説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】燃料添加と還元剤添加とが行われる内燃機関において、NOx浄化率の低下を抑えることのできる排気浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン1の排気通路26には、酸化触媒31、SCR触媒41と、還元剤を排気通路26内に供給する還元剤供給機構200と、排気通路26内に燃料を添加する燃料添加機構と、SCR触媒41で浄化される前のNOx濃度を検出する第1NOxセンサ130とが備えられている。制御装置80は、第1NOxセンサ130で検出されるNOx濃度に基づいて還元剤の添加量を制御する。そして、制御装置80は、燃料添加機構による燃料添加が停止から酸化触媒31でのNOx還元反応が収まるまでの期間が経過した後に還元剤添加を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、排気通路に設けられた酸化触媒と、この酸化触媒よりも下流に設けられて還元剤の添加によりNOx(窒素酸化物)を浄化するNOx浄化触媒と、還元剤を排気通路内に供給する還元剤供給機構と、酸化触媒よりも上流の排気通路内に機関の燃料を添加する燃料添加機構とを備える内燃機関の排気浄化装置が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
この排気浄化装置では、還元剤供給機構から排気通路に向けて尿素水が噴射される。噴射された尿素水は、排気熱による加水分解によってアンモニアとなる。そして、このアンモニアが還元剤としてNOx浄化触媒に供給される。
【0004】
また、燃料添加機構から添加された燃料が酸化触媒で酸化されることにより、排気の温度が上昇し、これにより各種触媒の早期活性化等が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−255905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排気中のNOxを適切に浄化するには、NOx浄化触媒で浄化される前の排気中のNOx濃度をNOxセンサで検出し、その検出されたNOx濃度に基づいて還元剤の添加量を調整することが望ましい。なお、NOx濃度は、NO(一酸化窒素)濃度とNO2(二酸化窒素)濃度との和であり、以下、NOx濃度中におけるNO濃度の比率をNO比率という[NO比率=NO濃度/(NO濃度+NO2濃度)]。
【0007】
ところで、燃料添加が行われると酸化触媒でNOxの還元反応(例えばNO2の還元反応など)が生じる。そのため、NO2の量が減少する一方でNOの量は増加する。従って、NOx濃度自体は同じでも、燃料添加の実行時には、非実行時と比べてNO比率が増加する。
【0008】
このようにしてNO比率が変化すると、同じNOx濃度であってもNOxセンサの出力値は異なるようになるため、NOx濃度を正確に検出することが困難となる。NOx濃度を正確に検出できない場合には、NOx濃度に基づいた還元剤の添加量制御を適切に行うことができなくなり、場合によってはNOx浄化率が低下するおそれがある。
【0009】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料添加と還元剤添加とが行われる内燃機関において、NOx浄化率の低下を抑えることのできる排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。なお、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「上流」及び「下流」は、排気系での排気の流れ方向を基準にするものである。
【0011】
請求項1に記載の発明は、排気通路に設けられた酸化触媒と、同酸化触媒よりも下流に設けられて還元剤の添加によりNOxを浄化するNOx浄化触媒と、還元剤を排気通路内に供給する還元剤供給機構と、前記酸化触媒よりも上流の排気通路内に機関の燃料を添加する燃料添加機構と、前記NOx浄化触媒で浄化される前の排気中のNOx濃度を検出するNOxセンサとを備え、前記NOx濃度に基づいて前記還元剤の添加量を制御する内燃機関の排気浄化装置において、前記燃料添加機構による燃料添加が停止した後に、前記還元剤供給機構による還元剤添加を行うことをその要旨とする。
【0012】
