信号により、上記1秒周期のうち、電流制御スイッチSW1の導通時間が3/21[sec]となり、電流制御スイッチSW2の導通時間が5/21[sec]となり、電流制御スイッチSW3の導通時間が6/21[sec]となり、電流制御スイッチSW4の導通時間が7/21[sec]となるように、CPU12による各スイッチのON・OFF制御が実行される。これにより、各収納部201a,201b,201c,201dそれぞれに収納された電池パックB1,B2,B3,B4に対し、上記分配比k1,k2,k3,k4に応じた電流値が分配供給される。
【0037】
なお、上記のような上記電流制御スイッチSW1〜SW4における時間比率を用いたデューティ制御に代えて、例えば公知のパルス幅変調(PWM)等、他の適宜の手法(アナログ制御・デジタル制御を問わない)により、上記分配比k1,k2,k3,k4に応じた電流値の分配供給を行うようにしてもよい。
【0038】
なお、上記ステップS50が各請求項記載の電流制限手段として機能するとともに、電流制御手段としても機能する。ステップS50が完了すると、ステップS60へ移行する。
【0039】
ステップS60では、CPU12は、上記ステップS10と同様、検出スイッチSWa〜SWdを介した装着検出部14での検出結果に基づき、各装着部201a,201b,201c,201d・・・のいずれかに対し、電池パックB1,B2,B3,B4・・・の新たな装着若しくは取り外しがあったかどうかを判定する。
【0040】
新たに装着された若しくは取り外された電池パックB1,B2,B3,B4・・・があった場合には、ステップS60の判定が満たされ(ステップS60:YES)、ステップS20に戻って同様の手順を繰り返す。一方、新たに装着された若しくは取り外された電池パックB1,B2,B3,B4・・・が無い場合にはステップS60の判定が満たされず(ステップS60:NO)、ステップS70に移行する。なお、このステップS60と、前述のステップS10とが、各請求項記載の着脱検出手段として機能する。
【0041】
ステップS70においては、上記電圧検出部13の検出結果に基づき、CPU12は、電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値すべてが終止電圧に達したかどうかを判定する。この終止電圧とは、予め各電池の種類ごとに設定されている公知の値である。すなわち、一般に、定電流充電の実行時において、当該終止電圧までの到達をもって定電流充電が終了され、それ以降は定電圧充電が実行される。本実施形態でもこのような一般的な終止電圧の値がこのステップS70において使用される。電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値が終止電圧に達していなければステップS70の判定が満たされず(ステップS70:NO)、ステップS50に戻って同様の手順を繰り返す。一方、電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値すべてが終止電圧に達したらステップS70の判定が満たされ(ステップS70:YES)ステップS80に移行する。
【0042】
ステップS80では、CPU12は、メインスイッチSW0を定電圧回路16側へ切り替える。これにより、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4がそれぞれ定電圧回路16に接続される。その後、ステップS90に移る。
【0043】
ステップS90では、CPU12は、電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値すべてが上記終止電圧に達していることを受けて、公知の手法と同様、予め定められた所定時間だけ、電池パックB1〜B4に対し定電圧充電を行った後、このフローを終了する。
【0044】
以上説明した本実施形態の充電装置200の作用効果を図7及び図8を用いて説明する。
【0045】
<比較例>
図7に、本実施形態の比較例を示す。説明の便宜上、上記実施形態の充電装置200と同等の部分には同一の符号を付している。この比較例では、4つの装着部201a,201b,201c,201dそれぞれに4つの電池パックB1,B2,B3,B4が装着されている。そして、各装着部201a〜201dに装着された電池パックB1〜B4に対し、順番に1つの電池パックごとに(この例では電池パックB1→電池パックB2→電池パックB3→電池パックB4の順で)、上記最大電流値Imaxが供給されることで各電池パックにおける最速充電が実行される。
【0046】
図7には、装着部201aに装着された電池パックB1に対し上記電柱値Imaxによる定電流充電が行われ、残容量が70%(すなわち未充電容量が30%)となった状態を示している。このとき、上述のように残りの装着部201b,201c,201dにそれぞれ装着された電池パックB2,B3,B4に対しては充電は全く行われておらず、電池パックB2の残容量は50%(未充電容量50%)、電池パックB3の残容量は40%(未充電容量60%)、電池パックB4の残容量は30%(未充電容量70%)で、それぞれ「充電待ち」の状態となっている。
【0047】
このような1つの電池パックごとに順次最速充電していく手法では、以下のような欠点がある。すなわち、4個の電池パックB1〜B4をまとめて同時に使用したい使用者にとっては、(それまでに電池パックB1〜B3の充電が完了していたとしても)4個目の電池パックB4の充電が完了するまで待たねばならず、使い勝手が悪い。また、各電池パックB1〜B4それぞれに対し、最大電流値Imaxにより充電しているので、電池寿命に悪影響を与える。また、充電途中において電池パックが取り外されたり追加されたりした場合に特に配慮されていない。
【0048】
<実施形態の効果>
上記比較例と対比させた本実施形態の手法を図8に示す。本実施形態では、既に述べたように、各装着部201a,201b,201c,201dに装着された電池パックB1,B2,B3,B4それぞれの残容量に応じた分配比(この例では前述したように3/21、5/21、6/21、7/21)により、各電池パックB1,B2,B3,B4に対し、それら分配比に応じた電流値(すなわち3/21×Imax、5/21×Imax、6/21×Imax、7/21×Imax)を分配供給し、同時並行して充電を行う。これにより、残容量が比較的多い(未充電容量が比較的少ない)電池パックに対しては比較的少ない電流が供給されるとともに、残容量が比較的少ない(未充電容量が比較的多い)電池パックに対しては比較的多くの電流が供給される(図中、各電池パックB1〜B4の破線矢印参照)。この結果、残容量の多少に応じ、電池パックB1,B2,B3,B4すべてをほぼ同時に略満充電状態とすることができる。この結果、上記の電池パックB1,B2,B3,B4を同時に機器に装着して使用したい使用者にとって、特に利便性が高い。
【0049】
また、上記のようにして定電流回路15で生成された上記最大電流値Imaxを前述の分配比に応じて電池パックB1,B2,B3,B4に分配供給することにより、各電池パックB1,B2,B3,B4に供給される電流値は、上記最大電流値Imaxよりも必ず小さくなる。この結果、上記最大電流値Imaxそのものを各電池パックB1,B2,B3,B4に順次供給して急速充電する上記比較例の手法に比べ、電池の劣化を抑制して耐久性を向上することができる。
