説明

切削加工方法及び装置並びにその方法を用いて加工した基板

【課題】各種切削加工における切削速度及び切削品質の向上を図った切削加工方法を提供する。
【解決手段】ルーター加工機等の工作機械の切削工具に超音波振動を印加して切削効率を高める切削加工方法及び装置に関する。超音波振動の印加手段としてレーザー光を用い、これを切削工具の適宜位置に照射して超音波振動を切削工具12に印加する。切削工具12として先端と外周に切削刃が設けられた軸回転切削工具を用い、レーザー光をその切削工具12の外側から、切削工具の軸方向と直交する(中心角が90度の)4つの方向から印加するレーザー光照射手段3を設ける。4つの方向から周方向に所定時間間隔で照射開始タイミングをずらして順次照射することによって、切削工具12に周方向の超音波振動が発生する。切削加工部位又はその近傍に冷却エアーを噴射する冷却エアー噴射手段5を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工作機械の切削工具又は切削刃に超音波振動を印加して切削加工の効率を高め、即ち、切削速度を高めまた被加工物の切削面の品質の向上を図るための切削加工方法及び装置、並びにその方法を用いて切削加工したプリント基板等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種工作機械の切削工具に超音波振動を印加することによって切削効率が高められることが既に公知となっている。例えば、下記非特許文献1には、旋盤加工におけるバイトの切削方向に超音波振動を印加して切削効率を向上させることが記載されている。
また下記特許文献1には、被加工物に対し切削工具による切り込み量を与えつつ、被加工物と切削工具とを相対的に移動及び軸回転することによって、被加工物に形状創成を行う切削加工方法において、被加工物の加工面に沿って、被加工物と切削工具との相対的な切削方向と交差する方向に微揺動(超音波振動)させる切削方法の記載がある。
下記特許文献2には、被加工物と切削工具とを相対的に主分力方向と背分力方向とに振動させながら被加工物を切削する方法の記載が見られる。
【0003】
一般に超音波振動を切削刃に印加して切削効率の改善を図る方法として3つのタイプがある。それを切削効率の高い順番に列挙すると、(1) 切削刃にねじれ振動等の回転振動を与えるもの、(2) 切削刃に縦振動(切削刃の軸方向振動)を与えるもの、(3) 切削刃に横振動(切削刃の軸方向と直交する方向の振動)を与えるものがある。
【0004】
更に、超音波振動を印加する手段としては、圧電素子を用いた圧電効果を利用したものや磁気歪効果を利用したものなどが挙げられる。これらの超音波振動子やアクチュエータ等を切削工具に組み付け超音波振動を切削刃に印加していた。
【特許文献1】特開2006−159331号公報
【特許文献2】特開2006−1008号公報
【非特許文献1】超音波便覧編集委員会編「超音波便覧」丸善 1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、上記従来の超音波振動印加手段とは異なるものを開発することがその課題であり、しかも、より簡易な手段によりより効率の良好なものを創案し、これを基板切削(ルーター)加工機、フライス盤、或はマシニングセンター等の工作機械における軸回転切削工具に容易に搭載できるような装置を提供し、かつその方法を提供することを課題とし、これによりルーター加工等の切削効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、各種工作機械の切削工具に超音波振動を印加して切削効率を向上させる切削加工方法において、超音波振動の印加手段としてレーザー光を用い、これを切削工具の適宜位置に照射して超音波振動を切削刃に印加することを特徴とする切削加工方法である。
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、切削工具として少なくとも外周に切削刃が設けられた軸回転切削工具を用い、レーザー光を切削工具の軸方向と交差する複数方向から周方向に所定時間間隔を置いて照射開始タイミングをずらして順次照射することによって、切削工具に周方向の超音波振動を印加することを特徴とする切削加工方法である。
【0007】
本発明の第3のものは、上記第1または第2の発明において、切削工具の切削加工部位又はその近傍に圧縮空気、噴出液体又は冷却エアー等を噴射する冷却手段を付加したことを特徴とする切削加工方法である。
本発明の第4のものは、各種工作機械の切削工具に超音波振動を印加する手段を設けて切削効率を向上させる切削加工装置において、超音波振動の印加手段としてレーザー光を用い、これを切削工具の適宜位置に照射する超音波振動印加手段を設け、超音波振動を切削刃に印加することを特徴とする切削加工装置である。
