説明

凝集混和槽およびベルト型濃縮機

【課題】汚泥に十分な凝集作用を与えるとともに、ベルト上に流れ出る汚泥がベルト幅方向において均一に流れることを実現し、かつ装置の小型化を図ることができる凝集混和槽およびベルト型濃縮機を提供する。
【解決手段】汚泥投入口55に連通して攪拌部を形成する槽下部領域56と、大気開放した汚泥供給口57に連通して整流部を形成する槽上部領域58を備え、槽下部領域56に動的攪拌手段の攪拌装置60を有し、槽下部領域56と槽上部領域58が静的攪拌手段の邪魔板64を介して連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集混和槽およびベルト型濃縮機に関し、凝集混和槽を低動力で稼動させる技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト型濃縮機としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは汚泥と凝集剤とを混合する汚泥凝集装置と、汚泥凝集装置から供給する凝集汚泥を濃縮するベルト型濃縮機とからなる汚泥濃縮設備である。汚泥凝集装置は、汚泥と凝集剤を混合して凝集汚泥を生成するラインミキサーと、ラインミキサーから排出する凝集汚泥を攪拌して成長させる凝集混和槽とを備えている。ラインミキサーから凝集混和槽に受け入れた凝集汚泥は、槽内を上向流で上昇した後にオーバーフローし、概ね水平方向に流動してベルト上に流れ出す。
【0003】
また、特許文献2には汚泥水濃縮装置が記載されている。これはろ布ベルト上に汚泥水を供給するフロック形成槽が第1攪拌室と第2攪拌室を有し、第1攪拌室に第1羽根車を配置し、第2攪拌室に第2羽根車を配置している。汚泥水は第1攪拌室および第2攪拌室で羽根車による攪拌作用を受けた後に、第2攪拌室からオーバーフローして出口通路を水平方向に通ってろ布ベルト上に流れ出す。
【特許文献1】特開2007−229545号公報
【特許文献2】特開昭60−40698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に凝集混和槽では槽内の下部位置に攪拌手段を配置しており、槽下部領域で攪拌手段により凝集剤と汚泥とを混合し、槽内を上向流で流れる間に凝集汚泥の成長を図っている。
【0005】
しかしながら、攪拌手段による凝集剤と汚泥との混合、および凝集汚泥(フロック)の成長が不十分であると、凝集混和槽の凝集汚泥にむらが生じることになり、その結果ベルト上で濃縮斑が生じてSS回収率が悪化する。
【0006】
また、凝集混和槽へ汚泥が流入する汚泥投入口付近では、後続の流入汚泥の勢いに押されて攪拌手段による攪拌作用を十分に受けることなく汚泥が攪拌手段の領域をショートカットして短時間に上向流で流れて凝集作用が不十分な凝集汚泥が生じる。
【0007】
さらに、凝集混和槽では攪拌手段による攪拌作用によって汚泥に生じる上向流の流れは均一なものではないので、ベルト型濃縮機のようにベルト幅方向に均等に凝集汚泥を供給しようとする場合にあっては、汚泥の流れの均一化を図るために整流装置を設ける場合がある。しかしながら、この整流装置はベルト型濃縮機および凝集混和槽の小型化を阻害する要因となる。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するものであり、汚泥に十分な凝集作用を与えるとともに、ベルト上に流れ出る汚泥がベルト幅方向において均一に流れることを実現し、かつ装置の小型化を図ることができる凝集混和槽およびベルト型濃縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の凝集混和槽は、汚泥投入口に連通して攪拌部を形成する槽下部領域と、大気開放した汚泥排出口に連通して整流部を形成する槽上部領域を備え、槽上部領域の整流部は上向流路をなして流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭い形状をなし、槽下部領域に動的攪拌手段を有し、槽下部領域と槽上部領域が静的攪拌手段を介して連通することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の凝集混和槽において、静的攪拌手段は槽下部領域の攪拌部と槽上部領域の整流部との間に狭路を形成する固定部材からなることを特徴とする。
