半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置
【課題】半導体素子を基板に接合する際に、必要な低酸素濃度の環境を効率よく形成して、好適に接合を行うことを可能にする半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置を提供する。
【解決手段】半導体素子1を保持する保持部3と、この保持部3の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次保持部3の内側に傾斜する傾斜面4aを有するフード4と、このフード4の保持部3の内側を向く傾斜面4aに向けて不活性ガス5を吹き出す吹き出し孔6とを備えて半導体保持装置Bを形成する。
【解決手段】半導体素子1を保持する保持部3と、この保持部3の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次保持部3の内側に傾斜する傾斜面4aを有するフード4と、このフード4の保持部3の内側を向く傾斜面4aに向けて不活性ガス5を吹き出す吹き出し孔6とを備えて半導体保持装置Bを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を基板に接合する際に用いる半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置に関し、特に接合時に必要な低酸素濃度の環境を効率よく供給できる構造を有する半導体保持装置及び半導体接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体接合装置には、局所的な不活性ガスの流れを制御しながら半導体を基板に接合するように構成したものが多用されている。
【0003】
すなわち、半導体の製造工程では、酸化拡散洗浄などの製造プロセスを終了したウェハが個片に分割され、半導体接合工程では、半導体接合装置を用いてこれら個々に分割した半導体素子(半導体の個片、半導体チップ)をガラエポやセラミックスなどの基板に搭載固定(実装)する。このとき、基板は、多数取りが可能なマトリックス状に構成され、予め、半導体素子を搭載する部位に接着剤を塗布したり、接続配線上に半田付けなどが施されている。
【0004】
そして、半導体素子は、半導体接合装置の接合ヘッド(半導体保持装置、コレット)に吸着保持されて接合ヘッドとともに基板の所定位置に搬送される。このように半導体素子を接合ヘッドとともに搬送した後に、接合ヘッドが下降して基板に接するとともに加熱処理が施される。これにより、半田が溶け、半導体素子が基板の所定位置に接合される。また、半導体素子の吸着状態を解除するとともに接合ヘッドが上昇して初期位置に戻り、他の半導体素子を同様に基板上に接合してゆく。
【0005】
一方、半導体接合装置で半導体素子を基板の所定位置に接合する際には、半導体素子の配線と基板の配線を接合する半田の酸化を防止するため、低酸素濃度の環境で接合を行うようにしている。
【0006】
そして、従来の半導体接合装置では、コレット内に設けた通気孔(吹き出し孔)から不活性ガスを吹き出すように構成され、吸着保持した半導体素子(半導体個片)に向かって不活性ガスを吹き付けながら接合を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−119866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の半導体接合装置においては、半導体素子の接合部に不活性ガスを吹き付けることができず、接合部に低酸素濃度の環境を作り出せないおそれがあった。すなわち、保持した半導体素子の側面に対し、不活性ガスを斜方に吹き付けるように構成されているため、不活性ガスの流れが妨げられて接合部に低酸素濃度の環境を作り出せないおそれがあった。
【0009】
また、半導体素子が大型化するほどに半導体素子の接合面に不活性ガスの流れが形成されなくなってしまう。このため、大型の半導体素子に柔軟に対応できないという問題があった。
【0010】
さらに、加熱構造と不活性ガスの吹き出し構造が同一のコレットに内蔵されているため、半導体素子の大型化や薄型化に対応したコレットをそれぞれ準備しておく必要があるという問題もあった。
【0011】
また、半導体素子を保持するための吸気孔と、不活性ガスを吹き出す通気孔を吸着保持面に設けて構成されているため、加熱を施して接合する際に、直接コレットに接している部位と、吸気孔、通気孔の直下の部位に温度差が生じ、加熱効率が悪くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、半導体素子を基板に接合する際に、必要な低酸素濃度の環境を効率よく形成して、好適に接合を行うことを可能にする半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明の半導体保持装置は、半導体素子を保持する保持部と、該保持部の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次前記保持部の内側に傾斜する傾斜面を有するフードと、該フードの前記保持部の内側を向く前記傾斜面に向けて不活性ガスを吹き出す吹き出し孔とを備えて形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の半導体保持装置においては、前記保持部が、半導体素子を吸着するフラット部と、該フラット部を取り囲むように設けられるとともに前記フラット部に対し凹設された掘り込み部とを備え、前記吹き出し孔が前記掘り込み部に開口して備えられていることが望ましい。
