説明

半導体ウエーハの電極加工方法

【課題】 バイト等の切削工具で半導体ウエーハ表面のバンプの先端を削り取って高さを揃えるにあたり、切削工具の偏摩耗が抑えられて摩耗状態をほぼ均等にすることができ、切削工具の有効利用および寿命の長期化を図る。
【解決手段】 バイト26が回転する切削ユニット20に対して、チャックテーブル17に回転しない状態で保持した半導体ウエーハWを送り込んで往復動させ、往路送り(第1の切削工程)、復路送り(第2の切削工程)のいずれの過程においても、バイト26を半導体ウエーハWに作用させる。これによって、バイト26の刃部28における左右の刃先28a,28bの摩耗の進行を均等化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハの表面に突出する複数の電極の先端を削り取って高さを揃えるための電極加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の電子回路が表面に形成された半導体チップは、各種電気・電子機器を小型化する上で今や必須のものとなっている。半導体チップは、円盤状の半導体ウエーハの表面に、ストリートと呼ばれる切断ラインで格子状の矩形領域を区画し、これら矩形領域に電子回路を形成した後、半導体ウエーハをストリートに沿って分割するといった工程で製造される。
【0003】
ところで、近年では、電気・電子機器のさらなる小型化を可能とするために、半導体チップの表面に、電極として15〜100μm程度の高さの突起状のバンプを形成し、このバンプを、実装基板に形成された電極に直接接合するようにしたフリップチップと称する半導体チップが開発され、実用に供されている。また、インターポーザーと呼ばれている基板に複数の半導体チップを併設したり積層したりして小型化を図る技術も開発され、実用化されている。
【0004】
上記いずれの技術も、デバイスの表面に形成した複数のバンプを介して基板どうしを圧着させて接合するものであり、このため、全てのバンプどうしが突き合わせられて接触するには、その高さが均一でなければならない。
【0005】
そこで、バンプの高さを揃える加工が必要であり、その加工方法としては、半導体ウエーハに対して薬品を用いたCMP加工により電極の先端を除去したり、あるいは、研削工具でその先端を研削するといった方法が一般的であった。しかしながら、前者の方法では、加工時間が長いとともに作業性に劣るという欠点があり、後者の方法では、バンプが金等の比較的粘性の高い金属の場合には研削性に劣ることからバリが発生しやすく、そのバリが隣接するバンプに接触して短絡するといった欠点があった。
【0006】
また、バンプを形成する方法として、金等の溶融金属粒を半導体ウエーハの表面に形成した電極に付着させ、電極となる粒状部分から突出するネック部分を破断してバンプを得るスタッドバンプ法がある。ところが、これによって形成されたバンプは、上記のようにネックを破断した際に、針状あるいは糸状の痕跡が先端に残るので研磨がしにくく、このため、加熱した板をバンプの先端に押し当てて高さを揃えることが行われている(特許文献1参照)。
【0007】
ところが、このようにしてバンプの高さを揃えても、隣接するバンプどうしが短絡する不具合は発生した。そこで本出願人は、半導体ウエーハの表面から突出するバンプの先端をバイト等の切削工具で削り取って高さを揃える加工装置を提案した(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−53097号公報
【特許文献2】特開2004−319697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2に記載されるように、バイトによって半導体ウエーハ表面のバンプを除去する方法では、短絡を生じさせることなく容易にその高さを揃えることができるといった利点がある。この方法では、バイトの刃先を、半導体ウエーハの外周縁から内周側に向けて表面を撫でるようにして相対的に移動させてバンプの先端を切削し、この一方向のみの切削で加工を終了させている。このため、バイトの刃先のバンプに当たる片面のみが摩耗することになり、その刃先が使用不能なほど摩耗した場合には、他の片面が使用できるにもかかわらずバイトを破棄していた。したがって、バイトを効率よく使用しているとは言えず不経済であり、この点が課題となっていた。
