説明

固体レーザ発振器およびそれに用いられるレーザチャンバ並びにレーザを利用した装置

【課題】固体レーザ発振器において、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスをとることを可能とする。
【解決手段】固体レーザ発振器1およびレーザチャンバ14において、レーザチャンバ14の内壁面14aのレーザロッド10に垂直な断面における断面形状50が、レーザロッド10および励起ランプ12のそれぞれの位置を焦点F1およびF2とする楕円58を基本とした形状であって、この楕円58の長軸x上の少なくとも1つの頂点a1を含む楕円58の一部が減縮した形状であり、内壁面14aのうち上記楕円58の減縮した部分56に対応する部分54が拡散面を構成するものであり、内壁面14aのうち上記減縮した部分56に対応する部分54以外の部分52が反射面を構成するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ励起による固体レーザ発振器およびそれに用いられるレーザチャンバ並びにレーザを利用した装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ランプ励起による固体レーザ発振器において、楕円型のレーザチャンバおよび拡散型のレーザチャンバが知られている。
【0003】
楕円型のレーザチャンバは、例えば図10のような構造を有する(特許文献1)。具体的には、このレーザチャンバ8は、図10に示されるように、ロッド状に加工したレーザロッド81およびこのレーザロッド81を励起する励起ランプ82のそれぞれの位置を焦点として内包する楕円筒形状の集光器83である。そして、その集光器83の内壁面83aは反射面を構成し、一方の焦点にある励起ランプ82から出たすべての励起光が他方の焦点にあるレーザロッド81に集光されるよう構成されている。例えばこのレーザロッド81や励起ランプ82が出す熱を除去するように、例えばレーザチャンバ8内に水が流される。
【0004】
一方、拡散型のレーザチャンバは、例えば図11のような構造を有する(特許文献2)。具体的には、このレーザチャンバ9は、図11に示されるように、レーザロッドを内蔵するための挿通孔92および励起ランプを内蔵するための挿通孔93が形成された透明なガラス部材91と、このガラス部材91の周囲を覆い内壁面が拡散面を構成する長円筒形状の拡散部材94とを備えるものである。
【0005】
そして一般的に、楕円型のレーザチャンバを使用した固体レーザ発振器はエネルギー変換効率が高く、拡散型のレーザチャンバを使用した固体レーザ発振器は小型軽量化が可能であるという利点を有しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−120586号公報
【特許文献2】特開平10−125993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に、前者の固体レーザ発振器は小型軽量化に向かず、後者の固体レーザ発振器はエネルギー変換効率が低いという問題がある。そこで、それぞれの特性のみに特化せず、両方の特性を総合的に勘案してバランスのとれた固体レーザ発振器もあれば望ましい。
【0008】
本発明は上記要望に応えてなされたものであり、固体レーザ発振器において、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスのとれた固体レーザ発振器およびそれに用いられるレーザチャンバを提供することを目的とするものである。
【0009】
また、本発明は、レーザを利用した装置において、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスのとれた装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る固体レーザ発振器は、
レーザロッドと、レーザロッドを励起する励起ランプと、レーザロッドおよび励起ランプを内包する筒形状のレーザチャンバとを備える固体レーザ発振器において、
レーザチャンバの内壁面のレーザロッドに垂直な断面における断面形状が、レーザロッドおよび励起ランプのそれぞれの位置を焦点とする楕円を基本とした形状であって、この楕円の長軸上の少なくとも1つの頂点を含む楕円の一部が減縮した形状であり、
内壁面のうち上記楕円の減縮した部分に対応する部分が拡散面を構成するものであり、
内壁面のうち上記減縮した部分に対応する部分以外の部分が反射面を構成するものであることを特徴とするものである。
【0011】
本明細書において、楕円の部分が「減縮した」とは、内壁面の上記断面形状の面積が当該断面形状の基本となった楕円の面積よりも小さくなるように、楕円の当該部分を規定する線が当該楕円の範囲内で変形したことを意味する。
