説明

固体撮像装置及びその製造方法

【課題】容易な製造プロセスで、十分な反射低減効果を得ることができる固体撮像装置を提供する。
【解決手段】複数の画素を備える固体撮像装置100であって、半導体基板101と、半導体基板101に画素毎に形成された複数の受光部102と、複数の受光部102の上方に、複数の受光部102のそれぞれに入射光を集光するように配置された複数のマイクロレンズ107と、複数のマイクロレンズ107上に形成された表面平坦化層108と、表面平坦化層108上に形成された、表面平坦化層108より屈折率が低い低屈表面層109とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置及びその製造方法に関し、特に、受光部上に形成されたマイクロレンズとその表面膜とを有する固体撮像装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像装置のチップサイズの小型化や画素数の増大とあいまって、デジタルカメラ、デジタルムービーカメラ、カメラ付き携帯電話機等の小型化、高性能化が進んでいる。
【0003】
従来の固体撮像装置では、カメラの解像度を高めるべく高画素化が図られ、またカメラ光学系の小型化に伴い、チップサイズの小型化もますます加速されてきている。そのため、画素サイズがますます小さくなってきている。これらの要望は強く、今後も更なる縮小化が予想される。
【0004】
一方、画素サイズはますます小さくなってきているにも関わらず、低照度時であっても高感度で撮像したいという市場の要望も強く、そのために受光部への集光効果を上げるべく各種のマイクロレンズ構造が提案されている。
【0005】
さらに、集光効果を上げるため、反射低減効果の役割を担うべく、マイクロレンズ上に、所定の厚さのフッ素含有樹脂膜から成る反射防止膜を形成し、さらなる感度向上を図る構造も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
図10は、特許文献1に記載の従来の固体撮像装置10の構造断面図である。図10に示す従来の固体撮像装置10は、シリコン基板11と、フォトダイオード12と、ポリシリコン電極13と、シリコン酸化膜14と、平坦化膜15と、マイクロレンズ16と、反射防止膜17と、空気又は不活性ガス層18とを備える。
【0007】
図10に示すように、反射低減効果の役割を担うべくマイクロレンズ16上に、所定の厚さのフッ素含有樹脂膜から成る反射防止膜17が形成されている。反射防止膜17は、マイクロレンズ16の曲面に沿って膜厚が均一になるように、マイクロレンズ16上に形成されている。
【0008】
この構成により、表面の反射防止効果があり、感度向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−275459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術には、容易な製造プロセスでは、十分な反射低減効果を得られないという課題がある。
【0011】
反射防止膜を備えない従来の固体撮像装置では、表面での反射が4%程度あり、集光ロスを生じさせ、感度が低下するという課題がある。
【0012】
また、図10に示す特許文献1に記載の固体撮像装置では、表面の反射を防止する反射防止膜が形成されており、確かに、反射低減効果は認められる。しかしながら、マイクロレンズの曲面上に所定の厚さを保って均一に膜を形成することは、従来のオンチップフィルタ形成プロセス、例えば、スピンコート法では困難である。また、特許文献1に記載されている方法では、大口径ウェハを用いた場合に均一な膜厚の形成が難しいという問題もある。
【0013】
そこで、本発明は、容易な製造プロセスで、十分な反射低減効果を得ることができる固体撮像装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る固体撮像装置は、複数の画素を備える固体撮像装置であって、半導体基板と、前記半導体基板に前記画素毎に形成された複数の受光部と、前記複数の受光部の上方に、前記複数の受光部のそれぞれに入射光を集光するように配置された複数のマイクロレンズと、前記複数のマイクロレンズ上に形成された平坦化層と、前記平坦化層上に形成された、前記平坦化層より屈折率が低い低屈折率層とを備える。
【0015】
これにより、平坦化層上に低屈折率層が形成されているので、均一な膜厚の低屈折率層を容易に形成することができるとともに、十分な反射低減効果を得ることができる。
【0016】
また、前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、可視光の波長の1/4倍の範囲であってもよい。
【0017】
これにより、可視光の波長に応じて膜厚及び屈折率が決定されているので、反射を十分に低減することができる。
【0018】
また、前記低屈折率層は、無機物から構成されてもよい。
【0019】
これにより、低屈折率層が無機物で構成されるので、熱が加わっても黄変や変形が少なく、耐候性向上も図ることができる。
