圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータアレイ
【課題】高さ方向の長さが大きくならず、駆動回路の数を少なくすることが可能な圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】圧電アクチュエータ10は、底面が基部20に固定され、基部20から立設した柱状の圧電体31と、圧電体31に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備える。圧電体31に電界を付与する一対の電極32、33を二組備える。二組の電極は、圧電体31の中心軸CLと平行な平面である仮想平面VPL1にて圧電体31を二分割することにより形成される一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸負側の領域)と他の一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸正側)とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成される。駆動電源部は、圧電体31の「2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧Vinを、二組の「一対の電極」のうちの何れか一方の組の一対の電極に選択的に印加するように構成される。
【解決手段】圧電アクチュエータ10は、底面が基部20に固定され、基部20から立設した柱状の圧電体31と、圧電体31に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備える。圧電体31に電界を付与する一対の電極32、33を二組備える。二組の電極は、圧電体31の中心軸CLと平行な平面である仮想平面VPL1にて圧電体31を二分割することにより形成される一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸負側の領域)と他の一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸正側)とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成される。駆動電源部は、圧電体31の「2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧Vinを、二組の「一対の電極」のうちの何れか一方の組の一対の電極に選択的に印加するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の圧電体と駆動電源部とを備えるとともに前記圧電体の頂面に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータ、及び、その圧電アクチュエータを格子状に配置してなる圧電アクチュエータアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電アクチュエータの一つ(以下、「第1従来装置」とも称呼する。)は、四角柱形状の積層圧電素子を備えている。第1従来装置は、その積層圧電素子に屈曲変形又はせん断変形を発生させることにより移動体(球状体)と接触する摩擦材を変位させ、その摩擦材の変位によって移動体を回転させるようになっている。このとき、第1従来装置は、摩擦材の第1の方向の速度と第2の方向の速度とが異なるように積層圧電素子に電圧を印加している(特許文献1を参照。)。
【0003】
しかしながら、第1従来装置において移動体を迅速に移動させるためには、屈曲変形及びせん断変形を大きくする必要があるので、積層圧電素子の高さを高くする必要がある。その結果、圧電アクチュエータが大型化するという問題がある。
【0004】
従来の圧電アクチュエータの別の一つ(以下、「第2従来装置」とも称呼する。)は、角柱状の積層圧電素子の内部電極に特徴を持たせ、積層圧電素子の上部に屈曲振動を発生させるとともに積層圧電素子の下部に伸縮振動を発生させ、積層圧電素子の先端に楕円運動を発生させることによって移動体を移動させている(特許文献2を参照。)。
【0005】
しかしながら、第2従来装置は、前記屈曲振動を発生させるための駆動電圧を積層圧電素子に印加する駆動回路と、前記伸縮振動を発生させるための駆動電圧を積層圧電素子に印加する駆動回路と、を別々に備える必要がある。その結果、駆動回路の数が多くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−238644号公報
【特許文献2】特開平5−146171号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の一つは、高さ方向の長さが大きくならず且つ駆動回路の数を少なくすることが可能な圧電アクチュエータを提供することにある。
【0008】
本発明による圧電アクチュエータの一つ(以下、「第1圧電アクチュエータ」とも称呼する。)は、底面(一端)が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面(他端、前記底面と対向する面)に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータである。
【0009】
前記圧電体は、前記圧電体に電界を付与する一対の電極を二組備える。更に、その二組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な平面にて前記圧電体を二分割することにより形成される一つの領域と他の一つの領域とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成される。
【0010】
更に、前記駆動電源部は、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を、前記二組の一対の電極のうちの何れか一方の組の一対の電極に選択的に印加するように構成されている。即ち、前記二組の電極のうちの一組に駆動電圧が印加されたとき、他の一組に駆動電圧は印加されない。
【0011】
これによれば、駆動電圧の周波数が「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」であるから、前記二組の一対の電極のうちの一方にその駆動電圧が印加されているとき、圧電体に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」が発生する。その結果、圧電体の頂面は、例えば、図6の(C)において矢印Ar1により示したように、圧電体の中心軸に対して傾斜した方向(斜め方向、第1方向)に振動し、移動体はその振動によって移動させられる。
【0012】
同様に、前記二組の一対の電極のうちの他方に前記駆動電圧が印加されているとき、圧電体に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」が発生する。その結果、圧電体の頂面は、例えば、図7において矢印Ar2により示したように、圧電体の中心軸に対して傾斜した方向(斜め方向、第1方向とは異なる第2方向)に振動し、移動体はその振動によって移動させられる。
【0013】
このように、第1圧電アクチュエータは、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧により駆動されるので、圧電体の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体(圧電素子)の高さを大きくする必要が小さい。更に、第1圧電アクチュエータは、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を発生する駆動電源部(駆動回路)を有するのみでよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0014】
本発明による他の圧電アクチュエータ(以下、「第2圧電アクチュエータ」とも称呼する。)は、第1圧電アクチュエータと同様、底面(一端)が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面(他端、前記底面と対向する面)に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータである。
【0015】
前記圧電体は、前記圧電体に電界を付与する一対の電極を四組備える。更に、その四組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な二つの平面であって互いに交差する二つの平面にて前記圧電体を四分割することにより形成される四つの領域のそれぞれに一組ずつ存在するように形成される。
【0016】
更に、前記駆動電源部は、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を、前記四つの領域のうちの互いに隣接する任意の二つの領域内に形成されている二組の一対の電極に選択的に印加するように構成されている。即ち、前記四組の「一対の電極」のうちの互いに隣接する領域に存在する二組の「一対の電極」に駆動電圧が印加されたとき、他の二組の「一対の電極」に駆動電圧は印加されない。
【0017】
これによれば、圧電体に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」が発生し、圧電体の頂面は、選択された二組の「一対の電極」に応じて実質的に4方向に振動させられる。
【0018】
更に、第2圧電アクチュエータは、第1圧電アクチュエータと同様、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧により駆動されるので、圧電体の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体(圧電素子)の高さを大きくする必要が小さい。更に、第2圧電アクチュエータは、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を発生する駆動電源部(駆動回路)を有するのみでよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0019】
このような圧電アクチュエータにおいて、前記圧電体は正四角柱であり、前記圧電体の底面の一辺の長さLと、前記圧電体の高さHと、の比H/Lが「1以上であり且つ2以下」となるように調整されていることが好適である。これによれば、前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数とを近づけることができるので(図8を参照。)、圧電体の屈曲振動を2次屈曲共振時の屈曲振動により近づけることができ、且つ、圧電体の伸縮振動を1次伸縮共振時の伸縮振動により近づけることができる。その結果、圧電体の振動振幅を大きくすることができるので、圧電体(圧電素子)の高さをより低くすることができる。
【0020】
なお、第1圧電アクチュエータ又は第2圧電アクチュエータは、縦方向及び横方向に略一定の間隔を隔てて隣接するように(即ち、格子状に)配列されてなるアクチュエータアレイとして使用することもできる。
【0021】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータの概略断面図である。
【図2】図1に示した「移動体保持部材及び移動体」の平面図である。
【図3】図1に示した「圧電素子、駆動子及び保持部材支持部」の平面図である。
【図4】図1に示した「移動体保持部材及び移動体」の概略斜視図である。
【図5】図1に示した圧電アクチュエータの駆動電源部を示した回路図である。
【図6】図1に示した圧電素子の変形の様子を説明するための図である。
【図7】図1に示した圧電素子の変形の様子を説明するための図である。
