説明

合成皮革

【課題】植物由来の原料を使用し、既存の石油由来樹脂と同等あるいはそれ以上の耐久性を有するポリウレタン樹脂からなる合成皮革を提供する。
【解決手段】植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオール成分5〜80重量%から構成されるポリウレタン樹脂を、表皮剤として布帛の少なくとも一部に有してなる合成皮革である。前記ポリウレタン樹脂が、少なくともポリオール成分、イソシアネート成分および鎖伸長剤成分からなり、該ポリオール成分とイソシアネート成分とが、モル比でポリオール/イソシアネート=1/7〜1/2であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革に関し、詳細には、従来の石油由来のポリウレタン樹脂と同等あるいはそれ以上の性能を有する植物由来成分を表皮材として使用した合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成皮革の表皮材の材料には、その優れた機械的特性からポリウレタン樹脂が広く使用されている。また、近年においては、環境負荷低減の観点から、植物由来成分からなる樹脂を使用した合成皮革が開発されており、そのような樹脂としてはポリ乳酸樹脂が広く知られている。たとえば、特許文献1には、植物由来成分としてポリ乳酸樹脂を用いた湿式多孔質膜構造体が開示されている。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂等の生分解性が良好な樹脂を用いた合成皮革は、実使用において耐久性に問題が発生することが懸念される。たとえば、ポリ乳酸樹脂は、生分解性が良好であるため加水分解されやすく、強度保持が困難である。
【0004】
さらに、一般的なポリ乳酸樹脂は靭性に欠けるため、とくに多孔質膜化した場合、脆くなって柔軟性に欠ける。そのため、自動車内装材などの耐久性が要求される用途において、ポリ乳酸樹脂を使用することは困難である
【0005】
また、ポリウレタン樹脂の原料として、植物由来成分のひまし油や変性ひまし油などのポリオールを利用することが知られており、特許文献2には、ひまし油など、植物由来の高分子ポリオール成分からなる合成皮革が開示されているが、ポリエーテル系のポリウレタン樹脂は、耐熱性や耐油性に劣るという問題点がある。
【0006】
また、ひまし油は主に脂肪酸のトリグリセライドからなる組成物であり、その構成脂肪酸の主成分はリシノレイン酸であるため、1分子あたり約2.7個の水酸基を有している。しかし、1分子あたりの水酸基数が2をこえるポリオールを用いた場合、分岐構造や架橋構造が生成するため、得られるポリウレタン樹脂が硬くなりすぎ、実用上適度な柔軟性(風合い)を満足する樹脂膜は得られなくなる。また、分岐構造や架橋構造が増加し粘度が大きくなりすぎると、樹脂膜を形成するためのコーティングなどに適した樹脂あるいは樹脂溶液が得られなくなるという問題がある。
【0007】
すなわち、合成皮革に用いる材料としては未だ石油系成分からなる樹脂が主流であり、植物由来成分からなる実用的な合成皮革は上市されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−20530号公報
【特許文献2】特開2009−144313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、環境負荷の低減に寄与する植物由来成分を含有し、従来の石油由来のポリウレタン樹脂を用いた場合と同等あるいはそれ以上の性能を有する合成皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、植物由来成分としてひまし油から得られるセバシン酸を主成分とするセバシン酸系ポリオール成分をポリウレタン樹脂の原料として使用することによって上記課題が解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオール成分5〜80重量%から構成されるポリウレタン樹脂を、表皮剤として布帛の少なくとも一部に有してなる合成皮革に関する。
【0012】
前記ポリウレタン樹脂が、少なくともポリオール成分、イソシアネート成分および鎖伸長剤成分からなり、該ポリオール成分とイソシアネート成分とが、モル比でポリオール/イソシアネート=1/7〜1/2であることが好ましい。
【0013】
前記セバシン酸系ポリオール成分が、セバシン酸とジオールとを反応させてなり、数平均分子量が500〜5,000であることが好ましい。
【0014】
前記ポリウレタン樹脂から形成された皮膜の物性が、100%モジュラス:3〜15MPa、破断時強度:15〜70MPa、破断時伸度:200〜700%を満たすことが好ましい。
【0015】
前記ポリウレタン樹脂からなる樹脂膜を、植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオール成分50〜98重量%から構成されるポリウレタン樹脂からなる接着剤を介して、布帛に積層していることが好ましい。
【0016】
前記接着剤として用いられるポリウレタン樹脂が、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分からなり、該ポリオール成分とイソシアネート成分とが、モル比でポリオール/イソシアネート=1/3.5〜1/0.5であることが好ましい。
【0017】
前記接着剤として用いられるポリウレタン樹脂を構成するセバシン酸系ポリオール成分が、セバシン酸とジオールとを反応させなり、数平均分子量が1,000〜12,000であることが好ましい。
【0018】
前記合成皮革が、平面摩耗試験において、曲面半径10mmの摩擦子を用い、押圧荷重1kgf、摩擦ストローク140mm、摩擦往復速度60回/分の条件下で、5,000回以上の摩擦に耐え得ることが好ましい。
【0019】
前記合成皮革が、温度110℃で100時間の乾熱試験後および温度70℃、湿度95%で100時間の湿熱試験後の平面摩耗試験において、それぞれ2,500回以上の摩擦に耐え得ることが好ましい。
【0020】