【0050】
また、上記比較例と異なり、充電途中において電池パックが取り外されたり追加されたりした場合も対応可能である。すなわち、少なくとも1つの装着部201a〜201dに対する電池パックB1〜B4の新たな装着が検出されたか、若しくは、新たな取り外しが検出されたときには、当該新たな装着又は新たな取り外しに応じてその時点で装着部201に装着されているすべての電池パックBの残容量が新たに取得される(ステップS20参照)。そして、その新たに取得された取得結果に応じて、ステップS30で新たに分配比が設定され、その新たに設定された分配比に応じた電流値が、各電池パックBへと分配供給される(ステップS50参照)。これにより、新規に複数の電池パックBが装着部201に装着されたときのみならず、充電中に一部の電池パックBが装着部201から取り外されたり、別の電池パックBがさらに追加して装着部201に装着された場合であっても、その取り外し後又は追加装着後の状態に応じて再度分配比が設定し直されて、対応して充電を行うことができる。この結果、さらに使用者の利便性を向上することができる。また、例えば、使用を急ぎたい使用者が、満充電にはなっていないがある程度の時間まで充電された時点で全電池パックB1〜B4を取り外したとき、上記比較例では充電の順番が最後である電池パックB4はほとんど充電されていない(残容量がきわめて少ない)可能性が高い。これに対して本実施形態では、上記のように全電池パックB1〜B4が同時並行して充電されているので、上記のように充電途中で全電池パックB1〜B4を取り外したときでも、電池パックB1〜B4のすべてがある程度充電された状態となる。したがって、上記のような使用者にとって特に使い勝手がよい。
【0051】
また、本実施形態では特に、各電池パックB1,B2,B3,B4・・・に設けられたクーロンメータが検出した残容量情報を、装着部201a,201b,201c,201d・・・への装着時に取得する(ステップS20参照)。このように、電池パックB1,B2,B3,B4・・・側で検出した残容量情報を取得して用いることにより、充電装置側に特に残容量情報の検出手段を設けなくても、充電装置が各電池パックB1,B2,B3,B4・・・の残容量を認識することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、その変形例について、順を追って説明する。なお、上記実施形態と同等の部分については同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0053】
(1)サーミスタを用いて着脱検出を行う場合
本変形例の電気的構成を図9に示す。図9に示すように、本変形例では、各電池パックB1,B2,B3,B4の装着又は取り外しを検出するために、上記実施形態における検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdに代えて、サーミスタTM1,TM2,TM3,TM4が各装着部201a,201b,201c,201dに対し設けられる。サーミスタTM1,TM2,TM3,TM4の一方側は温度検出部17に接続され、他方側は接地されている。そして、各装着部201a〜201dに電池パックB1〜B4が装着されるとその際の温度上昇によりサーミスタTM1〜TM4が作動する。温度検出部17は、その作動によって装着部201a〜dに対する電池パックB1〜B4の装着又は取り外しを検出し、対応する検出信号を上記CPU12に入力する。なお、この場合も、上記温度検出部17からの検出結果を入力する図5のフローの上記ステップS60とステップS10とが、本変形例における着脱検出手段として機能する。
【0054】
上記した、電池パックB1〜B4の着脱検出以外の部分は上記実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0055】
(2)電圧の変化によって着脱検出を行う場合
本変形例の電気的構成を図10に示す。図10に示すように、本変形例では、上記実施形態における上記検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdが省略される。そして、電圧検出部10が、装着部201a〜201dに電池パックB1〜B4が装着されたときの通電による電圧変化によって装着部201a〜dに対する電池パックB1〜B4の装着又は取り外しを検出し、対応する検出信号を上記CPU12に入力する。なお、この場合も、上記電圧検出部10からの検出結果を入力する図5のフローの上記ステップS60とステップS10とが、本変形例における着脱検出手段として機能する。なお、その際、既に述べたように、各電池パックB1,B2,B3,B4に対し公知の手法で所定量放電させて電圧降下を検出し、各電池パックB1〜B4の残容量を併せて取得するようにしてもよい。
【0056】
上記した、電池パックB1〜B4の着脱検出以外の部分は上記実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0057】
なお、以上においては、電池手段として、複数本の充電池をまとめた電池パックを例にとって説明したが、これに限られず、1本の電池を電池手段として適用してもよい。この場合も、上記同様、複数本の電池それぞれに電流の分配供給を行ってそれらを略同一に満充電とすることができ、各電池の寿命向上を図ることができる。
【0058】
また、以上においては、プリンタ1に使用されるバッテリ電源の充電装置として本発明を適用したが、これに限られない。すなわち、充電式のバッテリ電源を用いる電子機器であれば印刷装置以外の機器に対しても本発明を適用することができ、当該電子機器に使用されるバッテリ電源に対し本願発明の充電装置で充電処理を行うことで、上記同様の効果を得る。
【0059】
なお、以上において、図4、図9、図10に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0060】
また、図5に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0061】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0062】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 プリンタ(印刷装置)
13 電圧検出部
14 装着検出部
15 定電流回路(定電流生成手段)
111 プラテンローラ(搬送手段)
112 サーマルラインヘッド(印字手段)
200 充電装置
201a〜d 装着部
B1〜4 電池パック(電池手段)
Imax 充電電流値
k1〜4 分配比
S ロール紙(被印字媒体)
SW1〜4 電流制御スイッチ
SWa〜d 検出スイッチ
TM1〜4 サーミスタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式の電池手段に対して充電を行うための充電装置及びこれを備えた印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の電池に対し充電を行う充電装置が、既に知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術では、複数のリチウムイオン電池に対し順次充電が行われる。そして、最初に充電が行われている1本のリチウムイオン電池が満充電近くになって定電流充電から定電圧充電に切り替わり、充電電流が次第に小さくなるとき、その減少値に相当する充電電流を用いて別のリチウムイオン電池が同時に予備充電される。これにより、複数のリチウムイオン電池の充電時間の短縮が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−308123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、複数の電池が1つずつ順次充電されていくことから、例えば複数の電池を同時に機器に装着して使用したい使用者は、最後の電池が満充電になるまで(それ以外の電池が満充電になっていたとしても)待たねばならず、使い勝手が悪かった。また、複数の電池を上記のように1つずつ充電していく際、各電池に対して、許容される最大充電電流値で充電が行われることから、電池寿命の低下を招いていた。
【0005】
本発明の目的は、複数の電池をほぼ同時に略満充電とすることで、複数電池を機器に同時装着する使用者の利便性を向上するとともに、電池寿命の向上を図れる、充電装置及び印刷システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、特定種類の複数の電池手段をそれぞれ装着する複数の装着部と、前記複数の装着部に装着された前記複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する残容量情報取得手段と、前記特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値を前記複数の電池手段それぞれに分配するための分配比を、前記残容量情報取得手段での取得結果に応じて設定する、分配比設定手段と、前記複数の装着部それぞれに装着された各電池手段に対し、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて前記所定の充電電流値を分配供給して充電を行う電流制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本願発明の充電装置は、複数の装着部を備えている。各装着部には、それぞれ1つの特定種類の電池手段が装着され、充電装置全体では、複数の電池手段に対し、いわゆる定電流方式による充電処理が実行される。具体的には、残容量情報取得手段が、複数の装着部に装着された複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する。これにより、各電池手段の残容量がそれぞれどれくらいであるか、が充電装置側で認識される。このとき、上記特定種類に対し上記定電流方式で充電を行うための所定の充電電流値が予め定められており、分配比設定手段は、当該所定の充電電流値を各電池手段に分配するための分配比を、上記認識された各電池手段の残容量に応じて、設定する。そして、電流制御手段が、上記設定された分配比に応じて上記所定の充電電流値を各電池手段にそれぞれ分配供給することで、上記複数の電池手段の充電を行う。
【0008】
これにより、残容量が比較的多い(=未充電容量が比較的少ない)電池手段に対しては分配比を小さくして比較的少ない電流が供給されるようにするとともに、残容量が比較的少ない(=未充電容量が比較的多い)電池手段に対しては分配比を大きくしてなるべく多くの電流が供給されるようにすることができる。この結果、残容量の多少に応じ、複数の電池手段すべてをほぼ同時に略満充電状態とすることができる。この結果、例えば複数の電池手段を同時に機器に装着して使用したい使用者にとって、特に利便性が高い。また、所定の充電電流値を分配比に応じて分配して供給することにより、各電池手段に供給される電流値は、上記所定の充電電流値よりも必ず小さくなる。この結果、当該所定の充電電流値そのものを各電池手段に順次供給して急速充電する手法に比べ、電池の劣化を抑制して耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の電池手段をほぼ同時に略満充電とすることで、複数電池手段を機器に同時装着する使用者の利便性を向上するとともに、電池寿命の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の充電装置により充電された電池を使用するプリンタの概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1中F−F断面による断面図、及び、G−G断面による断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の充電装置の概略構成を表す平面図である。
【図4】充電装置の電気的構成を表す回路図である。
【図5】CPUにより実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図6】充電電流値を分配するために実行されるデューティ制御の説明図である。
【図7】複数の電池パックを1個ずつ最速充電する変形例を表す説明図である。
【図8】複数の電池パックを同時並行して充電する実施形態の手法を表す説明図である。
【図9】電池パックの装着又は取り外しをサーミスタで検出する変形例における電気的構成を表す回路図である。
【図10】電池パックの装着又は取り外しを電圧の変化を用いて検出する変形例における電気的構成を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、充電式のプリンタに使用されるバッテリ電源を充電可能な充電装置に関する実施形態である。
【0012】
<プリンタ>
まず、本実施形態の充電装置の充電処理対象であるバッテリ電源が使用されるプリンタ(印刷装置)について、図1及び図2を用いて説明する。図1及び図2では、図1中の右下方向を右方、左上方向を左方、右上方向を後方、左下方向を前方、上方向を上方、下方向を下方、と定義する(各図の矢印の図示参照)。
【0013】
プリンタ1は、充電可能なバッテリ電源(詳細は後述)を電源として駆動可能であり、外部機器(図示せず)より受信した印刷データに対応した印刷を実行する。このプリンタ1と、後述する充電装置200とにより、本実施形態の印刷システムを構成している。
【0014】
プリンタ1は、装置外郭を構成する略箱形形状の筐体100を備えている。この筐体100は、装置外郭上部を構成するトップカバー101と、装置外郭下部を構成するアンダーカバー102とを備えている。トップカバー101は、固定部101Aと開閉蓋101Bとを備えている。
【0015】