【図8】図1に示した圧電素子の「底辺長さLに対する高さHの比H/L」と「1次伸縮共振周波数f1Hに対する2次屈曲共振周波数f2Lの比f2L/f1H」との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの「圧電素子、駆動子及び保持部材支持部」の平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの駆動電源部を示した回路図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの作動時における接続の態様を示した回路図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータをアレイ化する際に使用される「移動体保持部材及び移動体」の平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータをアレイ化する際に使用される「圧電素子、駆動子及び保持部材支持部」の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の各実施形態に係る圧電アクチュエータについて説明する。各実施形態に係る圧電アクチュエータは、例えば、リソグラフィ装置、位置決めステージ及びカメラレンズ移動装置等に適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
<第1実施形態>
(構成)
図1乃至図3に示したように、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10は、基部20、圧電素子30、駆動子40、保持部材支持部50、移動体(旋廻体)60、移動体保持部材70及びミラー80を備えている。
【0025】
圧電アクチュエータ10は、図12及び図13からも理解されるように、複数の圧電アクチュエータ10が「縦方向及び横方向に略一定の間隔を隔てて隣接するように配列されてなる(即ち、格子状、マトリクス状に配置されてなる)」アクチュエータアレイとして作成され得る。以下、一つの圧電アクチュエータ10について説明する。
【0026】
圧電素子30は、正四角柱状の圧電体31と、二組の電極層群32,33と、を備える。圧電体31(圧電素子30)の底面(一端)は基部20に固定され基部20と一体化されている。即ち、圧電素子30は、一端が基部20に固定され、基部20から立設し、且つ、他端が開放されている「柱状の圧電体31」を含む。
【0027】
圧電体31は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料からなる焼成体である。圧電体31の高さ方向の辺は、互いに直交する「X,Y及びZ軸」のZ軸に沿うように伸びている。従って、圧電体31の中心軸CLはZ軸と平行である。中心軸CL(Z軸)に沿って圧電体31を見た場合の圧電体31の形状(圧電体31の平面視の形状)は、図3に示したように、X軸に平行な辺及びY軸に平行な辺を有する正方形である。圧電体31の高さは「H」であり、圧電体31の底面及び頂面31aの辺の長さは「L」である。圧電体31はY軸正方向に分極されている。
【0028】
電極層群32は、図3に示したように、実線により示された複数の第1電極層と、破線により示された複数の第2電極層と、を含んでいる。電極層群32は、「中心軸CLを含む仮想平面であってZ−Y平面と平行な仮想平面VPL1」により圧電体31を二分割することにより形成される一つの領域(図3において仮想平面VPL1よりもX軸負側(左側)の領域)内に形成されている。
【0029】
電極層群32の複数の第1電極層は図示しない第1接続層により電気的に接続されている。電極層群32の複数の第2電極層は図示しない第2接続層により電気的に接続されている。第1電極層の層面はZ−X平面と平行である。第2電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第1電極層と第2電極層とは互いに平行である。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体31の高さHよりも僅かに小さい。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体31の底辺の長さLの半分(L/2)よりも僅かに小さい。第1電極層と第2電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群32は、「第1電極層と第2電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0030】
電極層群33は、実線により示された複数の第3電極層と、破線により示された複数の第4電極層と、を含んでいる。電極層群33は、仮想平面VPL1により圧電体31を二分割することにより形成される他の一つの領域(図3において仮想平面VPL1よりもX軸正側(右側)の領域)内に形成されている。
【0031】
電極層群33の複数の第3電極層は図示しない第3接続層により電気的に接続されている。電極層群33の複数の第4電極層は図示しない第4接続層により電気的に接続されている。第3電極層の層面はZ−X平面と平行である。第4電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第3電極層と第4電極層とは互いに平行である。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体31の高さHよりも僅かに小さい。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体31の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第3電極層と第4電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群33は、「第3電極層と第4電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。以上から、圧電素子30は、圧電体31に電界を付与する一対の電極(32、33)を二組備えていると言うことができる。
【0032】
駆動子40は、ステンレス及びタングステン等の耐摩耗性の金属材料、或いは、アルミナ及びジルコニア等のセラミックス材料からなる。駆動子40は、図1及び図3に示したように平板状(又は半球状)である。駆動子40は、圧電素子30の頂面(上面)上に、駆動子40の中心が圧電体31の中心軸CLと一致するように固定されている。
【0033】
保持部材支持部50は、圧電体31と同じ圧電体からなる。保持部材支持部50は、図1及び図3に示したように、直方体形状を有し、圧電素子30の周囲を取り囲むように基部20から立設している。保持部材支持部50と圧電素子30とは所定の距離Dだけ離間している。この結果、圧電素子30が変形できる空間が形成されている。保持部材支持部50の高さ(Z軸方向高さ)は圧電体31の高さHと同一である。
【0034】
移動体60は、図1及び図2に示したように、上面が平坦であり、下面が球面状であり、移動体60の上面に直交する方向から移動体60を見た場合の形状は(即ち、移動体60の平面視の形状)は円形である。移動体60の下面は、圧電素子30(圧電体31)の高さが「初期の高さ(圧電素子30が変形していない場合の高さ)H」以上であるとき、駆動子40の上面と接触するようになっている。換言すると、移動体60の下面は、圧電素子30の高さが初期の高さHよりも低いとき、駆動子40の上面と離間する。
【0035】
移動体保持部材70は、銅、ステンレス、ニッケル及びコバール等の金属材料、アルミナ及びジルコニア等のセラミックス材料、ガラス、並びに、シリコン等の材料からなる板体である。移動体保持部材70の上面は平面(平坦面)である。移動体保持部材70が圧電アクチュエータ10に組み込まれた状態において、移動体保持部材70の上面はX−Y平面と平行である。更に、移動体60が移動させられていない場合、移動体保持部材70の上面と移動体60の上面は同一面内に存在する。
【0036】
移動体保持部材70の上面に直交する方向(Z軸方向、以下、「保持部材主面直交方向」とも称呼する。)から移動体保持部材70を見た場合の移動体保持部材70の形状(移動体保持部材70の平面視の形状)は、図2に示したように、X軸に平行な辺及びY軸に平行な辺を有する正方形である。従って、移動体保持部材70は、平面視において、Y軸方向の中心線であってX軸と平行な中心線DL1(第1中心線DL1)と、X軸方向の中心線であってY軸と平行な中心線DL2(第2中心線DL2)と、を有する。第1中心線DL1と第2中心線DL2との交点は、移動体保持部材70の中心と称呼される。
【0037】
移動体保持部材70の厚さは、図2に破線により示した正方形SH1の外側領域において大きく、正方形SH1の内側領域において小さい。正方形SH1の重心は移動体保持部材70の中心と一致し、正方形SH1の2辺はX軸に平行であり、正方形SH1の他の2辺はY軸に平行である。この正方形SH1の辺の長さL1は、圧電素子30の辺の長さLよりも大きい。より具体的には、この辺の長さL1は値(L+2D)と等しい。即ち、図1に示したように、移動体保持部材70は、正方形SH1の外側領域に一定の厚さの厚肉部を有している。この厚肉部の下面は平坦であり、保持部材支持部50の上面に固定される。この厚肉部は、図1に示したように移動体保持部材70と一体的に構成されてもよいし、移動体保持部材とは別の部材からなり且つ移動体保持部材に接着又は接合されてもよい。
【0038】
このとき、移動体保持部材70、圧電素子30及び保持部材支持部50の平面視において(Z軸に沿って圧電アクチュエータ10を見た場合)、移動体保持部材70の中心と圧電素子30の中心軸CLとが一致し、且つ、移動体保持部材70の第2中心線DL2が圧電素子30の仮想平面VPL1と一致するように、移動体保持部材70が保持部材支持部50の上面に固定される。
【0039】
移動体保持部材70はジンバル構造を有する。より具体的に述べると、移動体保持部材70は、平面視において正方形SH1の内側に円形の穴71を備えている。円形の穴71の中心は移動体保持部材70の中心と一致している。更に、移動体保持部材70は、リング部(所定幅を有する円環部)72を備えている。リング部72の中心は移動体保持部材70の中心と一致している。リング部72の外径は円形の穴71の径よりも小さい。リング部61の内径は移動体60の外径よりも大きい。
【0040】
移動体保持部材70は、第1のヒンジ部(梁部)73a、第2のヒンジ部(梁部)73b、第3のヒンジ部(梁部)73c及び第4のヒンジ部(梁部)73dを備えている。
【0041】
第1のヒンジ部73aは、X軸方向に長手方向を有する帯状であって、第2中心線DL2よりもX軸正側の位置にて「リング部72」と「移動体保持部材70の円形の穴71の外側部」とを連結している。第1のヒンジ部73aの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第1中心線DL1と一致している。
【0042】
第2のヒンジ部73bは、X軸方向に長手方向を有する帯状であって、第2中心線DL2よりもX軸負側の位置にて「リング部72」と「移動体保持部材70の円形の穴71の外側部」とを連結している。第2のヒンジ部73bの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第1中心線DL1と一致している。
【0043】
第3のヒンジ部73cは、Y軸方向に長手方向を有する帯状であって、第1中心線DL1よりもY軸正側の位置にて移動体60とリング部72とを連結している。第3のヒンジ部73cの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第2中心線DL2と一致している。
【0044】
第4のヒンジ部73dは、Y軸方向に長手方向を有する帯状であって、第1中心線DL1よりもY軸負側の位置にて移動体60とリング部72とを連結している。第4のヒンジ部73dの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第2中心線DL2と一致している。
【0045】
この結果、移動体60は、移動体保持部材70に、実質的に二つの軸の周りに回転可能となるように保持されている。即ち、図4に示したように、移動体60がX軸周りに回動しようとする力を受けたとき、第1のヒンジ部73a及び第2のヒンジ部73bがX軸周りに捩じれる。この結果、移動体60はX軸周りに回転することができる。同様に、移動体60がY軸周りに回動しようとする力を受けたとき、第3のヒンジ部73c及び第4のヒンジ部73dがY軸周りに捩じれる。この結果、移動体60はY軸周りに回転することができる。
【0046】
移動体60の上部には円柱状の支柱部81が固定されている。支柱部81の上部にはミラー80が固定されている。従って、移動体60が回動させられることによって、ミラー80の角度が変更される。
【0047】
