説明

内視鏡の処置具挿入部

【課題】操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔内における処置具挿通チャンネル基端口金と処置具挿入口金の連結接続と操作部ハウジングへの固定が、容易かつ確実に緩みが発生しないように行われる内視鏡の処置具挿入部を提供すること。
【解決手段】処置具挿通チャンネル基端口金4の突端部分に設けられた連結部材10には、外周部の複数箇所から軸線と平行方向に弾性材からなる複数の柵状片11が突出して設けられて、各柵状片11の先端に抜け止め爪12が内方に向けて突出形成されている。処置具挿入口金取付孔2の内周面には孔側係合溝8が軸線と平行に形成されて、処置具挿入口金7の外周面には連結部係合溝9が軸線と平行に形成されている。固定ナット13が螺合する雄ねじ部7sは、処置具挿入口金7の外周に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに処置具を挿入するための内視鏡の処置具挿入部に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の内視鏡の処置具挿入部を示しており、処置具挿通チャンネル91の基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金92が、プラスチック製の操作部ハウジング93に開口形成された処置具挿入口金取付孔94の奥側位置に配置されている。
【0003】
そして、処置具挿入口金取付孔94に外側から差し込まれた処置具挿入口金95(95A,95B)と処置具挿通チャンネル基端口金92の突端部分とが螺合部96で螺合連結されて、処置具挿入口金95が、処置具挿入口金取付孔94内に形成された段部97に固定ナット98で外方から押圧固定された構造になっている(例えば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−37344
【特許文献2】特開2003−126027
【特許文献3】特開2006−26248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような内視鏡の処置具挿入部においては、操作部ハウジング93に開口形成された処置具挿入口金取付孔94の口元に雌ねじ部99が形成されていて、固定ナット98がその雌ねじ部99にきつく締め付けられることにより、処置具挿入口金95が操作部ハウジング93に固定されている。
【0006】
しかし、操作部ハウジング93はプラスチック製なので(金属製にすると、重量が増大して操作性が著しく損なわれる)、固定ナット98を強く締め付けると操作部ハウジング93に割れが発生して操作部全体を再組み立てする必要が生じる場合がある。かといって、固定ナット98の締め付け具合を手加減すると、使用後に次第に緩みが発生して、処置具挿入口金95等にガタつきが発生するおそれがある。
【0007】
また、処置具挿通チャンネル基端口金92の突端部分に処置具挿入口金95を連結接続する際には、処置具挿入口金取付孔94内の奥深い位置でねじどうしを合わせる必要があるため、組立工程においてその連結接続作業をスムーズに行うのが非常に困難で、作業のやり直し等に著しく時間をとられてしまう場合があった。
【0008】
本発明は、操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔内における処置具挿通チャンネル基端口金と処置具挿入口金の連結接続と操作部ハウジングへの固定が、容易かつ確実に緩みが発生しないように行われる内視鏡の処置具挿入部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の処置具挿入部は、処置具挿通チャンネルの基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金の突端部分が、プラスチック製の操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔内に操作部ハウジングの内側から差し込まれて、処置具挿入口金取付孔に外側から差し込まれた処置具挿入口金の奥側端部と処置具挿入口金取付孔内で連結接続された構造を有する内視鏡の処置具挿入部において、処置具挿通チャンネル基端口金の突端部分に、処置具挿入口金との連結接続及び処置具挿入口金取付孔との係合とを司る連結部材が設けられて、連結部材には、弾性材からなる複数