説明

基質の酸化方法

【課題】本発明は、酸化剤と還元剤とを別々に系内に導入する、均一系において単一錯体上で酸素分子の還元的活性化と基質の酸化を行う基質の酸化方法を提供することを課題とする。
【解決するための手段】水素分子に、ロジウムターピリジンアクア錯体を作用させ、該水素分子からの電子抽出により、ロジウムターピリジン低原子価錯体とプロトンとを生成する工程、前記ロジウムターピリジン低原子価錯体にプロトンを作用させることにより、ロジウムターピリジンヒドリド錯体を経由して水素とロジウムターピリジン二核錯体を生成する工程、ロジウムターピリジン低原子価錯体の酸化によりロジウムターピリジン二核錯体を生成する工程、ロジウムターピリジン二核錯体と酸素とを反応させてロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する工程およびロジウムターピリジンペルオキソ錯体を基質と反応させて、基質を酸化する工程を含む基質の酸化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質の酸化方法、該酸化方法に用いるロジウムターピリジンアクア錯体、該酸化方法に用いるロジウムターピリジン低原子価錯体、該酸化方法に用いるロジウムターピリジンヒドリド錯体、該酸化方法に用いるロジウムターピリジン二核錯体、該酸化方法に用いるロジウムターピリジンペルオキソ錯体、ロジウムターピリジン低原子価錯体の生成方法、ロジウムターピリジンヒドリド錯体の生成方法、ロジウムターピリジン二核錯体の生成方法およびロジウムターピリジンペルオキソ錯体の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素分子を酸化剤として用いる酸化反応は、広範囲に反応性を示し、また環境に酸素分子が豊富に存在することから、コストまたは安全性などの面で重要な課題である。しかし、酸素分子は、そのままでは非常に反応性に乏しく、酸素分子を用いる酸化反応は、好ましくない副反応を生じ易い。更に、反応速度を促進するために高い温度で加熱することが必要となることが多い。
【0003】
このような問題を回避するため、通常、より活性の高い過酸化物または酸素アニオンを用いている。しかし、これらの過酸化物または酸素アニオンは高価であり、取り扱いには危険性を伴う。
【0004】
酸素分子を用いた酸化には、適切な触媒の設計が重要であり、酸素分子を活性化しつつ、基質の接近を制御する等の分子設計が必要となる。酸素分子の酸化に用いられる触媒としては、例えば、生体酵素であるシトクロームP450は酸素分子に2電子を与えることで還元的に活性化し、高い反応性を持ったペルオキソ(O2−)を生成する(非特許文献1)。シトクロームP450は、金属イオン(Fe)中心で酸素分子を2電子還元して活性化し(以下、還元的活性化ともいう)、制御された酸化反応を行うことが可能である。
【0005】
酸素分子の還元的活性化としては、アスコルビン酸などの様々な還元剤によって酸素分子を活性化し、当該酸素分子を酸化剤として基質の酸化反応に用いている例が報告されている(非特許文献2)。
【0006】
非特許文献3では、水素を還元剤に用い、マンガン錯体を用いた酸化反応(エポキシ化)が開示されている。但し、非特許文献2に記載の酸化反応においては、コロイド状Ptが添加されており、均一系または単一系触媒ではない。
【0007】
また、非特許文献4では、水素を還元剤に用いてヒドリド中間体を経て酸素分子を活性化する反応が開示されている。但し、非特許文献4に開示されている反応においては、活性化された酸素は、下記反応式により水となっている。
+1/2O→H
【0008】
さらに、特許文献1および2には、不均一系において水素と酸素を用いる基質の酸化反応が開示されている。
【0009】
一方、水中、常温、常圧下でpH制御によって下記反応式により水素から電子を取り出す均一系錯体触媒(NiRu錯体)が報告されている(特許文献3および非特許文献5)。該錯体によって取り出された電子は、Cu2+の還元に使われているが、その他の反応には使われていない。
→2H+2e
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−269029号公報
【特許文献2】特開2010−64972号公報
【特許文献3】特開2009−235054号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,1979,101,p.1032−1033
【非特許文献2】J.Biol.Chem.,1954,208,p.731−739.
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,1981,103,p.7371−7373.
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.,2009,131,p.5001−5009.
【非特許文献5】Science,2007,316,p.585−587.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、不均一系において酸素分子を還元的に活性化し、当該酸素分子により基質を酸化する反応には、基質の転換率や生成物の選択率が低いという問題がある。また、当該反応では系中に酸化剤と還元剤が共存するため、基質の酸化とは無関係に還元剤の酸化が進行し、基質の酸化が選択的に進行するような工夫が必要となる。
【0013】
したがって、本発明は、酸化剤と還元剤とを別々に系内に導入する、均一系、単一錯体上において酸素分子の還元的活性化と基質の酸化とを行う基質の酸化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を検討した結果、ロジウムターピリジンアクア錯体を用い、水素を還元剤として用いることで、均一系において酸素分子を還元的に活性化して、当該酸素分子により基質を酸化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.下記工程A〜Eを含む基質の酸化方法。
(工程A)水素分子(H)に、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)を作用させ、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)に電子を保持させる工程
2H+2M→4H+2[M+2e
(工程B)下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)にプロトンを反応させることで、下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)を経由して水素の還元的脱離により下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程
2[M+2e]+2H→2[MH]→H+[M+2e
(工程C)下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程
2[M+2e]→2e+[M+2e
(工程D)下記反応式で表されるように、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させて、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する工程
[M+2e]+O→[M+2e
(工程E)下記反応式で表されるように、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)を基質(Q)と反応させて、基質を酸化する工程
[M+2e]+Q+2H+HO→2M+QO
【0016】
【化1】