【0016】
さらに、本発明の半導体保持装置において、前記フードは、前記保持部で半導体素子を吸着保持した状態で、先端が半導体素子の実装面よりも上方に位置するように形成されていることがより望ましい。
【0017】
また、本発明の半導体保持装置においては、前記フードが、窒化アルミニウム、金属あるいは樹脂で形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明の半導体接合装置は、上記のいずれかの半導体保持装置と、基板を保持する基板保持部と、半導体素子を加熱して前記基板に接合するためのヒータと、前記吹き出し孔に接続された不活性ガス源と、接合時に前記吹き出し孔から不活性ガスを噴出するように前記不活性ガス源を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置においては、従来のように半導体素子の側面に吹き出し孔を設けず、保持部の内側を向くフードの傾斜面に向けて不活性ガスを吹き出すように吹き出し孔を設けることにより、吹き出し孔から吹き出した不活性ガスをフードで案内して半導体素子の接合部に供給することが可能になる。
【0020】
これにより、半導体素子によって不活性ガスの流れが阻害されることを防止でき、半導体素子の接合部に低酸素濃度の環境を確実に作り出すことが可能になる。
【0021】
また、半導体素子を保持する保持部の周囲にフードが設けられているため、大型の半導体素子に柔軟に対応できるとともに、半導体素子や基板を不活性ガスで冷却してしまうことが抑止され、接合時の加熱効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置を示す上面視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置における不活性ガスの流れを示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置における不活性ガスの流れを示す上面視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置を用いた際の酸素濃度測定結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1から図5を参照し、本発明の一実施形態に係る半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置について説明する。本実施形態は、半導体素子を基板に接合する際に用いる半導体保持装置及び半導体接合装置に関し、特に、接合時に必要な低酸素濃度の環境を効率よく供給できる構造を有する半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置に関するものである。
【0024】
本実施形態の半導体接合装置Aは、図1及び図2に示すように、半導体素子(半導体の個片、半導体チップ)1を吸着保持する半導体保持装置Bと、基板2を保持する基板保持部と、半導体素子1を加熱して基板2に接合するためのヒータと、不活性ガス源と、不活性ガス源を制御する制御装置とを備えて構成されている。
【0025】
また、半導体保持装置Bは、搭載ヘッド(不図視)に吸着あるいは他の方法で保持されるフード付コレットであり、半導体素子1を吸着保持する保持部3と、この保持部3の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次保持部3の内側に傾斜する傾斜面4aを有するフード(庇、庇構造)4と、保持部3の内側を向くフード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5を吹き出す吹き出し孔6とを備えて形成されている。さらに、吹き出し孔6に不活性ガス源が接続され、制御装置によって不活性ガス源が制御されて、半導体素子1を基板2に接合する接合時に吹き出し孔6から不活性ガス5が噴出するように構成されている。
【0026】
保持部3は、その中央部に、半導体素子1を吸着固定するための真空孔(吸気孔)7を備えたフラット部8が設けられている。また、このフラット部8の周囲に、フラット部8に対し凹設された掘り込み溝9を備える掘り込み部10が形成されている。そして、この掘り込み溝9が形成された外周側部分(掘り込み部10)に、保持部3の搭載ヘッド(不図示)に固定する一面3aから掘り込み溝9の他面3bに開口(貫通)して吹き出し孔6が形成されている。また、本実施形態では、このように形成された保持部3の一面3a側(背面側)にヒータが設けられている。
【0027】
一方、フード4は、窒化アルミニウム、金属あるいは樹脂で形成されるとともに、保持部3の外周縁に接続した後端から先端に向かうに従い漸次下方に、且つ漸次保持部3の内側に向かうように傾斜して形成されている。なお、フード4は、その傾斜面4aと掘り込み部10の他面3bの交角θが40〜50°となるように形成されていることが望ましい。
【0028】
さらに、本実施形態において、フード4は、傾斜面4aが吹き出し孔6の直下に延設され、保持部3の他面3bを内包するように形成されている。また、このフード4は、保持部3のフラット部8で半導体素子1を保持した状態において、その先端が半導体素子1の実装面(接合部11)よりも上方に位置するように形成されている。
