説明

光触媒装置

【目的】太陽光等が当たらない場所に適用でき、また、狭い場所にも適用可能なコンパクトで、消費電力が少なく、しかも、動作が確認できるように発光すること。
【構成】450nm程度の青色の光と波長360〜400nmの紫外線を主に放射するpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなる発光ダイオード3を基体1に配設し、発光ダイオード3を配設した箇所の反対側に、光半導体の薄膜からなる光触媒2を発光ダイオード3によって照射し、より広い光触媒2の反応表面を得るために基体1に凹凸または粗面を形成し、そこに光半導体の薄膜からなる光触媒2を担持した光触媒反応表面を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒による光触媒反応を利用した光触媒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化チタンTiO2に代表される光半導体の微粒子による光触媒作用、特にその強い酸化触媒作用に高い注目が集められている。
この光触媒作用は次のように一般に考えられている。即ち、二酸化チタン等の光半導性を有する粒子状物質をそのバンドキャップエネルギ以上の光(二酸化チタンの場合は400nm以下の光、即ち、紫外線)で照射すると、価電子帯の電子が光励起されて伝導帯に移り、伝導帯には自由電子が生成すると共に、価電子帯には正の電荷を帯びた粒子(正孔)が生成する。これらの正孔と電子とは半導体粒子内部を運動し、時間の経過と共に再結合して消滅するが、その粒子外部に空気または水、或いはそれらの正孔や電子よりもエネルギの低い空順位を有する化合物やイオンが存在すると、その粒子表面を通してそれらの正孔と電子が移動する。つまり、半導体粒子表面に移動した正孔は接触する化合物やイオンを直接酸化し、或いは活性酸素の1つである水酸基ラジカルを生成する。また、この酸化反応に対する電子による還元反応は主に酸素の還元であり、電子が付加された酸化性の高い酸素種が生成される。こうして、光半導体微粒子は光が照射されることによって酸化性の活性表面を形成し、有機化合物の分解等に触媒として作用する。(「季刊 化学総説『光が関わる触媒化学』No.23,1994)
【0003】
このような光半導体微粒子による酸化触媒作用は、光半導体の中でも二酸化チタンが特に高い。また、二酸化チタンは安定性や安全性にも優れている。そこで、この二酸化チタンの微粉末を薄膜として基体表面に担持して光触媒を形成し、紫外線照射時のその高い酸化力を有機化合物等の分解に利用した種々の応用が既に知られている。
その応用の最もよく知られた例は、海上に流出した原油の分解である。中空のガラスビーズの表面に、上記の二酸化チタンの薄膜からなる光触媒をコーティングによって担持させる。そして、このガラスビーズを原油が流出した海上に散布する。それによってガラスビーズの表面には原油が付着するが、この付着した原油は、その光触媒が太陽光中の紫外線によって活性化し、強い酸化触媒作用を発揮することによって、分解される。これは実際にはシャーレに水を入れて試験的になされたものであるが、太陽光の下で2週間または1カ月ほどで完全に原油を分解できることが報告されている。
【0004】
また、最近では、室内空気の脱臭または消臭、殺菌(抗菌)、タバコのヤニや油膜等の汚れの分解にもその応用が試みられている。具体的には、これらの例は窓ガラスや蛍光灯のガラスチューブ、或いはタイル等の表面に二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を形成したものであり、自然光または蛍光灯の光に含まれる紫外線を利用してその光触媒を活性化させ、それの酸化触媒反応によって接触するメルカプタン等の臭気化合物、或いはタバコのヤニ等の有機物を分解し、または、細菌等の微生物を死滅させまたはその増殖を抑えるものである。そして、これによる実際の効果も確認され、自動車や高層ビル等の窓ガラス、或いは衛生用のタイルは既に実用化段階に入っている。
更に、最近実用化された例として、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒をコップ等のガラス容器の表面に形成したものも知られている。これによれば、蛍光灯の光に含まれる微弱な紫外線によってもその光触媒が活性化されるため、水道水に含まれるカルキ臭を除去し、また、有機ハロゲン化合物、特に発ガン性物質のトリハロメタンを分解することができる。また、その光触媒は水のクラスタ(分子の集合体)を微細化する作用もあり、美味しい水ができる効果もある。
【0005】
その他の応用例は、実用化には至っていないが、産業用排水等の排水の浄化、窒素酸化物等の大気汚染物質の無害化または分解、更には医学的応用としての癌細胞の死滅除去等である。そして、これらの排水処理等の例では、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒をハニカムやセラミックスウール等の表面積の大きい基体に担持させると共に、光源としては強い太陽光、或いは強い紫外線蛍光ランプ(ブラックライト)が用いられている。
なお、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒において、その薄膜を形成する二酸化チタンの粒子径は、十分に小さいほど「量子サイズ効果」等によって光触媒作用が高いことが知られている。そのため、その薄膜は、二酸化チタンのコロイドを基体表面に塗布し焼成する等の方法によって、一般に0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下の膜厚の透明な薄膜として、またはそのような薄膜を多層化した薄膜として形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように二酸化チタン(TiO2)の薄膜からなる光触媒は、これに紫外線が照射されることによって高い酸化触媒作用を生じ、有機化合物等を分解させることができる。そのため、この光触媒を適当な基体表面に担持させることによって、前述のように、空気の脱臭または消臭、殺菌(抗菌)、タバコのヤニ等の防汚、或いは水の浄化等に有効に利用することができる。
【0007】
ただ、ここで問題となるのは、その二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を活性化し、それによって有機化合物等の分解等の触媒反応を生じさせるためには紫外線が必要であることである。そして、この紫外線源としては、従来では主に、太陽の自然光または蛍光灯の光に含まれる紫外線が利用されている。しかしながら、これらの光を利用することは新たな光源を必要としない利点はあるが、その光触媒による触媒反応系の適用場所等は自ずと限定されたものとなる。即ち、それらの光が当たらないかまたは十分には当たらない場所には光触媒を適用することはできず、光触媒を担持させる基体は、それらの光を十分に受けることができる窓ガラスや蛍光灯のカバー、またはそれらの光の下に置くことができるガラスコップ等に専ら限定される。また、光触媒の光触媒反応によって有機化合物等を完全に分解するためにはある程度の時間が必要であるが、夜間或いは消灯時にはその光触媒反応を生じさせることができない。
【0008】
そのため、光触媒による触媒反応を生じさせるための紫外線源としては紫外線蛍光ランプ(ブラックライト)の使用が考えられ、また、実際に従来においても、特に、試験等には紫外線蛍光ランプが使用されている。しかし、このような紫外線蛍光ランプは、それを設置するために比較的広い空間と場所とを要し、狭い空間等には設置することができない。また、それの電力消費量も、終日使用される場合にはかなり多いものとなる。したがって、紫外線蛍光ランプの場合も、それが放射する紫外線には人体に有害な遠紫外線が多く含まれることも合わせて、その具体的な適用場所等は限定されるものであった。
【0009】
ところで、発光ダイオード(LED)は小さな発光素子であり、パイロットランプ或いはインジケータ等として、種々の発光表示に利用されている。そしてこの発光ダイオードは、使用する光半導体の結晶体の種類等によって、赤や緑や青等の各種の有彩色を発光する。しかしながら、その発色光は一般にある程度のスペクトル範囲を有しており、例えば、窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体をpn接合して青色光を発光する発光ダイオードを形成した場合等、それの放射光には、近紫外領域の光、即ち紫外線も含まれる場合がある。そして、このような紫外線は発光表示等のためには不要なものであるため、一般には、ドーピング処理を適切に行う等によって極力除くように努められている。
【0010】
しかし、本発明者等は、発光ダイオードの放射光に含まれるこのような近紫外線が不要なものではなく、むしろ上記の二酸化チタンの薄膜からなる光触媒の活性化に有効に利用できること、そして、そのような発光ダイオードを使用することによって、脱臭等の優れた効果を発揮するその光触媒の活用を更に拡大できることを見出だした。
【0011】
そこで、本発明は、太陽光等が当たらない場所にも適用することができ、また、狭い場所等にも適用可能なコンパクトな構造に形成することができ、更に、消費電力が少なく、しかも有彩色に発光する光触媒装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1にかかる光触媒装置は、光半導体の薄膜からなる光触媒を照射可能に配置され、450nm程度の青色の光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射するpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなり発光ダイオードと、前記光触媒を担持した光触媒反応表面を有する外表面が、前記発光ダイオードと反対側の面に形成され、かつ、前記外表面に凹凸または粗面が形成されている基体とを具備するものである。
【0013】
請求項2にかかる光触媒装置は、上記基体を透明なガラス材料からなるものである。
【0014】
請求項3にかかる光触媒装置は、上記基体をガラス繊維からなるものである。
【0015】
請求項4にかかる光触媒装置は、上記光半導体を二酸化チタンとしたものである。
【0016】
請求項5にかかる光触媒装置は、上記発光ダイオードに放射光に指向性を与えるモールドレンズを具備するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、請求項1の光触媒装置においては、450nm程度の青色の光と波長360〜400nmの紫外線を主に放射するpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなる発光ダイオードを基体に配設し、前記発光ダイオードを配設した箇所の反対側に、光半導体の薄膜からなる光触媒を発光ダイオードによって照射し、より広い光触媒反応表面を得るために基体に凹凸または粗面を形成し、そこに光半導体の薄膜からなる光触媒を担持した光触媒反応表面を形成したものである。
したがって、二酸化チタン等の光半導体の薄膜からなる光触媒を担持し、空気、水等と接触する光触媒反応表面を有する基体と、前記光触媒を照射可能に配置され、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオードとを備えるので、太陽光等が当たらない場所であっても、それが放射する紫外線によって基体に担持された二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を活性化し、有機化合物の分解等の光触媒反応を生じさせることができる。また、発光ダイオードは非常に小さな発光素子であると共に、作動電圧が小さいため、乾電池等によっても発光させることができる。そのため、発光ダイオードは設置のための空間を多く必要としないので、狭い場所等を含むあらゆる場所に容易に適用することができ、また、光触媒を担持した基体と合わせた装置全体を、コンパクトな構造に形成することができる。更に、発光ダイオードによれば、所定の可視光と光触媒の活性化のための紫外線とを比較的効率良く放射させることができ、また、その個数を調整すること等によって、必要な明るさと共に光触媒反応に必要とされる量に応じた紫外線容量を放射させることができる。そのため、消費電力の少ない水の浄化装置を形成することができる。そして、発光ダイオードの放射する450nm程度の青色の可視光によって、彩色発光することにより、より清浄感をだすことができる。
更に、光触媒を担持した光触媒反応表面を有する外表面が、基体の発光ダイオードと反対側の面に形成されているから、有機化合物の分解等の光触媒反応を生じさせる側と電源側を隔離することができる。また、基体の光触媒反応表面を有する外表面に凹凸または粗面が形成されているから、より広い光触媒反応表面を得ることができる。
【0018】
請求項2の光触媒装置の前記基体は、透明なガラス材料からなるものであるから請求項1の効果に加えて、所定の可視光及び紫外線の透過を良くし、高効率で二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を活性化でき、しかも、化学的安定である。
【0019】
請求項3の光触媒装置の前記基体は、ガラス繊維からなるものであるから請求項1の効果に加えて、所定の可視光及び紫外線の透過を良くし、高効率で二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を活性化でき、しかも、化学的安定である。
【0020】
請求項4の光触媒装置の前記光半導体は、二酸化チタンとしたものであるから、請求項1乃至請求項4の記載の効果に加えて、紫外線が照射されることによって高い酸化触媒作用を生じ、有機化合物等を分解させることができ、この光触媒を適当な基体表面に担持させることによって、空気の脱臭または消臭、殺菌(抗菌)、タバコのヤニ等の防汚、或いは水の浄化等に有効に利用できる。
【0021】
請求項5の光触媒装置の前記発光ダイオードは、放射光に指向性を与えるモールドレンズを具備するものであるから、請求項1乃至請求項4の記載の効果に加えて、任意の指向性によって効率のよい照射が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の光触媒装置の実施例を説明する。
【0023】
〔第一実施例〕
図1及び図2は本発明の第一実施例の光触媒装置としての空気の浄化(脱臭)装置、具体的には、冷蔵庫等の壁面に据付けられる照明装置を兼ねた脱臭装置を示すものである。そして、図1はその要部を原理的に示す説明図、図2はその全体を示す断面図である。
【0024】
図1のように、全体を10で示す本実施例の空気浄化(脱臭)装置は、基本的には、光触媒反応表面を有する基体1と、その基体1の表面に担持された二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2と、この光触媒2を照射可能に配置され、青や赤や緑等の所定の可視光(400nm以上の波長の光)と波長360〜400nmの光(近紫領域の紫外線)とを主に放射する発光ダイオード3とを備え、光触媒反応が可能な光触媒装置として形成されている。つまり、二酸化チタンは、一般に約420nm以下の波長の光(電磁波)、即ち、紫外線に対して吸収性を有し、特に380〜390nmの波長の光に対して吸収スペクトルピークを有している(理論値は388nm)。そのため、その二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2は発光ダイオード3が放射する紫外線によって活性化され、前述のように、強い酸化力を持つ光触媒反応表面を形成する。そして、この光触媒による酸化触媒作用によって、これに接触する空気に含まれる有機化合物、例えば、硫化水素、メルカプタンに代表される含硫黄有機化合物、トリメチルアミン、プロピルアミンに代表される含窒素化合物、また、トルエン、キシレンに代表される炭化水素化合物、アセトアルデヒド、酪酸、吉草酸等のアルデヒド、カルボン酸類等の臭成分が酸化され、空気が浄化され、脱臭される。
なお、ここで、このような光触媒装置を形成する基本的要素である基体1と、光触媒2及び発光ダイオード3について説明する。
【0025】
〈基体〉