の柵状片が処置具挿通チャンネル基端口金の突端部分の外周部の複数箇所から軸線と平行方向に突出して設けられて、各柵状片の先端には抜け止め爪が内方に向けて突出形成され、処置具挿入口金取付孔の内周面には、柵状片の外面側半部が係合する孔側係合溝が軸線と平行に形成されて、処置具挿入口金の奥側端部の外周面には、柵状片の内面側半部が係合する連結部係合溝が軸線と平行に形成され、抜け止め爪を連結部係合溝に沿って軸線方向に移動させると柵状片が弾性変形して、抜け止め爪が連結部係合溝を通過し終わると柵状片が自己の弾性で元の形状に戻り、それによって柵状片の内面側半部が連結部係合溝に係合して処置具挿通チャンネル基端口金に対する処置具挿入口金の軸線周り方向の回転が阻止されると共に、抜け止め爪が連結部係合溝の端部に係合することにより処置具挿通チャンネル基端口金に対する処置具挿入口金の軸線方向移動が阻止された状態になって、処置具挿入口金が処置具挿通チャンネル基端口金に対し軸線方向及び軸線周り方向のどちらにも移動が阻止された状態に連結され、柵状片の外面側半部を孔側係合溝に係合させることにより、処置具挿入口金取付孔内における処置具挿通チャンネル基端口金の軸線周り方向移動が阻止され、固定ナットを、処置具挿入口金の外周に形成された雄ねじ部に締め付けて操作部ハウジングに当接させることにより、処置具挿入口金と処置具挿通チャンネル基端口金とが、連結部材で連結接続された状態で操作部ハウジングに固定された状態になっているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処置具挿入口金を連結部材に押し付けるだけの作業で、処置具挿入口金取付孔の奥の位置で処置具挿通チャンネル基端口金と処置具挿入口金を容易かつ確実に、緩みが発生しないように連結接続することができ、しかも、それらの固定を、プラスチック製の操作部ハウジングにねじ切りをすることなく確実に行うことができ、固定ナットを強く締め付けても操作部ハウジングに割れが発生するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の側面断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の図1におけるII−II断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の部分断面斜視図である。である。
【図4】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の分解斜視図である。である。
【図5】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程を順に示す側面断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程を順に示す側面断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る内視鏡の処置具挿入部の組み立て工程を順に示す側面断面図である。
【図8】従来の内視鏡の処置具挿入部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、内視鏡の操作部の下端部付近に設けられた処置具挿入部を示している。操作部ハウジング1はプラスチックモールドにより形成されていて、処置具挿入口金取付孔2が、操作部ハウジング1に外側から内側に斜め下方に向けて開口形成されている。
【0013】
3は、内視鏡の挿入部内に全長にわたって挿通配置された、例えば四フッ化エチレン樹脂チューブ等からなる可撓性の処置具挿通チャンネルである。処置具挿通チャンネル3の基端部に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金4は、処置具挿入口金取付孔2の奥側位置の操作部ハウジング1内に配置されている。
【0014】
処置具挿通チャンネル基端口金4には、処置具挿通チャンネル3に対して二股に分かれた状態に、吸引チューブ5と処置具挿入口金7とが接続されている。なお、処置具挿通チャンネル基端口金4の周囲にはその他の各種部材も配置されているが、それらの図示は省略されている。
【0015】
ステンレス鋼製の処置具挿入口金7は、処置具挿入口金取付孔2内に外側から差し込まれた状態に配置されて、処置具挿入口金7の突端側は処置具挿入口金取付孔2の口元から外方に突出している。
【0016】
