説明

分散板

【課題】還元剤供給装置を排気通路の直管部に配置し、還元剤を斜めの方向から噴射する場合において、還元剤と排気ガスとの良好な混合を行なうことができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供する。
【解決手段】還元剤供給装置の下流であって、触媒に対して上流側に、分散板を備え、分散板の、還元剤及び排気が流入する入口部が、排気通路軸方向断面において略直線を形成し、この直線の、還元剤供給装置の噴射軸線方向に対する角度が、略直角であるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散板に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒上流の排気通路内に還元剤供給装置を配置し、触媒において、還元剤供給装置から供給された還元剤と排気とを反応させ、排気浄化をするようにした内燃機関の排気浄化装置では、触媒における還元剤のすり抜けを防止し、還元剤を有効に利用するために、還元剤を排気ガスと十分混合し、また、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散させることが好ましい。
【0003】
還元剤供給装置から触媒までの排気通路空間が大きければ、還元剤は十分混合され、広く分散させることが可能であるが、車両構造による制限のため、還元剤供給装置から触媒までの排気通路空間を大きくすることができない。そこで、従来より、図2に示すように、還元剤供給装置の下流であって、触媒に対して上流側に、還元剤を排気ガスと混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散させるために、分散板が備えられている。この分散板と略同様の作用効果を得ることを目的とする要素が、特許文献1、特許文献2、特許文献3に、それぞれ整流格子、ミキサー、混合器として紹介されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−214100号公報
【特許文献2】特表2001−516635号公報
【特許文献3】特表2003−503172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図2の分散板や、特許文献1、特許文献2、特許文献3の整流格子、ミキサー、混合器では、特許文献1に示されるような排気通路の曲がり部に還元剤供給装置を配置し、還元剤を整流格子の入口断面に対して略垂直な方向から噴射し、整流格子の入口断面において略均一に広がるように噴射する場合には、還元剤と排気ガスとの混合が良好に行われ、混合流れを略均一に触媒に導くことができる。しかし、上述の浄化装置と他の浄化装置とを併用する等の、浄化装置の改良に伴う構造上の変化により、還元剤供給装置を排気通路の曲がり部に配置することが困難となっている。
【0006】
そこで、図2に示すように、還元剤供給装置を排気通路の直管部に配置し、還元剤を斜めの方向から噴射することが行われるが、この場合には、排気通路の上部と下部との間に混合流れの不均一を生じる。混合流れの不均一に対する対策としては、分散板に多数のフィンを取り付け、混合流れを強制的に分散させる方法等が存在するが、分散板の形状が複雑となり、生産性が悪く、耐久性に欠け、圧力損失が大きい等の問題を有する。
【0007】
本発明は、還元剤供給装置を排気通路の直管部に配置し、還元剤を斜めの方向から噴射する場合において、還元剤と排気ガスとの良好な混合を行なうことができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、触媒上流の排気通路直管部に還元剤供給装置を配置し、排気通路に対して斜めの方向から還元剤を噴射し、触媒において、還元剤供給装置から供給された還元剤と排気とを反応させ、排気浄化をするようにした内燃機関の排気浄化装置において、還元剤供給装置の下流であって、触媒に対して上流側に、還元剤と排気とを混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散させる分散板を備え、分散板の、還元剤及び排気が流入する入口部が、排気通路軸方向断面において略直線を形成し、この直線の、還元剤供給装置の噴射軸線方向に対する角度が、略直角であることを特徴とする、分散板が提供される。
【0009】
すなわち、請求項1の発明では、噴射された還元剤の、分散板までの到達距離を略等しくし、蒸発時間を略等しくすることができるため、還元剤と排気ガスの良好な混合を行なうことができ、また、混合流れを排気通路全体に分散させることができるため、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる。更に、排気通路管壁へ付着する還元剤の量も減少させることができ、従来と同一の還元剤添加量で比較した場合には、浄化性能が向上する。従って、還元剤と排気ガスの良好な混合を行なうことができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供するという目的を達成することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、分散板が、排気通路軸方向に対して平行に配置された複数の平板によって構成され、複数の平板の、排気通路軸方向上流から見た端縁部が、排気通路軸方向に対して略垂直方向に略直線状に延び、この直線が、還元剤供給装置の噴射軸線方向に対して、略直角となるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の分散板が提供される。
【0011】