更に、圧電アクチュエータ10は、図5に示したように、駆動電源部90を備えている。駆動電源部90は、電源91及びスイッチング素子S1,S2を含んでいる。圧電アクチュエータ10により移動体60を移動させるとき、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2のいずれか一方が選択的に閉じられる。即ち、図5の(A)に示したように、スイッチング素子S2が閉じられているときスイッチング素子S1は開かれる。このとき、一対の電極33に駆動電圧が印加されるので、圧電素子30の仮想平面VPL1よりもX軸正方向側に存在する圧電体31の部分に変形力(圧電体31を変形させる力)が発生する。更に、図5の(B)に示したように、スイッチング素子S1が閉じられているときスイッチング素子S2は開かれる。このとき、一対の電極32に駆動電圧が印加されるので、圧電素子30の仮想平面VPL1よりもX軸負方向側に存在する圧電体31の部分に変形力が発生する。
【0048】
(作動)
次に、圧電アクチュエータ10の作動について説明する。いま、図5の(A)に示したように、スイッチング素子S2が閉じられ、スイッチング素子S1が開かれた状態(一対の電極33に駆動電圧が印加される状態)であると仮定する。このとき、電源91が発生する駆動電圧が、正弦波形を有し且つその周波数が圧電素子30(圧電体31)の1次伸縮共振周波数f1Hであるならば、圧電素子30は図6の(A)に示したように、Z軸方向において大きく伸縮する。
【0049】
一方、電源91が発生する駆動電圧が、正弦波形を有し且つその周波数が圧電素子30(圧電体31)の2次屈曲共振周波数f2Lであるならば、圧電素子30は図6の(B)に示したように、Z−X平面内において屈曲する。2次屈曲共振周波数f2Lは1次伸縮共振周波数f1Hよりも低い周波数である。
【0050】
本例において、電源91が実際に発生する駆動電圧Vinは、正弦波形を有し且つその周波数が「圧電素子30(圧電体31)の2次屈曲共振周波数f2Lと1次伸縮共振周波数f1Hとの間の周波数f」である電圧(交流電圧)である。従って、図5の(A)に示したように、スイッチング素子S2が閉じられ、スイッチング素子S1が開かれた状態であると、圧電素子30(圧電体31)は、図6の(C)に示したように、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図6の(C)に矢印Ar1により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって反時計方向に回転する。
【0051】
これに対し、圧電アクチュエータ10は、移動体60及びミラー80をY軸周りであって時計方向に回転させる必要がある場合、図5の(B)に示したように、スイッチング素子S1を閉じ、スイッチング素子S2を開き、それにより上記駆動電圧Vinを一対の電極32に印加する。この場合、圧電素子30(圧電体31)は、図7に示したように、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図7に矢印Ar2により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって時計方向に回転する。
【0052】
以上、説明したように、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10は、
底面が基部20に固定されるとともに前記基部20から立設した柱状の圧電体31と、前記圧電体31に駆動電圧を印加するための駆動電源部90と、を備え、前記圧電体31の頂面31aに生じる機械的振動により移動体60を移動させる圧電アクチュエータ10であって、
前記圧電体31は前記圧電体31に電界を付与する一対の電極を二組備え(32、33)、
前記二組の電極は、前記圧電体31の中心軸CLと平行な平面(仮想平面VPL1)にて前記圧電体31を二分割することにより形成される一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸負側の領域)と他の一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸正側)とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部90は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と前記圧電体の1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧Vinを、前記二組の「一対の電極」のうちの何れか一方に選択的に印加するように構成されている(図5を参照。)。
【0053】
このように圧電アクチュエータ10は、「圧電体31の2次屈曲共振周波数f2Lと1次伸縮共振周波数f1Hとの間の周波数f」を有する駆動電圧Vinにより圧電体31を駆動するので、圧電体31の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体31の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体31(圧電素子30)の高さHを大きくする必要が小さい。更に、圧電アクチュエータ10は、前記駆動電圧Vinを発生する駆動電源部(駆動回路)90のみを有ればよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0054】
なお、圧電体31の底面の一辺の長さ(底辺長さ)Lと、圧電体31の高さHと、の比H/Lは「1以上であり且つ2以下」となるように調整されていることが好適である。表1及び図8は、底辺長さLに対する高さHの比H/Lに対して「1次伸縮共振周波数f1Hに対する2次屈曲共振周波数f2Lの比f2L/f1H」がどのように変化するかについてのFEMシミュレーション結果を示す。
【表1】
【0055】
このシミュレーション結果によれば、比H/Lが「1以上であり且つ2以下」であるとき、比f2L/f1Hは「0.85以上(且つ0.90以下)」となることが理解される。即ち、比H/Lが「1以上であり且つ2以下」であると、圧電体31の2次屈曲共振周波数f2Lと1次伸縮共振周波数f1Hとを近づけることができるので、圧電体31の屈曲振動を2次屈曲共振時の屈曲振動により近づけることができ、且つ、圧電体31の伸縮振動を1次伸縮共振時の伸縮振動により近づけることができる。その結果、圧電体31の振動振幅を大きくすることができる。従って、圧電体31(圧電素子30)の高さをより低くすることができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、図9乃至図11を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータについて説明する。この第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10の圧電素子30を圧電素子100に置換した点、及び、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10の駆動電源部90を駆動電源部120に置換した点のみにおいて、圧電アクチュエータ10と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
【0057】
圧電素子100は圧電体101を有する。圧電素子100は、圧電体101に形成された電極層群(111〜114)を除き圧電素子30と同一である。従って、圧電体101はY軸正方向に分極されている。
【0058】
より具体的に述べると、圧電素子100は、4組の電極層群111、112、113、114を備える。電極層群111は、図9に示したように、実線により示された複数の第1電極層と、破線により示された複数の第2電極層と、を含んでいる。電極層群111は、「中心軸CLを含む仮想平面であってZ−Y平面と平行な仮想平面VPL1」と、「中心軸CLを含む仮想平面であってZ−X平面と平行な仮想平面VPL2(仮想平面VPL1と直角に交差する平面VPL2)」と、により、圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸負側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸正側の領域)に存在するように形成されている。
【0059】
電極層群111の複数の第1電極層は図示しない第1接続層により電気的に接続されている。電極層群111の複数の第2電極層は図示しない第2接続層により電気的に接続されている。第1電極層の層面はZ−X平面と平行である。第2電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第1電極層と第2電極層とは互いに平行である。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第1電極層と第2電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群111は、「第1電極層と第2電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0060】
電極層群112は、図9に示したように、実線により示された複数の第3電極層と、破線により示された複数の第4電極層と、を含んでいる。電極層群112は、仮想平面VPL1と仮想平面VPL2とにより圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の他の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸負側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸負側の領域)に存在するように形成されている。
【0061】
電極層群112の複数の第3電極層は図示しない第3接続層により電気的に接続されている。電極層群112の複数の第4電極層は図示しない第4接続層により電気的に接続されている。第3電極層の層面はZ−X平面と平行である。第4電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第3電極層と第4電極層とは互いに平行である。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第3電極層と第4電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群112は、「第3電極層と第4電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0062】
電極層群113は、図9に示したように、実線により示された複数の第5電極層と、破線により示された複数の第6電極層と、を含んでいる。電極層群113は、仮想平面VPL1と仮想平面VPL2とにより圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の他の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸正側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸正側の領域)に存在するように形成されている。
【0063】
電極層群113の複数の第5電極層は図示しない第5接続層により電気的に接続されている。電極層群113の複数の第6電極層は図示しない第6接続層により電気的に接続されている。第5電極層の層面はZ−X平面と平行である。第6電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第5電極層と第6極層とは互いに平行である。第5電極層及び第6電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第5電極層及び第6電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第5電極層と第6電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群113は、「第5電極層と第6電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0064】
