説明

光走査装置及び画像形成装置

【課題】光走査装置を構成する光学要素の角度や位置の調整を、高精度で簡便に行うことができるようにする。
【解決手段】光走査装置は、YCM用のレーザダイオード101から出射した光ビームを反射させる第1ミラー110と、K用のレーザダイオード101から出射した光ビーム及び第1ミラー110で反射した光ビームを反射させる第2ミラー111と、第2ミラー111を出射した光ビームに作用するシリンドリカルレンズ112と、1次光学系シリンドリカルレンズ112を出射した光ビームをポリゴンミラーに向けて反射させる第3ミラー113とを有している。そして第2ミラー111には、光ビームを主走査方向に調整可能とする調整機構が設けられ、第3ミラー113には、光ビームを副走査方向に調整可能とする調整機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び該光走査装置を備えた画像形成装置に関し、より詳細には、例えば、デジタル複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機、レーザプリンタ、あるいはファクシミリ等の画像形成装置が普及している。このような画像形成装置では、レーザビームを走査する光走査装置が用いられる。画像形成装置で画像形成する場合は、感光体を帯電装置で帯電した後、光走査装置によって画像情報に応じた書き込みを行って、感光体に静電潜像を形成する。そして現像装置から供給されるトナーによって、感光体上の静電潜像を顕像化する。そして感光体上で顕像化されたトナー像を転写装置によって記録用紙に転写し、さらに定着装置によって記録用紙に定着することで、所望の画像が得られるようになっている。
【0003】
またデジタル複写機やレーザプリンタなどのカラー画像形成装置では、その高速化に伴って複数の感光体をタンデム配列したタンデム方式の装置が実用化されている。ここでは、例えば4つの感光体ドラムを記録紙の搬送方向に配列し、これらの各感光体ドラムに対応した走査光学系によってこれら感光体を同時に露光して潜像をつくり、これらの潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で顕像化する。そしてこれら顕像化されたトナー像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写することにより、カラー画像を得るようにしている。
【0004】
複数の感光体に同時露光するタンデム方式は、1つの感光体で順次各色毎の画像形成を行う方式に対して、カラーもモノクロも同じ速度で出力できるため、高速プリントに有利である。その反面で、複数の感光体に対応する走査光学系を必要とし、感光体を露光するための装置が大型化する傾向があり、その小型化が課題となる。また各々の感光体上で顕像化したトナー像を記録紙に重ね転写する際に色ずれが生じないようにすることが課題となる。
【0005】
上記のようなタンデム方式の画像形成装置に関し、例えば、特許文献1及び特許文献2には、光源装置から偏向手段に至る光路中に配された楔形状のプリズムと、その楔形状のプリズムをほぼ光軸周りに回転調整することにより、副走査方向のビームスポットの位置を可変とする書き込み開始位置補正手段とを備え、画像データの書き込み中に感光体ドラム上のビームスポット位置を制御できるようにした光走査装置が開示されている。そしてここでは、連続プリント時においても、各色間の相対的な色ずれを効果的に補正し、色ずれの少ない良好なカラー画像を出力することができる。
【0006】
また特許文献3には、光源と、その光源から出射した光を4つの光に分岐する装置と、第2のレンズをその光軸を法線とする平面上で駆動させる調整装置と、第1及び第2のレンズからの集光光を回折して干渉させる回折格子と、その回折格子をその格子面内で溝方向と垂直な方向の成分を含む方向へ駆動する微動ステージと、対物レンズ、結像レンズ及びCCDカメラで構成され干渉光を観察する4つの干渉像観察系と、4つの干渉像を処理して第2のレンズのディセンタに対して感度を有する収差のうちひとつの収差を検出する処理装置と、検出した収差から調整量を検出し、調整装置を駆動させる制御装置を有することにより、NAの小さいレンズに対しても高精度で調整を行うことができるようにしたレンズ調整装置が開示されている。
【0007】
また特許文献4には、光を所定の方向に偏向する光偏向装置と、複数のレーザ素子と、ガラスレンズ及びプラスチックレンズを含み、それぞれのレーザ素子からの出射光の断面形状を所定の形状に変換する偏向前光学系と、光偏向装置により偏向されたそれぞれの光を、所定像面に等速で走査するよう結像する2枚のレンズを含む偏向後光学系を備えた光走査装置が開示されている。偏向光学系の2枚のレンズのパワーは、光偏向装置の反射面の回転軸と直交する方向に関し、それぞれ正に規定されている。また、それぞれのレンズの少なくとも1枚のレンズ面は、回転対称面を含まないレンズに形成される。これにより色ずれのないカラー画像を低コストで提供できる画像形成装置に適した光走査装置を提供することができる。
【特許文献1】特開2004−109700号公報
【特許文献2】特開2004−109699号公報
【特許文献3】特開2004−233638号公報
【特許文献4】特開2002−90675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光走査装置には、レンズやミラー等の多数の光学要素がそれぞれ最適な位置に配置されている。これらの光学要素は、レーザダイオードによる発光素子から発光した光ビームの光路を導き、またビーム形状を整えて感光体上に精度よく照射するために配置されている。これらの光学要素は、装置の組み立て調整時や、その後の運転を経た後に、位置や角度の調整が必要となる場合がある。
【0009】
例えば、光ビームを走査するためのポリゴンミラーに、光ビームを収束させる光学系の光学要素に位置ずれを生じた場合には、例えば感光体への光ビームの書き込み位置が、適正な位置からずれて感光体で形成させる画像の質が悪化するという問題が生じる。
【0010】
光学要素の調整は、精度の高い調整を簡便に行うことができるようにすることが好ましい。この場合、光学要素の調整手段は、光学要素の特性に影響を与えることなく、かつ高精度にその角度や位置を調整できる必要がある。
【0011】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、光ビームを走査するための光学系を構成する光学要素の角度や位置を調整する調整機構において、精度の高い調整を簡便に行うことができる調整機構を備えた光走査装置、及び該光走査装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の技術手段は、画像データに応じて光源から出射された複数の光ビームをポリゴンミラーに照射し、複数の光ビームをポリゴンミラーの回転によって走査光とし、複数の走査光が同時に複数の感光体を走査して露光することにより各感光体に潜像を形成する光走査装置において、光走査装置は、それぞれの光ビームをポリゴンミラーに照射する光学要素を一体的に構成するとともに、少なくともポリゴンミラーに照射させる光ビームを、一括的に主走査方向に調整する手段及び副走査方向に調整する手段を備えたことを特徴としたものである。