また、本発明の凝集混和槽において、静的攪拌手段は槽下部領域の攪拌部から槽上部領域の整流部へ流れる汚泥の流れを遮る固定部材からなり、固定部材は汚泥投入方向から見て汚泥投入口に対応する上方位置に配置したことを特徴とする。
【0011】
本発明のベルト型濃縮機は、凝集混和槽と、ベルト搬送方向の始端位置と終端位置に配置したローラに掛け渡して無端状をなす透水性を有した搬送ベルトを備え、凝集混和槽は、ベルト搬送方向の始端位置のローラの下方に配置する槽下部領域が汚泥投入口に連通して攪拌部を形成し、ベルト搬送方向の始端位置のローラのローラ周面に臨む側方位置に配置する槽上部領域が大気開放した汚泥排出口に連通して整流部を形成し、槽下部領域に動的攪拌手段を有し、槽下部領域と槽上部領域が静的攪拌手段を介して連通し、整流部は上向流路をなして流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汚泥投入口に連通する槽下部領域の攪拌部において動的攪拌手段により汚泥と凝集剤を混合して凝集作用により凝集汚泥を生成する。汚泥は槽下部領域から静的攪拌手段を介して連通する槽上部領域の整流部へ流入し、整流部を通して大気開放した汚泥排出口から搬送ベルト上に供給する。槽下部領域から槽上部領域へ流入する汚泥の流れは静的攪拌手段による攪拌作用を受けて静的攪拌手段の前後において乱流化し、槽上部領域の全体に広がって整流部へ流入し、大気開放した汚泥排出口へ向けて整流部を上向流で流れる間に整流部の全体に均一な流れとなり、搬送ベルトのベルト幅方向で均一な流れとなって汚泥排出口から流れ出す。
【0013】
静的攪拌手段は槽下部領域の攪拌部と槽上部領域の整流部との間に狭路を形成する固定部材によって実現でき、狭路の形成位置、狭路の流路断面積を適宜に設定することで、狭路を含む狭路前後での汚泥の流れの乱流化を調整できる。また、静的攪拌手段の固定部材が、汚泥投入方向から見て汚泥投入口に対応する上方位置において、槽下部領域の攪拌部から槽上部領域の整流部へ流れる汚泥の流れを遮ることで汚泥投入口から槽下部領域へ流入する汚泥が槽下部領域をショートパスして槽上部領域へ流れることを抑制し、槽下部領域の攪拌部において汚泥に十分な攪拌作用を及ぼすことができる。また、槽上部領域の整流部が上向流路をなし、その流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭くなることで、整流化を促進できるとともに、凝集汚泥を沈降させずに確実に移送できる。
【0014】
本発明のベルト型濃縮機は、凝集混和槽の攪拌部をなす槽下部領域がベルト搬送方向の始端位置のローラの下方に位置し、汚泥排出口に連通して整流部をなす槽上部領域がベルト搬送方向の始端位置のローラのローラ周面に臨む側方位置にあり、かつ整流部が上向流路をなしてその流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭くなることで、ベルト搬送方向において装置をコンパクト化できる。しかも、上述した凝集混和槽の作用によって、十分な凝集作用と搬送ベルト上への均一な汚泥の供給とを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1から図3において、重力脱水式のベルト型濃縮機は、始端位置と終端位置のローラ51の間に搬送ベルト52を掛け渡しており、搬送ベルト52は透水性を具えた無端ベルトからなり、ベルト搬送面上に供給した処理対象の汚泥53を搬送方向上流側から搬送方向下流側へ搬送する。
【0016】
搬送ベルト52の往路軌道の下方には脱離水受け部501が設けてあり、搬送ベルト52の復路軌道の下方には総合排水受け部502が設けてあり、総合排水受け部502には総合排水管路503が連通している。搬送ベルト52の往路軌道の終端側には汚泥排出部504が設けてあり、搬送ベルトの往路軌道の始端側には凝集混和槽54が設けてある。搬送ベルト52の復路軌道には洗浄水ノズル505が配置してあり、総合排水受け部502の下方に配置した洗浄水タンク506が給水管路507および給水ポンプ508を通して洗浄水ノズル505に連通している。凝集混和槽54には汚泥供給管路509および高分子凝集剤供給管路510が連通している。