【0012】
そして、本発明に係る固体レーザ発振器において、上記減縮した部分は、少なくとも、レーザロッド側の領域であって励起ランプ側の焦点を通りレーザロッドに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る固体レーザ発振器において、上記減縮した部分は、少なくとも、励起ランプ側の領域であってレーザロッド側の焦点を通り励起ランプに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る固体レーザ発振器において、楕円全体に対する上記減縮した部分の割合は50%以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る固体レーザ発振器において、レーザロッドはアレキサンドライトであることが好ましい。
【0016】
本発明に係るレーザチャンバは、
固体レーザ発振器に用いられる、レーザロッドおよびレーザロッドを励起する励起ランプを内包する筒形状のレーザチャンバにおいて、
レーザチャンバの内壁面のレーザロッドに垂直な断面における断面形状が、レーザロッドおよび励起ランプのそれぞれの位置を焦点とする楕円を基本とした形状であって、この楕円の長軸上の少なくとも1つの頂点を含む楕円の一部が減縮した形状であり、
内壁面のうち上記楕円の減縮した部分に対応する部分が拡散面を構成するものであり、
内壁面のうち上記減縮した部分に対応する部分以外の部分が反射面を構成するものであることを特徴とするものである。
【0017】
そして、本発明に係るレーザチャンバにおいて、上記減縮した部分は、少なくとも、レーザロッド側の領域であって励起ランプ側の焦点を通りレーザロッドに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係るレーザチャンバにおいて、上記減縮した部分は、少なくとも、励起ランプ側の領域であってレーザロッド側の焦点を通り励起ランプに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るレーザチャンバにおいて、楕円全体に対する上記減縮した部分の割合は50%以下であることが好ましい。
【0020】
本発明に係るレーザを利用した装置は、上記に記載の固体レーザ発振器をレーザ光源として備えることを特徴とするものである。
【0021】
そして、本発明に係るレーザを利用した装置は、
レーザ光源からのレーザ光を測定光として被検体に照射する光照射部と、
光照射部が測定光を照射することにより被検体内で発生した光音響波を検出する電気音響変換部と、
電気音響変換部により検出された光音響波に基づいて光音響画像を生成する画像生成部と、
画像生成部により生成された光音響画像を表示する表示部とを備えることを特徴とするものとすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る固体レーザ発振器およびレーザチャンバは、レーザチャンバの内壁面のレーザロッドに垂直な断面における断面形状が、レーザロッドおよび励起ランプのそれぞれの位置を焦点とする楕円を基本とした形状であって、この楕円の長軸上の少なくとも1つの頂点を含む楕円の一部が減縮した形状であり、内壁面のうち上記楕円の減縮した部分に対応する部分が拡散面を構成するものであり、内壁面のうち上記減縮した部分に対応する部分以外の部分が反射面を構成するものであることを特徴とする。このような構成の下では、従来の楕円型のレーザチャンバが減縮した分、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバが占有する空間を削減することができる。一方、内壁面のうち上記楕円の減縮した部分に対応する部分が反射面のままでは、光路がずれるため当該部分で反射した励起ランプからの光がレーザロッドに集光されにくくなる場合があり得る。しかし本発明では、当該部分を拡散面で構成することにより、多少光路がずれても光がレーザロッドに当たることになる。この結果、固体レーザ発振器において、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスをとることが可能となる。
【0023】
また、本発明に係るレーザを利用した装置は、本発明の固体レーザ発振器を備えたものであるから、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスをとることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の固体レーザ発振器内部の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】実施形態のレーザロッド、励起ランプおよびレーザチャンバを概略的に示す斜視図である。