処置具挿通チャンネル基端口金4の突端部分は、処置具挿入口金取付孔2の下部内に操作部ハウジング1の内側から差し込まれていて、処置具挿入口金取付孔2に外側から差し込まれた処置具挿入口金7の奥側端部と処置具挿入口金取付孔2内で連結接続されている。6はシール用のOリングである。
【0017】
処置具挿入口金7の軸線位置には、図示されていない処置具を処置具挿通チャンネル3内に案内するための処置具通過孔7aが貫通形成されていて、処置具通過孔7aと処置具挿通チャンネル基端口金4の突端部分内とが真っ直ぐに連通している。
【0018】
処置具挿通チャンネル基端口金4の突端部分には、処置具挿入口金7との連結接続及び処置具挿入口金取付孔2との係合とを司る連結部材10が設けられている。図2はその部分の断面図(図1におけるII−II断面図)、図3は部分断面斜視図、図4は分解斜視図である。
【0019】
各図に示されるように、連結部材10には、処置具挿通チャンネル基端口金4の突端部分の外周部の複数箇所(例えば、60°間隔で6ヵ所)から軸線と平行方向に弾性材からなる複数の柵状片11が突出して設けられて、各柵状片11の先端には抜け止め爪12が内方に向けて突出形成されている。
【0020】
連結部材10は、この実施例では処置具挿通チャンネル基端口金4と一体にプラスチック材でモールド成形されている。ただし、処置具挿通チャンネル基端口金4と別部品として形成された連結部材10を、処置具挿通チャンネル基端口金4に取り付けてもよい。
【0021】
処置具挿入口金取付孔2の奥側領域の内周面には、柵状片11の厚みの外面側半部が係合する孔側係合溝8が軸線と平行に形成されている。孔側係合溝8は、柵状片11の幅と位置に合わせて柵状片11がガタつきなく嵌まる程度に形成されている。
【0022】
一方、図4等に示されるように、処置具挿入口金7の奥側端部に他の部分より大きな径に形成された鍔状部7bの外周面には、柵状片11の厚みの内面側半部が係合する連結部係合溝9が軸線と平行に形成されている。連結部係合溝9も、柵状片11の幅と位置に合わせて柵状片11がガタつきなく嵌まる程度に形成されている。
【0023】
そして、図4に示される状態から、連結部材10の抜け止め爪12を連結部係合溝9に沿って軸線方向に移動させると、柵状片11が径方向に拡がる状態に弾性変形させられ、図1に示される状態のように、抜け止め爪12が連結部係合溝9を通過し終わると柵状片11が自己の弾性で元の形状に戻る。
【0024】
すると、図2等に示されるように、柵状片11の内面側半部(即ち、柵状片11の厚みのうちの内周部寄りの部分)が連結部係合溝9に係合することにより、処置具挿通チャンネル基端口金4に対する処置具挿入口金7の軸線周り方向の回転が阻止される。
【0025】
同時に、図1に示されるように、抜け止め爪12が連結部係合溝9の端部(即ち、処置具挿入口金7の鍔状部7bの上側端面)に係合することにより、処置具挿通チャンネル基端口金4に対する処置具挿入口金7の軸線方向移動が阻止された状態になる。
【0026】
その結果、処置具挿通チャンネル基端口金4と処置具挿入口金7とが軸線方向及び軸線周り方向のどちらにも移動が阻止された状態に連結接続され、処置具挿入口金7を連結部材10に押し付けるだけの作業で、処置具挿入口金7を処置具挿通チャンネル基端口金4に対し処置具挿入口金取付孔2の奥の位置で容易かつ確実に、緩みが発生しないように連結接続することができる。
【0027】
また、図1及び図2に示されるように、柵状片11の外面側半部(即ち、柵状片11の厚みのうちの外周部寄りの部分)が孔側係合溝8に係合することにより、処置具挿入口金取付孔2内における処置具挿通チャンネル基端口金4の軸線周り方向移動が阻止される。
【0028】
図1において、13は、連結部材10により連結された状態の処置具挿通チャンネル基端口金4と処置具挿入口金7を処置具挿入口金取付孔2内に固定するための固定ナットである。固定ナット13は処置具挿入口金7の中程位置の外周に形成された雄ねじ部7sに螺合するように設けられている。
【0029】
処置具挿入口金取付孔2の内周部にはねじ切りの類は全くされておらず、固定ナット13の表面と処置具挿入口金取付孔2の外部開口端面とが同面になる状態より固定ナット13が処置具挿入口金取付孔2内に潜らないように、固定ナット13と当接する段部2aが処置具挿入口金取付孔2の内周部に形成されている。14はシール用のOリングである。
【0030】