【0010】
よって本発明は、バイト等の切削工具で半導体ウエーハ表面のバンプの先端を削り取って高さを揃えるにあたり、切削工具の偏摩耗が抑えられて摩耗状態をほぼ均等にすることができ、その結果、切削工具の有効利用および寿命の長期化が図られる半導体ウエーハの電極加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、切削工具を備えた切削手段と、円盤状の半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、このチャックテーブルを、切削手段によって半導体ウエーハを加工する加工位置と、チャックテーブルに対して半導体ウエーハを着脱させる着脱位置とに位置付けるチャックテーブル移動手段と、切削手段の切削工具を、加工位置に位置付けられたチャックテーブルに対して接近・離間させる加工送り手段とを備えた電極加工装置を用いて、チャックテーブルに保持させた半導体ウエーハの表面に突出する複数の電極の先端を切削工具で削り取って高さを揃える半導体ウエーハの電極加工方法であって、着脱位置で、チャックテーブルに半導体ウエーハを保持させる半導体ウエーハ保持工程と、加工位置で、切削工具と半導体ウエーハとを相対的に往路送りさせる間に、切削工具により電極の先端を切削する第1の切削工程と、この第1の切削工程の後に、切削工具と半導体ウエーハとを相対的に復路送りさせて、切削工具により電極の先端を切削する第2の切削工程とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、第1および第2の切削工程を行うことにより、切削工具は半導体ウエーハに対して相対的に往復動しながら電極を切削する。このため、従来では往路送りのみであったために片面しか摩耗しなかった切削工具は、復路送りの切削工程を加えられることにより他の片面も切削に作用するので、ほぼ均等に摩耗することになる。また、仕上げ加工を復路送りで行うことにより、切削工具を切削開始位置に戻してから仕上げを行う手間が省かれ、加工時間の短縮ならびに生産効率の向上が図られる。
【0013】
切削工具と半導体ウエーハとを相対的に往復動させるには、チャックテーブル移動手段によって、半導体ウエーハを保持するチャックテーブルを上記加工位置において往復動させればよい。すなわち、切削工具は移動させず、半導体ウエーハを切削工具に対して往復動させて上記第1および第2の切削工程を行う。
【0014】
本発明の切削手段は、切削工具が回転する形式と回転しない形式とが挙げられ、この違いによって、往復動操作が異なってくる。切削工具が回転する場合、切削手段は、切削工具を回転させる回転駆動部を有する。そして、切削方法としては、回転する切削工具に対し、チャックテーブルに保持した半導体ウエーハを非回転の状態で対向させ、第1の切削工程として、半導体ウエーハの外周縁の一端から他端に至る直径にわたって切削工具を作用させ、第2の切削工程として、半導体ウエーハの他端から一端に至る直径にわたって切削工具を作用させる。これによって、半導体ウエーハの表面全面に対して切削工具を作用させることができる。
【0015】
一方、切削工具が回転しない場合、切削手段は、切削工具を固定状態で支持している。そして、切削方法としては、回転しない切削工具に対し、チャックテーブルに保持した半導体ウエーハを回転させた状態で対向させ、第1の切削工程として、半導体ウエーハの外周縁から回転中心に至る半径にわたって切削工具を作用させ、第2の切削工程として、半導体ウエーハの回転中心から外周縁に至る半径にわたって切削工具を作用させる。これによって、半導体ウエーハの表面全面に対して切削工具を作用させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体ウエーハ表面のバンプの先端を削り取って高さを揃えるにあたり、半導体ウエーハに対して切削工具を相対的に往復動させ、往路送り、復路送りのいずれの過程においても、切削工具を半導体ウエーハに作用させることにより、切削工具の偏摩耗が抑えられて摩耗状態をほぼ均等にすることができる。その結果、切削工具の有効利用および寿命の長期化が図られるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]装置の構成
