説明

光走査装置、および画像形成装置

【課題】金型による複数個取りの樹脂製走査レンズを用いるタンデム型画像形成装置においては、樹脂製走査レンズの光学性能のばらつきのため、ビームウエストを正しく被走査面に一致させるには、各ステーション毎にシリンドリカルレンズの粗調整と微調整をしなければならなかった。
【解決手段】一つの画像形成装置に組み込む複数のステーションの、それぞれ対応する走査レンズには、同一のキャビティから取り出した走査レンズを組み込む。こうすると、一つのステーションに対してシリンドリカルレンズの調整を行ってその調整量を把握すれば、残りのステーションに対する調整は把握した調整量を与えることで粗調整ができ、後は微調整をするだけで済み、調整時間の大幅な短縮ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーレーザプリンタ、デジタルカラー複写機、ファックス等に用いられる光走査装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーデジタル複写機、カラーレーザプリンタ等の記録速度を高めるため複数のステーションを有し、複数の被走査面にそれぞれ異なる色の画像を形成し、これらの画像を転写媒体上に順次転写することによってカラー画像を形成するいわゆるタンデム型カラー画像形成装置が広く知られるようになってきている。
タンデム型カラー画像形成装置においても、単一の偏向器を挟んで、左右に走査光学系を配して4つの感光体に光走査を行う光走査装置が提案されている(例えば、特許文献1 参照。)。
一方、カラー画像の高画質化に伴ってビームスポット径の小径化が進んでいる。ビームスポット径が小径になればなるほど、深度が狭くなり、許容されるビームウェスト位置ずれ量が小さいため、特に副走査方向のビームウェスト位置の調整のために線像光学系、例えばシリンドリカルレンズを光軸方向に調整することで走査レンズの面精度誤差等によるビームウェスト位置ずれを調整することが行われている。
【0003】
また、ビームスポット径の小径化のため走査レンズの非球面化が進んでいることと、走査レンズの低コスト化のため、樹脂製の走査レンズが主流になってきている。樹脂の成形で作製することのメリットとして、金型による複数個取りが可能で、より低コスト化に有利になっている。
しかしながら、複数個取りの場合、各キャビティの走査レンズの面精度は、鏡面を創生するための金駒の精度や、金型の温度分布等の影響で必ずしも一定ではない。
したがって、タンデム型の画像形成装置に用いられる光走査装置の場合、各ステーション毎にシリンドリカルレンズの調整をしなければならないため調整時間がかかりコストアップになるという問題がある。或る機構の例では、シリンドリカルレンズの調整に、1ステーション当たり15〜30秒を要していた。どのステーションもほぼ同じ時間を要するため、調整に要する時間はおよそ1分ないし2分であった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−90672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンデム型カラー画像形成装置等に用いられる複数の走査光学系からなる光走査装置や、複数の光走査装置における、線像光学系の光軸方向の調整において、走査光学系を構成する走査レンズのうち、同種の走査レンズを同一キャビティから選択することにより、線像光学系の光軸方向の調整量を各ステーションで略同一にすることで、組み立てラインでの調整工程の時間短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、複数の現像色に対応した複数のステーションを有し、各ステーションは少なくとも1個の光源と、カップリングレンズと、前記光源からの光束を主走査方向に長い線状の光束に変換する線像光学系と、該線像光学系からの光束を前記主走査方向に偏向する偏向手段と、該偏向手段により偏向された前記複数の光束を対応する被走査面に導く複数の光学素子からなる走査光学系とを有し、前記複数の光学素子の内少なくとも1個は複数個取りの成形型による樹脂製の走査レンズを用いる光走査装置において、前記各ステーションにおける互いに機能的に対応する前記樹脂製の走査レンズは、前記成形型における同一のキャビティから取り出したものであることを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光走査装置において、前記樹脂製の走査レンズには、成形型のキャビティが識別できる記号が付与されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の光走査装置において、前記線像光学系は副走査方向におけるビームウエスト位置がほぼ被走査面近傍になるように前記偏向器の方向に直進的に進退させた後、位置決めすることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