説明

基準電圧発生回路及びこれを用いた電源電圧監視回路

【課題】 低い電源電圧でも高精度な基準電圧を発生できると共に、外部から印加される初期化信号や複数の定電流源を必要とすることなく、回路の安定した起動を実現できる基準電圧発生回路を提供する。
【解決手段】 この基準電圧発生回路は、2つのPN接合を含む回路に発生する2つの電圧を入力して出力電圧を生成する差動増幅部と、2つのPN接合に電流を供給する電流供給部と、起動信号に従って差動増幅部の動作を第1の安定状態から第2の安定状態に移行させるために電流供給部を制御する制御部とを含み、差動増幅部の出力電圧に基づいて生成された第1の電圧を分圧して基準電圧として出力する定電圧回路20と、第1の電圧に基づいて差動増幅部の動作が第1の安定状態を経過するまで起動信号を活性化する起動回路10と、起動信号が活性化されているときに第1の電圧を減少させる起動促進回路30とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧(参照電圧)を発生する基準電圧発生回路に関し、さらに、そのような基準電圧発生回路によって発生された基準電圧に基づいて電源電圧を監視する電源電圧監視回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バンドギャップリファレンス回路を使用した基準電圧発生回路が知られている。バンドギャップリファレンス回路を使用すれば、温度や電源電圧が変動しても、高精度で安定した基準電圧を得ることができる。ところで、従来の基準電圧発生回路において、電源投入時に回路を安定して起動させるためには、初期化信号が必要であった。しかしながら、電源投入時には、電源電圧が低いので、初期化信号を生成することが容易ではない。従って、初期化信号を生成することができないために、回路を安定して起動させることができない場合があった。
【0003】
特許文献1には、温度依存性や電源電圧依存性が小さい出力電圧を電源電圧内の任意の値に設定することができ、1.25V以下の電源電圧で動作可能な基準電圧発生回路が開示されている。特許文献1の図19に示されている基準電圧発生回路においては、電源投入時に一時的に出力ノードを接地電位にリセットするためのスタートアップ用のトランジスタN19が設けられており、そのトランジスタのゲートに、上記の初期化信号として、電源投入時に生成されるパワーオンリセット信号PONが外部から印加される。従って、この基準電圧発生回路は、自ら初期化動作を行っている訳ではない。
【0004】
一方、特許文献2には、低い電源電圧でも高精度な基準電圧を発生できると共に、回路の安定した起動を実現することができるCMOS基準電圧発生回路が開示されている。特許文献2の図2に示されている基準電圧発生回路においては、外部から初期化信号を印加する必要はないものの、内蔵する3個の定電流源IS1〜IS3によって回路の起動が行われる。
【特許文献1】特開平11−45125公報(第1、11頁、図19)
【特許文献2】特開2003−173212号公報(第1頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、低い電源電圧でも高精度な基準電圧を発生できると共に、外部から印加される初期化信号や複数の定電流源を必要とすることなく、回路の安定した起動を実現できる基準電圧発生回路を提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような基準電圧発生回路によって発生された基準電圧に基づいて電源電圧を監視する電源電圧監視回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明に係る基準電圧発生回路は、(a)2つのPN接合を含む回路に発生する2つの電圧を入力して出力電圧を生成する差動増幅手段と、差動増幅手段の出力電圧に従って2つのPN接合にそれぞれの電流を供給する電流供給手段と、起動信号に従って差動増幅手段の動作を2つのPN接合に流れる電流が比較的小さいときの第1の安定状態から2つのPN接合に流れる電流が比較的大きいときの第2の安定状態に強制的に移行させるために電流供給手段を制御する制御手段とを含み、差動増幅手段の出力電圧に基づいて生成された第1の電圧を直接又は分圧して基準電圧として出力する定電圧回路と、(b)定電圧回路から出力される第1の電圧に基づいて、定電圧回路を起動制御するために起動信号を活性化し、その後少なくとも差動増幅手段の動作が第1の安定状態を経過するまで起動信号を活性化し続け、差動増幅手段の動作が第1の安定状態を経過した後に起動信号を非活性化する起動回路と、(c)起動信号が活性化されているときに第1の電圧を減少させる起動促進回路とを具備する。