同構成によれば、燃料添加が停止した後、つまり燃料添加による酸化触媒でのNO2の還元反応が生じておらず、NOxセンサによるNOx濃度の検出が精度よく行えるときに、還元剤添加が行われる。従って、NOxセンサの検出値に基づく還元剤の添加量制御が適切に行えるようになる。そのため、燃料添加と還元剤添加とが行われる内燃機関において、NOx浄化率の低下を抑えることできるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記燃料添加機構による燃料添加が停止から前記酸化触媒でのNOxの還元反応が収まるまでの期間が経過した後に、前記還元剤供給機構による還元剤添加を行うことをその要旨とする。
【0014】
酸化触媒でのNOxの還元反応は、燃料添加を停止すると直ちに収まるわけではなく、ある程度の期間継続する。そこで、同構成では、燃料添加が停止から酸化触媒でのNOxの還元反応が収まるまでの期間が経過した後に、還元剤供給機構による還元剤添加を行うようにしている。そのため、NOxセンサによるNOx濃度の検出をより精度よく行えるようになり、NOx浄化率の低下をより適切に抑えることができるようになる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記還元剤添加機構は、添加弁から還元剤を間欠供給するとともに、燃料添加が行われているときには還元剤添加を中断するものであり、還元剤を間欠供給するときの添加時間が、還元剤添加の中断回数に応じて変更されることをその要旨とする。
【0016】
機関運転中ではNOxが連続して発生するため、NOxを浄化するための還元剤の添加は可能な限り継続して行うことが望ましい。
他方、燃料添加が行われているときには、排気通路中に酸化剤として燃料が供給されるため、還元剤の添加は中断することが望ましい。しかし、このようにして還元剤の添加を中断すると、NOxを浄化するための還元剤の量が不足するため、NOx浄化率が低下するおそれがある。
【0017】
そこで同構成では、まず、還元剤を間欠供給するとともに、燃料添加が行われているときには還元剤添加を中断するようにしている。そして、還元剤を間欠供給するときの添加時間を、還元剤添加の中断回数に応じて変更するようにしている。従って、還元剤の不足度合に応じて、排気通路に供給される還元剤の量を調整することができる。そのため、還元剤添加の中断に伴うNOx浄化率の低下を抑えることができるようになる。
【0018】
還元剤添加の中断回数に応じて還元剤の添加時間を変更する場合には、請求項4に記載の発明によるように、前記中断回数が多いときほど前記添加時間は長くされる、という構成を採用することができる。この構成によれば、還元剤添加の中断回数が多く、還元剤の不足度合が高いときほど、排気通路に供給される還元剤の量が多くなるため、還元剤添加の中断に伴うNOx浄化率の低下を適切に抑えることができるようになる。また、還元剤の添加時間が長くされると、添加弁の開弁時間が長くなるため、所定期間内に必要な量の還元剤を間欠添加にて供給する際の添加弁の開閉回数が少なくなる。従って、添加弁の耐久性を向上させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記中断回数に応じて前記添加時間が変更されるときには、還元剤の添加量が増量補正されることをその要旨とする。
【0020】
同構成によれば、還元剤添加の中断による還元剤の供給不足が、添加量の増量補正によって補われるため、還元剤添加の中断に伴うNOx浄化率の低下をより適切に抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置の第1実施形態について、これが適用される内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図2】同実施形態にて実行される尿素水添加の中断処理の手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態における尿素水添加の実行態様を示すタイミングチャート。
【図4】第2実施形態で実行される添加インターバルの可変処理の手順を示すフローチャート。
【図5】同実施形態での尿素水添加の中断回数と添加インターバルとの関係を示すグラフ。
【図6】(A)は、同実施形態において添加インターバルが短いときの添加態様を示すタイムチャート。(B)は、同実施形態において添加インターバルが長いときの添加態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の排気浄化装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
【0023】
図1に、本実施形態にかかる排気浄化装置が適用されたディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という)、並びにそれらの周辺構成を示す概略構成図を示す。