【0008】
本発明の第5のものは、上記第4の発明において、切削工具として少なくとも外周に切削刃が設けられた軸回転切削工具を用い、レーザー光を切削工具の軸方向と交差する複数方向から周方向に所定時間間隔を置いて照射開始タイミングをずらして順次照射する超音波振動印加手段を設けることによって、切削工具に周方向の超音波振動を印加することを特徴とする切削加工装置である。
本発明の第6のものは、上記第4又は第5の発明において、切削工具の切削加工部位又はその近傍に圧縮空気、噴射液体又は冷却エアー等を噴射する冷却手段を設けたことを特徴とする切削加工装置である。
【0009】
本発明の第7のものは、上記第1乃至第3の発明に係る切削加工方法を用いて、プリント基板等の各種基板を適宜形状に切削加工して製作したことを特徴とする基板である。
ここで、プリント基板等の各種基板とは、プリント基板を初め、ユニバーサル基板、コネクター変換基板、シール基板、ユーロ基板、各種生基板等々に使用される各種の素材からなる基板を含む概念である。
本発明の第8のものは、上記第7の発明において、基板の材料がセラミックス被覆アルミニウム基板であることを特徴とする基板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の方法又は第4の装置においては、切削工具の適宜位置にレーザー光を照射することによって切削刃に超音波振動を印加することができ、従来のような超音波振動子やホーン等の装置を使用することなく、従来の各種の工作機械に容易に組み付けることが可能となる。
本発明の第2の方法又は第5の装置においては、少なくとも外周に切削刃が設けられた軸回転切削工具に軸方向と交差する複数方向から周方向に所定時間間隔を置いて照射開始タイミングをずらして順次レーザー光を照射することにより、切削工具が周方向に超音波振動し、その切削速度の向上と、被切削面の品質の向上を図ることができる。
【0011】
本発明の第3の方法又は第6の装置においては、切削加工部位又はその近傍に冷却エアー等を噴射することにより、切削時の摩擦熱の上昇を抑制でき、より切削効率を高めることが出来る。
本発明の第7及び第8の発明においては、上記第1乃至第3の切削加工方法を用いて効率的に、切削面の品質の優れたプリント基板等の各種基板が提供される。
特にセラミックス被覆アルミニウム基板を加工材料として使用した際にもその効果は高く、極めて切削面の品質の優れた基板を製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面と共に本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るルーター加工機の要部説明図であって、基板にスリット溝を加工している状態を示している。
ルーター加工機は、プリント基板等の外形切削加工やスリット切削加工を行う工作機械であるが、スピンドル10にドリル状の切削工具12を固定し、この切削工具12を軸回転させて、被加工物2を、例えばセラミックス被覆アルミニウム基板やガラス繊維基板等の各種プリント基板等を適宜形状に切削加工等するものである。切削工具12には、その先端と外周に切削刃が設けられている。図中、4が加工されたスリット溝を示している。
【0013】
プリント基板等の一般的製作方法としては、金型を用いてプレス加工するのであるが、少量生産の場合や、試験的加工、より精密な加工が要求される場合等には、このルーター加工機が利用される。
ルーター加工機による切削加工においては、上記金型加工に比較すれば、その加工スピードの点では劣るものである。
そこで、本発明は、上記ルーター加工において、よりその加工速度を高め、且つ切削面の加工精度をより向上させることを目的として創案されたものである。
そして、レーザー光の照射により被照射体が超音波振動する事実を突き止め、本発明に想到したものである。
【0014】
そこで、ルーター加工機においては、ワーク台上の被加工物を平面方向の適宜方向に移動させて切削加工するに際し、或は、切削工具を移動させて加工するに際し、超音波振動印加手段としてレーザー光照射手段3を切削工具12の外側の4つの方向からその軸芯に向けて交差する方向に設けた。レーザー光照射手段としては、光ファイバーを用いている。
また、これらのレーザー光照射手段3は、切削工具の軸方向と直交する方向から、周方向において同一間隔(中心角90度間隔)に設けている。
【0015】
この4つの方向から、より詳しくは、各一方向ずつ左回り又は右回りに周方向に所定時間間隔を置いて照射開始タイミングをずらして順番にレーザー光を照射する。これにより切削工具12には、周方向に超音波振動が印加されることとなる。周方向と言うのはドリル状の切削工具12の横断面における周方向であり、周方向振動とは回転振動を意味する。