【0013】
本発明の第2の技術手段は、第1の技術手段において、上記の光ビームを一括的に調整する手段は、それぞれの光ビームをポリゴンミラー上の主走査方向に線状に集光するための副走査方向のみにパワーを有するレンズを挟んで両側に備えたことを特徴としたものである。
【0014】
本発明の第3の技術手段は、第2の技術手段において、調整手段は、副走査方向のみにパワーを有するレンズの光源側光路上で、それぞれの光ビームを主走査方向に変更可能とする手段と、副走査方向のみにパワーを有するレンズの光源と反対側の光路上で、それぞれの光ビームを副走査方向に変更可能とする手段とを有していることを特徴としたものである。
【0015】
本発明の第4の技術手段は、第1ないし3のいずれか1の技術手段において、光走査装置は、光源として第1のレーザダイオード、第2のレーザダイオード、第3のレーザダイオード、及び第4のレーザダイオードを有し、さらに第2ないし第4のレーザダイオードから出射した光ビームを反射させる第1ミラーと、第1のレーザダイオードから出射した光ビーム、及び第1ミラーで反射した光ビームを反射させる第2ミラーと、第2ミラーを出射した光ビームに作用する1次光学系シリンドリカルレンズと、該1次光学系シリンドリカルレンズを出射した光ビームをポリゴンミラーに向けて反射させる第3ミラーとを有し、副走査方向のみにパワーを有するレンズはシリンドリカルレンズであり、光ビームを主走査方向に変更可能とする手段は第2ミラーに設けられ、光ビームを副走査方向に変更可能とする手段は第3ミラーに設けられていることを特徴としたものである。
【0016】
本発明の第5の技術手段は、第4の技術手段において、第1ミラーは複数のミラーよりなるミラー群で構成さていることを特徴としたものである。
【0017】
第6の技術手段は、第1ないし第5の技術手段のいずれか1に記載の光走査装置と、感光体とを備え、光走査装置によって感光体に潜像を形成し、潜像を顕像化することで画像形成を行うことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光走査を行うポリゴンミラーに光ビームを入射させる光学要素の角度や位置を調整する調整機構において、精度の高い調整を簡便に行うことができる。特に、光ビームをポリゴンミラー上の主走査方向に線状に集光するためのシリンドリカルレンズを挟んで両側に調整機構を備え、これら調整機構により主走査方向と副走査方向との調整を分離して行うようにすることで、光ビームの調整を高精度に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の光走査装置が使用される画像形成装置の構成例を示す図である。画像形成装置は、外部から伝達された画像データに応じて、所定のシート(記録用紙)に対して多色及び単色の画像を形成するものである。そして、図示するように、露光ユニット1、現像器2、感光体ドラム3、クリーナユニット4、帯電器5、中間転写ベルトユニット6、定着ユニット7、給紙カセット8、排紙トレイ9等を有して構成されている。
【0020】
なお、本画像形成装置において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像器2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナユニット4は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションが構成されている。
【0021】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、図1に示すように接触型のローラ型やブラシ型の帯電器のほかチャージャー型の帯電器が用いられることもある。
【0022】
露光ユニット1は、本発明に関わる光走査装置に該当するものであり、図1に示すようにレーザ照射部及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成される。露光ユニット1は、レーザビームを走査するポリゴンミラー201と、ポリゴンミラー201によって反射された光ビームを感光体ドラム3に導くためのレンズやミラー等の光学要素が配置されている。露光ユニット1を構成する光走査装置の構成は、後述して具体的に説明する。また露光ユニット1は、この他発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッドを用いる手法もある。
【0023】
露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3を入力された画像データに応じて露光することにより、その表面に、画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有する。現像器2はそれぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーにより顕像化するものである。またクリーナユニット4は、現像・画像転写後における感光体ドラム3上の表面に残留したトナーを、除去・回収する。
【0024】
感光体ドラム3の上方に配置されている中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルトテンション機構63、中間転写ベルト従動ローラ64、中間転写ローラ65、及び中間転写ベルトクリーニングユニット66を備えている。上記中間転写ローラ65は、YMCK用の各色に対応して4本設けられている。
【0025】
中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルトテンション機構63、中間転写ベルト従動ローラ64、及び中間転写ローラ65は、中間転写ベルト61を張架し、矢印M方向に回転駆動させる。また各中間転写ローラ65は、中間転写ベルトユニット6の中間転写ベルトテンション機構63の中間転写ローラ取付部に回転可能に支持されており、感光体ドラム3のトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0026】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム3に接触するように設けられている、そして、感光体ドラム3に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写することによって、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する機能を有している。中間転写ベルト61は、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0027】