図1は、本発明の電極加工方法を好適に実施し得る電極加工装置Aの全体を示しており、図2は、該装置Aで加工する円盤状の半導体ウエーハWを示している。
【0018】
半導体ウエーハWは、図2(a)に示すように、表面に複数の半導体チップ1が格子状に形成されたものである。各半導体チップ1には、図2(b)に示すように、複数のバンプ(電極)2が形成されている。バンプ2は半導体チップ1に形成された電子回路の電極に接合されており、かつ、半導体ウエーハWの表面から突出している。これらバンプ2は、例えば周知のスタッドバンプ形成法等によって形成されており、高さは不揃いの場合が多い。電極加工装置Aは、1枚の半導体ウエーハWの表面から突出する全てのバンプ2の先端を削り取って高さを揃える加工を半導体ウエーハWに対して施すものである。
【0019】
その電極加工装置Aは、図1に示すように、各種機構が搭載された基台10を備えている。この基台10は、横長の状態に設置されて基台10の主体をなす直方体状のテーブル11と、このテーブル11の長手方向一端部(図1の奥側の端部)から、テーブル11の幅方向かつ鉛直方向上方に延びる壁部12とを有している。図1では、基台10の長手方向、幅方向および鉛直方向を、それぞれY方向、X方向およびZ方向で示している。
【0020】
基台10のテーブル11上は、長手方向のほぼ中間部分から壁部12側が加工エリア11Aとされ、この反対側が、加工エリア11Aに加工前の半導体ウエーハWを供給し、かつ、加工後の半導体ウエーハWを回収する供給・回収エリア11Bとされている。
以下、電極加工装置Aが備える各種機構を、加工エリア11Aに設けられるものと供給・回収エリア11Bに設けられものとに分けて説明する。
【0021】
(a)加工エリア11Aの機構
図1に示すように、加工エリア11Aには矩形状の凹所13が形成されており、この凹所13の底面には、矩形状のステージ(チャックテーブル移動手段)14が、Y方向に移動自在に設けられている。このテーブル11は、ステージ14内に配されたY方向に延びるガイドレールに摺動自在に取り付けられ、適宜な駆動機構(いずれも図示略)によって同方向を往復動させられる。
【0022】
ステージ14の移動方向両端部には、蛇腹15,16の一端が、それぞれ取り付けられており、これら蛇腹15,16の他端は、壁部12の内面と、壁部12に対向する凹所13の内壁面に、それぞれ取り付けられている。これら、蛇腹15,16は、ステージ14を上記ガイドレールに連結させるために凹所13の底面に形成された図示せぬスリットを覆って、ステージ14内に切削屑等が落下することを防ぐもので、ステージ14の移動に伴って伸縮し、その移動を妨げない。
【0023】
ステージ14上には、Z方向を回転中心とし、上面が水平とされた円盤状のチャックテーブル17が回転自在に設けられている。半導体ウエーハWは、バンプ2が形成された表面を上に向けて、このチャックテーブル17上に同心的、かつ水平に載置される。チャックテーブル17は、ステージ14内に設けられた図示せぬ回転駆動機構によって、一方向または両方向に回転させられる。なお、本実施形態の後述する切削ユニット20は、切削工具であるバイト26を回転させるタイプであるから、半導体ウエーハWを保持するチャックテーブル17は、あえて回転自在とせずに固定式としてもよい。
【0024】
チャックテーブル17のチャック方式は、この場合、周知のバキュームチャックである。すなわち、この場合のチャックテーブル17は、図3(a)に示すように、表面に複数の溝17aが同心的に、かつ等間隔をおいて形成されており、チャックテーブル17内には、図3(b)に示すように、各溝17aを連通し、かつ、裏面側に開口する空気吸引通路17bが形成されている。この空気吸引通路17bの裏面側への開口には、図示せぬバキューム装置の空気吸引口が接続され、バキューム装置を運転すると、半導体ウエーハWがチャックテーブル17上に吸着・保持されるようになっている。