トップカバー101の開閉蓋101Bの下方(筐体100の内部)には、ロール収納部161が設けられている(図2参照)。このロール収納部161には、ロール紙Sが両端部を支持部材(図示せず)によって回転可能に軸支されて収納されており、これによってロール収納部161から連続的にロール紙S(被印字媒体)を供給可能である。このとき、開閉蓋101Bはヒンジ部Hを介しアンダーカバー102の後端部に対して回転可能に連結されており、開閉蓋101Bを開き状態とすることで、ロール収納部161を装置外部に露出させ、ロール紙Sの装着や交換を容易に行うことができる。トップカバー101の前後方向略中央部には、印字後のロール紙Sを排出するための排出口107が設けられている。
【0016】
開閉蓋101Bの前方側端部には、プラテンローラ111(搬送手段)が回転自在に支持されている。プラテンローラ111は、開閉蓋101Bが上記閉じ状態にあるときに、ロール紙Sを搬送する。
【0017】
上記のように搬送されるロール紙Sに対し、プラテンローラ111に所定の圧接力で接触するサーマルラインヘッド112(印字手段)によって、所望の印字が形成される。このとき、上記プラテンローラ111を回転駆動する駆動力を発生する駆動モータが筐体100の内部に設けられており、開閉蓋101Bの閉じ状態において、上記モータの駆動力が図示しないギア機構によってプラテンローラ111に伝達される。なお、上記駆動モータは、筐体100内部の後方にかけて配置された制御基板170(図2(a)参照)によって、その駆動が制御される。
【0018】
筐体100内の制御基板170の下方には、アンダーカバー102の下面側から上記バッテリ電源が挿入されて配置されるバッテリ電源収納部163(図2(a)参照)が備えられている。なお、バッテリ電源収納部163では、図示を省略するが、安定性や重心配置の観点から、上記バッテリ電源は横置きに収納されている。そして、上記制御基板170は、上記バッテリ電源収納部163に収納されたバッテリ電源から供給される電力を用いつつ、サーマルラインヘッド112及び上記駆動モータ等の制御を行う。なお、バッテリ電源は、この例ではリチウムイオン電池を備えている。
【0019】
<プリンタの概略動作>
上記構成において、印刷時には、PC端末や携帯電話等の上記外部機器より、プリンタ1に対し、無線通信(又は有線通信や赤外線通信でもよい)を介して、印刷データが送信される。また、上記駆動モータの駆動力に基づくプラテンローラ111の回転によってロール収納部161からロール紙Sが繰り出される。繰り出されたロール紙Sは、サーマルラインヘッド112とプラテンローラ111との間に挿通され、そのロール紙Sに対しサーマルラインヘッド112が上記印刷データに基づいた所望の態様の印刷を行う。印刷後のロール紙Sは、排出口107から筐体100の外部へと排出される。このとき、メインシャーシ部材150には、排出口107の内側において当該排出口107に沿うように固定歯160が取り付けられている。使用者は、上記のようにして印刷が完了し排出口107から排出されたロール紙Sの端部を、この固定歯160を用いて手動で切断することができる。
【0020】
<充電装置>
本実施形態では、上記バッテリ電源収納部163に収納されるバッテリ電源に対し、充電装置によって充電処理が行われる。このバッテリ電源としては、この例では、充電可能なリチウムイオン電池等の特定種類の複数の充電池をまとめて1パックとした、電池手段としての電池パックが用いられる。
【0021】
<充電装置の概略構成>
本実施形態の充電装置では、複数の上記電池パックに対し、同時に充電処理を行うことができる。すなわち、図3に示すように、本実施形態の充電装置200は、例えば4パックの電池パックB1,B2,B3,B4が個々に装着されるワンタッチホルダー式(落とし込みタイプ)の4つの装着部201a,201b,201c,201dを備えた充電装置本体204と、アダプタ202と、プラグ203と、を有している。充電装置本体204は、アダプタ202に接続され、またアダプタ202はプラグ203を介してコンセント(AC電源)に接続される。これにより、充電装置本体204の装着部201a,201b,201c,201dにそれぞれ装着されている各電池パックB1,B2,B3,B4に対し、いわゆる定電流方式による充電処理が行われる(詳細は後述)。
【0022】
<充電装置の電気的構成>
図4は、充電装置200の電気的構成を図4により説明する。図4において、充電装置200は、定電流回路15(定電流生成手段)と、定電圧回路16と、メインスイッチSW0と、CPU12と、電圧検出部13と、装着検出部14と、4つの電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4と、検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdと、上記装着部201a,201b,201c,201dと、を有している。なお、図示の煩雑を避けるため、便宜上、各装着部201a,201b,201c,201dには1つの電池シンボルのみをそれぞれ記載している(後述の図9、図10も同様)。
【0023】
定電流回路15及び定電圧回路16は、上記コンセント(AC電源)等からなる電源11に対し、互いに並列に接続されている。これら定電流回路15及び定電圧回路16は、CPU12によって切り替えられる上記メインスイッチSW0によって、選択的に上記電源11に接続される。定電流回路15は、上記電源11から供給される電力に基づき、所定の充電電流値の定電流を生成する。定電圧回路16は、上記電源11から供給される電力に基づき、所定の定電圧を生成する。
【0024】
装着部201a,201b,201c,201dは、それぞれ、充電用端子(図示せず)を備えている。各充電用端子は、上記電池パックB1〜B4が各装着部201a〜201dへ装着されたときに各電池パックB1〜B4の端子に導通する。なお、以下適宜、電池パックB1、B2,B3,B4を互いに特に区別しない場合は単に「電池パックB」と称する。同様に、装着部201a,201b,201c,201dを特に区別しない場合は単に「装着部201」と称する。各装着部201a,201b,201c,201dには、押圧式の上記検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdが設けられている。各検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdの一方側は装着検出部14に接続されるとともに他方側は接地されている。そして、各装着部201a〜201dに電池パックB1〜B4が装着されると検出スイッチSWa〜dが導通状態となり、電池パックB1〜B4が取り外されると非導通状態となる。装着検出部14は、この状態の変化によって装着部201a〜dに対する電池パックB1〜B4の装着又は取り外しを検出し、対応する検出信号を上記CPU12に入力する。
【0025】
また、各電池パックB1,B2,B3,B4には、図示しないクーロンメータ(残容量情報検出手段)が備えられている。それぞれのクーロンメータが公知の手法により検出した各電池パックB1,B2,B3,B4の残容量情報は、装着部201a,201b,201c,201dへの装着時に、図示しない適宜の信号経路を介し、上記装着検出部14によって取得される。なお、クーロンメータを使用する代わりに、公知の手法により各電池パックB1,B2,B3,B4に所定量の放電を実行させ、その際の電圧降下量によって各電池パックB1,B2,B3,B4の残容量情報を取得しても良い。
【0026】
電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、メインスイッチSW0に接続され、定電流回路15又は定電圧回路16から供給された電流を、各装着部201a〜dの上記充電用端子を介して各電池パックB1〜B4へ供給する。その際、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、それぞれCPU12の制御信号によりON・OFF作動し、定電流回路15で生成された定電流を、予め設定された分配比に応じて各電池パックB1,B2,B3,B4に分配供給する。具体的には、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、CPU2012の制御に基づき、通電する時間比率によって各電池パックB1,B2,B3,B4に電流を分配供給する、デューティ制御を行う(詳細は後述)。
【0027】
電圧検出部13は、各装着部201a,201b,201c,201dに供給される電流の電圧値を検出可能であり、対応する検出信号を上記CPU12の所定の入力ポートに入力する。
【0028】
<制御手順>
次に、CPU12により実行される制御手順を図5により説明する。例えば、前述したように、図3に示すアダプタ202がプラグ203を介してコンセント(AC電源)に接続されたとき(図4で示す電源11がON状態となったとき)に、図5に示すフローが開始される。
【0029】
図5において、まず、ステップS10において、CPU12は、検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdを介した装着検出部14での検出結果に基づき、装着部201a,201b,201c,201dのいずれかに対し、新たに装着された電池パックB1,B2,B3,B4があるかどうかを判定する。
【0030】
新たに装着された電池パックB1,B2,B3,B4が無い場合にはステップS10の判定が満たされず(ステップS10:NO)、判定が満たされるまでループ待機する。一方、新たに装着された電池パックB1,B2,B3,B4があった場合には、ステップS10の判定が満たされ(ステップS10:YES)、ステップS20に移行する。
【0031】
ステップS20では、CPU12は、前述したようにクーロンメータから装着検出部14に入力された、この時点で装着されているn個(上記図4の例では4個)の電池パックB1,B2,B3,B4それぞれの残容量を取得する。なお、この残容量とは、各電池パックB1〜B4それぞれにおいて、全容量から、未充電容量を差し引いたものである。これら取得された各電池パックB1〜B4の残容量は、適宜の箇所(例えば制御基板170に別途設けたメモリ等)に記憶される。なお、このステップS20が各請求項記載の残容量情報取得手段として機能する。その後、ステップS30に移行する。
【0032】
ステップS30では、CPU12は、上記ステップS20で取得されたn個の電池パック全ての残容量取得情報に基づき、分配比k1,k2,・・・、knを設定する。上記の例ではn=4であることから、電池パックB1〜B4についての分配比k1,k2,k3,k4が設定される。詳細には、上記残容量情報の取得結果に応じ、残容量が比較的多い電池パックB1,B2,B3,B4に対しては供給電流値は小さい値となり、残容量が比較的少ない電池パックB1,B2,B3,B4に対しては供給電流値は大きい値となるように、分配比k1,k2,k3,k4の設定が行われる。
【0033】
例えば、満充電状態を残容量100%としたとき、電池パックB1の残容量70%(すなわち未充電容量30%)であり、電池パックB2の残容量50%(未充電容量50%)であり、電池パックB3の残容量40%(未充電容量60%)であり、電池パックB4の残容量30%(未充電容量70%)であった場合を考える。この場合、この例では、各電池パックB1〜B4の未充電容量を基準として、それら全部の電池パックB1〜B4の未充電容量合計に占める各電池パックの未充電容量の比率によって、分配比が決定される。すなわち、
電池パックB1(未充電容量30%)の分配比k1は、
k1=(30)/(30+50+60+70)
=3/21
電池パックB2(未充電容量50%)の分配比k2は、
k2=(50)/(30+50+60+70)
=5/21
電池パックB3(未充電容量60%)の分配比k3は、
k4=(60)/(30+50+60+70)
=6/21
電池パックB4(未充電容量70%)の分配比k4は、
k4=(70)/(30+50+60+70)
=7/21
に設定される。このステップS30が各請求項記載の分配比設定手段として機能する。その後、ステップS40に移行する。
【0034】
ステップS40では、CPU12は、メインスイッチSW0を定電流回路15側へ切り替える(既に定電流回路15側へ切り替えられている場合はそのままとする)。その後、ステップS50に移行する。
【0035】
ステップS50では、CPU12は、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4を作動させ、上記ステップS40で設定した各分配比k1、k2、・・・、knに応じた定電流により、n個の電池パックを同時並行して充電する。この例では上記のようにn=4であり、特定種類の充電池(この例ではリチウムイオン電池)に対して予め定められた公知の充電電流値Imaxに対し上記分配比k1、k2、・・・、knを乗じた電流値が、各電池パックB1〜B4にそれぞれ供給される。すなわち、
電池パックB1(分配比k1)に対しては、
k1×Imax
=3/21×Imax
電池パックB2(分配比k2)に対しては、
k2×Imax
=5/21×Imax
電池パックB3(分配比k3)に対しては、
k3×Imax
=6/21×Imax
電池パックB4(分配比k4)に対しては、
k4×Imax
=7/21×Imax
の電流値が供給される。
【0036】
具体的には、前述の通電時間の比率設定によるデューティ制御が行われる。すなわち、ある時間周期ごとの、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4それぞれの導通時間(通電時間)の時間比率が、互いに3:5:6:7となるように、制御される。図6には、1[sec]周期の間に上記時間比率を実現した例を示しており、この例では、CPU12からの制御信号により、上記1秒周期のうち、電流制御スイッチSW1の導通時間が3/21[sec]となり、電流制御スイッチSW2の導通時間が5/21[sec]となり、電流制御スイッチSW3の導通時間が6/21[sec]となり、電流制御スイッチSW4の導通時間が7/21[sec]となるように、CPU12による各スイッチのON・OFF制御が実行される。これにより、各収納部201a,201b,201c,201dそれぞれに収納された電池パックB1,B2,B3,B4に対し、上記分配比k1,k2,k3,k4に応じた電流値が分配供給される。
【0037】