【0017】
凝集混和槽54は、汚泥投入口55に連通して攪拌部を形成する槽下部領域56と、大気開放した汚泥排出口57に連通して整流部を形成する槽上部領域58を備えており、汚泥投入口55は搬送ベルト52のベルト幅の中央に対応する位置に配置している。槽下部領域56はベルト搬送方向の始端位置のローラ51の下方に配置してあり、槽上部領域58はベルト搬送方向の始端位置のローラ51のローラ周面に臨む側方位置に配置してある。汚泥排出口57は搬送ベルト52のベルト幅方向の全幅に沿って開口し、汚泥排出口57と搬送ベルト52の間にシューター59を設けている。
【0018】
槽下部領域56には動的攪拌手段をなす攪拌装置60が設けてあり、攪拌装置60は搬送ベルト52のベルト幅方向に沿って配置する回転主軸61と、回転主軸61に装着した複数のパドル62を備えており、複数のパドル62は回転主軸61の軸心廻りに放射状に配置している。回転主軸61は一端側が駆動系(図示省略)に接続している。
【0019】
槽上部領域58の整流部は上向流路をなし、その流路断面積が槽下部領域56の攪拌部における水平方向の流路断面積に比べて狭くなっている。槽下部領域56と槽上部領域58の間には静的攪拌手段をなす固定部材の邪魔板64が介在しており、邪魔板64によって槽下部領域56と槽上部領域58の間に狭路65を形成し、狭路65を通して槽下部領域56と槽上部領域58とを連通させている。
【0020】
本実施の形態において邪魔板64は、汚泥投入方向から見て汚泥投入口55に対応する上方位置で、槽下部領域56の攪拌部から槽上部領域58の整流部へ流れる汚泥の流れを遮る位置に配置しており、汚泥投入方向から見て中央部が上方に突出して屈曲する形状をなし、狭路65はベルト幅方向で邪魔板64の両側に設けている。
【0021】
しかしながら、静的攪拌手段の一例である邪魔板64の数やその形状、狭路65の形成位置やその流路断面積は適宜に設定することが可能であり、これらの要素を適宜に設定することで後述する汚泥53の流れの乱流化を調整できる。例えば、図3(a)に示すように、平坦な邪魔板64の両側に狭路65を形成することも可能であり、図3(b)に示すように、邪魔板64の一側に狭路65を形成することも可能であり、図3(c)に示すように、複数の邪魔板64を組み合わせて配置し、複数の狭路65を汚泥の流れ方向に繰り返し形成することも可能である。また、邪魔板64に替えて、図3(d)に示すように、静的攪拌手段として管路66により狭路を形成し、槽下部領域56と槽上部領域58とを連通することも可能であり、図3(e)に示すように、ベルト幅方向に配列した複数の管路66で槽下部領域56と槽上部領域58とを連通することも可能である。また、静的攪拌手段は凝集混和槽に対して一体的であっても、別体であっても良い。
【0022】
上記した構成における作用を説明する。汚泥投入口55から槽下部領域56の攪拌部に流入する処理対象の汚泥53は攪拌装置60による凝集剤との混合により凝集作用によって凝集汚泥を生成する。この際に、攪拌装置60は回転主軸61の回転駆動によりパドル62が回転主軸61の軸心廻りに回転して汚泥53および凝集剤を攪拌する。
【0023】
凝集汚泥となった処理対象の汚泥53は槽下部領域56の攪拌部から狭路65を通して槽上部領域58の整流部へ流入する。この際に、汚泥投入方向から見て汚泥投入口55に対応する上方位置において邪魔板64が汚泥53の流れを遮ることで、汚泥投入口55から槽下部領域56へ流入する汚泥53が槽下部領域56をショートパスして槽上部領域58へ流れることを抑制し、槽下部領域56の攪拌部において汚泥53に十分な攪拌作用を及ぼすことができる。
【0024】