【0025】
チャックテーブル17は、壁部12側に移動すると加工位置に位置付けられ、その加工位置の上方には、切削ユニット(切削手段)20が配されている。この切削ユニット20は、基台10の壁部12に、送り機構(加工送り手段)30を介してZ方向に昇降自在に支持されている。送り機構30は、鉛直面とされた壁部12の内面に固定された互いに平行でZ方向に延びる一対のガイドレール31と、これらガイドレール31に摺動自在に取り付けられたスライダ32と、このスライダ32をガイドレール31に沿って往復動させるスライダ駆動機構33とを備えている。
【0026】
スライダ駆動機構33は、スライダ32と壁部12との間の空間に、軸方向をZ方向と平行にして配され、上端部および下端部が、それぞれ壁部12に設けられた軸受34,35に回転自在に取り付けられた螺子ロッド36と、この螺子ロッド36を回転駆動するパルスモータ37とを備えている。螺子ロッド36は、スライダ32の背面に突出形成された図示せぬブラケットに螺合して貫通している。これにより、スライダ32は、パルスモータ37が正転して螺子ロッド36が一方向に回転した場合には下方(送り方向)に移動し、パルスモータ37が逆転して螺子ロッド36が逆方向に回転すると上方(退避方向)に移動する。
【0027】
上記切削ユニット20は、スライダ32のテーブル11側に面する前面に固定されたブロック21と、軸方向がZ方向に沿う状態にブロック21に通され、かつ、このブロック21に固定された円筒状のハウジング22と、このハウジング22内に同心的、かつ回転自在に支持された回転軸(回転駆動部)23と、この回転軸23を回転駆動するサーボモータ24と、ハウジング22から下方に突出する回転軸23の下端に同心的に固定された円盤状のホイールマウント25と、このホイールマウント25に着脱可能に取り付けられたバイト(切削工具)26とを備えている。この場合、回転軸23およびホイールマウント25は、サーボモータ24によって図1の矢印(ホイールマウント25の上面に記載)方向に回転させられる。
【0028】
バイト26は、図4に示すように、シャンク27の先端にダイヤモンド等からなる刃部28が固着されたものである。刃部28は、図4(b)に示すように、左右対称の形状であって、円弧状に形成された刃先で被加工物を切削する。バイト26は、刃部28を下に配し、かつ、刃部28の切削方向(図4(a)の矢印方向)をホイールマウント25の回転方向に向けた状態で、シャンク27がホイールマウント25に形成された取付孔25aに下から挿入されている。そして、その挿入状態が、ホイールマウント25の外周面から取付孔25aに向けてねじ込まれるボルト29によって固定されている。これによってバイト26はホイールマウント25の外周部から下に突出する状態に固定されている。
【0029】
図5に示すように、ホイールマウント25の外径は、半導体ウエーハWの直径の1.5倍程度とされるが、寸法はこれに限定されるものではない。しかしながら、ホイールマウント25への取付位置に基づくバイト26の回転軌跡は、半導体ウエーハWの表面全面を加工可能な大きさに設定される。また、チャックテーブル17と切削ユニット20とは、チャックテーブル17上に同心的に保持される半導体ウエーハWの回転中心と、ホイールマウント25の回転中心を結ぶ線が、Y方向に沿った状態となるように位置付けられている。
【0030】
(b)供給・回収エリア11Bの機構
図1に示すように、基台10のテーブル11上に設定された上記供給・回収エリア11Bには、上記凹所13よりも狭く、かつ深い矩形状の凹所18が形成されており、この凹所18の底部には、昇降自在とされた2節リンク式の水平旋回アーム60aの先端にフォーク60bが装着された移送機構60が設置されている。
【0031】
そして、凹所18の周囲のテーブル11上には、上から見た状態で、反時計回りに、カセット61、位置合わせ台62、1節の水平旋回アーム63aの先端に吸着板63bが取り付けられた供給アーム63、供給アーム63と同じ構造で、水平旋回アーム64aおよび吸着板64bを有する回収アーム64、スピンナ式の洗浄装置65、カセット66が、それぞれ配置されている。