【0017】
[式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。]
【0018】
【化2】

【0019】
[式(2)において、XはHOである。]
【0020】
【化3】

【0021】
[式(3)において、XはHOである。]
【0022】
【化4】

【0023】
[式(4)において、XはHOである。]
【0024】
【化5】

【0025】
[式(5)において、XはHOである。]
2.前項1に記載の酸化方法に用いる下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)。
【0026】
【化6】

【0027】
[式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。]
3.前項1に記載の酸化方法に用いる下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)。
【0028】
【化7】

【0029】
[式(2)において、XはHOである。]
4.前項1に記載の酸化方法に用いる下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)。
【0030】
【化8】

【0031】
[式(3)において、XはHOである。]
5.前項1に記載の酸化反応に用いる下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e
【0032】
【化9】

【0033】
[式(4)において、XはHOである。]
6.前項1に記載の酸化方法に用いる下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)。
【0034】
【化10】

【0035】
[式(5)において、XはHOである。]
7.水素分子(H)に、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)を作用させ、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)に電子を保持させる方法。
2H+2M→4H+2[M+2e
【0036】
【化11】

【0037】
[式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。]
【0038】
【化12】

【0039】
[式(2)において、XはHOである。]
8.下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)にプロトンを反応させることで、下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)を経由して水素の還元的脱離により下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する方法。
2[M+2e]+2H→2[MH]→H+[M+2e
【0040】
【化13】

【0041】
[式(2)において、XはHOである。]
【0042】
【化14】

【0043】
[式(3)において、XはHOである。]
【0044】
【化15】

【0045】
[式(4)において、XはHOである。]
9.下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化作用により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する方法。
2[M+2e]→2e+[M+2e
【0046】
【化16】

【0047】
[式(2)において、XはHOである。]
【0048】
【化17】

【0049】
[式(4)において、XはHOである。]
10.下記反応式で表されるように、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させて、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する方法。
[M+2e]+O→[M+2e
【0050】
【化18】

【0051】
[式(4)において、XはHOである。]
【0052】
【化19】

【0053】
[式(5)において、XはHOである。]
11.下記反応式で表されるように、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)を基質(Q)と反応させて、基質を酸化する方法。
[M+2e]+Q+2H+HO→2M+QO
【0054】
【化20】

【0055】
[式(5)において、XはHOである。]
【発明の効果】
【0056】
本発明の基質の酸化方法によれば、還元剤である水素と酸素を別々に系内に導入する反応系であるため、問題であった還元剤(水素)の単純な酸化を防ぐとともに、爆発の危険を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、X線解析により得られたロジウムターピリジンアクア錯体[1a](NOのORTEP図を示す。
【図2】図2は、X線解析により得られたロジウムターピリジンアクア錯体[1b](NOのORTEP図を示す。
【図3】図3は、ロジウムターピリジンアクア錯体[1a](NOのpH滴定の結果を示す。
【図4】図4は、X線解析により得られたロジウムターピリジン低原子価錯体[2b](CFSO)のORTEP図を示す。
【図5】図5は、ロジウムターピリジンