説明

回生システム

【課題】回生の効率をより高くする。
【解決手段】発電機により電力を発生させることで運動エネルギを減少させると共に、該電力をバッテリに蓄えさせる回生制御手段と、内燃機関の排気通路に備えられ排気を浄化する排気浄化装置と、電力の供給により発熱して排気浄化装置の温度を上昇させる発熱体と、排気浄化装置の温度を上昇させることで該排気浄化装置の能力を回復させる再生手段と、再生手段により排気浄化装置の浄化能力が回復されているときであって、且つ、回生制御手段により電力をバッテリに蓄えさせているときに、発熱体に電力を供給する減速時制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタよりも上流側に電気加熱式触媒を備え、該フィルタの温度を上昇させて該フィルタから粒子状物質(以下、PMともいう。)を除去することができる。このようにフィルタからPMを除去することをフィルタの再生という。そして、フィルタの再生中に内燃機関の低負荷運転が継続したときに、電気加熱式触媒へ電力を供給しつつ該電気加熱式触媒へ燃料を添加することで排気の温度を上昇させ、フィルタの温度を上昇させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、電気加熱式触媒へ電力を供給することにより、バッテリの残容量(SOC)が小さくなる。このため、バッテリへ充電する必要が生じて、燃費が悪化する虞がある。ここで、バッテリの残容量に応じてバッテリの充電のし易さ(充電受入性)が変わるため、バッテリの状態によって、回生時に充電される電力が変わる。また、回生時に発電される電力量も、システムの状態によって変わる。すなわち、回生時の効率が低下する虞がある。さらに、フィルタの再生中に減速状態となると、触媒が過熱する虞があるため、吸気通路に設けられているスロットルが開かれることがある。このようにスロットルが開かれると、温度の低い排気がフィルタを通過するため、フィルタの温度が過度に低下する虞がある。そして、フィルタの温度を再度上昇させようとすると、フィルタの再生に時間がかかると共に、多くの燃料及び多くの電力を必要とするため、燃費が悪化する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−106685号公報
【特許文献2】特開2009−144513号公報
【特許文献3】特開平7−247825号公報
【特許文献4】特開2010−268639号公報
【特許文献5】特開2000−027631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回生の効率をより高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために本発明による回生システムは、
運動エネルギを電気エネルギに変換することで電力を発生させる発電機と、
前記電力を蓄えるバッテリと、
前記発電機により電力を発生させることで運動エネルギを減少させると共に、該電力をバッテリに蓄えさせる回生制御手段と、
内燃機関の排気通路に備えられ排気を浄化する排気浄化装置と、
電力の供給により発熱して前記排気浄化装置の温度を上昇させる発熱体と、
前記排気浄化装置の温度を上昇させることで該排気浄化装置の能力を回復させる再生手段と、
前記再生手段により前記排気浄化装置の浄化能力が回復されているときであって、且つ、前記回生制御手段により電力をバッテリに蓄えさせているときに、前記発熱体に電力を
供給する減速時制御手段と、
を備える。
【0007】
排気浄化装置は、たとえば、排気中のPMを捕集するフィルタを挙げることができる。このフィルタは、排気の温度を上昇させることでPMを酸化させて除去することができる。この場合、再生手段は、フィルタの再生を行う。また、排気浄化装置には、排気中のNOxを吸蔵する吸蔵還元型NOx触媒(以下、NOx触媒という。)を挙げることができる
。NOx触媒には燃料に含まれる硫黄成分もNOxと同様に吸蔵される。このように吸蔵された硫黄成分はNOxよりも放出されにくく、NOx触媒内に蓄積される。これを硫黄被毒という。この硫黄被毒によりNOx触媒でのNOx浄化率が低下するため、適宜の時期に硫黄被毒から回復させる硫黄被毒回復処理を施す必要がある。この硫黄被毒回復処理は、NOx触媒を高温にし、且つ理論空燃比またはリッチ空燃比の排気をNOx触媒に流通させて行われる。この場合、再生手段は、硫黄被毒回復を行う。なお、再生手段は、発熱体により排気浄化装置の温度を上昇させてもよいし、発熱体を用いずに排気浄化装置の温度を上昇させてもよい。
【0008】
