説明

内視鏡システム

【課題】内視鏡観察と他の治療器具による治療とを片手操作で並行してなし得ると共に、多面的な治療態様にも対応し得る内視鏡システムを提供する。
【解決手段】片手で把持操作可能なグリップ部2と、前記グリップ部2の先端部に連接されたパイプ部3と、前記パイプ部3の先端3aから該パイプ部3内及び前記グリップ部2内を経て撮像装置4に連なるよう設けられたイメージガイド5と、を含む内視鏡システム1であって、前記グリップ部2には、治療器具6が着脱自在に取付けられる治療器具の取付部7が形成され、且つ、該治療器具6を前記グリップ部2と共に片手で把持操作し得る位置に保持する為の保持手段8が具備され、前記パイプ部3には、前記取付部7に取付けられる治療器具6の治療手段61をパイプ部3の先端にまで及ばせて患部に作用させる為の治療手段用チャンネル3dが内装されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システムの改良、とりわけ、内視鏡による患部の観察と、治療器具による患部の治療とを並行して行い得る内視鏡システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、種々の臨床医療において、内視鏡によって患部を観察しながら患部の治療を行うことも広く行われるようになった。また、患部にレーザー光を照射して患部の治療を行うレーザー治療器具も広く用いられるようになった。特許文献1には、光源からの光を伝送して患部を照射する第1のファイバー束と、患部の映像を捉えて伝送しカメラやモニターで再生し得るようにした歯科用内視鏡が開示されている。特許文献2には、生体組織の切除、止血、凝固、傷病部の治癒促進などの処置を行う際に使用される治療用レーザー装置が開示されている。特許文献1は、患部を観察する為の歯科用内視鏡装置であり、また、特許文献2は、患部にレーザーを照射して治療を行う為の治療器具であるが、特許文献3,4には、内視鏡と治療器具とを組合せて、内視鏡による患部の観察と、治療器具による患部の治療とを並行して行い得るよう構成された内視鏡システムの例が示されている。即ち、特許文献3には、内視鏡用ファイバー(照明用光伝送ファイバー及び光画像伝送ファイバー)を内蔵し、患部の内視鏡観察を行いながら患部を掻爬ブレード(治療器具)によって掻爬治療することができる歯肉縁下歯科治療の為の内視鏡システムが示されている。特許文献3には、掻爬ブレードに代えてレーザー光の伝送用ファイバーを内蔵し、患部の内視鏡観察を行いながら患部のレーザー治療を行い得るよう構成された内視鏡システムも示されている。一方、特許文献4には、照明光用ファイバー、画像伝送ファイバー及び治療器具(ブレード、ピンセット、ドリルバイト等)を1個のポリマージャケットによって束ね、患部の内視鏡観察を行いながら治療器具によって患部の治療を行うことができるよう構成された内視鏡システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−279129号公報
【特許文献2】特開2003−126114号公報
【特許文献3】特表平7−502441号公報
【特許文献4】特表平10−504472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される内視鏡は、患部の観察のみを行うものであるから、並行して患部の治療を行おうとすると、別に準備した治療器具を観察対象の患部に近づけて、内視鏡とは別の操作をして治療作業を行う必要がある。逆に、特許文献2に示される治療用レーザー装置を用いて生体内の治療を行う場合、別に準備した内視鏡を治療対象に近づけて、治療装置(器具)とは別の操作をして治療作業を行う必要がある。このような治療形態では、多数の術者の手を必要とし、治療作業が煩雑となる。これに対し、特許文献3,4に示されるような内視鏡システムにおいては、内視鏡と治療器具とが組合されているから、内視鏡による患部の観察と、治療器具による患部の治療とを並行して行うことができ、極めて便利で治療効率の向上が図られる。しかし、特許文献3に示される内視鏡システムの場合、内視鏡観察機能及び掻爬治療機能を備えた内視鏡システム、或いは内視鏡観察機能及びレーザー治療機能を備えた内視鏡システムが、それぞれ個別であり、1個の内視鏡システムにおいて、種別の異なる治療器具を適宜交換して他の術式に対応させるという考えはない。従って、多様な治療態様に対する適合性において、使用者のニーズに充分に応えるものではなかった。