【図3】実施形態のレーザロッド、励起ランプおよびレーザチャンバを概略的に示す断面図である。
【図4】レーザチャンバの他の例を概略的に示す断面図である。
【図5】レーザチャンバの他の例を概略的に示す断面図である。
【図6】レーザチャンバの他の例を概略的に示す断面図である。
【図7】レーザチャンバの他の例を概略的に示す断面図である。
【図8】レーザチャンバの他の例を概略的に示す断面図である。
【図9】実施形態におけるレーザを利用した装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】従来のレーザチャンバを概略的に示す斜視図である。
【図11】従来のレーザチャンバを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0026】
「固体レーザ発振器およびレーザチャンバの実施形態」
図1は、実施形態の固体レーザ発振器内部の構成を概略的に示す平面図である。図2は、実施形態のレーザロッド、励起ランプおよびレーザチャンバを概略的に示す斜視図である。図3は、実施形態のレーザロッド、励起ランプおよびレーザチャンバの1つの例を概略的に示す、レーザロッドの長さ方向に垂直なA−A断面における断面図である。図3aは当該断面の全体図であり、図3bは図3aにおけるレーザロッド近傍領域Bの拡大図である。なお、図3では、レーザチャンバに関しては内壁面のみが抽出されて示されている。
【0027】
実施形態の固体レーザ発振器1は、レーザロッド10、励起ランプ12、レーザチャンバ14、出力ミラー16、全反射ミラー18、Qスイッチ20およびこれらを収容する筐体28並びに筐体外部からレーザチャンバ14へ接続された冷却機器30を備えるものである。
【0028】
(レーザロッド)
レーザロッド10は、活性固体媒体を含む固体素子であり、例えば、活性媒体であるNd3−が添加されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:YAl12)結晶から構成されたYAGロッドである。レーザロッド10は棒状に形成されている。レーザロッド10は、励起ランプ12からの光エネルギーを受け取って、特定の波長の光を増幅するレーザ媒質として機能する。このレーザロッド10から誘導放出された光L1は、出力ミラー16および全反射ミラー18から構成される共振器内で共振しながら増幅され、その後レーザL2として出力される(図1)。なお、レーザロッド10はアレキサンドライトであることが好ましい。
【0029】
(励起ランプ)
励起ランプ12は、レーザロッド10が誘導放出するためのエネルギーを供給する光源である。励起ランプ12は、例えば、Xeガスが封入された棒状のフラッシュランプを採用することができる。励起ランプ12は、図示しない筐体28の外部に配置された電源に接続されている。
【0030】
(レーザチャンバ)
レーザチャンバ14は、レーザロッド10および励起ランプ12を包含し、励起ランプ12から放射された光をレーザロッド10へ集光するための部材である。レーザチャンバ14は、レーザロッド10および励起ランプ12の長さ方向に伸びた筒形状を有する(図2)。レーザチャンバ14は、例えば金属板や、内壁が金属コーティングされたセラミックから構成される。
【0031】
さらに、レーザチャンバ14の内壁面14aのレーザロッド10に垂直な断面における断面形状50は、レーザロッド10および励起ランプ12のそれぞれの位置(例えば棒状の中心軸の位置)を焦点F1およびF2とする楕円58を基本とした形状であって、この楕円58の長軸x上の少なくとも1つの頂点(つまり、頂点a1および頂点a2の少なくともいずれか)を含む楕円58の一部が減縮した形状を有する(図3)。
【0032】
「楕円を基本とした形状」とは、レーザチャンバ14の断面形状50が、当該楕円の50%以上の部分を残しつつ、その他の部分が変形した形状であることを意味する。そして、楕円の部分が「減縮した」とは、内壁面14aの上記断面形状50の面積が当該断面形状50の基本となった楕円58の面積よりも小さくなるように、楕円58の当該部分を規定する線56が当該楕円58の範囲内で変形したことを意味する。
【0033】
さらに、レーザチャンバ14の内壁面14aには、反射面および拡散面が形成されている。具体的には、レーザチャンバ14の内壁面14aのうち上記楕円58の減縮した部分56に対応する部分54が拡散面を構成するものであり、内壁面14aのうち上記減縮した部分56に対応する部分54以外の部分52が反射面を構成するものである。拡散面は、例えば、BaSOで構成したり金属の表面を酸で荒らしたり等することにより実現される。
