説明

基体処理システム用の基体搬送装置

【課題】基体を処理するための処理システムの基体搬送装置において、搬送チャンバ内でのケーブル引き回し処理を不要とする。
【解決手段】基体搬送装置は、チャンバ壁12、テーブル14、リニアモータ搬送機構16、光学窓18、及び、レーザ計測器を備える。チャンバ壁は、搬送空間Sを画成する。テーブルは、搬送空間内に収容されている。当該テーブル上には基体を載置可能である。リニアモータ搬送機構は、搬送空間内においてリニアモータによりテーブルを移動させる。光学窓は、搬送空間と当該搬送空間の外部空間との間に設けられている。例えば、光学窓は、チャンバ壁に画成された開口を封止するように設けられる。レーザ計測器は、光学窓を介してテーブルに向けてレーザ光を照射し、テーブルからの反射光を受けて、テーブルの位置を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基体処理システム用の基体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板といった基体を処理するための処理システムの基体搬送装置には、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された基体搬送装置は、チャンバ、テーブル、及び、搬送機構を備えている。テーブルは、チャンバ内に収容されており、リニアモータによる搬送機構によりチャンバ内で移動される。
【0003】
当該基体搬送装置は、テーブルの位置を計測するために、リニアスケール、及び、センサを備えている。センサはテーブルに取り付けられており、リニアスケールからテーブルの現在位置を読み取って、当該現在位置を示す信号をチャンバの外部に出力する。このため、センサからはチャンバの外部まで信号出力用のケーブルが延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−274889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された基体搬送装置では上述したケーブルの一部がチャンバ内に存在するので、当該ケーブルのチャンバ内での引き回しといったケーブル処理が必要となる。このケーブル処理は、テーブルの移動距離が長くなるほど困難なものとなり得る。
【0006】
したがって、当技術分野においては、このようなケーブル処理の問題を解決し得る基体搬送装置が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る基体搬送装置は、チャンバ壁、テーブル、リニアモータ搬送機構、光学窓、及び、レーザ計測器を備える。チャンバ壁は、搬送空間を画成する。一実施形態においては、搬送空間は減圧可能な搬送空間である。テーブルは、搬送空間内に収容されている。当該テーブル上には基体を載置可能である。リニアモータ搬送機構は、搬送空間内においてリニアモータによる駆動力によってテーブルを移動させる。光学窓は、搬送空間と当該搬送空間の外部空間との間に設けられている。例えば、光学窓は、チャンバ壁に画成された開口を封止するように設けられる。レーザ計測器は、光学窓を介してテーブルに向けてレーザ光を照射し、テーブルからの反射光を受けて、テーブルの位置を計測する。
【0008】
この基体搬送装置では、レーザ計測器によってテーブルの位置を計測することが可能である。したがって、搬送空間内でのケーブル処理が不要となり得る。
【0009】
一実施形態においては、基体搬送装置は、光学窓と搬送空間とを光学的に接続するパイプを更に備え得る。パイプの一端は光学窓に結合され、パイプの他端は、搬送空間内に設けられ得る。レーザ計測器は、光学窓及びパイプの内孔を介してレーザ光を照射し、反射光をパイプ及び光学窓を介して受けることができる。この実施形態によれば、パイプにより、搬送空間と光学窓の間の経路におけるコンダクタンスを低下させることができる。その結果、搬送空間内に存在するガス分子が光学窓に付着する確率を低下させることができる。
【0010】
一実施形態においては、パイプの内孔を画成する内面の少なくとも一部は、凹凸を有し得る。この凹凸は、0.1mm〜3mmの範囲の凹凸で有ってもよい。また、一実施形態においては、パイプの内面は、多孔質面であってもよい。これら実施形態によれば、パイプの内面により、ガス分子が捕捉され得る。その結果、光学窓に対するガス分子の付着を更に抑制することができる。