【0029】
このように構成した本実施形態の半導体保持装置B及び半導体接合装置Aにおいては、半導体保持装置Bが半導体素子1上に移動するとともに真空孔7を真空吸引することで、半導体素子1がフラット部8に吸着固定される。
【0030】
そして、半導体保持装置Bが基板2の所定位置に移動するとともに、半導体素子1が基板2上(基板2に塗布した接着剤や半田を設けた接続配線上)に接するように下降した段階で、制御装置で制御した不活性ガス源から吹き出し孔6に不活性ガス5が供給され、この不活性ガス5が吹き出し孔6から噴出する。
【0031】
このとき、本実施形態の半導体保持装置Bにおいては、保持部3の外周側にフード4が設けられ、また、フード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5が吹き出すように吹き出し孔6が形成されている。このため、図3及び図4に示すように、噴出した不活性ガス5がフード4の傾斜面4aに当たり、フード4で囲まれた掘り込み溝9を通じ、フード4に案内されて、半導体素子1と基板2の間に向けて不活性ガス5が流れてゆく。これにより、図5の酸素濃度測定結果のように、半導体素子1と基板2の接合部11の周囲が不活性ガス5で満たされ、半導体素子1の全域にわたって均一な低酸素濃度の環境が形成される。
【0032】
そして、半導体素子1の接合部11が低酸素濃度の環境になることで、ヒータで加熱し半導体素子1を基板2の配線に接合する際に、半田の酸化が確実に防止され、好適に接合が行われることになる。
【0033】
したがって、本実施形態の半導体保持装置B及びこれを備えた半導体接合装置Aにおいては、従来のように半導体素子の側面に吹き出し孔を設けず、保持部3の内側を向くフード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5が吹き出すように吹き出し孔6を設けることにより、吹き出し孔6から吹き出した不活性ガス5をフード4で案内して半導体素子1の接合部11に供給することが可能になる。
【0034】
これにより、半導体素子1によって不活性ガス5の流れが阻害されることを防止でき、半導体素子1の接合部11に低酸素濃度の環境を確実に作り出すことが可能になる。
【0035】
また、半導体素子1を保持する保持部3の周囲にフード4が設けられているため、大型の半導体素子1に柔軟に対応できるとともに、半導体素子1や基板2を不活性ガス5で冷却してしまうことが抑止され、接合時の加熱効率を高めることが可能になる。
【0036】
さらに、保持部3の内側を向くフード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5を吹き出すように吹き出し孔6を設けて不活性ガス5の流れが阻害されることを防止するように構成したことで、加熱対象物の大きさに左右されることがなく、確実に半導体素子1の接合部11に不活性ガス5を充填することができる。また、ヒータを保持部3(コレット)の背面3a側に設けることで、加熱のための配線を不要にでき、簡易に脱着することも可能になる。
【0037】
さらに、不活性ガス5の流れを半導体素子1の対象物上面で層流にするのではなく、フード4によって不活性ガス5の流れを層流にすることができる。このため、大型の半導体素子1や薄型の半導体素子1にも制限を設ける必要がなく、この点からも、大きさが異なる半導体素子1に柔軟に対応することが可能になる。
【0038】
さらに、半導体素子1を吸着固定するフラット部8に(半導体素子1の上面に)、真空孔(吸気孔)7のみが設けられていることで、メンテナンス性を高めることも可能になる。
【0039】
よって、本実施形態の半導体保持装置B及びこれを備えた半導体接合装置Aによれば、半導体保持装置Bの構造体を小さく設計することができ、メンテナンスや製品形状変更に対し、簡便に対応することが可能になる。また、半導体素子1を接合する対象基板2の下面に一切の構造物を設けることなく、且つ半導体素子1の接合部11に低酸素濃度の環境を確実に作り出して、好適に接合を行うことが可能になる。
【0040】
以上、本発明に係る半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
例えば、本実施形態では、図1に示したように、吹き出し孔6が保持部3の一面3aから吹き出し溝9を形成する他面3bに向けて上下方向に一定の内径で貫設されているものとした。これに対し、本発明に係る吹き出し孔6は、フード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5を噴出すことが可能であればよく、不活性ガス5をフード4の傾斜面4aに衝突させることが可能な範囲で任意に設定することが可能である。
【0042】
すなわち、図6や図7に示すように不活性ガス5の流入口径よりも流出口径(吹き出し溝8に開口する噴出口径)を大きくしたり、逆に流入口径よりも流出口径を小さくして吹き出し孔6が形成されていてもよい。そして、この場合には、流入口径と流出口径をそれぞれ適宜設定することで、吹き出し孔6から噴出する不活性ガス5の流量、流速を調節でき、半導体素子1の接合部11に低酸素濃度の環境を確実に作り出して好適に接合を行うことが可能になる。
【0043】