感光体ドラム3から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ65によって行われる。中間転写ローラ65には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ65は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM,発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。本実施形態では転写電極としてローラ形状を使用しているが、それ以外にブラシなども用いることが可能である。
【0028】
上述の様に各感光体ドラム3上で各色相に応じて顕像化された静電像は中間転写ベルト61で積層される。このように、積層された画像情報は中間転写ベルト61の回転によって、後述の用紙と中間転写ベルト61の接触位置に配置される転写ローラ10によって用紙上に転写される。
【0029】
このとき、中間転写ベルト61と転写ローラ10は所定ニップで圧接されると共に、転写ローラ10にはトナーを用紙に転写させるための電圧が印加される(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)。さらに、転写ローラ10は上記ニップを定常的に得るために、転写ローラ10もしくは前記中間転写ベルト駆動ローラ62の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)が用いられる。
【0030】
また、上記のように、感光体ドラム3に接触することにより中間転写ベルト61に付着したトナー、若しくは転写ローラ10によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット66によって除去・回収されるように設定されている。中間転写ベルトクリーニングユニット66には、中間転写ベルト61に接触する例えばクリーニング部材としてクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ64で支持されている。
【0031】
給紙カセット8は、画像形成に使用するシート(記録用紙)を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置の露光ユニット1の下側に設けられている。また、画像形成装置の上部に設けられている排紙トレイ9は、印刷済みのシートをフェイスダウンで集積するためのトレイである。
【0032】
また、画像形成装置には、給紙カセット8のシートを転写ローラ10や定着ユニット7を経由させて排紙トレイ9に送るための、略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。給紙カセット8から排紙トレイ9までの用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11、複数の搬送ローラ12a〜12e,レジストローラ13、転写ローラ10、定着ユニット7等が配されている。
【0033】
搬送ローラ12a〜12eは、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。またピックアップローラ11は、給紙カセット8の端部近傍に備えられ、給紙カセット8からシートを1枚ずつピックアップして用紙搬送路Sに供給する。
【0034】
また、レジストローラ13は、用紙搬送路Sを搬送されているシートを一旦保持するものである。そして、感光体ドラム3上のトナー像の先端とシートの先端を合わせるタイミングでシートを転写ローラ10に搬送する機能を有している。
【0035】
定着ユニット7は、ヒートローラ71及び加圧ローラ72を備えており、ヒートローラ71及び加圧ローラ72は、シートを挟んで回転するようになっている。またヒートローラ71は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部によって所定の定着温度となるように設定されており、加圧ローラ72でトナーをシートに熱圧着することにより、シートに転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、シートに対して熱定着させる機能を有している。
【0036】
次に、シート搬送経路を詳細に説明する。上述のように画像形成装置には予めシートを収納する給紙カセット8が設けられている。給紙カセット8からシートを給紙するために、各々ピックアップローラ11が配置され、シートを1枚ずつ搬送路Sに導くようになっている。
【0037】
給紙カセット8から搬送されるシートは用紙搬送路Sの搬送ローラ12aによってレジストローラ13まで搬送され、シートの先端と中間転写ベルト61上の画像情報の先端を整合するタイミングで転写ローラ10に搬送され、シート上に画像情報が書き込まれる。その後、シートは定着ユニット7を通過することによってシート上の未定着トナーが熱で溶融・固着され、その後に配された搬送ローラ12cを経て排紙トレイ9上に排出される。
【0038】
上記の搬送経路は、シートに対する片面印字要求のときのものであるが、これに対して両面印字要求の時は、上記のように片面印字が終了し定着ユニット7を通過したシートの後端が最終の搬送ローラ12cでチャックされたときに、搬送ローラ12cが逆回転することによってシートを搬送ローラ12d,12eに導く。そしてその後レジストローラ13を経てシート裏面に印字が行われた後にシートが排紙トレイ9に排出される。
【0039】
次に本発明に光走査装置の実施形態を具体的に説明する。
本実施形態の光走査装置は、上記のように複数の感光体ドラム3を有し、複数本の光ビームによって各感光体ドラム3を同時に走査露光して各感光体ドラム3に互いに異なる色の画像を形成し、各色の画像を同一の転写媒体上に重ね合わせることによってカラー画像を形成するタンデム方式の画像形成装置に適用可能である。
【0040】
上述のように、画像形成装置には、ブラック(K)画像形成用の感光体ドラム、シアン(C)画像形成用の感光体ドラム、マゼンタ(M)画像形成用の感光体ドラム、イエロー(Y)画像形成用の感光体ドラムが略等間隔で配置されている。タンデム方式の画像形成装置は、各色の画像を同時に形成するので、カラー画像の形成に要する時間を大幅に短縮することができる。
尚、以下では、K、C、M、Yによって、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローをそれぞれ表すものとする。
【0041】