発熱体は、排気浄化装置の上流側の排気通路に備えられていてもよく、排気浄化装置と一体化していてもよい。また、発熱体に触媒を担持していてもよい。発熱体に触媒を担持させることで排気浄化装置としてもよい。さらに、発熱体にフィルタの機能をもたせてもよい。発熱体にフィルタの機能を持たせることで排気浄化装置としてもよい。発熱体に触媒を担持し、該発熱体に通電するときに、該発熱体の上流側から還元剤を供給して発熱させてもよい。
【0009】
回生制御手段は、たとえば、内燃機関の減速時、または該内燃機関が搭載される車両の減速時において、発電機による発電を行い、且つ、バッテリに充電する。
【0010】
ここで、再生手段により排気浄化装置の能力の回復が行われているときに、途中で排気浄化装置の温度が低下してしまうと、温度を再度上昇させるために多くのエネルギを必要とするため、燃費が悪化する。これに対し、発熱体に電力を供給することにより、排気浄化装置の温度が低下することを抑制できる。これにより、燃費の悪化を抑制できる。
【0011】
また、回生制御手段によりバッテリを充電するときには、充電のみ行うよりも、それと同時に放電を行うほうが、抵抗が低減するために、回生時に発生する電力量(以下、回生電力量ともいう。)が大きくなる。これにより、回生の効率が高くなる。すなわち、回生制御手段により電力をバッテリに蓄えさせるのと、発電機またはバッテリから発熱体へ電力を供給するのと、を同時に行うほうが、別々に行うよりも、回生の効率が高くなる。
【0012】
したがって、再生手段により排気浄化装置の浄化能力が回復されているときであって、且つ、回生制御手段により電力をバッテリに蓄えさせているときに、発熱体に電力を供給すると、排気浄化装置の温度低下を抑制しつつ、回生電力量を増加させることができる。これにより、回生の効率を高くすることができる。また、排気浄化装置の温度低下を抑制することで、該排気浄化装置の能力を回復させるために要する時間を短縮することができるので、システム全体としてのエネルギの消費量を低減させることができる。このため、燃費を向上させることができる。
【0013】
また、本発明においては、電力を供給することで発熱して前記内燃機関の温度を上昇させるヒータと、
前記内燃機関の冷間時において、前記減速時制御手段により発熱体に電力を供給するときには、前記ヒータへの電力の供給を禁止する禁止手段と、
を備えることができる。
【0014】
ヒータは、たとえば内燃機関の潤滑油の温度を上昇させることにより、内燃機関の温度を上昇させる。また、内燃機関の冷却水の温度を上昇させることにより、内燃機関の温度を上昇させてもよい。内燃機関の冷間時において、該内燃機関の温度を上昇させることにより、燃費を向上させることができる。しかし、禁止手段は、減速時制御手段により発熱体に電力を供給するときには、ヒータへの電力の供給を禁止する。そうすると、その分、燃費が悪化し得るが、その分、排気の温度が上昇する。そして、ヒータへの電力の供給を禁止することにより、発熱体への電力の供給量を増加させることができる。これにより、フィルタの再生に要する時間を短縮させることができるので、システム全体としては燃費を向上させることができる。すなわち、ヒータへ電力を供給することによる燃費の向上よりも、フィルタの再生を速やかに完了することによる燃費の向上のほうが大きいため、フィルタの再生を優先させることで、燃費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回生の効率をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係る内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
【図2】減速よりも約300秒前に、バッテリの放電を行ったときのバッテリの残容量(SOC)及び機関回転数の推移を示したタイムチャートである。
【図3】減速の直前に、バッテリの放電を行ったときのバッテリの残容量(SOC)及び機関回転数の推移を示したタイムチャートである。
【図4】減速の最中に、バッテリの放電を行ったときのバッテリ21の残容量(SOC)及び機関回転数の推移を示したタイムチャートである。
【図5】図2,3,4の場合の夫々について回生電力量を示した図である。
【図6】実施例1に係る制御フローを示したフローチャートである。
【図7】実施例2に係る内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。
【図8】実施例2に係る制御フローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る回生システムの具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例に係る内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒を有する水冷式の4サイクル・ディーゼルエンジンである。