前記合成皮革が、JIS K6772の条件下における剥離試験において、樹脂膜の剥離強度が4N/10mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ポリウレタン樹脂のポリオール成分としてセバシン酸系ポリオール成分を主に使用したため、ポリ乳酸樹脂などの植物由来樹脂の問題である靭性を改善させることができ、石油系成分からなるポリウレタン樹脂と同等の靭性を実現することが可能となる。さらに、既存の石油系成分からなるポリウレタン樹脂を用いて製造された合成皮革と同等、もしくはそれ以上の耐摩耗性および耐熱性を与えることができる。また、植物由来成分を使用しているため、環境負荷の低減に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の合成皮革は、植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオール成分5〜80重量%から構成されるポリウレタン樹脂を、表皮剤として布帛の少なくとも一部、たとえば、表皮層として布帛の少なくとも片面に、または、内部層として布帛の少なくとも内部に有してなることを特徴としている。なお、本発明では、いわゆる人工皮革も含んだ概念として、合成皮革と称している。以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0023】
本発明で使用されるセバシン酸は、たとえば、ひまし油などの植物油脂の苛性アルカリによる開裂反応で得られる炭素数10の直鎖飽和二塩基酸である。一般的に、ひまし油由来のポリオールとして市販されているのは、ひまし油をケン化分解して得られるリシノレイン酸から得られるポリオールであり、セバシン酸から得られるものとは異なる。なお、植物由来のセバシン酸の材料油脂は、ひまし油にとくに限定されるものではない。
【0024】
ひまし油は、次式で表される構造を主に有する化合物である。
【0025】
【化1】

【0026】
また、セバシン酸は、次式で表される構造を有するジカルボン酸である。
【0027】
【化2】

【0028】
セバシン酸系ポリオールは、ポリエステルポリオールなどの代替として、接着剤や塗料として使用されるウレタンの原料に使用されているが、本発明においては、セバシン酸を原料とするポリウレタン樹脂が、優れた靭性を有することを見出し、これを合成皮革の表皮層または内部層として使用したのである。
【0029】
本発明において、表皮層または内部層(以下、これらを併せて樹脂層と称することがある)として使用されるセバシン酸系ポリオールは、セバシン酸とジオールとを反応させて得られるセバシン酸系ポリエステルジオールであることが好ましい。また、ジオールの炭素数の上限はとくに限定されないが、セバシン酸系ポリオールの数平均分子量が500〜5,000の範囲となるようにすることが好ましい。数平均分子量は、1,000〜4,000であることがより好ましい。数平均分子量が500より小さいと、得られるポリウレタン樹脂が硬すぎる傾向にあり、5,000をこえると、得られるポリウレタン樹脂が柔らかすぎる傾向にある。
【0030】
セバシン酸と反応させるジオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)などがあげられる。これらのジオールは単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0031】
なかでも、環境負荷の点から、このセバシン酸と反応させるジオール自体にも植物由来成分を使用することが好ましい。セバシン酸系ポリオールが、植物由来のセバシン酸と植物由来のジオールとから得られる場合は、そのポリオール成分の植物由来率は100重量%となる。このように、セバシン酸系ポリオールの構成成分を考慮して植物由来率を算出したとき、ポリウレタン樹脂中に含有される植物由来成分は、5重量%以上であることが好ましい。この植物由来成分が5重量%より少ないと、環境負荷に対する低減効果が小さくなる傾向にある。また、植物由来成分の含有率は、6重量%以上であることがより好ましい。
【0032】
前記ポリウレタン樹脂は、前記セバシン酸系ポリオール成分5〜80重量%から構成されている。前記ポリオール成分の割合(含有率)は、より多いほうが好ましいが、ポリウレタン樹脂層の性能を向上させ、本発明の目的とする合成皮革を得るために、下限を5重量%、上限を80重量%とする。前記ポリオール成分が5重量%より少ないと、得られるポリウレタン樹脂の植物由来率が低減するため環境負荷低減の観点から好ましくなく、80重量%をこえると、耐久性や靭性を示す樹脂層を得ることが困難となる。また、前記ポリオール成分の含有率は、6〜75重量%であることが好ましい。
【0033】
また、通常ポリウレタン樹脂の製造に用いられる脂肪族ジカルボン酸からなるポリオールとしては、一般的に炭素数が4〜12のジカルボン酸からなるものが用いられるが、セバシン酸はポリウレタン樹脂の原料として一般的に使用されているアジピン酸などに比べて炭素数が多いことから、セバシン酸系ポリオールから得られるポリウレタン樹脂は疎水性の向上が期待でき、ポリエステル系ポリウレタン樹脂の問題である耐湿熱性(耐加水分解性)の向上が期待できる。中でも、前記ポリオールから得られるポリウレタン樹脂は、機械的強度、疎水性などのバランスが良く、耐久性の向上が期待できる。前記ポリオール成分の含有量が5重量%より少ないと、これらの効果が不十分となるおそれがあるため好ましくない。
【0034】
なお、ここでいうセバシン酸系ポリオール成分の構成割合は、ポリオールの種類に関係なく、植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオールすべての割合に関するものである。
【0035】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂のポリオール成分として、セバシン酸以外のジカルボン酸からなるものを併用してもよい。セバシン酸以外のジカルボン酸としては、たとえば、石油由来のアジピン酸、コハク酸、テレフタル酸およびイソフタル酸などのジカルボン酸があげられる。これらのジカルボン酸の使用量は、植物由来率を低減しないためにも少ないほうが好ましいが、前述の構成比と、後述するポリオール成分とイソシアネート成分とのモル比とを考慮して適宜設定することができる。
【0036】
また、必要に応じて、前記植物由来ポリオールに加え、それ以外の2価のポリオールを併用してもよい。具体的には、2価の石油由来ポリオールであるポリエステルポリオールポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアミド系ポリオール、シリコーン系ポリオール、フッ素系ポリオールなどがあげられる。これらの2価のポリオールは、植物由来率を低減しないためにも、混合量はより少ないほうが好ましい。
【0037】