の光走査装置において、前記線像光学系は1つの光軸を有し、前記直進的進退は前記光軸方向に行われることを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、請求項3または4に記載の光走査装置において、前記線像光学系を直進的に進退させる調整機構を前記複数のステーション毎に有し、その1つにおけるビームウエストの位置が定まったときの前記線像光学系の移動量を他のステーションの線像光学系の移動量に適用することを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の発明では、請求項3または4に記載の光走査装置において、すべての線像光学系は、偏向器の方向に直進的に進退可能な調整機構を有する基板上に配置され、1個を除いて他の線像光学系には微調整機構が設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の光走査装置において、前記微調整機構はカム機構であることを特徴とする。
【0009】
請求項8に記載の発明では、請求項6に記載の光走査装置において、前記微調整機構はラックピニオン機構であることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項5ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記調整機構はカム機構であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項5ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記調整機構はラックピニオン機構であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光走査装置を用いた画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被走査面にビームウエストを合わせるためにシリンドリカルレンズを偏向器方向に移動させる調整の時間が短縮化できる。
樹脂製の走査レンズに識別のための記号が付与されるので、組み付け時の間違いをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明を適用する画像形成装置を示す概要図である。同図(a)は平面図、同図(b)は側面図である。
同図において符号1は光源、2はカップリングレンズ、3は線像光学系としてのシリンドリカルレンズ、4は光偏向器、5は第1の走査レンズ、6は第2の走査レンズ、7は被走査面、Sはステーションをそれぞれ示す。
LDアレイ等からなる光源1を射出した光束は、カップリングレンズ2により略平行光束にカップリングされ、主走査方向に母線方向を合わせたシリンドリカルレンズ3に入射し、主走査対応方向に長く略線状に集光しつつ、光偏向器4に入射する。光偏向器4で偏向された光束は、樹脂製の第1走査レンズ5、樹脂製の第2走査レンズ6を透過して感光体等の被走査面7に結像する。半導体レーザ、光源1はカップリングレンズ2の光軸上に配置され、光束は光軸を中心とし、光軸に沿って進む。
上記の様にS1〜S4の各ステーション、例えば、Bk(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の4色に対応する走査光学系により各色に対応する被走査面に結像し、カラー画像を形成する。
光偏向器4の偏向面は共通の偏向面であってもよいし、同図(b)に示すように上下2段の偏向面からなっていてもよい。
線像光学系としてシリンドリカルレンズの例で説明したが、同じ目的は円筒状の凹面鏡やホログラム等でも達成できる。そのほかに、主走査方向・副走査方向共に光学的パワーを持たせたいわゆるアナモフィックレンズタイプでも線像光学系として利用しうる。なお、ホログラムやアナモフィックレンズタイプの場合はシリンドリカルレンズと同様に、それ自身を単に直進移動させるだけで上記の調整が可能であるが、円筒状の凹面鏡の場合は、光源固定で単に凹面鏡のみを移動させると、凹面鏡で反射される光束の径が変化してしまうので、この場合に限り、凹面鏡は光源と一体化させて移動させるものとする。ただし、以後の説明では線像光学系の代表としてシリンドリカルレンズを直線的に進退させることにしているが、凹面鏡と光源とを一体化させて移動させるものを含むものとする。
【0012】
同図の光走査装置は、4組の走査光学系からなり、第1走査レンズ5、第2走査レンズ6はそれぞれ4本用いられている。
ここで、例えば、樹脂製の第1走査レンズ5、樹脂製の第2走査レンズ6はそれぞれ4個取りの成形により作られているとして、第1走査レンズ5、第2走査レンズ6をそれぞれランダムのキャビティで組み合わせると、4組の走査光学系はそれぞれ異なった光学特性になり、シリンドリカルレンズの調整量は4組でばらばらになるのが普通であるため、調整時間がかかる。