感光体ドラム3を露光するための本発明に係る光走査装置は、それぞれユニット化された1次光学系(入射光学系)と、2次光学系(出射光学系)とから構成される。1次光学系は、YMCKの光ビームをそれぞれ出射する4つの半導体レーザと、これらの光ビームを2次光学系のポリゴンミラー201(回転多面鏡)に導くミラー及びレンズ等の光学要素とを備えている。また2次光学系は、被走査体である感光体ドラム3上にレーザビームを走査する上記ポリゴンミラー201と、ポリゴンミラー201によって反射された光ビームを感光体ドラム3に導くためのレンズやミラー等の光学要素、及び光ビームを検出するBDセンサ等を備えている。また、上記ポリゴンミラー201は、各色で共有する構成を採用している。
【0042】
図2は、本発明の光走査装置の1次光学系ユニットの構成例を示す平面図、図3は図2の1次光学系ユニットの斜視概略図である。図2及び図3において、100は1次光学系ユニット、101はレーザダイオード、102はコリメータレンズ、103はアパーチャ、104はレーザドライブ基板、105はレーザホルダ、106はレンズホルダ、107は鏡筒、108は取付けネジ、110は第1ミラー、111は第2ミラー、112はシリンドリカルレンズ、113は第3ミラー、120は1次光学系の光学要素を配設する基板である。
【0043】
K,C,M,Y用の各レーザダイオード101は、光源駆動手段としてのレーザ駆動回路(図示せず)によって駆動される。このレーザ駆動回路には、画像形成装置の制御部から出力される各種制御信号や画像処理部から供給される画像データが入力され、これら制御信号及び画像データに従って各レーザダイオード101の発光を制御する。
【0044】
各レーザダイオード101のレーザ出射側には、それぞれK,C,M,Y用のコリメータレンズ102が配設されている。各レーザダイオード101から出力された光ビームは、ほぼ楕円形状の拡散光であり、各色毎に備えられたコリメータレンズ102によって平行光とされる。各色のコリメータレンズ102の後には、所定の間隙をもったアパーチャ(スリット)103が配置され、光ビームの径が規制される。なお、本明細書において、平行光とは、ビームが進行してもその光束の径が変わらない状態を指すものとし、複数のビームの光軸が互いに平行である状態と区別する。
【0045】
上記各レーザダイオード101はレーザホルダ105に取り付けられている。レーザホルダ105は、1次光学系の基板上に一体形成されているレンズホルダ106の背面側に取り付けられる。またコリメータレンズ102及びアパーチャ103が配置された鏡筒107がレンズホルダ106の前面側に取り付けられる。レーザダイオード101から発光した光ビームは、コリメータレンズ102及びアパーチャ103を介して鏡筒107の外部前方に出射する。
【0046】
K用レーザダイオード101の鏡筒107から出射した光ビームは、K用コリメータレンズ102とK用アパーチャ103を経て、第2ミラー111に向かう。また、C,M,Y用のレーザダイオード101の鏡筒107から出射した光ビームは、それぞれC,M,Y用のコリメータレンズ102及びアパーチャ103を経て、第1ミラー110に入射する。第1ミラー110は、C,M,Y用の光ビームのそれぞれを個別に反射する3つのミラーから構成され、これらミラーによって反射された各色用の光ビームは、上記Kの光ビームの進行方向に向かって進み、第2ミラー111に入射する。
【0047】
各色のレーザダイオード101は、副走査方向(基板面に垂直な方向)について、互いに異なる高さに配置されている。高さの差は例えば約2mmに設定されている。そして第1ミラー110は、対応するレーザダイオード101から出射した光ビームのみを反射し得る位置に配置されている。また第1ミラー110を構成する3つ(C,M,Y用)のミラーは、主走査方向から見てK用レーザダイオード101から出射した光ビームに重なる位置に配置されている。
【0048】
上記のような構成により、K用レーザダイオード101から出射したK用の光ビームと、第1ミラー110によって反射されたC,M,Y用の光ビームは、主走査方向については全て一致し、副走査方向についてはずれ(高低差)を有して、それぞれの光ビームの光軸が互いに平行となって第2ミラー111に入射する。そしてここでは、各コリメータレンズ102を出射した各色用の光ビームは、光ビームが進行してもその光束の径が変わらない平行光である。
【0049】
第2ミラー111は、入射したK,C,M,Yの各色用の光ビームをシリンドリカルレンズ112に入射させる。シリンドリカルレンズ112は、入射した各色用の光ビームを副走査方向に集束するために配されている。そしてシリンドリカルレンズ112を出射した各色用の光ビームは、第3ミラー113で反射され、ポリゴンミラー201の反射面に入射する。
【0050】
ここでは、シリンドリカルレンズ112は、副走査方向にレンズパワーを有しており、シリンドリカルレンズ112からポリゴンミラー201までの光路長に従って、副走査方向にはポリゴンミラー201の反射面近傍で光ビームが収束するように設定されている。すなわち、それぞれが平行光となってシリンドリカルレンズ112に入射した各色用の光ビームは、副走査方向ではポリゴンミラー201の反射面の表面でほぼ収束する。また同時に光軸が互いに平行となってシリンドリカルレンズ112に入射した各色用の光ビームは、副走査方向についてポリゴンミラー201の表面のほぼ同一位置に収束する。
【0051】
このシリンドリカルレンズ112は、主走査方向にはレンズパワーを有していないため、入射した各色用の光ビームは、主走査方向についてはそのまま平行光として出射して、ポリゴンミラー201の反射面に入射する。通常、ポリゴンミラー201に対して、主走査方向には平行光を入射させる。主走査方向に収束光であると、後述するfθレンズによって負の像面湾曲が生じて好ましくない。また副走査方向については、反射面の面倒れを補正するために、反射面の表面に収束させるようにする。例えば、ポリゴンミラー201の反射面に入射させる光ビームの副走査方向の位置は、反射面の高さ方向での中央近傍となる。
【0052】
本実施形態の光走査装置では、YMCK用の4本の光ビームを2次光学系の1つのポリゴンミラー201で偏向させる。この場合、ポリゴンミラー201を経た後に4本の光ビームを分離できるようにし、かつ、各色用の光ビームに主走査方向のずれが生じないようにする必要がある。このために、1次光学系のシリンドリカルレンズ112から出射した4本の光ビームが、ポリゴンミラー201に対して、主走査方向については同一方向から同一位置に入射し、副走査方向については角度差のある方向から略同一位置に入射するように設定する。これらの光路設定は、上記の副走査方向に高低差を持ったレーザダイオード101の配置によって、各色用の光ビームが主走査方向については全て一致し、副走査方向については所定の高低差を有して進行することによって実現されている。これにより、走査光学系によって、各色用の光ビームを分離することができる。
【0053】