【0020】
また、前記平坦化層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率との差は、0.04以上であってもよい。
【0021】
これにより、従来よりも十分に反射を低減することができる。
【0022】
また、前記複数の画素は、複数の種類のいずれかに属し、前記低屈折率層の膜厚は、前記画素の種類毎に異なってもよい。
【0023】
これにより、画素毎に入射光の波長を選択して低屈折率層での反射を低減させることができるので、画素毎に高感度を実現できるとともに、色再現性も向上させることができる。
【0024】
また、前記複数の画素は、赤色用画素、緑色用画素、及び、青色用画素のいずれかの種類に属し、前記低屈折率層の膜厚は、前記青色用画素、前記緑色用画素、前記赤色用画素の順で厚くなってもよい。
【0025】
これにより、赤色光、緑色光及び青色光のそれぞれを透過させるカラーフィルタを備える場合に、カラーフィルタが透過させる光に応じて、膜厚を異ならせることで、反射を十分に低減することができる。
【0026】
また、前記複数の画素は、複数の種類のいずれかに属し、前記低屈折率層の材質は、前記画素の種類毎に異なってもよい。
【0027】
これにより、画素毎に低屈折率層の材質が異なっているので、反射を低減させることができる。
【0028】
また、前記複数の画素は、赤色用画素、緑色用画素、及び、青色用画素のいずれかの種類に属し、前記赤色用画素における前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、650/4nmであり、前記緑色用画素における前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、550/4nmであり、前記青色用画素における前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、440/4nmであってもよい。
【0029】
これにより、画素毎に、透過させる光に応じて膜厚及び材質を変えることができるので、画素毎に高感度を実現できるとともに、色再現性も向上させることができる。
【0030】
また、前記複数の画素は、所定の領域に二次元状に配列され、前記所定の領域は、中心を含む中央領域と、当該中央領域の周囲の領域である周辺領域とを含み、前記低屈折率層の膜厚は、前記中央領域と前記周辺領域とで異なっていてもよい。
【0031】
これにより、中央領域と周辺領域とにおける反射を低減させることができ、感度ムラを抑制することができる。
【0032】
また、前記周辺領域における前記低屈折率層の膜厚は、前記中央領域における前記低屈折率層の膜厚より小さくてもよい。
【0033】
これにより、中央領域と周辺領域とにおける反射を低減させることができ、感度ムラを抑制することができる。
【0034】
また、前記平坦化層は、さらに、前記マイクロレンズに沿った曲率の凸部を上面に有してもよい。
【0035】
これにより、マイクロレンズだけでなく、平坦化層においても集光効果を得ることができるので、集光効果を高めることができる。
【0036】
また、前記低屈折率層は、可視光の波長以下のピッチで凸凹状の微細構造を有してもよい。
【0037】
これにより、反射率を大幅に低減することができる。
【0038】
また、本発明の一態様に係る固体撮像装置の製造方法は、複数の画素を備える固体撮像装置の製造方法であって、半導体基板に前記画素毎に複数の受光部を形成する工程と、前記複数の受光部の上方に、前記複数の受光部のそれぞれに入射光を集光するように複数のマイクロレンズを形成する工程と、前記複数のマイクロレンズ上に、平坦化層を形成する工程と、前記平坦化層上に、当該平坦化層より屈折率が低い低屈折率層を形成する工程とを含む。
【0039】
これにより、平坦化層上に低屈折率層を形成するので、均一な膜厚の低屈折率層を容易に形成することができるとともに、十分な反射低減効果を得ることができる固体撮像装置を製造することができる。
【0040】
また、前記低屈折率層を形成する工程では、前記平坦化層より屈折率が低い材料を塗布することで、前記低屈折率層を形成してもよい。
【0041】
これにより、均一な膜厚の低屈折率層を形成することができる。
【0042】
また、前記低屈折率層を形成する工程では、前記平坦化層より屈折率が低い材料をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により堆積させることで、前記低屈折率層を形成してもよい。
【0043】
これにより、均一な膜厚の低屈折率層を形成することができる。
【0044】
また、前記低屈折率層を形成する工程は、前記平坦化層より屈折率が低く、かつ、感光基を含む材料を、前記平坦化層上に形成する工程と、グレー階調を有するマスクを介して、堆積された前記材料を形成する工程と、露光された前記材料を現像することで、前記画素毎に膜厚が異なる前記低屈折率層を形成する工程とを含んでもよい。
【0045】