電極層群114は、図9に示したように、実線により示された複数の第7電極層と、破線により示された複数の第8電極層と、を含んでいる。電極層群114は、仮想平面VPL1と仮想平面VPL2とにより圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の他の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸正側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸負側の領域)に存在するように形成されている。
【0065】
電極層群114の複数の第7電極層は図示しない第7接続層により電気的に接続されている。電極層群114の複数の第8電極層は図示しない第8接続層により電気的に接続されている。第7電極層の層面はZ−X平面と平行である。第8電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第7電極層と第8極層とは互いに平行である。第7電極層及び第8電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第7電極層及び第8電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第7電極層と第8電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群114は、「第7電極層と第8電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0066】
図10に示したように、駆動電源部120は、電源121及び四つのスイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4を含んでいる。電源121は電源91と同一の駆動電圧Vin(周波数f)を出力する。第2実施形態の圧電アクチュエータにより移動体60を移動させるとき、イッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4は次に述べるように閉じられる。
【0067】
(A)スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4は閉じられ、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は開かれる(図11の(A)を参照。)。このとき、一対の電極113及び一対の電極114に駆動電圧Vinが印加される。よって、図6の(C)に示したように、圧電素子100は伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図6の(C)に矢印Ar1により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって反時計方向に回転する。
【0068】
(B)スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は閉じられ、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4は開かれる(図11の(B)を参照。)。このとき、一対の電極111及び一対の電極112に駆動電圧Vinが印加される。よって、圧電素子100は、図7に示したように、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図7に矢印Ar2により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって時計方向に回転する。
【0069】
(C)スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW3は閉じられ、スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW4は開かれる(図11の(C)を参照。)。このとき、一対の電極111及び一対の電極113に駆動電圧Vinが印加される。よって、圧電素子100は、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。この結果、移動体60及びミラー80は、X軸周りであって反時計方向に回転する。
【0070】
(D)スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW4は閉じられ、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW3は開かれる(図11の(D)を参照。)。このとき、一対の電極112及び一対の電極114に駆動電圧Vinが印加される。よって、圧電素子100は、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。この結果、移動体60及びミラー80は、X軸周りであって時計方向に回転する。
【0071】
以上、説明したように、第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、
底面が基部20に固定されるとともに前記基部20から立設した柱状の圧電体101と、前記圧電体101に駆動電圧を印加するための駆動電源部120と、を備え、前記圧電体101の頂面に生じる機械的振動により移動体60を移動させる圧電アクチュエータであって、
前記圧電体101は前記圧電体101に電界を付与する一対の電極を四組備え(111、112、113、114)、
前記四組の電極は、前記圧電体101の中心軸CLと平行な二つの平面であって互いに交差する二つの平面(仮想平面VPL1及び仮想平面VPL2)にて前記圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域のそれぞれに一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部120は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧Vinを、前記四つの領域のうちの互いに隣接する任意の二つの領域内に形成されている二組の一対の電極に選択的に印加するように構成されている(図11を参照。)。
【0072】
これによれば、駆動電源部120によって圧電体101に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」を発生させることができ、且つ、圧電体101の頂面に設けられた駆動子40は、選択された二組の「一対の電極」に応じて実質的に4方向に振動させられる。
【0073】
更に、第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、第1実施形態の圧電アクチュエータ10と同様、「圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧Vinにより圧電体101を駆動するので、圧電体101の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体101の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体101(圧電素子100)の高さを大きくする必要が小さい。更に、第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、「圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧Vinを発生する駆動電源部(駆動回路)120を有するのみでよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0074】
なお、圧電体101は、圧電体31と同様、圧電体101の底面の一辺の長さLと、圧電体101の高さHと、の比H/Lが「1以上であり且つ2以下」となるように調整されていることが好適である。これによれば、圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数とを近づけることができるので、圧電体101の屈曲振動を2次屈曲共振時の屈曲振動により近づけることができ、且つ、圧電体101の伸縮振動を1次伸縮共振時の伸縮振動により近づけることができる。その結果、圧電体101の振動振幅を大きくすることができる。従って、圧電体101(圧電素子100)の高さをより低くすることができる。
【0075】
第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、
「四組の「一対の電極」を備え、その四組の「一対の電極」は、圧電体101の中心軸CLに直交する平面(X−Y平面に平行な平面)にて圧電体101を切断した断面において、前記圧電体101の中心軸CLを原点としたときに同原点を通るX軸及び同原点を通り且つ同X軸と直交するY軸により規定される第1乃至第4象限のそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成され、
駆動電源部120は、移動体を移動させる際、
圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧Vinを、
前記第1及び第2象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第1状態(図11の(C)に示した状態)、
前記第2及び第3象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第2状態(図11の(B)に示した状態)、
前記第3及び第4象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第3状態(図11の(D)に示した状態)、及び、
前記第4及び第1象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第4状態(図11の(A)に示した状態)、
のうちの何れかの状態を実現するように構成された圧電アクチュエータ」であると表現することもできる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、第1実施形態及び第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、「移動体60及び移動体保持部材70」をY軸方向(縦方向)及びX軸方向(横方向)に一定の間隔を隔てて隣接配置(格子状に配置)したもの(図12を参照。)を、「基部20、圧電素子30、駆動子40及び保持部材支持部50」をY軸方向(縦方向)及びX軸方向(横方向)に一定の間隔を隔てて隣接配置(格子状に配置)したもの(図13を参照。)に重ねることにより、第1実施形態及び第2実施形態に係る圧電アクチュエータを格子状に(縦方向及び横方向に一定の間隔を隔てて隣接するように)配列してなるアクチュエータアレイとして作製・使用することもできる。
【0077】
更に、移動体60は回転する移動体であったが、X軸方向及びY軸方向のうちの一方のみに移動する移動体、又は、X−Y平面内において平行移動する移動体であってもよい。加えて、各実施形態に係る圧電アクチュエータにおいて、圧電体31又は圧電体101の内部に形成されている電極層はZ−X平面に平行であったが、X−Y平面に平行であってもよい。更に、圧電体31及び圧電体101の形状は、正四角柱であったが、六角柱(正六角柱)、八角柱(正八角柱)等の角柱(正多角柱)、又は、円柱でもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…圧電アクチュエータ、20…基部、30…圧電素子、31…圧電体、31a…頂面、32…電極層群(一対の電極)、33…電極層群(一対の電極)、40…駆動子、50…保持部材支持部、60…移動体、70…移動体保持部材、80…ミラー、90…駆動電源部、91…電源、100…圧電素子、101…圧電体、111、112、113、114…電極層群(一対の電極)、120…駆動電源部、121…電源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状の圧電体と駆動電源部とを備えるとともに前記圧電体の頂面に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータ、及び、その圧電アクチュエータを格子状に配置してなる圧電アクチュエータアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電アクチュエータの一つ(以下、「第1従来装置」とも称呼する。)は、四角柱形状の積層圧電素子を備えている。第1従来装置は、その積層圧電素子に屈曲変形又はせん断変形を発生させることにより移動体(球状体)と接触する摩擦材を変位させ、その摩擦材の変位によって移動体を回転させるようになっている。このとき、第1従来装置は、摩擦材の第1の方向の速度と第2の方向の速度とが異なるように積層圧電素子に電圧を印加している(特許文献1を参照。)。