【0007】
ここで、2つのPN接合が、電流密度が互いに異なる第1のPN接合及び第2のPN接合を含み、電流供給手段が、差動増幅手段の出力電圧に従って、第1のPN接合、及び、第1のPN接合に並列接続された第1の抵抗に電流を供給する第1のトランジスタと、差動増幅手段の出力電圧に従って、第2の抵抗と第2のPN接合との直列回路、及び、直列回路に並列接続された第3の抵抗に電流を供給する第2のトランジスタとを含むようにしても良い。また、定電圧回路が、差動増幅手段の出力電圧に従って少なくとも1つの抵抗に第3の電流を供給することにより、少なくとも1つの抵抗の両端に第1の電圧を発生させる第3のトランジスタをさらに含むようにしても良い。その場合に、制御手段が、起動信号に従って第1〜第3のトランジスタのゲート電位を制御する第4のトランジスタを含むようにしても良い。
【0008】
さらに、起動回路が、電源端子と第4のトランジスタのゲートとの間に電気的に接続されたインピーダンス素子と、ゲート・ソース間に印加される第1の電圧に従って第4のトランジスタのゲート電位を制御する第5のトランジスタとを含むようにしても良い。また、起動促進回路が、ゲートに印加される起動信号に従って第3のトランジスタのドレインに接続されるインピーダンスを変化させる第6のトランジスタを含むようにしても良い。
【0009】
以上において、基準電圧発生回路は、電源電圧が増加するにつれて起動信号を非活性化するように起動回路を制御する再起動防止回路をさらに具備するようにしても良い。ここで、再起動防止回路が、電源電圧を分圧する複数の抵抗と、複数の抵抗によって分圧された電源電圧がゲート・ソース間に印加され、該分圧された電源電圧に従って起動信号を非活性化する第7のトランジスタとを含むようにしても良い。
【0010】
本発明に係る電源電圧監視回路は、上記いずれかの基準電圧発生回路と、基準電圧発生回路によって発生された基準電圧と分圧された電源電圧とを比較して比較結果を表す信号を出力するコンパレータとを具備する。この電源電圧監視回路は、コンパレータの出力信号に従って、電源電圧を分圧する複数の抵抗の内の少なくとも1つの抵抗を短絡する第8のトランジスタをさらに具備するようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源投入時に起動回路が起動信号を活性化すると、起動促進回路が第1の電圧を減少させて起動を促進することにより、外部から印加される初期化信号や複数の定電流源を必要とすることなく、回路の安定した起動を実現できる。これにより、誤動作のおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。基準電圧発生回路100は、起動回路10と、定電圧回路(バンドギャップリファレンス回路)20と、起動促進回路30とを有している。基準電圧発生回路100には、第1の電源電位VDDと、第2の電源電位VSSとが供給される。一般的には、第1の電源電位VDDと第2の電源電位VSSとの差(VDD−VSS)が電源電圧となり、第2の電源電位VSSが接地電位(0V)である場合には、VDDが電源電圧となる。
【0013】
バンドギャップリファレンス回路20は、差動増幅手段としてのオペアンプOP1と、オペアンプOP1の出力信号がゲートに供給されるPチャネルMOSトランジスタQP21〜QP23と、起動時にトランジスタQP21〜QP23のゲート電位PREFを制御してトランジスタQP21〜QP23を強制的に動作させる制御手段としてのNチャネルMOSトランジスタQN21とを含んでいる。
【0014】
バンドギャップリファレンス回路20においては、基準電圧を発生するためのPN接合として、ダイオードD1及びD2が用いられる。例えば、ダイオードD2のサイズをダイオードD1のサイズのM倍(Mは2以上の整数)とすることにより、ダイオードD1及びD2に流れる電流の大きさを互いに等しくしても、それらの電流密度が互いに異なるように設定されている。
【0015】
トランジスタQP21及びQP22は、ダイオードD1及びD2に電流を供給するための電流供給手段である。トランジスタQP21のドレイン電流は、ダイオードD1と、抵抗R21とに供給される。また、トランジスタQP22のドレイン電流は、抵抗R23及びダイオードD2の直列回路と、抵抗R22とに供給される。また、トランジスタQP23のドレイン電流は、基準電圧発生用抵抗R24及びR25に供給される。
【0016】