また、特許文献4に示される内視鏡システムの場合、その図9に示される例では、内視鏡による患部の観察機能、ナイフブレードによる患部の切開機能、更には縫合糸またはワイヤによる縫合機能を備え、複数の術式に対応させることができると考えられる。しかし、これら各機能を発現させる為の操作部の機構が明示されておらず、本特許文献4の他の開示技術からしても、これらの操作部を操作するには、複数の手を要し、片手での操作は不可であるとするのが至当である。従って、操作性に優れるとは考えられず、特に歯科治療のように狭い口腔内での治療の場合、複数の術者の手が患者の口腔付近に位置することになり、これが歯科治療の円滑性を著しく欠く要因となることは否めなかった。
【0005】
本発明は、前記に鑑みなされたものであり、内視鏡観察と他の治療器具による治療とを片手操作で並行してなし得ると共に、多面的な治療態様にも対応し得る内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内視鏡システムは、片手で把持操作可能なグリップ部と、前記グリップ部の先端部に連接されたパイプ部と、前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て撮像装置に連なるよう設けられたイメージガイドと、を含む内視鏡システムであって、前記グリップ部には、治療器具が着脱自在に取付けられる治療器具の取付部が形成され、且つ、該治療器具を前記グリップ部と共に片手で把持操作し得る位置に保持する為の保持手段が具備され、前記パイプ部には、前記取付部に取付けられる治療器具の治療手段をパイプ部の先端にまで及ばせて患部に作用させる為の治療手段用チャンネルが内装されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の内視鏡システムにおいて、前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て光源装置に連なるよう設けられたライトガイドを、更に含むよう構成しても良い。また、前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て給水源に連なるよう設けられた給水用管路を、更に含むよう構成しても良い。
【0008】
本発明の内視鏡システムにおいて、前記保持手段が、前記グリップ部の長手軸方向に沿ってスライド可能とされているものとしても良い。
【0009】
本発明の内視鏡システムにおいて、前記治療器具を、前記治療手段としてのレーザー導光チップを先端に備える治療用レーザー照射ハンドピースとし、該治療用レーザー照射ハンドピースを前記取付部に取付けた状態では、前記レーザー導光チップが前記治療手段用チャンネルに挿通され前記パイプ部の先端より突出し得るよう構成しても良い。また、前記治療器具を、前記治療手段としての薬液を充填し得る薬液注入器具とし、前記薬液注入器具を前記取付部に取付けた状態では、前記薬液が前記治療手段用チャンネルを経て前記パイプ部の先端より注出し得るよう構成しても良い。更に、前記治療器具を、前記治療手段としての針状切削工具を備える根管切削器具とし、前記根管切削器具を前記取付部に取付けた状態では、前記針状切削工具が前記治療手段用チャンネルに挿通され前記パイプ部の先端より突出し得るよう構成しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る内視鏡システムによれば、片手でグリップ部を把持し、パイプ部の先端を観察対象の患部付近に位置させ、患部の画像を該パイプ部の先端からイメージガイドを経て撮像装置に伝送させ、撮像装置で取得した画像を適宜再生手段(例えば、モニター装置)で再生させることによって、患部の内視鏡観察を実施することができる。そして、前記グリップ部には、治療器具が前記取付部を介して取付けられ、この取付け状態では、治療器具の治療手段がパイプ部に内装された治療手段用チャンネルを経てパイプ部の先端に及ぶから、患部の内視鏡観察と治療手段による患部の治療とを並行して行うことができる。しかも、前記治療器具は、保持手段によって前記グリップ部と共に片手で把持操作し得る位置に保持されるから、術者は片手によって内視鏡と治療器具の操作を同時に行うことができ、他方の手がフリーとなり、余裕をもった治療作業を実施することができる。また、アシスタントは両手がフリーとなって他の補助作業を並行して行うことができ、全般に亘ってきめ細かで効率的な治療作業が可能となる。加えて、治療器具は前記取付部に着脱自在に取付けられるから、治療器具を適宜取り換えることによって、治療態様に応じた治療を実施することができる。治療作業中において術式の変更が必要である場合にも、それに適した治療器具に即座に取り換えることによって、臨機応変な治療を的確に行うことができる。
【0011】
本発明の内視鏡システムにおいて、前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て光源装置に連なるよう設けられたライトガイドを更に含むよう構成した場合、光源装置からの光が当該ライトガイドを経てパイプ部の先端より患部に照射されるから、イメージガイドの先端において患部の画像が鮮明に受光され、且つイメージガイドを伝送されて撮像装置で的確に取得される。従って、術者は前記再生手段によって鮮明な画像を見ながら、治療器具を操作して精度の高い治療を行うことができる。
【0012】
また、前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て給水源に連なるよう設けられた給水用管路を更に含むよう構成した場合、治療作業の際、必要に応じ給水源から当該給水用管路を経てパイプ部の先端より患部に向け注水することにより、患部の洗浄や治療手段の冷却等を簡易に行うことができる。
【0013】
前記保持手段が、前記グリップ部の長手軸方向に沿ってスライド可能とされている場合、例えば、患部の内視鏡観察をしながら、治療器具における治療手段の先端を患部に対して適正位置に位置決めしたり、或いは、治療手段の先端を後退させて内視鏡観察の視野を広げたりする操作を簡易に行うことができる。しかも、グリップ部を把持した状態で、片手操作によってこれを行うことができ、極めて合理的である。
【0014】
本発明の内視鏡システムにおいて、前記治療器具として、例えば、治療用レーザー照射ハンドピース、薬液注入器具、或いは、歯牙の根管切削器具を例示することができる。治療器具が治療用レーザー照射ハンドピースの場合、先端に前記治療手段としてのレーザー導光チップを備え、前記取付部に取付けられた状態では、前記レーザー導光チップが前記治療手段用チャンネルに挿通され前記パイプ部の先端より突出し得るよう構成される。従って、パイプ部の先端より突出するレーザー導光チップの先端からレーザー光を患部に向かって照射させることによって、内視鏡観察をしながら患部のレーザー治療を実施することができる。また、治療器具が治療手段としての薬液を充填し得る薬液注入器具の場合、前記取付部に取付けた状態では、前記薬液が前記治療手段用チャンネルを経て前記パイプ部の先端より注出し得るよう構成される。従って、薬液注入器具を操作することにより、パイプ部の先端から患部に向かって薬液を注出させることができ、内視鏡観察をしながら患部に対する薬液施与・洗浄治療を実施することができる。更に、前記治療器具が根管切削器具の場合、前記治療手段としての針状切削工具を備え、前記取付部に取付けた状態では、前記針状切削工具が前記治療手段用チャンネルに挿通され前記パイプ部の先端より突出し得るよう構成される。従って、パイプ部の先端より突出する針状切削工具を患部としての歯牙の根管に直接作用させることによって、内視鏡観察をしながら患部に対する歯牙の根管治療を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の内視鏡システムの一例を模式的に示す部分拡大全体構成図である。
【図2】同内視鏡システムの要部の部分破断正面図である。
【図3】同内視鏡システムの要部の平面図である。
【図4】図2におけるX−X線矢視拡大断面図である。
【図5】(a)は図2におけるY−Y線矢視断面図であり、(b)はその変形例の同様図である。
【図6】同内視鏡システム全体の制御ブロック図である。
【図7】別の実施形態の図2と同様図である。
【図8】更に別の実施形態の図2と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の内視鏡システムの実施の形態について図面に基づき説明する。図1〜図6に示すように、本発明に係る内視鏡システム1は、片手で把持操作可能なグリップ部2と、前記グリップ部2の先端部に連接されたパイプ部3と、前記パイプ部3の先端3aから該パイプ部3内及び前記グリップ部2内を経て撮像装置4に連なるよう設けられたイメージガイド5とを含む。前記グリップ部2には、治療器具(図1〜図6の例では、治療用レーザー照射ハンドピース)6を着脱自在に取付けるための取付部7が形成され、且つ、該レーザー照射ハンドピース6を前記グリップ部2と共に片手で把持操作し得る位置に保持する為の保持手段8が具備されている。更に、図示の実施形態では、前記パイプ部3の先端3aから該パイプ部3内及び前記グリップ部2内を経て光源装置9に連なるよう設けられたライトガイド10と、前記パイプ部3の先端3aから該パイプ部3内及び前記グリップ部2内を経て給水源11に連なるよう設けられた給水用管路12とを備えている。イメージガイド5及びライトガイド10は、共に導光ファイバーからなり、ガイド中継部材13において束ねられ、ガイド筒14内に挿通され、グリップ部2に導入されている。