本発明は、光走査装置内に用いられる同種の走査レンズ、例えば、第1走査レンズ5なら第1走査レンズ5は同一キャビティの4本で構成し、同様に第2走査レンズ6についても同一キャビティ4本で構成することで、4組の走査光学系は略同一の光学特性になる。当然走査レンズ以外の光学素子、例えば折り返しミラーの面精度誤差等により4組の走査光学系の光学特性が全く同一になることはないが、特に副走査方向のビームウェスト位置ずれの要因としては、走査レンズの面精度誤差が支配的であるため、略同一と見てよい。したがって、4組のうち1組のシリンドリカルレンズの調整を実施し、調整量を導出すれば、他の3組については上記調整量に基づいた位置に配置することで調整時間は、略4分の1になる。
【0013】
例えば、第1ステーションS1のブラックステーションにおいて第1走査レンズ5にキャビティNO.1を使う場合は他の3ステーションとも第1走査レンズ5はキャビティNO.1を使い、第2走査レンズ6にキャビティNO.3を使う場合は他の3ステーションとも第2走査レンズ6はキャビティNO.3を使うといったように、第1走査レンズ5のキャビティと、第2走査レンズ6のキャビティを光走査装置内において、統一することで、シリンドリカルレンズの光軸方向の調整時間を短縮化することができる。
調整手順としては、ある1つのステーションのシリンドリカルレンズ3の光軸方向の調整を実施し、その調整量を他の全てのステーションのシリンドリカルレンズ3においてまず適用する。この時点で全てのステーションの副走査のビームウェスト位置はほぼ被走査面上に調整されるが、さらに精度良く調整する場合は、そのシリンドリカルレンズ3の配置位置から微調整することでさらに精度良く副走査のビームウェスト位置を調整することができるが、調整時間は、各ステーションの走査レンズのキャビティをランダムに組み合わせたときに比べて調整時間を短縮化できる。
【0014】
これは、走査レンズの形状精度(面精度)の各キャビティ間の差に比べて各キャビティでのショット間のばらつきが極めて小さいことが分かったことで可能になった。
もちろん、金駒加工を繰り返して精度を上げ、各キャビティ間の差を小さくすることは可能だが、金駒加工に時間とコストがかかってしまうため困難である。
上記説明においては、走査レンズは2枚とも樹脂製レンズであるとしたが、1枚がガラス製であっても、少なくとも1枚が樹脂製レンズからなる走査光学系で、樹脂製レンズが複数個取りの成形で作製される場合には本発明が適用できる。
【0015】
本発明を実施するに当たっては、各キャビティの金駒の光学面としては使用しない位置にそのキャビティであることを示す固有の記号、例えばキャビティ番号等、を付しておくとよい。付与する場所は、組み付け後もその記号が外部から読みとれる場所にするのがよい。そうすることによって、異なるキャビティからのレンズを取り違えたりすることも少なくなり、たとえ間違いが生じても後から確認することができるようになる。
本発明により、すべての被走査面におけるビームウエストが最良の位置に調整されるので、安定的なビームスポット径を達成することができると共に、走査レンズの形状精度、特に副走査方向の精度を公差として緩めることができることになり、歩留まりを向上することができコストダウンを図ることができる。
【0016】
図2は本発明を適用する他の画像形成装置を示す概要図である。
本構成は光源がマルチビームに構成された例を示している。この構成では、複数の光束がシリンドリカルレンズ3を共有する構成になっている。そのため、個々の光源からの光束はシリンドリカルレンズ3に対して垂直入射せず、それぞれ若干の角度をもって入射するようになっている。通常はシリンドリカルレンズ3の光軸に対して互いに逆向きに傾けることによって傾きの絶対値が小さくなるようにしている。ただし、その角度は僅かなので、光学性能に悪影響を与えるほどではない。
この構成の場合でも被走査面7におけるビームウエストの調整はシリンドリカルレンズ3の光軸方向への調整で行うことができる。
一般に通常のレンズの場合、光軸方向に移動させるとき、光軸と直交する方向にはずらす訳にいかないが、シリンドリカルレンズの場合は光学的パワーを有さない方向(母線方向)には移動させても問題ない。すなわち、光軸に直交する方向の内、同図における紙面に平行な方向に関しては移動が生じても光学的な問題は起こらない。
したがって、シリンドリカルレンズ3を光軸に対する角度を変えないまま直進させれば、光束の通過位置は母線方向に僅かに移動するが、光学的性能に変化は生じないので、複数の光源に対して同時調整が可能である。なお、複数の光源からのそれぞれの光束は、シリンドリカルレンズ3に入射する前に一般に平行光束に調整されているので、光源の違いによるビームウエストの位置の違いは発生しない。
【0017】
図3はビームウエスト調整機構の一例を示す図である。同図(a)は上面図、同図(b)はXX矢視図である。