【0019】
内燃機関1には、排気通路2が接続されている。この排気通路2の途中には、電気加熱式触媒3が備えられている。
【0020】
電気加熱式触媒3は、電気抵抗となって、通電により発熱する材質の触媒担体に、酸化機能を有する触媒が担持されている。触媒担体は、排気の流れる方向に伸び且つ排気の流れる方向と垂直な断面がハニカム状をなす複数の通路を有している。この通路を排気が流通する。また、触媒は、たとえば酸化触媒、三元触媒、吸蔵還元型NOx触媒、選択還元
型NOx触媒などを挙げることができる。なお、本実施例においては電気加熱式触媒3が
、本発明における発熱体に相当する。また、発熱体よりも下流側に触媒を備えることで電気加熱式触媒3としてもよい。
【0021】
そして、電気加熱式触媒3よりも下流側の排気通路2には、排気中のPMを捕集するフィルタ4が備えられている。このフィルタ4には、たとえば酸化触媒、三元触媒、吸蔵還
元型NOx触媒、選択還元型NOx触媒などを担持していてもよい。なお、本実施例においてはフィルタ4が、本発明における排気浄化装置に相当する。また、電気加熱式触媒3とフィルタ4とを一体化させてもよい。電気加熱式触媒3の触媒担体にフィルタ4の機能を持たせてもよい。
【0022】
また、電気加熱式触媒3よりも上流側の排気通路2には、排気中に還元剤を噴射する噴射弁5が取り付けられている。噴射弁5は、後述するECU10からの信号により開弁して排気中へ還元剤を噴射する。還元剤には、たとえば内燃機関1の燃料(軽油)が用いられるが、これに限らない。
【0023】
噴射弁5から排気通路2内へ噴射された燃料は、電気加熱式触媒3において反応する。このときに発生する熱によりフィルタ4の温度を上昇させることができる。なお、噴射弁5から噴射させる還元剤量は、たとえば内燃機関1の運転状態(機関回転数及び燃料噴射量)に基づいて決定される。還元剤量と機関回転数と機関負荷との関係は予めマップ化しておくことができる。
【0024】
また、内燃機関1から未燃燃料を排出させることで還元剤を供給することもできる。すなわち、気筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁を備え、該筒内噴射弁から主噴射を行なった後の膨張行程中若しくは排気行程中に再度燃料を噴射する副噴射(ポスト噴射)を行なったり、筒内噴射弁からの燃料噴射時期を遅らせたりすることにより、内燃機関1から還元剤を多く含むガスを排出させることもできる。なお、還元剤を用いることなく、電気加熱式触媒3に通電することでフィルタ4の温度を上昇させることもできる。
【0025】
また、フィルタ4よりも下流の排気通路2には、排気の空燃比を検出する空燃比センサ6及び排気の温度を検出する温度センサ7が取り付けられている。
【0026】
また、内燃機関1には、発電機20が設けられている。この発電機20は、内燃機関1のクランクシャフトから運動エネルギを得て発電を行う。発電機20は、電線を介してバッテリ21およびバッテリ31に接続されている。また、発電機20及びバッテリ21は、電線を介して電気加熱式触媒3に接続されている。そして、発電機20、バッテリ21、バッテリ31、および電気加熱式触媒3は、夫々電気的に接地されている。バッテリ21は、たとえば起電力36ボルトのバッテリとしてもよい。また、起電力12ボルトのバッテリを、3個直列に接続してバッテリ21としてもよい。一方、バッテリ31は、起電力12ボルトのバッテリである。夫々のバッテリ21,31には、電気的な負荷が接続される。そして、バッテリ21の電気的な負荷として電気加熱式触媒3が接続される。なお、バッテリの数および起電力はこれらに限らない。また、バッテリ31はなくてもよい。
【0027】
そして、発電機20から、電気加熱式触媒3及びバッテリ21,31に向かう電線の途中には、第一スイッチ22が設けられている。この第一スイッチ22は、発電機20をバッテリ21またはバッテリ31の何れか一方に接続させる。すなわち、第一スイッチ22がONのときには、バッテリ21に電力が供給され、バッテリ31には電力が供給されない。一方、第一スイッチ22がOFFのときには、バッテリ31に電力が供給され、バッテリ21及び電気加熱式触媒3には電力が供給されない。そして、第一スイッチ22のON−OFFに合わせて、後述するECU10により発電機20の電圧が変更される。一方、発電機20及びバッテリ21から、電気加熱式触媒3へ向かう電線の途中には、第二スイッチ23が設けられている。第二スイッチ23は、ONのときに電気を通し、OFFのときに電気を通さない。第二スイッチ23がOFFのときには、発電機20からの電力、及び、バッテリ21からの電力が、電気加熱式触媒3に供給されない。