なお、上記のような上記電流制御スイッチSW1〜SW4における時間比率を用いたデューティ制御に代えて、例えば公知のパルス幅変調(PWM)等、他の適宜の手法(アナログ制御・デジタル制御を問わない)により、上記分配比k1,k2,k3,k4に応じた電流値の分配供給を行うようにしてもよい。
【0038】
なお、上記ステップS50が各請求項記載の電流制限手段として機能するとともに、電流制御手段としても機能する。ステップS50が完了すると、ステップS60へ移行する。
【0039】
ステップS60では、CPU12は、上記ステップS10と同様、検出スイッチSWa〜SWdを介した装着検出部14での検出結果に基づき、各装着部201a,201b,201c,201d・・・のいずれかに対し、電池パックB1,B2,B3,B4・・・の新たな装着若しくは取り外しがあったかどうかを判定する。
【0040】
新たに装着された若しくは取り外された電池パックB1,B2,B3,B4・・・があった場合には、ステップS60の判定が満たされ(ステップS60:YES)、ステップS20に戻って同様の手順を繰り返す。一方、新たに装着された若しくは取り外された電池パックB1,B2,B3,B4・・・が無い場合にはステップS60の判定が満たされず(ステップS60:NO)、ステップS70に移行する。なお、このステップS60と、前述のステップS10とが、各請求項記載の着脱検出手段として機能する。
【0041】
ステップS70においては、上記電圧検出部13の検出結果に基づき、CPU12は、電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値すべてが終止電圧に達したかどうかを判定する。この終止電圧とは、予め各電池の種類ごとに設定されている公知の値である。すなわち、一般に、定電流充電の実行時において、当該終止電圧までの到達をもって定電流充電が終了され、それ以降は定電圧充電が実行される。本実施形態でもこのような一般的な終止電圧の値がこのステップS70において使用される。電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値が終止電圧に達していなければステップS70の判定が満たされず(ステップS70:NO)、ステップS50に戻って同様の手順を繰り返す。一方、電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値すべてが終止電圧に達したらステップS70の判定が満たされ(ステップS70:YES)ステップS80に移行する。
【0042】
ステップS80では、CPU12は、メインスイッチSW0を定電圧回路16側へ切り替える。これにより、電流制御スイッチSW1,SW2,SW3,SW4がそれぞれ定電圧回路16に接続される。その後、ステップS90に移る。
【0043】
ステップS90では、CPU12は、電池パックB1,B2,B3,B4,・・・の電圧値すべてが上記終止電圧に達していることを受けて、公知の手法と同様、予め定められた所定時間だけ、電池パックB1〜B4に対し定電圧充電を行った後、このフローを終了する。
【0044】
以上説明した本実施形態の充電装置200の作用効果を図7及び図8を用いて説明する。
【0045】
<比較例>
図7に、本実施形態の比較例を示す。説明の便宜上、上記実施形態の充電装置200と同等の部分には同一の符号を付している。この比較例では、4つの装着部201a,201b,201c,201dそれぞれに4つの電池パックB1,B2,B3,B4が装着されている。そして、各装着部201a〜201dに装着された電池パックB1〜B4に対し、順番に1つの電池パックごとに(この例では電池パックB1→電池パックB2→電池パックB3→電池パックB4の順で)、上記最大電流値Imaxが供給されることで各電池パックにおける最速充電が実行される。
【0046】
図7には、装着部201aに装着された電池パックB1に対し上記電柱値Imaxによる定電流充電が行われ、残容量が70%(すなわち未充電容量が30%)となった状態を示している。このとき、上述のように残りの装着部201b,201c,201dにそれぞれ装着された電池パックB2,B3,B4に対しては充電は全く行われておらず、電池パックB2の残容量は50%(未充電容量50%)、電池パックB3の残容量は40%(未充電容量60%)、電池パックB4の残容量は30%(未充電容量70%)で、それぞれ「充電待ち」の状態となっている。
【0047】
このような1つの電池パックごとに順次最速充電していく手法では、以下のような欠点がある。すなわち、4個の電池パックB1〜B4をまとめて同時に使用したい使用者にとっては、(それまでに電池パックB1〜B3の充電が完了していたとしても)4個目の電池パックB4の充電が完了するまで待たねばならず、使い勝手が悪い。また、各電池パックB1〜B4それぞれに対し、最大電流値Imaxにより充電しているので、電池寿命に悪影響を与える。また、充電途中において電池パックが取り外されたり追加されたりした場合に特に配慮されていない。
【0048】
<実施形態の効果>
上記比較例と対比させた本実施形態の手法を図8に示す。本実施形態では、既に述べたように、各装着部201a,201b,201c,201dに装着された電池パックB1,B2,B3,B4それぞれの残容量に応じた分配比(この例では前述したように3/21、5/21、6/21、7/21)により、各電池パックB1,B2,B3,B4に対し、それら分配比に応じた電流値(すなわち3/21×Imax、5/21×Imax、6/21×Imax、7/21×Imax)を分配供給し、同時並行して充電を行う。これにより、残容量が比較的多い(未充電容量が比較的少ない)電池パックに対しては比較的少ない電流が供給されるとともに、残容量が比較的少ない(未充電容量が比較的多い)電池パックに対しては比較的多くの電流が供給される(図中、各電池パックB1〜B4の破線矢印参照)。この結果、残容量の多少に応じ、電池パックB1,B2,B3,B4すべてをほぼ同時に略満充電状態とすることができる。この結果、上記の電池パックB1,B2,B3,B4を同時に機器に装着して使用したい使用者にとって、特に利便性が高い。
【0049】
また、上記のようにして定電流回路15で生成された上記最大電流値Imaxを前述の分配比に応じて電池パックB1,B2,B3,B4に分配供給することにより、各電池パックB1,B2,B3,B4に供給される電流値は、上記最大電流値Imaxよりも必ず小さくなる。この結果、上記最大電流値Imaxそのものを各電池パックB1,B2,B3,B4に順次供給して急速充電する上記比較例の手法に比べ、電池の劣化を抑制して耐久性を向上することができる。
【0050】