前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール成分、イソシアネート成分および鎖伸長剤成分とからなるものである場合、該ポリオール成分とイソシアネート成分とのモル比は、ポリオール/イソシアネート=1/7〜1/2であることが好ましい。このモル比は、1/5.5〜1/2.5であることがより好ましい。イソシアネート成分が多すぎると、反応の制御が困難となる傾向にあり、ポリオール成分が多すぎると、耐久性や靭性を示す樹脂層を得ることが困難となる。
【0038】
なお、イソシアネート成分、ポリオール成分および鎖伸長剤成分のNCO/OH当量比は、通常0.95〜1.15であり、実質的に1とすることが好ましい。NCO/OH当量比がこの範囲外であると、高分子量のポリウレタン樹脂が得られず、有用な性能を有する合成皮革を製造することが困難となる傾向にある。
【0039】
前記ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、50,000〜500,000であることが好ましい。前記ポリウレタン樹脂の数平均分子量が前記範囲外であると、樹脂層を形成するのに適した樹脂あるいは樹脂溶液を得ることが困難となる傾向にある。
【0040】
前記ポリウレタン樹脂から形成された皮膜の物性が、100%モジュラス:3〜15MPa、破断時強度:15〜70MPa、破断時伸度:200〜700%を満たすことが好ましい。皮膜の物性が上記範囲をすべて達成することによって、機械的強度や風合いなどが良好な合成皮革を得ることができる。
【0041】
前記ポリウレタン樹脂層は、多孔質膜または無孔質膜のいずれであってもよい。なかでも、得られる合成皮革の物性に優れる点で、無孔質膜であることが好ましい。
【0042】
多孔質膜形成方法としては、たとえば、湿式製膜法や発泡剤などの添加剤を用いて多孔質膜を形成させる方法があげられる。湿式製膜法により多孔質膜を形成させるには、たとえば、前記ポリウレタン樹脂をDMFなどの水に可溶な極性溶媒に溶解したポリウレタン樹脂溶液を、基材上にコーティングなどで塗布、または、ディッピングなどにより含浸し、これを水中あるいは極性溶媒を含有する水溶液中で凝固させる方法があげられる。もちろん、これらの方法に限定されるものではない。
【0043】
前記ポリウレタン樹脂を得るための方法としては、従来のプレポリマー法を用いることができる。具体的には、イソシアネート基に対して不活性な溶剤中、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)などの極性溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレンなどの有機溶媒中で、前記ポリオールとイソシアネートとを反応させてプレポリマーを調製したのちに、ジオールなどの鎖伸長剤を反応させることで重合度を上げる方法を用いることができる。ただし、本発明で使用されるポリウレタン樹脂の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0044】
本発明に用いられるイソシアネート成分としては、とくに限定されないが、たとえば、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネートなどの芳香族系ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDIなどの脂環族系ジイソシアネートがあげられる。これらのイソシアネートは、単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、本発明に用いられる鎖伸長剤成分としては、やはりとくに限定されないが、一般的には比較的低分子量のジオールが用いられる。たとえば、石油由来のエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、PEGなど、植物由来の1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどのジオールがあげられる。これらのジオールは、単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてジアミンなどを用いることもできる。この鎖伸長剤は、主に得られる樹脂の分子量および物性の制御を目的として、樹脂の合成の際に一般的に用いられる。
【0046】
前記ポリウレタン樹脂は、必要に応じて有機溶媒などで希釈して使用すればよく、また、酸化防止剤、耐光向上剤などの安定剤、無機充填剤、非溶媒、滑剤、撥水剤、顔料、その他の添加剤や機能付与剤を適宜加えることができる。
【0047】
本発明で使用される布帛としては、とくに限定されないが、たとえばポリアミド繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、綿、羊毛などの天然繊維があげられる。これらの繊維は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。またその組織もとくに限定されず、織物、編物、不織布などを適宜用いることができる。また、これらの布帛に、溶剤、樹脂、機能付与剤などがコーティング法あるいは含浸(ディッピング)法などにより付与されているものを用いてもよい。
【0048】
本発明の合成皮革は、前記ポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂溶液を布帛の少なくとも片面にコーティング法を用いて塗布する方法により製造することができる。たとえば、コーティング法としては、ナイフコーター、コンマコーター、ロールコーター、ダイコーターまたはリップコーターなどを用いて、直接布帛にコーティングする方法があげられる。また、前記ポリウレタン樹脂溶液中に基布を含浸させるディッピング法によって製造することができる。
【0049】
さらに、別途製膜された表皮層を布帛に貼り合わせるラミネート法により製造することもできる。たとえば、前記ポリウレタン樹脂溶液を離型性基材上にコーティングなどにより製膜して表皮層としたのち、接着剤などを介して布帛の少なくとも片面に貼り合わせ、離型性基材を剥離する方法があげられる。なかでも、得られる合成皮革の物性や風合いなどの点から、ラミネート法が好適に用いられる。ただし、本発明の製造方法としては、これらの方法に限定されるものではない。
【0050】