【0003】
しかしながら、第1従来装置において移動体を迅速に移動させるためには、屈曲変形及びせん断変形を大きくする必要があるので、積層圧電素子の高さを高くする必要がある。その結果、圧電アクチュエータが大型化するという問題がある。
【0004】
従来の圧電アクチュエータの別の一つ(以下、「第2従来装置」とも称呼する。)は、角柱状の積層圧電素子の内部電極に特徴を持たせ、積層圧電素子の上部に屈曲振動を発生させるとともに積層圧電素子の下部に伸縮振動を発生させ、積層圧電素子の先端に楕円運動を発生させることによって移動体を移動させている(特許文献2を参照。)。
【0005】
しかしながら、第2従来装置は、前記屈曲振動を発生させるための駆動電圧を積層圧電素子に印加する駆動回路と、前記伸縮振動を発生させるための駆動電圧を積層圧電素子に印加する駆動回路と、を別々に備える必要がある。その結果、駆動回路の数が多くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−238644号公報
【特許文献2】特開平5−146171号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の一つは、高さ方向の長さが大きくならず且つ駆動回路の数を少なくすることが可能な圧電アクチュエータを提供することにある。
【0008】
本発明による圧電アクチュエータの一つ(以下、「第1圧電アクチュエータ」とも称呼する。)は、底面(一端)が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面(他端、前記底面と対向する面)に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータである。
【0009】
前記圧電体は、前記圧電体に電界を付与する一対の電極を二組備える。更に、その二組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な平面にて前記圧電体を二分割することにより形成される一つの領域と他の一つの領域とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成される。
【0010】
更に、前記駆動電源部は、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を、前記二組の一対の電極のうちの何れか一方の組の一対の電極に選択的に印加するように構成されている。即ち、前記二組の電極のうちの一組に駆動電圧が印加されたとき、他の一組に駆動電圧は印加されない。
【0011】
これによれば、駆動電圧の周波数が「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」であるから、前記二組の一対の電極のうちの一方にその駆動電圧が印加されているとき、圧電体に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」が発生する。その結果、圧電体の頂面は、例えば、図6の(C)において矢印Ar1により示したように、圧電体の中心軸に対して傾斜した方向(斜め方向、第1方向)に振動し、移動体はその振動によって移動させられる。
【0012】
同様に、前記二組の一対の電極のうちの他方に前記駆動電圧が印加されているとき、圧電体に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」が発生する。その結果、圧電体の頂面は、例えば、図7において矢印Ar2により示したように、圧電体の中心軸に対して傾斜した方向(斜め方向、第1方向とは異なる第2方向)に振動し、移動体はその振動によって移動させられる。
【0013】
このように、第1圧電アクチュエータは、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧により駆動されるので、圧電体の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体(圧電素子)の高さを大きくする必要が小さい。更に、第1圧電アクチュエータは、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を発生する駆動電源部(駆動回路)を有するのみでよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0014】
本発明による他の圧電アクチュエータ(以下、「第2圧電アクチュエータ」とも称呼する。)は、第1圧電アクチュエータと同様、底面(一端)が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面(他端、前記底面と対向する面)に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータである。
【0015】
前記圧電体は、前記圧電体に電界を付与する一対の電極を四組備える。更に、その四組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な二つの平面であって互いに交差する二つの平面にて前記圧電体を四分割することにより形成される四つの領域のそれぞれに一組ずつ存在するように形成される。
【0016】
更に、前記駆動電源部は、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を、前記四つの領域のうちの互いに隣接する任意の二つの領域内に形成されている二組の一対の電極に選択的に印加するように構成されている。即ち、前記四組の「一対の電極」のうちの互いに隣接する領域に存在する二組の「一対の電極」に駆動電圧が印加されたとき、他の二組の「一対の電極」に駆動電圧は印加されない。
【0017】
これによれば、圧電体に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」が発生し、圧電体の頂面は、選択された二組の「一対の電極」に応じて実質的に4方向に振動させられる。
【0018】
更に、第2圧電アクチュエータは、第1圧電アクチュエータと同様、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧により駆動されるので、圧電体の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体(圧電素子)の高さを大きくする必要が小さい。更に、第2圧電アクチュエータは、「前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧を発生する駆動電源部(駆動回路)を有するのみでよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0019】
このような圧電アクチュエータにおいて、前記圧電体は正四角柱であり、前記圧電体の底面の一辺の長さLと、前記圧電体の高さHと、の比H/Lが「1以上であり且つ2以下」となるように調整されていることが好適である。これによれば、前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数とを近づけることができるので(図8を参照。)、圧電体の屈曲振動を2次屈曲共振時の屈曲振動により近づけることができ、且つ、圧電体の伸縮振動を1次伸縮共振時の伸縮振動により近づけることができる。その結果、圧電体の振動振幅を大きくすることができるので、圧電体(圧電素子)の高さをより低くすることができる。
【0020】
なお、第1圧電アクチュエータ又は第2圧電アクチュエータは、縦方向及び横方向に略一定の間隔を隔てて隣接するように(即ち、格子状に)配列されてなるアクチュエータアレイとして使用することもできる。
【0021】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータの概略断面図である。
【図2】図1に示した「移動体保持部材及び移動体」の平面図である。
【図3】図1に示した「圧電素子、駆動子及び保持部材支持部」の平面図である。
【図4】図1に示した「移動体保持部材及び移動体」の概略斜視図である。
【図5】図1に示した圧電アクチュエータの駆動電源部を示した回路図である。
【図6】図1に示した圧電素子の変形の様子を説明するための図である。
【図7】図1に示した圧電素子の変形の様子を説明するための図である。
【図8】図1に示した圧電素子の「底辺長さLに対する高さHの比H/L」と「1次伸縮共振周波数f1Hに対する2次屈曲共振周波数f2Lの比f2L/f1H」との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの「圧電素子、駆動子及び保持部材支持部」の平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの駆動電源部を示した回路図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータの作動時における接続の態様を示した回路図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータをアレイ化する際に使用される「移動体保持部材及び移動体」の平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータをアレイ化する際に使用される「圧電素子、駆動子及び保持部材支持部」の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の各実施形態に係る圧電アクチュエータについて説明する。各実施形態に係る圧電アクチュエータは、例えば、リソグラフィ装置、位置決めステージ及びカメラレンズ移動装置等に適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
<第1実施形態>
(構成)
図1乃至図3に示したように、本発明の第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10は、基部20、圧電素子30、駆動子40、保持部材支持部50、移動体(旋廻体)60、移動体保持部材70及びミラー80を備えている。
【0025】
圧電アクチュエータ10は、図12及び図13からも理解されるように、複数の圧電アクチュエータ10が「縦方向及び横方向に略一定の間隔を隔てて隣接するように配列されてなる(即ち、格子状、マトリクス状に配置されてなる)」アクチュエータアレイとして作成され得る。以下、一つの圧電アクチュエータ10について説明する。
【0026】
圧電素子30は、正四角柱状の圧電体31と、二組の電極層群32,33と、を備える。圧電体31(圧電素子30)の底面(一端)は基部20に固定され基部20と一体化されている。即ち、圧電素子30は、一端が基部20に固定され、基部20から立設し、且つ、他端が開放されている「柱状の圧電体31」を含む。
【0027】
圧電体31は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料からなる焼成体である。圧電体31の高さ方向の辺は、互いに直交する「X,Y及びZ軸」のZ軸に沿うように伸びている。従って、圧電体31の中心軸CLはZ軸と平行である。中心軸CL(Z軸)に沿って圧電体31を見た場合の圧電体31の形状(圧電体31の平面視の形状)は、図3に示したように、X軸に平行な辺及びY軸に平行な辺を有する正方形である。圧電体31の高さは「H」であり、圧電体31の底面及び頂面31aの辺の長さは「L」である。圧電体31はY軸正方向に分極されている。
【0028】
電極層群32は、図3に示したように、実線により示された複数の第1電極層と、破線により示された複数の第2電極層と、を含んでいる。電極層群32は、「中心軸CLを含む仮想平面であってZ−Y平面と平行な仮想平面VPL1」により圧電体31を二分割することにより形成される一つの領域(図3において仮想平面VPL1よりもX軸負側(左側)の領域)内に形成されている。
【0029】
