説明

基板搬送ロボット

【課題】 プーリの熱膨張による軸間距離が長くなりベルトのプーリ間の軸間距離が伸びる。これによる伝達ベルトの張力が過大からくるアームの反りや、ベルトの伸びや破断を引き起こさないようにする。
【解決手段】 各テンションプーリ23とそれを取り付ける固定ベース51の間に、テンションプーリ23を支持するプレート26を介在させ、プレート26は熱膨張率が各々異なる支持板A55と支持板B56を張り合わせることにより形成する。熱膨張時のバイメタル効果によりプレート26が曲がってテンションプーリ23の位置を変位させることにより、伝達ベルト24の張力の増減が相殺されてベルト張力を一定に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体および液晶の製造装置に使用され、ウェハ、液晶ガラス基板などの基板を搬送する基板搬送ロボットにおいて、特にベルトとプーリによる動力伝達によってアームが動作する基板搬送ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶の製造装置(以下、単に半導体製造装置と記載する)において、半導体ウェハ、液晶ガラスといった基板を搬送する際、一般的に水平多関節形の搬送ロボットが使用されている。水平多関節形のロボットは、互いに水平面において回転可能に連結された複数のアームと、これらアームを回転駆動させる駆動部と、最先端のアームに連結されて基板を搭載可能なハンドと、から構成され、駆動部の回転によって複数のアームを互いに回転させることによってハンドを旋回・伸縮動作させ、ハンド上の基板を所望の位置へと搬送する搬送装置である。ハンドやアームを回転させるための駆動部からの回転力は、アーム内に収容されたベルトとプーリとによって伝達される。ところがプーリに巻装されたベルトにはある程度の適切な張力(テンション)が必要であり、この張力が適切でないと、基板の搬送精度を低下させたり、基板搬送ロボットの故障を引き起こしたりする。そこで、ベルトの張力を適切に調整するために、様々なテンション調整機構が開発されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特に特許文献1の図3で示されるテンション調整機構は一般的に広く使用されているので、このテンション調整機構について図3にて説明する。
図3は従来のテンション調整機構を説明する図である。(a)がテンション調整機構が設けられた基板搬送ロボットのアームの上面図、(b)がテンション調整機構の側面の断面図である。伝達ベルト24のベルトの表面或いは裏面に当接するのがテンションプーリ23である。伝達ベルト24は第1プーリ21と第2プーリ22とに巻装されていて、第1プーリ21の回転力を第2プーリ22に伝達する。テンションプーリ23は支柱軸43にベアリングなどで回転可能に支持されている。支柱軸43は固定ベース41に固定されている。固定ベース41はアーム2の内部にネジ等によって固定されるが、このとき、固定ベース41に形成されている長孔によって固定ベース41の第1アーム2に対する位置が調整され、テンションプーリ23の伝達ベルト24への押し付け量が調整されて、伝達ベルト24が所定の張力となるように固定される。
以上により、伝達ベルト24はテンションプーリ23に押されながら所定の張力を保ち、図示しない駆動部からの回転力をアームの先端側へと伝達する。
【特許文献1】特開2002−266962号公報(図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今の半導体製造装置では、その製造過程において基板を数百度(500〜600℃)に加熱する処理が行われることがあり、基板搬送ロボットがこのような高温基板を搬送することが多くなってきている。特に基板温度を数百度に上昇させる工程は、減圧状態にした真空チャンバ内で施されることが多いため、基板搬送ロボットは真空チャンバ内に設置されて高温基板を搬送することになる。基板を直接搭載するハンドは、他の部品に比して単純な平板状の形であるため、セラミックスなどで形成可能であり、高温基板が直接搭載されてもハンド自身は温度上さほど問題はなく、また、熱伝導率も比較的低いため、アームへ基板の熱を急激に伝達させることもない。一方、アームの筐体(ケース)を形成する母材は、内部に上記のようなテンション調整機構などを収納するため、複雑な形状を余儀なくされており、そのためアルミニウムが主に使用されており、熱が伝わりやすいものとなっている。