エンジン1には複数の気筒#1〜#4が設けられている。シリンダヘッド2には複数の燃料噴射弁4a〜4dが取り付けられている。これら燃料噴射弁4a〜4dは各気筒#1〜#4の燃焼室に燃料を噴射する。また、シリンダヘッド2には新気を気筒内に導入するための吸気ポートと、燃焼ガスを気筒外へ排出するための排気ポート6a〜6dとが各気筒#1〜#4に対応して設けられている。
【0024】
燃料噴射弁4a〜4dは、高圧燃料を蓄圧するコモンレール9に接続されている。コモンレール9はサプライポンプ10に接続されている。サプライポンプ10は燃料タンク内の燃料を吸入するとともにコモンレール9に高圧燃料を供給する。コモンレール9に供給された高圧燃料は、各燃料噴射弁4a〜4dの開弁時に同燃料噴射弁4a〜4dから気筒内に噴射される。
【0025】
吸気ポートにはインテークマニホールド7が接続されている。インテークマニホールド7は吸気通路3に接続されている。この吸気通路3内には吸入空気量を調整するための吸気絞り弁16が設けられている。
【0026】
排気ポート6a〜6dにはエキゾーストマニホールド8が接続されている。エキゾーストマニホールド8は排気通路26に接続されている。
排気通路26の途中には、排気圧を利用して気筒に導入される吸入空気を過給するターボチャージャ11が設けられている。同ターボチャージャ11の吸気側コンプレッサと吸気絞り弁16との間の吸気通路3にはインタークーラ18が設けられている。このインタークーラ18によって、ターボチャージャ11の過給により温度上昇した吸入空気の冷却が図られる。
【0027】
また、排気通路26の途中にあって、ターボチャージャ11の排気側タービンの下流には、排気を浄化する第1浄化部材30が設けられている。この第1浄化部材30の内部には、排気の流れ方向に対して直列に酸化触媒31及びフィルタ32が配設されている。
【0028】
酸化触媒31には、排気中のHCを酸化処理する触媒が担持されている。また、フィルタ32は、排気中のPM(粒子状物質)を捕集する部材であって、多孔質のセラミックで構成されている。このフィルタ32には、PMの酸化を促進させるための触媒が担持されており、排気中のPMは、フィルタ32の多孔質の壁を通過する際に捕集される。
【0029】
また、エキゾーストマニホールド8の集合部近傍には、酸化触媒31やフィルタ32に添加剤として燃料を供給するための燃料添加弁5が設けられている。この燃料添加弁5は、燃料供給管27を介して前記サプライポンプ10に接続されている。なお、燃料添加弁5の配設位置は、排気系にあって第1浄化部材30の上流側であれば適宜変更するも可能である。
【0030】
フィルタ32に捕集されたPMの量(以下、PM堆積量PMsmという)が所定値を超えると、フィルタ32の再生処理が開始されて燃料添加弁5からはエキゾーストマニホールド8内に向けて燃料が噴射される。この燃料添加弁5から噴射された燃料は、酸化触媒31に達すると燃焼され、これにより排気温度の上昇が図られる。そして、酸化触媒31にて昇温された排気がフィルタ32に流入することにより、同フィルタ32は昇温され、これによりフィルタ32に堆積したPMが酸化処理されてフィルタ32の再生が図られる。そして、PM堆積量PMsmが所定の再生終了値PMe以下にまで減少すると、燃料添加弁5からの燃料噴射が終了されて、再生処理は終了される。
【0031】
また、排気通路26の途中にあって、第1浄化部材30の下流には、排気を浄化する第2浄化部材40が設けられている。第2浄化部材40の内部には、還元剤を利用して排気中のNOxを浄化するNOx浄化触媒として、選択還元型NOx触媒(以下、SCR触媒という)41が配設されている。
【0032】
さらに、排気通路26の途中にあって、第2浄化部材40の下流には、排気を浄化する第3浄化部材50が設けられている。第3浄化部材50の内部には、排気中のアンモニアを浄化するアンモニア酸化触媒51が配設されている。
【0033】
エンジン1には、上記SCR触媒41に還元剤を供給する還元剤供給機構としての尿素水供給機構200が設けられている。尿素水供給機構200は、尿素水を貯留するタンク210、排気通路26内に尿素水を噴射供給する尿素添加弁230、尿素添加弁230とタンク210とを接続する供給通路240、供給通路240の途中に設けられたポンプ220にて構成されている。
【0034】
尿素添加弁230は、第1浄化部材30と第2浄化部材40との間の排気通路26に設けられており、その噴射孔はSCR触媒41に向けられている。この尿素添加弁230が開弁されると、供給通路240を介して排気通路26内に尿素水が噴射供給される。
