説明

可倒式アンテナ

【課題】 仕様変更や多仕様対応が容易な可倒式アンテナ装置を提供すること。
【解決手段】 第1ブラケット(11)の垂直部(11a)にはピンガイドプレート(10)が取付けられピンガイドプレートにはガイド穴(100)が形成されている。第1ブラケットの垂直部にはボルト(14)の先端部が螺合され、アンテナ組立体(1)が取付けられるアンテナ取付け部材(2)の第2部分(2b)がピンガイドプレートを介して第1ブラケットの垂直部に対して締め付けられる。ピンガイドプレートのガイド穴にアンテナ取付け部材に固定されているピン(9)が係合する。ピンガイドプレートのガイド穴を変更するだけで仕様変更ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の屋根等に取付けられ必要に応じて倒すことができる可倒式アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の屋根等に取付けられ、収納はされないが、必要に応じて倒すことができる可倒式アンテナ装置がある。例えば、特許文献1に記載の装置がある。同公報の装置では、アンテナ取付部材にスプリングで押圧されるボールを取付けられ、それが車両に取付けられる部材状のベース部材に対し回動可能に取付けられている。そして、ベース部材にボールが半分係合する溝が刻設されていて、固定すべきアンテナ角度位置に対応して溝が深くされている。
【0003】
上記特許文献1の装置では、固定すべきアンテナ角度位置が異なるものを製造する場合には、部材状のベース部材を対応した溝を備えるように変更しなければならない。あるいは、ベースカバー部材の形状変更が必要となってしまう。したがって、仕様変更、あるいは、多仕様対応に手間がかかるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−344218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、仕様変更、あるいは、多仕様対応が容易な可倒式アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、可倒式アンテナ装置であって、
アンテナが結合されるアンテナ取付け部材を、被装着部材に固定されるベース部材に、アンテナの回動角度を規制する角度規制部材を介装して、回動可能に締め付け結合して成り、
角度規制部材は、アンテナ取付け部材とベース部材の一方に固定されピンガイド穴が形成されているピンガイドプレートと、アンテナ取付け部材とベース部材の他方に固定されピンガイドプレートに形成されているピンガイド穴に係合するピンから成り、
ピンガイドプレートが単独に作成され、その後、アンテナ取付け部材とベース部材の一方に係止される、ことを特徴とする可倒式アンテナ装置が提供される。
【0007】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、アンテナ取付け部材は、アンテナが挿入され螺合される第1穴と、第1穴に対して直角に配置され、かつ、第1穴と連通する第2穴を有し、
第2穴には締め付け用のボルトが挿入され、
第1穴に挿入され螺合されたアンテナの端部と第2穴に挿入されている締め付け用のボルトの外面の間にスプリングが配設されている。
【0008】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、第2穴が長円形の断面を有している。
請求項4の発明によれば、請求項2の発明において、第1穴に挿入され螺合されたアンテナの端部の周縁にOリングが配設され、Oリングとスプリングの間にスプリング受板が配設されている。
請求項5の発明によれば、請求項2の発明において、スプリングがコイルスプリングとされている。
【0009】
請求項6の発明によれば、請求項1の発明において、ピンガイド穴は円弧部分と、円弧部分の両端で、中心に向かって形成された切り込みを含んで形成されている。
請求項7の発明によれば、請求項1の発明において、ピンガイドプレートがベース部材に係止されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の各請求項に記載の発明による可倒式アンテナ装置では、アンテナが結合されるアンテナ取付け部材を、被装着部材に固定されるベース部材に、アンテナの回動角度を規制する角度規制部材を介装して、回動可能に締め付け結合して成り、角度規制部材は、アンテナ取付け部材とベース部材の一方に固定されピンガイド穴が形成されているピンガイドプレートと、アンテナ取付け部材とベース部材の他方に固定されピンガイドプレートに形成されているピンガイド穴に係合するピンから成るが、ピンガイドプレートが単独に作成され、その後、アンテナ取付け部材とベース部材の一方に係止される、したがって、ピンガイドプレートを取り替えるだけで可倒角度を変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明による車両用のアンテナ取付け装置の断面図であり、図2は分解組立図である。アンテナロッド1aがアンテナカプラー1bに結合され、このアンテナロッド1aとアンテナカプラー1bがアンテナカバー1cで覆われている。これらアンテナロッド1aとアンテナカプラー1bとアンテナカバー1cを合わせてアンテナ組立体1という。
【0012】
アンテナ取付け部材2は、図中上下方向に延伸する第1部分2aと、図中第1部分の下側に連続形成され図中左右方向に延伸する第2部分2bを有する。第1部分2aにはアンテナロッド1aの延伸方向と同じ方向に延伸する第1穴3aが形成されている。そして、第1穴3aの延伸方向に直角に延伸する第2穴3bが第1穴3aに連通して形成され、第2穴3bは断面が長円(図3参照)とされしている。
また、アンテナ取付け部材2の図中第2穴3bよりも下側の左端面にはピン9が固定されている。そして、アンテナ取付け部材2の外側はカバー部材8で覆われている。
【0013】
第1穴3aにアンテナ組立体1のアンテナカプラー1bの先端部が螺合されている。アンテナカプラー1bの先端の外縁に沿うようにOリング4が配設されている。Oリング4の図中下側にはスプリング受板5が配設されている。一方、第2穴3b内にはカラー7で覆われたボルト14が貫通配置されている。
【0014】
カラー7で覆われたボルト14の表面とスプリング受板5の間にコイルスプリング6が配設されている。コイルスプリング6は第1穴3aの長手方向に付勢力を発生する。この付勢力は一方ではスプリング受板5とOリング4を介してアンテナカプラー1bに作用してアンテナカプラー1bの緩みを防止し、他方ではボルト14を常にピン9の方向に押圧する。
【0015】
一方、図示しない車両の屋根に図示しない適切な方法で固定されるベース部材20に、第1ブラケット11が埋めこみ成形で結合されている。第1ブラケット11は垂直部11aと水平部11bを有する。第1ブラケット11の垂直部11aの図中右側にはピンガイドプレート10が取付けられている。ピンガイドプレート10は単品で独立的に製造されるが上端部が折り曲げ成形され、その折り曲げられた部分が第1ブラケット11の垂直部11aの上端部に形成された凹部に係合せしめられており、第1ブラケット11の垂直部11aに対して位置不動にされる。ピンガイドプレート10にはガイド穴100が形成されている。
【0016】
第1ブラケット11の垂直部11aにはボルト14の先端部が螺合され、アンテナ取付け部材2の第2部分2bがピンガイドプレート10を介して第1ブラケット11の垂直部11aに対して締め付けられる。ピンガイドプレート10に形成されているガイド穴100にアンテナ取付け部材2に固定されているピン9が係合する。
【0017】
なお、ボルト14の図中右端の頭部に接してスプリングワッシャ13が配設され、スプリングワッシャ13とアンテナ取付け部材2の第2部分2bの間には第2ブラケット12が介装されている。第2ブラケット12の下端部はベース部材20の上面に形成された位置決め部21に当接せしめられている。ボルト14の緩み防止のために第1ブラケット11の垂直部11aの軸方向外側にナット15が設けられている。
【0018】
上記のようにアンテナ取付け部材2の第2部分2bが第1ブラケット11の垂直部11aに取付けられるが、洗車等の際にアンテナ組立体1が第1ブラケット11に対して回動できるように締め付けトルクが調整される。なお、ベースカバー22によりアンテナ取付け部材2の第2部分2bから下の部分が覆われている。
【0019】
図3はアンテナ組立体1が通常の使用位置にあるときのピンガイドプレート10とアンテナ取付け部材2の関係を示す図である。ピンガイドプレート10に形成されているガイド穴100は図示されるように約120度の範囲にわたってボルト14の回転中心に対して同心に形成されており、その下側の端部と上側の端部に、それぞれ、中心に向かう第1切り込み110、第2切り込み120が形成されている。
【0020】
アンテナ組立体1を通常の使用位置(角度位置)に回転させると、スプリング6の付勢力によりアンテナ取付け部材2はボルト14から離間する方向に押圧される。その結果、アンテナ取付け部材2に固定されているピン9はガイド穴100の第1切り込み110に係合する。一旦、第1切り込み110に係合するとアンテナ取付け部材2をスプリング6の付勢力に抗して押して回さない限りアンテナ組立体1は回転しない。
【0021】
図4は車両を洗車機で洗車するに際してアンテナ組立体1を車両に屋根に平行になるように倒す場合の手順を示す図である。まず、図3に示した角度位置においてアンテナ取付け部材2をアンテナ組立体1の軸線に沿って矢印の方向にボルト14に向けて押し込む。すると図4の(A)に示されるようにピン9はガイド穴100の第1切り込み110から脱出する。上記のように押し込んだ状態で図中反時計回りにアンテナ組立体1を回転せしめると図4の(B)に示されるようにピン9はガイド穴100の中央部分130にそって移動する。なお、第1切り込み110から中央部分130に入った後は押し込む必要はない。さらにアンテナ組立体1を回転せしめると図4の(C)に示されるようにピン9は第2切り込み120の角度位置に達し、自動的に第2切り込み120に係合し、この角度位置で保持される。なお、第1切り込み110を浅くして、単にアンテナ組立体1を所定の力以上で回すだけでスプリング6の付勢力に抗してピン9が第1切り込み110を脱出できるようにしてもよい。