同図において符号10はレンズホルダ、11は偏心カム、12は回動部材、13は板ばね、14はガイドピン、15はガイド溝、Aはレンズ移動方向、ACはカム回動方向、Bは基板、Cはカム機構、Pは指標、SCはスケール(目盛り)をそれぞれ示す。
なお、線像光学系として円筒型の凹面鏡を用いる場合は、レンズホルダ10に光源も固定的に搭載されているものとする。
以下に、調整の方法について述べる。
初めにすべてのシリンドリカルレンズ3が独立して調整可能に構成されている場合について述べる。調整工程としては粗調整と微調整がある。この両者を同じ調整機構で実施する方式もあれば、両者の調整機構が別構成になっているものもある。通常は製造コストの関係で同じ機構を粗調整と微調整で兼用することが行われる。どの構成の場合も作業の手順には殆ど変わりがないので、ここでは兼用型として説明をする。
【0018】
調整機構として例えばカム機構Cを用い、偏心カム11に固定された回動部材12を、例えばマイナスドライバなどを回動部材12の摺り割り部に入れて、矢印ACのように時計回り、あるいは反時計回りに回すことで、レンズホルダ10に例えば落とし込みで接着されたシリンドリカルレンズ3を、矢印Aのように光軸方向に直進(進退)させるものとする。偏心カム11の回動角度はカム側に用意された指標Pとカムの周囲のレンズホルダに記された目盛りSCの相対位置で確認できるようにしておく。目盛りSCには基準位置が明示されていて、製造段階では偏心カム11の指標Pを目盛りSCの基準位置に合わせておくことにより、シリンドリカルレンズ3は設計上の位置に配置されることになる。なお、指標Pと目盛りSCは相対位置を見るものなので、カム側に目盛りをつけても構わない。
偏心カム11の裏面とレンズホルダ10の一部の間には板ばね13がはめ込まれていて、レンズホルダ10の下面は基板Bの上面に常時押し付けられていて安定した移動ができる。レンズホルダの下面には3本のガイドピン14が植設されており、基板Bに設けられたガイド溝15にそれぞれはめ込まれて滑らかな直進が保証されている。
このような調整機構がすべてのシリンドリカルレンズ3に対応して設けられている。
【0019】
感光体以外の光学系が組み付けられた状態で調整治具に取り付け、感光体面に相当する被走査面でのビームスポットを調べる。例えばステーション1に関して、ビームスポットが最小になるように、カムを回動させることによってシリンドリカルレンズ3を光軸方向に移動させる。このとき、一般にはカムの最初の回動方向が時計回りにするのがよいのか、反時計回りにするのがよいのかは定まらない。したがってその方向決めは試行錯誤により行うことになり若干時間がかかる。調整が済んだら、そのステーションは図示しないねじ止め機構等によって位置を固定する。そして、そのときのカムの回動角を目盛りから読み取り、他のステーション(例えばステーション2)のカムをその角度まで無条件に回動させる。この回動により、基本的にはそのステーションのビームウエストはほぼ被走査面に一致している筈である。後は、ステーション毎にビームスポットを確認しながら微調整を行えばよい。本方式による微調整の所要時間は、粗調整に要する時間よりかなり小さくて済む。他のステーションのカムを単に無条件に回動させるのではなく、ビームスポットを観察しながら所定角度まで回動させれば、ビームスポットを最小にするためにはさらに回動を続けるか、逆に戻せばよいのかが分かるので調整時間のさらなる短縮になる。各ステーションも調整後は図示しない機構により位置決め固定される。
もし、他のステーションに用いられている走査レンズが、初めのステーションのそれと異なるキャビティから選んだものだとすると、カムの回動角を無条件に決めることができずに、最初の試行錯誤からやり直さなければならなくなり、最悪の場合粗調整4回と微調整4回が必要になり、調整時間が長引くことは明らかである。これに対して本調整方法によれば、粗調整1回、角度合わせ3回、微調整4回となり、角度合わせ3回の部分が時間短縮に大きく寄与する。この方法によれば、調整の所要時間は従来のほぼ2分の1以下になる。
【0020】
図4は他の調整機構の例を示す図である。
同図において符号16はラック、17はピニオン、APはピニオンの回動方向をそれぞれ示す。その他の符号は図3に示したそれを準用する。なお、図4ではガイドピン、ガイド溝は省略してある。線像光学系として前述の凹面反射鏡を用いる場合は、光源も基板B上に一体化されているものとする。
同図は図2に示したマルチビーム方式に本発明を適用して例を示しており、煩雑さを避けるため、第1ステーションS1と第2ステーションS2のみを示している。図示しない第3、第4ステーション(S3、S4)も基本的に同じ構成になっている。
先に説明したように、シリンドリカルレンズの場合は光束を母線方向に移動させても問題ない。すなわち、光軸に直交する方向の内、同図における紙面に平行な方向に関しては移動が生じても光学的な問題は起こらない。ただし、アナモフィックレンズタイプの場合は光束の方向があまり光軸から離れると収差が大きくなるので、マルチビームの複数の光源はなるべく間隔を小さく配置するのがよい。