表皮層が、接着剤を介して布帛に貼り合わせられてなる場合、使用される接着剤としては、従来の石油系原料からなるポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂系などの接着剤があげられる。なかでも、表皮層と同様に、植物由来のセバシン酸系ポリオール成分から構成されるポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。植物由来成分を含有するポリウレタン樹脂を、表皮層と接着剤との両方に用いることで、積層樹脂膜としての植物由来成分の含有量を向上させることができる。なお、接着剤は、表皮層側と布帛側とのどちらに付与してもよい。
【0051】
前記接着剤の構成成分である植物由来のセバシン酸系ポリオールの数平均分子量は、1,000〜12,000の範囲であることが好ましく、2,000〜10,000であることがより好ましい。数平均分子量が前記範囲外であると、十分な接着強度を得ることが困難となる傾向にある。
【0052】
前記接着剤として用いられる植物由来のセバシン酸系ポリオール成分から構成されるポリウレタン樹脂は、植物由来のセバシン酸系ポリオール成分50〜98重量%から構成されていることが好ましい。前記ポリオール成分の含有率が前記範囲外の場合、実用的な接着強度、接着耐久性を示す接着剤を得ることが困難となる傾向にある。また、前記含有率は、55〜95重量%であることが好ましい。
【0053】
前記接着剤として用いられるポリウレタン樹脂が、ポリオール成分とイソシアネート成分とからなるものである場合、該ポリオール成分とイソシアネート成分とのモル比は、ポリオール/イソシアネート=1/3.5〜1/0.5であることが好ましい。このモル比は、1/3〜1/0.6であることがより好ましい。前記範囲外であると、接着強度や接着耐久性に優れた接着剤を得ることが困難となる傾向にある。
【0054】
前記接着剤として使用されるポリウレタン樹脂の数平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましい。数平均分子量が前記範囲外であると、接着強度や接着耐久性に優れた接着剤を得ることが困難となる傾向にある。
【0055】
前記離型性基材は、とくに限定されるものでなく、たとえば、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する樹脂(たとえば、オレフィン樹脂、シリコーン樹脂など。以下、離型剤という)そのものからなるフィルム、離型剤からなる離型層を紙、布帛、フィルムなどの基材に積層した離型紙、離型布、離型フィルムなどがあげられる。離型性基材は凹凸模様を有していてもよく、このような離型性基材を用いることにより、表面に凹凸模様を有する樹脂膜を形成することができ、膜面同士のブロッキングの発生を防止するとともに、肌触りの良好な合成皮革を得ることができる。
【0056】
本発明において、合成皮革において表面強度や意匠性向上などを目的として、表皮層には、着色、光沢調整、凹凸模様などを施してもよい。また、必要に応じて2層以上により構成されていてもよい。
【0057】
前記表皮層の厚さは、布帛の材質や組織、得られる合成皮革の風合い、または、用途などを考慮し、適宜設定することができる。なかでも、5〜100μmであることが好ましい。また、前記ディッピング法を用いて、布帛内部にポリウレタン樹脂を含浸させる場合の含浸量も、布帛の材質や組織、得られる合成皮革の風合い、または、用途などを考慮し、適宜設定することができる。なかでも、固形分量として、布帛重量の10〜80重量%であることが好ましい。
【0058】
前記接着剤の塗布量は、接着強度や接着耐久性を損なわない範囲であればよく、布帛の材質や組織、得られる合成皮革の風合い、用途などを考慮して適宜設定することができる。なかでも、厚さとして5〜300μmであることが好ましく、塗布量としては、固形分量で1〜200g/mであることが好ましい。塗布量が5μmより薄い、あるいは、1g/mより少ないと、接着強度が不足する場合がある。また、300μmより厚い、あるいは、200g/mをこえると、得られる合成皮革の風合いが硬くなる傾向にある。接着剤は、全面に塗布してもよいし、必要に応じてドット状などに塗布してもよい。
【0059】
このようにして得られた合成皮革は、更に、表面処理、揉み加工などの後加工を必要に応じて行うことができる。
【0060】
また、本発明の合成皮革は、曲面半径10mmの摩擦子を用い、押圧荷重1kgf、摩擦ストローク140mm、摩擦往復速度60回/分の条件下での平面摩耗試験において、5,000回以上の摩擦に耐え得る(破断しない)ものであることが好ましい。さらには、6,000回以上の摩擦に耐え得るものであることがより好ましい。
【0061】
また、本発明の合成皮革は、温度110℃で100時間の乾熱試験後および温度70℃、湿度95%で100時間の湿熱試験後の平面摩耗試験において、それぞれ2500回以上の摩擦に耐え得るものであることが好ましい。さらには、3000回以上の摩擦に耐えるものであることが好ましい。
【0062】
また、本発明の合成皮革は、JIS K6772の条件下における剥離試験において、樹脂膜の剥離強度が4N/10mm以上であることが好ましい。
【0063】
本発明の合成皮革は、優れた磨耗耐久性を有しているため、自動車内装材、インテリア、衣料等の素材として好適に用いられる。
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。実施例中の%および部は、断りのない限り重量に関するものである。
【0065】
[製造例1(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、植物由来のセバシン酸系ポリオール1(豊国製油(株)製、HS2H−200S、数平均分子量2,000、成分:セバシン酸/ヘキサンジオール)50gをDMF270gに溶解した。この溶液にMDI31gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/5)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール9.0gを添加し、60℃で3時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分56%(固形分中比率)から構成される表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液1(数平均分子量:138,500)を得た。
【0066】