これにより、グレー階調を有するマスクにより、露光量を画素毎に調整することができるので、画素毎に異なる膜厚の低屈折率層を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の固体撮像装置は、容易な製造プロセスで製造され、十分な反射低減効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の画素配列の一例を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置を備えるカメラの一例を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置の構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置の製造方法の一例を示す断面工程図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る固体撮像装置の構成の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る固体撮像装置を備えるカメラの一例を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態の変形例における固体撮像装置の構成の一例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の変形例における固体撮像装置の構成の一例を示す断面図である。
【図10】従来の固体撮像装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態に係る固体撮像装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0049】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置は、マイクロレンズ上に形成された平坦化層と、平坦化層上に形成された、当該平坦化層より屈折率が低い低屈折率層とを備えることを特徴とする。
【0050】
まず、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置の構成について説明する。ここでは、カラーフィルタが原色フィルタのグリーン市松模様のベイヤ配列である固体撮像装置について説明する。
【0051】
図1は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100の断面図である。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100の画素配列の一例を示す平面図である。なお、図1は、図2に示すA−A断面の一部を示している。
【0052】
実施の形態1に係る固体撮像装置100は、半導体基板101と、複数の受光部102と、複数の転送電極103と、平坦化膜104と、複数のカラーフィルタ(レッドフィルタ105R、グリーンフィルタ105G及びブルーフィルタ105B)と、マイクロレンズ下平坦化膜106と、複数のマイクロレンズ107と、表面平坦化層108と、低屈表面層109とを備える。
【0053】
半導体基板101は、例えば、シリコン基板である。半導体基板101には、複数の受光部102が画素毎に形成されている。
【0054】
複数の受光部102は、例えば、フォトダイオードで構成される。複数の受光部102はそれぞれ、入射光を光電変換することで、信号電荷を生成する。
【0055】
半導体基板101上において、複数の受光部102の間には、転送電極103が形成されている。転送電極103は、受光部102によって生成された信号電荷を外部に転送するための電極である。
【0056】
平坦化膜104は、転送電極103により生じた凹部を埋めるように、半導体基板101上に形成される。平坦化膜104は、透光性を有する。
【0057】
平坦化膜104上に、各画素に対応してグリーンフィルタ105G、レッドフィルタ105R及びブルーフィルタ105Bが形成されている。なお、ブルーフィルタ105Bは、図示した断面には表れていない。
【0058】
グリーンフィルタ105G、レッドフィルタ105R及びブルーフィルタ105Bは、受光部102に対応して配列される。グリーンフィルタ105Gは、緑の光を透過するカラーフィルタである。レッドフィルタ105Rは、赤の光を透過するカラーフィルタである。ブルーフィルタ105Bは、青の光を透過するカラーフィルタである。
【0059】
グリーンフィルタ105G、レッドフィルタ105R及びブルーフィルタ105Bは、図2に示すようなグリーン市松模様のベイヤ配列で配置されている。
【0060】
カラーフィルタ(レッドフィルタ105R、グリーンフィルタ105G及びブルーフィルタ105B)上に、マイクロレンズ下平坦化膜106が形成される。マイクロレンズ下平坦化膜106は、複数のマイクロレンズ107の下面を面一にするための平坦化膜である。
【0061】