また、上記比較例と異なり、充電途中において電池パックが取り外されたり追加されたりした場合も対応可能である。すなわち、少なくとも1つの装着部201a〜201dに対する電池パックB1〜B4の新たな装着が検出されたか、若しくは、新たな取り外しが検出されたときには、当該新たな装着又は新たな取り外しに応じてその時点で装着部201に装着されているすべての電池パックBの残容量が新たに取得される(ステップS20参照)。そして、その新たに取得された取得結果に応じて、ステップS30で新たに分配比が設定され、その新たに設定された分配比に応じた電流値が、各電池パックBへと分配供給される(ステップS50参照)。これにより、新規に複数の電池パックBが装着部201に装着されたときのみならず、充電中に一部の電池パックBが装着部201から取り外されたり、別の電池パックBがさらに追加して装着部201に装着された場合であっても、その取り外し後又は追加装着後の状態に応じて再度分配比が設定し直されて、対応して充電を行うことができる。この結果、さらに使用者の利便性を向上することができる。また、例えば、使用を急ぎたい使用者が、満充電にはなっていないがある程度の時間まで充電された時点で全電池パックB1〜B4を取り外したとき、上記比較例では充電の順番が最後である電池パックB4はほとんど充電されていない(残容量がきわめて少ない)可能性が高い。これに対して本実施形態では、上記のように全電池パックB1〜B4が同時並行して充電されているので、上記のように充電途中で全電池パックB1〜B4を取り外したときでも、電池パックB1〜B4のすべてがある程度充電された状態となる。したがって、上記のような使用者にとって特に使い勝手がよい。
【0051】
また、本実施形態では特に、各電池パックB1,B2,B3,B4・・・に設けられたクーロンメータが検出した残容量情報を、装着部201a,201b,201c,201d・・・への装着時に取得する(ステップS20参照)。このように、電池パックB1,B2,B3,B4・・・側で検出した残容量情報を取得して用いることにより、充電装置側に特に残容量情報の検出手段を設けなくても、充電装置が各電池パックB1,B2,B3,B4・・・の残容量を認識することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、その変形例について、順を追って説明する。なお、上記実施形態と同等の部分については同一の符号を付し、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0053】
(1)サーミスタを用いて着脱検出を行う場合
本変形例の電気的構成を図9に示す。図9に示すように、本変形例では、各電池パックB1,B2,B3,B4の装着又は取り外しを検出するために、上記実施形態における検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdに代えて、サーミスタTM1,TM2,TM3,TM4が各装着部201a,201b,201c,201dに対し設けられる。サーミスタTM1,TM2,TM3,TM4の一方側は温度検出部17に接続され、他方側は接地されている。そして、各装着部201a〜201dに電池パックB1〜B4が装着されるとその際の温度上昇によりサーミスタTM1〜TM4が作動する。温度検出部17は、その作動によって装着部201a〜dに対する電池パックB1〜B4の装着又は取り外しを検出し、対応する検出信号を上記CPU12に入力する。なお、この場合も、上記温度検出部17からの検出結果を入力する図5のフローの上記ステップS60とステップS10とが、本変形例における着脱検出手段として機能する。
【0054】
上記した、電池パックB1〜B4の着脱検出以外の部分は上記実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0055】
(2)電圧の変化によって着脱検出を行う場合
本変形例の電気的構成を図10に示す。図10に示すように、本変形例では、上記実施形態における上記検出スイッチSWa,SWb,SWc,SWdが省略される。そして、電圧検出部10が、装着部201a〜201dに電池パックB1〜B4が装着されたときの通電による電圧変化によって装着部201a〜dに対する電池パックB1〜B4の装着又は取り外しを検出し、対応する検出信号を上記CPU12に入力する。なお、この場合も、上記電圧検出部10からの検出結果を入力する図5のフローの上記ステップS60とステップS10とが、本変形例における着脱検出手段として機能する。なお、その際、既に述べたように、各電池パックB1,B2,B3,B4に対し公知の手法で所定量放電させて電圧降下を検出し、各電池パックB1〜B4の残容量を併せて取得するようにしてもよい。
【0056】
上記した、電池パックB1〜B4の着脱検出以外の部分は上記実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0057】
なお、以上においては、電池手段として、複数本の充電池をまとめた電池パックを例にとって説明したが、これに限られず、1本の電池を電池手段として適用してもよい。この場合も、上記同様、複数本の電池それぞれに電流の分配供給を行ってそれらを略同一に満充電とすることができ、各電池の寿命向上を図ることができる。
【0058】
また、以上においては、プリンタ1に使用されるバッテリ電源の充電装置として本発明を適用したが、これに限られない。すなわち、充電式のバッテリ電源を用いる電子機器であれば印刷装置以外の機器に対しても本発明を適用することができ、当該電子機器に使用されるバッテリ電源に対し本願発明の充電装置で充電処理を行うことで、上記同様の効果を得る。
【0059】
なお、以上において、図4、図9、図10に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0060】
また、図5に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0061】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0062】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 プリンタ(印刷装置)
13 電圧検出部
14 装着検出部
15 定電流回路(定電流生成手段)
111 プラテンローラ(搬送手段)
112 サーマルラインヘッド(印字手段)
200 充電装置
201a〜d 装着部
B1〜4 電池パック(電池手段)
Imax 充電電流値
k1〜4 分配比
S ロール紙(被印字媒体)
SW1〜4 電流制御スイッチ
SWa〜d 検出スイッチ
TM1〜4 サーミスタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定種類の複数の電池手段をそれぞれ装着する複数の装着部と、
前記複数の装着部に装着された前記複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する残容量情報取得手段と、
前記特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値を前記複数の電池手段それぞれに分配するための分配比を、前記残容量情報取得手段での取得結果に応じて設定する、分配比設定手段と、
前記複数の装着部それぞれに装着された各電池手段に対し、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて前記所定の充電電流値を分配供給して充電を行う電流制御手段と
を有することを特徴とする充電装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電装置において、
前記分配比設定手段は、