[製造例2(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、植物由来のセバシン酸系ポリオール2(豊国製油(株)製、HS2F−305S、数平均分子量3,100、成分:セバシン酸、イソフタル酸/ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール)50gをDMF228gに溶解した。この溶液にMDI20gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/5)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得たついで、1,4−ブタンジオール5.8gを添加し、60℃で3時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分66%(固形分中比率)から構成される表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液2(数平均分子量:133,400)を得た。
【0067】
[製造例3(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、植物由来のセバシン酸系ポリオール1(豊国製油(株)製、HS2H−200S、数平均分子量2,000、成分:セバシン酸/ヘキサンジオール)50gをDMF220gに溶解した。この溶液にMDI19gを添加し(ポリオール/イソシアネート当量比:1/3)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール4.5gを添加し、60℃で3時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分68%(固形分中比率)から構成される表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液3(数平均分子量:139,600)を得た。
【0068】
[製造例4(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、植物由来のセバシン酸系ポリオール3(豊国製油(株)製、HS2P−103S、数平均分子量1,000、成分:セバシン酸/プロパンジオール、植物由来率100%)20gとアジピン酸系ポリオール((株)クラレ製、P−2010、数平均分子量2000)60gをDMF482gに溶解した。この溶液にMDI63gを添加し(ポリオール/イソシアネート当量比:1/5)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール18gを添加し、60℃で3時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分12%(固形分中比率)から構成される表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液4(数平均分子量:140,100)を得た。
【0069】
[製造例5(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、植物由来のセバシン酸系ポリオール1(豊国製油(株)製、HS2H−200S、数平均分子量2,000、成分:セバシン酸/ヘキサンジオール)50gをDMF174gに溶解した。この溶液にMDI7.5gを添加し(ポリオール/イソシアネート当量比:1/1.2)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール0.45gを添加し、60℃で3時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分86%(固形分中比率)から構成される表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液5(数平均分子量:60,400)を得た。
【0070】
[製造例6(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、アジピン酸系ポリオール((株)クラレ製、P−2010、数平均分子量2,000)50gをDMF270gに溶解した。この溶液にMDI31gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/5)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール9.0gを添加し、60℃で3時間反応させて、石油由来成分100%(固形分中比率)の表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液6(数平均分子量:130,700)を得た。
【0071】
[製造例7(表皮層ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、ひまし油系ポリオール(伊藤製油(株)製、PH−5001、数平均分子量2,500)50gをDMF247gに溶解した。この溶液にMDI25gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/5)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール7.2gを添加し、60℃で3時間反応させて、ひまし油系ポリオール成分61%(固形分中比率)から構成される表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液7(数平均分子量:141,000)を得た。
【0072】
[製造例8(接着剤ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、セバシン酸系ポリオール3(豊国製油(株)製、HS2F−420S、数平均分子量4,000、成分:セバシン酸/分岐ノナンジオール・ネオペンチルグリコール)50gをDMF86gに溶解した。この溶液にMDI6.3gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/2)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール1.1gを添加し、60℃で1.5時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分87%(固形分中比率)から構成される接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液1(数平均分子量:61,200)を得た。