マイクロレンズ下平坦化膜106の上に、光を集光させる目的で受光部102に対応してマイクロレンズ107が配列されている。つまり、マイクロレンズ107は、複数の受光部102の上方に、複数の受光部102のそれぞれに入射光を集光するように、画素毎に配置されている。
【0062】
複数のマイクロレンズ107の上には、表面平坦化層108が形成されている。表面平坦化層108は、上面が平坦であり、マイクロレンズ107の上方の面を平坦化する平坦化層の一例である。
【0063】
表面平坦化層108の上には、低屈表面層109が形成されている。低屈表面層109の屈折率は、低屈折率層の一例であり、表面平坦化層108の屈折率より低い。例えば、低屈表面層109の屈折率と表面平坦化層108の屈折率との差は、0.04以上である。
【0064】
なお、表面平坦化層108は、マイクロレンズ107の上方の平坦度を高める層であり、表面平坦化層108の上面は平坦である。
【0065】
具体的には、低屈表面層109の材質は、無機物であり、例えば、シリコン酸化物(SiO2)である。この場合、低屈表面層109の屈折率は、約1.46である。また、表面平坦化層108の材質は、例えば、熱硬化性透明アクリル膜である。この場合、表面平坦化層108の屈折率は、約1.5である。
【0066】
以下、このような構造による固体撮像装置100の機能について、説明する。
【0067】
図1に示すように、表面平坦化層108の上に低屈表面層109を形成することにより、低屈表面層109上の反射率を低減させることができる。なぜなら、表面の強度反射率Rは、以下の式(1)で表される。
【0068】
R=(nf2−n0s2/(nf2+n0s2 …(1)
【0069】
ここで、n0は、外部媒質の屈折率(一般的に空気であり、n0≒1)、nfは、低屈表面層109の屈折率、nsは、表面平坦化層108の屈折率を表わす。
【0070】
式(1)より、表面平坦化層108より屈折率の低い材料を用いて低屈表面層109を構成することで、反射率を低減させることができる。具体的には、表面平坦化層108の屈折率が1.50、低屈表面層109の屈折率が1.46である場合、反射率は、低屈表面層109を設けない場合には4%であったが、低屈表面層109を設けることにより、約3%に低減する。この結果から、表面平坦化層108と低屈表面層109との屈折率差は、概ね0.04以上設けることが好ましい。
【0071】
さらに、以下の式(2)を満たすように、低屈表面層109を構成することで、低屈表面層109における表面と裏面との反射光の位相を半波長ずらして干渉効果により打ち消すことができる。
【0072】
fd=λ/4 …(2)
【0073】
ここで、dは、低屈表面層109の厚さ、λは、入射光の波長を表わす。つまり、低屈表面層109の膜厚と屈折率との積は、入射光の波長の1/4倍となる。入射光は、例えば、可視光(450nm〜650nm)である。言い換えると、低屈表面層109の膜厚と屈折率との積が、可視光の波長である450〜650nmの1/4倍の範囲となるように、低屈表面層109の膜厚及び屈折率(材料)が決定される。
【0074】
式(2)より、低屈表面層109の屈折率が1.46の場合、波長550nmの時には、低屈表面層109の膜厚は、概ね94nmであることが好ましい。同様にして、可視光(450nm〜650nm)での感度向上という点からは、約77nm〜約111nmであれば、効果を発揮することができる。
【0075】
なお、低屈表面層109の膜厚が概ね94nmであるとは、実質的に94nmに等しいことであり、例えば、90〜110%程度の範囲にあることである。同様の記載は、同じことを意味する。
【0076】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100は、マイクロレンズ107上に形成された表面平坦化層108と、表面平坦化層108上に形成された、当該表面平坦化層108より屈折率が低い低屈表面層109とを備えることを特徴とする。
【0077】
この構成によれば、低屈表面層109は平坦化された表面平坦化層108上に形成できるので、特別な装置やプロセスを必要とせず、通常の塗布工程で膜厚の均一に形成でき、品質の安定化を図ることが容易である。また、低温CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成することも可能である。その際、低屈表面層109を、SiO2などの無機材料で形成すれば熱が加わっても黄変や変形が少なく、耐候性向上も図ることができる。SiO2であれば、屈折率はほぼ1.46であり、膜厚を94nmに制御することにより反射率を低減させることが可能である。
【0078】
また、図3は、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100を備えるカメラ120の一例を示す模式図である。図3に示すように、カメラ120は、赤外カットフィルタ121と、絞り122と、レンズ123とを備える。
【0079】