本調整機構はラック16とピニオンの組み合わせによって基板B1〜B2(〜B4)を直進移動させる。ピニオン17には指標Pを設けておき、図示しない周囲の固定部に設けた目盛りとの関係で相対的な回動位置が読み取れるようにしておけばよい。
ピニオン17の回動方法は特に指定しないが、図3に示した回動部材12の摺り割り部と同様なものを設けておいてもよい。あるいは指標Pの白抜き部を凹部に形成して摺り割り部の役目をさせてもよい。場合によっては、ピニオンそのものを直接回動する構成にしても構わない。基板B1は、ピニオンの回動によってラックが動かされる力により、図示しないガイドピントガイド溝の作用と相まって矢印A1方向に直進移動させられる。
この方法による調整時間の短縮効果は図3に示した構成によるそれとほぼ同じである。
マルチビームの場合、特に2光束の場合は一方の光束に沿って移動させるより、両光束の交叉角を2等分する方向に動かすのが、光束の蹴られを防ぐ意味で有効である。
なお本構成は、図1に示したシングルビームの場合にも適用できることは言うまでもない。
【0021】
図5はさらに他の調整機構の例を示す図である。
同図において符号は図3に示したそれを準用する。なお、図5でもガイドピン、ガイド溝は省略してある。
以下に他の調整方法を説明する。
先に説明したように、シリンドリカルレンズの場合は光束を母線方向に移動させても光学的な問題は起こらない。
そこで、例えば、複数のシリンドリカルレンズ3を一体化して、全体を偏向器4の方向に直進的に近づけたり離したりすることを考える。それぞれのシリンドリカルレンズ3は移動してもその向きが変わるわけではないので、目的の機能を損なうことはない。ただし、極端に近づけたり、極端に遠ざけたりすると、シリンドリカルレンズ3の有効範囲が光軸から外れてしまうが、実用的な範囲である数mm程度の移動ではカップリングレンズ2からの有効光束がシリンドリカルレンズ3の端で蹴られるようなこともない。
【0022】
本調整方法は、このように一体型に形成された複数のシリンドリカルレンズ3の基板B部分を、例えばカム機構C1で直進移動させて、特定のステーション(例えばステーション1)の粗調整と微調整を行う。このようにするとそのステーションの調整が済んだ時点で、他のステーションの粗調整が終了していることになる。基板Bは図示しないねじ等で本体に対して位置を固定する。
他のステーションのシリンドリカルレンズ3は、移動する基板B上に個別に用意した基板B2〜B4の上に微調整機構C2〜C4とともにそれぞれ載せておく。各ステーションの微調整はカム機構C2〜C4を用い、個別に矢印A2〜A4に示すような微調整を行う。微調整機構C2〜C4は必要な移動量が小さくて済むので小型に構成できる。調整終了後はそれぞれ固定することはもちろんである。
同図では微調整機構としてカム機構C2〜C4を用いて示しているが、カム機構以外の他の機構であっても構わない。この方法によれば、粗調整1回と微調整4回ですべての調整が終了することになり、従来の調整時間に比べて3分の1以下になり、調整時間の大幅な削減になる。
【0023】
図6はさらに他の調整機構の例を示す部分図である。
同図において符号Gは固定基板に設けられたガイド溝を示す。同図はステーション1とステーション2のみを示しているが、他のステーションもほぼ同様なので図示は省略する。
アナモフィックレンズタイプの場合は光軸がずれない方が好ましいので、各線像光学系を光軸方向に移動させるようなガイドを設け、基板B1が直進移動するとき、それぞれが光軸方向に移動するようにすればよい。
同図において図示しない固定基板側に、それぞれの線像光学系の光軸方向に合わせたガイド溝G1、G2を設け、第1ステーションS1の線像光学系3は、基板B1に設けた長穴を通して下部に設けたガイドピン(図示せず)によってガイド溝方向に移動可能に構成されている。第2ステーションS2の基板B2も同様に、基板B1に設けた長穴を通して下部に設けたガイドピン(図示せず)によってガイド溝方向に移動可能に構成されている。それぞれの移動部分のガイドピンが通っている長穴は、矢印A1で示す移動方向に対し直交する方向に向いており、ガイドピンは長穴に沿って摺動可能に構成されている。この構成により、基板B1が矢印A1に示す方向、すなわち同図の上下方向に直進したとき、それぞれの移動部分は同図における横方向に若干ずれながら、ガイドピンとガイド溝Gによって各線像光学系はそれぞれの光軸方向に移動することになる。
この構成によれば、線像光学系は光軸ずれを起こすことなく移動できるので、主走査方向・副走査方向共に光学的パワーを持つ光学系に対しても適用することができる。
【0024】
図7は本発明を適用できるさらに他の画像形成装置を示す図である。
同図において符号21〜24は光走査装置、31〜34は被走査面、41〜44は現像装置、51〜55は露光光束、62は外部機構、63はプリンタコントローラ、70は画像形成装置本体をそれぞれ示す。