【0073】
[製造例9(接着剤ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、セバシン酸系ポリオール4(豊国製油(株)製、HSPP−830S、数平均分子量8,000、成分:セバシン酸/プロピレングリコール)50gをDMF80gに溶解した。この溶液にMDI3.1gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/2)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール0.56gを添加し、60℃で1.5時間反応させて、セバシン酸系ポリオール成分93%(固形分中比率)から構成される接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液2(数平均分子量:58,300)を得た。
【0074】
[製造例10(接着剤ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、アジピン酸系ポリオール((株)クラレ製、P−2010、数平均分子量2,000)50gをDMF98gに溶解した。この溶液にMDI13gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/2)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール2.3gを添加し、60℃で1.5時間反応させて、石油由来成分100%(固形分中比率)の接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液3(数平均分子量:55,600)を得た。
【0075】
[製造例11(接着剤ポリウレタン樹脂)]
乾燥窒素雰囲気下にて、ひまし油系ポリオール(伊藤製油(株)製、PH−5001、数平均分子量2,500)50gをDMF93gに溶解した。この溶液にMDI10gを添加し(ポリオール/イソシアネートモル比:1/2)、70℃で2時間反応させて、プレポリマーを得た。ついで、1,4−ブタンジオール1.8gを添加し、60℃で1.5時間反応させて、ひまし油系ポリオール成分81%(固形分中比率)から構成される接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液4(数平均分子量:59,400)を得た。
【0076】
[実施例1]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液1>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0077】
得られた表皮層樹脂配合液を、コンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように離型紙上に塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0078】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液1>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、接着剤ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0079】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されているポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、コンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して、本発明の合成皮革を得た。
【0080】
[実施例2]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液2>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0081】
得られた表皮層樹脂配合液を、コンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように離型紙上に塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0082】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液2>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、接着剤ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0083】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されているポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、コンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して、本発明の合成皮革を得た。
【0084】
[実施例3]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液3>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0085】
得られた表皮層樹脂配合液を、コンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように離型紙上に塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0086】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液1>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、接着剤ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0087】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されたポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、コンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して、本発明の合成皮革を得た。