また、図8に示すように、保持部3の一面3aから他面3bに向けて斜めに貫設するように吹き出し孔6を形成してもよい。この場合には、吹き出し孔6から不活性ガス5がフード4の傾斜面4aに当たることで、半導体素子1の接合部11は勿論、半導体素子1の周囲を確実に低酸素濃度の環境にすることが可能になる。
【0044】
さらに、図9、図10、図11に示すように、吹き出し部10の吹き出し孔6から外周側の他面3b部分とフード4の保持部3(フラット部8)側を向く面4aとの間の隙間Hを埋めるようにしてもよい。この場合には、吹き出し孔6から噴出した不活性ガス5がこの隙間Hで回旋することをなくすることができ、流入径路上での不活性ガス5の流速の減衰を少なく抑えることが可能になる。このため、低酸素濃度の環境にするまでの時間を短縮することができる。また、製作の容易性が向上し、安価に半導体保持装置Bを製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体素子
2 基板
3 保持部
3a 一面
3b 他面
4 フード
4a 傾斜面
5 不活性ガス
6 吹き出し孔
7 真空孔(吸気孔)
8 フラット部
9 掘り込み溝
10 掘り込み部
11 接合部
A 半導体接合装置
B 半導体保持装置
H 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を基板に接合する際に用いる半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置に関し、特に接合時に必要な低酸素濃度の環境を効率よく供給できる構造を有する半導体保持装置及び半導体接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体接合装置には、局所的な不活性ガスの流れを制御しながら半導体を基板に接合するように構成したものが多用されている。
【0003】
すなわち、半導体の製造工程では、酸化拡散洗浄などの製造プロセスを終了したウェハが個片に分割され、半導体接合工程では、半導体接合装置を用いてこれら個々に分割した半導体素子(半導体の個片、半導体チップ)をガラエポやセラミックスなどの基板に搭載固定(実装)する。このとき、基板は、多数取りが可能なマトリックス状に構成され、予め、半導体素子を搭載する部位に接着剤を塗布したり、接続配線上に半田付けなどが施されている。
【0004】
そして、半導体素子は、半導体接合装置の接合ヘッド(半導体保持装置、コレット)に吸着保持されて接合ヘッドとともに基板の所定位置に搬送される。このように半導体素子を接合ヘッドとともに搬送した後に、接合ヘッドが下降して基板に接するとともに加熱処理が施される。これにより、半田が溶け、半導体素子が基板の所定位置に接合される。また、半導体素子の吸着状態を解除するとともに接合ヘッドが上昇して初期位置に戻り、他の半導体素子を同様に基板上に接合してゆく。
【0005】
一方、半導体接合装置で半導体素子を基板の所定位置に接合する際には、半導体素子の配線と基板の配線を接合する半田の酸化を防止するため、低酸素濃度の環境で接合を行うようにしている。
【0006】
そして、従来の半導体接合装置では、コレット内に設けた通気孔(吹き出し孔)から不活性ガスを吹き出すように構成され、吸着保持した半導体素子(半導体個片)に向かって不活性ガスを吹き付けながら接合を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−119866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の半導体接合装置においては、半導体素子の接合部に不活性ガスを吹き付けることができず、接合部に低酸素濃度の環境を作り出せないおそれがあった。すなわち、保持した半導体素子の側面に対し、不活性ガスを斜方に吹き付けるように構成されているため、不活性ガスの流れが妨げられて接合部に低酸素濃度の環境を作り出せないおそれがあった。
【0009】
また、半導体素子が大型化するほどに半導体素子の接合面に不活性ガスの流れが形成されなくなってしまう。このため、大型の半導体素子に柔軟に対応できないという問題があった。
【0010】
さらに、加熱構造と不活性ガスの吹き出し構造が同一のコレットに内蔵されているため、半導体素子の大型化や薄型化に対応したコレットをそれぞれ準備しておく必要があるという問題もあった。
【0011】
また、半導体素子を保持するための吸気孔と、不活性ガスを吹き出す通気孔を吸着保持面に設けて構成されているため、加熱を施して接合する際に、直接コレットに接している部位と、吸気孔、通気孔の直下の部位に温度差が生じ、加熱効率が悪くなるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、半導体素子を基板に接合する際に、必要な低酸素濃度の環境を効率よく形成して、好適に接合を行うことを可能にする半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明の半導体保持装置は、半導体素子を保持する保持部と、該保持部の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次前記保持部の内側に傾斜する傾斜面を有するフードと、該フードの前記保持部の内側を向く前記傾斜面に向けて不活性ガスを吹き出す吹き出し孔とを備えて形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の半導体保持装置においては、前記保持部が、半導体素子を吸着するフラット部と、該フラット部を取り囲むように設けられるとともに前記フラット部に対し凹設された掘り込み部とを備え、前記吹き出し孔が前記掘り込み部に開口して備えられていることが望ましい。