オペアンプOP1は、ダイオードD1の両端に発生する電圧と、抵抗R23及びダイオードD2の直列回路の両端に発生する電圧との差を増幅(比較)することにより出力信号を生成し、トランジスタQP21〜QP23のゲートにこの出力信号をゲート電位PREFとして供給する。従って、トランジスタQP21〜QP23のドレイン電流は、オペアンプOP1の出力信号によって制御される。
【0017】
これにより、バンドギャップリファレンス回路20は、抵抗R24及びR25のそれぞれの端子において、第1の電位VREFB及び第2の電位VREFを発生する。本実施形態においては、第2の電位VREFを基準電位として用いることにする。なお、抵抗R24を省略して、第1の電位VREFBを基準電位として用いても良い。一般的には、第1の電位VREFBと第2の電源電位VSSとの差(VREFB−VSS)が第1の電圧となり、基準電位VREFと第2の電源電位VSSとの差(VREF−VSS)が基準電圧となる。ただし、第2の電源電位VSSが接地電位(0V)である場合には、VREFBが第1の電圧となり、VREFが基準電圧となる。
【0018】
ここで、バンドギャップリファレンス回路20の動作をさらに詳しく説明する。トランジスタQP21〜QP23にドレイン電流が流れると、ノードN1とノードN2との電位差に応じて、オペアンプOP1の出力信号が変化する。オペアンプOP1の出力信号は、トランジスタQP21〜QP23のゲートに入力される。このようなフィードバックループを組むことにより、オペアンプOP1は、ノードN1の電位とノードN2の電位とが互いに等しくなるように、トランジスタQP21〜QP23を制御する。
【0019】
トランジスタQP21〜QP23はカレントミラー回路を構成しているので、トランジスタサイズもしくは電流駆動能力が同じであれば、トランジスタQP21〜QP23のドレイン電流は等しい。これにより、トランジスタQP23のドレインに接続された基準電圧発生用抵抗R24及びR25に、第1の電位VREFB及び基準電位VREFがそれぞれ発生する。ただし、このバンドギャップリファレンス回路20を安定に起動するためには、次に説明する起動回路10が必要である。
【0020】
起動回路10は、第1の電源電位VDDが供給される電源端子とトランジスタQN21のゲートとの間に電気的に接続された抵抗(インピーダンス素子)R11と、バンドギャップリファレンス回路20からフィードバックされる第1の電位VREFBに従ってトランジスタQN21のゲート電位を制御するNチャネルMOSトランジスタQN11とを含んでいる。抵抗(インピーダンス素子)R11は、固定抵抗素子によって構成されても良いし、トランジスタによって構成されても良い。抵抗(インピーダンス素子)R11がトランジスタによって構成される場合には、飽和接続されたPチャネル又はNチャネルMOSトランジスタを使用することができる。
【0021】
起動回路10は、電源電圧の供給が開始されると、バンドギャップリファレンス回路20に供給される起動信号SSSをハイレベルに活性化する。起動信号SSSが活性化されると、バンドギャップリファレンス回路20内のトランジスタQN21がオン状態となり、オペアンプOP1の出力端子に接続されたトランジスタQP21〜QP23のゲート電位PREFを低下させる。このように、起動信号SSSは、バンドギャップリファレンス回路20内のトランジスタQP21〜QP23にドレイン電流を流すための信号ということができる。これにより、起動回路10は、電源投入時に、トランジスタQP21〜QP23に強制的にドレイン電流を流すようにする。
【0022】
トランジスタQP23にドレイン電流が流れることにより、トランジスタQP23のドレイン電位、即ち、第1の電位VREFBが上昇する。第1の電位VREFBが上昇すると、バンドギャップリファレンス回路20から起動回路10にフィードバックされる第1の電位VREFBに従って、トランジスタQN11がオン状態に移行し、起動信号SSSをローレベルに非活性化する。このとき、トランジスタQP23のドレイン電流が減少することによって第1の電位VREFBが低下するので、トランジスタQN11がオフ状態に戻ってしまい、その後しばらくの間、トランジスタQN11がオン状態とオフ状態とを繰り返すことにより起動信号SSSの電位が振動するという不安定な状態が続いていた。このような不安定な状態を解消するために、本実施形態においては、起動促進回路30が設けられている。
【0023】