【0011】
一実施形態においては、パイプの内孔は、当該パイプの長手方向に沿って第1の内径を有する部分と、前記第1の内径より小径の第2の内径を有する部分と、を含んでいてもよい。この実施形態によれば、パイプの内径を一部において縮径することにより、当該一部におけるコンダクタンスをより小さくすることができる。その結果、光学窓に対するガス分子の付着を更に抑制することができる。
【0012】
一実施形態においは、パイプの内孔は、蛇行する経路に沿って画成されていてもよく、パイプの内孔には、当該内孔の一端と当該内孔の他端とを光学的に結合する一以上の光学ミラーが設けられていてもよい。この実施形態によっても、光学窓に対する光学窓に対するガス分子の付着を抑制することができる。
【0013】
一実施形態においては、基体搬送装置は、パイプの内孔に不活性ガスを供給するガス供給路を更に含んでいてもよい。この実施形態によれば、不活性ガスが内孔に供給されるので、当該内孔へのガス分子の流入が抑制される。その結果、光学窓に対する光学窓に対するガス分子の付着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の一側面及び種々の実施形態によれば、搬送空間内においてテーブルの位置計測のための信号用のケーブル処理が不要な基体搬送装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る処理システムを示す平面図である。
【図2】図1に示す処理システムに採用し得る基体搬送装置の斜視図であり、内部が見えるよう上側部分を取り除いて示した当該基体搬送装置の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線の断面図である。
【図4】図3に示す基体搬送装置の一部を拡大して示す断面図であり、レーザ計測系を示す図である。
【図5】別の実施形態に係るレーザ計測系を拡大して示す断面図である。
【図6】更に別の実施形態に係るレーザ計測系を拡大して示す断面図である。
【図7】別の実施形態に係るパイプを示す断面図である。
【図8】別の実施形態に係る処理システムを示す平面図である。
【図9】図8に示す処理システムに採用し得る基体搬送装置の斜視図であり、内部が見えるよう上側部分を取り除いて示した当該基体搬送装置の斜視図である。
【図10】更に別の実施形態に係る処理システムを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1は、一実施形態に係る処理システムを示す平面図であり、通常の使用状態における当該処理システムを上方から見て示す平面図である。なお、以下の説明は、後述する実施形態においてプロセスモジュールに接続している基体搬送装置の基体搬送方向をY方向、処理システムの通常の使用状態における高さ方向をZ方向、Z方向及びY方向に交差又は直交する方向をX方向として、記述されている。
【0018】
図1に示す処理システム100は、被処理基体Wを処理するためのシステムである。処理システム100は、載置台102a〜102d、収容容器104a〜104d、ローダモジュール(大気基体搬送装置)LM、ロードロックチャンバLL1及びLL2、プロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,及びPM23、並びに、真空基体搬送装置(トランスファーチャンバ)110を備えている。プロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,及びPM23のうち少なくとも1つが、基板搬送装置110に接続される。
【0019】
載置台102a〜102dは、ローダモジュールLMのY方向における一方側の縁部に沿ってX方向に配列されている。載置台102a〜102d上にはそれぞれ、収容容器104a〜104dが載置されている。収容容器104a〜104dの内部には基体Wが収容される。
【0020】
ローダモジュールLMは、一実施形態においては、Y方向よりもX方向において長尺の略箱形状を有している。ローダモジュールLMは、大気圧状態の搬送空間をその内部に画成するチャンバ壁を有している。ローダモジュールLMは、この搬送空間に搬送ユニットTUを有している。ローダモジュールLMの搬送ユニットTUは、収容容器104a〜104dの何れかから基体Wを取り出し、取り出した基体WをロードロックチャンバLL1及びLL2の何れかに搬送する。一実施形態においては、ローダモジュールLMの搬送ユニットTUは、X方向に移動し得る。