【0034】
「減縮した部分」とは、内壁面14aの断面形状50の基本となった楕円58のうち減縮する対象となった部分を意味し、「減縮した部分に対応する部分」とは、内壁面14aの断面形状50のうち減縮した結果得られる部分を意味する。また、「減縮した部分に対応する部分以外の部分」とは、上記2つの定義に基づいて、減縮する対象とならなかった部分52、すなわち内壁面14aの断面形状50とその基本となった楕円58との共有部分であると言える。
【0035】
このような構成の下では、従来の楕円型のレーザチャンバが減縮した分、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバ14が占有する空間を削減することができる。一方、内壁面14aのうち上記楕円58の減縮した部分56に対応する部分54が反射面のままでは、光路がずれるため当該部分54で反射した励起ランプ12からの光がレーザロッド10に集光されにくくなる場合があり得る。しかし本発明では、当該部分54を拡散面で構成することにより、多少光路がずれても光がレーザロッドに当たることになる。
【0036】
本発明に係る固体レーザ発振器1およびレーザチャンバ14において、上記減縮した部分56は、少なくとも、レーザロッド10側の領域R1であって励起ランプ12側の焦点F2を通りレーザロッド10に接する2つの接線T1に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることが好ましい(図3)。この場合において例えば、減縮した部分に対応する部分は、図3における符号54の太線部分の全体となる。なお、「レーザロッド側の領域」とは、頂点a1を通り長軸xに垂直な直線mと短軸yとの間の領域を意味する。
【0037】
当該部分は、励起ランプ12から放射された光が当該部分で反射せずともレーザロッドに吸収されることがあるため、レーザロッド10の励起に寄与する程度が比較的低い。そのため、当該部分においてレーザチャンバの断面形状が従来の楕円から減縮しても、エネルギー変換効率に与える悪影響は比較的少なくて済むと考えられる。
【0038】
しかしながら、本発明の固体レーザ発振器1およびレーザチャンバ14は、図3に示される態様に限定されない。
【0039】
例えば、内壁面14aの断面形状50は、図4に示されるように、減縮した部分に対応する部分54が、レーザロッド10および頂点a1の間の長軸x上の任意の点を通り長軸xに垂直な線n1と楕円58との交点i1およびi2を結ぶ線となるように、楕円58が減縮した形状とすることもできる。例えば図4では、交点i1およびi2を結ぶ線は直線(図4における符号54の太線部分)で構成されている。このような構成により、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバ14が占有する空間をより削減することができる。
【0040】
また、内壁面14aの断面形状50は、図5に示されるように、減縮した部分に対応する部分54が、焦点F1を通り長軸xに垂直な直線n2と楕円58との交点i3およびi4を結ぶ線となるように、楕円58が減縮した形状とすることもできる。例えば図5では、交点i3およびi4を結ぶ線は曲線(図5における符号54の太線部分)で構成されている。このような構成により、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバ14が占有する空間をより削減することができる。
【0041】
また、内壁面14aの断面形状50は、図6に示されるように、減縮した部分に対応する部分54が、楕円58の中心cおよびレーザロッド10の間の長軸x上の任意の点を通り長軸xに垂直な線n3と楕円58との交点i5およびi6を結ぶ線となるように、楕円58が減縮した形状とすることもできる。例えば図6では、交点i5およびi6を結ぶ線は複数の直線(図6における符号54の太線部分)で構成されている。このような構成により、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバ14が占有する空間をより削減することができる。
【0042】
本発明に係る固体レーザ発振器1およびレーザチャンバ14において、上記減縮した部分は、少なくとも、励起ランプ12側の領域R2であってレーザロッド10側の焦点F1を通り励起ランプ12に接する2つの接線T2に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることが好ましい(図7)。なお、「励起ランプ側の領域」とは、頂点a2を通り長軸xに垂直な直線oと短軸yとの間の領域を意味する。