【0028】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御
ユニットであるECU10が併設されている。このECU10は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態を制御する。
【0029】
また、ECU10には、上記センサの他、運転者がアクセルペダル11を踏み込んだ量に応じた電気信号を出力し機関負荷を検知するアクセル開度センサ12、および機関回転数を検知するクランクポジションセンサ13が電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU10に入力されるようになっている。
【0030】
一方、ECU10には、噴射弁5、発電機20、第一スイッチ22、第二スイッチ23が電気配線を介して接続されており、該ECU10によりこれらの機器が制御される。たとえば、内燃機関1または該内燃機関1が搭載される車両の減速時には、第一スイッチ22をONとしつつ発電機20に発電を行わせる回生制御を行う。この回生制御によりバッテリ21に充電される。また、減速時に第一スイッチ22をOFFとしつつ発電機20により発電を行わせることで、バッテリ31に充電されることもできる。そして、ECU10は、第一スイッチ22のON−OFFに合わせて、発電機20の電圧を変更する。なお、本実施例では回生制御を行うECU10が、本発明における回生制御手段に相当する。
【0031】
そして、本実施例においては噴射弁5から還元剤を供給することにより、電気加熱式触媒3で還元剤を反応させ、この反応熱によりフィルタ4の温度を上昇させる。そして、フィルタ4の温度を、PMが酸化される温度まで上昇させることにより、フィルタ4からPMを除去する。すなわち、フィルタ4の再生を行う。このときに、空燃比センサ6により検出される空燃比に基づいて、噴射弁5から噴射する還元剤量をフィードバック制御してもよい。また、温度センサ7により検出される排気の温度に基づいて、噴射弁5から噴射する還元剤量をフィードバック制御してもよい。なお、本実施例においてはフィルタ4の再生を行うECU10が、本発明における再生手段に相当する。
【0032】
フィルタ4の再生は、該フィルタ4に捕集されているPM量が所定量に達したときに行われる。たとえば、フィルタ4に流入するPM量と機関回転数及び機関負荷とは相関関係にあるため、機関回転数及び機関負荷から算出されるPM量を積算しておき、該積算値が所定量に達したときにフィルタ4の再生を行う。また、フィルタ4よりも上流側と下流側との差圧を測定し、該差圧が閾値に達した場合にフィルタ4の再生を行ってもよい。さらに、所定の距離を走行する毎にフィルタ4の再生を行ってもよい。
【0033】
なお、フィルタ4の再生時に電気加熱式触媒3が活性状態にない場合には、該電気加熱式触媒3へ電力を供給する。これにより、電気加熱式触媒3の温度を上昇させて活性化させることができる。そして、電気加熱式触媒3が活性化した後、噴射弁5から還元剤を噴射する。
【0034】
また、本実施例では、フィルタ4の再生中に、内燃機関1または該内燃機関1を搭載する車両が減速状態となった場合には、電気加熱式触媒3へ電力を供給する。そうすると、減速時にフィルタ4に流入する排気の温度が低下することを抑制できる。さらに、回生により得られる電力量を増加させることができるので、回生の効率を向上させることができる。
【0035】
ここで、バッテリ21の放電時期と充電時期とが、バッテリ21の残容量(SOC)および回生により得られる電力量(回生電力量)に与える影響について考える。図2は、減速よりも約300秒前に、バッテリ21の放電を行ったときのバッテリ21の残容量(SOC)及び機関回転数の推移を示したタイムチャートである。図3は、減速の直前に、バッテリ21の放電を行ったときのバッテリ21の残容量(SOC)及び機関回転数の推移を示したタイムチャートである。図4は、減速の最中に、バッテリ21の放電を行ったと
きのバッテリ21の残容量(SOC)及び機関回転数の推移を示したタイムチャートである。夫々、「放電」で示される期間においてバッテリ21の放電が行われ、「充電」で示される期間においてバッテリ21の充電が行われている。放電は、たとえば電気加熱式触媒3に電力を供給することに相当する。また、充電は、減速時において発電機20により発電された電力を充電することに相当する。なお、SOCは、満充電容量(Ah)に対する残容量(Ah)の割合を示している。そして、図2,3,4は、機関回転数を同じように変化させている。また、放電時には、1kWの電力を25秒間放電している。
【0036】
