説明

化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】波長が300nm帯又はそれ以下の露光光に対して溶解コントラストを高め、パターンの解像性を向上できるようにする。
【解決手段】パターン形成方法は、基板101の上に、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト材料からレジスト膜102を形成する。続いて、形成されたレジスト膜102に露光光104を選択的に照射してパターン露光を行なう。その後、パターン露光が行なわれたレジスト膜102を現像することにより、レジストパターン102aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造プロセス等に用いられる化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の大集積化及び半導体素子のダウンサイジングに伴って、リソグラフィ技術の開発の加速が望まれている。現在のところ、露光光としては、水銀ランプ、KrFエキシマレーザ又はArFエキシマレーザ等を用いる光リソグラフィによりパターン形成が行なわれている。さらに、最近では、レジスト膜と投影レンズとの間に液体を配して露光する液浸リソグラフィのArF光源への適用が試みられている。このような状況から、ArFエキシマレーザリソグラフィの延命化が重要視されており、ArFエキシマレーザ光に対応可能なレジスト材料の開発がすすめられている。
【0003】
ArFレジスト材料に対して、該レジスト材料を構成するポリマーの組成を調整又は変更して、レジストの解像性を改善しようとする研究がある(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
以下、ArF光源に適用される従来のレジスト材料を用いたパターン形成方法について図5(a)〜図5(d)を参照しながら説明する。
【0005】
まず、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0006】
ポリ(2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(50mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(40mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(10mol%))(ベースポリマー)……………………………………………………………………………………………2g
トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸(光酸発生剤)………………………………………………………………………………………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャ)…………………………………………0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
次に、図5(a)に示すように、基板1の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜2を形成する。
【0007】
次に、図5(b)に示すように、NAが0.68のArFエキシマレーザよりなる露光光4をマスク3を介してレジスト膜2に照射してパターン露光を行なう。
【0008】
次に、図5(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜2に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱した後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図5(d)に示すように、レジスト膜2の未露光部よりなり、例えば0.09μmのライン幅を有するレジストパターン2aを得る。
【非特許文献1】S. W. Yoon et al., “Influence of resin properties to resist performance at ArF lithography”, Proc. SPIE, vol.5376, p.583 (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来のレジスト材料を用いたパターン形成方法によると、得られたレジストパターン2aは、パターン形状が劣化しており、解像度すなわちコントラストが低く、従来のポリマー組成の変更等ではパターンの解像性及びパターン形状が改善されないという問題がある。
【0010】
このような形状が劣化したレジストパターンを用いてエッチングを行なうと、被エッチング膜に得られるパターンの形状も不良となってしまうため、半導体装置の製造プロセスにおける生産性及び歩留まりが低下してしまうという問題を生じる。
【0011】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、波長が300nm帯又はそれ以下の露光光に対して溶解コントラストを高め、パターンの解像性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、化学増幅型レジスト材料に酸不安定基で置換されたフマル酸を加える構成とする。
【0013】
本願発明者らは、波長が300nm帯又はそれ以下の例えばArF光源に適用可能な化学増幅型レジスト材料に対して種々の実験を重ねた結果、トランス型の分子構造を有するジカルボン酸であって且つ酸不安定基で置換されたフマル酸を化学増幅型レジスト材料に添加すると、該化学増幅型レジスト材料を構成するポリマーとフマル酸との分子間水素結合によって、レジストの溶解阻害効果が大きくなるという知見を得ている。また、酸不安定基で置換されたフマル酸を化学増幅型レジスト材料に添加すると、レジストのガラス転移温度Tgが上昇することも、溶解阻害効果が大きくなることにつながる。この溶解阻害効果の向上によって、レジストにおける溶解コントラストが良好となる。なお、本発明に係る化学増幅型レジスト材料を液浸リソグラフィに用いた場合には、フマル酸が持つ二重結合によってレジストの疎水性が高まるため、露光時のスキャン速度が向上し、また欠陥が低減するという良好な結果を得られる。
【0014】
フマル酸については、特に半導体製造工程で使用することを考慮して、純度が99.9999%〜99.99%程度の純度が好ましい。
【0015】
なお、フマル酸を置換する酸不安定基はフマル酸が持つ2つのカルボン酸のうちの両方を置換してもよく、また一方だけを置換してもよい。また、酸不安定基で置換されたフマル酸のレジスト材料への添加量は、溶解阻害効果が十分に現われる量でよく、例えばベースポリマーに対して50wt%以下が好ましい。但し、本発明はこの範囲に限定されない。また、露光光に対してフマル酸の吸収が影響を与える場合には、露光光の吸収量をも考慮する必要がある。
【0016】
本発明は上記の知見によりなされたものであり、具体的には以下の構成によって実現される。
【0017】
本発明に係る第1の化学増幅型レジスト材料は、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含むことを特徴とする。
【0018】
第1の化学増幅型レジスト材料によると、該レジスト材料は、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸を含むため、例えばポジ型レジストの場合には、露光部においては発生した酸により第1の酸不安定基が脱離して溶解が促進される一方、未露光部においては第1の酸不安定基が脱離しないので溶解速度が低下する。その結果、現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0019】