基体1は、光触媒2を担持し、処理すべき媒質(本実施例の場合は空気)と接触可能な光触媒反応表面を有するためのものである。したがって、この基体1は、光触媒反応のための十分な広さの表面積を確保することができる形状であればどのような形状でもよく、本実施例では板状に形成されているが、その他にも球状、柱状または筒状、或いは繊維状等の任意の形状に形成することができる。また、より広い光触媒反応表面を得るために、その表面に更に凹凸または粗面を形成することもできる。そして、本実施例においては、そのような凹凸または粗面が、例えば、械的加工によって、光触媒2を担持する表面に形成されている。なお、このような凹凸または粗面は、基体1を形成する粉末をその基体1または他の基体1の表面に融着することによって、形成することもできる。
【0026】
また、この基体1は、光触媒の光触媒作用、特に、酸化触媒作用に対して不活性な材料であれば、プラスチック、セラミックス、金属、或いはガラス等の任意の材料から形成することができる。しかし、金属材料は、水分の存在下では酸化され易いため好ましくはなく、またプラスチック材料も、長い間にはその酸化作用によって分解されるので余り好ましくはない。そのため、基体1を形成する材料としては、化学的に安定な材料であるセラミックスまたはガラスが好ましい。したがって、基体1は、これらのセラミックスまたはガラスを表面層とする積層体とすることもできる。
【0027】
更に、この基体1は、透明材料から形成することが好ましい。そして、基材1を透明材料から形成することによって、可視光と共に紫外線を透過させ、光触媒2をその背面側から照射することができる。具体的には、本実施例において、基体1は透明なガラス材料から形成され、また、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2は発光ダイオード3と反対側の表面に形成されている。そのため、発光ダイオード3から放射された紫外線は、基体1を透過し、その他方側の表面に担持された光触媒2に当たり、これを活性化する。こうして、光触媒2と発光ダイオード3との間に基体1が介在する場合であっても、基体1をガラス等の光透過性の透明材料から形成することによって、その光触媒2を有効に活性化することができる。また、基体1を透明材料から形成することによって、その両側面に光触媒2を担持させることができ、それによって光触媒反応表面をより拡大することができる。この場合、一方側の表面の光触媒2によって吸収されずに透過した紫外線が、他方側の表面の光触媒2に当たって、同様にこれを活性化する。なお、ガラス材料としては、石英ガラス、或いは高シリカガラスやホウケイ酸ガラスが強度等の点で好ましいものではあるが、通常のソーダ石灰ガラス等も好適に使用することができる。
【0028】
〈光触媒〉
また、このような基体1に担持される光触媒2は、光半導体である二酸化チタン(TiO2)の薄膜、具体的には、その微粒子のコーティングからなっている。なお、同様な光触媒反応を生じる光半導体としては、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドニウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)、チタン酸ストロンチウム等の種々のものが知られているが、例えば、硫化亜鉛は、光を受けると水中では亜鉛イオンとなって溶解する。これらに対して二酸化チタンは、光触媒反応性が高いだけでなく、化学的に安定であって反応持続性があり(永久的)、しかも人体に全く無害である。そして、その光触媒2を形成する二酸化チタンの微粒子は、光触媒反応を生じるためには、「量子サイズ効果」等により十分に小さい必要があることが既に知られている。そのため、この二酸化チタンの薄膜は、一般に0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下の膜厚の透明な薄膜として、または、そのような薄膜を多層化した薄膜(例えば、0.7μm程度の透明な薄膜)として形成される。なお、このような薄膜は一般に淡い虹彩を呈する。
【0029】
このような二酸化チタンの薄膜は、既に知られた種々の方法によって、担持体としての基体の表面に形成することができる。最も一般的な方法は、二酸化チタンのコロイド(ゾル)を基体表面に薄く塗布し、或いは電気泳動法によって沈着させ、次いで焼成する方法である。この方法によれば、十分に小さな二酸化チタン微粒子の薄膜を得ることができ、しかも、ガラス等の基体に強固に被着された薄膜を形成することができる。また、真空蒸着法、或いは気相反応による化学的析出法(気相成長法)も、薄膜を形成することができる。なお、仏具等の工芸用陶磁器に真珠様の光沢を付与するために古くから用いられている「真珠ラスター」も、適宜利用することもできる。これはチタンの樹脂石鹸の溶液であり、これを塗布し、600℃程度で加熱焼成することによって、二酸化チタンの透明な薄膜を形成することができる。
【0030】
〈発光ダイオード〉
また、発光ダイオード(LED)3は、ステムタイプやリードフレームタイプ等の種類はあるが、pn接合された半導体の結晶体からなる光を放射するチップ3aと、このチップ3aを封止すると共に放射された光に指向性を与えるモールドレンズ3bとを主要部として備える小さな発光素子である。なお、モールドレンズ3bは光透過性の透明材料からなり、一般にエポキシ樹脂等から形成される。そして、このような発光ダイオード3は、一般には赤や緑、或いは青の光を放射し、パイロットランプやインジケータ、或いは数字や文字の表示等の表示用に使用される。しかし、本実施例において、この発光ダイオード3としては、所定の可視光、即ち、400nm以上の波長の可視光線と、波長360〜400nmの光、即ち、近紫外領域の紫外線とを主に放射するものを使用する。
【0031】
ここで、紫外線は360〜400nmの波長範囲のものであればよいが、二酸化チタンが380〜390nmに光吸収スペクトルピークを有することから、この波長範囲に十分なスペクト強度を有するものが好ましい。また、このような光を放射する発光ダイオード3としては、好ましくは、人体に有害な紫外線、即ち、320nm以下の波長の遠紫外線を放射しないものが好ましい。更に、より好ましいのは、そのような遠紫外線だけでなく、日焼けを生じさせるような紫外線(Bランク紫外線)も放射しない、即ち、350nm以下の波長の紫外線を実質的に放射しない発光ダイオードである。そして、このような発光ダイオード3によれば、人体に全く無害な光触媒装置を形成することができ、日常生活における用途にも安全に使用することができる。したがって、使用する発光ダイオード3としては、可視光と近紫外線とを含む波長350nm以上(より好ましくは、360nm以上)の光のみを実質的に放射するものが好ましい。
【0032】
また、発光ダイオード3の放射する可視光は赤や緑、或いは青等の任意の有彩色であることができる。そして、そのような所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線を主に放射する発光ダイオード3は、チップ3aを形成する半導体結晶体の種類を選定し、また適切なドーピング処理等を行うことによって適宜得ることができる。しかしながら、そのような可視光としてより好ましいのは、波長が450nm程度である青色の光である。それによれば、発光ダイオード3の放射する光のスペクトル範囲を比較的狭いものとすることができ、より高い発光効率を得ることができる。そして、このような青色の光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3は、チップ3aを形成する半導体結晶体として窒化ガリウム(GaN)系、炭化ケイ素(SiC)系、硫化亜鉛(ZnS)系、硫化セレン(SeS)系等の半導体材料を用いて、一般に製造することができる。しかし、これらの半導体材料の中でも、窒化ガリウム(GaN)系半導体材料によれば、最もそのような光の発光効率が高い発光ダイオードを得ることができる。
【0033】
そして、この発光ダイオード3は、基体1に担持された光触媒2を照射可能な配置において、その光触媒2を十分に活性化することができる1以上の任意の個数だけ設けることができる。この場合、具体的に使用する発光ダイオード3は、どのような形状のものであってもよく、例えば、モールドレンズ3bが平板状に形成された面実装用タイプの発光ダイオードも適宜使用することができる。また、複数の発光ダイオード3が必要とされる場合には、その必要とする数のチップ3aを単一のモールドレンズ3bで封止したものとして、その発光ダイオードを形成することもできる。そして、発光ダイオード3は小さな素子であり、それの設置のために広いスペースを必要としないので、多数個を設ける場合であっても、あらゆる場所に容易に設置することができる。