【0032】
カセット61、位置合わせ台62および供給アーム63は、半導体ウエーハWをチャックテーブル17に供給する手段であり、回収アーム64、洗浄装置65およびカセット66は、加工後の半導体ウエーハWをチャックテーブル17から回収する手段である。2つのカセット61,66は同一の構造であるが、ここでは用途別に、供給カセット61、回収カセット66と称する。これらカセット61,66は、複数の半導体ウエーハWを収容して持ち運びするためのもので、テーブル11の所定位置にセットされる。
【0033】
供給カセット61には、当該電極加工装置Aでバンプ2を加工すべき複数の半導体ウエーハWが、積層された状態で収容される。移送機構60は、アーム60aの昇降・旋回と、フォーク60bの把持動作によって、供給カセット61内から1枚の半導体ウエーハWを取り出し、さらにその半導体ウエーハWを、バンプ2が形成されている表面を上に向けた状態で、位置合わせ台62上に載置する機能を有する。
【0034】
位置合わせ台62上に載置された半導体ウエーハWは、一定の位置に決められた状態で載置される。供給アーム63は、位置合わせ台62上に載置された半導体ウエーハWを吸着板63bに吸着し、アーム63aを旋回させて、チャックテーブル17上に半導体ウエーハWを配し、この後、吸着動作を停止することにより、チャックテーブル17上に半導体ウエーハWを載置する機能を有する。位置合わせ台62で位置決めされた半導体ウエーハWを、供給・回収位置のチャックテーブル17上に載置することにより、半導体ウエーハWとチャックテーブル17とは同心状となる。
【0035】
回収アーム64は、上記切削ユニット20によってバンプ2が加工されたチャックテーブル17上の半導体ウエーハWを吸着板64bに吸着し、アーム64aを旋回させて、半導体ウエーハWを洗浄装置65内に移送する機能を有する。洗浄装置65は、半導体ウエーハWを水洗した後、半導体ウエーハWを回転させて水分を振り飛ばし除去する機能を有する。そして、洗浄装置65によって洗浄された半導体ウエーハWは、移送機構60によって回収カセット66内に移送、収容される。
【0036】
なお、供給アーム63と回収アーム64の間には、チャックテーブル17に高圧エアーを噴射してチャックテーブル17を洗浄するチャックテーブル洗浄ノズル67が配されている。上記のように、供給アーム63によってチャックテーブル17上に半導体ウエーハWを載置し、また、回収アーム64によってチャックテーブル17上の半導体ウエーハWを回収する際、すなわちチャックテーブル17に対して半導体ウエーハWを着脱させる際には、ステージ14を供給・回収エリア11B側に移動させて供給・回収位置で停止させる。その供給・回収位置は、各アーム63,64の吸着板63b,64bに吸着された半導体ウエーハWの中心と、チャックテーブル17の回転中心と結ぶ線が、Z方向に沿う位置である。
【0037】
切削ユニット20による半導体ウエーハWの加工位置は、供給・回収位置よりも壁部12側に所定距離移動した範囲とされ、チャックテーブル17上の半導体ウエーハWは、ステージ14の移動によって、これら加工位置と供給・回収位置との間を行き来させられる。チャックテーブル洗浄ノズル67によるチャックテーブル17の洗浄は、供給・回収位置において行われる。
【0038】
[2]装置の動作
続いて、以上の構成からなる上記電極加工装置Aの使用方法ならびに動作を、以下に説明する。ここで説明する動作は、本発明の加工方法の具体例となる。
オペレータは、バンプ2を加工すべき複数の半導体ウエーハWを収容した供給カセット61と、空の回収カセット66を、供給・回収エリア11Bの所定位置にそれぞれセットして、加工の準備を行う。
【0039】
続いて、移送機構60によって、供給カセット61内から1枚の半導体ウエーハWが取り出され、さらにその半導体ウエーハWは、移送機構60によって裏面を上に向けた状態で位置合わせ台62上に載置される。
【0040】