本発明に係る第2の化学増幅型レジスト材料は、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーが酸により脱離する第2の酸不安定基で置換されたポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含むことを特徴とする。
【0020】
第2の化学増幅型レジスト材料によると、例えばポジ型レジストであって、第2の酸不安定基で置換されていないアルカリ可溶性ポリマーを用いる場合と比べて、未露光部の溶解速度がより低下する。これは、アルカリ可溶性ポリマーにおける水酸基(−OH基)を第2の酸不安定基で置換することにより、−OR基(Rは第2の酸不安定基)となって、−OH基のアルカリ可溶性が減少するためである。このように、アルカリ可溶性ポリマーに第2の酸不安定基で置換されたポリマーを用いる場合には、より溶解コントラストが向上することになる。
【0021】
なお、同様の理由で、フマル酸を置換する第1の酸不安定基はフマル酸が持つ2つのカルボン酸の両方を置換する方が、その一方のみを置換する場合よりも、未露光部における溶解速度がより低減するため、より溶解コントラストが向上する。
【0022】
第1又は第2の化学増幅型レジスト材料において、第1の酸不安定基又は第2の酸不安定基には、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、エトキシエチル基又は2-メチル-2-アダマンチル基を用いることができる。なお、第1の酸不安定基と第2の酸不安定基は、同種であっても、また異種であってもよい。
【0023】
第1又は第2の化学増幅型レジスト材料において、アルカリ可溶性ポリマーには、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリノルボルネンメチルカルボン酸、ポリノルボルネンカルボン酸、ポリノルボルネンメチルヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ポリノルボルネンヘキサフルオロイソプロピルアルコール又はポリビニールフェノールを用いることができる。
【0024】
第1又は第2の化学増幅型レジスト材料において、光酸発生剤には、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又は1,3−ジフェニルジアゾジスルフォンを用いることができる。
【0025】
本発明に係る第1のパターン形成方法は、基板の上に、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト材料からレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に露光光を選択的に照射してパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜を現像することにより、レジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0026】
第1のパターン形成方法によると、レジスト膜を形成する化学増幅型レジスト材料が、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸を含むため、例えばポジ型レジストの場合には、露光部においては発生した酸により第1の酸不安定基が脱離して溶解が促進される一方、未露光部においては第1の酸不安定基が脱離しないので溶解速度が低下する。その結果、現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0027】
本発明に係る第2のパターン形成方法は、基板の上に、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト材料からレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の上に液体を配した状態で、レジスト膜に露光光を選択的に照射してパターン露光を行なう工程と、パターン露光が行なわれたレジスト膜を現像することにより、レジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とする。
【0028】
第2のパターン形成方法によると、レジスト膜の上に液体を配した状態で露光光を照射する液浸リソグラフィにおいても、現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターンを得ることができる。その上、前述したように、フマル酸が持つ二重結合によってレジストの疎水性が高まるため、露光時のスキャン速度が向上し、また欠陥が低減するという効果を得ることができる。
【0029】
第1又は第2のパターン形成方法において、アルカリ可溶性ポリマーは、酸により脱離する第2の酸不安定基で置換されていることが好ましい。
【0030】
第1又は第2のパターン形成方法において、第1又は第2の酸不安定基には、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、エトキシエチル基又は2-メチル-2-アダマンチル基を用いることができる。
【0031】
第1又は第2のパターン形成方法において、アルカリ可溶性ポリマーには、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリノルボルネンメチルカルボン酸、ポリノルボルネンカルボン酸、ポリノルボルネンメチルヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ポリノルボルネンヘキサフルオロイソプロピルアルコール又はポリビニールフェノールを用いることができる。
【0032】
第1又は第2のパターン形成方法において、光酸発生剤には、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又は1,3−ジフェニルジアゾジスルフォンを用いることができる。
【0033】
第2のパターン形成方法において、液体には水又は酸性溶液を用いることができる。
【0034】
この場合に、酸性溶液には、硫酸セシウム(CsSO)水溶液又はリン酸(HPO)水溶液を用いることができる。
【0035】
第1のパターン形成方法において、露光光には、極紫外線(EUV:Extreme Urtraviolet)又は電子線(EB:Electron Beam)を用いることができる。
【0036】
また、第1又は第2のパターン形成方法において、露光光には、ArFエキシマレーザ光、KrFエキシマレーザ光、Xe レーザ光、F レーザ光、KrArレーザ光又はAr レーザ光を用いることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法によると、波長が300nm帯又はそれ以下の露光光に対して溶解コントラストが向上し、解像性及びパターン形状に優れたレジストパターンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法について図1(a)〜図1(d)を参照しながら説明する。
【0039】
まず、一例として、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0040】