また上記の構成により、1次光学系の各色用のコリメータレンズ102からシリンドリカルレンズ112までの光路上では、各色用の光ビームは平行光でかつその光軸が互いに平行であるため、コリメータレンズ102からシリンドリカルレンズ112までの光路長を自由に設定することができる。
【0054】
図4は、光走査装置の2次光学系の構成例を示す図で、2次光学系ユニットの筐体内部を上面からみた構成図を図4(A)に、側面からみた筐体223内部及び感光体の概略構成を図4(B)に示すものである。図4において、200は2次光学系ユニット、201はポリゴンミラー、202は第1fθレンズ、203は第2fθレンズ、204はK用ミラー、205はC用第1ミラー、206はC用第2ミラー、207はC用第3ミラー、208はM用第1ミラー、209はM用第2ミラー、210はY用第1ミラー、211はY用第2ミラー、212はY用第3ミラー、213は同期ミラー、214はBDセンサレンズ、215はBDセンサ、220は各色用のシリンドリカルレンズ、221a,221bは固定用シャフト、222は1次光学系ユニットの設置位置、223は筐体、224はシリンドリカルレンズを保持する枠である。
【0055】
ポリゴンミラー201は、回転方向に複数(例えば7つ)の反射面を有し、図示しないポリゴンモータによって回転駆動される。ポリゴンモータは、ポリゴンミラー201を設置する筐体223の裏面側凹部に設置され、さらにその凹部を密閉するための蓋が設けられる。またポリゴンモータには放熱のためのフィンが設けられる。1次光学系のレーザダイオード101から出射して第3ミラー113で反射した各色の光ビームは、2次光学系のポリゴンミラー201の反射面によって反射し、その後の各光学要素を介して感光体ドラム3を走査する。
【0056】
上記のように、副走査方向について角度差を有してポリゴンミラー201に入射した各レーザビームは、その後も角度差を維持し、第1fθレンズ202及び第2fθレンズ203よりなる走査光学系を経た後に分離される。
第1fθレンズ202は、主走査方向にレンズパワーを有している。これにより主走査方向において、ポリゴンミラー201から出射した平行光の光ビームを、感光体ドラム3表面で所定のビーム径となるように収束させる。また第1fθレンズ202は、ポリゴンミラー201の等角速度運動により主走査方向に等角速度で移動する光ビームを、感光体ドラム3上の走査ライン上で等線速で移動するように変換する機能を有している。
【0057】
また第2fθレンズ203は、主に副走査方向にレンズパワーを有している。これにより副走査方向において、ポリゴンミラー201から出射した拡散光の光ビームを平行光に変換する。また第2fθレンズ203は、主走査方向にもレンズパワーを有していて、第1fθレンズ202の機能を補完してビーム径の制御及びビーム等線速移動を精度よく実行できるようにしている。
【0058】
上記の第1fθレンズ202及び第2fθレンズ203は、樹脂によって作製される。fθレンズの所望の特性を得るための非球面形状を形成するために、fθレンズには樹脂材料を用いることが好適である。特に、第2fθレンズ203は、主走査方向と副走査方向の両方にレンズパワーを持っているため、これを実現する複雑な非球面形状を得るためには、樹脂材料を用いて作製することが好ましい。樹脂材料は、透明性、成形性、光弾性率、耐熱性、吸湿性、機械的強度、コスト等の特性を考慮して最適な材料が選択される。
【0059】
上記ポリゴンミラー201で分離され、第1及び第2fθレンズ202,203を通過した各色用の4本の光ビームのうち、K用の光ビームは、第1及び第2fθレンズ202,203を経て、K用ミラー204で反射し、K用シリンドリカルレンズ220を通って感光体ドラム3(K)に入射する。感光体ドラム3上ではその走査領域に描画が行われる。
また分離されたY用の光ビームは、Y用第1〜第3ミラー210,211,212で反射して、Y用シリンドリカルレンズ220を通って感光体ドラム3(Y)に入射する。同様に、分離されたC用の光ビームは、C用第1〜第3ミラー205,206,207で反射して、C用シリンドリカルレンズ220を通って感光体ドラム3(C)に入射する。また分離されたM用の光ビームは、M用第1〜第2ミラー208,209で反射して、M用シリンドリカルレンズ220を通って感光体ドラム3(M)に入射する。
【0060】
2次光学系において各色用のシリンドリカルレンズ220は、副走査方向にレンズパワーを有している。これにより副走査方向について、平行光で入射する光ビームを感光体ドラム3上で所定のビーム径となるように収束させる。また主走査方向については、上述の第1fθレンズ202で収束光となった光ビームがそのまま感光体ドラム3上で収束する。シリンドリカルレンズ220は、樹脂を用いて形成されている。光走査装置のような走査幅全域をカバーする長尺のシリンドリカルレンズ220は、樹脂レンズとすることが好適である。
【0061】
シリンドリカルレンズ220を出射した各色の光ビームは、帯電された感光体ドラム3を画像データに応じて露光する。これにより、感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。そして現像器によって、それぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像がYMCKのトナーによりそれぞれ顕像化される。
【0062】
以下に上述の実施形態における各光学要素間の各色の光ビームの状態を整理して説明する。図5は、上記1次光学系及び2次光学系の各色の個々の光ビームの状態を説明するための図で、図5(A)は、主走査方向における一つの光ビームの形状を模式的に示す図で、図5(B)は、副走査方向における一つの光ビームの形状を模式的に示す図である。
【0063】
まず図5(A)に示す主走査方向の光ビームの挙動を説明する。1次光学系のレーザダイオード101から出射した光ビームは、拡散光となってコリメータレンズ102に入射する。このときの主走査方向については、レーザダイオード101からの拡散光の角度は約30°である。
そしてコリメータレンズ102は、入射した拡散光を平行光に変換して出射させる。コリメータレンズ102の後には、アパーチャ103が設けられていて、そのアパーチャ103の開口によって光ビームの径が規制される。アパーチャ103の主走査方向の開口径はここでは約7mmである。
【0064】
アパーチャ103を出射した平行光の光ビームは、第1ミラー110及び第2ミラー111(Kについては第2ミラー111のみ)(図5では図示せず)を経て1次光学系のシリンドリカルレンズ112に入射する。1次光学系のシリンドリカルレンズ112は、主走査方向にレンズパワーを有しないため、ここでは入射した平行光はそのままの状態で通過する。
シリンドリカルレンズ112を出射した平行光の光ビームは、第3ミラー113(図5では図示せず)を経てポリゴンミラー201の反射面に入射する。図示するようにポリゴンミラー201の反射面は、その回転に伴って主走査方向に角度が変化する。
【0065】
ポリゴンミラー201で反射した平行光の光ビームは、等角速度で主走査方向に移動しながら第1fθレンズ202に入射し、さらに第2fθレンズ203に入射する。第1fθレンズ202及び第2fθレンズ203は、主走査方向にレンズパワーを有しており、平行光で入射する光ビームを感光体ドラム3表面で収束する収束光に変換する。また等角速度で主走査方向に移動する光ビームを、感光体ドラム3表面の走査ライン上で等線速で移動するよう変換する。
第2fθレンズ203は、第1fθレンズ202を補完するもので、第1fθレンズ202から出射した光ビームを更に補正して、光ビームが目的の挙動を示すようにするものである。
【0066】
また上記第2fθレンズ203と感光体ドラム3との間の光路上には、各色の光路を折り返して目的の感光体ドラム3に導くためのミラー(各色ごとに1または複数のミラー)(図5では図示せず)と、2次光学系のシリンドリカルレンズ220とが設けられている。シリンドリカルレンズ220は、主走査方向にレンズパワーを有していないため、第2fθレンズ203を出射した光ビームは、主走査方向には作用を受けずに感光体ドラム3へ向かう。このときに感光体ドラム3上の主走査方向の光ビームのスポット径は、約60μmである。
【0067】
次に図5(B)に示す副走査方向の光ビームの挙動を説明する。レーザダイオード101から出射した光ビームは、主走査方向と同様に拡散光となってコリメータレンズ102に入射する。ただしこのときの副走査方向については、レーザダイオード101からの拡散光の角度は主走査方向より小さく約11°である。
そしてコリメータレンズ102は、入射した拡散光を平行光に変換して出射させる。コリメータレンズ102の後には、アパーチャ103が設けられていて光ビームの径がその開口により規制される。アパーチャ103の開口径はここでは約2mmである。
【0068】
アパーチャ103を出射した平行光の光ビームは、第1ミラー110及び第2ミラー111(Kについては第2ミラー111のみ)(図5では図示せず)を経て1次光学系のシリンドリカルレンズ112に入射する。1次光学系のシリンドリカルレンズ112は、副走査方向にレンズパワーを有していて、入射した平行光はポリゴンミラー201の反射面でほぼ収束する収束光に変換される。ここでは、シリンドリカルレンズ112を出射した平行光の光ビームは、第3のミラー113(図4では図示せず)を経てポリゴンミラー201の反射面に入射する。副走査方向については反射面の高さ方向のほぼ中央に光ビームを収束させる。このときポリゴンミラー201の反射面と感光体ドラム3表面との間で共役関係を生成しておくことにより、反射面の面倒れを補正する。
【0069】
ポリゴンミラー201で反射した光ビームは、拡散光となって第1fθレンズ202に入射し、さらに第2fθレンズ203に入射する。第1fθレンズ202は副走査方向にはレンズパワーを有していないため、第1fθレンズ202に入射した拡散光の光ビームはそのまま通過する。
第2fθレンズ203は、副走査方向にレンズパワーを有していて、拡散光で入射した光ビームを副走査方向に平行光となるように変換する。
【0070】
第2fθレンズ203と感光体ドラム3との間の光路上には、各色の光路を折り返して目的の感光体ドラム3に導くためのミラー(各色ごとに1または複数のミラー)(図5では図示せず)と、2次光学系のシリンドリカルレンズ220とが設けられている。シリンドリカルレンズ220は、副走査方向にレンズパワーを有していて、第2fθレンズ203を出射した平行光の光ビームは、感光体ドラム3表面でほぼ収束する光に変換される。このときに感光体ドラム3上の光ビームの副走査方向のスポット径は、約67μmである。
【0071】
図6は、副走査方向における4つの光ビームの光路を模式的に示す図である。YMCKの4つの色用の光ビームの光路を考えるとき、上述のように主走査方向にはこれら4つの光ビームが同一の位置を通るが、副走査方向には、レーザダイオード101の高さの差の分だけ互いに離れてレーザダイオード101から出射する。
【0072】
図6に示すように、4つのレーザダイオード101(YMCK用)から出射してコリメータレンズ102を通過した4つの光ビームは、その光軸が互いに平行となって1次光学系のシリンドリカルレンズ112に入射する。シリンドリカルレンズ112では、4つの光ビームのそれぞれを、ポリゴンミラー201の反射面上のほぼ中央に収束するように変換する。つまり、副走査方向については、ポリゴンミラー201の反射面に対して互いに角度差をもって4つの光ビームがほぼ同一位置に収束する。なお主走査方向については、ポリゴンミラー201の反射面に対して4つのビームが同一方向から同一位置に入射する。なお、図6においても、第1のミラー110ないし第3のミラー113はその図示を省略している。
【0073】
ポリゴンミラー201で反射した4つの光ビームは、再び互いに角度差をもって拡散し、第1fθレンズ202から第2fθレンズ203に入射する。第1fθレンズ202は副走査方向にはレンズパワーを有していないため、第1fθレンズ202に入射した4つの光ビームはそのまま通過する。第2fθレンズ203は、副走査方向にレンズパワーを有していて、入射した4つの光ビームをその光軸が互いに平行となるように変換する。
【0074】
第2fθレンズ203と感光体ドラム3との間の光路上には、各色の光路を折り返して目的の感光体ドラム3に導くためのミラー(各色ごとに1または複数のミラー)(図6では図示せず)が設けられているが、これらのミラーは、第2fθレンズ203を出射した4つの光ビームの光軸のずれを利用して、4つのビームを切り分けてそれぞれ目的の感光体ドラム3上に導いている。また2次光学系の第2fθレンズ203からシリンドリカルレンズ220までの光路長は、各色用の4つの光ビームにおいて全て同一となっている。
【0075】
次に光ビームの感光体ドラム3上での主走査の開始前に、光ビームを検知して書き出しの基準信号を発生させるためのBD(Beam Detect)センサの設置例について説明する。
ポリゴンミラー201で反射して感光体ドラム3へ向かう光ビームのうち、感光体ドラム3上での画像形成に使用される光ビーム、すなわち主走査ラインを走査するための光ビームを主走査ビームとする。ここで主走査ビームが走査する際に通過する空間領域を画像領域とし、画像領域以外の領域を非画像領域とする。
【0076】
光ビームが感光体ドラム3を走査するとき、光ビームは主走査ラインを定期的に走査する。このときに、感光体ドラム3は回転しているので、感光体ドラム3は一定期間ごとに異なる場所を走査されることになる。光ビームが走査される毎に、走査ラインの書き始めの位置は同一である必要がある。