【0021】
ロードロックチャンバLL1及びLL2は、ローダモジュールLMのY方向の他方側の縁部に沿ってX方向に配列されている。また、ローダモジュールLMのY方向の他方側には、Y方向に延在する基体搬送装置110が設けられている。図1に示すように、ロードロックチャンバLL1及びLL2は、ローダモジュールLMと基体搬送装置110との間に設けられている。
【0022】
ロードロックチャンバLL1及びLL2は、ローダモジュールLMから搬送された基体Wを、その内部の搬送空間が減圧又は真空状態に置かれる基体搬送装置110に移す前の予備減圧室として利用される。ロードロックチャンバLL1とローダモジュールLMとの間、ロードロックチャンバLL1と基体搬送装置110との間、ロードロックチャンバLL2とローダモジュールLMとの間、ロードロックチャンバLL2と基体搬送装置110との間のそれぞれには、開閉可能なゲートバルブが設けられている。
【0023】
基体搬送装置110は、一実施形態においては、減圧可能な搬送空間内においてY方向に基体Wを移動させ、当該基体WをプロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,PM23の何れかに搬送する。基体搬送装置110とプロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,PM23それぞれとの間には、開閉可能なゲートバルブが設けられている。
【0024】
プロセスモジュールPM11,PM12,PM13は、基体搬送装置110のX方向における一方側の縁部に沿ってY方向に配列されている。また、プロセスモジュールPM21,PM22,PM23は、基体搬送装置110のX方向における他方側の縁部に沿ってY方向に配列されている。プロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,PM23は、それらの内部に収容した基体Wを処理する。プロセスモジュールによる処理には、例えば、エッチング、成膜、アッシング、スパッタ成膜、化学的酸化物除去等の処理が含まれる。
【0025】
図1に示す実施形態の処理システム100では、収容容器104a〜104dの何れかに収容されている基体Wは、ローダモジュールLM、ロードロックチャンバLL1又はLL2、及び、基体搬送装置110を介して、プロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,PM23の何れかに搬送され、搬送先のプロセスモジュールにおいて処理される。搬送先のプロセスモジュールにおいて処理された基体Wは、基体搬送装置110、及び、ロードロックチャンバLL1又はLL2を介して、ローダモジュールLMに戻される。
【0026】
以下、一実施形態の基体搬送装置について説明する。図2は、一実施形態の基体搬送装置の斜視図であり、内部が見えるよう上側部分を取り除いて示した当該基体搬送装置の斜視図である。図3は、図2のIII−III線の断面図である。図3においては、給電棒、ケーブル、ピックアップ、搬送ロボット、及び光通信ユニットが省略されている。また、図4は、図3に示す基体搬送装置の一部を拡大して示す断面図であり、レーザ計測系を示す図である。図2及び図3に示す真空基体搬送装置10は、処理システム100の基体搬送装置110として用いることができる。しかしながら、基体搬送装置10は、他の処理システムの真空基体搬送装置としても利用可能である。以下、図2、図3、及び図4を参照する。
【0027】
基体搬送装置10は、チャンバ壁12、テーブル14、リニアモータ搬送機構16、光学窓18、及び、レーザ計測器20を備えている。チャンバ壁12は、Y方向に長尺の略箱形をなしている。チャンバ壁12は、その内部に搬送空間Sを画成している。搬送空間Sは、減圧状態又は真空状態とすることが可能な空間である。このため、搬送空間Sには、排気装置22が接続されている。
【0028】
一実施形態においては、チャンバ壁12は、本体部12aと天板部12bとを含み得る。本体部12aは、Y方向、X方向、及び、下方から搬送空間Sを画成している。天板部12bは、平板状の部材であり、搬送空間Sを上方から画成している。天板部12bと本体部12aの頂部との間には、Oリングといった封止部材が設けられていてもよい。
【0029】
一実施形態においては、チャンバ壁12の本体部12aは、搬送空間SのY方向の一方側に設けられた前壁12fw1及び前壁12fw2を含んでいる。前壁12fw1は前壁12fw2の下に設けられている。前壁12fw2は、断面V字状の壁であり、当該前壁12fw2には、開口12h1及び12h2が形成されている。開口12h1は、基体WをロードロックチャンバLL1内の空間と搬送空間Sとの間で移動させるための開口として利用され得る。また、開口12h2は、基体WをロードロックチャンバLL2内の空間と搬送空間Sとの間で移動させるための開口として利用され得る。基体搬送装置10には、これら開口12h1及び12h2をそれぞれ開閉するためのゲートバルブが設けられ得る。
【0030】
また、チャンバ壁12の本体部12aは、Y方向に延在する一対の側壁12sw1及び12sw2を含んでいる。側壁12sw1には、開口12h3及び12h4が形成されている。また、側壁12sw2には、開口12h5及び12h6が形成されている。開口12h3及び12h4はそれぞれ、基体Wを、搬送空間SとプロセスモジュールPM11との間で移動させるための開口、搬送空間SとプロセスモジュールPM12との間で移動させるための開口として利用され得る。また、開口12h5及び12h6はそれぞれ、基体Wを、搬送空間SとプロセスモジュールPM21との間で移動させるための開口、搬送空間SとプロセスモジュールPM22との間で移動させるための開口として利用され得る。基体搬送装置10には、これら開口12h3、12h4,12h5、12h6をそれぞれ開閉するためのゲートバルブが設けられ得る。
【0031】
また、チャンバ壁12の本体部12aは、搬送空間SのY方向の他方側に設けられた後壁12bwを含んでいる。後壁12bwは、断面V字状の壁であり、当該後壁12bwには、開口12h7及び12h8が形成されている。開口12h7は、基体Wを搬送空間SとプロセスモジュールPM13との間で移動させるための開口として利用され得る。また、開口12h8は、基体Wを搬送空間SとプロセスモジュールPM23との間で移動させるための開口として利用され得る。基体搬送装置10には、これら開口12h7及び12h8をそれぞれ開閉するためのゲートバルブが設けられ得る。
【0032】
図2及び図3に示すように、一実施形態においては、チャンバ壁12によって画成される搬送空間S内には、テーブル14が収容されている。また、搬送空間S内には、Y方向に延在する一対のリニアガイド24が設けられている。テーブル14は、搬送機構16によって駆動されることにより、一対のリニアガイド24に沿ってY方向に移動する。搬送機構16は、リニアモータの駆動力を利用するものであり、当該リニアモータの一次側は、一対のリニアガイド24の間に設けられており、二次側はテーブル14に取り付けられている。
【0033】
一実施形態においては、テーブル14上には、基体Wを保持して搬送するための搬送ロボット40が設けられている。搬送ロボット40は、開口12h1及び12h2を介してロードロックチャンバLL1及びLL2に収容された基体Wを取り出すことができる。また、開口12h3〜12h8を介してプロセスモジュールPM11,PM12,PM13,PM21,PM22,PM23それぞれに基体Wを搬送することができる。このため、基体搬送装置10は、搬送ロボット40に対する制御信号及び電力を供給するための機構を有している。
【0034】
一実施形態においては、搬送ロボット40に対して外部の電源から非接触給電方式により電力が与えられる。より具体的には、基体搬送装置10は、電源42、一対の給電棒44、ケーブル46、及び、ピックアップ48を更に備え得る。一対の給電棒44は、側壁12sw1に沿って設けられている。一対の給電棒44の間にはケーブル46がY方向に引き回されており、当該ケーブル46は、電源42に電気的に接続されている。テーブル14にはピックアップ48が取り付けられており、当該ピックアップ48は、ケーブル46に沿ってテーブル14と共にY方向に移動される。電源42からの電力はケーブル46を介して、ピックアップ48に巻かれた配線に非接触で供給され、当該配線から搬送ロボット40に与えられる。
【0035】