この照射開始タイミングの時間間隔は短い方がよいが、この実施形態においては、約100ミリ秒程度の間隔で順次照射開始時間をずらしている。
この周方向の超音波振動により、切削工具12は、何れの方向においても極めて良好に被加工物の切削を行い、切削速度の向上及び被切削面の品質向上を図ることができた。
更にこの実施形態では切削効率を高めるために、冷却手段として切削工具12の切削加工部位又はその近傍に冷却エアーを噴射できる冷却エアー噴射手段5をも付加している。
【0016】
以下、本発明に係る切削加工の実験結果について説明する。
(1) 実験目的…レーザー光を切削ドリルに照射することによりドリルに超音波振動を与え、その効果による切削速度の向上と切削面の品質改善効果の有無を確認する。
(2) 加工装置…カワムラ製ルーター加工機
(3) レーザー装置…SureLite(コヒーレント社製)0.3J/pulse, 10Hz
【0017】
(第1実験)
目的…ロングパルスモードのレーザーをドリルに照射し、切削改善の有無を確認する。
条件…レーザー波長:1.06μm(マイクロ・メートル)、レーザーエネルギー:0.3J/pulse(ジュール/パルス)、パルス幅:50μs(マイクロ・セカンド)、繰り返し周波数:10Hz(ヘルツ)、レーザー照射方向は切削方向と同一(第1乃至第5実験において同じ。)とする。即ち、切削刃には切削方向と同一方向の横振動を与える。
ドリル:2.0mmΦ、送り速度:100mm/min、回転数:40,000rpm。
被加工物材料:セラミックス被覆アルミニウム基板。
【0018】
結果…図2に実験結果写真を示す。
写真の上1本がレーザー無し、下1本がレーザー有り。レーザー照射の場合は、レーザーがない場合と比較して、切削状態が悪く、バリが多く発生し、基板が茶色に変色した。基板の温度が上昇している可能性がある。レーザーを照射することによりドリル自体の温度が上昇し切削効率が悪くなっているものと考えられる。
【0019】
(第2実験)
目的…ドリルの温度上昇を抑制するためにパルス幅を短くし、ドリルをエアースプレーで冷却して切削加工を行い、切削改善の有無を確認する。
条件…レーザー波長:1.06μm、レーザーエネルギー:0.3J/pulse、パルス幅:10ns(ナノ・セカンド)、繰り返し周波数:10Hz。
ドリル:2.0mmΦ、送り速度:変化させた、回転数:40,000rpm。
冷却方法:フロン混入エアースプレー(フロンの霧で冷却)。
被加工物材料:セラミックス被覆アルミニウム基板。
【0020】
結果…図3に実験結果写真を示している。
レーザー無しの場合には多くのバリが発生するが、レーザー照射及びエアースプレー噴射で切削するとバリは生じなくなった。
また、切削送り速度を徐々に増加し、切削後のバリの発生程度を確認した。400, 500, 600, 800, 1000mm/minで実験を行った。1000mm/minの切削速度でもバリは殆ど現れなかった。最終的には1700mm/minまで切削可能であった。(2000mm/minではドリルが折れた。)これにより、レーザー照射によって、切削速度の極めて大きな効率アップが図られることが認められた。
【0021】
(第3実験)
目的…ドリルの直径を1.2mmΦとし第2実験と同じ実験を行い、切削改善の有無を確認する。
条件…レーザー波長:1.06μm、レーザーエネルギー:フィルターによりエネルギーを変化させた。0.3J/pulse、0.06J/pulse、及び 0.15J/pulse。パルス幅:10ns、繰り返し周波数:10Hz。
ドリル:1.2mmΦ、送り速度:100mm/min、回転数:40,000rpm。
冷却方法:エアースプレー。
被加工物材料:セラミックス被覆アルミニウム基板。
【0022】
結果…送り速度100mm/minで切削可能(レーザーエネルギー:0.06J/pulse)。300mm/minではドリルが折れた。レーザーエネルギーを0.15J/pulseとして実験を行った。レーザーエネルギーを増加させると切削できた。
エアースプレーのみで実験を行った。切削可能であったが、ドリルの先端が構成刃先となった。他方、レーザー照射及びエアースプレー噴射で切削した場合には、ドリル先端にはアルミは無く、綺麗な状態であった。このことから、レーザー照射により切削効率が向上することに加え、構成刃先となることを防止する作用があることが判明した。
【0023】
(第4実験)
目的…被加工物材料を上記セラミックス被覆アルミニウムからガラス繊維に変更し、切削改善の有無を確認した。
条件…レーザー波長:1.06μm、レーザーエネルギー:0.3J/pulse、パルス幅:10ns、繰り返し周波数:10Hz。
ガラス繊維板切削専用ドリル:2.0mmΦ、送り速度:100mm/min、回転数:23,000rpm。
冷却方法:エアースプレー。
被加工物材料:ガラス繊維基板3枚重ね。
【0024】
結果…被加工物材料が上記実験におけるセラミックス被覆アルミニウムほど違いは見られなかった。しかし、バリの出方はレーザー無しに比べ、レーザー照射及びエアースプレー噴射の場合には少なかった。
【0025】
(第5実験)
目的…エアースプレーをエアー噴射(冷気噴射)に変更し、切削改善の有無を確認する。
条件…レーザー波長:1.06μm、レーザーエネルギー:0.3J/pulse、パルス幅:10ns、繰り返し周波数:10Hz。
ドリル:2.0mmΦ、送り速度:600mm/min、回転数:40,000rpm。
冷却方法:エアー噴射(コンプレッサーから供給されたエアーの先端に冷気が放出される装置を取り付け、そのエアーをドリルに当てる。)
被加工物材料:セラミックス被覆アルミニウム基板。
【0026】
結果…図4に実験結果写真を示す。上2本がエアー噴射のみの加工、下3本がレーザー照射及びエアー噴射での加工を示す。明らかにレーザー照射の場合でバリが出ない。
また、レーザー照射位置をドリルの先端付近(被加工物から1〜3mm上方)からドリルのチャック部分に変更すると、その効果は低下した。
【0027】
(第6実験)
目的…切削方向とレーザー照射方向が90度の場合の切削改善の有無を確認する。
条件…レーザー波長:1.06μm、レーザーエネルギー:0.3J/pulse、パルス幅:10ns、
繰り返し周波数:10Hz。
ドリル:2.0mmΦ、送り速度:600mm/min、回転数:40,000rpm。
冷却方法:エアー噴射。
被加工物材料:セラミックス被覆アルミニウム基板。
【0028】
結果…図5に実験結果写真を示す。多くのバリが発生し、レーザー照射方向が0度(切削方向と同一、上記第1乃至第5実験の場合)に比べて切削改善が見られなかった。また、ドリルに於けるレーザー照射位置をドリルの先端付近からチャック近辺に変更しても改善は見られなかった。このことより、切削方向とレーザー照射方向は一致させる必要がある。
【0029】
(実験結論)
上記の実験から、レーザー照射、或はレーザー照射とエアー噴射等が加工改善(切削速度の向上(特に第2実験)と切削面の品質改善)に有効であることが証明された。
また上記実験においては、レーザーをドリルに照射することにより、即ちドリルに横方向への振動(横振動)を与えることにより切削効率の向上が図られていることが判明した。
しかも、その横方向への超音波振動付加は、切削方向と同一方向に付加されることにより切削効率が高まることが明らかとなった。第6実験のように、横振動付加でも切削方向と90度異なる方向から照射した場合には効果はなかった。
レーザー光の照射は、ドリルの根本側(スピンドル側)でなく、より先端側に照射することにより超音波振動印加の効率が高いことが判明した(第5実験)。
更に、レーザー照射により切削効率が向上することに加え、構成刃先となることを防止する作用があることが判明した(第3実験)。
【0030】
上記実験結果に基き、発明者は、更に実験と考察を重ねた結果、図1に示す装置を創案したのである。即ち、上記実験では、切削方向と同一方向の横振動を付加することにより切削効率が向上したが、この横振動をドリル状の切削工具の軸芯と交差する複数方向から照射タイミングをずらして付加することにより切削工具に回転振動が発生すること、つまり、ドリル状の切削工具の周方向に超音波振動が発生することを突き止めたのである。その最良の実施形態として図1に示した装置を創案したのである。
従って、レーザーの照射方向は、必ずしも4方向のみに限られるのではなく、2以上の複数方向からのレーザー照射によっても切削工具に周方向の超音波振動を印加することができるものである
【0031】
図1に図示した実施形態においては、切削工具12であるドリルの外周の4つの方向から、即ち、中心角90度の4つの方向からドリルの軸芯部に向けて、光ファイバーを利用した超音波振動印加手段としてのレーザー光照射手段3を設け、ドリルにレーザー光を4方向から右又は左周方向に所定時間間隔で照射開始タイミングをずらして(本実施形態では100ミリ秒程度ずらして)順番に照射しうるように構成したのである。
これにより、ドリルには周方向への超音波振動が印加され、被加工物が何れの方向に送られたとしても極めて良好に切削加工を行うことができることとなったのである。
そして、更にその切削効率を向上させるために、本発明においては、冷却手段としてドリルの先端部の切削部位又はその近傍に冷却エアーを噴射できる冷却エアー噴射手段5を併設したものである。
【0032】
本発明においては、上記第1実験において明らかになったように、ロングパスルモードのレーザーでは、効果が発揮されなかった。しかし、その後の実験で、加工工具に適切な超音波振動を印加できるレーザーは、ショートパルスモードのレーザーであることが判明し、その他の条件も適宜変更させることにより、適切なレーザー光の条件が判明した。