次に、位置合わせ台62に載置された半導体ウエーハWは、供給アーム63により、予め供給・回収位置に停止しているチャックテーブル17上に、表面を上に向けて同心状に載置される。そして、半導体ウエーハWは、バキューム装置によってチャックテーブル17上に吸着、保持される(半導体ウエーハ保持工程)。
【0041】
次に、切削ユニット20の上下方向の位置を、バイト26がバンプ2を所定の高さに切削し得る位置になるよう送り機構30によって調製し、サーボモータ24によってホイールマウント25を回転させる。この状態から、ステージ14を切削ユニット20側に移動させて、固定させたままの状態のチャックテーブル17上に保持した半導体ウエーハWを、所定速度で切削ユニット20の下方である加工位置に送り込んでいく(往路送り:第1の切削工程)。
【0042】
図6(a)は第1の切削工程を模式的に示しており、この第1の工程でのバイト26の刃部28の刃先は、図6(b)に示すように、送られてくる半導体ウエーハWへの対向側である片面28a側(供給・回収位置側)が、バンプ2に作用して摩耗する傾向にある。
【0043】
第1の切削工程によって半導体ウエーハWの表面のバンプ2の先端が、バイト26の刃部28によって削り取られていく。図5に示すように、半導体ウエーハWがホイールマウント25で覆われるまで、すなわち、半導体ウエーハWの外周縁の、壁部12側の一端から供給・回収位置側の他端に至る直径にわたって、バイト26の刃部28が作用し、半導体ウエーハWの表面全面に対する切削加工が終わったら、第1の切削工程を終える。
【0044】
続いて、切削ユニット20を送り機構30によって僅かに下降させて、バイト26の位置を仕上げ加工の高さに調整する。そして、切削ユニット20の運転を継続したまま、今度はステージ14を供給・回収位置の方向に戻していく(復路送り:第2の切削工程)。
【0045】
図7(a)は第2の切削工程を模式的に示しており、この第2の工程でのバイト26の刃部28の刃先は、図7(b)に示すように、戻ってくる半導体ウエーハWへの対向側である片面28b側(壁部12側)が、バンプ2に作用して摩耗する傾向にある。
【0046】
半導体ウエーハWの外周縁の、供給・回収位置側の他端から壁部12側の一端に至る直径にわたって、バイト26の刃部28が作用し、半導体ウエーハWの表面全面に対する仕上げ加工が終わったら、第2の切削工程を終える。
【0047】
本実施形態では、回転するバイト26に対して、チャックテーブル17が固定されていて回転しない半導体ウエーハWを、Y方向に往復動させて表面全面を加工するものである。バイト26の切削模様であるソーマークは、図5の右側に示す半導体ウエーハWのようになる。
【0048】
以上の第1および第2の切削工程を経ることによって、半導体ウエーハWの表面のバンプ2はバイト26の刃部28によって削り取られ、全てのバンプ2の高さが均一に揃えられる。ここで加工は終了し、切削ユニット20を上昇させてホイールマウント25の回転を停止させる。
【0049】
なお、上記切削加工における好適な運転条件の例を挙げると、第1の切削工程におけるバイト26の削り代(バンプ2の先端から切り込む深さ)は8μm、第2の切削工程での削り代は2μmである。また、いずれの切削工程でのサーボモータ24によるバイト26の回転速度は2000RPM程度、ステージ14の移動による半導体ウエーハWの送り速度は0.5〜0.7mm/秒である。
【0050】
続いて、バンプ2の高さが揃えられた加工後の半導体ウエーハWを回収する動作を説明すると、まず、ステージ14を供給・回収位置まで移動させるとともに、バキューム装置の動作を停止させ、チャックテーブル17上での半導体ウエーハWの保持状態を解除する。次に、その半導体ウエーハWは、回収アーム64によって洗浄装置65内に移送される。ここで半導体ウエーハWは水洗され、その後、回転させられて水分が除去される。
【0051】
次いで、半導体ウエーハWは、移送機構60によって回収カセット66内に移送、収容される。また、回収アーム64によってチャックテーブル17から半導体ウエーハWが取り去られた後は、チャックテーブル洗浄ノズル67から、供給・回収位置で停止しているステージ14上のチャックテーブル17に向けて高圧エアーが噴射され、チャックテーブル17が洗浄される。