【0017】
グリップ部2は、合成樹脂の成型体からなり、直状の胴部2aと、その先側に一体に形成された中空ハウジング部2bとよりなり、胴部2aには、前記保持手段8がその長手軸方向に沿ってスライド可能且つ着脱可能に取付けられている。胴部2aの基部に前記ガイド筒14が接合され、ガイド筒14と共に胴部2a内に挿通されたイメージガイド5及びライトガイド10は、前記中空ハウジング部2b内に至り、後記するパイプ部3の連結基部3bよりパイプ部3内に導入され、パイプ部3の先端3aにまで及ぶよう引回し配設されている。また、前記ハウジング部2bには、前記給水管路12の取付ソケット部12aが形成され、該給水管路12は、給水源11から取付ソケット部12aを経て、前記中空ハウジング部2b内に至り、後記するパイプ部3の連結基部3bにおいてパイプ部3内の給水チャンネル3cに接続され、パイプ部3の先端3aにまで及ぶよう管路構成されている。更に、前記取付部7の先端は中空ハウジング部2b内に臨み、この取付部7の先端とパイプ部3の連結基部3bとの間には、治療手段用のガイドチューブ7aが連結されている。図例では、ライトガイド10は、多数の極細(外径が30μm程度)導光ファイバーを束ねて構成され、パイプ部3内では、後記する治療手段用チャンネル3d、前記給水チャンネル3c及び前記イメージガイド5の周辺空間部に適宜バラけるように配設されている(図4参照)が、1本の導光ファイバーをパイプ部3の先端3aにまで及ぶよう配設しても良い。
【0018】
前記グリップ部2の先端部には、前記パイプ部3が連結基部3bを介して連接されている。このパイプ部3は図2の2点鎖線で示すような直状形状のもの、或いは、実線で示すような湾曲形状のもの、更には、手指によって任意に変形し得るもの等が用いられる。該パイプ部3内には、治療手段用チャンネル3d及び前記給水チャンネル3cが形成され、これらによるパイプ部3内の残余の空間には、前記イメージガイド5及びライトガイド10の先側部が導入され保持されている。治療手段用チャンネル3dには、取付部7に取付けられた後記するレーザー照射ハンドピース6のレーザー導光チップ61(導光ファイバー61a)が、前記ガイドチューブ7a内を経て前記パイプ部3の先端3aより突出し得るよう挿通されている。また、給水チャンネル3cには給水管路12からの水が供給され、パイプ部3の先端3aより患部に向け噴出し得るようになされている。また、図1の拡大図に示すように、前記イメージガイド5の先端面に密接して、受光レンズ(凸レンズ)5aがパイプ部3の先端3a部に位置するよう装着されている。この受光レンズ5aを介して患部の画像が集光され、イメージガイド5の先端面より前記撮像装置4に伝送される。イメージガイド5は、パイプ部5内に形成されたイメージガイドチャンネル3eに挿入され、該イメージガイドチャンネル3eの先端部に前記受光レンズ5aが一体に保持されている。パイプ部3、治療手段用チャンネル3d及びイメージガイドチャンネル3eは、例えば、ステンレスの細チューブからなり、また、給水チャンネル3cはポリイミド樹脂の細チューブからなる。以上のように構成されたパイプ部3は、その先端3aが患部の近傍に臨むよう、狭隘な診療対象部位にも挿入され、内視鏡観察と治療器具による治療とを直接的に行えるようになされている。従って、例えば、根管用の内視鏡システムにおいては、そのパイプ部3の外径は0.8mmないし1.3mm程度とし、歯周ポケット用の内視鏡システムにおいては、そのパイプ部3の外径は2.0mmないし2.5mm程度とすることで、効果的かつ効率的な診療をなし得るものとなる。尚、パイプ部3の断面形状は、図4のように円形としてもよいが、例えば特許文献4における図9のように、複数の円形が接合された断面形状としてもよい。
【0019】
