説明

内視鏡の先端部

【課題】挿入部先端を大型化することなく、照明窓に取り付けられた蛍光体が励起光照射を受けることにより発生する温度上昇を効果的に抑制することができる内視鏡の先端部を提供すること。
【解決手段】送水ノズル5を金属材で形成すると共に、蛍光体6Aと送水ノズル5の双方に接触する金属製の伝熱部材11を配置して、励起光照射により生じる蛍光体6Aの発熱が伝熱部材11を経由して送水ノズル5に伝導されて、送水ノズル5から噴出する水により外部に放熱されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の先端部に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の照明光を発生する光源としては、ハロゲンランプやキセノンランプが広く用いられているが、そのようなランプ類を光源として用いた装置は消費電力が大きくなってしまう。
【0003】
そこで、レーザダイオードで発生させたレーザ光を内視鏡の挿入部先端に設けられた照明窓に導いて、照明窓に取り付けられた蛍光体を励起することにより、蛍光体から発っせられる可視の特定波長の蛍光により内視鏡の観察領域を照明する手法が開発されている。
【0004】
しかし、そのような装置において十分な照明光量を得ようとすると、励起光照射により生じる蛍光体の発熱が増大してしまう。そこで従来は、蛍光体を回動させて蛍光体に対する励起光の照射位置を移動させることで、蛍光体の温度上昇を抑制していた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−26135
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蛍光体を回動させて蛍光体の温度上昇を抑制する効果を得るためには蛍光体を相当に大きなものにする必要があり、また、蛍光体を回動させるための機構を組み込む必要等もあるため、内視鏡の挿入部先端が大型化して挿入性が低下し、内視鏡検査を受ける人に大きな苦痛を与えることになってしまう。
【0006】
本発明は、挿入部先端を大型化することなく、照明窓に取り付けられた蛍光体が励起光照射を受けることにより発生する温度上昇を効果的に抑制することができる内視鏡の先端部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の先端部は、挿入部の先端に設けられたプラスチック製の先端部本体の表面に観察窓と照明窓と送水ノズルとが設けられて、照明窓には励起光が照射されることにより蛍光を発する蛍光体が取り付けられ、励起光を伝送するための励起光伝送体の射出部が蛍光体に向けて照明窓の裏側に配置された内視鏡の先端部において、送水ノズルを金属材で形成すると共に、蛍光体と送水ノズルの双方に接触する金属製の伝熱部材を配置して、励起光照射により生じる蛍光体の発熱が伝熱部材を経由して送水ノズルに伝導されて、送水ノズルから噴出する水により外部に放熱されるようにしたものである。
【0008】
なお、伝熱部材の外表面を覆って電気絶縁材からなるのカバー板が設けられていてもよい。また、照明窓が、送水ノズルに隣接する位置と隣接しない位置とに設けられていて、送水ノズルに隣接する位置の照明窓に取り付けられた蛍光体には伝熱部材が接触し、送水ノズルに隣接しない位置の照明窓に取り付けられた蛍光体には、送水ノズルから噴出した水が吹きかけられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蛍光体と送水ノズルの双方に接触する金属製の伝熱部材を配置することにより、励起光照射により生じる蛍光体の発熱が伝熱部材を経由して送水ノズルに伝導されて、送水ノズルから噴出する水により外部に放熱されるようにしたので、挿入部先端を大型化することなく、照明窓に取り付けられた蛍光体が励起光照射を受けることにより発生する温度上昇を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
挿入部の先端に設けられたプラスチック製の先端部本体の表面に観察窓と照明窓と送水ノズルとが設けられて、照明窓には励起光が照射されることにより蛍光を発する蛍光体が取り付けられ、励起光を伝送するための励起光伝送体の射出部が蛍光体に向けて照明窓の裏側に配置された内視鏡の先端部において、送水ノズルを金属材で形成すると共に、蛍光体と送水ノズルの双方に接触する金属製の伝熱部材を配置して、励起光照射により生じる蛍光体の発熱が伝熱部材を経由して送水ノズルに伝導されて、送水ノズルから噴出する水により外部に放熱されるようにする。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図3は、内視鏡の挿入部の先端に設けられた先端部本体1の先端面1aを示している。先端部本体1は、電気的安全性等を考慮して非導電性のプラスチックで形成されている。
【0012】
先端部本体1の先端面1aには、被写体の像を取り入れるための観察窓2と、観察領域を照明する照明光を放射するための二つの照明窓3A,3Bと、図示されていない処置具挿通チャンネルに通された処置具の先端が突出する処置具突出口4等が並んで配置されている。二つの照明窓3A,3Bは、観察窓2を挟んでその両側に分かれて配置されている。
【0013】
5は、観察窓2の表面が汚れたとき等に観察窓2の表面に向かって水を吹き付けるための送水ノズルである。二つの照明窓3A,3Bのうち送水ノズル5に隣接しない位置の照明窓3Bは、送水ノズル5から見て観察窓2を越えた向こう側の位置に配置されていて、送水ノズル5から観察窓2の表面に吹き付けられた水がその勢いで照明窓3Bの表面にまで吹きかけられる。
【0014】
なお、送水ノズル5は送気ノズルを兼用していてもよく、その場合には、体腔内を観察し易いように膨らませたり観察窓2の表面に残った水を吹き飛ばしたりするための空気も送水ノズル5から選択的に噴出される。
【0015】
図1は、図3におけるI−I断面を示しており、二つの照明窓3A,3Bのうち送水ノズル5に隣接する位置の照明窓3Aには、励起光照射により可視の特定波長の蛍光を発する蛍光体6Aが取り付けられている。
【0016】