【0034】
なお、発光ダイオード3は低い電圧で作動させることができ、また、その消費電力も少ないため、それの電源としては、乾電池、或いは充電池等の蓄電池も適宜用いることができる。そのため、電源配線のない場所でも発光ダイオード3を発光させ、光触媒反応を生じさせることができる。また、家庭用の交流電源を使用することもできる。そしてこの場合、例えば、単にシリコンダイオードを用いて半波整流するか、または、2つの発光ダイオードを互いに逆方向接続して使用すればよいため、簡単にその電源を利用することができる。更に、その電源回路にはスイッチ、タイマ等を設けることもでき、それによって発光ダイオード3の不必要な作動をなくし、消費電力の節約を図ることができる。
【0035】
そして、これらの基体1、光触媒2、及び発光ダイオード3を基本的要素として、本実施例の空気の浄化(脱臭)装置10は、図2のように具体的に形成されている。なお、この図2において、図1における光触媒2を担持した基体1は、光触媒反応基体11として示されている。したがって、この光触媒反応基体11は、基体1と、その表面に担持された二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2とからなるものである。
【0036】
図2のように、本実施例の空気の浄化装置としての光触媒装置、具体的には脱臭装置10は冷蔵庫等の壁面w(上壁面)に据付けられたものとして形成され、光触媒2を担持した基体1からなる光触媒反応基体11及び適数個の発光ダイオード3と、壁面wに対する取付基板をなす本体12とを備えている。なお、この本体12はプラスチック材料から形成され、また好ましくは、光反射性の(例えば、白色の)材料から形成されるか、またはメタリック塗装等の反射性のコーティングが表面に形成されている。そしてここで、光触媒反応基体11は、発光ダイオード3を覆うようにカバー状(皿状)に形成された透明なガラス板を基体1とし、その外側表面に二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2をコーティングにより担持させて形成されている。また、光触媒反応基体11は最も簡易な形状に形成されているため、図1のように、その基体1の表面には凹凸または粗面が設けられ、それによって空気と接触する光触媒反応表面が十分に確保されるようにしている。なおこの凹凸または粗面は、発光ダイオード3が放射する可視光を分散しまたは拡散させる作用も有している。そして、この光触媒反応基体11は、その光触媒2が冷蔵庫内等の空気と接触するように、接着等によって本体12に組付けられている。
【0037】
また、本体12には、適数個の発光ダイオード3が光触媒反応基体11側に向けて、その光触媒2を照射可能に取付けられている。したがって、発光ダイオード3が作動されると、それの放射する紫外線を含む光は光触媒反応基体11の基体1を透過してその表面の光触媒2に当たり、これを活性化する。また、発光ダイオード3の放射光に含まれる可視光は光触媒2を透過するため、光触媒反応基体11はその可視光の彩色に発光し、また、周囲を照明する。なお、発光ダイオード3を作動させる電源としては、例えば、冷蔵庫の場合には、それに使用される家庭用電源を使用することができる。
このように、本実施例の空気浄化装置(脱臭装置)は、浄化する空気と接触可能な光触媒反応基体11、即ち、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持する基体1と、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3とを基本的に備え、これに加えて、光触媒反応基体11を空気と接触可能に保持すると共に発光ダイオード3を光触媒反応基体11に対して照射可能に配置するための本体12を備えて形成されている。
【0038】
したがって、発光ダイオード3を備えるため、太陽光や蛍光灯の光が当たらない場所でも、それの放射する光に含まれる紫外線によって光触媒反応基体11(光触媒2)を活性化させることができる。また、発光ダイオード3が小さな発光素子であるので、浄化装置10全体をコンパクトなものとして形成することができる。更に、その消費電力量は少ないため、終日使用することもできる。そのため、本実施例の空気浄化装置(脱臭装置)10は、冷蔵庫、自動車の車室或いはそれに据付けられた収納型の灰皿、食器乾燥機、衣類乾燥機、ロッカ、下駄箱、トイレ、押入れ、或いは便器や生ゴミ容器(それらの蓋)等に適用することができ、それらの内部の空気を浄化し、脱臭することができる。
【0039】
また、本実施例の空気浄化装置(脱臭装置)10は、発光ダイオード3が所定の可視光を放射するため、その有彩色の発光装置としての機能も備えている。そのため、一般の室内或いは風呂場を含む建造物内において、照明を兼ねた、または、案内等の発光表示を兼ねた空気浄化装置(換言すれば、空気の浄化作用を有する発光照明または表示装置)としても、好適に適用することができる。また、これらの場合、発光ダイオード3の放射光に含まれる紫外線は光触媒反応基体11(光触媒2)によって吸収されるので、場合によっては有害となるそのような紫外線が除去されるという効果もある。
【0040】
ところで、本実施例の空気の浄化装置(脱臭装置)10は、光触媒反応基体11がカバー状(皿状)に形成され、発光ダイオード3を保護するような構造に形成されているが、この光触媒反応基体11は、それに開口を設けることによって、浄化する空気がその内側にも流通するように形成することもできる。この場合には光触媒2を基体1の内面側にも担持させることになるが、それによって、光触媒2による光触媒反応表面をより広げ、空気の浄化効果をより高めることができる。また、このような場合も含めて、その光触媒反応基体11は、平板状、或いは中空の半球状、更には筒状等の他の任意の形状に形成することができる。なおまた、本体12は、空気の浄化装置10が適用される具体的な場所等に応じて、適宜の形状、構造に形成することができ、また壁面w自体をそのような本体12として形成することもできる。
【0041】
〔第二実施例〕
次に、上記のような光触媒反応基体を更に特殊な形状に変形し、その空気浄化装置(脱臭装置)を置物(飾り物)として形成した光触媒装置の実施例について説明する。
図3は本発明の第二実施例の置物(飾り物)形の空気浄化装置(脱臭装置)を示す断面図である。なお、この図3において、図1及び図2と同一または相当する部分には同一の符号を使用している。
【0042】
図3のように、全体を20で示す本実施例の空気浄化装置(脱臭装置)は、第一実施例の場合と同様に、光触媒反応基体21、即ち、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1と、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3とを基本的に備えて形成されている。しかし、図2の第一実施例とは異なり、この光触媒反応基体21は動物等の形状、つまり、装飾体としての形状に形成されている。具体的には、この光触媒反応基体21の基体1は、発光ダイオード3の放射光を透過可能なガラス材料によって中空の動物等の形状に形成され、そして、その外側表面のほぼ全面に光触媒2がコーティングにより担持されている。なお、この基体1の内側表面は粗面に形成され、それによって発光ダイオード3の放射光が分散し、拡散するようにされている。なお、必要に応じて、その基体1の外側表面にも、図1の場合と同様に、凹凸または粗面を形成することができる。
【0043】
また、本実施例においては、このような光触媒反応基体21の下方に開口21aが設けられ、この開口21aに、プラスチック材料等から形成された、発光ダイオード3を取付けるための取付部22が、接着等によって組付けられている。そして、この取付部22に、光触媒反応基体21の全体を内側から照射するように、適数個の発光ダイオード3が取付けられ、配置されている。また、本実施例では、この取付部22は小形の乾電池等の蓄電池kを収容可能に形成されている。そのため、発光ダイオード3は、その蓄電池kを電源として、図示しないスイッチ手段を介して作動されるようになっている。ただし、この発光ダイオード3を作動する電源としては、通常の家庭用電源を使用することもでき、また、必要に応じて両用型とすることもできる。