【0016】
さらに、本発明の半導体保持装置において、前記フードは、前記保持部で半導体素子を吸着保持した状態で、先端が半導体素子の実装面よりも上方に位置するように形成されていることがより望ましい。
【0017】
また、本発明の半導体保持装置においては、前記フードが、窒化アルミニウム、金属あるいは樹脂で形成されていることが望ましい。
【0018】
本発明の半導体接合装置は、上記のいずれかの半導体保持装置と、基板を保持する基板保持部と、半導体素子を加熱して前記基板に接合するためのヒータと、前記吹き出し孔に接続された不活性ガス源と、接合時に前記吹き出し孔から不活性ガスを噴出するように前記不活性ガス源を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置においては、従来のように半導体素子の側面に吹き出し孔を設けず、保持部の内側を向くフードの傾斜面に向けて不活性ガスを吹き出すように吹き出し孔を設けることにより、吹き出し孔から吹き出した不活性ガスをフードで案内して半導体素子の接合部に供給することが可能になる。
【0020】
これにより、半導体素子によって不活性ガスの流れが阻害されることを防止でき、半導体素子の接合部に低酸素濃度の環境を確実に作り出すことが可能になる。
【0021】
また、半導体素子を保持する保持部の周囲にフードが設けられているため、大型の半導体素子に柔軟に対応できるとともに、半導体素子や基板を不活性ガスで冷却してしまうことが抑止され、接合時の加熱効率を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置を示す上面視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置における不活性ガスの流れを示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置における不活性ガスの流れを示す上面視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置を用いた際の酸素濃度測定結果を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る半導体保持装置(半導体接合装置)の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1から図5を参照し、本発明の一実施形態に係る半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置について説明する。本実施形態は、半導体素子を基板に接合する際に用いる半導体保持装置及び半導体接合装置に関し、特に、接合時に必要な低酸素濃度の環境を効率よく供給できる構造を有する半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置に関するものである。
【0024】
本実施形態の半導体接合装置Aは、図1及び図2に示すように、半導体素子(半導体の個片、半導体チップ)1を吸着保持する半導体保持装置Bと、基板2を保持する基板保持部と、半導体素子1を加熱して基板2に接合するためのヒータと、不活性ガス源と、不活性ガス源を制御する制御装置とを備えて構成されている。
【0025】
また、半導体保持装置Bは、搭載ヘッド(不図視)に吸着あるいは他の方法で保持されるフード付コレットであり、半導体素子1を吸着保持する保持部3と、この保持部3の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次保持部3の内側に傾斜する傾斜面4aを有するフード(庇、庇構造)4と、保持部3の内側を向くフード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5を吹き出す吹き出し孔6とを備えて形成されている。さらに、吹き出し孔6に不活性ガス源が接続され、制御装置によって不活性ガス源が制御されて、半導体素子1を基板2に接合する接合時に吹き出し孔6から不活性ガス5が噴出するように構成されている。
【0026】
保持部3は、その中央部に、半導体素子1を吸着固定するための真空孔(吸気孔)7を備えたフラット部8が設けられている。また、このフラット部8の周囲に、フラット部8に対し凹設された掘り込み溝9を備える掘り込み部10が形成されている。そして、この掘り込み溝9が形成された外周側部分(掘り込み部10)に、保持部3の搭載ヘッド(不図示)に固定する一面3aから掘り込み溝9の他面3bに開口(貫通)して吹き出し孔6が形成されている。また、本実施形態では、このように形成された保持部3の一面3a側(背面側)にヒータが設けられている。
【0027】
一方、フード4は、窒化アルミニウム、金属あるいは樹脂で形成されるとともに、保持部3の外周縁に接続した後端から先端に向かうに従い漸次下方に、且つ漸次保持部3の内側に向かうように傾斜して形成されている。なお、フード4は、その傾斜面4aと掘り込み部10の他面3bの交角θが40〜50°となるように形成されていることが望ましい。