また、一実施形態においては、基体搬送装置10は、ロボットコントローラ50、及び、光通信ユニット52a及び52bを更に備え得る。ロボットコントローラ50は、電源42に接続されており、また、光通信ユニット52aに接続されている。ロボットコントローラ50は、搬送ロボット40に対する電気制御信号を発生する。光通信ユニット52aは、本体部12aの前壁12fw1に取り付けられており、前壁12fw1に設けられた光学窓を介して光制御信号を搬送空間S内に出射する。この光制御信号は、上記電気制御信号に基づいて光通信ユニット52aによって発生される。
【0036】
光通信ユニット52bは、テーブル14に取り付けられている。光通信ユニット52bは、光通信ユニット52aによって発生された光制御信号を受ける。基体搬送装置10では、光通信ユニット52bが受光した光制御信号に基づいて、搬送ロボット40を制御するための電気制御信号が発生される。
【0037】
このように、基体搬送装置10では、光通信ユニット52a及び52bを用いた光通信により搬送ロボット40を制御することができる。したがって、搬送ロボット40に制御信号を与えるためのケーブルを搬送空間S内に設けることが不要である。また、搬送ロボット40を駆動するための電力を供給するケーブル46は、非接触給電方式により、搬送ロボット40に電力を供給する。即ち、テーブル14、ピックアップ48、及び搬送ロボット40といった移動体に対して電力ケーブルが接続されていないので、基体搬送装置10は搬送空間S内での電力ケーブルの引き回しが容易な構成となっている。
【0038】
以下、図4を参照する。図4に示すように、一実施形態においては、前壁12fw1には開口12eが形成されている。この開口12eは、光学窓18によって閉じられている。より具体的には、光学窓18は、前壁12fw1に対して搬送空間Sと反対側の外部空間に設けられている。光学窓18と前壁12fw1の外側面との間にはOリングといった封止部材28が設けられている。これによって、開口12eが閉じられ、搬送空間Sの気密が確保されている。
【0039】
また、光学窓18は、前壁12fw1の外側面とフランジ26との間に狭持されている。フランジ26には、Y方向に開口12eに対して整列するように開口が設けられている。このフランジ26は、本体部12aに対してネジ留めされていてもよく、或いは、溶接されていてもよい。
【0040】
光学窓18には、レーザ計測器20の光学ユニット20aが光学的に結合されている。この光学窓18は、光学ユニット20aからのレーザ光、及び、当該レーザ光がテーブル14によって反射されることにより発生される反射光を透過するものであり、例えば、光学ガラスによって構成されている。
【0041】
レーザ計測器20は、搬送空間Sの外部に設けられている。レーザ計測器20の光学ユニット20aは、光学窓18を介してY方向にレーザ光を照射する。光学ユニット20aからのレーザ光は、テーブル14によって反射される。光学ユニット20aは、テーブル14からの反射光を受光して、当該反射光の受光タイミングに応じたタイミングで電気信号を出力する。このため、光学ユニット20aは、例えば、半導体レーザといったレーザ光発生器とフォトダイオードといった受光器を有し得る。
【0042】
レーザ計測器20は、光学ユニット20aに電気的に接続された制御ユニット20b(図2を参照)を更に含んでいる。制御ユニット20bは、光学ユニット20aからのレーザ光の発生及び当該レーザ光の照射タイミングを制御する。また、制御ユニット20bは、光学ユニット20aの受光器から上述した電気信号を受ける。制御ユニット20bは、レーザ光の照射タイミングと上述した電気信号の出力タイミングとの間の時間差に基づいて、テーブル14の現在位置を計測することができる。さらに、制御ユニット20bは、計測したテーブル14の現在位置に応じて搬送機構16に信号を与えることによって、テーブル14の位置を制御することができる。
【0043】
以上説明した基体搬送装置10によれば、レーザ計測器20を用いてテーブル14の位置を計測することができる。したがって、テーブル14の位置計測に用いられる電気信号用のケーブルを搬送空間S内に敷設することが不要となる。
【0044】
以下、別の実施形態について説明する。図5は、別の実施形態に係るレーザ計測系を拡大して示す断面図である。図5に示すように、基体搬送装置10は、パイプ32を更に備えていてもよい。パイプ32は、オーステナイト系のステンレス又は表面にアルマイト処理が施されたアルミニウム製であってもよい。