このような状況で高温基板を搬送する際に、アームが高温基板からの輻射熱や伝達熱によって加熱され、これによってテンション調整機構が適切な伝達ベルトの張力を保つことができなくなり、基板を精度よく搬送できなくなるという問題が発生するようになってきた。
つまり、従来の基板搬送ロボットは第1アーム2、第1プーリ21、第2プーリ22、及びテンション調整機構の各部品を、アルミ材等の軽量材で構成しているので、高温環境で動作する場合、あるいは、高温の基板を搬送する場合、第1アーム2、第1プーリ21および第2プーリ22が熱膨張して第1プーリ21と第2プーリ22との軸間距離が長くなってしまい、伝達ベルト24の張力を大きくしてしまう、また、第1プーリ21と第2プーリ22の径が大きくなり、伝達ベルト24をプーリ径方向に移動させてしまうので、伝達ベルト24のテンションがさらに増大する、さらに、テンション調整機構の固定ベース41やテンションプーリ23も熱膨張して、伝達ベルト24にさらに張力を加える、といった現象が発生していた。
このため、伝達ベルト24の張力がアームの組み立て当初よりも過大となり、基板の搬送精度に影響を与えていた。また、伝達ベルトが不必要に伸びて、破断を引き起こすことがあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、高温基板や高温環境からの熱を受けても、伝達ベルトの張力を変えることなく、これによって高精度な基板搬送を実現することができる基板搬送ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、第1プーリの回転力を伝達ベルトによって第2プーリに伝達して回動するアームを備え、前記伝達ベルトの張力を調整可能なテンション調整機構を有する基板搬送ロボットにおいて、前記テンション調整機構が、前記伝達ベルトに当接して回転するテンションプーリと、前記テンションプーリを支持するプレートと、 前記プレートを支持して前記アームに固定され、前記テンションプーリの位置を調整可能な固定ベースと、を備え、前記プレートが、熱膨張率が各々異なる支持板Aと支持板Bとが張り合わされて形成されたことを特徴とする基板搬送ロボットとするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、基板搬送ロボットのアーム部が高温になると、プーリ間の軸間距離が伸びて伝達ベルト張力が増加するが、支持板AとBとが貼りあわされて形成されたプレートがバイメタル効果により曲がってテンションプーリの位置を変位させ、テンションプーリのベルトへの押し付け力を減少させ、ベルト張力が減少する。
その結果、張力の増減が相殺されて、アーム部が高温になってもベルト張力を一定に保つことができ、高精度な基板搬送を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0008】
図1は本発明のテンション調整機構が適用された基板搬送ロボットのアーム部を示している。同図(a)が上面図であって、アーム内部の一部を透視した図である。同図(b)はその側面の断面図である。
この基板搬送ロボットは、図示しない回転駆動部を収容する胴体の上に第1アーム2の一端を回転可能に取り付け、第1アーム2の他端に第2アーム3の一端を回転可能に取り付け、第2アーム3の他端に基板を保持可能なハンド4を回転可能に取り付けたものである。
図示しない回転駆動部を収容する胴体は、中空シャフト形状の第1駆動軸65と、第1駆動軸65の内部に同心状に配置された第2駆動軸66を備えており、これらはモータで構成される回転駆動部によって互いに自由に回転可能である。第1駆動軸65の端部には第1アーム2が固定されおり、第2駆動軸66の端部には第1プーリ61が固定されている。
