説明

基板収納ケース

【課題】外箱を必要とせず、使用する材料が少なく、梱包開梱の作業負荷が少なく、また、使用しないときは折り畳んで、少ないスペースで保管でき、耐衝撃性と断熱性に優れた基板収納ケースを提供する。
【解決手段】底面部と正面部と背面部と対向する2つの側面部と開放された開口部を有するケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐケース蓋からなる基板収納ケースであって、ケース本体が、周縁部を接着された、折り曲げ可能な2枚のシートからなり、シートに取り付けられた気体注排口より気体を2枚のシートの間に、注入することによって、直方体形状が保持され、気体注排口より気体を排出することによって、折り畳み可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、半導体素子、プリント基板、あるいは、フラットパネルディスプレイのような映像表示装置などの製造工程で、配線層や部品層のパターン画像を形成するのに用いるフォトマスクやその加工なる前のフォトマスクブランクの収納に用いられる基板収納ケースに関するものである。
【0003】
従来の基板収納ケースは、輸送時や保管時に、フォトマスクやフォトマスクブランクの品質劣化を防止する為に、気密性、耐衝撃性、低発塵性、低アウトガス性、遮光性、移載性に配慮した硬質樹脂製のインナーケースにフォトマスクやフォトマスクブランクを収納し、それに制電性、導電性のシートを被せて、シートごと耐衝撃性を高める為に紙または樹脂段ボールのケースに外梱する二重梱包が広く用いられている。
【0004】
また、樹脂からなる中箱に基板を収納して、この中箱を樹脂からなる外箱で外梱する二重梱包する収納ケースがある(例えば、特許文献1)。
【0005】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−203383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の収納ケースでは、二重梱包するために、コスト高になり、環境負荷も大きい上に、梱包作業と開梱作業に時間と手間がかかる。また、使用しないときの空ケースは嵩張るので保管に広いスペースを必要とする。
【0008】
また、一般的には、これらの収納ケースには断熱性もなく、また、コストの問題で、温調つきの輸送機器で搬送されることは無く、輸送時に直接外気温の影響を受ける。そのため、フォトマスクやフォトマスクブランクが膨張・収縮する問題や、冬季や梅雨時には結露する問題があり、輸送先において使用前に長時間のエージングが必要になる場合があり、短納期品が多いフォトマスクやフォトマスクブランクの納期遅延の原因となる。
【0009】
保温手段として、マスクケース内に金属酸化反応熱を用いた加熱材や、蓄熱材をつめた容器を同梱して温度コントロールする方法があるが、ケース内にそれらの固体を詰めるスペースが必要でケースが大きく重くなる問題がある。また、加熱材の場合は、使い捨てで環境負荷になり、温度制御が難しく、内容物がこげたりする問題もあった。
【0010】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、外箱を必要とせず、使用する材料が少なく、梱包開梱の作業負荷が少なく、また、使用しないときは折り畳んで、少ないスペースで保管でき、耐衝撃性と断熱性に優れた基板収納ケースを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、底面部と正面部と背面部と対向する2つの側面部と開放された開口部を有するケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐケース蓋からなる基板収納ケースであって、
前記ケース本体が、周縁部を接着された、折り曲げ可能な2枚のシートからなり、該シートに取り付けられた気体注排口より気体を前記2枚のシートの間に、注入することによって、直方体形状が保持され、該気体注排口より気体を排出することによって、折り畳み可能であることを特徴とする基板収納ケースである。
【0012】
本発明の基板収納ケースは、以上のような構成であって、周縁部を接着された、折り曲げ可能な2枚のシートからなり、シートに気体注排口が取り付けられているので、使用するときは、気体注排口より気体を2枚のシートの間に注入して、直方体形状にして使用することができ、使用しないときは、2枚のシートの間の気体を気体注排口より排出して、折り畳んで保管、あるいは搬送することができる。また、この基板収納ケースのみで基板を、梱包できるので、二重梱包の必要がなく、使用する材料が少なく、梱包開梱の作業負荷を小さくすることができる。また、2枚のシートの間に気体が注入されているので、耐衝撃性と断熱性が優れている。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、前記底面部と前記対向する2つの側面部の内面に、収納する平板状の基板の3辺を支持する支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板収納ケースである。