【0045】
パイプ32はY方向に延びており、その一端は光学窓18に結合されている。また、その他端は搬送空間S内に位置している。パイプ32の外周面にはフランジ部が設けられている。パイプ32の一端部、即ち、当該フランジ部より光学窓18側の部分は、前壁12fw1に形成された開口(光学窓18に通じる開口)内に嵌め込まれている。そして、フランジ部は、ネジを介して本体部12aに固定されている。一実施形態においては、図5に示すように、光学窓18は、パイプ32の内孔のみを介して搬送空間S内に連通している。このパイプ32は、例えば、2〜3mmの内径(直径)を有し得る。
【0046】
この実施形態では、光学ユニット20aから照射されたレーザ光及びテーブル14からの反射光はパイプ32の内孔を介して導光される。このパイプ32の内孔のコンダクタンスは低いので、搬送空間S内に存在するガス分子が光学窓18に付着する確率を低下させることができる。なお、搬送空間S内に存在し得るガス分子は、例えば、基体Wのエッチングや成膜といった処理に用いられるガスの分子が基体Wに付着して、当該基体Wから発生し得る。
【0047】
一実施形態においては、図5に示すように、内孔を画成する当該パイプ32の内面は、Y方向に沿った少なくとも一部分において、凹凸を有し得る。当該凹凸の深さは、0.1〜3mmであってもよい。このようにパイプが凹凸を有する内面(凹凸面)を有する場合には、パイプの上述した内径は、パイプの内孔の中心軸線と当該中心軸線に最も近いパイプの内面の点との間の径方向の距離の2倍の数値で定義され得る。また、凹凸の深さはとは、パイプの内孔の中心軸線と当該中心軸線に最も近い凹凸面内の点との間の径方向の距離と、当該中心軸線と当該凹凸面内の任意の点との間の径方向の距離との差によって定義され得る。このようにパイプ32の内面に設けられた凹凸面は、搬送空間S内からパイプ32の内孔に流入するガス分子を捕捉し得る。その結果、光学窓18に付着するガス分子が付着することを更に抑制することができる。
【0048】
また、別の一実施形態においては、パイプ32の内孔を画成する当該パイプ32の内面は、多孔質面であってもよい。当該多孔質面も、搬送空間S内からパイプ32の内孔に流入するガス分子を捕捉して、光学窓18に付着するガス分子が付着することを更に抑制することができる。
【0049】
また、図5に示すように、一実施形態においては、パイプ32の内孔にアルゴンといった不活性ガスが供給されてもよい。このため、パイプ32及び本体部12aにわたって、当該パイプ32の内孔から本体部12aの外面まで延在するガス供給路Pが形成されていてもよい。このガス供給路Pには不活性ガスのガス源が接続される。ガス供給路Pには本体部12aの外面側の開口からパイプ32の内孔に向けて不活性ガスが供給される。これにより、搬送空間S内に存在するガス分子がパイプ32の内孔に流入することを抑制することができる。
【0050】
ガス供給路Pは、パイプ32の搬送空間S側の端部よりも光学窓18側の端部に近い位置においてパイプ32の内孔に接続されていてもよい。この構成によれば、搬送空間S内に存在するガス分子がパイプ32の内孔に流入することをより効果的に抑制することができる。
【0051】
次に、図6を参照する。図6は、更に別の実施形態に係るレーザ計測系を示す図である。図6に示すように、基体搬送装置10は、パイプ32に代えて、パイプ32Aを有していてもよい。パイプ32Aは、Y方向に沿った一部において第1の内径を有しと、Y方向に沿った他の一部において第1の内径より小径の第2の内径を有する点で、パイプ32とは異なっている。パイプ32Aによれば、第2の内径を有する部分において、内孔のコンダクタンスを更に低くすることができる。その結果、搬送空間S内に存在するガス分子がパイプ32Aの内孔に流入することをより効果的に抑制することができる。
【0052】
次に、図7を参照する。図7は、別の実施形態に係るパイプを示す断面図である。図7に示すパイプ32Bは、蛇行する経路に沿って形成された内孔を有している。パイプ32Bの内孔には、当該内孔の搬送空間S側の一端32aと光学窓18側の他端32bとを光学的に結合するために、複数の光学ミラー32mが設けられている。かかるパイプ32Bによれば、搬送空間S側の一端から光学窓18側の他端までの内孔の距離が長く、更に当該内孔が蛇行しているので、搬送空間S内に存在するガス分子が光学窓18に付着する確率を更に低下させることが可能である。