起動促進回路30は、起動回路10から供給される起動信号SSSが活性化されているときに、第1の電位VREFB又は基準電位VREFを第2の電源電位VSSに近付けることにより、第1の電圧(VREFB−VSS)を減少させる。例えば、起動促進回路30は、第1の電位VREFBを出力するトランジスタQP23のドレインと第2の電源電位VSSとの間に、直接又はインピーダンス素子を介してドレイン・ソースが接続されるトランジスタによって構成される。本実施形態においては、起動促進回路30として、基準電位VREFと第2の電源電位VSSとの間にドレイン・ソースが接続され、起動信号SSSがゲートに印加されるNチャネルMOSトランジスタQN31が用いられる。
【0024】
起動信号SSSがハイレベルに活性化されると、トランジスタQN31がオン状態となり、トランジスタQP23のドレインに接続されるインピーダンスを変化させて、第1の電位VREFBを低下させる。このときの第1の電位VREFBは、トランジスタQP23の出力インピーダンスと、抵抗R24の抵抗値と、トランジスタQN31のオン抵抗とによって定まる。
【0025】
このように第1の電位VREFBが低下すると、起動回路10内のトランジスタQN11がオン状態に移行することを一時的に阻止できるので、起動信号SSSがハイレベルを一時的に維持することになる。その間に、第1の電源電位VDDが上昇してトランジスタQP23のゲート・ソース間電圧(絶対値)が拡大するので、トランジスタQP23のドレイン電流が一気に増加する。
【0026】
これにより、第1の電位VREFBが一気に上昇して所定の値を超えると、起動回路10内のトランジスタQN11がオン状態に移行して、起動信号SSSがローレベルに非活性化される。その際に、既にトランジスタQP21〜QP23のドレイン電流が増加しているので、トランジスタQN11がオン状態に移行しても、トランジスタQN11がオン状態とオフ状態とを繰り返して起動信号SSSの電位が振動するという不安定な状態を回避することができる。
【0027】
次に、図1〜図3を参照しながら、本実施形態に係る基準電圧発生回路の動作について説明する。
図2は、図1に示すノードN1及びN2に電流源がそれぞれ接続された場合の電流−電圧曲線を示す図である。図2において、横軸は電流を示し、縦軸は電圧を示す。ここで、ノードN1における電流及び電圧の関係を示す曲線C1とノードN2における電流及び電圧の関係を示す曲線C2とが重なっている部分は、オペアンプOP1が安定な状態にあることを表している。従って、図2において破線で囲んだ部分は、オペアンプOP1が安定な状態にある安定期間と言うことができる。図2に示すように、バンドギャップリファレンス回路20は、少なくとも2つの安定期間を有しており、その内の1方は線で表され、他方は点で表される。これは、低電圧型バンドギャップリファレンス回路に共通した特徴でもある。ここでは、線で表される安定期間(図中左側)を第1の安定期間と呼び、点で表される安定期間(図中右側)を第2の安定期間と呼ぶ。
【0028】
電源投入後において、電源電圧(VDD−VSS)は、必ずゼロから徐々に上昇するので、オペアンプOP1は、まず第1の安定期間に突入する。第1の安定期間においては、バンドギャップリファレンス回路20内のトランジスタQP21〜QP23のドレイン電流がほとんど流れていないので、期待した基準電位VREFが発生されない。従って、第1の安定期間を抜け出して第2の安定期間に移行する(言い換えれば、バンドギャップリファレンス回路20を安定起動させる)必要がある。そのために、起動回路10が、バンドギャップリファレンス回路20に供給される起動信号SSSを活性化する。
【0029】
図3は、電源投入後における第1の電源電位VDDと起動信号SSSの電位とトランジスタQP23のドレイン電流Iの変化特性(シミュレーション結果)を示す図である。ここでは、第2の電源電位VSSが接地電位(0V)であるものとする。図3において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧又は電流を示す。図3の(A)は、本実施形態に係る基準電圧発生回路の特性を示しており、図3の(B)は、比較のために起動促進回路30を含まない基準電圧発生回路の特性を示している。いずれも、室温における特性である。
【0030】
図3の(A)及び(B)に示すように、電源投入直後において、第1の電源電位VDDは0Vから徐々に上昇する。このとき、バンドギャップリファレンス回路20においては、オペアンプOP1の出力信号の電位、即ち、トランジスタQP21〜QP23のゲート電位PREFが、第1の電源電位VDDに張り付いているので、トランジスタQP21〜QP23には、ほとんどドレイン電流が流れない。
【0031】
一方、起動回路10においては、抵抗R11を介して第1の電源電位VDDから電荷が供給されることによって、起動信号SSSの電位が上昇する。起動信号SSSの電位がトランジスタQN21のゲート・ソース間電圧の閾値(例えば0.6V)を越えると、トランジスタQN21がオン状態となり、トランジスタQP21〜QP23のゲート電位PREFは0V近くまで下がる。これにより、トランジスタQP21〜QP23はオン状態となり、トランジスタQP21〜QP23のドレイン電流が増加する。QP23のドレイン電流Iの増加に伴って、第1の電位VREFBも上昇する。
【0032】
これにより、図3の(B)においては、第1の安定期間から抜け出し、第2の安定期間の安定点以降に移行できなかった場合には、トランジスタQN11がオン状態から再びオフ状態となり、以後オン・オフを繰り返すことにより、起動信号SSSの電位が振動して不安定な状態となってしまう。一方、図3の(A)においては、起動信号SSSが一旦活性化されると、起動促進回路30のトランジスタQN31がオン状態となるので、第1の電位VREFBの上昇が所定の範囲に抑えられることにより起動信号SSSの活性化がしばらく維持されて、ドレイン電流Iが一気に増加する。その結果、第1の安定期間から第2の安定期間に移行し、あるいは、それ以上のドレイン電流が流れることにより、起動信号SSSの振動は見られなくなる。
【0033】
また、第1の電位VREFBは、起動回路10のトランジスタQN11のゲートにフィードバックされる。その後、第1の電位VREFBがトランジスタQN11のゲート・ソース間電圧の閾値(例えば0.6V)を越えると、トランジスタQN11がオン状態となり、起動信号SSSの電位は0V近くまで下がる。
【0034】
起動信号SSSの電位がトランジスタQN21のゲート・ソース間電圧の閾値電圧(例えば0.6V)を下回ると、トランジスタQN21がオフ状態となり、オペアンプOP1の出力電流によってトランジスタQP21〜QP23のゲート電位PREFが上昇するので、トランジスタQP23のドレイン電流Iが、本来の値の近傍まで一旦低下する。これにより、バンドギャップリファレンス回路20は、正常に起動される。
【0035】
バンドギャップリファレンス回路20が正常に起動されると、オペアンプOP1が、ノードN1とノードN2との電位差に応じて、トランジスタQP21〜QP23のゲート電位PREFをコントロールするので、トランジスタQP21〜QP23のドレイン電流Iが再び増加して本来の値に収束する。このようにして、バンドギャップリファレンス回路20は、基準電位VREFを発生する。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態に係る基準電圧発生回路について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る基準電圧発生回路の構成を示す回路図である。図4に示す第2の実施形態に係る基準電圧発生回路200は、図1に示す第1の実施形態に係る基準電圧発生回路100に対して再起動防止回路40を追加したものであり、その他の点に関しては第1の実施形態と同様である。
【0037】
再起動防止回路40は、電源電圧を分圧する複数の抵抗R41及びR42と、それらの抵抗R41及びR42によって分圧された電源電圧がゲート・ソース間に印加され、その分圧された電源電圧に従って起動信号SSSをローレベルに非活性化するNチャネルMOSトランジスタQN41とを含んでいる。起動信号SSSが一旦非活性化された後で再び活性化されないように、再起動防止回路40は、起動回路10を制御している。
【0038】
第1の電源電位VDDが大きくなって行くと、起動回路10の抵抗R11とトランジスタQN11とのインピーダンスの差によっては、起動信号SSSの電位が、第2の電源電位VSSから徐々に上昇し始める。起動信号SSSの電位がトランジスタQN21のゲート・ソース間電圧の閾値(例えば0.6V)を越えると、トランジスタQN21が再びオン状態となって、バンドギャップリファレンス回路20が再起動されてしまう。そこで、本実施形態においては、起動信号SSSの電圧がトランジスタQN21のゲート・ソース間電圧の閾値を越える前に、再起動防止回路40が動作して、バンドギャップリファレンス回路20の再起動を防止するようにしている。
【0039】
具体的には、電源電圧(VDD−VSS)が第1の設定電圧VSUB(例えば2.4V)を越えると、再起動防止回路40は、起動信号SSSの電位を第2の電源電位VSS近くまで下げる。そのために、電源電圧(VDD−VSS)が第1の設定電圧VSUBを越えるときに、図4に示すノードN3の電位がトランジスタQN41のゲート・ソース間電圧の閾値を越えるように、再起動防止回路40内の抵抗R41及びR42の抵抗値が設定されている。