【0088】
[実施例4]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液4>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0089】
得られた表皮層樹脂配合液を、コンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように離型紙上に塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0090】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液1>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0091】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されているポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、コンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して、本発明の合成皮革を得た。
【0092】
[実施例5]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液1>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0093】
得られた表皮層樹脂配合液を、あらかじめカレンダー処理を施したポリエステルトリコット布上にコンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、本発明の合成皮革を得た。樹脂膜は、無孔質であった。
【0094】
[比較例1]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液5>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0095】
得られた表皮層樹脂配合液を、コンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように離型紙上に塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0096】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液1>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0097】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されているポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、コンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して合成皮革を得た。
【0098】
[比較例2]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液6>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0099】
得られた表皮層樹脂配合液を、離型紙上にコンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0100】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液3>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、接着剤ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0101】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されているポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して合成皮革を得た。
【0102】
[比較例3]
得られた<表皮層ポリウレタン樹脂25%溶液7>100部、DMF20部、シリコーン化合物(信越シリコーン(株)製、KP−359)2部、カーボンブラック顔料(DIC(株)製、DIALAK BLACK L−1826)10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)2部を攪拌混合し、ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0103】
得られた表皮層樹脂配合液を、離型紙上にコンマコーターにて乾燥後の厚さが20μmとなるように塗布し、乾燥機にて120℃で2分間乾燥して、ポリウレタン樹脂膜(表皮層、無孔質)を得た。
【0104】
次に、<接着剤ポリウレタン樹脂40%溶液4>100部、MEK10部、硬化剤(DIC(株)製、バーノック DN−950)10部、硬化促進剤(DIC(株)製、クリスボン アシスターT−81E)2部を攪拌混合し、接着剤ポリウレタン樹脂配合液を得た。
【0105】
得られた接着剤樹脂配合液を、離型紙上に形成されているポリウレタン樹脂膜(表皮層)上に、コンマコーターにて乾燥後の厚さが150μmとなるように塗布した。ついで、乾燥機にて120℃で30秒間予備乾燥を行い、半乾燥状態でポリエステルトリコット布に120℃、圧力3.0kg/cmの条件下で貼り合わせた。さらに、この積層体を80℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥離して合成皮革を得た。
【0106】
得られたポリウレタン樹脂および合成皮革について、次の通り性能評価を行った。
【0107】
[ポリウレタン樹脂の皮膜物性]
試験用試料の作成:表皮層ポリウレタン樹脂の濃度が15%となるように調整した樹脂溶液を離型紙上に150μm厚で塗布し、120℃の循風乾燥機で3分間乾燥させた後に放冷した。塗膜を離型紙から剥がし、厚さ20μmの塗膜を得た。
皮膜物性の測定方法:JIS L 1096に基づいて、幅25mmの試験片を、つかみ間隔50mm、引張速度150mm/minで伸張させることにより、100%モジュラス、破断時強度および破断時伸度を測定した。測定には(株)島津製作所製オートグラフAG−ISを使用した。