電極層群32の複数の第1電極層は図示しない第1接続層により電気的に接続されている。電極層群32の複数の第2電極層は図示しない第2接続層により電気的に接続されている。第1電極層の層面はZ−X平面と平行である。第2電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第1電極層と第2電極層とは互いに平行である。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体31の高さHよりも僅かに小さい。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体31の底辺の長さLの半分(L/2)よりも僅かに小さい。第1電極層と第2電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群32は、「第1電極層と第2電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0030】
電極層群33は、実線により示された複数の第3電極層と、破線により示された複数の第4電極層と、を含んでいる。電極層群33は、仮想平面VPL1により圧電体31を二分割することにより形成される他の一つの領域(図3において仮想平面VPL1よりもX軸正側(右側)の領域)内に形成されている。
【0031】
電極層群33の複数の第3電極層は図示しない第3接続層により電気的に接続されている。電極層群33の複数の第4電極層は図示しない第4接続層により電気的に接続されている。第3電極層の層面はZ−X平面と平行である。第4電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第3電極層と第4電極層とは互いに平行である。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体31の高さHよりも僅かに小さい。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体31の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第3電極層と第4電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群33は、「第3電極層と第4電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。以上から、圧電素子30は、圧電体31に電界を付与する一対の電極(32、33)を二組備えていると言うことができる。
【0032】
駆動子40は、ステンレス及びタングステン等の耐摩耗性の金属材料、或いは、アルミナ及びジルコニア等のセラミックス材料からなる。駆動子40は、図1及び図3に示したように平板状(又は半球状)である。駆動子40は、圧電素子30の頂面(上面)上に、駆動子40の中心が圧電体31の中心軸CLと一致するように固定されている。
【0033】
保持部材支持部50は、圧電体31と同じ圧電体からなる。保持部材支持部50は、図1及び図3に示したように、直方体形状を有し、圧電素子30の周囲を取り囲むように基部20から立設している。保持部材支持部50と圧電素子30とは所定の距離Dだけ離間している。この結果、圧電素子30が変形できる空間が形成されている。保持部材支持部50の高さ(Z軸方向高さ)は圧電体31の高さHと同一である。
【0034】
移動体60は、図1及び図2に示したように、上面が平坦であり、下面が球面状であり、移動体60の上面に直交する方向から移動体60を見た場合の形状は(即ち、移動体60の平面視の形状)は円形である。移動体60の下面は、圧電素子30(圧電体31)の高さが「初期の高さ(圧電素子30が変形していない場合の高さ)H」以上であるとき、駆動子40の上面と接触するようになっている。換言すると、移動体60の下面は、圧電素子30の高さが初期の高さHよりも低いとき、駆動子40の上面と離間する。
【0035】
移動体保持部材70は、銅、ステンレス、ニッケル及びコバール等の金属材料、アルミナ及びジルコニア等のセラミックス材料、ガラス、並びに、シリコン等の材料からなる板体である。移動体保持部材70の上面は平面(平坦面)である。移動体保持部材70が圧電アクチュエータ10に組み込まれた状態において、移動体保持部材70の上面はX−Y平面と平行である。更に、移動体60が移動させられていない場合、移動体保持部材70の上面と移動体60の上面は同一面内に存在する。
【0036】
移動体保持部材70の上面に直交する方向(Z軸方向、以下、「保持部材主面直交方向」とも称呼する。)から移動体保持部材70を見た場合の移動体保持部材70の形状(移動体保持部材70の平面視の形状)は、図2に示したように、X軸に平行な辺及びY軸に平行な辺を有する正方形である。従って、移動体保持部材70は、平面視において、Y軸方向の中心線であってX軸と平行な中心線DL1(第1中心線DL1)と、X軸方向の中心線であってY軸と平行な中心線DL2(第2中心線DL2)と、を有する。第1中心線DL1と第2中心線DL2との交点は、移動体保持部材70の中心と称呼される。
【0037】
移動体保持部材70の厚さは、図2に破線により示した正方形SH1の外側領域において大きく、正方形SH1の内側領域において小さい。正方形SH1の重心は移動体保持部材70の中心と一致し、正方形SH1の2辺はX軸に平行であり、正方形SH1の他の2辺はY軸に平行である。この正方形SH1の辺の長さL1は、圧電素子30の辺の長さLよりも大きい。より具体的には、この辺の長さL1は値(L+2D)と等しい。即ち、図1に示したように、移動体保持部材70は、正方形SH1の外側領域に一定の厚さの厚肉部を有している。この厚肉部の下面は平坦であり、保持部材支持部50の上面に固定される。この厚肉部は、図1に示したように移動体保持部材70と一体的に構成されてもよいし、移動体保持部材とは別の部材からなり且つ移動体保持部材に接着又は接合されてもよい。
【0038】
このとき、移動体保持部材70、圧電素子30及び保持部材支持部50の平面視において(Z軸に沿って圧電アクチュエータ10を見た場合)、移動体保持部材70の中心と圧電素子30の中心軸CLとが一致し、且つ、移動体保持部材70の第2中心線DL2が圧電素子30の仮想平面VPL1と一致するように、移動体保持部材70が保持部材支持部50の上面に固定される。
【0039】
移動体保持部材70はジンバル構造を有する。より具体的に述べると、移動体保持部材70は、平面視において正方形SH1の内側に円形の穴71を備えている。円形の穴71の中心は移動体保持部材70の中心と一致している。更に、移動体保持部材70は、リング部(所定幅を有する円環部)72を備えている。リング部72の中心は移動体保持部材70の中心と一致している。リング部72の外径は円形の穴71の径よりも小さい。リング部61の内径は移動体60の外径よりも大きい。
【0040】
移動体保持部材70は、第1のヒンジ部(梁部)73a、第2のヒンジ部(梁部)73b、第3のヒンジ部(梁部)73c及び第4のヒンジ部(梁部)73dを備えている。
【0041】
第1のヒンジ部73aは、X軸方向に長手方向を有する帯状であって、第2中心線DL2よりもX軸正側の位置にて「リング部72」と「移動体保持部材70の円形の穴71の外側部」とを連結している。第1のヒンジ部73aの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第1中心線DL1と一致している。
【0042】
第2のヒンジ部73bは、X軸方向に長手方向を有する帯状であって、第2中心線DL2よりもX軸負側の位置にて「リング部72」と「移動体保持部材70の円形の穴71の外側部」とを連結している。第2のヒンジ部73bの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第1中心線DL1と一致している。
【0043】
第3のヒンジ部73cは、Y軸方向に長手方向を有する帯状であって、第1中心線DL1よりもY軸正側の位置にて移動体60とリング部72とを連結している。第3のヒンジ部73cの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第2中心線DL2と一致している。
【0044】
第4のヒンジ部73dは、Y軸方向に長手方向を有する帯状であって、第1中心線DL1よりもY軸負側の位置にて移動体60とリング部72とを連結している。第4のヒンジ部73dの長手方向に平行な中心線は移動体保持部材70の第2中心線DL2と一致している。
【0045】
この結果、移動体60は、移動体保持部材70に、実質的に二つの軸の周りに回転可能となるように保持されている。即ち、図4に示したように、移動体60がX軸周りに回動しようとする力を受けたとき、第1のヒンジ部73a及び第2のヒンジ部73bがX軸周りに捩じれる。この結果、移動体60はX軸周りに回転することができる。同様に、移動体60がY軸周りに回動しようとする力を受けたとき、第3のヒンジ部73c及び第4のヒンジ部73dがY軸周りに捩じれる。この結果、移動体60はY軸周りに回転することができる。
【0046】
移動体60の上部には円柱状の支柱部81が固定されている。支柱部81の上部にはミラー80が固定されている。従って、移動体60が回動させられることによって、ミラー80の角度が変更される。
【0047】
更に、圧電アクチュエータ10は、図5に示したように、駆動電源部90を備えている。駆動電源部90は、電源91及びスイッチング素子S1,S2を含んでいる。圧電アクチュエータ10により移動体60を移動させるとき、スイッチング素子S1及びスイッチング素子S2のいずれか一方が選択的に閉じられる。即ち、図5の(A)に示したように、スイッチング素子S2が閉じられているときスイッチング素子S1は開かれる。このとき、一対の電極33に駆動電圧が印加されるので、圧電素子30の仮想平面VPL1よりもX軸正方向側に存在する圧電体31の部分に変形力(圧電体31を変形させる力)が発生する。更に、図5の(B)に示したように、スイッチング素子S1が閉じられているときスイッチング素子S2は開かれる。このとき、一対の電極32に駆動電圧が印加されるので、圧電素子30の仮想平面VPL1よりもX軸負方向側に存在する圧電体31の部分に変形力が発生する。
【0048】
(作動)
次に、圧電アクチュエータ10の作動について説明する。いま、図5の(A)に示したように、スイッチング素子S2が閉じられ、スイッチング素子S1が開かれた状態(一対の電極33に駆動電圧が印加される状態)であると仮定する。このとき、電源91が発生する駆動電圧が、正弦波形を有し且つその周波数が圧電素子30(圧電体31)の1次伸縮共振周波数f1Hであるならば、圧電素子30は図6の(A)に示したように、Z軸方向において大きく伸縮する。
【0049】
一方、電源91が発生する駆動電圧が、正弦波形を有し且つその周波数が圧電素子30(圧電体31)の2次屈曲共振周波数f2Lであるならば、圧電素子30は図6の(B)に示したように、Z−X平面内において屈曲する。2次屈曲共振周波数f2Lは1次伸縮共振周波数f1Hよりも低い周波数である。
【0050】
本例において、電源91が実際に発生する駆動電圧Vinは、正弦波形を有し且つその周波数が「圧電素子30(圧電体31)の2次屈曲共振周波数f2Lと1次伸縮共振周波数f1Hとの間の周波数f」である電圧(交流電圧)である。従って、図5の(A)に示したように、スイッチング素子S2が閉じられ、スイッチング素子S1が開かれた状態であると、圧電素子30(圧電体31)は、図6の(C)に示したように、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図6の(C)に矢印Ar1により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって反時計方向に回転する。
【0051】
これに対し、圧電アクチュエータ10は、移動体60及びミラー80をY軸周りであって時計方向に回転させる必要がある場合、図5の(B)に示したように、スイッチング素子S1を閉じ、スイッチング素子S2を開き、それにより上記駆動電圧Vinを一対の電極32に印加する。この場合、圧電素子30(圧電体31)は、図7に示したように、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図7に矢印Ar2により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって時計方向に回転する。
【0052】