【0040】
即ち、再起動防止回路40は、電源電圧(VDD−VSS)が第1の設定電圧VSUBを越えるときに、その時の電源電圧(VDD−VSS)を抵抗分圧することによって、トランジスタQN41のゲート・ソース間電圧の閾値を越える電位をノードN3に発生させる。これにより、起動信号SSSの電位の上昇を、トランジスタQN21のゲート・ソース間電圧の閾値未満として抑えることができる。さらに、電源電圧(VDD−VSS)が第2の設定電圧VMIN(例えば1.4V)以下の時には再起動防止回路40が動作しないように、抵抗R41及びR42の抵抗値が設定されている。
【0041】
次に、本発明の一実施形態に係る電源電圧監視回路について説明する。
図5は、図4に示す基準電圧発生回路200を用いた電源電圧監視回路を示すブロック図である。この電源電圧監視回路は、基準電圧発生回路200によって発生された基準電圧VREFと、分圧された電源電圧VDDとの比較を行い、その比較結果を表す制御信号を外部システムに出力する。
【0042】
図5に示すように、電源電圧監視回路は、基準電圧発生回路200と、コンパレータCOMP1とを有している。コンパレータCOMP1には、基準電圧発生回路200から基準電圧VREFと電圧VDIVとが入力される。電圧VDIVは、再起動防止回路40内の抵抗(例えば、図4に示す抵抗R41及びR42)によって分圧された電圧である。コンパレータCOMP1は、基準電圧VREFと電圧VDIVとを比較し、その比較結果を表す制御信号を出力する。具体的には、電圧VDIVが基準電圧VREFを超えた場合に、コンパレータCOMP1が、外部システムをアクティブにする制御信号を外部システム及び再起動防止回路40に出力する。
【0043】
図6は、再起動防止回路の別の構成例を示す回路図である。この再起動防止回路40aは、抵抗R1〜R4と、NチャネルMOSトランジスタQN41及びQN42とを含んでいる。再起動防止回路40aは、電源電圧VDDと、抵抗R1〜R4とに基づいて、電圧VDIVを発生する。トランジスタQN42のゲートには、図5に示すコンパレータCOMP1から出力される制御信号がフィードバックされる。
【0044】
電源投入後、基準電圧VREFは、0Vから上昇する。基準電圧VREFが安定したときの電圧VDIVは、トランジスタQN42がオン状態であるので、VDIV=VDD×(R2十R3)÷(R1十R2十R3)で表される。その後、電圧VDIVが基準電圧VREFを超えると、トランジスタQN42のゲートには、図5に示すコンパレータCOMP1から、外部システムをアクティブにするローレベルの制御信号が出力される。この制御信号はトランジスタQN42のゲートにフィードバックされるので、トランジスタQN42はオフ状態となり、このときの電圧VDIVは、VDIV=VDD×(R2+R3十R4)÷(R1+R2+R3+R4)で表される。その後、電源電圧VDDは定常電圧に達して安定する。
【0045】
電源電圧VDDが定常電圧から降下する場合には、VDIV=VDD×(R2+R3+R4)÷(R1+R2+R3+R4)で表される電圧VDIVが基準電圧VREFよりも小さくなると、図5に示すコンパレータCOMP1から、外部システムをノンアクティブにするハイレベルの制御信号が出力される。この制御信号はトランジスタQN42のゲートにフィードバックされるので、トランジスタQN42はオン状態となり、このときの電圧VDIVは、VDIV=VDD×(R2+R3)÷(R1+R2+R3)で表される。
【0046】
上述のように、抵抗R4をショートするか否かによって電圧VDIVの値にヒステリシス特性を持たせているので、電源電圧VDDの立ち上がり/立ち下がりに対応して、外部システムをアクティブ/ノンアクティブにする切換を安定させることができる。この再起動防止回路の例においては、抵抗R4をショートするためにNチャネルMOSトランジスタQN42を使用したが、これ以外にも、例えば、抵抗R1をショートするためにPチャネルMOSトランジスタを使用するようにしても良い。
【0047】
図7に、図5に示す電源電圧監視回路における電源電圧VDD、電圧VDIV、及び、基準電圧VREFの関係を示す。図7において、横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表している。まず、電源投入後において、電源電圧VDDが徐々に上昇する。電源電圧VDDの上昇に伴って、基準電圧VREFが急激に上昇し、所定の電圧に達して安定する。また、電源電圧VDDの上昇に比例して、電圧VDIVも徐々に上昇する。その後、電圧VDIVが所定の電圧に達している基準電圧VREFを超えたときに、外部システムをアクティブにする制御信号が出力される。図7において、このときの電源電圧VDDが、電圧VONで示されている。