【0108】
[耐摩耗性試験]
厚さ3mmのポリウレタンフォーム(ブリジストン化成(株)製)を布帛の裏側に貼り合わせ、幅70mm、長さ300mmに試料を切断した。この試料片表層上140mmの間を、押圧荷重1kgf、摩耗往復速度60回/分、摩擦回数5,000回の試験条件で下記の5段階の級判定で、耐摩耗性の評価を行った。測定には、(株)大栄科学精器製作所製、平面摩耗試験機(T−TYPE)を使用し、曲面半径(R)10mmの摩擦子に綿帆布(6号)を取り付けて摩耗試験を行った。
【0109】
(耐摩耗性判定基準)
5級:試料片表面の摩耗劣化は全く認められない。
4級:試料片表面の摩耗劣化は認められるが、目立ちが少ない。
3級:試料片表面の摩耗劣化は認められるが、樹脂膜の破れは認められない。
2級:試料片表面に樹脂膜の破れが認められる。
1級:試料片の樹脂膜の破れが著しい、または摩擦5,000回未満で試料片が破断。
【0110】
[耐乾熱試験]
温度110℃の恒温槽に100時間静置したのち、前述の条件で2,500回の摩耗試験を行った。判定は下記の5段階の級判定で評価を行った。
【0111】
[耐湿熱試験]
温度70℃、湿度90%の恒温恒湿槽に100時間静置したのち、前述の条件で2,500回の摩耗試験を行った。判定は下記の5段階の級判定で評価を行った。
【0112】
(乾熱試験および湿熱試験後の耐摩耗性判定基準)
5級:試料片表面の摩耗劣化は全く認められない。
4級:試料片表面の摩耗劣化は認められるが、目立ちが少ない。
3級:試料片表面の摩耗劣化は認められるが、樹脂膜の破れは認められない。
2級:試料片表面に樹脂膜の破れが認められる。
1級:試料片の樹脂膜の破れが著しい、または摩擦2,500回未満で試料片が破断。
【0113】
[剥離強度試験]
ホットメルトテープ(サン化成(株)製)を表皮面上に置いて120℃で加熱し、ホットメルトテープを接着した。十分に冷えた後に、幅30mm、長さ150mmとなるように試料を切断した。この試料の表皮と基布とを末端から50mm剥がし、JIS K 6772に基づいて、つかみ間隔50mm、引張速度200mm/minの条件で剥離強度を測定した。測定には、(株)島津製作所製オートグラフAG−ISを使用した。
【0114】
各種評価結果を表1、表2に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
(評価)
実施例1〜5で得られたセバシン酸系ポリオール成分を原料とした合成皮革は、靭性(耐摩耗性)や剥離強度、耐熱性、耐湿熱性に優れ、風合いも良好であった。
【0118】
一方、比較例1は、表皮層ポリウレタン樹脂のセバシン酸系ポリオール成分が多すぎ、さらには、ポリオール/イソシアネート当量比が1/1.2と大きいため、靭性を有する表皮層は得られず、本発明が目的とする耐摩耗性を示す合成皮革を得ることができなかった。
【0119】
比較例2は、石油系成分であるアジピン酸系ポリオールを使用しており、耐湿熱性において、実施例1〜5で得られた合成皮革に劣る結果であった。
【0120】
比較例3は、一般的にひまし油由来のポリオールとして市販されているリシノレイン酸から得られるポリオールを使用しているため、靭性や風合いにおいては遜色ないものの、耐熱性においては実施例1〜5で得られた合成皮革に劣る結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオール成分5〜80重量%から構成されるポリウレタン樹脂を、表皮剤として布帛の少なくとも一部に有してなる合成皮革。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、少なくともポリオール成分、イソシアネート成分および鎖伸長剤成分からなり、該ポリオール成分とイソシアネート成分とが、モル比でポリオール/イソシアネート=1/7〜1/2である請求項1記載の合成皮革。
【請求項3】
前記セバシン酸系ポリオール成分が、セバシン酸とジオールとを反応させてなり、数平均分子量が500〜5,000である請求項1または2記載の合成皮革。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂から形成された皮膜の物性が、100%モジュラス:3〜15MPa、破断時強度:15〜70MPa、破断時伸度:200〜700%を満たすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の合成皮革。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂からなる樹脂膜を、植物由来のセバシン酸から得られるセバシン酸系ポリオール成分50〜98重量%から構成されるポリウレタン樹脂からなる接着剤を介して、布帛に積層している請求項1〜4のいずれかに記載の合成皮革。
【請求項6】
前記接着剤として用いられるポリウレタン樹脂が、少なくともポリオール成分とイソシアネート成分からなり、該ポリオール成分とイソシアネート成分とが、モル比でポリオール/イソシアネート=1/3.5〜1/0.5である請求項5記載の合成皮革。
【請求項7】
前記接着剤として用いられるポリウレタン樹脂を構成するセバシン酸系ポリオール成分が、セバシン酸とジオールとを反応させなり、数平均分子量が1,000〜12,000である請求項5または6記載の合成皮革。
【請求項8】
前記合成皮革が、平面摩耗試験において、曲面半径10mmの摩擦子を用い、押圧荷重1kgf、摩擦ストローク140mm、摩擦往復速度60回/分の条件下で、5,000回以上の摩擦に耐え得る、請求項1〜7のいずれかに記載の合成皮革。
【請求項9】
前記合成皮革が、温度110℃で100時間の乾熱試験後および温度70℃、湿度95%で100時間の湿熱試験後の平面摩耗試験において、それぞれ2,500回以上の摩擦に耐え得る、請求項1〜8のいずれかに記載の合成皮革。
【請求項10】
前記合成皮革の表皮層の剥離強度が、JIS K6772の条件下における剥離試験において4N/10mm以上である、請求項1〜9のいずれかに記載の合成皮革。

【公開番号】特開2011−241528(P2011−241528A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94467(P2011−94467)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】