【0044】
このように、本実施例の光触媒装置としての空気浄化装置(脱臭装置)20は、装飾体として形成され、空気と接触可能な光触媒反応基体21、即ち、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1と、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3と、この発光ダイオード3を取付けて、光触媒反応基体21(光触媒2)を照射可能に配置するための取付部22とを備えて形成されている。その作用は第一実施例の場合と同様である。即ち、発光ダイオード3が作動されると、それの放射光は基体1を透過してその表面の光触媒2に当たり、それに含まれる紫外線によってその光触媒2が活性化される。そのため、活性化された光触媒2の触媒作用、特に酸化触媒作用により、それに接触する空気中の臭成分等の有機化合物が分解され、それによって空気が浄化され、また脱臭される。またその一方、発光ダイオード3の放射光のうちの所定の可視光は、光触媒2には吸収されずにそのままこれを透過する。そのため、その可視光は基体1によって分散または拡散され、また屈折して、光触媒反応基体21自体もその色彩に淡く発光する。
【0045】
したがって、本実施例の空気浄化装置(脱臭装置)20によれば、空気の浄化(脱臭)作用だけでなく、光触媒反応基体21が特に装飾体として形成されていることによって美的効果も有するので、居間、寝室等の一般居住空間、或いはトイレ、風呂場、更にはバー等のタバコの煙が充満するような場所等において、置物または飾り物として好適に利用することができる。なお、ここで、光触媒反応基体21の形状としては、動物だけでなく、植物或いは人物、或いは家等の造形物等を表す形状とすることができ、また、球状や角錐状等の幾何学的形状とすることもできる。そして、これらのいずれの場合においても、発光ダイオード3は小さな素子であるため、そのような装飾効果を有する空気浄化装置20をコンパクトに形成することができる。
【0046】
ところで、本実施例の空気浄化装置20は、平坦面上に載置可能な置物形に形成されているが、壁掛け形、或いは垂下形等に形成することもでき、更には、図2の第一実施例の場合と同様に、天井や壁面等に据付け可能に形成することもできる。また、本実施例では、光触媒反応基体21を中空状に形成すると共に発光ダイオード3をその内側に配置しているが、これに代えて、光触媒反応基体21を外側から照射するように、発光ダイオード3をその外側に配置することもできる。この場合、発光ダイオード3を取付けた取付部22を、例えば、スタンド形ライトのような形状に形成して、その光触媒反応基体21の側方に配置することができる。そして、このようにした場合には、光触媒反応基体21を陶磁器等から形成することも可能となる。
【0047】
ところでまた、第一実施例及び第二実施例の空気の浄化(脱臭)装置は、空気の自然対流を利用して室内等の空気を浄化するものであり、その室内全体の空気を浄化するには比較的時間がかかる。そこで、比較的短時間で空気を浄化するために、流入口と流出口とを有する空気の流通経路を形成し、ファン等によってその流通経路に空気を流通させると共に、光ダイオード3により活性化される光触媒反応基体(光触媒2を担持した基体1)をその流通経路内に配置して、浄化装置を形成することができる。そしてこの場合、その光触媒反応基体としては、流通する空気と十分な接触が得られるように、ガラス繊維からなる基体1の表面に光触媒2を担持させたものをフィルタ状に集合したものが好ましい。
【0048】
〔第三実施例〕
以上の実施例は、光触媒による光触媒作用を、空気中に含まれる臭成分等の有機化合物の分解除去(脱臭)に応用したものである。しかし、この光触媒による光触媒作用は、飲料水等の水に含まれるハロゲン化合物、或いは各種の有機化合物の分解除去にも応用することができる。
図4は本発明の第三実施例の光触媒装置としての水の浄化装置(水差)を示す断面図である。なお、同図において、これまでの実施例と同一または相当する部分には同一の符号を使用している。
【0049】
図4のように、全体を30で示す本実施例の水の浄化装置は、これまでの実施例と同様に、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1、即ち、光触媒反応基体31と、発光ダイオード3とを基本的に備え、その光触媒反応基体31が浄化すべき水と接触するようになっている。なお、これらの基体1、光触媒2、及び発光ダイオード3に関する技術的詳細は第一実施例と同じであり、この発光ダイオード3は、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射するものである。
【0050】
具体的には、本実施例の水の浄化装置30において、その光触媒反応基体31は、ガラス材料から水差として形成された飲料水容器を基体1とし、その内側のほぼ全面に光触媒2を担持させて、形成されている。また、本実施例の水の浄化装置30は、この水差としての光触媒反応基体31とは別体に、その底を受けるコースタ或いは受皿のような形状に形成された受台32を備えている。そして、この受台32に、適数個の発光ダイオード3が上方に向けて取付けられ、適当な直流電源によって作動されるようになっている。なお、この受台32は、プラスチック等の適宜の材料から形成されている。なおまた、水差として形成された光触媒反応基体31の口には、その蓋を兼ねて、コップ32が被せられている。
【0051】
本実施例の水の浄化装置30はこのように形成され、発光ダイオード3が作動されると、その放射光は光触媒反応基体31の底を透過して、その内面に担持された光触媒2に当たり、それに含まれる紫外線によってこれが活性化される。そして、この活性化された光触媒2の作用は、それと接触する媒質が空気ではなく、水であるだけで、図1の場合と実質的に同じである。即ち、特にその高い酸化触媒作用によって、水中に溶存するトリハロメタン等の有害物、カルキ臭、或いはカビ臭の原因物質(例えば、2−メチルイソボルネオール)等が分解され、除去される。しかも、この活性化された光触媒2は、水のクラスタ(水分子の集合体)を小さく細分化する作用も有している。そのため、光触媒反応基体21(水差)内の飲料水は浄化されるだけでなく、まろやかで美味しく、また健康に良い水となって形成される。また他方、発光ダイオード3の放射光のうちの所定の可視光は、光触媒2には吸収されずに透過するため、光触媒反応基体31は発光ダイオード3と共にその色彩の色に発光する。
【0052】
このように、本実施例の水の浄化装置30は、その水と接触可能な二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1、即ち、光触媒反応基体31と、この光触媒反応基体31(光触媒2)を照射可能に配置され、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3とを基本的要素として備えたものであり、具体的には、その光触媒反応基体31が透明なガラス製の飲料水容器である水差として形成され、また、発光ダイオード3は、その光触媒反応基体31を受ける受台32に取付けられ、その底部側から光触媒2を照射するように配置されている。
【0053】
そのため、コップ等のガラス製の飲料水容器の内面に光触媒2を担持させ、自然光または蛍光灯の照明光によってその光触媒2を活性化するようにしたもの自体は既に知られているが、本実施例では紫外線を放射する発光ダイオード3を備えているので、そのような自然光または照明光が十分でない場所においても、飲料水を有効に浄化し、しかも美味しく、健康に良い水を得ることができる。
【0054】
また、発光ダイオード3は非常に小さな発光素子であるため、それを光触媒2に対して照射可能に取付けた受台32も、厚さの薄いコンパクトなものとして形成することができる。そのため、この受台32は通常のコースタと同程度の厚さのものとして形成することができる。
【0055】