本装置のように、光走査装置(ステーション)が現像色毎に独立して構成されている場合でも、走査レンズ等の基本構成要素は互いに同じものを有しているので、本発明を適用し、それぞれのステーションに用いられる走査レンズには、同一キャビティから取り出したレンズを用いることによって、ビームウエストの調整時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用する画像形成装置を示す概要図である。
【図2】本発明を適用する他の画像形成装置を示す概要図である。
【図3】ビームウエスト調整機構の一例を示す図である。
【図4】他の調整機構の例を示す図である。
【図5】さらに他の調整機構の例を示す図である。
【図6】さらに他の調整機構の例を示す部分図である。
【図7】本発明を適用できるさらに他の画像形成装置を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 光源(半導体レーザ、LDアレイ等)
2 カップリングレンズ
3 シリンドリカルレンズ
4 ポリゴンミラー
5 第1の走査レンズ
6 第2の走査レンズ
7 感光体面(被走査面)
10 レンズホルダ
11 偏心カム
12 回動部材
14 ガイドピン
16 ラック
17 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の現像色に対応した複数のステーションを有し、各ステーションは少なくとも1個の光源と、カップリングレンズと、前記光源からの光束を主走査方向に長い線状の光束に変換する線像光学系と、該線像光学系からの光束を前記主走査方向に偏向する偏向手段と、該偏向手段により偏向された前記複数の光束を対応する被走査面に導く複数の光学素子からなる走査光学系とを有し、前記複数の光学素子の内少なくとも1個は複数個取りの成形型による樹脂製の走査レンズを用いる光走査装置において、前記各ステーションにおける互いに機能的に対応する前記樹脂製の走査レンズは、前記成形型における同一のキャビティから取り出したものであることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、前記樹脂製の走査レンズには、成形型のキャビティが識別できる記号が付与されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光走査装置において、前記線像光学系は副走査方向におけるビームウエスト位置がほぼ被走査面近傍になるように前記偏向器の方向に直進的に進退させた後、位置決めすることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光走査装置において、前記線像光学系は1つの光軸を有し、前記直進的進退は前記光軸方向に行われることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光走査装置において、前記線像光学系を直進的に進退させる調整機構を前記複数のステーション毎に有し、その1つにおけるビームウエストの位置が定まったときの前記線像光学系の移動量を他のステーションの線像光学系の移動量に適用することを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の光走査装置において、すべての線像光学系は、偏向器の方向に直進的に進退可能な調整機構を有する基板上に配置され、1個を除いて他の線像光学系には微調整機構が設けられていることを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光走査装置において、前記微調整機構はカム機構であることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項6に記載の光走査装置において、前記微調整機構はラックピニオン機構であることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記調整機構はカム機構であることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項5ないし8のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記調整機構はラックピニオン機構であることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光走査装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−337679(P2006−337679A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161753(P2005−161753)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】