すなわち、請求項2の発明では、分散板を、排気通路軸方向に対して平行な複数の平板によって構成し、上述のように配置することにより、還元剤を、分散板の各平板に略均等に噴射することができるため、還元剤と排気ガスの良好な混合を行なうことができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる。この分散板は、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供するという目的を達成することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、分散板が、排気通路軸方向に対する垂直断面が十字状に組み合わされ、前記排気通路軸方向に対して平行に配置された、複数の平板によって構成され、複数の平板の、排気通路軸方向上流から見た端縁部の、十字状に直交する各辺が、還元剤供給装置の噴射軸線方向に対して、略45度となるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の分散板が提供される。
【0013】
すなわち、請求項3の発明では、複数の平板を、十字状に直交するように構成し、上述のように配置することにより、還元剤を、より広い表面積で分散板に噴射することができるため、還元剤が、より蒸発し易く、分散性が向上する。従って、還元剤と排気ガスとの混合を更に良好に行い、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができ、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、分散板の、分散板入口部から分散板出口部までの軸方向長さが、排気通路軸方向断面における上部から下部にわたって略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の分散板が提供される。
【0015】
すなわち、請求項4の発明では、分散板の軸方向長さを、排気通路軸方向断面における上部から下部にわたって略同一とすることにより、分散板内の温度分布や圧力損失等を略均一にすることができ、分散板内の各平板に噴射した後の還元剤の蒸発や、還元剤の、各平板への付着等も略均等とすることができる。従って、触媒に対してより均一化された混合流れを供給することができ、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
各請求項に記載の発明によれば、還元剤供給装置を排気通路の直管部に配置し、還元剤を斜めの方向から噴射する場合において、還元剤と排気ガスとの良好な混合を行なうことができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失が小さい分散板を提供するという共通の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明を分散板に適用した場合の、実施形態の概略構成を説明する排気通路軸方向断面図である。触媒3の上流の排気通路1の直管部に還元剤供給装置5を配置し、排気通路1に対して斜めの方向から還元剤を噴射する。触媒3では、還元剤供給装置5から供給された還元剤と排気とを反応させ、排気浄化を行う。還元剤供給装置5の下流であって、触媒3に対して上流側に、還元剤と排気とを混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散させる分散板6a又は6bを備える。分散板6a又は6bは、複数の平板を、分散板内に排気通路軸方向に対して平行に配置して構成する。分散板6a及び6bの形状は、以下の図3及び図4の説明で詳述する。
【0019】
図1に示すように、分散板6a又は6bは、排気通路軸方向断面において、分散板入口部61が略直線となるように形成し、この直線が還元剤供給装置5の噴射軸線方向に対してなす角度Bを、略直角となるように構成する。
【0020】
このように構成するので、図1の発明では、噴射された還元剤の、分散板6a又は6bまでの到達距離が略等しくなり、蒸発時間が略等しくなるため、還元剤と排気ガスの良好な混合を行なうことができる。また、混合流れを排気通路1全体に分散させることができるため、触媒3に対して略均一な混合流れを供給することができる。また、排気通路管壁2へ付着する還元剤の量も減少させることができ、従来と同一の還元剤添加量で比較した場合には、浄化性能が向上する。従って、還元剤を排気ガスと良好に混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散することができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することができる、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、低圧損の、分散板を提供するという目的を達成することができる。
【0021】
図2は、従来の内燃機関の排気浄化装置の、実施形態の概略構成を説明する排気通路軸方向断面図であり、図1を図2と比較すると、排気通路軸方向断面における分散板入口部の角度が異なることが理解できる。
【0022】
図3は、図1の分散板の一実施形態の概略構成を説明する図であり、分散板入口方向から見た図である。分散板6aを、排気通路軸方向に対して平行に配置された複数の平板62によって構成し、複数の平板62の、排気通路軸方向上流から見た端縁部65を、排気通路軸方向に対して略垂直方向に略直線状に延びるように構成し、この直線の、還元剤供給装置の噴射軸線方向に対してなす角度Dを、略直角となるように配置する。
【0023】
