説明

光双方向通信モジュール及び光双方向通信装置

【課題】製造コストを削減すると共に、歩留まりを向上させることができる光双方向通信モジュール及び光双方向通信装置を提供する。
【解決手段】光双方向通信モジュール10は、発光素子14と、受光素子16と、入出力ポート22Aから入力された光を波長分割フィルタ部22Dで波長分割して受光素子16へ導波すると共に、発光素子14からの光を波長分割フィルタ部22Dで波長分割して入出力ポート22Aへ導波するシリコンから成る光導波路22と、が同一基板に集積されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光双方向通信モジュール及び光双方向通信装置に係り、同一基板上に発光素子、受光素子、及び光導波路が集積された光双方向通信モジュール及び光双方向通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1本の光ファイバを接続して光による双方向通信が可能な通信モジュールとして、例えば特許文献1に記載されたような通信モジュールがある。
【0003】
この特許文献1に記載されたモジュールでは、送信部である半導体レーザモジュールと、受信部であるフォトダイオードと、をそれぞれ別のパッケージに収め、さらに、光ファイバからの受信光をフォトダイオードで受光できるように受信光の波長の光をフォトダイオード側へ反射すると共に、送信部からの送信光が光ファイバへ入射されるように送信光の波長の光を透過させるバンドパスフィルタを設け、前記パッケージ及びフィルタを一つにまとめている。
【0004】
また、特許文献2には、半導体レーザ、フォトダイオード、及びバンドパスフィルタを平面基板上に集積化することにより小型化及び製造コストの低下が可能な通信モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−206678号公報
【特許文献2】特開平11−68705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、送信部及び受信部が別パッケージになっているため、小型化が非常に困難であると共に、各々の光部品を駆動調整しながら作製するため、製造工程が増加してコストがかかる、という問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術では、平面基板をダイシング加工して溝を形成し、この溝にバンドパスフィルタを挿入して接着剤で固定するため、歩留まりが悪化すると共に、コストがかかる、という問題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために提案されたものであり、製造コストを削減すると共に、歩留まりを向上させることができる光双方向通信モジュール及び光双方向通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の光双方向通信モジュールは、発光素子と、受光素子と、入力ポートから入力された光を波長分割して前記受光素子へ導波すると共に、前記発光素子からの光を波長分割して出力ポートへ導波するシリコン導波路と、が同一基板に集積されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記発光素子から発光された光の進行方向における前記発光素子の位置と、前記光の進行方向における前記受光素子の位置とが一致しないように、前記発光素子及び前記受光素子が前記基板上に搭載されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記発光素子が、前記基板の一部が削られた領域に搭載されると共に、前記基板の厚み方向における前記発光素子の発光部の位置と、前記基板の厚み方向における前記受光素子の位置とが一致しないように、前記発光素子及び前記受光素子が前記基板上に搭載されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記入力ポートと前記出力ポートとが兼用されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記発光素子が、端面発光型の発光素子であり、前記シリコン導波路と前記発光素子とが前記基板の端面で光結合することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、前記シリコン導波路の前記受光素子側の端部が、回折格子として機能する形状で構成され、前記受光素子が、前記回折格子の上部に搭載されたことを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、前記発光素子及び前記受光素子の少なくとも一つの素子を実装する際の目印であるアライメントマークが前記シリコン導波路と同一材料で形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明の光双方向通信装置は、請求項1〜7の何れか1項に記載の光双方向通信モジュールと、前記発光素子を駆動する駆動手段と、前記受光素子で受光した光の電気信号を増幅する増幅手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造コストを削減すると共に、歩留まりを向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光双方向通信モジュールの平面図である。
【図2】光双方向通信モジュールの発光素子が搭載された領域の一部拡大図である。