このような内視鏡の処置具挿入部を組み立てる際には、まず図5に示されるように、処置具挿入口金7を処置具挿入口金取付孔2内に外側から差し込んで、図6に示されるように、連結部材10で処置具挿通チャンネル基端口金4と処置具挿入口金7を連結接続させ、連結部材10を処置具挿入口金取付孔2内に引き込む。
【0031】
そして、図7に示されるように、柵状片11を孔側係合溝8に係合させ、処置具挿入口金7の外端側から固定ナット13を取り付けて、処置具挿入口金7に形成されている雄ねじ部7sに螺合させる。
【0032】
すると、固定ナット13が処置具挿入口金取付孔2の段部2aに当接した後(即ち、操作部ハウジング1に当接した後)は、固定ナット13の回転に伴って、連結部材10が処置具挿入口金取付孔2内にさらに引き込まれる方向に、処置具挿通チャンネル基端口金4と処置具挿入口金7がスライドする。
【0033】
そして、図1に示されるように、柵状片11の突端11aが孔側係合溝8の端部8aに当接すると、連結部材10が処置具挿入口金取付孔2内にそれ以上引き込まれなくなり、処置具挿通チャンネル基端口金4と処置具挿入口金7とが、連結部材10で連結接続された状態で、処置具挿入口金取付孔2内において操作部ハウジング1に確実に固定された状態になる。
【0034】
このようにして、処置具挿入口金取付孔2内への処置具挿通チャンネル基端口金4と処置具挿入口金7の固定を、プラスチック製の操作部ハウジング1にねじ切りをすることなく確実に行うことができ、固定ナット13を強く締め付けても操作部ハウジング1に割れが発生するおそれがない。
【符号の説明】
【0035】
1 操作部ハウジング
2 処置具挿入口金取付孔
2a 段部
3 処置具挿通チャンネル
4 処置具挿通チャンネル基端口金
7 処置具挿入口金
7s 雄ねじ部
8 孔側係合溝
9 連結部係合溝
10 連結部材
11 柵状片
12 抜け止め爪
13 固定ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具挿通チャンネルの基端に取り付けられた処置具挿通チャンネル基端口金の突端部分が、プラスチック製の操作部ハウジングに開口形成された処置具挿入口金取付孔内に上記操作部ハウジングの内側から差し込まれて、上記処置具挿入口金取付孔に外側から差し込まれた処置具挿入口金の奥側端部と上記処置具挿入口金取付孔内で連結接続された構造を有する内視鏡の処置具挿入部において、
上記処置具挿通チャンネル基端口金の突端部分に、上記処置具挿入口金との連結接続及び上記処置具挿入口金取付孔との係合とを司る連結部材が設けられて、
上記連結部材には、弾性材からなる複数の柵状片が上記処置具挿通チャンネル基端口金の突端部分の外周部の複数箇所から軸線と平行方向に突出して設けられて、各柵状片の先端には抜け止め爪が内方に向けて突出形成され、
上記処置具挿入口金取付孔の内周面には、上記柵状片の外面側半部が係合する孔側係合溝が軸線と平行に形成されて、
上記処置具挿入口金の奥側端部の外周面には、上記柵状片の内面側半部が係合する連結部係合溝が軸線と平行に形成され、
上記抜け止め爪を上記連結部係合溝に沿って軸線方向に移動させると上記柵状片が弾性変形して、上記抜け止め爪が上記連結部係合溝を通過し終わると上記柵状片が自己の弾性で元の形状に戻り、それによって上記柵状片の内面側半部が上記連結部係合溝に係合して上記処置具挿通チャンネル基端口金に対する上記処置具挿入口金の軸線周り方向の回転が阻止されると共に、上記抜け止め爪が上記連結部係合溝の端部に係合することにより上記処置具挿通チャンネル基端口金に対する上記処置具挿入口金の軸線方向移動が阻止された状態になって、上記処置具挿入口金が上記処置具挿通チャンネル基端口金に対し軸線方向及び軸線周り方向のどちらにも移動が阻止された状態に連結され、
上記柵状片の外面側半部を上記孔側係合溝に係合させることにより、上記処置具挿入口金取付孔内における上記処置具挿通チャンネル基端口金の軸線周り方向移動が阻止され、
固定ナットを、上記処置具挿入口金の外周に形成された雄ねじ部に締め付けて上記操作部ハウジングに当接させることにより、上記処置具挿入口金と上記処置具挿通チャンネル基端口金とが、上記連結部材で連結接続された状態で上記操作部ハウジングに固定された状態になっていることを特徴とする内視鏡の処置具挿入部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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