【0048】
一方、電源電圧VDDが定常電圧から徐々に降下すると、これに比例して、電圧VDIVも徐々に降下する。電圧VDIVが基準電圧VREFよりも小さくなったときに、外部システムをノンアクティブにする制御信号が出力される。図7において、このときの電源電圧VDDが、電圧VOFFで示されている。
【0049】
一般に、外部システムのアクティブ/ノンアクティブは、検出された電源電圧VDDが設定電圧よりも大きいか小さいかを判断して行われる。本実施形態においては、図7に示すように、外部システムをアクティブにするときの設定電圧VONと、外部システムをノンアクティブにするときの設定電圧VOFFとをずらすことによって、外部システムをアクティブ/ノンアクティブにする切換動作にヒステリシス特性を持たせて、電源ノイズ等の影響による誤動作を防止することができる。
【0050】
ここで、抵抗値R1〜R4の設定方法について説明する。抵抗値の設定方法を説明するためには、まず、トランジスタのチャネル長Lとゲート・ソース間電圧の閾値VTHとの関係を説明する必要がある。
【0051】
図8は、NチャネルMOSトランジスタのチャネル長Lとゲート・ソース間電圧の閾値VTHとの関係を示す図である。半導体集積回路に含まれているトランジスタの形成においては、製造工程の影響によって、素子間にばらつきが生じる。曲線1及び曲線2は、そのばらつきによるゲート・ソース間電圧の閾値VTHの変化の上限及び下限をそれぞれ示している。図8に示すように、トランジスタのゲート・ソース間電圧の閾値VTHは、チャネル長Lに依存している。チャネル長Lが大きくなると、ゲート・ソース間電圧の閾値VTHは下降する。
【0052】
抵抗値R1〜R4の設定においては、図6に示すトランジスタQN41の特性を考慮する必要がある。再起動防止回路40aは、図4を参照しながら説明した第1の設定電位VSUBと第2の設定電位VMINとに対して、電源電圧VDDがVMIN<VDD<VSUBを満たすときに、再起動防止信号を出力する。
【0053】
ここで、図6に示すトランジスタQN41のゲート・ソース間電圧の閾値に対して、最小値をVTHMIN、最大値をVTHMAXとする。抵抗値R1〜R4の設定における条件として、電源電圧VDDが第2の設定電圧VMINと等しいときに、トランジスタQN41のゲート・ソース間に、最小閾値VTHMIN以下の電圧が入力されることが必要である。また、電源電圧VDDが電圧第1の設定電圧VSUBと等しいときに、トランジスタQN41のゲート・ソース間に、最大閾値VTHMAX以上の電圧が入力されることも必要である。
【0054】
上述の条件を式にすると、次式(1)及び(2)となる。
THMIN>VMIN×R3÷(R1十R2十R3) ・・・(1)
THMAX<VSUB×(R3+R4)÷(R1+R2+R3+R4) ・・・(2)
【0055】
さらに、外部システムをアクティブにするときの電源電圧の値をVONとし、外部システムをノンアクティブにするときの電源電圧の値をVOFFとして、それぞれの電源電圧に対応する電圧VDIVをコンパレータCOMP1に出力する場合の抵抗の設定条件を式に表すと、次式(3)及び(4)となる。
REF=VOFF×(R2+R3+R4)÷(R1+R2+R3+R4) ・・・(3)
REF=VON×(R2十R3)÷(R1+R2+R3) ・・・(4)
従って、上記の式(1)〜(4)を満たすように、抵抗値R1〜R4を設定すれば良い。
【0056】
以上においては、図4に示す基準電圧発生回路200を用いた電源電圧監視回路について説明したが、図1に示す基準電圧発生回路100を用いて電源電圧監視回路を構成することも可能である。その場合には、再起動防止回路が存在しないので、電源電圧VDDを分圧する回路を別途設けるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る基準電圧発生回路の構成を示す回路図。
【図2】図1に示すノードN1及びN2における電流−電圧曲線を示す図。
【図3】電源投入後における各種電位及び電流の変化特性を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る基準電圧発生回路の構成を示す回路図。
【図5】本発明の一実施形態に係る電源電圧監視回路を示すブロック図。
【図6】再起動防止回路の別の構成例を示す回路図。
【図7】図5に示す電源電圧監視回路における各種電圧の関係を示す図。
【図8】トランジスタのチャネル長とゲート・ソース間電圧の閾値との関係を示す図。