カメラの小型化に対する要望により、最近のカメラに搭載されている赤外カットフィルタ121は、薄膜化が可能な蒸着型が主流である。このため、赤外カットフィルタ121は、斜め光に対しては反射しやすくなっている。したがって、フレアやゴーストの発生を抑えるためには、固体撮像装置100側での反射低減が必須となっている。
【0080】
本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100によれば、上述のように、反射率を低減することができるので、図3に示すようなカメラ120は、フレア及びゴーストの発生を抑制することができる。したがって、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100は、画質の優れた画像信号を生成することができる。
【0081】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置では、複数の画素は、複数の種類のいずれかに属し、画素の種類毎に低屈表面層の膜厚が異なることを特徴とする。具体的には、受光部に入射される入射光の波長に応じて、低屈表面層の膜厚が異なっている。
【0082】
図4は、本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置200の構成の一例を示す断面図である。なお、画素の配列は、実施の形態1に係る固体撮像装置100と同じであり、図4は、図2に示すA−A断面の一部を示している。
【0083】
図4に示すように、固体撮像装置200は、図1に示す実施の形態1の固体撮像装置100と比較して、低屈表面層109の代わりに、低屈表面層209を備える点が異なっている。以下では、実施の形態1と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0084】
固体撮像装置200が備える複数の画素は、複数の種類のいずれかに属する。複数の画素は、例えば、画素に入射される光の波長、具体的には、カラーフィルタが透過する光の波長によって、複数の種類に分類される。例えば、複数の種類は、青色用画素、緑色用画素及び赤色用画素の3種類である。
【0085】
低屈表面層209は、低屈折率層の一例であり、低屈表面層209の膜厚は、画素の種類毎に異なっている。つまり、各々のカラーフィルタ上で、カラーフィルタが透過する光の波長に応じて、低屈表面層209の厚みが異なっている。具体的には、カラーフィルタが透過する光の波長が大きい程、低屈表面層209の膜厚は、大きくなる。可視光において、波長は、青色光、緑色光、赤色光の順で大きくなるので、低屈表面層209の膜厚は、青色用画素、緑色用画素、赤色用画素の順で大きくなる。
【0086】
この構造にすれば、各カラーフィルタを透過する波長を選択して低屈表面層209での反射を低減させることにより、各画素で高感度を実現でき、それにより色再現性も良い固体撮像装置200を実現させることができる。
【0087】
具体的には、式(2)より、ブルーフィルタ105B上には、450nmでの反射を抑えるため膜厚が概ね77nmの低屈表面層209Bが形成されることが好ましい。同様に、グリーンフィルタ105G上には、550nmでの反射を抑えるため、膜厚が概ね94nmの低屈表面層209Gが形成されることが好ましい。レッドフィルタ105R上には、650nmでの反射を抑えるため、膜厚が概ね111mの低屈表面層209Rが形成されることが好ましい。
【0088】
ここで、本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置200の製造方法について、図5を用いて説明する。表面平坦化層108までは、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置100と同じ構成であり、製造方法については割愛する。
【0089】
まず、図5の(a)に示すように、表面平坦化層108上に、低屈表面層209となる感光基を含むポジ型材料211をスピンコート法で形成する。その後、図5の(b)に示すように、グレー階調を有するマスク210を介して、形成した材料を露光する。その際、レッドフィルタ105R上は露光しないように完全遮光し、グリーンフィルタ105G上及びブルーフィルタ105B上は、目的の厚みに応じて照射量を調整するために、グレー階調を設けておく。なお、グレー階調を持ったマスク210は、材料に照射される光の量、すなわち、露光量を画素毎に調整することができるマスクである。
【0090】
その後、図5の(c)に示すように、露光された材料の現像及びポストベークを行うことにより、各画素上に対応する厚みを形成することができる。このように、スピンコート法などいわゆる暗室工程プロセスで形成できるため、工程で広く使用されている設備を流用することができる。また、大口径ウェハにも均一な厚さの膜を形成することができる。
【0091】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置200は、表面平坦化層108上に形成された、当該表面平坦化層108より屈折率が低い低屈表面層209を備え、当該低屈表面層209の膜厚は、画素毎に異なっていることを特徴とする。