図1〜図6においては、内視鏡観察と並行して使用される治療器具が、治療用レーザー照射ハンドピース6である例を示している。レーザー照射ハンドピース6の先端には、治療手段としてのレーザー導光チップ61が装着されている。該レーザー導光チップ61は、実質的なレーザー導光チップとしての導光ファイバー61aと、該導光ファイバー61aを一体に保持しレーザー照射ハンドピース6の先端に着脱自在に装着させる為のソケット部61bと、このソケット部61bに密接して導光ファイバー61aの基部側に外装されるゴム製(例えば、シリコンゴム)チューブ61cとを備えて、チップユニットとして構成されている。該レーザー導光チップ61を、ソケット部61bをしてレーザー照射ハンドピース6の先端に装着した時には、レーザー照射ハンドピース6の基部に接続される導光体62を介して後記するレーザー治療装置60におけるレーザー発振器63(図6参照)から導光ファイバー61aへのレーザー光の伝送系が確立される。
【0020】
レーザー照射ハンドピース6は、術者が片手で把持操作し得る円筒形状のペングリップ部6aを有し、前記レーザー導光チップ61をして取付部7に取付けられると共に、保持手段8によってペングリップ部6aが保持され、この取付・保持状態では、レーザー照射ハンドピース6及びレーザー導光チップ61の中心軸線と、前記グリップ部2の胴部2aの長手軸線とが平行となる。前記取付部7は、汎用の医療用注射器における注射針の針基と略同形状に形成され、先側に向け漸次若干縮径するテーパ形状の中空円筒形受支部7bを有している。レーザー照射ハンドピース6を、前記レーザー導光チップ61をして取付部7に取付ける際は、レーザー照射ハンドピース6を保持手段8に保持させた状態で導光ファイバー61aを前記受支部7bから前記ガイドチューブ7a及び治療手段用チャンネル3dに挿通させながら、前記チューブ61cを受支部7bに圧入する。
【0021】
前記保持手段8は、図5(a)に示すように、合成樹脂の成型体からなり、前記グリップ部2の胴部2aに嵌装される嵌合孔8aを有している。保持手段8は、グリップ部2の胴部2aに対して、該嵌合孔8aをして、その基部側(図1及び図2の右側)より嵌装され、胴部2aの長手軸方向に沿ってスライド可能で且つ胴部2aからの取外しも可能とされる。嵌合孔8aと胴部2aとは、フリクションを伴った嵌合関係とされ、保持手段8のスライド操作は、このフリクションに抗した手指操作で可能とされている。保持手段8の下部には、前記嵌合孔8aを開環するスリット8bが設けられ、このスリット8bの開口幅dは、前記ガイド筒14の外径よりやや大とされている。従って、該保持手段8を、前記胴部2aに沿ってガイド筒14の位置までスライド移動させ、ガイド筒14をこのスリット8bを通過させることによって、グリップ部2から取外すことができる。また、該保持手段8には、前記嵌合孔8aと軸心が互いに平行となる治療器具(レーザー照射ハンドピース6)の円形保持孔8cが形成されている。該保持孔8cの内径は、前記ペングリップ部6aの外径よりやや小とされ、ペングリップ部6aの嵌合保持状態では、ペングリップ部6aとの間にフリクションが作用するようになされている。このフリクションは、術者の手指操作により、ペングリップ部6aが保持孔8cに対して抜差し得る程度に設定される。
【0022】
前記のように、レーザー照射ハンドピース6が、取付部7に取付けられ、保持手段8に保持された状態の内視鏡システム1においては、図1に示すように、術者Dは、片手でグリップ部2及びレーザー照射ハンドピース6を把持し、パイプ部3の先端3aを患部(不図示)の近傍に近付け、導光ファイバー61aの先端よりレーザー光を患部に照射作用させてレーザー治療を行うと共に、ライトガイド10を介して患部を照明し、更に、イメージガイド5及び撮像装置4によって得た患部の画像を後記する表示部(モニター)153によって内視鏡観察を行うことができる。必要によって、前記給水管路12より、患部に向けて注水噴射を行う。レーザー治療を行う時、術者Dは、保持手段8をグリップ部2の先側に向けスライド操作し、前記チューブ61cをその軸心方向に圧縮させるようにして、導光ファイバー61aの先端部をパイプ部3の先端3aより突出させて患部により近付けてレーザー照射する。これによって、レーザー光のエネルギーを効率的に使用することができる。そして、レーザー照射を停止して患部の状態を観察する際は、前記保持手段8から手指を離すと、圧縮されていたチューブ61cの弾性復元力により、保持手段8がグリップ部2の基部側に後退し、これによって、パイプ部3の先端3aより突出していた導光ファイバー61aの先端部が縮退し、観察対象の視野が導光ファイバー61aによって遮られず、患部の内視鏡観察がより的確になされる。前記グリップ部2の胴部2aの側部には、ラックギヤ状の複数の規則的な突部2cが形成されており、この突部2cは手指の滑り止めとして機能する。