このように、図2,3,4では、放電される電力量が同じであるが、充電完了時のバッテリ21のSOCが異なる。また、SOCの上昇量も異なる。すなわち、充電完了時のSOCは、図4に示した場合が最も大きく、図2に示した場合が最も小さくなる。一方、充電時のSOCの上昇量は、図3に示した場合が最も大きい。
【0037】
ここで、図5は、図2,3,4の場合の夫々について回生により得られる電力量(回生電力量)を示した図である。Aは図2の場合、Bは図3の場合、Cは図4の場合を示している。図4の場合(C)には、充電時に同時に放電を行うことにより抵抗が低減するため、回生電力量が増加する。また、図2の場合(A)と図3の場合(B)とを比較すると、図3の場合のほうが、回生電力量が大きい。これは、充電の直前に放電が行われると、バッテリ21の電解液に濃度分布が生じるためと推測できる。
【0038】
したがって、発電機20による回生電力量を増加させるためには、回生時に合わせて放電を行うとよい。すなわち、回生時に合わせて放電を行うことにより、回生効率を向上させることができる。また、バッテリ21の充電量を増加させるためには、バッテリ21の充電直前に放電を行うのがよい。すなわち、バッテリ21の充電直前に放電を行うことにより、充電受入性を高めることができる。
【0039】
そこで、本実施例では、回生の効率を向上させるために、フィルタ4の再生時で且つ減速時に、電気加熱式触媒3に電力を供給する。これにより、触媒の温度低下の抑制が可能となり、フィルタ4の再生に要する時間を短くすることができる。また、回生電力量を増加させることができる。このため、システム全体として燃費を向上させることができる。
【0040】
図6は、本実施例に係る制御フローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ECU10により所定の時間毎に実行される。
【0041】
ステップS101では、フィルタ4の再生中であるか否か判定される。フィルタ4の再生中には、フィルタ4の温度をPMが酸化される温度まで上昇させている途中も含む。ステップS101で肯定判定がなされた場合にはステップS102へ進み、否定判定がなされた場合には、ステップS104へ進む。
【0042】
ステップS102では、減速中であるか否か判定される。すなわち、回生による発電が可能であるか否か判定される。ステップS102で肯定判定がなされた場合にはステップS103へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS104へ進む。
【0043】
ステップS103では、発電機20により発電が行われ、このときの電力が電気加熱式触媒3及びバッテリ21へ供給される。すなわち、第一スイッチ22及び第二スイッチ23がONとされる。これにより、電気加熱式触媒3が発熱するので、フィルタ4の温度低下が抑制される。なお、本実施例においてはステップS103を処理するECU10が、本発明における減速時制御手段に相当する。
【0044】
ステップS104では、電気加熱式触媒3への電力の供給が停止される。すなわち、第
一スイッチ22がONとされても、第二スイッチ23はOFFとされる。ただし、フィルタ4の再生中において電気加熱式触媒3が活性状態にない場合には、第二スイッチ23をONとして、該電気加熱式触媒3へ電力を供給してもよい。
【0045】
以上説明したように本実施例によれば、回生電力量を増加させることができるため、回生時(発電時)の効率を向上させることができる。このため、燃費の悪化を抑制できる。また、フィルタ4の再生に要する時間を短くすることができるため、これによっても燃費の悪化を抑制できる。
【0046】
なお、本実施例では、フィルタ4に代えて吸蔵還元型NOx触媒を備えていてもよい。
この場合、本実施例に係るフィルタの再生を、吸蔵還元型NOx触媒の硫黄被毒回復に置
き換えれば、本実施例を同様にして適用することができる。
【実施例2】
【0047】
図7は、本実施例に係る内燃機関とその排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1と異なる点について説明する。なお、同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
本実施例では、電気的な負荷として、電気加熱式触媒3と並列にオイルヒータ24が接続されている。オイルヒータ24は、電力を供給することにより発熱して内燃機関1の潤滑油を加熱する。発電機20及びバッテリ21から第二スイッチ23に至る電線の途中からオイルヒータ24へ接続される電線が分岐され、該電線の途中に第三スイッチ25が設けられている。第三スイッチ25も、第一スイッチ22及び第二スイッチ23と同様にして、ECU10により制御される。内燃機関1の冷間時にオイルヒータ24へ電力を供給すると、潤滑油の温度の上昇により、燃焼状態が改善される。また、潤滑油の粘度が低下するため、損失を低減させることができる。これらにより、燃費を向上させることができる。なお、本実施例ではオイルヒータ24が、本発明におけるヒータに相当する。