【図3】(A)は、光双方向通信モジュールの受光素子が搭載された領域の一部断面図であり、(B)は、光双方向通信モジュールの受光素子が搭載された領域の一部平面図である。
【図4】(A)は、変形例に係る光双方向通信モジュールの受光素子が搭載された領域の一部断面図であり、(B)は、変形例に係る光双方向通信モジュールの受光素子が搭載された領域の一部平面図である。図である。
【図5】光双方向通信モジュールの発光素子が搭載された領域の一部断面図である。
【図6】変形例に係る光双方向通信モジュールの発光素子が搭載された領域の一部断面図である。
【図7】光双方向通信装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る光双方向通信モジュール10の平面図を示した。同図に示すように、光双方向通信モジュール10は、光学基板12に発光素子14及び受光素子16が実装された構成である。光双方向通信モジュール10には、一例として光ファイバ18が接続される。
【0021】
光学基板12には、シリコン(Si)導波路としての光導波路22が形成されている。光導波路22は、光ファイバ18が光双方向通信モジュール10に接続されることによって光ファイバ18と光学的に結合される。
【0022】
図1に示すように、光導波路22の光ファイバ18が接続される側の端部には、入出力ポート22Aが形成されており、その端部より手前の光導波路よりも若干幅が太くなっている。同様に、光導波路22の発光素子14が接続される側の端部は、入力ポート22Bが形成されており、その端部の手前の光導波路よりも幅が太くなっている。
【0023】
また、光導波路22の受光素子16が接続される側の端部は、出力ポート22Cが形成されており、この出力ポート22Cは、所謂グレーティング(回折格子)を構成している。
【0024】
出力ポート22Cは、図3(B)に示すように、徐々にシリコンの幅が拡がっていくテーパー形状となっており、かつ、その先が同図(A)、(B)に示すように、グレーティング、すなわち回折格子として機能するように、複数の直線状のシリコンがスリット状に形成されている。なお、本実施形態では、複数のシリコンが直線状の場合を示したが、これに限らず、シリコンの形状はこれに限られるものではない。回折格子として機能するものであれば、例えば複数の弓状のシリコンがスリット状に形成された構成としてもよい。また、スリット状ではなく、例えば図4(A)、(B)に示すように、複数の直線状のシリコンの底面側が繋がった形状でもよい。
【0025】
光導波路22は、発光素子14からの光を入出力ポート22Aまで導波すると共に、入出力ポート22Aに接続された光ファイバ18から入射された光を受光素子16まで導波する。
【0026】
光導波路22の中央部は、波長分割フィルタ部22Dを構成している。この波長分割フィルタ部22Dは、本実施形態では、一例として4段の所謂マッハツェンダー干渉計を構成している。この波長分割フィルタ部22Dは、発光素子14が発光した波長の光を入出力ポート22A側へのみ導波すると共に、入出力ポート22Aに入射された波長の光を受光素子16側へのみ導波する。
【0027】
なお、本実施形態では、波長分割フィルタ部22Dとして4段のマッハツェンダー干渉計を用いた場合について説明したが、これに限らず、Y分岐導波路や、アレイ導波路(AWG:Arrayed Waveguide Grating)型回折格子を用いた波長合分波器を用いてもよい。
【0028】
また、図1に示すように、光学基板12の発光素子14の搭載位置近傍には、発光素子14を表面実装する際の位置決め用のマークとして、2個の正方形状のアライメントマーク24が形成されている(図2も参照)。
【0029】
同様に、光学基板12の受光素子16の搭載位置近傍には、受光素子16を表面実装する際の位置決め用のマークとして、2個の正方形状のアライメントマーク26が形成されている。なお、各アライメントマークの個数は2個に限られるものではなく、形状も正方形状に限られるものではない。
【0030】
また、図1において、光学基板12の右下の角部は、発光素子14を搭載するための領域として一部が削られている。発光素子14は、本実施形態では、一例として端面発光型の半導体レーザであり、図5に示すように、その発光部14Aと入力ポート22Bとが光学的に結合するような位置に発光素子14が搭載される。
【0031】
このように、発光素子14は、受光素子16よりも低い位置に搭載され、また、発光素子14の発光部14Aの位置は、受光素子16が搭載される面よりも低くなっている。これにより、発光素子14からの漏れ光が受光素子16により受光されるのを防止することができる。
【0032】
さらに、図1に示すように、発光素子14から発光された光の進行方向である矢印A方向における位置が、受光素子16の矢印A方向における位置と図1において左側にずれている。これにより、発光素子14からの漏れ光が受光素子16により受光されるのをより効果的に防止することができる。
【0033】
光学基板12は、シリコン酸化膜(SiO)がシリコン(Si)により挟まれた所謂SOI(Silicon On Insulator)基板をもとにして作製される。
【0034】
シリコンから成る光導波路22及びアライメントマーク24、26は、公知のフォトリソグラフィと同様の方法により形成する。具体的には、SOI基板にフォトレジストを塗布し、光導波路22及びアライメントマーク24、26を形成すべき領域を露光して、露光されていない領域のフォトレジストを除去してエッチングする。これにより、光導波路22及びアライメントマーク24、26を形成すべき領域のみにシリコンを形成し、そのシリコン上の余分なフォトレジストを除去する。そして、その上にシリコン酸化膜を形成することにより、光導波路22が形成される。その後、光学基板12の右下の角部を所望の深さまでエッチングすることにより、発光素子14を搭載する領域を形成する。なお、エッチングする深さは、一例として4μmである。