【0092】
これにより、画素毎に入射する光の波長を選択して低屈表面層209での反射を低減させることにより、各画素で高感度を実現でき、それにより色再現性も良い固体撮像装置200を実現させることができる。
【0093】
なお、式(2)を満足すれば、屈折率を同一にする必要はない。例えば、ブルーフィルタ105B上には、膜厚と屈折率との積が450/4nmとなるように、低屈表面層209Bを形成すればよい。同様に、グリーンフィルタ105G上には、膜厚と屈折率との積が550/4nmとなるように、低屈表面層209Gを形成し、レッドフィルタ105R上には、膜厚みと屈折率との積が650/4nmとなるように、低屈表面層209Rを形成すれば、同様の効果を期待できる。
【0094】
また、本実施の形態において、すべてのカラーフィルタ上において適用したが、必ずしもすべてのカラーフィルタ上に適用する必要はなく、特性に懸念のあるカラーフィルタ層上のみに適用してもよい。これにより、色バランスを調整でき、色再現性の良い固体撮像装置を実現させることも可能である。つまり、すべてのカラーフィルタ上において適用することを限定するものではない。
【0095】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る固体撮像装置では、複数の画素は、所定の領域に二次元状に配列され、当該所定の領域は、中心を含む中央領域と当該中央領域の周囲の領域である周辺領域とを含み、低屈表面層の膜厚は、中央領域と周辺領域とで異なっていることを特徴とする。
【0096】
図6は、本発明の実施の形態3に係る固体撮像装置300の構成の一例を示す断面図である。なお、画素の配列は、実施の形態1に係る固体撮像装置100と同じであり、図6は、図2に示すA−A断面の一部を示している。
【0097】
図6に示すように、固体撮像装置300は、図1に示す実施の形態1の固体撮像装置100と比較して、低屈表面層109の代わりに、低屈表面層309を備える点が異なっている。以下では、実施の形態1と同じ点は説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0098】
なお、固体撮像装置300が備える複数の画素は、所定の領域に二次元状に配列されている。所定の領域とは、例えば、撮像領域に相当する。
【0099】
低屈表面層309は、低屈折率層の一例であり、図6に示すように、低屈表面層309の膜厚は、中央領域と周辺領域とで異なっている。中央領域は、複数の画素が二次元状に配列された撮像領域の中心を含む領域であり、チップの中央部分に相当する。周辺領域は、中央領域の周囲の領域であり、チップの周辺部分に相当する。
【0100】
チップの中央部分と周辺部分とで低屈表面層309の厚みが異なる構造を示している。この構造にすれば、図7に示すような射出瞳距離の短いカメラ320に本実施の形態の固体撮像装置300を適用する場合、チップの中央部と周辺部分との最表面の反射を共に低減させることができ、感度ムラを抑えた高画質なカメラ320を実現できる。
【0101】
具体的に説明すると、図7に示すように、チップの周辺部分では、レンズ323及び絞り322を介して入射した光は斜めになるため、チップの中央部分に入射する光に比べて低屈表面層309における光路が長くなる。反射における位相の変化を揃えるためには、チップの周辺部分は、チップの中央部分よりも薄くする必要がある。なお、固体撮像装置300と絞り322の間に赤外カットフィルタ(図示せず)を備えていると、赤外線を減らすことができ、ノイズの低減が可能となる。
【0102】
理想的には、入射角θとした場合、光路は、光路長をcosθで割った分だけ長くなる。チップの中央部分では、入射角θは0で、cosθは1である。これに対して、チップの周辺部分で入射角θが例えば30度だとすると、cosθは約0.866となるため、光路を揃えるためには、周辺領域の低屈表面層309の膜厚を、中央領域の膜厚の約0.866倍にすることが好ましい。
【0103】
本発明の実施の形態3に係る固体撮像装置300は、前述したように、グレー階調を設けたマスクを使用することにより形成することが可能である。
【0104】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る固体撮像装置300では、複数の画素は、中央領域と当該中央領域の周囲の領域である周辺領域とに二次元状に配列され、低屈表面層309の膜厚は、中央領域と周辺領域とで異なっていることを特徴とする。具体的には、周辺領域の低屈表面層309の膜厚は、中央領域の低屈表面層309の膜厚より小さい。より具体的には、中央から端に向かうにつれて、低屈表面層309の膜厚が、段階的に又は滑らかに小さくなることが好ましい。このとき、画素毎に、入射角θに応じた膜厚の低屈表面層309を備えていてもよい。
【0105】
これにより、中央領域と周辺領域とにおける反射を低減させることができ、感度ムラを抑えることができる。
【0106】