【0049】
しかし、本実施例では、内燃機関1の冷間時であっても、減速中で且つフィルタ4の再生時には、オイルヒータ24を停止させる。すなわち、オイルヒータ24への電力の供給を禁止する。そうすると、潤滑油の温度が上昇しないために燃費が悪化するが、その分、排気の温度が上昇するため、フィルタ4の温度低下を抑制できる。そして、オイルヒータ24へ供給する予定であった電力を電気加熱式触媒3へ供給する。これにより、電気加熱式触媒3における消費電力が増加して、フィルタ4の温度を速やかに上昇させることができる。そうすると、フィルタ4の再生時間を短縮することができるため、噴射弁5から添加する燃料量を低減することができる。そして、オイルヒータ24を停止させることにより燃費が悪化する分よりも、フィルタ4の再生に要する時間を短縮することで燃費が向上する分のほうが大きい。したがって、システム全体としては、燃費を向上させることができる。
【0050】
図8は、本実施例に係る制御フローを示したフローチャートである。本ルーチンは、ECU10により所定の時間毎に実行される。なお、図6に示したフローと同じ処理がなされるステップについては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
ステップS102で肯定判定がなされた場合にステップS201へ進む。ステップS201では、内燃機関1の冷間時であるか否か判定される。例えば、潤滑油または冷却水の温度が閾値よりも低ければ、内燃機関1の冷間時であると判定される。ここでいう閾値は、内燃機関1の暖機が完了する温度として予め設定しておく。そして、ステップS201で肯定判定がなされた場合にはステップS202へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS103へ進む。
【0052】
ステップS202では、オイルヒータ24が停止される。内燃機関1の冷間時には通常はオイルヒータ24が作動されるが、ステップS202ではオイルヒータ24を停止させている。これにより、電気加熱式触媒3へ供給する電力を増加させることができる。また、排気の温度を上昇させることができる。このときには、第三スイッチ25がOFFとされる。なお、本実施例ではステップS202を処理するECU10が、本発明における禁止手段に相当する。
【0053】
このようにして、フィルタ4の再生を速やかに完了することができるため、システム全体として燃費を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 内燃機関
2 排気通路
3 電気加熱式触媒
4 フィルタ
5 噴射弁
6 空燃比センサ
7 温度センサ
10 ECU
11 アクセルペダル
12 アクセル開度センサ
13 クランクポジションセンサ
20 発電機
21 バッテリ
22 第一スイッチ
23 第二スイッチ
24 オイルヒータ
25 第三スイッチ
31 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動エネルギを電気エネルギに変換することで電力を発生させる発電機と、
前記電力を蓄えるバッテリと、
前記発電機により電力を発生させることで運動エネルギを減少させると共に、該電力をバッテリに蓄えさせる回生制御手段と、
内燃機関の排気通路に備えられ排気を浄化する排気浄化装置と、
電力の供給により発熱して前記排気浄化装置の温度を上昇させる発熱体と、
前記排気浄化装置の温度を上昇させることで該排気浄化装置の能力を回復させる再生手段と、
前記再生手段により前記排気浄化装置の浄化能力が回復されているときであって、且つ、前記回生制御手段により電力をバッテリに蓄えさせているときに、前記発熱体に電力を供給する減速時制御手段と、
を備える回生システム。
【請求項2】
電力を供給することで発熱して前記内燃機関の温度を上昇させるヒータと、
前記内燃機関の冷間時において、前記減速時制御手段により発熱体に電力を供給するときには、前記ヒータへの電力の供給を禁止する禁止手段と、
を備える請求項1に記載の回生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207558(P2012−207558A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72400(P2011−72400)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】