【0023】
図5(b)は、前記保持手段8の変形例を示している。即ち、この例の保持手段8には、前記ラックギヤ状の突部2cに噛み合うピニオンギヤ(はす歯ギヤ)8dが、胴部2aの長手軸に平行な軸心回りに回動可能で、一部が保持手段8の側部に突出するように設けられている。術者Dは、このピニオンギヤ8dを、突出部分をして回動操作し、前記突部2cに対し相対的に螺進・螺退させることによって、保持手段8を胴部2aの長手軸に沿ってスライドさせ、保持手段8に保持されたレーザー照射ハンドピース6の位置決めを行うことができる。このような保持手段8は、後記する図7に示すような実施形態に好適に採用される。この例においても、保持手段8はグリップ部2から取外し可能であり、取外した状態では、突部2cは前記と同様手指の滑り止めとして機能する。その他の構成は、図5(a)に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
尚、保持手段8を胴部2aの長手軸に沿ってスライドさせる構成としては、上記形態に限られず、例えば、手指操作により段階的に進退するよう、胴部2aの突部2cに噛み合う爪のような部材を嵌合孔8aの内面に設ける、あるいは、別途設けるフートスイッチ(不図示)等で電動モータを駆動し、その駆動力をして保持手段8を移動させる、といった種々の構成を採用し得る。
【0024】
図6は、前記構成の内視鏡システム1の制御ブロック図を示している。図に示す内視鏡システム1は、大略的に内視鏡観察装置15と、レーザー治療装置60とより構成される。内視鏡観察装置15には、患部を光照射する照明系と、患部の状態を撮像する撮像系とが含まれ、これらは、共通の電源部150と、中央制御部151と、操作部152とによって、その駆動制御がなされる。光源装置9は、照明光源9aと、励起光源9bとを備え、いずれもLEDやハロゲンランプ等からなる。照明光源9aは、白色光を発するものであり、ライトガイド10を経てパイプ部3の先端3aより患部に照射され、文字通り患部を明るく照らすべく機能する。また、励起光源9bは、例えば、波長が410±10nmの光を発するもので、歯牙に照射してその蛍光観察等に使用される。特に、齲蝕や歯垢等がある歯牙にこのような励起光を照射すると、齲蝕や歯垢等の部分から健全部とは異なる強度の蛍光が発せられ、その確認診断に有効である。術者は、診療態様に応じ、前記操作部152を操作してこれらの発光切替を行う。操作部152の操作スイッチは、例えば、フートコントーラ(不図示)に設けられ、術者はこのフートコントーラを足踏み操作して光源装置9のオン・オフ操作を行う。撮像系を構成する撮像装置4は、例えばCCD(チャージカップルドデバイス)等の撮像素子からなり、イメージガイド5を伝送される患部の画像情報は、この撮像装置4によって電気信号に変換され、中央制御部151によって画像処理がなされて、表示部(モニター)153において再生表示される。術者は、この表示部153に表示される画像を見ながら、患部の診断を行うと共に、レーザー照射ハンドピース6によって患部にレーザー光を照射してレーザー治療を行うことができる。ここで使用される撮像装置4の画素数は、例えば、根管用であれば6000画素、歯周ポケット用であれば15000画素、というように、目的とする内視鏡観察に必要な範囲や、パイプ部3及びイメージガイド5の物理的強度的に設計可能なサイズを考慮して、適宜選択設定することができる。
【0025】
レーザー治療装置60は、前記レーザー照射ハンドピース6と、レーザー発振器63と、該レーザー発振器63を発振制御する発振制御部64と、電源部65と、操作部66とを含む。レーザー発振器63で発振された治療用レーザー光は、例えば、内面に誘電体薄膜をコーティングした中空導波路などのレーザー伝送路62を通じて、レーザー照射ハンドピース6、さらには導光ファイバー61aへと伝送され、患部の治療に供される。このレーザー治療装置60は、齲蝕の除去、歯牙の硬組織におけるくさび状欠損の表層除去、根管の蒸散形成、根管内の殺菌、歯周ポケットの照射、歯石除去、歯周ポケットの掻爬、歯周のフラップ手術、歯肉切開・切除、口内炎の凝固層形成等の歯科治療に用いられるもので、前記構成部を含んで装置ユニットとされて汎用化されている。レーザーとしては、Nd:YAGレーザー、CO2レーザー、Er:YSGGレーザーなど種々のものが採用できるが、Er:YAGレーザーが、水による吸収性が高く、硬組織の蒸散も可能であることから、治療効果を高めることができる点で望ましく採用される。