【0043】
当該部分は、励起ランプ12から放射された光が当該部分で反射しても励起ランプ12にその光路を阻害されることがあるため、レーザロッド10の励起に寄与する程度が比較的低い。そのため、当該部分においてレーザチャンバの断面形状が従来の楕円から減縮しても、エネルギー変換効率に与える悪影響は比較的少なくて済むと考えられる。
【0044】
さらに、断面形状が減縮したことおよびその内壁面14aが拡散面によって構成されたことにより、本来レーザロッド10に到達することができなかった光がレーザロッド10にまで到達することができるようになるため、むしろ光エネルギーの利用効率が向上する場合もありうる。したがって、このような観点からも、当該部分においてレーザチャンバの断面形状が従来の楕円から減縮しても、エネルギー変換効率に与える悪影響は比較的少なくて済むと考えられる。
【0045】
この場合において、減縮した部分に対応する部分は、図7における符号54の太線部分および符号60の太線部分の全体となる。このような構成により、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバ14が占有する空間をより削減することができる。
【0046】
また、内壁面14aの断面形状は、図8に示されるように、断面形状のうち上記2つの接線T2に挟まれた領域にある部分60(つまり、励起ランプ12側の領域R2における上記減縮した部分62に対応する部分)が、励起ランプ12に向かって凸形状となるように、楕円が減縮した形状とすることもできる。このような構成にすれば、励起ランプ12から放射された光のうち当該部分で反射した光が励起ランプ12に戻ることを抑制することができるため、より光エネルギーの利用効率を向上させることができると考えられる。
【0047】
本発明に係る固体レーザ発振器1およびレーザチャンバ14において、楕円全体に対する上記減縮した部分の割合は50%以下であることが好ましい。レーザロッド10までの距離が短い側の楕円部分を減縮する方が励起効率の観点から望ましく、さらに上記割合が50%を超えると著しくエネルギー変換効率が低下するためである。
【0048】
(Qスイッチ)
Qスイッチ20は、誘導放出された光L1の光軸上であって、レーザロッド10と全反射ミラー18との間に配置されている。Qスイッチ20は、例えばλ/4板22、ポッケルスセル24およびポラライザ26から構成される。
【0049】
(筐体)
筐体28は、例えば直方体形状に形成されており、出力ミラー16に対向する部分の側壁にレーザL2を取り出すための開口28aを有する。
【0050】
(冷却機器)
冷却機器30は、レーザロッド10および励起ランプ12を冷却するための機器である。冷却機器30は、例えば、純水等の冷却媒体を収容しこの冷却媒体の循環を制御す冷却制御部32、配管34aおよび配管34bを備え、冷却媒体の往路となる配管34aおよび冷却媒体の復路となる配管34bを介してレーザチャンバ14に接続されている。
【0051】
例えば、配管34aを通って供給された冷却媒体は、レーザチャンバ14の内部を通りながらレーザロッド10および励起ランプ12の熱を奪い、その後配管34bを通って冷却制御部32に戻ってくる。そして、冷却制御部32で冷却された冷却媒体は、再度レーザチャンバ14および冷却制御部32の相互間で循環することになる。
【0052】
(作用効果)
以上のように、本発明に係る固体レーザ発振器およびレーザチャンバは、レーザチャンバの内壁面のレーザロッドに垂直な断面における断面形状が、レーザロッドおよび励起ランプのそれぞれの位置を焦点とする楕円を基本とした形状であって、この楕円の長軸上の少なくとも1つの頂点を含む楕円の一部が減縮した形状であり、内壁面のうち上記楕円の減縮した部分に対応する部分が拡散面を構成するものであり、内壁面のうち上記減縮した部分に対応する部分以外の部分が反射面を構成するものであることを特徴とする。このような構成の下では、従来の楕円型のレーザチャンバが減縮した分、従来のレーザチャンバに比べてレーザチャンバが占有する空間を削減することができる。一方、内壁面のうち上記楕円の減縮した部分に対応する部分が反射面のままでは、光路がずれるため当該部分で反射した励起ランプからの光がレーザロッドに集光されにくくなる場合があり得る。しかし本発明では、当該部分を拡散面で構成することにより、多少光路がずれても光がレーザロッドに当たることになる。この結果、固体レーザ発振器において、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスをとることが可能となる。
【0053】
「レーザを利用した装置の実施形態」