更に、発光ダイオード3は少ない電圧で作動することができ、また消費電力も少ないため、電源として乾電池或いは充電池等を使用することができる。そのため、受台32に乾電池または充電池を組込むことによって、厚さはその分多くなるが、任意の場所で使用可能な受台32を形成することができる。ただし、その乾電池等の収容部を受台32の側方に設けるようにすれば、その厚さが増大されることはない。
【0056】
更にまた、発光ダイオード3の放射光は所定の可視光を含むので、発光ダイオード3とこれの放射光を受ける光触媒反応基体31及びその他の部分は、その色彩の色で発光する。そのため、照明、或いは装飾、または表示等としての機能も有し、例えば、本実施例の水の浄化装置30を就寝時枕許に置いて使用すれば、その枕許の照明にもなる。
【0057】
ところで、本実施例の水の浄化装置30では、光触媒反応基体31は、具体的には、飲料水を収容する容器である水差として形成されているが、その容器としての光触媒反応基体31の形状はポットの形状等の他の任意の形状であることができると共に、この光触媒反応基体31は、飲料水と接触可能であれば、そのような容器の一部のみを形成するものとすることができ、また、容器自体とは別体のものとして形成することもできる。例えば、飲料水の排出手段を備えたポットのような載置型の飲料水容器の場合、その光触媒反応基体31を、板状等の適当な形状に基体1に光触媒2を担持させて形成し、そして、それをその容器の底に配置することができる。
【0058】
また、本実施例では、発光ダイオード3を取付ける受台32を、水差として形成した光触媒反応基体31と別体に形成したが、この受台32は、必要に応じてその光触媒反応基体31に一体に形成することができ、また着脱可能に取付けるようにすることもできる。更に、この受台32は、発光ダイオード3の取付部として、その光触媒反応基体31または飲料水容器の外周部等に設けることができ、また、蓋として形成することもできる。更には、水密構造に形成して容器の内部に配置することもできる。
【0059】
また、これらの態様とは別に、この受台32は、例えば、光触媒反応基体31をコップとして形成した場合、コースタとして形成することができる。更に、この受台32は、例えば、冷蔵庫の水差(ポット)収納棚等に据付けることもできる。それによって、その水差(ポット)として形成された光触媒反応基体31内の飲料水を冷却しつつ浄化することができる。
【0060】
ところでまた、このような光触媒と発光ダイオード3とを備えた水の浄化装置は、水道の蛇口に取付けて使用する水道水の浄化装置としても具体化することができる。この場合、光触媒反応基体31としては、ガラス繊維の基体1に光触媒2を担持させたものをフィルタ状に集合したものが好ましく、これを水道水の流通経路に配置することができる。
【0061】
〔第四実施例〕
図5は本発明の第四実施例の光触媒装置としての水の浄化装置(観賞魚水槽用浄化装置)を示す断面図である。
【0062】
図5のように、全体を40で示す本実施例の水の浄化装置は、金魚等の観賞魚用の水槽において使用され、その水槽内の水を浄化するためのものとして具体化したものである。そして、本実施例の水の浄化装置40は、第三実施例と同様に、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1、即ち、光触媒反応基体41と、発光ダイオード3とを基本的に備え、その光触媒反応基体41が浄化すべき水槽内の水と接触するようになっている。なお、この発光ダイオード3は、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射するものである。
【0063】
具体的には、本実施例の水の浄化装置40は、その光触媒反応基体41と、この光触媒反応基体41を保持すると共に、それを照射可能に発光ダイオード3を取付けるための基台42とを備えている。そして、本実施例では、その光触媒反応基体41は形状の異なる3種類のものからなっている。ただし、それらはいずれも、ガラス材料からなる基体1の表面に光触媒2を担持させて形成したものである。その1つは、外囲体として形成されたものであり、先端側が円く閉塞された筒状の形状の光触媒反応基体41aである。なお、この光触媒反応基体41aには、その内外の両側の表面に光触媒2が担持され、また、それの内外に水を流通させるために、多数の開口が形成されている。また、他の1つは、主に装飾効果を得るためにビー玉状に形成したものであり、球状または中空球状の基体1の外周表面に光触媒2を担持させた光触媒反応基体41bである。なお、この光触媒反応基体41bは、本実施例の装置40の錘を兼ねている。そして、残る1つは、基台42に取付けられた発光ダイオード3のカバーを形成するもので、上側表面に光触媒2を形成した平板状の光触媒反応基体41cである。
【0064】
これらの光触媒反応基体41a,41b,41cに対して、基台42には、これらを照射可能に適数個の発光ダイオード3が取付けられている。そして、これらの発光ダイオード3は水密構造で配置され、また、適当な直流電源で作動されるようになっている。なお、基台42には、空気の流通路43が設けられており、これに空気ポンプからの空気を送り込み、その先端開口から空気粒として吹き出すことによって、酸素を供給すると共に、外囲体として形成された光触媒反応基体41a内を水槽の水が循環するようにしている。
【0065】
本実施例の水の浄化装置40はこのように形成され、鑑賞魚用の水槽の底に置いて使用される。その作用は、第三実施例の場合と同様である。発光ダイオード3が作動されると、その放射光に含まれる紫外線は、カバーとしての光触媒反応基体41cの上側表面の光触媒2に当たり、また、これを透過して球状の光触媒反応基体41bの光触媒2、及び光触媒反応基体41cの光触媒2に順次当たり、これらを活性化する。そして、活性化された光触媒2の触媒作用、特に酸化触媒作用によって、水槽の水に含まれる腐敗性成分等の各種の有機成分が分解される。そのため、観賞魚用の餌やその排泄物で汚されがちな水槽の水を浄化することができ、観賞魚のための水質環境を良好に維持することができる。またこの場合、光触媒2の酸化触媒作用によって抗菌性の表面が形成されるため、水槽の水に接触する光触媒反応基体41a,41b,41cの全表面は、藻類等が付着し、また繁殖することはなく、常に清浄に保たれる。
【0066】
また他方、発光ダイオード3の放射光のうちの所定の可視光は光触媒2には吸収されないため、光触媒反応基体41a,41b,41cを順次透過し、またこれらによって屈折、反射、或いは分散されて、浄化装置40全体がその色彩に発光する。そのため、この浄化装置40は水槽内の照明となって、その装飾効果を引立てる。
【0067】
そして、本実施例の水の浄化装置40によれば、特に、発光ダイオード3が小さな素子であるため、装置全体をコンパクトに形成することができ、狭い水槽であっても容易に配置して使用することができる。また、光触媒2の光触媒作用は永久的であることから、砂等が堆積した場合にそれを取り除くこと以外には、殆どメンテナンスが不要である。更に、連続して使用しても電力の消費は少ないため、維持費が安価である効果もある。
【0068】
ところで、本実施例では、光触媒反応基体41として種々の形状のものを用いているが、この光触媒反応基体41の形状と組合わせ等は、これまでの実施例で説明したようなものを合わせて、その他の任意のものとすることができる。そして、例えば、第二実施例で説明した空気の浄化装置は、発光ダイオード3の電源部を水密構造とすれば、そのまま水槽の浄化装置として形成することができる。またこれらの場合、その水槽用浄化装置は、水槽の底に設置する載置形だけでなく、例えば、水面上に浮くことができる浮き形に形成することもできる。
【0069】
〔第五実施例〕
紫外線を受けて活性化された光触媒は、酸化力のある活性表面を形成するため、有機化合物の分解等だけでなく、接触する細菌等を死滅させ、或いはその増殖を阻害する殺菌作用または抗菌作用も有している。以下の例は、この光触媒による殺菌作用または抗菌作用を利用したものである。
【0070】
図6は本発明の第五実施例の光触媒装置としての体重計の踏面装置(抗菌装置)の全体を示す平面図である。また、図7は図6のA−A線断面図である。なお、図7において、これまでの実施例と同一または相当する部分には同一の符号を使用している。
