説明

圧電インバータ回路

【課題】 負荷状態の大きな変動により過大電流が発生した場合にもスイッチング素子や圧電トランスおよび出力コネクタを保護することができる信頼性の高い圧電インバータ回路を提供すること。
【解決手段】 圧電トランス6と、駆動回路15と、負荷8と、負荷電流を検出する電流検出回路9と、負荷電流の情報を入力して駆動回路15から出力される電圧または周波数を制御して負荷電流が一定となるように制御する機能を有する制御回路3とから構成され、負荷電流の最大値を検出しその最大値が予め定めた設定値以上になったときに出力信号がONとなりそのON状態が保持されるラッチ回路10を有し、ラッチ回路10の出力信号が制御回路3に入力され、その出力信号がONのときに制御回路3は前記圧電トランスの駆動を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶パネルバックライト用冷陰極管を点灯させる為の圧電インバータ回路に関し、特に保護回路を有する圧電インバータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などに示されるように、圧電トランスは、圧電材料に一次側及び二次側電極を設置し、一次側電極に圧電トランスの共振周波数付近の入力交流電圧を印加して圧電トランスを共振させ、機械的振動により二次側電極に発生する出力交流電圧を取り出す素子であり、圧電インバータ回路は圧電トランスを使用して冷陰極管などの放電管を点灯させるために用いられる回路である。
【0003】
図3は従来の圧電インバータ回路の一例を示す図である。図3において、圧電インバータ回路は圧電トランス6と、圧電トランス6を駆動する駆動回路15と、圧電トランス6の出力電圧が印加される放電管からなる負荷8と、負荷8を流れる電流を検出する電流検出回路9と、電流検出回路9により検出された負荷電流の情報を入力して駆動回路15から出力される電圧または周波数を制御して負荷電流が一定となるように制御する機能を有する制御回路3とから構成されている。
【0004】
制御回路3は複数の入力端子2を有し、その1つには直流電源1が接続され、また、また、他の入力端子からはリモートON信号11およびバースト調光信号12が入力されるように構成されている。また、駆動回路15は第1のスイッチング素子4a、第2のスイッチング素子4b、第3のスイッチング素子4c、第4のスイッチング素子4d、および圧電トランス6の入力容量との共振用インダクタ5により構成されている。
【0005】
この圧電インバータ回路の動作は、次のとおりである。入力端子2に直流電源1により直流電圧が供給され、リモートON信号11とバースト調光信号12が印加されると制御回路3が動作を開始し、駆動回路15のスイッチング素子4aと4dをONとし、スイッチング素子4bと4cはOFF状態で発振周期の1/2の時間だけ保持する。次の1/2周期はスイッチング素子4aと4dをOFF、スイッチング素子4bと4cをONとする。この後もスイッチング素子4a、4dと4b、4cを交互にON/OFFさせる動作を繰り返すことにより上記周期の交流電圧が出力される。
【0006】
この交流電圧が共振用インダクタ5を通して圧電トランス6に印加されることにより、圧電トランス6には共振用インダクタ5と圧電トランス6の入力容量との共振による正弦波電圧が印加され、その出力端子7に接続された負荷8の冷陰極管に上記共振周波数の昇圧された正弦波電圧が印加され電流が流れる。この負荷電流が電流検出回路9で検出され、制御回路3にフィードバックされることにより負荷電流が設定された一定の値になるように制御回路3により制御される。
【0007】
ここで、バースト調光信号12は圧電トランス6の上記駆動周波数に対して100分の1以下の低い周波数で出力デューティを制御する信号であり、制御回路3はその信号がONのとき駆動回路15を動作させOFFのとき動作を一時的に停止する。これにより圧電トランスの平均出力電力が制御され、負荷の明るさが制御される。すなわち、負荷電流はバースト調光信号がONの時間だけ流れ、バースト調光信号がOFFの間は流れない。
【0008】
【特許文献1】特許第2751842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、特許文献1などに示されているように、上述のように負荷電流や出力電圧をモニタして駆動周波数や駆動電圧にフィードバックし、放電管の個体差や使用環境などによる負荷の変動などがあっても放電管を安定に点灯させる圧電トランスの制御が行われている。
【0010】
しかし、負荷が短絡した場合や劣化した場合には出力に過大な電流が流れることがあり、あるいは出力端子7へのコネクタの挿入が不完全であった場合には出力コネクタの挿入側、被挿入側の電極間で放電が発生して過大な電流が流れることがある。このような過大な電流の発生により発熱によって出力コネクタが焼損したり、駆動回路15のスイッチング素子が破損したり、また、圧電トランス6が異常発熱することがある。また、通常、バースト調光信号12により出力電流は断続した状態となる場合が多く、高精度の出力電流の検出が困難であるので、上述のような過大な電流が発生した場合、従来の電流検出回路9により制御回路3にフィードバックして駆動回路を停止することは困難である。
【0011】
そこで本発明の課題は、負荷状態の大きな変動により過大電流が発生した場合にもスイッチング素子や圧電トランスおよび出力コネクタを保護することができる信頼性の高い圧電インバータ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の圧電インバータ回路は、圧電トランスと、該圧電トランスを駆動する駆動回路と、前記圧電トランスの出力電圧が印加される負荷と、該負荷を流れる電流を検出する電流検出回路と、該電流検出回路により検出された負荷電流の情報を入力して前記駆動回路から出力される電圧または周波数を制御して前記負荷電流が一定となるように制御する機能を有する制御回路とからなる圧電インバータ回路において、前記負荷電流の最大値を検出し該最大値が予め定めた設定値以上になったときに出力信号がONとなりそのON状態が保持されるラッチ回路を有し、該ラッチ回路の出力信号が前記制御回路に入力され、該出力信号がONのときに前記制御回路は前記圧電トランスの駆動を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明においては安定な動作を制御するための従来の電流検出回路とは別に、保護のため、規定の最大負荷電流を検出するとONとなり制御回路に圧電トランスの駆動を停止させる出力信号を与えるラッチ回路を設けることにより、負荷の短絡、劣化、あるいは出力コネクタの半挿入時に挿入側、被挿入側の電極間で放電が発生した場合などの負荷状態の大きな変動により過大電流が発生した場合にもスイッチング素子や圧電トランスおよび出力コネクタを保護することができる信頼性の高い圧電インバータ回路が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態である圧電インバータ回路を示す図である。図1において、図3の従来の圧電インバータ回路と同様に圧電トランス6と、圧電トランス6を駆動する駆動回路15と、圧電トランス6の出力電圧が印加される負荷8と、負荷8を流れる電流を検出する電流検出回路9と、電流検出回路9により検出された負荷電流の情報を入力して駆動回路15から出力される電圧または周波数を制御して負荷電流が一定となるように制御する機能を有する制御回路3とから構成されている。但し、本実施の形態においては、負荷電流の最大値を検出しその最大値が予め定めた設定値以上になったときに出力信号がONとなりそのON状態が保持されるラッチ回路10を有し、ラッチ回路10の出力信号が制御回路3に入力され、その出力信号がONのときに制御回路3は前記圧電トランスの駆動を停止させる。
【0016】
また、図3と同様に、制御回路3は複数の入力端子2を有し、直流電源1が接続され、また、リモートON信号11およびバースト調光信号12が入力される。また、駆動回路15はスイッチング素子4a、4b、4c、4d、および共振用インダクタ5より構成されている。
【0017】
図2は本実施の形態の圧電インバータ回路の具体的一例を示す図である。放電管である負荷8の電流がダイオードD1により整流されてラッチ回路20および電流検出回路19に導かれる。
【0018】
負荷電流を一定にするための電流検出回路19において、ダイオードD1で整流され抵抗R1、R2により生成された直流電圧が制御回路13内の誤差増幅器21に入力される。誤差増幅器21は基準電圧に対して入力される電圧が等しくなるように出力が変化し、この出力信号によってそれに接続されたVCO回路22の出力周波数が変化する。この結果、圧電トランスの駆動周波数が変化することにより負荷電流が一定の値に制御される。よってR1、R2の抵抗値の設定により負荷電流値を設定することができる。この動作は図3の従来の圧電インバータ回路においても同様である。
【0019】
一方、ラッチ回路20においては、ダイオードD1により整流されて入力される負荷電流は最大負荷電流を検出する抵抗R3および抵抗R7によってNPN型のトランジスタQ2のべースに入力される電圧に変換され、その電圧がトランジスタQ2のベースーエミッタ間電圧Vbe(通常のシリコントランジスタでは0.7V程度)以上になるとQ2がON状態となり、その結果PNP型のトランジスタQ1もON状態になる。このON状態の出力信号は制御回路13内のON/OFF回路23に入力され、ON/OFF回路23により制御回路13の内部電源24がOFFとなる。すなわち、制御回路13の動作は停止され、駆動回路15への出力がなくなり圧電トランスの駆動は停止される。
【0020】
ここで、抵抗R3とR7の抵抗値の設定によって圧電トランスの駆動を停止する最大負荷電流値を設定できることになる。トランジスタQ2およびQ1の両方が一旦ON状態になると抵抗R3、R7による電圧がなくなっても、トランジスタQ2およびQ1は入力電源が切れない限りON状態を保持するラッチ状態となる。
【0021】
以上のように、本実施の形態の圧電インバータ回路では負荷の短絡、劣化、あるいは出力コネクタの半挿入時に放電が発生した場合などの負荷状態の大きな変動により過大電流が発生した場合に回路の駆動を停止することによりスイッチング素子や圧電トランスおよび出力コネクタを保護することができる。
【0022】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的に合わせて回路構成の設計や部品の選択が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】