ポリ(メタクリル酸(30mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(50mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(20mol%))(ベースポリマー)…………………2g
フマル酸ジt−ブチル(溶解阻害剤)………………………………………………0.8g
トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸(光酸発生剤)………………………………………………………………………………………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャ)…………………………………………0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
次に、図1(a)に示すように、基板101の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜102を形成する。
【0041】
次に、図1(b)に示すように、NAが0.68のArFエキシマレーザよりなる露光光104をマスク103を介してレジスト膜102に照射してパターン露光を行なう。
【0042】
次に、図1(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜102に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱する。その後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図1(d)に示すように、レジスト膜102の未露光部よりなり、例えば0.09μmのライン幅を有し、解像性が高いレジストパターン102aを得る。
【0043】
このように、第1の実施形態によると、化学増幅型のレジスト材料に酸不安定基であるt−ブチル基で置換されたフマル酸であるフマル酸ジt−ブチルからなる溶解阻害剤を添加している。このため、レジスト膜102の露光部においては、露光により光酸発生剤から発生した酸によりt−ブチル基が脱離して溶解が促進される一方、未露光部においてはt−ブチル基が脱離しないので溶解速度が低下する。その結果、レジスト膜102において現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターン102aを得ることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法について図2(a)〜図2(d)を参照しながら説明する。
【0045】
まず、一例として、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0046】
ポリ(2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(50mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(40mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(10mol%))(ベースポリマー)……………………………………………………………………………………………2g
フマル酸ジt−ブチル(溶解阻害剤剤)……………………………………………0.5g
トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸(光酸発生剤)………………………………………………………………………………………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャ)…………………………………………0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
次に、図2(a)に示すように、基板201の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜202を形成する。
【0047】
次に、図2(b)に示すように、NAが0.68のArFエキシマレーザよりなる露光光204をマスク203を介してレジスト膜202に照射してパターン露光を行なう。
【0048】
次に、図2(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜202に対して、ホットプレートにより105℃の温度下で60秒間加熱する。その後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図2(d)に示すように、レジスト膜202の未露光部よりなり、例えば0.09μmのライン幅を有し、解像性が高いレジストパターン202aを得る。
【0049】
このように、第2の実施形態によると、化学増幅型のレジスト材料に第1の酸不安定基であるt−ブチル基で置換されたフマル酸であるフマル酸ジt−ブチルからなる溶解阻害剤を添加している。このため、レジスト膜202の露光部においては、露光により光酸発生剤から発生した酸によりt−ブチル基が脱離して溶解が促進される一方、未露光部においてはt−ブチル基が脱離しないので溶解速度が低下する。その結果、レジスト膜202において現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターン202aを得ることができる。
【0050】
その上、第2の実施形態においては、ベースポリマーが第2の酸不安定基である2-メチル-2-アダマンチル基で置換されているため、未露光部における溶解阻害効果がさらに高くなる。すなわち、未露光部における溶解速度がより低下するため、コントラストがさらに向上する。
【0051】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法について図3(a)〜図3(d)を参照しながら説明する。
【0052】
まず、一例として、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0053】
ポリ(メタクリル酸(30mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(50mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(20mol%))(ベースポリマー)…………………2g
フマル酸ジアダマンチルオキシメチル(溶解阻害剤)……………………………0.6g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(光酸発生剤)………………………………………………………………………………………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャ)…………………………………………0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
次に、図3(a)に示すように、基板301の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜302を形成する。
【0054】
次に、図3(b)に示すように、水よりなる液浸露光用の液体303をレジスト膜302と投影レンズ305との間に配する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光304を図示しないマスクを介してレジスト膜302に照射してパターン露光を行なう。
【0055】