次に、レーザを利用した装置の実施形態について説明する。本実施形態では、レーザを利用した装置は、例えば、光が被検体に照射されることにより被検体内で発生した光音響波を検出して光音響画像を生成する光音響撮像装置である。図9は、実施形態におけるレーザを利用した装置(光音響撮像装置70)の構成を概略的に示す図である。
【0054】
本実施形態の光音響撮像装置70は、図9に示されるように、システム制御部71、本発明の固体レーザ発振器を含むレーザ光源72、画像生成部73、表示部74、操作部75(ユーザインタフェース)および超音波探触子80を備えるものである。
【0055】
システム制御部71は、レーザ光源72、画像生成部73、表示部74および操作部75を制御するものである。システム制御部71は、例えばこれらが同期をとるためのトリガ信号を出力する。
【0056】
レーザ光源72は、被検部位Mに照射すべきレーザ光Lを測定光として出力するものである。レーザ光源72は、例えば、血液の吸収ピークに含まれる波長のレーザ光を発生させる1以上の光源を有する。本発明においては、光源として、前述した本発明の固体レーザ発振器を備える。
【0057】
レーザ光の波長は、撮像対象となる被検体M内の物質の光吸収特性に合わせて適宜決定される。例えば撮像対象が生体内のヘモグロビンである場合(つまり、生体内部の血管を撮像する場合)には、生体の光透過性が良く、かつ各種ヘモグロビンが光の吸収ピークを持つ600〜1000nm程度とすることが好ましい。
【0058】
画像生成部73は、超音波探触子80によって検出した音響信号から光音響画像を生成するものである。例えば、1ライン分の上記音響信号のデータにおける時間軸の位置を、断層画像における深さを表す変位軸の位置に変換して1フレーム分の画像データを構築する。さらに、必要に応じて、超音波探触子80の走査位置ごとに生成された1フレーム分の画像データに基づいて、1フレーム分の画像データを重畳させて仮想的な空間座標に並べたり、取得したデータの間を補間しながら三次元の光音響画像用のボリュームデータを構築したりする。
【0059】
表示部74は、画像生成部73によって生成された画像データに基づく光音響画像を表示するものである。
【0060】
操作部75は、ユーザが撮像に必要な情報を入力するためのものである。例えば、ユーザは、操作部75を用いて、光音響画像が表示される際の視点方向を指定したり、患者の情報や撮像条件についての情報を入力したりする。
【0061】
超音波探触子80は、光照射部81およびアレイ振動子82から構成され、被検部位Mに対して測定光としてレーザ光Lを照射し、被検部位Mからの光音響波Uを検出するものである。アレイ振動子82が本発明における電気音響変換部に相当する。
【0062】
光照射部81は、アレイ振動子82の近傍からレーザ光Lを被検部位Mに向けて照射する光学要素である。例えば、光照射部81は、アレイ振動子72の近傍に配置された光ファイバの先端部から、レーザ光源72から出力されたレーザ光Lをそのまま被検部位Mに照射する場合には、光照射部81は光ファイバの当該先端部となる。光照射部81は、例えばアレイ振動子82の周囲に沿って配列される。
【0063】
アレイ振動子82は、被検部位M内で発生した光音響波Uを検出する検出素子である。アレイ振動子82は、例えば、1次元状に配列された複数の超音波振動子から構成される。超音波振動子は、例えば、圧電セラミクス、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような高分子フィルムから構成される圧電素子である。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るレーザを利用した装置は、本発明の固体レーザ発振器を備えたものであるから、エネルギー変換効率および小型軽量化の観点からバランスをとることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
上記の実施形態では、本発明のレーザを利用した装置が光音響撮像装置である場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば本発明のレーザを利用した装置は、レーザを利用して材料の加工を行う加工装置、レーザを利用して試料の分析を行う分析装置等、その他の装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 固体レーザ発振器
10 レーザロッド
12 励起ランプ
14 レーザチャンバ
14a 内壁面
16 出力ミラー
18 全反射ミラー
20 Qスイッチ
28 筐体
30 冷却機器
32 冷却制御部
34a、34b 配管
50 レーザチャンバの内壁面の断面形状
52 減縮した部分に対応する部分以外の部分