【0014】
本発明の基板収納ケースは、更に、底面部と対向する2つの側面部の内面に設けた支持部材で、基板の3辺を支持するようにしているので、2つの側面部をそれぞれ底面部3側に倒して、折り畳むときに、支持部材が邪魔になって、折り畳めないということがない。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、前記2枚のシートの少なくとも一方に遮光性があることを特徴とする請求項1または2に記載の基板収納ケースである。
【0016】
本発明の基板収納ケースは、また、基板収納ケースに用いるシートに遮光性があることによって、収納されたフォトマスクやフォトマスクブランクを感光による悪影響から守ることができる。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明は、前記気体注排口より前記2枚のシートの間に注入される気体が、空気の熱伝導率より低い熱伝導率の気体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板収納ケースである。
【0018】
本発明の基板収納ケースは、空気の熱伝導率より低い熱伝導率の気体が、注入されているので、空気を注入したときより、断熱性が向上する。
【0019】
本発明の請求項5に係る発明は、前記低い熱伝導率の気体が、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかの単一の気体、または、これらの複数の混合気体であることを特徴とする請求項4に記載の基板収納ケースである。
【0020】
本発明の基板収納ケースは、空気の熱伝導率より明らかに低い熱伝導率のアルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかの単一の気体、または、これらの複数の混合気体が、注入されているので、空気を注入した場合より、一段と断熱性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の基板収納ケースは、内箱と外箱の二重梱包ではないので、使用する材料が少なく、梱包開梱の作業負荷が少ない。また、使用しないときは折り畳んで、少ないスペース
で保管することができる。更には、耐衝撃性と断熱性に優れ、収納された基板を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の基板収納ケースの一例を模式的に、一部透視し、斜視で示した説明図である。
【図2】本発明の基板収納ケースの一例に設けた保持部材の説明図である。(A)断面図である。(B)正面図である。(C)平面図である。
【図3】本発明の基板収納ケースの一例で梱包したときを模式的に斜視で示した説明図である。
【図4】本発明の基板収納ケースの一例の各面部を形成するシート材料の構造を模式的に断面で示した説明図である。
【図5】本発明の基板収納ケースの一例のケース本体の展開図である。
【図6】本発明の基板収納ケースの他の例のケース本体の展開図である。
【図7】本発明の基板収納ケースの一例のケース本体を折り畳んだ状態を模式的に平面で示した説明図である。
【図8】本発明の基板収納ケースの一例のケース本体を折り畳んだ状態を図7のA−Aで切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の基板収納ケースの一例を模式的に、一部透視し、斜視で示した説明図である。
図2は、本発明の基板収納ケースの一例に設けた保持部材の説明図である。(A)断面図である。(B)正面図である。(C)平面図である。
図3は、本発明の基板収納ケースの一例で梱包したときを模式的に斜視で示した説明図である。
図4は、本発明の基板収納ケースの一例の各面部を形成するシート材料の構造を模式的に断面で示した説明図である。
【0024】
本例の基板収納ケースは、図1のように、ケース本体1とケース蓋2からなる。ケース本体1は、底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bと、開放された開口部7からなり、直方体形状となっている。本例のケース蓋2は、ケース本体1と同様に、下方が開放された開口部となっている直方体形状であって、開口部がケース本体の開口部7より大きく、ケース蓋2の開口部を、ケース本体1の上部に被せて、ケース本体の開口部7を覆って塞ぐ被せ蓋になっている。
【0025】
底面部3と、2つの側面部6a、6bの内面に、収納する基板の3辺を支持する支持部材8a、8b、8cが設けられている。支持部材8a、8b、8cは、図2の(A)のように、断面がコの字状となっている。そして、図2(B)、(C)のように細長い棒状になっている。
【0026】