【0028】
さらに、本実施形態において、フード4は、傾斜面4aが吹き出し孔6の直下に延設され、保持部3の他面3bを内包するように形成されている。また、このフード4は、保持部3のフラット部8で半導体素子1を保持した状態において、その先端が半導体素子1の実装面(接合部11)よりも上方に位置するように形成されている。
【0029】
このように構成した本実施形態の半導体保持装置B及び半導体接合装置Aにおいては、半導体保持装置Bが半導体素子1上に移動するとともに真空孔7を真空吸引することで、半導体素子1がフラット部8に吸着固定される。
【0030】
そして、半導体保持装置Bが基板2の所定位置に移動するとともに、半導体素子1が基板2上(基板2に塗布した接着剤や半田を設けた接続配線上)に接するように下降した段階で、制御装置で制御した不活性ガス源から吹き出し孔6に不活性ガス5が供給され、この不活性ガス5が吹き出し孔6から噴出する。
【0031】
このとき、本実施形態の半導体保持装置Bにおいては、保持部3の外周側にフード4が設けられ、また、フード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5が吹き出すように吹き出し孔6が形成されている。このため、図3及び図4に示すように、噴出した不活性ガス5がフード4の傾斜面4aに当たり、フード4で囲まれた掘り込み溝9を通じ、フード4に案内されて、半導体素子1と基板2の間に向けて不活性ガス5が流れてゆく。これにより、図5の酸素濃度測定結果のように、半導体素子1と基板2の接合部11の周囲が不活性ガス5で満たされ、半導体素子1の全域にわたって均一な低酸素濃度の環境が形成される。
【0032】
そして、半導体素子1の接合部11が低酸素濃度の環境になることで、ヒータで加熱し半導体素子1を基板2の配線に接合する際に、半田の酸化が確実に防止され、好適に接合が行われることになる。
【0033】
したがって、本実施形態の半導体保持装置B及びこれを備えた半導体接合装置Aにおいては、従来のように半導体素子の側面に吹き出し孔を設けず、保持部3の内側を向くフード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5が吹き出すように吹き出し孔6を設けることにより、吹き出し孔6から吹き出した不活性ガス5をフード4で案内して半導体素子1の接合部11に供給することが可能になる。
【0034】
これにより、半導体素子1によって不活性ガス5の流れが阻害されることを防止でき、半導体素子1の接合部11に低酸素濃度の環境を確実に作り出すことが可能になる。
【0035】
また、半導体素子1を保持する保持部3の周囲にフード4が設けられているため、大型の半導体素子1に柔軟に対応できるとともに、半導体素子1や基板2を不活性ガス5で冷却してしまうことが抑止され、接合時の加熱効率を高めることが可能になる。
【0036】
さらに、保持部3の内側を向くフード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5を吹き出すように吹き出し孔6を設けて不活性ガス5の流れが阻害されることを防止するように構成したことで、加熱対象物の大きさに左右されることがなく、確実に半導体素子1の接合部11に不活性ガス5を充填することができる。また、ヒータを保持部3(コレット)の背面3a側に設けることで、加熱のための配線を不要にでき、簡易に脱着することも可能になる。
【0037】
さらに、不活性ガス5の流れを半導体素子1の対象物上面で層流にするのではなく、フード4によって不活性ガス5の流れを層流にすることができる。このため、大型の半導体素子1や薄型の半導体素子1にも制限を設ける必要がなく、この点からも、大きさが異なる半導体素子1に柔軟に対応することが可能になる。
【0038】
さらに、半導体素子1を吸着固定するフラット部8に(半導体素子1の上面に)、真空孔(吸気孔)7のみが設けられていることで、メンテナンス性を高めることも可能になる。
【0039】
よって、本実施形態の半導体保持装置B及びこれを備えた半導体接合装置Aによれば、半導体保持装置Bの構造体を小さく設計することができ、メンテナンスや製品形状変更に対し、簡便に対応することが可能になる。また、半導体素子1を接合する対象基板2の下面に一切の構造物を設けることなく、且つ半導体素子1の接合部11に低酸素濃度の環境を確実に作り出して、好適に接合を行うことが可能になる。
【0040】
以上、本発明に係る半導体保持装置及びこれを備えた半導体接合装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
例えば、本実施形態では、図1に示したように、吹き出し孔6が保持部3の一面3aから吹き出し溝9を形成する他面3bに向けて上下方向に一定の内径で貫設されているものとした。これに対し、本発明に係る吹き出し孔6は、フード4の傾斜面4aに向けて不活性ガス5を噴出すことが可能であればよく、不活性ガス5をフード4の傾斜面4aに衝突させることが可能な範囲で任意に設定することが可能である。
【0042】
すなわち、図6や図7に示すように不活性ガス5の流入口径よりも流出口径(吹き出し溝8に開口する噴出口径)を大きくしたり、逆に流入口径よりも流出口径を小さくして吹き出し孔6が形成されていてもよい。そして、この場合には、流入口径と流出口径をそれぞれ適宜設定することで、吹き出し孔6から噴出する不活性ガス5の流量、流速を調節でき、半導体素子1の接合部11に低酸素濃度の環境を確実に作り出して好適に接合を行うことが可能になる。