第1アーム2の他端側には、第1連結軸67、第2連結軸75が第2アーム3の内部に突出して固定されると共に、第1連結軸67に対して第2プーリ62が回転自在に取り付けられている。第1プーリ61と第2プーリ62との直径比は、本実施例の場合、1:1なる関係で設けてあり、第1プーリ61と第2プーリ62との間にはループ状のエンドレスタイプの第1伝達ベルト64が巻き掛けてある。
第2プーリ62の上端には第2アーム3の一端側が固定されており、第2アーム3の内部まで突出した第2連結軸75の上端部には第3プーリ71が固定され、第2アーム3に対して、第3プーリ71が相対的に回転するようになっている。
第2アーム3の他端側の内部には、第3連結軸76が固定されると共に、第3連結軸76に対して第4プーリ72が回転自在に取り付けられている。第3プーリ71と第4プーリ72との直径比は、本実施例の場合、1:2なる関係で設けてあり、第3プーリ71と第4プーリ72との間にはループ状のエンドレスタイプの第2伝達ベルト74が巻き掛けてある。
第4プーリ72の上端にはハンド4が固定されており、第2アーム3に対して、ハンド4が相対的に回転するようになっている。
さらに、第1アーム2、第2アーム3の内部には、それぞれ、本発明のテンション調整機構99を備えている。テンション調整機構99の詳細については後述する。本実施例では、各アーム内の伝達ベルト24それぞれの張力を調節するために、図1(a)のように、環状の各ベルトの内側に2つのテンション調整機構99が設けてある。第1アーム2内のテンション調整機構99と第2アーム3内のテンション調整機構99とは、寸法などが異なるだけで、基本的な構成は同じである。
【0009】
以上の構造において、第1駆動軸65を第2駆動軸66に対して相対的に回転させて、第1アーム2を回転させると、第1プーリ61は第1アーム2に対して相対的に回転し、この第1プーリ61の相対回転は、伝達ベルト24を介して第2プーリ62を回転させて第2アーム3が回転する。第2アーム3が回転することで、第2アーム3と第3プーリ71との間で相対回転が生じ、この相対回転は第2アーム3内の伝達ベルト24を介して第4プーリ72を回転させてハンド4が回転する。
このとき、第1アーム2内の第1プーリ61と第2プーリ62との直径比は1:1なる関係で、第2アーム3内の第3プーリ71と第4プーリ72との直径比は1:2なる関係で設けてあるので、第2駆動軸66の回転に対して、第1駆動軸65、すなわち、第1アーム2を同一速度で逆方向に回転させると、第1プーリ21は第1アーム2に対して相対的に2倍の回転量だけ回転することになるので、第2アーム3は第1アーム2に対して逆方向に2倍の回転量だけ回転し、ハンド4は第2アーム3に対して逆方向に1/2倍の回転量だけ回転するので、ハンド4の先端が第1及び第2駆動軸の軸心の半径方向に直進運動(伸縮動作)をすることになる。
また、第1駆動軸65と第2駆動軸66とを、同時に同一速度で回転させると、ハンド及び各アームの相対的な姿勢を保ったまま、第1及び第2駆動軸の軸心を中心として、アーム部全体が旋回動作することになる。
なお、図示しないが、胴体内部に第1及び第2駆動軸を上下動させる上下動駆動部を設けることがあり、これによりアーム部全体を上下動作させることができる。
以上により、アーム部は、旋回動作、伸縮動作及び上下動作ハンド4によって、保持された基板を所望の位置まで搬送する。
【0010】
次に、本発明のテンション調整機構99の詳細について説明する。
図2はテンション調整機構99を示す拡大図で、(a)が上面図、(b)が(a)をX方向から見た側面の一部断面図である。また、(c)が(a)をY方向から見た側面の一部断面図である。
伝達ベルト24のベルトの表面或いは裏面に当接するのがテンションプーリ23である。テンションプーリ23は支柱軸53にベアリングなどで回転可能に支持されている。支柱軸53はコの字状のホルダ54の上下の面に上端下端がそれぞれ固定されている。ホルダ54は、支持板A55と支持板B56とが貼りあわされて形成されたプレート26の一端に固定されている。プレート26の他端は固定ベース51によって片持ち支持されていて、プレート26が水平方向に延在するようになっている。固定ベース51は第1アーム2或いは第2アーム3の内部の底面に固定される。このように構成することで、水平多関節ロボットのアームのように、上下に薄い構造体の内部に収容できるようにしている。