次に、図3(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜302に対して、ホットプレートにより115℃の温度下で60秒間加熱する。その後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図3(d)に示すように、レジスト膜302の未露光部よりなり、例えば0.09μmのライン幅を有し、解像性が高いレジストパターン302aを得る。
【0056】
このように、第3の実施形態によると、化学増幅型のレジスト材料に酸不安定基であるアダマンチルオキシメチル基で置換されたフマル酸であるフマル酸ジアダマンチルオキシメチルからなる溶解阻害剤を添加している。このため、レジスト膜302の露光部においては、露光により光酸発生剤から発生した酸によりアダマンチルオキシメチル基が脱離して溶解が促進される一方、未露光部においてはアダマンチルオキシメチル基が脱離しないので溶解速度が低下する。その結果、レジスト膜302において現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターン302aを得ることができる。
【0057】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法について図4(a)〜図4(d)を参照しながら説明する。
【0058】
まず、一例として、以下の組成を有するポジ型の化学増幅型レジスト材料を準備する。
【0059】
ポリ(2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(50mol%)−γ-ブチロラクトンメタクリレート(40mol%)−2-ヒドロキシアダマンタンメタクリレート(10mol%))(ベースポリマー)……………………………………………………………………………………………2g
フマル酸ジアダマンチルオキシメチル(溶解阻害剤)……………………………0.4g
トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸(光酸発生剤)………………………………………………………………………………………………………0.06g
トリエタノールアミン(クエンチャ)…………………………………………0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)……………………20g
次に、図4(a)に示すように、基板401の上に前記の化学増幅型レジスト材料を塗布して、0.35μmの厚さを持つレジスト膜402を形成する。
【0060】
次に、図4(b)に示すように、水よりなる液浸露光用の液体403をレジスト膜402と投影レンズ405との間に配する。この状態で、開口数NAが0.68であるArFエキシマレーザよりなる露光光404を図示しないマスクを介してレジスト膜402に照射してパターン露光を行なう。
【0061】
次に、図4(c)に示すように、パターン露光が行なわれたレジスト膜402に対して、ホットプレートにより115℃の温度下で60秒間加熱する。その後、濃度が0.26Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド現像液により現像を行なうと、図4(d)に示すように、レジスト膜402の未露光部よりなり、例えば0.09μmのライン幅を有し、且つ解像性が高いレジストパターン402aを得る。
【0062】
このように、第4の実施形態によると、化学増幅型のレジスト材料に第1の酸不安定基であるアダマンチルオキシメチル基で置換されたフマル酸であるフマル酸ジアダマンチルオキシメチルからなる溶解阻害剤を添加している。このため、レジスト膜402の露光部においては、露光により光酸発生剤から発生した酸によりアダマンチルオキシメチル基が脱離して溶解が促進される一方、未露光部においてはアダマンチルオキシメチル基が脱離しないので溶解速度が低下する。その結果、レジスト膜402において現像時のコントラストが向上して、良好なパターン形状を有するレジストパターン402aを得ることができる。
【0063】
その上、第4の実施形態においては、ベースポリマーが第2の酸不安定基である2-メチル-2-アダマンチル基で置換されているため、未露光部における溶解阻害効果がさらに高くなる。すなわち、未露光部における溶解速度がより低下するため、コントラストがさらに向上する。
【0064】
なお、第1〜第4の各実施形態において、酸不安定基には、t−ブチル基、2-メチル-2-アダマンチル基及びアダマンチルオキシメチル基に代えて、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基又はエトキシエチル基を用いることができる。
【0065】
また、第1〜第4の各実施形態においては、ベースポリマーとして、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリノルボルネンメチルカルボン酸、ポリノルボルネンカルボン酸、ポリノルボルネンメチルヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ポリノルボルネンヘキサフルオロイソプロピルアルコール又はポリビニールフェノールを用いることができる。
【0066】
また、第1〜第4の各実施形態においては、光酸発生剤には、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸及びトリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸に代えて、1,3−ジフェニルジアゾジスルフォンを用いることができる。
【0067】
また、第3及び第4の各実施形態においては、液浸露光用の液体303、403に水を用いたが、水に代えて酸性溶液、例えば硫酸セシウム(CsSO)水溶液又はリン酸(HPO)水溶液を用いることができる。なお、酸性水溶液の濃度は50wt%以下であることが好ましい。但し、本発明はこの濃度に限られない。
【0068】
また、第1〜第4の各実施形態においては、露光光にArFエキシマレーザ光を用いたが、これに代えて、KrFエキシマレーザ光、Xe レーザ光、F レーザ光、KrArレーザ光又はAr レーザ光を用いることができる。
【0069】
なお、第1及び第2の各実施形態においては、露光光として、極紫外線(EUV)又は電子線(EB)をも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法は、波長が300nm帯又はそれ以下の露光光に対して、解像性及びパターン形状に優れたレジストパターンを得ることができ、半導体装置の微細加工技術に適した化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)〜(d)は本発明の第1の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法における各工程を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は本発明の第2の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法における各工程を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は本発明の第3の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法における各工程を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は本発明の第4の実施形態に係る化学増幅型レジスト材料及びそれを用いたパターン形成方法における各工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は従来のパターン形成方法における各工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