槽下部領域56から槽上部領域58へ流入する汚泥53の流れは、邪魔板64による遮蔽および狭路65を通過する際の流路断面積の拡縮を要因とする攪拌作用を受けて邪魔板64の前後において乱流化し、槽上部領域58の全体に広がって整流部へ流入する。槽上部領域58では整流部が上向流路をなし、その流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭くなることで、整流化を促進できるとともに、凝集汚泥を沈降させずに確実に移送できる。そして、汚泥53は大気開放した汚泥排出口57へ向けて整流部を上向流で流れる間に整流部の全体に均一な流れとなり、搬送ベルト52のベルト幅方向で均一な流れとなって汚泥排出口57からシューター59を通して搬送ベルト52の上に流れ出す。ベルト搬送面上の汚泥53は、搬送ベルト52による搬送によって搬送方向上流側から搬送方向下流側へ向けて移動しつつ、その脱水が進む。
【0025】
このように、上述した凝集混和槽を備えたベルト型濃縮機では、凝集混和槽の作用によって、十分な凝集作用と搬送ベルト52への均一な汚泥の供給とを実現できる。しかも、この凝集混和槽を備えたベルト型濃縮機は、凝集混和槽の攪拌部をなす槽下部領域56がベルト搬送方向の始端位置のローラ51の下方に位置し、槽上部領域58がベルト搬送方向の始端位置のローラのローラ周面に臨む側方位置にあり、かつ整流部が上向流路をなしてその流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭くなることで、ベルト搬送方向において装置をコンパクト化できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態におけるベルト濃縮機の構成を示すベルト搬送方向に沿った断面図
【図2】実施の形態におけるベルト濃縮機のベルト幅方向に沿った断面図
【図3】本発明の他の実施の形態におけるベルト濃縮機の構成を示す模式図
【符号の説明】
【0027】
51 ローラ
52 搬送ベルト
53 処理対象の汚泥
54 凝集混和槽
55 汚泥投入口
56 槽下部領域
57 汚泥排出口
58 槽上部領域
59 シューター
60 攪拌装置
61 回転主軸
62 パドル
64 邪魔板
65 狭路
66 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥投入口に連通して攪拌部を形成する槽下部領域と、大気開放した汚泥排出口に連通して整流部を形成する槽上部領域を備え、槽上部領域の整流部は上向流路をなして流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭い形状をなし、槽下部領域に動的攪拌手段を有し、槽下部領域と槽上部領域が静的攪拌手段を介して連通することを特徴とする凝集混和槽。
【請求項2】
静的攪拌手段は槽下部領域の攪拌部と槽上部領域の整流部との間に狭路を形成する固定部材からなることを特徴とする請求項1に記載の凝集混和槽。
【請求項3】
静的攪拌手段は槽下部領域の攪拌部から槽上部領域の整流部へ流れる汚泥の流れを遮る固定部材からなり、固定部材は汚泥投入方向から見て汚泥投入口に対応する上方位置に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の凝集混和槽。
【請求項4】
凝集混和槽と、ベルト搬送方向の始端位置と終端位置に配置したローラに掛け渡して無端状をなす透水性を有した搬送ベルトを備え、凝集混和槽は、ベルト搬送方向の始端位置のローラの下方に配置する槽下部領域が汚泥投入口に連通して攪拌部を形成し、ベルト搬送方向の始端位置のローラのローラ周面に臨む側方位置に配置する槽上部領域が大気開放した汚泥排出口に連通して整流部を形成し、槽下部領域に動的攪拌手段を有し、槽下部領域と槽上部領域が静的攪拌手段を介して連通し、整流部は上向流路をなして流路断面積が攪拌部の水平方向の流路断面積に比べて狭くなることを特徴とするベルト型濃縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−94638(P2010−94638A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269267(P2008−269267)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】