このように配置すると、還元剤を、分散板6aの平板62に略均等に噴射することができるため、還元剤を排気ガスと良好に混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散することができ、触媒3に対して略均一な混合流れを供給することができる。この分散板6aは、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失を小さくすることができる。
【0024】
図4は、図1の分散板の他の実施形態の概略構成を説明する図であり、分散板入口方向から見た図である。分散板6bは、排気通路軸方向に対する垂直断面を十字状に組み合わせ、排気通路軸方向に対して平行に配置した複数の平板63によって構成し、複数の平板63の、排気通路軸方向上流から見た端縁部66(図4参照)の、十字状に直交する各辺の、還元剤供給装置の噴射軸線方向に対してなす角度Eを、略45度となるように配置する。
【0025】
このように配置すると、還元剤を、より広い表面積で分散板6bに噴射することができるため、還元剤が、より蒸発し易く、分散性が向上する。従って、還元剤を排気ガスと良好に混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散することができ、触媒に対して略均一な混合流れを供給することがでる。この分散板6bは、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失を小さくすることができる。
【0026】
図5は、本発明を分散板に適用した場合の、他の実施形態の概略構成を説明する排気通路軸方向断面図である。分散板6cの、分散板入口部61から分散板出口部64までの軸方向長さを、排気通路軸方向断面における上部から下部にわたって略同一に構成する。
【0027】
すなわち、分散板6cの、分散板入口部61から分散板出口部64までの軸方向長さを略同一とすることにより、分散板6c内の温度分布や圧力損失等を略均一にすることができ、分散板を構成する各平板に噴射した後の還元剤の蒸発や、還元剤の、各平板への付着等を略均等とすることができ、触媒3に対してより均一化された混合流れを供給することがでる。この分散板は、形状が簡単で、生産性が高く、耐久性を有し、圧力損失を小さくすることができる。更に、この構成では、排気浄化装置を計算モデルでシミュレーションする場合に、より簡単で正確な、還元剤すり抜けモデルや蒸発モデルを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を分散板に適用した場合の、実施形態の概略構成を説明する排気通路軸方向断面図である。
【図2】従来の内燃機関の排気浄化装置の、実施形態の概略構成を説明する排気通路軸方向断面図である。
【図3】図1の分散板の一実施形態の概略構成を説明する図であり、分散板入口方向から見た図である。
【図4】図1の分散板の他の実施形態の概略構成を説明する図であり、分散板入口方向から見た図である。
【図5】本発明を分散板に適用した場合の、他の実施形態の概略構成を説明する排気通路軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 排気通路
2 排気通路管壁
3 触媒
5 還元剤供給装置
6a 分散板
6b 分散板
6c 分散板
9 円錐状拡大通路部
12 触媒入口
13 触媒保持部材
61 分散板入口部
62 平板
63 平板
64 分散板出口部
65 平板62の端縁部の辺
66 平板63の端縁部の辺
A 排気流れ方向
B 噴射軸線方向に対して分散板入口部がなす角度
D 噴射軸線方向と平板端縁部の辺との間の角度
E 噴射軸線方向と平板端縁部の辺との間の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒上流の排気通路直管部に還元剤供給装置を配置し、排気通路に対して斜めの方向から還元剤を噴射し、触媒において、還元剤供給装置から供給された還元剤と排気とを反応させ、排気浄化をするようにした内燃機関の排気浄化装置において、
前記還元剤供給装置の下流であって、前記触媒に対して上流側に、前記還元剤と排気とを混合し、還元剤を排気通路の断面全体にわたって広く分散させる分散板を備え、
前記分散板の、還元剤及び排気が流入する入口部が、排気通路軸方向断面において略直線を形成し、前記直線の、前記還元剤供給装置の噴射軸線方向に対する角度が、略直角であることを特徴とする、分散板。
【請求項2】
前記分散板が、前記排気通路軸方向に対して平行に配置された複数の平板によって構成され、前記複数の平板の、前記排気通路軸方向上流から見た端縁部が、前記排気通路軸方向に対して略垂直方向に略直線状に延び、前記直線が、前記還元剤供給装置の噴射軸線方向に対して、略直角となるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の分散板。
【請求項3】
前記分散板が、排気通路軸方向に対する垂直断面が十字状に組み合わされ、前記排気通路軸方向に対して平行に配置された、複数の平板によって構成され、前記複数の平板の、前記排気通路軸方向上流から見た端縁部の、十字状に直交する各辺が、前記還元剤供給装置の噴射軸線方向に対して、略45度となるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の分散板。
【請求項4】
前記分散板の、分散板入口部から分散板出口部までの軸方向長さが、排気通路軸方向断面における上部から下部にわたって略同一であることを特徴とする、請求項1に記載の分散板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−274852(P2008−274852A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119608(P2007−119608)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】