【0053】
以下、別の実施形態に係る処理システムについて説明する。図8は、別の実施形態に係る処理システムを示す平面図である。図8に示す処理システム200は、載置台202a〜202d、収容容器204a〜204d、ローダモジュールLM200、ロードロックチャンバLL200、真空基体搬送装置210、及び、プロセスモジュールPM201,PM202,PM203,PM204を備えている。
【0054】
載置台202a〜202dは、ローダモジュールLM200のY方向における一方側の縁部に沿ってX方向に配列されている。載置台202a〜202d上にはそれぞれ、収容容器204a〜204dが搭載されている。収容容器204a〜204dの内部には基体Wが収容される。
【0055】
ローダモジュールLM200は、ローダモジュールLMと同様に、その内部に搬送ユニットを有している。ローダモジュールLM200の搬送ユニットは、収容容器204a〜204dの何れかから基体Wを取り出して、取り出した基体Wを搬送する。
【0056】
Y方向において、ローダモジュールLM200の他方側には、基体搬送装置210が設けられている。この基体搬送装置210の内部は、減圧可能となっている。大気圧のローダモジュールLM200と減圧状態又は真空状態で用いられ得る基体搬送装置210との間には、減圧可能なロードロックチャンバLL200が設けられている。ロードロックチャンバLL200とローダモジュールLM200の間、及び、ロードロックチャンバLL200と基体搬送装置210との間にはそれぞれ、開閉可能なゲートバルブが設けられている。
【0057】
プロセスモジュールPM201,PM202,PM203,PM204は、基体搬送装置210のY方向に延びる一方側の縁部にそって、配列されている。プロセスモジュールPM201,PM202,PM203,PM204は、エッチング又は成膜といった基体Wの処理を行なうことができる。プロセスモジュールPM201,PM202,PM203,PM204と基体搬送装置210はそれぞれ、開閉可能なゲートバルブを介して連結されている。
【0058】
処理システム200では、基体Wが収容容器204a〜204dの何れかからローダモジュールLM200によって取り出され、ロードロックチャンバLL200内に収容される。ロードロックチャンバLL200内に収容された基体Wは、基体搬送装置210によってY方向に搬送され、プロセスモジュールPM201,PM202,PM203,PM204のうち何れかに送られる。一方、プロセスモジュールPM201,PM202,PM203,PM204のうち何れかによって処理された基体Wは、基体搬送装置210及びロードロックチャンバLL200を介してローダモジュールLM200に戻される。
【0059】
以下、基体搬送装置210として利用可能な一実施形態の基体搬送装置について説明する。図9は、図8に示す処理システムに採用し得る基体搬送装置の斜視図であり、内部が見えるよう上側部分を取り除いて示した当該基体搬送装置の斜視図である。図9に示す真空基体搬送装置10Aでは、チャンバ壁の本体部12Aaに、開口12d1〜12d4が形成されている。開口12d1〜12d4はそれぞれ、プロセスモジュールPM201〜PM204に通じる開口である。
【0060】
基体搬送装置10Aでは、テーブル14上に搬送ロボット40Aが設けられている。搬送ロボット40Aは、本体部12Aaの前壁12fw1に形成された開口12cを介してロードロックチャンバLL200に収容された基体Wを取り出すことができる。また、開口12d1〜12d4を介してプロセスモジュールPM201〜PM204それぞれに基体Wを搬送することができる。また、上記ローダモジュールにも本願のレーザ基体位置検出装置(レーザ計測器)を適用できるようにしてもよい。
【0061】
以下、更に別の実施形態に係る処理システムについて説明する。図10は、別の実施形態に係る処理システムを示す平面図である。以下の説明においては、図10に示す処理システム300に関して、図1の処理システム100と異なる点を説明する。処理システム300は、四つのプロセスモジュールPM11,PM12,PM21,PM22を備えている。また、処理システム300は、真空基体搬送装置110に代わる真空基体搬送装置310を備えている。基体搬送装置310はY方向への移動機構を備えておらず、ロードロックチャンバLL1及びLL2、並びに、プロセスモジュールPM11,PM12,PM21,PM22にアクセス可能な搬送ロボットを有している。