以上、本発明に係る固体撮像装置及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を当該実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0107】
例えば、図8に示す固体撮像装置400のように、低屈折率層の一例として、可視光の波長以下のピッチで凸凹状の微細構造の低屈表面層409を備えていてもよい。また、その形状を最表面から表面平坦化層108に向かって占有率を増やす構造にすることにより、例えば、SiO2膜の場合、有効屈折率も1.0から1.46に連続的に大きくなり、反射率を大幅に低減することが可能となる。この場合も、表面平坦化層108上に形成できるので、膜均一性を良く形成することが可能である。なお、微細構造の高さについては、200nm以上であることが好ましい。
【0108】
また、図9に示す固体撮像装置500のように、マイクロレンズ107に沿った曲率の凸部を上面に有する表面平坦化層508を備えていてもよい。これにより、表面平坦化層508で、集光効果を持たせることができる。なお、表面平坦化層508は、本発明に係る平坦化層の一例であって、マイクロレンズ107の上方の平坦度を高めるための層である。表面平坦化層508が備える凸部は、マイクロレンズ107の曲率よりも小さい曲率を有する。すなわち、平坦化層は、平坦度を向上させるものであれば良く、必ずしも表面が完全に平坦なっている必要はない。
【0109】
さらに、表面平坦化層508の上に低屈表面層509を備えることにより、表面の反射低減も可能となる。このときの低屈表面層509は、図9に示す例では、実施の形態1のように、全画素で同じ厚みで形成している。
【0110】
これに対して、実施の形態2のように色毎で厚みを変えるものでもよく、実施の形態3のようにチップの中央部分と周辺部分とで厚みを変えるものでもよい。さらには、実施の形態の変形例(図8)のように表面の凸凹を備えたものでも構わない。
【0111】
これまで述べた実施の形態1〜3及びその変形例において、カラーフィルタは、原色フィルタ(赤、緑、青の3色)を用いたが、補色フィルタ(イエロ、シアン、マゼンタ、緑の4色)を用いてもよい。その他、様々なフィルタでも有効である。
【0112】
また、白黒用や三板式などで使用するカラーフィルタが無い固体撮像装置にも有効である。
【0113】
また、本実施の形態において、固体撮像装置がCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサに構成される場合を示しているが、MOS(Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサに構成される場合に用いることも可能である。さらに、裏面照射型のイメージセンサに構成される場合に用いることも可能である。
【0114】
また、本実施の形態に係る固体撮像装置をデジタルスチルカメラ、デジタルムービーカメラに用いることにより、高感度、高S/N比、高色再現性、かつフレアやゴーストの発生を抑えたカメラを実現することができる。
【0115】
なお、上記の実施の形態はあくまで一例を示したものであり、本発明に係る固体撮像装置は、上記の実施の形態で示した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、容易な製造プロセスで、十分な反射低減効果を得ることができるという効果を奏し、例えば、CCDセンサ、MOSセンサ、デジタルスチルカメラなどの分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
10、100、200、300、400、500 固体撮像装置
11 シリコン基板
12 フォトダイオード
13 ポリシリコン電極
14 シリコン酸化膜
15、104 平坦化膜
16 マイクロレンズ
17 反射防止膜
18 空気又は不活性ガス層
101 半導体基板
102 受光部
103 転送電極
105G グリーンフィルタ
105R レッドフィルタ
105B ブルーフィルタ
106 マイクロレンズ下平坦化膜
107 マイクロレンズ
108、508 表面平坦化層
109、209、209G、209R、209B、309、409、509 低屈表面層
120、320 カメラ
121 赤外カットフィルタ
122、322 絞り
123、323 レンズ
210 マスク
211 ポジ型材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を備える固体撮像装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板に前記画素毎に形成された複数の受光部と、
前記複数の受光部の上方に、前記複数の受光部のそれぞれに入射光を集光するように配置された複数のマイクロレンズと、
前記複数のマイクロレンズ上に形成された平坦化層と、
前記平坦化層上に形成された、前記平坦化層より屈折率が低い低屈折率層とを備える
固体撮像装置。
【請求項2】