【0022】
この(C)の状態から(A)の状態に戻すには(C)の状態でアンテナ取付け部材2をアンテナ組立体1の軸線に沿って矢印の方向にボルト14に向けて押し込み、ピン9はガイド穴100の第2切り込み120から脱出させてから、図中時計回り方向に回転せしめればよい。なお、第2切り込み120を浅くして、単にアンテナ組立体1を所定の力以上で回すだけでスプリング6の付勢力に抗してピン9が第2切り込み120を脱出できるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は可倒式アンテナ装置に適用されるが、同じような構造を有する他の装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の可倒式アンテナ装置の断面図である。
【図2】図1の可倒式アンテナ装置の分解組立図である。
【図3】通常の使用状態におけるピンガイドプレートとアンテナ取付け部材の位置関係を示す図である。
【図4】アンテナを倒すときの状態を説明する図であって、(A)は通常の使用状態と同じ角度位置でアンテナを押し込んだ様子を示し、(B)は(A)の状態から途中まで倒した時の様子を示し、(C)はアンテナが略水平になるようにフルに倒した時の様子を示している。
【符号の説明】
【0025】
1 アンテナ組立体
1a アンテナロッド
1b アンテナカプラー
1c アンテナカバー
2 アンテナ取付け部材
3a 第1穴
3b 第2穴
4 Oリング
5 スプリング受板
6 スプリング
7 カラー
8 カバー部材
9 ピン
10 ピンガイドプレート
11 第1ブラケット
12 第2ブラケット
13 スプリングワッシャ
14 ボルト
15 ナット
20 ベース部材
22 ベースカバー
100 ガイド穴
110 第1切り込み
120 第2切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可倒式アンテナ装置であって、
アンテナ(1)が結合されるアンテナ取付け部材(2)を、被装着部材に固定されるベース部材(20)に、アンテナの回動角度を規制する角度規制部材を介装して、回動可能に締め付け結合して成り、
角度規制部材は、アンテナ取付け部材(2)とベース部材(20)の一方に固定されピンガイド穴(100)が形成されているピンガイドプレート(10)と、アンテナ取付け部材(2)とベース部材(20)の他方に固定されピンガイドプレート(10)に形成されているピンガイド穴(100)に係合するピンから成り、
ピンガイドプレート(10)が単独に作成され、その後、アンテナ取付け部材(2)とベース部材(20)の一方に係止される、
ことを特徴とする可倒式アンテナ装置。
【請求項2】
アンテナ取付け部材(2)は、アンテナ(1)が挿入され螺合される第1穴(3a)と、第1穴(3a)に対して直角に配置され、かつ、第1穴(3a)と連通する第2穴(3b)を有し、
第2穴(3b)には締め付け用のボルト(14)が挿入され、
第1穴(3a)に挿入され螺合されたアンテナ(1)の端部と第2穴(3b)に挿入されている締め付け用のボルト(14)の外面の間にスプリング(6)が配設されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の可倒式アンテナ装置。
【請求項3】
第2穴(3b)が長円形の断面を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の可倒式アンテナ装置。
【請求項4】
第1穴(3a)に挿入され螺合されたアンテナ(1)の端部の周縁にOリング(4)が配設され、Oリング(4)とスプリング(6)の間にスプリング受板(5)が配設されている、ことを特徴とする請求項2に記載の可倒式アンテナ装置。
【請求項5】
スプリング(6)がコイルスプリングである、ことを特徴とする請求項2に記載の可倒式アンテナ装置。
【請求項6】
ピンガイド穴(100)は円弧部分(130)と、円弧部分(130)の両端で、中心に向かって形成された切り込み(110、120)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の可倒式アンテナ装置。
【請求項7】
ピンガイドプレート(10)がベース部材(20)の一方に係止されている、ことを特徴とする請求項1に記載の可倒式アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−115211(P2006−115211A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300483(P2004−300483)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】