プレート26の面は、図1における第1プーリ61と第2プーリ62、あるいは第3プーリ71と第4プーリ72の回転中心軸同士を結ぶ線とほぼ平行になるように固定ベース51によって支持され、テンションプーリ23が当接している伝達ベルト24の表面或いは裏面と対向するように支持されている。
プレート26を構成する支持板A55と支持板B56は、熱膨張率が各々異なるものを張り合わせてある。そして、支持板Aの熱膨張率αと支持板Bの熱膨張率βが、α<βなる関係となるように取り付ける。つまり、テンションプーリ23が当接している伝達ベルト24から遠い支持板A55の熱膨張率αと近い支持板B56の熱膨張率βとが、α<βなる関係となるようにプレート26が構成されている。
固定ベース51は第1アーム2或いは第2アーム3の内部にネジ等によって固定されるが、このとき、固定ベース51に形成されている長孔によって固定ベース51の各アームに対する位置が調整され、テンションプーリ23の各伝達ベルトへの押し付け量が調整されて、所定の張力となるように固定される。
以上により、各伝達ベルトはテンションプーリ23に押されながら所定の張力を保ち、上述した駆動部の回転力を伝達する。
【0011】
以上の構成において、基板搬送ロボット1のアーム部が高温になると、伝達ベルト24が巻き掛けられているプーリ間の軸間距離が伸びて、或いは第1乃至第4プーリ自身の径が膨張して伝達ベルト24の張力が増加する。しかし、図4のように、支持板Aよりも支持板Bがより膨張するため、そのバイメタル効果により、プレート26の一端が伝達ベルト24から遠ざかるように曲がる。よって、テンションプーリ23の位置が伝達ベルト24から遠ざかるように変位するので、テンションプーリ23の伝達ベルト24に対する押し付け力が減少し、伝達ベルト24の張力が減少する。その結果、張力の増減が相殺されて、アーム部が高温になってもベルト張力を一定に保つことができ、基板の搬送精度を一定に保つことができるようになる。また、伝達ベルト24が不必要に伸びて、破断を引き起こすことも防げる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のテンション調整機構を備えた基板搬送ロボットの上面図及び側面図
【図2】本発明のテンション調整機構を示す上面図及び側面図
【図3】従来のテンション調整機構を示す上面図及び側面図
【図4】本発明のテンション調整機構の作用を示す上面図
【符号の説明】
【0013】
1 基板搬送ロボット
2 第1アーム
3 第2アーム
4 ハンド

21 第1プーリ
22 第2プーリ
23 テンションプーリ
24 伝達ベルト
26 プレート

41 従来のテンションプーリの固定ベース
43 従来のテンションプーリの支柱軸

51 固定ベース
52 ベアリング
53 支柱軸
54 ホルダ
55 支持板A
56 支持板B

61 第1プーリ
62 第2プーリ
65 第1駆動軸
66 第2駆動軸
67 第1連結軸

71 第3プーリ
72 第4プーリ
75 第2連結軸
76 第3連結軸

99 テンション調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プーリの回転力を伝達ベルトによって第2プーリに伝達して回動するアームを備え、前記伝達ベルトの張力を調整可能なテンション調整機構を有する基板搬送ロボットにおいて、
前記テンション調整機構が、
前記伝達ベルトに当接して回転するテンションプーリと、
前記テンションプーリを支持するプレートと、
前記プレートを支持して前記アームに固定され、前記テンションプーリの位置を調整可能な固定ベースと、を備え、
前記プレートが、熱膨張率が各々異なる支持板Aと支持板Bとが張り合わされて形成されたことを特徴とする基板搬送ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の基板搬送ロボットを備えたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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