【0052】
以上が1枚の半導体ウエーハWに対してバンプ2の先端を切削加工し、この後、洗浄して回収するサイクルである。このサイクルを繰り返して、供給カセット61内の半導体ウエーハWが全て加工処理され、回収カセット66内に収容されると、オペレータは回収カセット66を回収して、加工後の複数の半導体ウエーハWを次の製品化工程に運搬する。そして、バンプ2を加工すべき新たな複数の半導体ウエーハWを収容した供給カセット61と、空の回収カセット66を、供給・回収エリア11Bの所定位置にそれぞれセットし、引き続き上記サイクルで切削加工を行う。なお、回収カセット66としては、空になった供給カセット61を流用してもよい。
【0053】
なお、上記のように半導体ウエーハWのバンプ2を切削加工するに先立ち、バイト26の刃先とチャックテーブル17の上面との間隔を均一にするために、チャックテーブル17の上面を、切削ユニット20自身で切削するセルフカットを行う場合がある。このセルフカットの場合にも、上記と同様に、チャックテーブル17の直径にわたってバイト26を往復動させて、その表面をバイト26で切削すればよい。
【0054】
[3]効果
本実施形態の電極加工装置Aを用いたバンプ2の加工方法によれば、切削ユニット20のバイト26に対して半導体ウエーハWを往復動させ、その過程において、バンプ2の先端が削り取られて高さが揃えられる。したがって、従来では往路送りのみであったために片面(本実施形態では図6(b)の28aで示す)しか摩耗しなかったバイト26の刃先は、復路送りの切削工程を加えられることにより他の片面(28b)も切削に作用するので、ほぼ均等に摩耗することになる。その結果、バイト26の有効利用および寿命の長期化が図られる。
【0055】
また、仕上げ加工を復路送りで行うことにより、バイト26を切削開始位置に戻してから仕上げを行う手間が省かれ、加工時間の短縮ならびに生産効率の向上が図られる。
【0056】
[4]切削ユニットの別形態
図8は、切削ユニットの別形態を示している。この場合の切削ユニット70は、上記送り機構30のスライダ32の前面に固定されたブロック71と、このブロック71に着脱自在に固定されるバイト26とを備えている。バイト26は、ブロック71の反スライダ側の先端部に形成された取付孔71aに、上記実施形態と同様に挿入されてボルト29によって固定されている。
【0057】
切削ユニット70を用いる場合には、チャックテーブル17を回転させながらステージ14を切削ユニット20に向けて移動させ、チャックテーブル17とともに回転する半導体ウエーハWを加工位置に送り込み、固定状態のバイト26によってバンプ2の先端を切削加工する(往路送り:第1の切削工程)。第1の切削工程では、図9に示すように、半導体ウエーハWの外周縁から回転中心に至る半径にわたって、バイト26をバンプ2に作用させる。
【0058】
次に、バイト26を仕上げ加工の高さに調製した後、半導体ウエーハWの回転中心から外周縁に至る半径にわたって、バイト26を作用させ、バンプ2を切削する(復路送り:第2の切削工程)。
【0059】
以上の第1および第2の切削工程を経ることによって、半導体ウエーハWの表面のバンプ2はバイト26の刃部28によって削り取られ、全てのバンプ2の高さが均一に揃えられる。
【0060】
この実施形態では、固定状態のバイト26に対して、チャックテーブル17によって回転させられる半導体ウエーハWを、Y方向に往復動させて表面全面を加工するものである。この場合のバイト26の切削模様であるソーマークは、図9の右側に示す半導体ウエーハWのようになる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明方法を好適に実施し得る電極加工装置の全体斜視図である。
【図2】(a)は図1に示した電極加工装置でバンプが加工される半導体ウエーハの全体斜視図、(b)は半導体ウエーハに形成された半導体チップの平面図である。
【図3】図1に示した電極加工装置が具備するチャックテーブルの(a)斜視図、(b)一部断面図である。
【図4】図1に示した電極加工装置が具備する切削ユニットのバイトの(a)側面図、(b)正面図である。