【符号の説明】
【0058】
10 起動回路、20 定電圧回路(バンドギャップリファレンス回路)、30 起動促進回路、40、40a 再起動防止回路、100、200 基準電圧発生回路、R1〜R42 抵抗、D1、D2 ダイオード、QP21〜QP23 PチャネルMOSトランジスタ、QN11〜QN42 NチャネルMOSトランジスタ、OP1 オペアンプ、COMP1 コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのPN接合を含む回路に発生する2つの電圧を入力して出力電圧を生成する差動増幅手段と、前記差動増幅手段の出力電圧に従って前記2つのPN接合にそれぞれの電流を供給する電流供給手段と、起動信号に従って前記差動増幅手段の動作を前記2つのPN接合に流れる電流が比較的小さいときの第1の安定状態から前記2つのPN接合に流れる電流が比較的大きいときの第2の安定状態に強制的に移行させるために前記電流供給手段を制御する制御手段とを含み、前記差動増幅手段の出力電圧に基づいて生成された第1の電圧を直接又は分圧して基準電圧として出力する定電圧回路と、
前記定電圧回路から出力される第1の電圧に基づいて、前記定電圧回路を起動制御するために前記起動信号を活性化し、その後少なくとも前記差動増幅手段の動作が前記第1の安定状態を経過するまで前記起動信号を活性化し続け、前記差動増幅手段の動作が前記第1の安定状態を経過した後に前記起動信号を非活性化する起動回路と、
前記起動信号が活性化されているときに前記第1の電圧を減少させる起動促進回路と、
を具備する基準電圧発生回路。
【請求項2】
前記2つのPN接合が、電流密度が互いに異なる第1のPN接合及び第2のPN接合を含み、
前記電流供給手段が、前記差動増幅手段の出力電圧に従って、前記第1のPN接合、及び、前記第1のPN接合に並列接続された第1の抵抗に電流を供給する第1のトランジスタと、前記差動増幅手段の出力電圧に従って、第2の抵抗と前記第2のPN接合との直列回路、及び、前記直列回路に並列接続された第3の抵抗に電流を供給する第2のトランジスタとを含む、請求項1記載の基準電圧発生回路。
【請求項3】
前記定電圧回路が、前記差動増幅手段の出力電圧に従って少なくとも1つの抵抗に第3の電流を供給することにより、前記少なくとも1つの抵抗の両端に第1の電圧を発生させる第3のトランジスタをさらに含む、請求項2記載の基準電圧発生回路。
【請求項4】
前記制御手段が、起動信号に従って前記第1〜第3のトランジスタのゲート電位を制御する第4のトランジスタを含む、請求項3記載の基準電圧発生回路。
【請求項5】
前記起動回路が、
電源端子と前記第4のトランジスタのゲートとの間に電気的に接続されたインピーダンス素子と、
ゲート・ソース間に印加される第1の電圧に従って前記第4のトランジスタのゲート電位を制御する第5のトランジスタと、
を含む、請求項4記載の基準電圧発生回路。
【請求項6】
前記起動促進回路が、ゲートに印加される起動信号に従って前記第3のトランジスタのドレインに接続されるインピーダンスを変化させる第6のトランジスタを含む、請求項5記載の基準電圧発生回路。
【請求項7】
電源電圧が増加するにつれて起動信号を非活性化するように前記起動回路を制御する再起動防止回路をさらに具備する、請求項5又は6記載の基準電圧発生回路。
【請求項8】
前記再起動防止回路が、
電源電圧を分圧する複数の抵抗と、
前記複数の抵抗によって分圧された電源電圧がゲート・ソース間に印加され、該分圧された電源電圧に従って起動信号を非活性化する第7のトランジスタと、
を含む、請求項7記載の基準電圧発生回路。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の基準電圧発生回路と、
前記基準電圧発生回路によって発生された基準電圧と、分圧された電源電圧とを比較して、比較結果を表す信号を出力するコンパレータと、
を具備する電源電圧監視回路。
【請求項10】
前記コンパレータの出力信号に従って、電源電圧を分圧する複数の抵抗の内の少なくとも1つの抵抗を短絡する第8のトランジスタをさらに具備する、請求項9記載の電源電圧監視回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−134126(P2006−134126A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323225(P2004−323225)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】