そして、コの字の底部sで、図3のように、平板状の基板9の端面を受けて、その近傍の表裏面を挟むように形成されている。この支持部材8a、8b、8cによって、基板9の3つの端辺部を保持し、基板9を固定するようになっている。
【0027】
支持部材8a、8b、8cは、一体とした支持部材ではなく、側面部6a、6bの支持部材8b、8cは、底面部3の支持部材8aと離れて設けられている。このようにすることによって、2つの側面部6a、6bをそれぞれ、底面部3に倒して折り畳めるようになっている。
【0028】
基板9を収納したケース本体1に、ケース蓋2を覆い被せて、ケース本体1の開口部7を塞ぎ、ケース本体1とケース蓋2の間を、粘着テープ10を貼って密封する。このとき、ケース蓋2の内面にも、支持部材を設けておいて、基板9の上になった端辺部を保持させるか、または、支持部材を基板9の上になった端辺部に載せて、ケース蓋2で押さえるようにしても良い。
【0029】
ケース本体1の底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bは、図4のように、2枚のシート11a、11bを重ね合わせて、その周縁部を接着した接着部12を設け、未接着部13の2枚のシート11a、11bの間に気体を充填して、膨らませて、壁状としている。本例では、接着部12の接着は、ヒートシールによって行われているが、接着剤を用いた接着によって接着部12を設けてもよい。
【0030】
ケース本体1のシート11aには、筒状の樹脂成形物からなる気体注排口14aが、シート11aに設けた開孔部に取り付けられていて、気体注排口14aより気体を未接着部13の2枚のシートの間に、気体を注入したり、排気したり出来るようになっている。
【0031】
気体注排口14aより、気体を注入することによって、図1、図3のように、ケース本体1が、直方体形状に保持されている。また、周縁部以外にも接着部12を設けて、気体を充填して膨らませたときに、球状にならずに壁状となるようにしている。
【0032】
本例では、ケース蓋2もケース本体1と同様に2枚のシート11a、11bを重ね合わせて、その周縁部を接着した接着部12を設け、未接着部13の2枚のシート11a、11bの間に、シートに設けた開孔部に取り付けられた筒状の樹脂成形物からなる気体注排口14bから、気体を充填して、膨らませて、壁状としている。
【0033】
ケース本体1とケース蓋2に用いるシート11a、11bは、折り曲げ可能なシートを用いる。このようなシートに用いる材料として、軟質の樹脂や、ゴムなどが使用できる。軟質の樹脂としては、軟質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレンなどが使用できる。また、これらは単層ではなく、積層して用いることができる。
【0034】
また、アルミ箔や、アルミ蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを、積層してバリア性を高めて、充填した気体が逃げにくくすることが好ましい。アルミ箔や、アルミ蒸着フィルムは遮光性があるが、前述の樹脂にカーボンブラックなどを配合して、遮光性を高めることが好ましい。遮光性を高めることによって、収納されたフォトマスクやフォトマスクブランクを感光による悪影響から守ることができる。
【0035】
また粘着テープ10も、遮光性のあるものが好ましく、アルミ箔や、アルミ蒸着フィルム、あるいは、カーボンブラックなどを配合した、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリプロピレンなど樹脂を用いた遮光性の高いテープに、粘着剤を塗布したものが、好ましく用いられる。
【0036】
支持部材8a、8b、8cには、硬質の樹脂を用いる。この樹脂には、基板に用いられているガラスを傷つけないように、ガラスよりも硬度が低く、且つ、容易に保持した基板が外れないように、曲げ強度の高い樹脂が好ましく用いられる。このような樹脂としてはポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミドなどが、挙げられるが、ポリエーテルエーテルケトンを用いることが、もっとも好ましい。
【0037】
気体注排口14a、14bは、筒状の樹脂成形物からなっていて、シートに設けた開孔
部に取り付けて、未接着部13の2枚のシートの間に、気体を注入し、また、注入された気体を排気するためのものである。気体注排口14a、14bには、シートに取り付けるのでシート材料に用いた樹脂と熱融着できる同系の樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
気体注排口14a、14bは、キャップなどにより、密封するようになっている。繰り返し使用するために、スクリューキャップにして、開け閉めが簡単にできるようにしておくことが好ましい。
【0039】
図5は、本発明の基板収納ケースの一例のケース本体の展開図である。