【0035】
ポンプ220は電動式のポンプであり、正回転時には、タンク210から尿素添加弁230に向けて尿素水を送液する。一方、逆回転時には、尿素添加弁230からタンク210に向けて尿素水を送液する。つまり、ポンプ220の逆回転時には、尿素添加弁230及び供給通路240から尿素水が回収されてタンク210に戻される。
【0036】
また、尿素添加弁230とSCR触媒41との間の排気通路26内には、尿素添加弁230から噴射された尿素水をSCR触媒41の上流で分散させることにより同尿素水の霧化を促進する分散板60が設けられている。
【0037】
尿素添加弁230から噴射された尿素水は、排気の熱によって加水分解されてアンモニアとなる。そしてこのアンモニアがNOxの還元剤としてSCR触媒41に供給される。SCR触媒41に供給されたアンモニアは、同SCR触媒41に吸蔵されてNOxの還元に利用される。なお、加水分解されたアンモニアの一部は、SCR触媒41に吸蔵される前に直接NOxの還元に利用される。
【0038】
この他、エンジン1には排気再循環装置(以下、EGR装置という)が備えられている。このEGR装置は、排気の一部を吸入空気に導入することで気筒内の燃焼温度を低下させ、NOxの発生量を低減させる装置である。この排気再循環装置は、吸気通路3とエキゾーストマニホールド8とを連通するEGR通路13、同EGR通路13に設けられたEGR弁15、及びEGRクーラ14等により構成されている。EGR弁15の開度が調整されることにより排気通路26から吸気通路3に導入される排気再循環量、すなわちEGR量が調量される。また、EGRクーラ14によってEGR通路13内を流れる排気の温度が低下される。
【0039】
エンジン1には、機関運転状態を検出するための各種センサが取り付けられている。例えば、エアフロメータ19は吸気通路3内の吸入空気量GAを検出する。絞り弁開度センサ20は吸気絞り弁16の開度を検出する。機関回転速度センサ21はクランクシャフトの回転速度、すなわち機関回転速度NEを検出する。アクセルセンサ22はアクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル操作量ACCPを検出する。外気温センサ23は、外気温THoutを検出する。車速センサ24はエンジン1が搭載された車両の車速SPDを検出する。イグニッションスイッチ25は、車両の運転者によるエンジン1の始動操作及び停止操作を検出する。
【0040】
また、酸化触媒31の上流に設けられた第1排気温度センサ100は、酸化触媒31に流入する前の排気温度である第1排気温度TH1を検出する。差圧センサ110は、フィルタ32の上流及び下流の排気圧の圧力差である差圧ΔPを検出する。第1浄化部材30と第2浄化部材40との間の排気通路26にあって、尿素添加弁230の上流には、第2排気温度センサ120及び第1NOxセンサ130が設けられている。第2排気温度センサ120は、SCR触媒41に流入する前の排気温度である第2排気温度TH2を検出する。第1NOxセンサ130は、SCR触媒41に流入する前の排気中のNOx濃度、つまりSCR触媒41で浄化される前の排気中のNOx濃度である第1NOx濃度N1を検出する。第3浄化部材50の下流の排気通路26には、SCR触媒41で浄化された排気のNOx濃度である第2NOx濃度N2を検出する第2NOxセンサ140が設けられている。
【0041】
これら各種センサ等の出力は制御装置80に入力される。この制御装置80は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0042】
そして、この制御装置80により、例えば燃料噴射弁4a〜4dや燃料添加弁5の燃料噴射量制御・燃料噴射時期制御、サプライポンプ10の吐出圧力制御、吸気絞り弁16を開閉するアクチュエータ17の駆動量制御、EGR弁15の開度制御等、エンジン1の各種制御が行われる。また、上記フィルタ32に捕集されたPMを燃焼させる上記再生処理等といった各種の排気浄化制御も同制御装置80によって行われる。
【0043】
また、制御装置80は、排気浄化制御の一つとして、上記尿素添加弁230による尿素水の添加制御を行う。この添加制御では、エンジン1から排出されるNOxを還元処理するために過不足の無い尿素水添加量NTが機関運転状態等に基づいて算出される。以下では、NOxを還元処理するために必要な過不足の無い尿素水添加量を「当量比1」という。そして、算出された当量比1に相当する尿素水添加量NTが尿素添加弁230から噴射されるように、同尿素添加弁230の開弁状態が制御される。
【0044】
より詳細には、尿素添加弁230を繰り返し開閉させることにより尿素水を排気通路26に間欠供給する。
この間欠供給に際しては、予め定められた所定期間ST内に必要とされる尿素水添加量NTが、第1NOx濃度N1、機関回転速度NE、吸入空気量GA、及び第2排気温度TH2に基づいて算出される。そして、間欠供給実行時の添加間隔時間であって適宜設定された添加インターバルINTにて所定期間STを除する(ST/INT)ことにより、所定期間ST内での添加回数Nが算出される。そして、上記尿素水添加量NTを添加回数Nにて除する(NT/N)ことにより、添加1回当たりの尿素水添加量である単位尿素水添加量NTAが算出される。そしてこの単位尿素水添加量NTAが供給できるように尿素添加弁230の添加時間Tが設定される。そして、添加インターバルINT毎にその添加インターバルINT内において添加時間Tの間だけ尿素添加弁230が開弁されることにより、尿素水の間欠供給が行われる。なお、上記尿素水の間欠供給は、機関運転中は継続して行われ、機関運転が停止されると停止される。
【0045】
ところで、上述したように、燃料添加弁5による燃料添加が行われると、酸化触媒31でNOxの還元反応が生じる。より詳細にはNO2の還元反応が生じるため、NOx濃度に占めるNO比率が増加する。このようにしてNO比率が変化すると、同じNOx濃度であっても第1NOxセンサ130の出力値は異なるようになるため、第1NOx濃度N1を正確に検出することが困難となる。従って、第1NOx濃度N1に基づいた上記尿素水添加量NTの設定を適切に行うことができなくなり、場合によってはNOx浄化率が低下するおそれがある。
【0046】
そこで、制御装置80は、図2に示す尿素水添加の中断処理を所定周期毎に実行することで、NOx浄化率の低下を抑えるようにしている。なお、本処理は、尿素水添加が行われているときに実行される。
【0047】
本処理が開始されるとまず、燃料添加の実行条件が成立しているか否かが判定される(S100)。このステップS100では、例えばフィルタ32の再生処理の実行条件が成立しているときや、燃料添加弁5の詰まりを抑えるための詰まり防止噴射の実行条件が成立しているとき、あるいはSCR触媒41等の早期暖機を図るための排気温度を上昇させる昇温処理の実行条件が成立しているときなどに肯定判定される。
【0048】
そして、燃料添加の実行条件が成立していないときには(S100:NO)、本処理は一旦終了される。
一方、燃料添加の実行条件が成立しているときには(S100:YES)、尿素水添加が中止され(S110)、次に、燃料添加が実行される(S120)。
【0049】
次に、燃料添加の中止条件が成立しているか否かが判定される(S130)。ここでは、例えば上記再生処理や詰まり防止噴射、あるいは昇温処理が完了したときなどに肯定判定される。そして、燃料添加の中止条件が成立していないときには(S130:NO)、同中止条件が成立するまでステップS130での判定が繰り返し行われる。
【0050】
一方、燃料添加の中止条件が成立するときには(S130:YES)、燃料添加が中止される(S140)。
次に、経過時間Kの計測が開始される(S150)。この経過時間Kは、ステップS140にて燃料添加が中止されてからの経過時間を示す値である。
【0051】
次に、尿素水添加の実行条件が成立しているか否かが判定される(S160)。ここでは、SCR触媒41の温度がNOx浄化に必要な温度となっているときに、肯定判定される。
【0052】
そして、尿素水添加の実行条件が成立していないときには(S160:NO)、同実行条件が成立するまでステップS160での判定が繰り返し行われる。
一方、尿素水添加の実行条件が成立するときには(S160:YES)、経過時間Kが判定時間A以上であるか否かが判定される(S170)。この判定時間Aは、予め実験等を通じて設定される値であり、燃料添加が中止されてから酸化触媒31でのNOxの還元反応が収まるまでの時間が設定されている。
【0053】
そして、経過時間Kが判定時間Aに満たないときには(S170:NO)、ステップS170の判定が繰り返し行われる。
一方、経過時間Kが判定時間A以上であるときには(S170:YES)、ステップS110で中止された尿素水添加が再開されて(S180)、本処理は一旦終了される。
【0054】
次に、本実施形態の作用を説明する。
機関運転中ではNOxが連続して発生するため、NOxを浄化するための尿素水添加は継続して行われる。
【0055】
他方、燃料添加が行われているときには、排気通路26中に酸化剤として燃料が供給されるため、還元剤である尿素水の添加は中断することが望ましい。そこで、図3に示すように、時刻t1において燃料添加が開始されると、尿素水添加は中止される。そして、時刻t2において燃料添加が中止されると、この燃料添加が中止された後に尿素水添加が再開される(時刻t3)。