101 基板
102 レジスト膜
102a レジストパターン
103 マスク
104 露光光
201 基板
202 レジスト膜
202a レジストパターン
203 液体
204 露光光
301 基板
302 レジスト膜
302a レジストパターン
303 マスク
304 露光光
305 投影レンズ
401 基板
402 レジスト膜
402a レジストパターン
403 液体
404 露光光
405 投影レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、
アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、
光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含むことを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
【請求項2】
酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、
アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーが酸により脱離する第2の酸不安定基で置換されたポリマーと、
光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含むことを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
【請求項3】
前記第1の酸不安定基は、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、エトキシエチル基又は2-メチル-2-アダマンチル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学増幅型レジスト材料。
【請求項4】
前記第2の酸不安定基は、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、エトキシエチル基又は2-メチル-2-アダマンチル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化学増幅型レジスト材料。
【請求項5】
前記アルカリ可溶性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリノルボルネンメチルカルボン酸、ポリノルボルネンカルボン酸、ポリノルボルネンメチルヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ポリノルボルネンヘキサフルオロイソプロピルアルコール又はポリビニールフェノールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学増幅型レジスト材料。
【請求項6】
前記光酸発生剤は、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又は1,3−ジフェニルジアゾジスルフォンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学増幅型レジスト材料。
【請求項7】
基板の上に、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト材料からレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に露光光を選択的に照射してパターン露光を行なう工程と、
パターン露光が行なわれた前記レジスト膜を現像することにより、レジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
基板の上に、酸により脱離する第1の酸不安定基で置換されたフマル酸と、アルカリ性溶液に可溶なアルカリ可溶性ポリマーと、光の照射により酸を発生する光酸発生剤とを含む化学増幅型レジスト材料からレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の上に液体を配した状態で、前記レジスト膜に露光光を選択的に照射してパターン露光を行なう工程と、
パターン露光が行なわれた前記レジスト膜を現像することにより、レジストパターンを形成する工程とを備えていることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
前記アルカリ可溶性ポリマーは、酸により脱離する第2の酸不安定基で置換されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記第1の酸不安定基は、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、エトキシエチル基又は2-メチル-2-アダマンチル基であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記第2の酸不安定基は、t−ブチル基、t−ブチルオキシカルボニル基、メトキシメチル基、アダマンチルオキシメチル基、エトキシエチル基又は2-メチル-2-アダマンチル基であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記アルカリ可溶性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリノルボルネンメチルカルボン酸、ポリノルボルネンカルボン酸、ポリノルボルネンメチルヘキサフルオロイソプロピルアルコール、ポリノルボルネンヘキサフルオロイソプロピルアルコール又はポリビニールフェノールであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記光酸発生剤は、トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルフォン酸、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォン酸又は1,3−ジフェニルジアゾジスルフォンであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記液体は、水であることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記液体は、酸性溶液であることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記酸性溶液は、硫酸セシウム水溶液又はリン酸水溶液であることを特徴とする請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記露光光は、極紫外線(EUV)又は電子線(EB)であることを特徴とする請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記露光光は、ArFエキシマレーザ光、KrFエキシマレーザ光、Xe レーザ光、F レーザ光、KrArレーザ光又はAr レーザ光であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−89952(P2008−89952A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270431(P2006−270431)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】