【図5】切削ユニットのホイールマウントとチャックテーブルに保持される半導体ウエーハとの位置関係、および半導体ウエーハのソーマークを示す平面図である。
【図6】(a)は第1の切削工程を模式的に示す図、(b)は同工程におけるバイトの刃先の摩耗状態を示す図である。
【図7】(a)は第2の切削工程を模式的に示す図、(b)は同工程におけるバイトの刃先の摩耗状態を示す図である。
【図8】切削ユニットの別形態を示す斜視図である。
【図9】図8に示した切削ユニットとチャックテーブルに保持される半導体ウエーハとの位置関係、および半導体ウエーハのソーマークを示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1…半導体チップ
2…バンプ(電極)
14…ステージ(チャックテーブル移動手段)
17…チャックテーブル
20,70…切削ユニット(切削手段)
23…回転軸(回転駆動部)
26…バイト(切削工具)
30…送り機構(加工送り手段)
A…電極加工装置
W…半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具を備えた切削手段と、
円盤状の半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、
このチャックテーブルを、前記切削手段によって前記半導体ウエーハを加工する加工位置と、チャックテーブルに対して半導体ウエーハを着脱させる着脱位置とに位置付けるチャックテーブル移動手段と、
前記切削手段の前記切削工具を、前記加工位置に位置付けられた前記チャックテーブルに対して接近・離間させる加工送り手段とを備えた電極加工装置を用いて、
前記チャックテーブルに保持させた前記半導体ウエーハの表面に突出する複数の電極の先端を前記切削工具で削り取って高さを揃える半導体ウエーハの電極加工方法であって、
前記着脱位置で、前記チャックテーブルに前記半導体ウエーハを保持させる半導体ウエーハ保持工程と、
前記加工位置で、前記切削工具と前記半導体ウエーハとを相対的に往路送りさせる間に、切削工具により前記電極の先端を切削する第1の切削工程と、
この第1の切削工程の後に、前記切削工具と半導体ウエーハとを相対的に復路送りさせて、切削工具により前記電極の先端を切削する第2の切削工程とを備えることを特徴とする半導体ウエーハの電極加工方法。
【請求項2】
前記第1の切削工程および前記第2の切削工程における前記切削工具と前記半導体ウエーハとの相対的な往復送りを、前記チャックテーブル移動手段によって行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエーハの電極加工方法。
【請求項3】
前記切削手段は、前記切削工具を回転させる回転駆動部を有し、この回転駆動部によって回転させられる切削工具に対し、前記チャックテーブルに保持した前記半導体ウエーハを非回転の状態で対向させ、
前記第1の切削工程として、半導体ウエーハの外周縁の一端から他端に至る直径にわたって前記切削工具を作用させ、
前記第2の切削工程として、半導体ウエーハの前記他端から前記一端に至る直径にわたって前記切削工具を作用させることを特徴とする請求項2に記載の半導体ウエーハの電極加工方法。
【請求項4】
前記切削手段は、前記切削工具を固定状態で支持し、この切削工具に対し、前記チャックテーブルに保持した前記半導体ウエーハを回転させた状態で対向させ、
前記第1の切削工程として、半導体ウエーハの外周縁から回転中心に至る半径にわたって前記切削工具を作用させ、
前記第2の切削工程として、前記回転中心から前記外周縁に至る半径にわたって前記切削工具を作用させることを特徴とする請求項2に記載の半導体ウエーハの電極加工方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−245493(P2006−245493A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62687(P2005−62687)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】