【0043】
また、図8に示すように、保持部3の一面3aから他面3bに向けて斜めに貫設するように吹き出し孔6を形成してもよい。この場合には、吹き出し孔6から不活性ガス5がフード4の傾斜面4aに当たることで、半導体素子1の接合部11は勿論、半導体素子1の周囲を確実に低酸素濃度の環境にすることが可能になる。
【0044】
さらに、図9、図10、図11に示すように、吹き出し部10の吹き出し孔6から外周側の他面3b部分とフード4の保持部3(フラット部8)側を向く面4aとの間の隙間Hを埋めるようにしてもよい。この場合には、吹き出し孔6から噴出した不活性ガス5がこの隙間Hで回旋することをなくすることができ、流入径路上での不活性ガス5の流速の減衰を少なく抑えることが可能になる。このため、低酸素濃度の環境にするまでの時間を短縮することができる。また、製作の容易性が向上し、安価に半導体保持装置Bを製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体素子
2 基板
3 保持部
3a 一面
3b 他面
4 フード
4a 傾斜面
5 不活性ガス
6 吹き出し孔
7 真空孔(吸気孔)
8 フラット部
9 掘り込み溝
10 掘り込み部
11 接合部
A 半導体接合装置
B 半導体保持装置
H 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を保持する保持部と、該保持部の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次前記保持部の内側に傾斜する傾斜面を有するフードと、該フードの前記保持部の内側を向く前記傾斜面に向けて不活性ガスを吹き出す吹き出し孔とを備えて形成されていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体保持装置において、
前記保持部が、半導体素子を吸着するフラット部と、該フラット部を取り囲むように設けられるとともに前記フラット部に対し凹設された掘り込み部とを備え、
前記吹き出し孔が前記掘り込み部に開口して備えられていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体保持装置において、
前記フードは、前記保持部で半導体素子を吸着保持した状態で、先端が半導体素子の実装面よりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体保持装置において、
前記フードが、窒化アルミニウム、金属あるいは樹脂で形成されていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体保持装置と、基板を保持する基板保持部と、半導体素子を加熱して前記基板に接合するためのヒータと、前記吹き出し孔に接続された不活性ガス源と、接合時に前記吹き出し孔から不活性ガスを噴出するように前記不活性ガス源を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする半導体接合装置。
【請求項1】
半導体素子を保持する保持部と、該保持部の周囲に設けられるとともに下方に向かうに従い漸次前記保持部の内側に傾斜する傾斜面を有するフードと、該フードの前記保持部の内側を向く前記傾斜面に向けて不活性ガスを吹き出す吹き出し孔とを備えて形成されていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体保持装置において、
前記保持部が、半導体素子を吸着するフラット部と、該フラット部を取り囲むように設けられるとともに前記フラット部に対し凹設された掘り込み部とを備え、
前記吹き出し孔が前記掘り込み部に開口して備えられていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体保持装置において、
前記フードは、前記保持部で半導体素子を吸着保持した状態で、先端が半導体素子の実装面よりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体保持装置において、
前記フードが、窒化アルミニウム、金属あるいは樹脂で形成されていることを特徴とする半導体保持装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体保持装置と、基板を保持する基板保持部と、半導体素子を加熱して前記基板に接合するためのヒータと、前記吹き出し孔に接続された不活性ガス源と、接合時に前記吹き出し孔から不活性ガスを噴出するように前記不活性ガス源を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする半導体接合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−49470(P2012−49470A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192695(P2010−192695)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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