前記残容量情報取得手段での取得結果に応じ、残容量が比較的多い前記電池手段に対しては小さい値となり、残容量が比較的少ない電池手段に対しては大きい値となるように、前記分配比の設定を行う
ことを特徴とする充電装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の充電装置において、
前記所定の充電電流値の定電流を生成する定電流生成手段を有し、
前記電流制御手段は、
前記定電流生成手段で生成された定電流を、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて通電する時間比率によって各電池手段に分配供給する電流制限手段であることを特徴とする充電装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の充電装置において、
前記残容量情報取得手段は、
各電池手段に設けられた残容量情報検出手段が検出した前記残容量情報を、前記装着部への装着時に取得する
ことを特徴とする充電装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の充電装置において、
前記複数の装着部それぞれに対する前記電池手段の装着又は取り外しを検出する着脱検出手段を有し、
前記残容量情報取得手段は、
前記着脱検出手段によって、少なくとも1つの前記装着部に対する前記電池手段の新たな装着が検出されたか、若しくは、少なくとも1つの前記装着部からの前記電池手段の新たな取り外しが検出されたときに、当該新たな装着又は新たな取り外しに応じて前記複数の電池手段それぞれの残容量情報を新たに取得し、
前記分配比設定手段は、
前記新たに取得された取得結果に応じて、前記分配比を新たに設定し、
前記電流制御手段は、
前記新たに設定された分配比に応じた電流値の電流を供給して、前記充電を行う
ことを特徴とする充電装置。
【請求項6】
特定種類の電池手段を装着し、その装着された電池手段の電力により動作する印刷装置と、前記特定種類の電池手段を充電可能な充電装置と、を有する印刷システムであって、
前記印刷装置は、
前記電力により駆動され、被印字媒体を搬送する搬送手段と、
前記電力により駆動され、前記被印字媒体に所望の印字を行う印字手段と、
を有し、
前記充電装置は、
複数の前記特定種類の電池手段をそれぞれ装着する複数の装着部と、
前記複数の装着部に装着された前記複数の電池手段それぞれの残容量情報と、
前記特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値を前記複数の電池手段それぞれに分配するための分配比を、前記残容量情報取得手段での取得結果に応じて設定する、分配比設定手段と、
前記複数の装着部それぞれに装着された各電池手段に対し、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて前記所定の充電電流値を分配供給して充電を行う電流制御手段と
を有することを特徴とする印刷システム。
【請求項1】
特定種類の複数の電池手段をそれぞれ装着する複数の装着部と、
前記複数の装着部に装着された前記複数の電池手段それぞれの残容量情報を取得する残容量情報取得手段と、
前記特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値を前記複数の電池手段それぞれに分配するための分配比を、前記残容量情報取得手段での取得結果に応じて設定する、分配比設定手段と、
前記複数の装着部それぞれに装着された各電池手段に対し、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて前記所定の充電電流値を分配供給して充電を行う電流制御手段と
を有することを特徴とする充電装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電装置において、
前記分配比設定手段は、
前記残容量情報取得手段での取得結果に応じ、残容量が比較的多い前記電池手段に対しては小さい値となり、残容量が比較的少ない電池手段に対しては大きい値となるように、前記分配比の設定を行う
ことを特徴とする充電装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の充電装置において、
前記所定の充電電流値の定電流を生成する定電流生成手段を有し、
前記電流制御手段は、
前記定電流生成手段で生成された定電流を、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて通電する時間比率によって各電池手段に分配供給する電流制限手段であることを特徴とする充電装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の充電装置において、
前記残容量情報取得手段は、
各電池手段に設けられた残容量情報検出手段が検出した前記残容量情報を、前記装着部への装着時に取得する
ことを特徴とする充電装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の充電装置において、
前記複数の装着部それぞれに対する前記電池手段の装着又は取り外しを検出する着脱検出手段を有し、
前記残容量情報取得手段は、
前記着脱検出手段によって、少なくとも1つの前記装着部に対する前記電池手段の新たな装着が検出されたか、若しくは、少なくとも1つの前記装着部からの前記電池手段の新たな取り外しが検出されたときに、当該新たな装着又は新たな取り外しに応じて前記複数の電池手段それぞれの残容量情報を新たに取得し、
前記分配比設定手段は、
前記新たに取得された取得結果に応じて、前記分配比を新たに設定し、
前記電流制御手段は、
前記新たに設定された分配比に応じた電流値の電流を供給して、前記充電を行う
ことを特徴とする充電装置。
【請求項6】
特定種類の電池手段を装着し、その装着された電池手段の電力により動作する印刷装置と、前記特定種類の電池手段を充電可能な充電装置と、を有する印刷システムであって、
前記印刷装置は、
前記電力により駆動され、被印字媒体を搬送する搬送手段と、
前記電力により駆動され、前記被印字媒体に所望の印字を行う印字手段と、
を有し、
前記充電装置は、
複数の前記特定種類の電池手段をそれぞれ装着する複数の装着部と、
前記複数の装着部に装着された前記複数の電池手段それぞれの残容量情報と、
前記特定種類に対して予め定められた所定の充電電流値を前記複数の電池手段それぞれに分配するための分配比を、前記残容量情報取得手段での取得結果に応じて設定する、分配比設定手段と、
前記複数の装着部それぞれに装着された各電池手段に対し、前記分配比設定手段で設定された前記分配比に応じて前記所定の充電電流値を分配供給して充電を行う電流制御手段と
を有することを特徴とする印刷システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−74662(P2013−74662A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210375(P2011−210375)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]