その照明窓3Aの裏側には、図示されていないレーザダイオードから射出されたレーザ光(励起光)を伝送するための光ファイバ7Aの射出部が、蛍光体6Aに向けて配置されている。8Aは、光ファイバ7Aから射出されたレーザ光の配光を広げるための配光レンズである。
【0017】
送水ノズル5は、例えばステンレス鋼等のような金属材で形成されて、ノズル開口部分は先端部本体1の先端面1aからやや突出し、基部側の管状部分5aが、先端部本体1に貫通形成された送水孔9に差し込まれてそこに接着等で固定されている。10は、内視鏡の挿入部内に挿通配置された送水チューブであり、その先端部分が送水孔9の後端側に接続固定されている。
【0018】
11は、そのような蛍光体6Aと送水ノズル5の双方に接触する例えばステンレス鋼、アルミニウム合金又は黄銅等のような金属材からなる伝熱部材である。伝熱部材11には、図2の分解斜視図にも示されるように、蛍光体6Aが嵌め込まれる孔と送水ノズル5の管状部分5aが嵌め込まれる孔とが並んで穿設されている。
【0019】
伝熱部材11の輪郭形状は、例えば小判形に形成されている。そして、電気絶縁性のプラスチック材等により伝熱部材11と同じ輪郭形状に形成された薄板状のカバー板12が、伝熱部材11の外表面に重ね合わされた状態に配置されている。なお、伝熱部材11とカバー板12の輪郭形状が小判形以外であってもよい。
【0020】
図1に示されるように、先端部本体1の先端面1aには、このような伝熱部材11とカバー板12とが重ね合わされた状態でぴったりと嵌め込まれる凹部1bが形成されていて、伝熱部材11が外面に露出しない状態で、伝熱部材11とカバー板12とが重ね合わされた状態で凹部1b内に接着等で固定されている。
【0021】
図4は、図3におけるIV−IV断面を示しており、二つの照明窓3A,3Bのうち送水ノズル5に隣接しない位置の照明窓3Bにも、励起光照射により可視の特定波長の蛍光を発する蛍光体6Bが取り付けられ、その裏側に、励起光であるレーザ光を伝送する光ファイバ7Bの射出部と、レーザ光の配光を広げるための配光レンズ8Bとが配置されている。
【0022】
また、観察窓2の裏側には、対物光学系14と固体撮像素子15等が配置されていて、観察窓2から取り込まれた観察像が対物光学系14によって固体撮像素子15の撮像面に投影され、固体撮像素子15から内視鏡観察像の撮像信号が出力される。そして、前述したように、送水ノズル5から観察窓2の表面に向かって噴出した水は、その勢いで照明窓3Bに取り付けられた蛍光体6Bの表面に吹きかけられる。
【0023】
このように構成された実施例の内視鏡の先端部においては、光ファイバ7A,7Bから射出されたレーザ光が配光レンズ8A,8Bを通って蛍光体6A,6Bに裏面側から当たることにより、蛍光体6A,6Bが各々励起されて、蛍光体6A,6Bから可視の特定波長の蛍光が観察視野領域に照射され、その蛍光で照明された被写体の内視鏡観察像が観察窓2から取り込まれる。
【0024】
そして、送水ノズル5に隣接する位置の照明窓3Aに取り付けられた蛍光体6Aが励起光照射を受けて発生する発熱は、伝熱部材11を経由して金属製の送水ノズル5に伝導され、送水ノズル5から噴出する水により外部に放熱され、それによって蛍光体6Aの温度上昇が抑制される。
【0025】
また、送水ノズル5に隣接しない位置の照明窓3Bに取り付けられた蛍光体6Bが励起光照射を受けて発生する発熱は、送水ノズル5から噴出した水が蛍光体6Bに吹きかけられることにより外部に放熱され、それによって蛍光体6Bの温度上昇が抑制される。
【0026】
このようにして、先端部本体1を大型化することなく、照明窓3A,3Bに取り付けられた蛍光体6A,6Bが励起光照射を受けて発生する温度上昇を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の先端部の図3におけるI−I断面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の先端部の伝熱部材とそれに取り付けられた部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の先端部の正面図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の先端部の図3におけるIV−IV断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 先端部本体
1a 先端面
2 観察窓
3A,3B 照明窓
5 送水ノズル
5a 管状部分
6A,6B 蛍光体
7A,7B 光ファイバ
11 伝熱部材
12 カバー板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端に設けられたプラスチック製の先端部本体の表面に観察窓と照明窓と送水ノズルとが設けられて、上記照明窓には励起光が照射されることにより蛍光を発する蛍光体が取り付けられ、上記励起光を伝送するための励起光伝送体の射出部が上記蛍光体に向けて上記照明窓の裏側に配置された内視鏡の先端部において、
上記送水ノズルを金属材で形成すると共に、上記蛍光体と上記送水ノズルの双方に接触する金属製の伝熱部材を配置して、上記励起光照射により生じる上記蛍光体の発熱が上記伝熱部材を経由して上記送水ノズルに伝導されて、上記送水ノズルから噴出する水により外部に放熱されるようにしたことを特徴とする内視鏡の先端部。
【請求項2】
上記伝熱部材の外表面を覆って電気絶縁材からなるカバー板が設けられている請求項1記載の内視鏡の先端部。
【請求項3】
照明窓が、上記送水ノズルに隣接する位置と隣接しない位置とに設けられていて、上記送水ノズルに隣接する位置の照明窓に取り付けられた蛍光体には上記伝熱部材が接触し、上記送水ノズルに隣接しない位置の照明窓に取り付けられた蛍光体には、上記送水ノズルから噴出した水が吹きかけられる請求項1又は2記載の内視鏡の先端部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−39462(P2009−39462A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210605(P2007−210605)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】