【0062】
処理システム300では、ローダモジュールLMが一実施形態の大気基体搬送装置として構成されている。処理システム100と同様に、処理システム300のローダモジュールLMは、テーブルTb及び当該テーブルTb上に設けられた搬送ロボットRbを有する搬送ユニットTUを備えている。搬送ユニットTUは、処理システム100の搬送ユニットと同様に、X方向に移動可能である。処理システム300では、搬送ユニットTUのテーブルTbのX方向の位置を計測するために、ローダモジュールLM内の搬送空間を画成するチャンバ壁にはレーザ計測系が取り付けられている。図10においては、レーザ計測系は、図4に示すものと同様のものであるが、処理システム300は、図5〜図7に示した実施形態のうち任意の実施形態のレーザ計測系を備えていてもよい。この処理システム300では、レーザ計測系によって計測された位置に基づき、搬送ユニットTUの搬送機構に制御ユニットから電気信号を与えることで、搬送ユニットTUの位置を制御することが可能である。このように、本発明の思想は、大気圧環境下にも適用可能である。
【0063】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、これら実施形態に限定されることなく種々の変形形態を構成することも可能である。例えば、上述した処理システムは、単なる例示であり、載置台、収容容器、プロセスモジュールといった要素の数及び位置関係等は、上述した処理システムの構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
10…基体搬送装置、12…チャンバ壁、14…テーブル、16…リニアモータ搬送機構、18…光学窓、20…レーザ計測器、32…パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送空間を画成するチャンバ壁と、
前記搬送空間内に収容されたテーブルと、
前記搬送空間内において前記テーブルを移動させるためのリニアモータ搬送機構と、
前記搬送空間と該搬送空間の外部空間との間に設けられた光学窓と、
前記光学窓を介して前記テーブルに向けてレーザ光を照射し、前記テーブルからの反射光を受けて、前記テーブルの位置を計測するためのレーザ計測器と、
を備える基体搬送装置。
【請求項2】
前記搬送空間は、減圧可能な搬送空間である、請求項1に記載の基体搬送装置。
【請求項3】
前記光学窓と前記搬送空間とを光学的に接続するパイプを更に備え、
前記レーザ計測器は、前記光学窓及び前記パイプの内孔を介して前記レーザ光を照射し、前記反射光を前記パイプの内孔及び前記光学窓を介して受ける、
請求項1又は2に記載の基体搬送装置。
【請求項4】
前記パイプは、前記内孔を画成する内面を含み、
前記内面の少なくとも一部は、0.1mm〜3mmの凹凸を有する、
請求項3に記載の基体搬送装置。
【請求項5】
前記パイプは、前記内孔を画成する内面を含み、
前記内面は、多孔質面である、
請求項3に記載の基体搬送装置。
【請求項6】
前記パイプの前記内孔は、該パイプの長手方向に沿って第1の内径を有する部分と、前記第1の内径より小径の第2の内径を有する部分と、を含む、請求項3〜5の何れか一項に記載の基体搬送装置。
【請求項7】
前記内孔は、蛇行する経路に沿って画成されており、
前記パイプの内孔には、該内孔の一端と該内孔の他端とを光学的に結合する一以上の光学ミラーが設けられている、
請求項3に記載の基体搬送装置。
【請求項8】
前記パイプの前記内孔に不活性ガスを供給するガス供給路を更に含む、請求項1〜7の何れか一項に記載の基体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84849(P2013−84849A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224996(P2011−224996)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】