54 減縮した部分に対応する部分
56 減縮した部分
58 基本となった楕円
70 光音響撮像装置
71 システム制御部
72 レーザ光源
73 画像生成部
74 表示部
75 操作部
80 超音波探触子
a1、a2 楕円の頂点
c 楕円の中心
F1、F2 楕円の焦点
L1 誘導放出された光
L2 レーザ
x 楕円の長軸
y 楕円の短軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザロッドと、該レーザロッドを励起する励起ランプと、前記レーザロッドおよび前記励起ランプを内包する筒形状のレーザチャンバとを備える固体レーザ発振器において、
前記レーザチャンバの内壁面の前記レーザロッドに垂直な断面における断面形状が、前記レーザロッドおよび前記励起ランプのそれぞれの位置を焦点とする楕円を基本とした形状であって、該楕円の長軸上の少なくとも1つの頂点を含む前記楕円の一部が減縮した形状であり、
前記内壁面のうち前記楕円の減縮した部分に対応する部分が拡散面を構成するものであり、
前記内壁面のうち前記減縮した部分に対応する部分以外の部分が反射面を構成するものであることを特徴とする固体レーザ発振器。
【請求項2】
前記減縮した部分が、少なくとも、前記レーザロッド側の領域であって前記励起ランプ側の焦点を通り前記レーザロッドに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることを特徴とする請求項1に記載の固体レーザ発振器。
【請求項3】
前記減縮した部分が、少なくとも、前記励起ランプ側の領域であって前記レーザロッド側の焦点を通り前記励起ランプに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の固体レーザ発振器。
【請求項4】
前記楕円全体に対する前記減縮した部分の割合が50%以下であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の固体レーザ発振器。
【請求項5】
前記レーザロッドがアレキサンドライトであることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の固体レーザ発振器。
【請求項6】
固体レーザ発振器に用いられる、レーザロッドおよび該レーザロッドを励起する励起ランプを内包する筒形状のレーザチャンバにおいて、
前記レーザチャンバの内壁面の前記レーザロッドに垂直な断面における断面形状が、前記レーザロッドおよび前記励起ランプのそれぞれの位置を焦点とする楕円を基本とした形状であって、該楕円の長軸上の少なくとも1つの頂点を含む前記楕円の一部が減縮した形状であり、
前記内壁面のうち前記楕円の減縮した部分に対応する部分が拡散面を構成するものであり、
前記内壁面のうち前記減縮した部分に対応する部分以外の部分が反射面を構成するものであることを特徴とするレーザチャンバ。
【請求項7】
前記減縮した部分が、少なくとも、前記レーザロッド側の領域であって前記励起ランプ側の焦点を通り前記レーザロッドに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることを特徴とする請求項6に記載のレーザチャンバ。
【請求項8】
前記減縮した部分が、少なくとも、前記励起ランプ側の領域であって前記レーザロッド側の焦点を通り前記励起ランプに接する2つの接線に挟まれた領域にある部分をすべて含むものであることを特徴とする請求項6または7に記載のレーザチャンバ。
【請求項9】
前記楕円全体に対する前記減縮した部分の割合が50%以下であることを特徴とする請求項6から8いずれかに記載のレーザチャンバ。
【請求項10】
請求項1から5いずれかに記載の固体レーザ発振器をレーザ光源として備えることを特徴とするレーザを利用した装置。
【請求項11】
前記レーザ光源からのレーザ光を測定光として被検体に照射する光照射部と、
該光照射部が前記測定光を照射することにより前記被検体内で発生した光音響波を検出する電気音響変換部と、
該電気音響変換部により検出された前記光音響波に基づいて光音響画像を生成する画像生成部と、
該画像生成部により生成された前記光音響画像を表示する表示部とを備えることを特徴とする請求項10に記載のレーザを利用した装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−74180(P2013−74180A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212999(P2011−212999)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】