この走査ラインの書き始めの位置を検出するために、光走査装置には同期検出装置が設けられている。図4を参照して説明すると、同期検出装置は上記非画像領域の光ビームを同期検出ビームとして検出するためのBDセンサ(同期検出センサ)215と、BDセンサ215に同期検出ビームを導く案内手段である同期検出ビームの折り返しミラー(同期ミラー)213と、BDセンサ215に同期検出ビームを集光するBDセンサレンズ214を有して構成されている。
【0077】
上記同期検出ビームは、同期をとるための信号であり、ポリゴンミラー201を出射した光ビームが、第1及び第2fθレンズ202,203を通過した後に、同期ミラー213で反射された光ビームである。同期検出ビームは、同期ミラー213により折り返され、BDセンサレンズ214を介してBDセンサ215に到達する。このBDセンサ215は受光量に応じたセンサ信号を出力する。そして、光走査装置の制御部(例えば後述するLSUコントローラ)は、BDセンサ215からのセンサ信号に基づいて、画像書き込み開始位置を決定するための同期信号(BD信号)を生成する。具体的にはBDセンサ215の受光量が、少なくともそのレーザビームが感光体ドラム3を露光して静電潜像を形成するのに必要な光量以上の場合に、BD信号が生成される。BD信号は主走査方向の走査開始基準信号として用いられ、この信号を基準として各ラインの主走査方向の書出し開始位置の同期が取られる。
【0078】
また同期検出装置は、BDセンサ215で光ビームが検出できない場合にエラー信号を出力する。光走査装置が組み込まれた画像形成装置では、装置の運転を停止するとともに、例えば所定のサービスコードをその表示画面に表示させることで、走査方向の書き始めの位置の不具合をユーザに知らせる。
【0079】
上記の主走査方向の書き出し位置を検出するBDセンサ215は、K用光ビームの光路上のみに備えられ、4つの光ビームのうちのK用の光ビームのみに対応させ、他の色用の光ビームには、これを参照させることにより、予め決定された画像データの書き出し開始タイミングによって走査を開始させるようにしている。
【0080】
図7は、上記光走査装置の制御系の構成例を説明するブロック図である。
LSUコントローラ301は、画像形成装置の画像処理部402の画像メモリ等から出力される画像データ信号を入力し、画像形成装置の本体制御部401から送られてくる走査開始タイミングに合わせてレーザドライバ回路(LD Driver)302に送り、レーザダイオード(LD)101を点灯制御する。
またLSUコントローラ301は、画像形成装置の主走査方向の仕様に合うようにポリゴンミラーを駆使するポリゴンモータ303の基準回転動作を制御する。また主走査方向の書き始めの位置を検出するBDセンサ215が光ビームを受光することにより主走査のタイミングを検出し、エラーである場合は、エラー信号を本体制御部401に出力する。また副走査方向の書き込み位置を検出するBDセンサ215の検出信号を入力し、エラーである場合は、エラー信号を本体制御部401に出力する。LSUコントローラ301は、ASIC(特定用途向け集積回路)により構成される。
【0081】
次に本実施形態における光学要素の調整機構について説明する。本実施形態の光走査装置は、レーザダイオード101から出射した光ビームを各色用の感光体ドラム3まで導く光路上のミラーやレンズ等の光学要素について、いくつかの調整機構を備えている。調整機構は、光学要素に入射する光ビームに対する該光学要素の角度や位置を調整可能とするものである。これらの調整機構は、光走査装置の組み立て調整時、あるいは組み立て後の任意の時点で適宜調整を行うことができる。
【0082】
本実施形態の光走査装置は、1次光学系の第2ミラー111、第3ミラー113、及び2次光学系のシリンドリカルレンズ220に上記調整機構が備えられている。ただし角度や位置を調整する機構は、これらのみならず、2次光学系の折り返しミラー等に適宜備えられる。例えば、上記BDセンサ215により検出した主走査方向の書き始めの位置は、2次光学系のシリンドリカルレンズ220の前の最終ミラーの角度を変更することによって調整される。
【0083】
以下に1次光学系の第2及び第3ミラー111,113の調整機構について説明する。本実施形態の光走査装置は、1次光学系の第2ミラー111及び第3ミラー113がそれぞれその角度を可変に設定されている。これら第2ミラー111及び第3ミラー113は、それぞれ主走査方向と副走査方向との光ビームの光路調整を分担して機能している。
【0084】
第2ミラー111は、図3に示す矢印Aの方向にその角度を調整することができる。すなわち、第2ミラー111は、レーザダイオード101から出射した副走査方向に光軸が平行な4つの光ビームの反射光路を、主走査方向に調整可能に構成されている。第2ミラー111を角度可変とする構成は限定されるものではないが、例えば、第2ミラー111(もしくは第2ミラー111を保持する枠部)を矢印A方向に回動可能に軸支する支持部材を設け、その支持部材を1次光学系の基板120上に固定する。そして、第2ミラー111の背面側に当接し、第2ミラー111を矢印A方向に回動させる方向に進退する調整ねじを、上記支持部材に設ける。調整者はその調整ねじを適宜調整することにより、第2ミラー111の傾きを変更し、これによって第2ミラー111を出射した光ビームの主走査方向の光路を調整することができる。ここでは、調整ねじを第2ミラー111から離間する方向に調整したときに、第2ミラー111がその調整ねじの動きに追従するように、第2ミラー111を付勢するバネ等の付勢手段を設けてもよい。
【0085】
また第3ミラー113は、図3に示す矢印Bの方向にその角度を調整することができる。すなわち、第3ミラー113は、レーザダイオード101から出射した副走査方向に光軸が平行な4つの光ビームの反射光路を、副走査方向に調整可能に構成されている。第2ミラー111と同様に、第3ミラー113を角度可変とする構成は限定されるものではないが、例えば、第3ミラー113(もしくは第3ミラー113を保持する枠部)を矢印B方向に回動可能に軸支する支持部材を設け、その支持部材を1次光学系の基板120上に固定する。そして、第3ミラー113の背面側に当接し、第3ミラー113を矢印B方向に回動させる方向に進退する調整ねじを上記支持部材に設ける。調整者はその調整ねじを適宜調整することにより、第3ミラー113の傾きを変更し、これによって第3ミラー113を出射した光ビームの副走査方向の光路を調整することができる。ここでは、調整ねじを第3ミラー113から離間する方向に調整したときに、第3ミラー113がその調整ねじの動きに追従するように、第3ミラー113を付勢するバネ等の付勢手段を設けてもよい。
【0086】
上記の構成によって、1次光学系のシリンドリカルレンズを挟んだ前後の光路上の位置で、第2及び第3ミラー111,113によってそれぞれ主走査方向及び副走査方向の光路調整を行うことができる。
なお、第2ミラー111と第3ミラー113の他の構成例として、主走査方向及び副走査方向のいずれか一方向だけでなく、主走査方向と副走査方向の両方に角度調整を行うことができるように構成してもよい。この機構は、第2ミラー111または第3ミラー113のいずれか、もしくはその両方に付与することができる。