操作部66の操作スイッチは、キャスターによって移動自在とされるレーザー治療装置本体(不図示)や、フートコントローラ或いはレーザー照射ハンドピース6のペングリップ部6aに設けられる。前記内視鏡装置15による内視鏡観察と、レーザー治療装置60によるレーザー治療とを並行して行う場合、内視鏡装置15及びレーザー治療装置60を患者が着座乃至は仰臥する診療台(不図示)の近傍に配置させ、前記グリップ部2にレーザー照射ハンドピース6を取付け保持させ、図1に示すようにグリップ部2及びレーザー照射ハンドピース6を片手で把持し、適宜操作部152,66を操作して、内視鏡観察及び治療作業がなされる。
【0026】
図7は、本発明の内視鏡システムの別の実施形態を示している。図7に示す内視鏡システム1Aでは、治療器具として薬液注入器具16が用いられている。図例の薬液注入器具16は、汎用の医療用注射器の注射針を装着していない注射筒(シリンダ16aとピストン16b)を応用したもので、シリンダ16a内には治療手段としての薬液161が充填される。該薬液注入器具16は、シリンダ16aの先端ノズル部16cを前記取付部7に圧入するよう取付け、シリンダ16aを図5(b)に示す例と同様の保持手段8の円形保持孔8cに嵌入して保持させる。この取付・保持位置の調整は、保持手段8に設けられたピニオンギヤ8dを回動操作し、保持手段8をグリップ部2の胴部2aに対しその長手軸方向に沿って螺進・螺退させることによってなされる。このように、薬液注入器具16がグリップ部2に取付・保持された状態で、術者は、図1に示すように、グリップ部2と共に薬液注入器具16を片手で把持し、ピストン16bを手指で押込み操作すると、シリンダ16a内に充填された薬液161は、取付部7から、ガイドチューブ7a及びパイプ部3内の治療手段用チャンネル3d(図4参照)を経て、パイプ部3の先端3aより患部に注出される。従って、並行して前記内視鏡装置15(図6参照)を駆動させることにより、患部に対する薬液の滴下位置や、薬液量の過不足等を内視鏡観察によって確認しながら、適正な薬液治療を実施することができる。
尚、本実施形態では、薬液注入器具16として汎用の医療用注射器の注射筒を応用している。これによって、汎用性が高められ実用的であるが、専用の薬液注入器具を準備し、取付部7をこれに合う形状とすることも除外するものではない。その他の構成は、前記の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0027】
図8は、本発明の内視鏡システムの別の実施形態を示している。図8に示す内視鏡システム1Bでは、治療器具として根管切削器具17が用いられている。根管切削器具17は、治療手段としてのリーマやファイルからなる針状切削工具171と、該針状切削工具171の基部に固着された手持柄部172からなり、歯科用根管治療用器具として汎用されているものである。この根管切削器具17は、針状切削工具171を取付部7から、ガイドチューブ7a及びパイプ部3内の治療手段用チャンネル3d(図4参照)に挿通させ、パイプ部3の先端3aより突出する状態でグリップ部2に取付・保持される。このような根管切削器具17の取付・保持状態で、術者は、図1に示すように、グリップ部2と共に根管切削器具17を片手で把持し、手持柄部172を手指で抜差し操作して針状切削工具171の先端を根管内の患部に作用させることができる。従って、並行して前記内視鏡装置15(図6参照)を駆動させることにより、根管内の内視鏡観察をしながら、根管の切削治療を実施することができる。図例の根管切削器具17は、手持操作用のものであるので、保持手段8による保持は不要とされ、従って、図8では保持手段8をグリップ部2の胴部2aに取付けた状態を示しているが、取外しておいても良い。
尚、根管切削器具として電動式のものも実用化されており、このような電動式の根管切削器具を用いる場合は、保持手段8によって保持させることが望ましい。その他の構成は、前記の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0028】