図6及び図7のように、全体を50で示す本実施例の体重計の踏面装置は、これまでの実施例における光触媒2を担持した基体1、即ち、光触媒反応基体51が、これに付着する細菌等を殺菌する抗菌性表面を有することを利用して、これを体重計の踏面部に適用したものである。
【0071】
具体的には、この光触媒反応基体51は、ガラス材料から人の足跡の形状の平板状に形成した基体1の表側表面全体に、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2をコーティングにより担持させて形成され、体重計における荷重板52の表面の足を乗せる部分、即ち、踏面部に配設されている。そのために、一般に金属板からなる荷重板52の踏面部には、その光触媒反応基体51の足跡形状に対応する平面形状の凹部52aが形成され、そしてその凹部52aに、光触媒反応基体51が、その表面が荷重板52の表面と面一にほぼ連続し、またその裏面と荷重板52との間に発光ダイオード3の配置のための間隙が確保されるように、嵌込まれ、保持されている。そして、図1のように、このような光触媒反応基体51は、同様な構造で左右に一対設けられている。
【0072】
なお、光触媒反応基体51を形成する基体1の表面には、多数の小さな円い突起1aが、滑り止めのために形成されている。また、その裏面側には、光触媒反応基体51の中央部に掛かる荷重を荷重板52の凹部52aの底部表面で支え、それによって光触媒反応基体51の破損を防止するために、適数個の棒状またはそれの長さ方向に延びる支持脚部1bが一体に設けられている。なおこのような支持脚部1bは、荷重板52の凹部52a側に設けることもできる。更に、この基体1の裏面側は粗面1cとして形成され、それによって発光ダイオード3の放射光がより分散されるようになっている。
【0073】
また、荷重板52の凹部52aの底部表面には、適数個の発光ダイオード3が光触媒反応基体51を照射可能に上方に向けて、またその長さ方向に沿って適当に分散されて取付けられている。そして、これらの発光ダイオード3は、乾電池等の蓄電池或いは家庭用電源によって作動されるようになっている。なお、ここでは発光ダイオード3を荷重板52に直接取付けるようにしたが、これとは別個の適当な取付部材を用いることもできる。
【0074】
このように、本実施例の体重計の踏面装置50は、光触媒反応基体51、即ち、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1と、これを照射可能に配置され、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3とを基本的に備え、その光触媒反応基体51を体重計における荷重板52の踏面部に適用したものである。したがって、発光ダイオード3を作動させると、紫外線を含むそれの放射光は、透明なガラスからなる基板1を透過してその表面に形成された光触媒2に当たり、これを活性化する。そして、このように活性化された光触媒2は、前述のように高い酸化力を有するため、有機化合物等の分解だけでなく、これに接触する細菌或いはカビ等の微生物を死滅させ、またその増殖を阻害する。そのため、光触媒反応基体51の表面は殺菌力のある抗菌性表面として形成され、体重測定時等に付着した水虫菌等を死滅させ、また、その時に付着した足の裏の油脂等の有機物も分解することができるので、銭湯等において多くの人によって使用され、それによって汚染され易い体重計の踏面部を常に清潔に保つことができる(なお、その光触媒2の酸化力は人体を障害する程には強くなく、したがって人体には十分に安全なものである)。
【0075】
またこの場合、発光ダイオード3の放射光に含まれる所定の可視光は、光触媒2には吸収されずにそのままこれを透過する。そのため、その可視光は基体1の粗面1c等によって分散し、或いは屈折、反射して、光触媒反応基体51自体もその色彩に発光する。したがって、体重計の踏面部がそのように彩色発光する光触媒反応基体51から形成されるので、その外観性が高められ、清潔的な印象を与えることができる。
【0076】
また、本実施例の体重計の踏面装置50によれば、発光ダイオード3が小さな素子であり、それの設置のために場所をとらないため、体重計が小形なものであっても容易に適用することができる。更に、発光ダイオード3の電力使用量も少ないため、蓄電池を電源としてそれを作動させることができる。なお、殺菌のためには、余り多くの時間を必要としないので、タイマ手段等を使用して、体重計が使用された時から所定時間(例えば、30分程度)の間だけ発光ダイオード3が作動するようにすることもできる。
【0077】
ところで、本実施例のような抗菌性表面を有する光触媒反応基体51(光触媒2を担持した基体1)と発光ダイオード3とを備えた装置、即ち、抗菌装置は、特にコンパクトに形成することができることから、体重計の踏面部以外にも、衛生が重要であるその他の種々の部分或いは物品にも同様に適用することができる。そのような例としては、箸立て、皿や茶碗等の食器の収納容器、調味料等の食卓用品の収容容器等の飲食用品用容器、歯ブラシ立てまたはその他の洗面用具用容器、医療用器具のための容器、または、これらの据付け形の容器或いは収納部、更には、冷蔵庫等が挙げられる。そして、これらの場合、光触媒反応基体51を細菌等が付着しまた繁殖し易い場所(例えば、容器の底)に適応する形状で適用し、そしてこれを照射可能に発光ダイオード3を配置することができる。また、多くの人の手足が触れるドアの把手、吊革、椅子の肘掛け部分、水道の蛇口、或いは便座等にも同様に適用することができる。
【0078】
〔第六実施例〕
図8は本発明の第六実施例のマイク装置(マイクロホン)の先端要部を模式的に示す断面図である。
なお、本実施例は、紫外線により活性化された光触媒(光触媒を担持する基体)が有する抗菌(殺菌)表面をカラオケ等で使用するマイク装置に適用し、それの清潔化を図ったものである。
【0079】
図8のように、全体を60で示す本実施例のマイク装置(マイクロホン)は、これまでの実施例と同様に、光触媒反応基体61、即ち、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持した基体1と、発光ダイオード3とを備えている。そして、この光触媒反応基体61は、マイク装置60の内枠として形成されている。
具体的には、本実施例のマイク装置60は、把持部62と、その先端に設けられた音声を電気信号に変える音声変換器63と、この音声変換器63を覆うように設けられた半球状の内枠である上記の光触媒反応基体61と、更にこの外周を覆う金属の網体等からなる外枠64とを備えている。なお、把持部62にはそのマイク装置のスイッチ65が設けられている。
【0080】
そして、内枠としての光触媒反応基体61は、透明材料である半球状のガラス板を基体1とし、その外側の表面に二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2をコーティングにより担持させて形成されている。なおこの光触媒反応基体61には、音声が音声変換器63に十分に届くように、1つのまたは複数の開口61aが設けられている。また、発光ダイオード3は、音声変換器63と光触媒反応基体61との間の適当な場所に、その光触媒反応基体61を照射可能に適数個取付けられている。なおこの発光ダイオード3は、タイマを使用して、例えばスイッチ65を入れた時から所定時間の間(例えば、10分間程度)作動されるようにすることができる。
【0081】
このように、本実施例のマイク装置60は、その内枠としての光触媒反応基体61、即ち、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒2を担持したガラス材料の基体1と、この光触媒反応基体61(光触媒2)を照射可能に配置され、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオード3とを抗菌(殺菌)表面を形成するための基本的要素として備えている。その作用はこれまでの実施例、特に第五実施例の場合と同じであり、発光ダイオード3が作動されると、それの放射光に含まれる紫外線は光触媒反応基体61の基体1を透過し、その外側表面の光触媒2に当たり、これを活性化する。そして、活性化された光触媒反応基体61(光触媒2)はその酸化力により殺菌力(抗菌力)を有するため、付着した細菌等を死滅させる。そのため、本実施例のマイク装置60によれば、発声時の唾液と共に細菌等が付着して不潔になり易いマイク装置の内部を、常に清潔に保つことができる。また、活性化された光触媒反応基体61(光触媒2)は有機化合物の酸化分解作用も有するため、そのマイク装置の内部を脱臭し、また唾液成分を分解して、その汚染を防止することができる。