即ち、その4方向から照射される1ユニットのレーザー照射条件としては、例えば、その波長が0.2〜11μm、パルス幅が1〜100ns、レーザーエネルギーが0.01〜1J/pulse程度が相応しいことが判明した。
冷却エアー等を噴射する冷却手段としては、冷却エアー以外に、圧縮空気や噴射液体であってもその効果は発揮される。
【0033】
尚、レーザー光が切削工具に照射された場合、レーザーによる切削工具のアブレーション或は熱膨張により振動或は超音波振動が発生するのであるが、その切削工具にアブレーション物質(水や油などの液体等)を付着させておくと更に振動又は超音波振動の発生効率が向上する、
従って、上記の冷却手段として、水や油などの液体を付着させた場合には、これら液体等がアブレーション物質としての役割を果たし、切削工具にこのアブレーション物質が付着した状態においてレーザー光が照射されることとなり、更に超音波振動の発生効率が向上することも明らかとなった。
このように、上記冷却手段は、切削工具の温度上昇を抑制するばかりでなく、液体等を付着させた場合には、超音波振動発生の効率をも高める効果も併せ持つことが判明した。
以上、本発明は多大な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係るルーター加工機の要部説明図であって、基板にスリット溝を加工している状態を示している。
【図2】第1実験の切削加工結果を示す写真である。
【図3】第2実験の切削加工結果を示す写真である。
【図4】第5実験の切削加工結果を示す写真である。
【図5】第6実験の切削加工結果を示す写真である。
【符号の説明】
【0035】
2 被加工物
3 レーザー光照射手段(超音波振動印加手段)
5 冷却エアー噴射手段(冷却手段)
10 スピンドル
12 切削工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種工作機械の切削工具に超音波振動を印加して切削効率を向上させる切削加工方法において、
超音波振動の印加手段としてレーザー光を用い、これを切削工具の適宜位置に照射して超音波振動を切削刃に印加することを特徴とする切削加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載した切削加工方法において、切削工具として少なくとも外周に切削刃が設けられた軸回転切削工具を用い、レーザー光を切削工具の軸方向と交差する複数方向から周方向に所定時間間隔を置いて照射開始タイミングをずらして順次照射することによって、切削工具に周方向の超音波振動を印加することを特徴とする切削加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した切削加工方法において、切削工具の切削加工部位又はその近傍に圧縮空気、噴出液体又は冷却エアー等を噴射する冷却手段を付加したことを特徴とする切削加工方法。
【請求項4】
各種工作機械の切削工具に超音波振動を印加する手段を設けて切削効率を向上させる切削加工装置において、
超音波振動の印加手段としてレーザー光を用い、これを切削工具の適宜位置に照射する超音波振動印加手段を設け、超音波振動を切削刃に印加することを特徴とする切削加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載した切削加工装置において、切削工具として少なくとも外周に切削刃が設けられた軸回転切削工具を用い、レーザー光を切削工具の軸方向と交差する複数方向から周方向に所定時間間隔を置いて照射開始タイミングをずらして順次照射する超音波振動印加手段を設けることによって、切削工具に周方向の超音波振動を印加することを特徴とする切削加工装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載した切削加工装置において、切削工具の切削加工部位又はその近傍に圧縮空気、噴射液体又は冷却エアー等を噴射する冷却手段を設けたことを特徴とする切削加工装置。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れかに記載の切削加工方法を用いて、プリント基板等の各種基板を適宜形状に切削加工して製作したことを特徴とする基板。
【請求項8】
請求項7に記載した基板において、基板の材料がセラミックス被覆アルミニウム基板であることを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−44086(P2008−44086A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223700(P2006−223700)
【出願日】平成18年8月19日(2006.8.19)
【出願人】(506282894)有限会社藤原電子工業 (1)
【出願人】(591114803)財団法人レーザー技術総合研究所 (36)
【Fターム(参考)】