尚、前記実施形態では、本発明の内視鏡システムを歯科用として適用した例について述べたが、耳鼻科、産婦人科、内科、外科等の他の医療用としての応用も可能である。また、治療器具としてレーザー照射ハンドピース、薬液注入器具、根管切削器具を例示したが、その他の治療器具、例えば、吸引器具等もその対象として挙げることは可能である。吸引器具を適用する場合、例示の治療手段用チャンネル3dを吸引路とすることも可能であるが、これとは別に吸引用のチャンネルを設けるようにしても良い。更に、例示の内視鏡システム1,1A,1Bは、それぞれ個別のものと位置付けても良いが、グリップ部2を共通とし、治療器具(レーザー照射ハンドピース6、薬液注入器具16、根管切削器具17)を適宜取替えることによって、歯科治療の各治療態様に応じて使い分けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1,1A,1B 内視鏡システム
2 グリップ部
3 パイプ部
3a 先端
3d 治療手段用チャンネル
4 撮像装置
5 イメージガイド
6 レーザー照射ハンドピース(治療器具)
61 レーザー導光チップ(治療手段)
7 取付部
8 保持手段
9 光源装置
10 ライトガイド
11 給水源
12 給水用管路
16 薬液注入器具(治療器具)
161 薬液(治療手段)
17 根管切削器具(治療器具)
171 針状切削工具(治療手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
片手で把持操作可能なグリップ部と、
前記グリップ部の先端部に連接されたパイプ部と、
前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て撮像装置に連なるよう設けられたイメージガイドと、を含む内視鏡システムであって、
前記グリップ部には、治療器具が着脱自在に取付けられる治療器具の取付部が形成され、且つ、該治療器具を前記グリップ部と共に片手で把持操作し得る位置に保持する為の保持手段が具備され、
前記パイプ部には、前記取付部に取付けられる治療器具の治療手段をパイプ部の先端にまで及ばせて患部に作用させる為の治療手段用チャンネルが内装されていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡システムにおいて、
前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て光源装置に連なるよう設けられたライトガイドを、更に含むことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内視鏡システムにおいて、
前記パイプ部の先端から該パイプ部内及び前記グリップ部内を経て給水源に連なるよう設けられた給水用管路を、更に含むことを特徴とする内視鏡システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内視鏡システムにおいて、
前記保持手段が、前記グリップ部の長手軸方向に沿ってスライド可能とされていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内視鏡システムにおいて、
前記治療器具が、前記治療手段としてのレーザー導光チップを先端に備える治療用レーザー照射ハンドピースであって、該治療用レーザー照射ハンドピースが前記取付部に取付けられた状態では、前記レーザー導光チップが前記治療手段用チャンネルに挿通され前記パイプ部の先端より突出し得るよう構成されていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内視鏡システムにおいて、
前記治療器具が、前記治療手段としての薬液を充填し得る薬液注入器具であって、前記薬液注入器具が前記取付部に取付けられた状態では、前記薬液が前記治療手段用チャンネルを経て前記パイプ部の先端より注出し得るよう構成されていることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内視鏡システムにおいて、
前記治療器具が、前記治療手段としての針状切削工具を備える根管切削器具であって、前記根管切削器具が前記取付部に取付けられた状態では、前記針状切削工具が前記治療手段用チャンネルに挿通され前記パイプ部の先端より突出し得るよう構成されていることを特徴とする内視鏡システム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−152305(P2011−152305A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16248(P2010−16248)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】