以上、説明したように、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10は、
底面が基部20に固定されるとともに前記基部20から立設した柱状の圧電体31と、前記圧電体31に駆動電圧を印加するための駆動電源部90と、を備え、前記圧電体31の頂面31aに生じる機械的振動により移動体60を移動させる圧電アクチュエータ10であって、
前記圧電体31は前記圧電体31に電界を付与する一対の電極を二組備え(32、33)、
前記二組の電極は、前記圧電体31の中心軸CLと平行な平面(仮想平面VPL1)にて前記圧電体31を二分割することにより形成される一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸負側の領域)と他の一つの領域(仮想平面VPL1よりもX軸正側)とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部90は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と前記圧電体の1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧Vinを、前記二組の「一対の電極」のうちの何れか一方に選択的に印加するように構成されている(図5を参照。)。
【0053】
このように圧電アクチュエータ10は、「圧電体31の2次屈曲共振周波数f2Lと1次伸縮共振周波数f1Hとの間の周波数f」を有する駆動電圧Vinにより圧電体31を駆動するので、圧電体31の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体31の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体31(圧電素子30)の高さHを大きくする必要が小さい。更に、圧電アクチュエータ10は、前記駆動電圧Vinを発生する駆動電源部(駆動回路)90のみを有ればよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0054】
なお、圧電体31の底面の一辺の長さ(底辺長さ)Lと、圧電体31の高さHと、の比H/Lは「1以上であり且つ2以下」となるように調整されていることが好適である。表1及び図8は、底辺長さLに対する高さHの比H/Lに対して「1次伸縮共振周波数f1Hに対する2次屈曲共振周波数f2Lの比f2L/f1H」がどのように変化するかについてのFEMシミュレーション結果を示す。
【表1】
【0055】
このシミュレーション結果によれば、比H/Lが「1以上であり且つ2以下」であるとき、比f2L/f1Hは「0.85以上(且つ0.90以下)」となることが理解される。即ち、比H/Lが「1以上であり且つ2以下」であると、圧電体31の2次屈曲共振周波数f2Lと1次伸縮共振周波数f1Hとを近づけることができるので、圧電体31の屈曲振動を2次屈曲共振時の屈曲振動により近づけることができ、且つ、圧電体31の伸縮振動を1次伸縮共振時の伸縮振動により近づけることができる。その結果、圧電体31の振動振幅を大きくすることができる。従って、圧電体31(圧電素子30)の高さをより低くすることができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、図9乃至図11を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る圧電アクチュエータについて説明する。この第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10の圧電素子30を圧電素子100に置換した点、及び、第1実施形態に係る圧電アクチュエータ10の駆動電源部90を駆動電源部120に置換した点のみにおいて、圧電アクチュエータ10と相違している。従って、以下、この相違点を中心として説明する。
【0057】
圧電素子100は圧電体101を有する。圧電素子100は、圧電体101に形成された電極層群(111〜114)を除き圧電素子30と同一である。従って、圧電体101はY軸正方向に分極されている。
【0058】
より具体的に述べると、圧電素子100は、4組の電極層群111、112、113、114を備える。電極層群111は、図9に示したように、実線により示された複数の第1電極層と、破線により示された複数の第2電極層と、を含んでいる。電極層群111は、「中心軸CLを含む仮想平面であってZ−Y平面と平行な仮想平面VPL1」と、「中心軸CLを含む仮想平面であってZ−X平面と平行な仮想平面VPL2(仮想平面VPL1と直角に交差する平面VPL2)」と、により、圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸負側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸正側の領域)に存在するように形成されている。
【0059】
電極層群111の複数の第1電極層は図示しない第1接続層により電気的に接続されている。電極層群111の複数の第2電極層は図示しない第2接続層により電気的に接続されている。第1電極層の層面はZ−X平面と平行である。第2電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第1電極層と第2電極層とは互いに平行である。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第1電極層及び第2電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第1電極層と第2電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群111は、「第1電極層と第2電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0060】
電極層群112は、図9に示したように、実線により示された複数の第3電極層と、破線により示された複数の第4電極層と、を含んでいる。電極層群112は、仮想平面VPL1と仮想平面VPL2とにより圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の他の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸負側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸負側の領域)に存在するように形成されている。
【0061】
電極層群112の複数の第3電極層は図示しない第3接続層により電気的に接続されている。電極層群112の複数の第4電極層は図示しない第4接続層により電気的に接続されている。第3電極層の層面はZ−X平面と平行である。第4電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第3電極層と第4電極層とは互いに平行である。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第3電極層及び第4電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第3電極層と第4電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群112は、「第3電極層と第4電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0062】
電極層群113は、図9に示したように、実線により示された複数の第5電極層と、破線により示された複数の第6電極層と、を含んでいる。電極層群113は、仮想平面VPL1と仮想平面VPL2とにより圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の他の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸正側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸正側の領域)に存在するように形成されている。
【0063】
電極層群113の複数の第5電極層は図示しない第5接続層により電気的に接続されている。電極層群113の複数の第6電極層は図示しない第6接続層により電気的に接続されている。第5電極層の層面はZ−X平面と平行である。第6電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第5電極層と第6極層とは互いに平行である。第5電極層及び第6電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第5電極層及び第6電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第5電極層と第6電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群113は、「第5電極層と第6電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0064】
電極層群114は、図9に示したように、実線により示された複数の第7電極層と、破線により示された複数の第8電極層と、を含んでいる。電極層群114は、仮想平面VPL1と仮想平面VPL2とにより圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域の他の一つ(即ち、仮想平面VPL1よりもX軸正側であり且つ仮想平面VPL2よりもY軸負側の領域)に存在するように形成されている。
【0065】
電極層群114の複数の第7電極層は図示しない第7接続層により電気的に接続されている。電極層群114の複数の第8電極層は図示しない第8接続層により電気的に接続されている。第7電極層の層面はZ−X平面と平行である。第8電極層の層面もZ−X平面と平行である。よって、第7電極層と第8極層とは互いに平行である。第7電極層及び第8電極層のそれぞれの高さ(Z軸方向長さ)は圧電体101の高さHよりも僅かに小さい。第7電極層及び第8電極層のそれぞれの幅(X軸方向長さ)は圧電体101の底辺の長さLの半分よりも僅かに小さい。第7電極層と第8電極層は、互いに対向するように交互に配置されている。従って、電極層群114は、「第7電極層と第8電極層とから構成される一対の電極」であると言うことができる。
【0066】
図10に示したように、駆動電源部120は、電源121及び四つのスイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4を含んでいる。電源121は電源91と同一の駆動電圧Vin(周波数f)を出力する。第2実施形態の圧電アクチュエータにより移動体60を移動させるとき、イッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4は次に述べるように閉じられる。
【0067】
(A)スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4は閉じられ、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は開かれる(図11の(A)を参照。)。このとき、一対の電極113及び一対の電極114に駆動電圧Vinが印加される。よって、図6の(C)に示したように、圧電素子100は伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図6の(C)に矢印Ar1により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって反時計方向に回転する。
【0068】
(B)スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW2は閉じられ、スイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW4は開かれる(図11の(B)を参照。)。このとき、一対の電極111及び一対の電極112に駆動電圧Vinが印加される。よって、圧電素子100は、図7に示したように、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。これにより、駆動子40は図7に矢印Ar2により示したように移動(振動)する。この結果、移動体60及びミラー80は、Y軸周りであって時計方向に回転する。