【図1】本発明の一実施の形態である圧電インバータ回路を示す図。
【図2】本実施の形態の圧電インバータ回路の具体的一例を示す図。
【図3】従来の圧電インバータ回路の一例を示す図。
【符号の説明】
【0024】
1 直流電源
2 入力端子
3、13 制御回路
4a、4b、4c、4d スイッチング素子
5 共振用インダクタ
6 圧電トランス
7 出力端子
8 負荷
9、19 電流検出回路
10、20 ラッチ回路
11 リモートON信号
12 バースト調光信号
15 駆動回路
21 誤差増幅器
22 VCO回路
23 ON/OFF回路
24 内部電源
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7 抵抗
Q1、Q2 トランジスタ
D1 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電トランスと、該圧電トランスを駆動する駆動回路と、前記圧電トランスの出力電圧が印加される負荷と、該負荷を流れる電流を検出する電流検出回路と、該電流検出回路により検出された負荷電流の情報を入力して前記駆動回路から出力される電圧または周波数を制御して前記負荷電流が一定となるように制御する機能を有する制御回路とからなる圧電インバータ回路において、前記負荷電流の最大値を検出し該最大値が予め定めた設定値以上になったときに出力信号がONとなり、そのON状態が保持されるラッチ回路を有し、該ラッチ回路の出力信号が前記制御回路に入力され、該出力信号がONのときに前記制御回路は前記圧電トランスの駆動を停止させることを特徴とする圧電インバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−65729(P2009−65729A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228852(P2007−228852)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】