【0087】
この場合、例えば、第2/第3ミラー111,113を主走査側及び副走査側の両方に変位可能に保持する枠部を設け、その第2/第3ミラー111,113背面側の一点に当接調整ねじを設ける。そして調整ねじを調整したときに、背面側が押されたときはその部分が前面側に競り出して、結果的に主走査及び副走査方向の角度調整を可能としてもよい。この場合も調整ねじを第3ミラー113から離間する方向に調整したときに、第2/第3ミラー111,113がその調整ねじの動きに追従するように、第2/第3ミラー111,113を付勢するバネ等の付勢手段を設けてもよい。
【0088】
また上記の第2/第3ミラー111,113の調整機構は、光走査装置として構成されたユニットの一方の側から操作が可能に構成される。この一方の側は、例えば、光走査装置を画像形成装置に組み込んだときの、画像形成装置の操作側(前面側)に配置する。このような構成により、第2/第3ミラー111,113の調整を画像形成装置の操作側から簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の光走査装置が使用される画像形成装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の光走査装置の1次光学系ユニットの構成例を示す平面図である。
【図3】図2の1次光学系ユニットの斜視概略図である。
【図4】光走査装置の2次光学系の構成例を示す図である。
【図5】1次光学系及び2次光学系の各色の個々の光ビームの状態を説明するための図である。
【図6】副走査方向における4つの光ビームの光路を模式的に示す図である。
【図7】光走査装置の制御系の構成例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0090】
1…露光ユニット、2…現像器、3…感光体ドラム、4…クリーナユニット、5…帯電器、6…中間転写ベルトユニット、7…定着ユニット、8…給紙カセット、9…排紙トレイ、10…転写ローラ、11…ピックアップローラ、12a,12c,12d,12e…搬送ローラ、13…レジストローラ、61…中間転写ベルト、62…中間転写ベルト駆動ローラ、63…中間転写ベルトテンション機構、64…中間転写ベルト従動ローラ、65…中間転写ローラ、66…中間転写ベルトクリーニングユニット、71…ヒートローラ、72…加圧ローラ、100…1次光学系ユニット、101…レーザダイオード、102…コリメータレンズ、103…アパーチャ、104…レーザドライブ基板、105…レーザホルダ、106…レンズホルダ、107…鏡筒、108…取付けネジ、110…第1ミラー、111…第2ミラー、112…シリンドリカルレンズ、113…第3ミラー、120…基板、200…2次光学系ユニット、201…ポリゴンミラー、202…第1fθレンズ、203…第2fθレンズ、204…K用ミラー、205…C用第1ミラー、206…C用第2ミラー、207…C用第3ミラー、208…M用第1ミラー、209…M用第2ミラー、210…Y用第1ミラー、211…Y用第2ミラー、212…Y用第3ミラー、213…同期ミラー、214…BDセンサレンズ、215…BDセンサ、220…シリンドリカルレンズ、221a,221b…固定用シャフト、222…1次光学系ユニットの設置位置、223…筐体、224…シリンドリカルレンズを保持する枠、301…LSUコントローラ、302…レーザドライバ回路(LD Driver)、303…ポリゴンモータ、401…本体制御部、402…画像処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに応じて光源から出射された複数の光ビームをポリゴンミラーに照射し、該複数の光ビームを前記ポリゴンミラーの回転によって走査光とし、該複数の走査光が同時に複数の感光体を走査して露光することにより各前記感光体に潜像を形成する光走査装置において、
該光走査装置は、それぞれの光ビームを前記ポリゴンミラーに照射する光学要素を一体的に構成するとともに、少なくとも前記ポリゴンミラーに照射させる光ビームを、一括的に主走査方向に調整する手段及び副走査方向に調整する手段を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、前記光ビームを一括的に調整する手段は、それぞれの光ビームを前記ポリゴンミラー上の主走査方向に線状に集光するための副走査方向のみにパワーを有するレンズを挟んで両側に備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光走査装置において、前記調整手段は、前記副走査方向のみにパワーを有するレンズの前記光源側光路上で、それぞれの光ビームを主走査方向に変更可能とする手段と、前記副走査方向のみにパワーを有するレンズの前記光源と反対側の光路上で、それぞれの光ビームを副走査方向に変更可能とする手段とを有していることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載の光走査装置において、該光走査装置は、前記光源として第1のレーザダイオード、第2のレーザダイオード、第3のレーザダイオード、及び第4のレーザダイオードを有し、さらに前記第2ないし第4のレーザダイオードから出射した光ビームを反射させる第1ミラーと、前記第1のレーザダイオードから出射した光ビーム、及び前記第1ミラーで反射した光ビームを反射させる第2ミラーと、前記第2ミラーを出射した光ビームに作用する1次光学系シリンドリカルレンズと、該1次光学系シリンドリカルレンズを出射した光ビームを前記ポリゴンミラーに向けて反射させる第3ミラーとを有し、
前記副走査方向のみにパワーを有するレンズは前記シリンドリカルレンズであり、前記光ビームを主走査方向に変更可能とする手段は前記第2ミラーに設けられ、前記光ビームを副走査方向に変更可能とする手段は前記第3ミラーに設けられていることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光走査装置において、前記第1ミラーは複数のミラーよりなるミラー群で構成さていることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載の光走査装置と、前記感光体とを備え、前記光走査装置によって前記感光体に潜像を形成し、該潜像を顕像化することで画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−337514(P2006−337514A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159525(P2005−159525)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】