【0035】
なお、シリコン酸化膜は透光性を有するので、その上からアライメントマーク24、26を認識することができる。
【0036】
このように光学基板12は作製されるので、光導波路22は、図3(A)、図5に示すように、SOI基板のシリコン30上に、シリコンと屈折率の異なるシリコン酸化膜32で覆われるように形成される。これにより、シリコンから成る光導波路22を光が伝搬する。
【0037】
ところで、シリコンの屈折率は3.54程度であり、シリコン酸化膜の屈折率は1.47程度であり、空気との屈折率差が大きいことから、損失が大きくなる場合がある。そこで、入出力ポート22A及び入力ポート22Bを二重コア構成としてもよい。具体的には、例えば図6に示すように、シリコンから成る入力ポート22Bを先細り形状にし、その先細り部分を屈折率が2.0程度のシリコン窒化膜(SiN)34で覆った構成とする。これにより、屈折率を徐々に変化させることができ、光の損失を抑制することができる。
【0038】
図7には、上記の光双方向通信モジュール10を用いた光双方向通信装置40の一例を示した。光双方向通信装置40は、光双方向通信モジュール10と、光双方向通信モジュール10の発光素子14を駆動する駆動装置42と、光双方向通信モジュール10の受光素子16で受光した光の電気信号を増幅するTIA(トランスインピーダンスアンプ)44と、を備えている。このような光双方向通信装置40は、光通信を行う様々な装置、例えば光通信を行うネットワークに接続される通信機器等に適用可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る光双方向通信モジュール10は、波長分割フィルタ部を含む光導波路22をシリコン導波路で構成し、発光素子14及び受光素子16と共に同一基板上に集積した構成としているので、部品搭載の工程及び部品コストを削減することができると共に、歩留まりを向上させることができる。また、発光素子14及び受光素子16をアライメントマーク24、26に従って表面実装することにより、光学部品の調芯工程を削減することができるため、製造コストを削減することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 光双方向通信モジュール
12 光学基板
14 発光素子
14A 発光部
16 受光素子
18 光ファイバ
22 光導波路
22A 入出力ポート
22B 入力ポート
22C 出力ポート
22D 波長分割フィルタ部
24、26 アライメントマーク
30 シリコン
32 シリコン酸化膜
40 光双方向通信装置
42 駆動装置
44 TIA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
受光素子と、
入力ポートから入力された光を波長分割して前記受光素子へ導波すると共に、前記発光素子からの光を波長分割して出力ポートへ導波するシリコン導波路と、
が同一基板に集積された
光双方向通信モジュール。
【請求項2】
前記発光素子から発光された光の進行方向における前記発光素子の位置と、前記光の進行方向における前記受光素子の位置とが一致しないように、前記発光素子及び前記受光素子が前記基板上に搭載された
請求項1記載の光双方向通信モジュール。
【請求項3】
前記発光素子が、前記基板の一部が削られた領域に搭載されると共に、前記基板の厚み方向における前記発光素子の発光部の位置と、前記基板の厚み方向における前記受光素子の位置とが一致しないように、前記発光素子及び前記受光素子が前記基板上に搭載された
請求項1又は請求項2記載の光双方向通信モジュール。
【請求項4】
前記入力ポートと前記出力ポートとが兼用された
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の光双方向通信モジュール。
【請求項5】
前記発光素子が、端面発光型の発光素子であり、前記シリコン導波路と前記発光素子とが前記基板の端面で光結合する
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の光双方向通信モジュール。
【請求項6】
前記シリコン導波路の前記受光素子側の端部が、回折格子として機能する形状で構成され、前記受光素子が、前記回折格子の上部に搭載された
請求項1〜5の何れか1項に記載の光双方向通信モジュール。
【請求項7】
前記発光素子及び前記受光素子の少なくとも一つの素子を実装する際の目印であるアライメントマークが前記シリコン導波路と同一材料で形成された
請求項1〜6の何れか1項に記載の光双方向通信モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の光双方向通信モジュールと、
前記発光素子を駆動する駆動手段と、
前記受光素子で受光した光の電気信号を増幅する増幅手段と、
を備えた光双方向通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77133(P2011−77133A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224673(P2009−224673)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】