【0069】
(C)スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW3は閉じられ、スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW4は開かれる(図11の(C)を参照。)。このとき、一対の電極111及び一対の電極113に駆動電圧Vinが印加される。よって、圧電素子100は、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。この結果、移動体60及びミラー80は、X軸周りであって反時計方向に回転する。
【0070】
(D)スイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW4は閉じられ、スイッチング素子SW1及びスイッチング素子SW3は開かれる(図11の(D)を参照。)。このとき、一対の電極112及び一対の電極114に駆動電圧Vinが印加される。よって、圧電素子100は、伸縮振動と屈曲振動とを重ね合わせたように振動する。この結果、移動体60及びミラー80は、X軸周りであって時計方向に回転する。
【0071】
以上、説明したように、第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、
底面が基部20に固定されるとともに前記基部20から立設した柱状の圧電体101と、前記圧電体101に駆動電圧を印加するための駆動電源部120と、を備え、前記圧電体101の頂面に生じる機械的振動により移動体60を移動させる圧電アクチュエータであって、
前記圧電体101は前記圧電体101に電界を付与する一対の電極を四組備え(111、112、113、114)、
前記四組の電極は、前記圧電体101の中心軸CLと平行な二つの平面であって互いに交差する二つの平面(仮想平面VPL1及び仮想平面VPL2)にて前記圧電体101を四分割することにより形成される四つの領域のそれぞれに一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部120は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧Vinを、前記四つの領域のうちの互いに隣接する任意の二つの領域内に形成されている二組の一対の電極に選択的に印加するように構成されている(図11を参照。)。
【0072】
これによれば、駆動電源部120によって圧電体101に「屈曲振動と伸縮振動とが重ね合わさった振動」を発生させることができ、且つ、圧電体101の頂面に設けられた駆動子40は、選択された二組の「一対の電極」に応じて実質的に4方向に振動させられる。
【0073】
更に、第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、第1実施形態の圧電アクチュエータ10と同様、「圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧Vinにより圧電体101を駆動するので、圧電体101の屈曲振動は2次屈曲共振時の屈曲振動に近く、圧電体101の伸縮振動は1次伸縮共振時の伸縮振動に近い。よって、これらの振動の振幅を大きくすることができるので、圧電体101(圧電素子100)の高さを大きくする必要が小さい。更に、第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、「圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数」を有する駆動電圧Vinを発生する駆動電源部(駆動回路)120を有するのみでよいので、駆動回路の数を低減することができる。
【0074】
なお、圧電体101は、圧電体31と同様、圧電体101の底面の一辺の長さLと、圧電体101の高さHと、の比H/Lが「1以上であり且つ2以下」となるように調整されていることが好適である。これによれば、圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数とを近づけることができるので、圧電体101の屈曲振動を2次屈曲共振時の屈曲振動により近づけることができ、且つ、圧電体101の伸縮振動を1次伸縮共振時の伸縮振動により近づけることができる。その結果、圧電体101の振動振幅を大きくすることができる。従って、圧電体101(圧電素子100)の高さをより低くすることができる。
【0075】
第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、
「四組の「一対の電極」を備え、その四組の「一対の電極」は、圧電体101の中心軸CLに直交する平面(X−Y平面に平行な平面)にて圧電体101を切断した断面において、前記圧電体101の中心軸CLを原点としたときに同原点を通るX軸及び同原点を通り且つ同X軸と直交するY軸により規定される第1乃至第4象限のそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成され、
駆動電源部120は、移動体を移動させる際、
圧電体101の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧Vinを、
前記第1及び第2象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第1状態(図11の(C)に示した状態)、
前記第2及び第3象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第2状態(図11の(B)に示した状態)、
前記第3及び第4象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第3状態(図11の(D)に示した状態)、及び、
前記第4及び第1象限に設けられた二組の「一対の電極」に印加するとともに他の電極には付与しない第4状態(図11の(A)に示した状態)、
のうちの何れかの状態を実現するように構成された圧電アクチュエータ」であると表現することもできる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、第1実施形態及び第2実施形態に係る圧電アクチュエータは、「移動体60及び移動体保持部材70」をY軸方向(縦方向)及びX軸方向(横方向)に一定の間隔を隔てて隣接配置(格子状に配置)したもの(図12を参照。)を、「基部20、圧電素子30、駆動子40及び保持部材支持部50」をY軸方向(縦方向)及びX軸方向(横方向)に一定の間隔を隔てて隣接配置(格子状に配置)したもの(図13を参照。)に重ねることにより、第1実施形態及び第2実施形態に係る圧電アクチュエータを格子状に(縦方向及び横方向に一定の間隔を隔てて隣接するように)配列してなるアクチュエータアレイとして作製・使用することもできる。
【0077】
更に、移動体60は回転する移動体であったが、X軸方向及びY軸方向のうちの一方のみに移動する移動体、又は、X−Y平面内において平行移動する移動体であってもよい。加えて、各実施形態に係る圧電アクチュエータにおいて、圧電体31又は圧電体101の内部に形成されている電極層はZ−X平面に平行であったが、X−Y平面に平行であってもよい。更に、圧電体31及び圧電体101の形状は、正四角柱であったが、六角柱(正六角柱)、八角柱(正八角柱)等の角柱(正多角柱)、又は、円柱でもよい。
【符号の説明】
【0078】
10…圧電アクチュエータ、20…基部、30…圧電素子、31…圧電体、31a…頂面、32…電極層群(一対の電極)、33…電極層群(一対の電極)、40…駆動子、50…保持部材支持部、60…移動体、70…移動体保持部材、80…ミラー、90…駆動電源部、91…電源、100…圧電素子、101…圧電体、111、112、113、114…電極層群(一対の電極)、120…駆動電源部、121…電源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電体は前記圧電体に電界を付与する一対の電極を二組備え、
前記二組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な平面にて前記圧電体を二分割することにより形成される一つの領域と他の一つの領域とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧を、前記二組の一対の電極のうちの何れか一方の組の一対の電極に選択的に印加するように構成された圧電アクチュエータ。
【請求項2】
底面が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電体は前記圧電体に電界を付与する一対の電極を四組備え、
前記四組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な二つの平面であって互いに交差する二つの平面にて前記圧電体を四分割することにより形成される四つの領域のそれぞれに一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧を、前記四つの領域のうちの互いに隣接する任意の二つの領域内に形成されている二組の一対の電極に選択的に印加するように構成された圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧電アクチュエータであって、
前記圧電体は正四角柱であり、
前記圧電体の底面の一辺の長さLと、前記圧電体の高さHと、の比H/Lが1以上であり且つ2以下となるように調整された圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の圧電アクチュエータを複数個備え、前記複数個の圧電アクチュエータを格子状に配置してなる圧電アクチュエータアレイ。
【請求項1】
底面が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電体は前記圧電体に電界を付与する一対の電極を二組備え、
前記二組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な平面にて前記圧電体を二分割することにより形成される一つの領域と他の一つの領域とのそれぞれの領域に一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧を、前記二組の一対の電極のうちの何れか一方の組の一対の電極に選択的に印加するように構成された圧電アクチュエータ。
【請求項2】
底面が基部に固定されるとともに前記基部から立設した柱状の圧電体と、前記圧電体に駆動電圧を印加するための駆動電源部と、を備え、前記圧電体の頂面に生じる機械的振動により移動体を移動させる圧電アクチュエータにおいて、
前記圧電体は前記圧電体に電界を付与する一対の電極を四組備え、
前記四組の電極は、前記圧電体の中心軸と平行な二つの平面であって互いに交差する二つの平面にて前記圧電体を四分割することにより形成される四つの領域のそれぞれに一組ずつ存在するように形成され、
前記駆動電源部は、
前記圧電体の2次屈曲共振周波数と1次伸縮共振周波数との間の周波数を有する駆動電圧を、前記四つの領域のうちの互いに隣接する任意の二つの領域内に形成されている二組の一対の電極に選択的に印加するように構成された圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧電アクチュエータであって、
前記圧電体は正四角柱であり、
前記圧電体の底面の一辺の長さLと、前記圧電体の高さHと、の比H/Lが1以上であり且つ2以下となるように調整された圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の圧電アクチュエータを複数個備え、前記複数個の圧電アクチュエータを格子状に配置してなる圧電アクチュエータアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−182951(P2012−182951A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45523(P2011−45523)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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