【0056】
このように燃料添加が停止した後、つまり燃料添加による酸化触媒31でのNO2の還元反応が生じておらず、第1NOxセンサ130による第1NOx濃度N1の検出が精度よく行えるときに、尿素水添加が行われる。従って、第1NOxセンサ130の検出値に基づく尿素水の添加量制御が適切に行えるようになる。そのため、燃料添加と尿素水添加とが行われるエンジン1において、第1NOxセンサ130の検出精度低下に起因するNOx浄化率の低下が抑えられる。
【0057】
ここで、酸化触媒31でのNOxの還元反応は、燃料添加を停止すると直ちに収まるわけではなく、ある程度の期間継続する。そこで本実施形態では、時刻t2において燃料添加が中止された後、上記判定時間Aが経過してから、つまり燃料添加が停止から酸化触媒31でのNOxの還元反応が収まるまでの期間が経過した後に、尿素水添加が再開される(時刻t3)。そのため、第1NOxセンサ130による第1NOx濃度N1の検出をより精度よく行えるようになり、NOx浄化率の低下がより適切に抑えられる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1NOxセンサ130で検出される第1NOx濃度N1に基づいて尿素水添加量NTを調整するようにしている。そして、排気通路26への燃料添加が停止した後に、尿素水添加を行うようにしている。従って、第1NOxセンサ130の検出値に基づく尿素水の添加量制御が適切に行えるようになる。そのため、燃料添加と尿素水添加とが行われるエンジン1において、NOx浄化率の低下を抑えることできるようになる。
【0059】
(2)燃料添加が停止から上記判定時間Aが経過した後に、つまり酸化触媒31でのNOxの還元反応が収まるまでの期間が経過した後に、尿素水添加を行うようにしている。そのため、第1NOxセンサ130による第1NOx濃度N1の検出をより精度よく行えるようになり、NOx浄化率の低下をより適切に抑えることができるようになる。
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる内燃機関の排気浄化装置を具体化した第2実施形態について、図4〜図6を参照して説明する。
【0060】
第1実施形態では、燃料添加が行われているときに尿素水の添加を中断するようにした。このようにして尿素水の添加を中断すると、NOxを浄化するための尿素水の量が不足するため、NOx浄化率が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、尿素水添加の中断に伴うNOx浄化率の低下を抑えるために、添加インターバルINTの可変処理も実行するようにしており、この点のみが第1実施形態と異なっている。そこで以下では、添加インターバルINTの可変処理を中心にして本実施形態を説明する。
【0061】
この可変処理も、制御装置80によって所定周期毎に繰り返し行われる。
本処理が開始されるとまず、尿素水添加の中断回数Cが判定値B以上であるか否かが判定される(S200)。ここでは、この中断回数Cは、先の図2に示したステップS110での処理、つまり尿素水添加の中止処理が行われた回数を示すものである。
【0062】
そして、中断回数Cが判定値Bよりも少ないときには(S200:NO)、尿素水添加の中断によるNOx浄化率の低下は、許容範囲内に収まっていると判断されて、本処理は一旦終了される。このように中断回数Cが判定値Bよりも少ないときには、添加インターバルINTは可変設定されることなく、適宜設定された所定の一定値に設定される。
【0063】
一方、中断回数Cが判定値B以上のときには(S200:YES)、尿素水添加の中断によるNOx浄化率の低下が懸念されるため、ステップS210以降の処理が行われる。
ステップS210では、中断回数Cに基づいて添加インターバルINTが可変設定される。この可変設定では、図5に示すように、中断回数Cが多いときほど添加インターバルINTは長くされる。
【0064】
次に、ステップS220では、尿素水の添加量が増量補正されて、本処理は一旦終了される。この増量補正では、尿素水添加の中断による尿素水の不足量を補うように、尿素水の添加量が増量補正される。例えば、通常であれば、当量比1に相当する尿素水添加量NTが設定されるのであるが、このステップS220では、当量比2、あるいは当量比3に相当する尿素水添加量NTを設定することにより、尿素水添加量NTが増量補正される。
【0065】