【0082】
またこの場合、発光ダイオード3の放射光に含まれる所定の可視光は、光触媒2には吸収されずにそのままこれを透過する。そのため、マイク装置61はその色彩に発光するので、その彩色照明効果によってそれに清潔な印象を与えることができると共に、演出効果を高めることができる。
【0083】
また、発光ダイオード3は小さな素子であり、その設置のために場所を取らないため、在来の構造のマイク装置であっても、その構造を変えることなく容易に配設することができる。そのため、本実施例のマイク装置61は、カラオケ用だけでなく、各種の用途のマイク装置に適用することができる。更に、電話におけるマイク装置、即ち、送話器にも適用することができる。そしてこれらの場合、内枠としての光触媒反応基体61は、それぞれのマイク装置の具体的形状に従ったものとして形成される。
【0084】
ところで、本実施例では光触媒反応基体61を内枠として形成したが、上記の電話機の場合も含めて、このようなマイク装置の枠体としての光触媒反応基体61は、そのまま外枠として、つまり、本実施例における外枠64を省いたものとして形成することもできる。そして、これによれば、上述の殺菌、汚染防止効果及び照明効果をより高めることができる。
【0085】
ところでまた、このように発光ダイオードの設置のために場所を取らないため、脱臭、防汚を含めて、光触媒を抗菌性(殺菌性)表面の提供に利用した光触媒反応基体と発光ダイオードとを基本的に備えた光触媒装置(抗菌装置)は、マイク装置だけでなく、清潔さが求められるその他の種々の物品と場所に適用することができる。そのような例としては、例えば、前述のようなカラオケ等のマイク装置を支持するマイク支持装置を挙げることができ、それにおけるマイクとの当接部にその光触媒装置を適用することができる。また、電話機においては、前述の送話部だけでなく、受話部、及びこれらの送話部及び受話部が載置される本体側の部分等にも、その光触媒装置を適用することができる。
【0086】
なお、上記説明した実施例においては、基体(光触媒反応基体)はいずれも変形しないものとして形成されているが、この基体は屈曲変形可能な、例えば、ガラス繊維の織物(布帛)として形成することもできる。そして、このような基体は、これに光触媒2を担持させて、例えば、足拭き用抗菌マットを形成するための基帛として利用することができる。
【0087】
また、上記実施例はいずれも日常生活に関連したもので、特に小型の装置として具体化したものであるが、本発明の装置はこれらの例に限定されるものではなく、例えば、工業的に利用可能な大型の装置としても具体化することができる。
【0088】
このように、本発明にかかる光触媒装置は、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を担持し、光触媒反応表面を有する基体と、この光触媒を照射可能に配置され、所定の可視光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射する発光ダイオードとを具備するものである。したがって、所定の可視光と紫外線とを含む光を放射する発光ダイオードを備えるので、太陽光或いは蛍光灯等の照明光が当たらない場所であっても、その放射光に含まれる紫外線によって基体に担持された二酸化チタンの薄膜からなる光触媒を活性化し、有機化合物の分解等の光触媒反応を生じさせることができる。そしてその一方、発光ダイオードの放射光に含まれる所定の可視光によって装置全体がその色彩で発光するので、照明、表示、或いは装飾等の装置を兼ねたものとして形成することができる。また、発光ダイオードは非常に小さな発光素子であると共に、作動電圧が小さいため、乾電池等によっても発光させることができる。そのため、発光ダイオードは設置のための空間を多く必要としないので、狭い場所等を含むあらゆる場所に容易に適用することができ、また、光触媒を担持した基体と合わせた装置全体を、コンパクトな構造に形成することができる。更に、発光ダイオードによれば、所定の可視光と光触媒の活性化のための紫外線とを効率良く放射させることができると共に、その個数を調整すること等によって、必要とされる明るさと光触媒反応に必要とされる量に応じた紫外線容量を放射させることができる。そのため、消費電力の少ない装置を形成することができる。
それゆえ、本発明にかかる光触媒装置とその応用装置はあらゆる場所に適用することができ、光触媒による空気または水の浄化、或いは抗菌(殺菌)等の光触媒反応を種々の具体的用途に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は本発明の第一実施例の空気の浄化(脱臭)装置の要部を原理的に示す説明図である。
【図2】図2は本発明の第一実施例の空気の浄化(脱臭)装置の全体を示す断面図である。
【図3】図3は本発明の第二実施例の空気の浄化(脱臭)装置を示す断面図である。
【図4】図4は本発明の第三実施例の水(飲料水)の浄化装置を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の第四実施例の水(観賞魚用水槽)の浄化装置を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の第五実施例の体重計の踏面装置(抗菌装置)を示す平面図である。
【図7】図7は図6のA−A線断面図である。
【図8】図8は本発明の第六実施例のマイク装置(抗菌装置)を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 基体
2 光触媒(二酸化チタンの薄膜)
3 発光ダイオード
11,21,31,41,51,61
光触媒反応基体(光触媒を担持させた基体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体の薄膜からなる光触媒を照射可能に配置され、450nm程度の青色の光と波長360〜400nmの紫外線とを主に放射するpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体からなり発光ダイオードと、
前記光触媒を担持した光触媒反応表面を有する外表面が、前記発光ダイオードと反対側の面に形成され、かつ、前記外表面により広い光触媒反応表面を得るための凹凸または粗面が形成されている基体と
を具備することを特徴とする光触媒装置。
【請求項2】
前記基体は、透明なガラス材料からなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒装置。
【請求項3】
前記基体は、ガラス繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の光触媒装置。
【請求項4】
前記光半導体は、二酸化チタンとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の光触媒装置。
【請求項5】
前記発光ダイオードは、放射光に指向性を与えるモールドレンズを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の光触媒装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−255701(P2006−255701A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87297(P2006−87297)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【分割の表示】特願2003−187493(P2003−187493)の分割
【原出願日】平成7年6月19日(1995.6.19)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】