前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、可視光の波長の1/4倍の範囲である
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記低屈折率層は、無機物から構成される
請求項1又は2記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記平坦化層の屈折率と前記低屈折率層の屈折率との差は、0.04以上である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記複数の画素は、複数の種類のいずれかに属し、
前記低屈折率層の膜厚は、前記画素の種類毎に異なる
請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記複数の画素は、赤色用画素、緑色用画素、及び、青色用画素のいずれかの種類に属し、
前記低屈折率層の膜厚は、前記青色用画素、前記緑色用画素、前記赤色用画素の順で厚くなる
請求項5記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記複数の画素は、複数の種類のいずれかに属し、
前記低屈折率層の材質は、前記画素の種類毎に異なる
請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記複数の画素は、赤色用画素、緑色用画素、及び、青色用画素のいずれかの種類に属し、
前記赤色用画素における前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、650/4nmであり、
前記緑色用画素における前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、550/4nmであり、
前記青色用画素における前記低屈折率層の膜厚と屈折率との積は、440/4nmである
請求項7記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記複数の画素は、所定の領域に二次元状に配列され、
前記所定の領域は、中心を含む中央領域と、当該中央領域の周囲の領域である周辺領域とを含み、
前記低屈折率層の膜厚は、前記中央領域と前記周辺領域とで異なっている
請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記周辺領域における前記低屈折率層の膜厚は、前記中央領域における前記低屈折率層の膜厚より小さい
請求項9記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記平坦化層は、さらに、前記マイクロレンズに沿った曲率の凸部を上面に有する
請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記低屈折率層は、可視光の波長以下のピッチで凸凹状の微細構造を有する
請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
複数の画素を備える固体撮像装置の製造方法であって、
半導体基板に前記画素毎に複数の受光部を形成する工程と、
前記複数の受光部の上方に、前記複数の受光部のそれぞれに入射光を集光するように複数のマイクロレンズを形成する工程と、
前記複数のマイクロレンズ上に、平坦化層を形成する工程と、
前記平坦化層上に、当該平坦化層より屈折率が低い低屈折率層を形成する工程とを含む
固体撮像装置の製造方法。
【請求項14】
前記低屈折率層を形成する工程では、前記平坦化層より屈折率が低い材料を塗布することで、前記低屈折率層を形成する
請求項13記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項15】
前記低屈折率層を形成する工程では、前記平坦化層より屈折率が低い材料をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により堆積させることで、前記低屈折率層を形成する
請求項13記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項16】
前記低屈折率層を形成する工程は、
前記平坦化層より屈折率が低く、かつ、感光基を含む材料を、前記平坦化層上に形成する工程と、
グレー階調を有するマスクを介して、堆積された前記材料を形成する工程と、
露光された前記材料を現像することで、前記画素毎に膜厚が異なる前記低屈折率層を形成する工程とを含む
請求項13〜15のいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−243749(P2011−243749A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114753(P2010−114753)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】