または、ステップS220では、尿素添加弁230の噴射圧を増大補正するなどして単位時間当たりの添加量を増大補正するようにしてもよい。このようにすれば、尿素水添加が中断される場合でも、実際に添加される尿素水の量を、当量比1に相当する尿素水添加量NTに近づけることができる。
【0066】
次に、図6を参照して、本実施形態の作用を説明する。なお、図6の(A)には、添加インターバルINTが短いときの添加時間Tを示し、図6の(B)には、添加インターバルINTが長いときの添加時間Tを示す。
【0067】
上述したように、尿素水の間欠供給に際しては、添加インターバルINTにて所定期間STを除する(ST/INT)ことにより、所定期間ST内での添加回数Nが算出される。そして、上記尿素水添加量NTを添加回数Nにて除する(NT/N)ことにより、添加1回当たりの尿素水添加量である単位尿素水添加量NTAが算出される。そしてこの単位尿素水添加量NTAが供給できるように尿素添加弁230の添加時間Tが設定される。
【0068】
従って、添加インターバルINTが長くなると、所定期間ST内での添加回数Nが少なくなり、添加1回当たりの尿素水添加量である単位尿素水添加量NTAは多くなる。そのため、所定期間ST内において必要とされる上記尿素水添加量NTを添加するに際して、図6の(B)に示すように添加インターバルINTが長くなると、図6の(A)に示すように添加インターバルINTが短い場合と比べて、尿素水の添加時間Tは長くなる。
【0069】
上記尿素水添加量NTを添加するに際して、添加時間Tが短いと、同図6の(A)に二点鎖線にて示すように、尿素水添加の中断によって必要な量の尿素水を所定期間ST内において供給することができなくなるおそれがある。
【0070】
一方、上記可変処理を実行する場合には、中断回数Cが多いときほど添加インターバルINTが長くされるため、中断回数Cが多く、尿素水の不足度合が高いときほど尿素水の添加時間Tは長くなる。従って、尿素水添加が中断される前に、できるだけ多くの尿素水を供給しておくことが可能となる。そのため、尿素水添加の中断に伴うNOx浄化率の低下が適切に抑えられる。
【0071】
また、添加時間Tが長くなると、尿素添加弁230の開弁時間が長くなるため、所定期間ST内に必要な量の尿素水を間欠添加にて供給する際の尿素添加弁230の開閉回数が少なくなる。従って、尿素添加弁230の耐久性も向上するようになる。
【0072】
さらに、先の図4に示したように、ステップS210にて中断回数Cに基づいた添加インターバルINTの変更が行われるときには、つまり尿素水が不足している可能性が高いときには、尿素水の添加量が増量補正される。従って、尿素水添加の中断による尿素水の供給不足が増量補正によって補われるため、尿素水添加の中断に伴うNOx浄化率の低下がより適切に抑えられる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて、さらに次の効果を得ることができる。
(3)尿素水添加の中断回数Cに応じて添加インターバルINTを可変設定することにより、尿素水を間欠供給するときの添加時間Tを変更するようにしている。従って、尿素水の不足度合に応じて、排気通路26に供給される尿素水の量を調整することができる。そのため、尿素水添加の中断に伴うNOx浄化率の低下を抑えることができるようになる。
【0074】
(4)中断回数Cが多いときほど添加時間Tは長くなるようにしている。そのため、尿素水添加の中断回数Cが多く、尿素水の不足度合が高いときほど、排気通路26に供給される尿素水の量が多くなるため、尿素水添加の中断に伴うNOx浄化率の低下を適切に抑えることができるようになる。また、添加時間Tが長くされると、尿素添加弁230の開閉回数が少なくなるため、尿素添加弁230の耐久性を向上させることができる。
【0075】
(5)中断回数Cに応じて添加時間Tが変更されるときには、尿素水の添加量を増量補正するようにしている。そのため、尿素水添加の中断に伴うNOx浄化率の低下をより適切に抑えることができるようになる。
【0076】
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第1実施形態では、判定時間Aとして、燃料添加が中止されてから酸化触媒31でのNOxの還元反応が収まるまでの時間を設定した。そして、燃料添加の停止後、同判定時間Aが経過してから尿素水添加を再開するようにした。この他、燃料添加の停止後、上記判定時間Aよりも短い時間が経過した時点で尿素水添加を再開するようにしてもよい。この場合でも、尿素水の添加は少なくとも排気通路26への燃料添加が停止した後に行われるため、酸化触媒31で還元されるNO2の量が燃料添加の実行中に比べて少なくなっているときに、尿素水添加が行われる。従って、この変形例においても、酸化触媒31でのNOx還元反応に起因した第1NOxセンサ130の検出精度低下が抑えられた状態で、尿素水添加量NTを算出することができ、上記(1)と同様な効果を得ることができる。