本例の基板収納ケースのケース本体1は、図5のように、底面部3の上下に、正面部4と、背面部5が連設され、底面部3の左右に側面部6a、6bが連設されたシート材料より成形される。
【0040】
シート材料は、2枚のシート11a、11bが重ね合わされていて、底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bの周縁部には、2枚のシート11a、11bを接着する接着部12が設けられていて、また、周縁部以外にも、気体を充填して膨らませたときに、球状にならずに壁状となるようにヒートシールにより、接着部12を設けている。
【0041】
また、接着していない未接着部13には、未接着部13の2枚のシート11a、11bの間に気体を充填するために、筒状の樹脂成形物からなる気体注排口14aが、シート11aに設けた開孔部に取り付けられている。
【0042】
本例では、底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bに設けられた未接着部13は、それぞれ独立して、気体の流通がない構造としているが、それぞれの間を、通気路で結んで、一箇所の気体注排口14aから、気体を注入して、複数の面部3、4、5、6a、6bに設けた未接着部13に、気体を充填できるようにしても良い。
【0043】
この基板収納ケースのケース本体1を成形には、まず、展開図のシート材料の正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bを、底部3と直角になるように立ち上げ、立ち上げて接するようになる、正面部4と側面部6a、6bの端部をそれぞれ接着し、また、背面部5と側面部6a、6bの端部をそれぞれ接着する。
【0044】
次に、気体注排口14aから、気体を注入して、底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bに設けた未接着部13に、気体を充填することによって、ケース本体1が、直方体形状に保持されている。
【0045】
ケース蓋2についても同様にして形成して、直方体形状のケース蓋2を作製することができる。
【0046】
図6は、本発明の基板収納ケースの他の例のケース本体の展開図である。
本例の基板収納ケースのケース本体1も、図6のように、底面部3の上下に、正面部4と、背面部5が連設され、底面部3の左右に側面部6a、6bが連設されたシート材料より成形される。
【0047】
シート材料は、2枚のシートが重ね合わされていて、底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bの周縁部には、2枚のシート11a、11bを接着する接着部12が設けられている。また、周縁部以外にも、気体を充填して膨らませたときに、球状にならずに壁状となるように接着部12を設けている。
【0048】
前例と違い、本例では、底面部3と、正面部4と、背面部5と、対向する2つの側面部6a、6bに、それぞれ独立して連通していない2つの未接着部13が設けられていることである。
【0049】
そして、各面部3、4、5、6a、6bの連通していない2つの未接着部13にそれぞれ、気体注排口14が設けられている。このように、独立して連通していない複数の未接着部13に分けて設けることによって、万が一破れたりして、1箇所の未接着部13から気体が漏れてしまっても、直方体形状にケース本体1を保持することができる。
【0050】
このような各面部3、4、5、6a、6bに、独立して連通していない複数の未接着部13を設けた場合でも、各面部3、4、5、6a、6bの間の未接着部13を、通気路で結んで、一箇所の気体注排口14aから、気体を注入して、別の面部3、4、5、6a、6bに設けた未接着部13に、同時に気体を充填できるようにしても良い。
【0051】
本例の基板収納ケースのケース本体1を成形するには、前例の基板収納ケースの成形と同様にすればよい。
【0052】
図7は、本発明の基板収納ケースの一例のケース本体を折り畳んだ状態を模式的に平面で示した説明図である。図8は、本発明の基板収納ケースの一例のケース本体を折り畳んだ状態の図7のA−Aで切断した断面である。
【0053】
本発明の基板収納ケースのケース本体1は、使用しないとき、折り畳んで保管することができる。気体注排口14aを通じて、各未接着部13から気体を排出すると、直方体形状が保持されなくなる。
【0054】
そして、支持部材8b、8cを設けた、2つの側面部6a、6bをそれぞれ底面部3側に倒すと、図7の平面図のように、支持部材を設けていない正面部4は、側面部6a、6bとの境の下端の位置から、正面部4の上端で左右の中方向の位置にそれぞれ、折られて、台形形状となり、また、支持部材を設けていない背面部5も、側面部6a、6bとの境の下端の位置から、背面部5の上端で左右の中方向の位置にそれぞれ、斜めに折られて、台形形状となり、ケース本体1が折り畳まれる。
【0055】
このとき、図7のA−Aで切断した断面図の図8のように、側面部6a、6bの支持部材8b、8cは、底面部3の支持部材8aから離れた位置に設けられているので、底面部3に設けられた支持部材8aが、側面部6a、6bに設けられた支持部材8b、8bに接触することがなく、ケース本体1の折り畳みに支障をきたすことがない。
【0056】
次に、気体注排口14a、14bより2枚のシート11a、11bの間に注入される気体について説明する。通常、シート11a、11bの間に注入される気体は、空気、あるいは、ボンベなどから供給される水分をほとんど含まない窒素ガスが用いられる。窒素ガスを用いるのは、温度変化によって、水分が凝集して、シート間の気体の体積が少なくなるのを防ぐためである。
【0057】
特に基板がフォトマスクあるいはフォトマスクブランクの場合、膨張・収縮する問題や、冬季や梅雨時に結露する問題を回避するために、空気より低い熱伝導率の気体を注入するのが好ましい。
【0058】
空気(熱伝導率:0.0241W/m・K at 0℃)より熱伝導率の低い気体としては、アルゴン(熱伝導率:0.0163W/m・K at 0℃)、クリプトン(熱伝
導率:0.0087W/m・K at 0℃)、キセノン(熱伝導率:0.0052W/m・K at 0℃)がある。これらは、空気の熱伝導率の70%以下の熱伝導率であり、好ましく用いられる。
【0059】
これらの気体を必要な断熱性に応じて、単一で、または、複数の混合で用いることができる。これによって、空気をシート11a、11bの間に注入したときに比較して、断熱性が向上する。
【0060】
窒素ガスの場合は、熱伝導率が0.0240W/m・K(at 0℃)であるので、空気とほぼ同等であり、断熱性の向上は期待できない。また、同じ希ガスであるヘリウム(熱伝導率:0.1422W/m・K at 0℃)やネオン(熱伝導率:0.0465W/m・K at 0℃)は、原子量が空気の平均分子量より小さいので、熱伝導率が大きく用いることはできない。
【0061】
以上のように、2枚のシート11a、11bの間に注入される気体は、通常は空気や窒素ガスでも構わないが、空気、あるいは、同等の熱伝導率である窒素より、熱伝導率が低いアルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかの単一の気体、または、これらの複数の混合気体を用いることによって、基板収納ケースの断熱性が向上でき、基板収納ケース内の基板が膨張・収縮したり、冬季や梅雨時に結露したりすることを防止できる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・ケース本体
2・・・ケース蓋
3・・・底面部
4・・・正面部
5・・・背面部
6a、6b・・・側面部
7・・・開口部
8a、8b、8c・・・支持部材
9・・・基板
10・・・粘着テープ
11a、11b・・・シート
12・・・接着部
13・・・未接着部
14a、14b・・・気体注排口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と正面部と背面部と対向する2つの側面部と開放された開口部を有するケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐケース蓋からなる基板収納ケースであって、
前記ケース本体が、周縁部を接着された、折り曲げ可能な2枚のシートからなり、該シートに取り付けられた気体注排口より気体を前記2枚のシートの間に、注入することによって、直方体形状が保持され、該気体注排口より気体を排出することによって、折り畳み可能であることを特徴とする基板収納ケース。
【請求項2】
前記底面部と前記対向する2つの側面部の内面に、収納する平板状の基板の3辺を支持する支持部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板収納ケース。
【請求項3】
前記2枚のシートの少なくとも一方に遮光性があることを特徴とする請求項1または2に記載の基板収納ケース。
【請求項4】
前記気体注排口より前記2枚のシートの間に注入される気体が、空気の熱伝導率より低い熱伝導率の気体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板収納ケース。
【請求項5】
前記低い熱伝導率の気体が、アルゴン、クリプトン、キセノンのいずれかの単一の気体、または、これらの複数の混合気体であることを特徴とする請求項4に記載の基板収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−126456(P2012−126456A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93953(P2011−93953)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】