【0077】
・第2実施形態では、ステップS200にて中断回数Cが判定値B以上であると判定されたときに、中断回数Cに基づいた添加インターバルINTの設定を行うようにした。この他、ステップS200の処理を省略して、中断回数Cに基づいた添加インターバルINTの設定を常に行うようにしてもよい。
【0078】
・第2実施形態では、添加インターバルINTの可変設定を通じて尿素水の添加時間Tを変更するようにした。この他、中断回数Cが多いときほど添加時間Tが長くなるように、同添加時間Tを直接変更するようにしてもよい。
【0079】
・第2実施形態において、ステップS220の処理、つまり尿素水の添加量の増量補正を省略してもよい。この場合でも上記(5)以外の効果を得ることができる。
・還元剤として尿素水を使用するようにしたが、この他の還元剤を使用するようにしてもよい。
【0080】
・NOx浄化触媒として、選択還元型NOx触媒とは異なる触媒を用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…エンジン、2…シリンダヘッド、3…吸気通路、4a〜4d…燃料噴射弁、5…燃料添加弁、6a〜6d…排気ポート、7…インテークマニホールド、8…エキゾーストマニホール、9…コモンレール、10…サプライポンプ、11…ターボチャージャ、13…EGR通路、14…EGRクーラ、15…EGR弁、16…吸気絞り弁、17…アクチュエータ、18…インタークーラ、19…エアフロメータ、20…絞り弁開度センサ、21…機関回転速度センサ、22…アクセルセンサ、23…外気温センサ、24…車速センサ、25…イグニッションスイッチ、26…排気通路、27…燃料供給管、30…第1浄化部材、31…酸化触媒、32…フィルタ、40…第2浄化部材、41…選択還元型NOx触媒(SCR触媒)、50…第3浄化部材、51…アンモニア酸化触媒、60…分散板、80…制御装置、100…第1排気温度センサ、110…差圧センサ、120…第2排気温度センサ、130…第1NOxセンサ、140…第2NOxセンサ、200…尿素水供給機構(還元剤供給機構)、210…タンク、220…ポンプ、230…尿素添加弁、240…供給通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に設けられた酸化触媒と、同酸化触媒よりも下流に設けられて還元剤の添加によりNOxを浄化するNOx浄化触媒と、還元剤を排気通路内に供給する還元剤供給機構と、前記酸化触媒よりも上流の排気通路内に機関の燃料を添加する燃料添加機構と、前記NOx浄化触媒で浄化される前の排気中のNOx濃度を検出するNOxセンサとを備え、同NOxセンサで検出されるNOx濃度に基づいて前記還元剤の添加量を制御する内燃機関の排気浄化装置において、
前記燃料添加機構による燃料添加が停止した後に、前記還元剤供給機構による還元剤添加を行う
ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記燃料添加機構による燃料添加が停止から前記酸化触媒でのNOx還元反応が収まるまでの期間が経過した後に、前記還元剤供給機構による還元剤添加を行う
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記還元剤供給機構は、添加弁から還元剤を間欠供給するとともに、燃料添加が行われているときには還元剤添加を中断するものであり、
還元剤を間欠供給するときの添加時間が、還元剤添加の中断回数に応じて変更される
請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記中断回数が多いときほど前記添加時間は長くされる
請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記中断回数に応じて前記添加時間が変更されるときには、還元剤の添加量が増量補正される
請求項3または4に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104346(P2013−104346A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248537(P2011−248537)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】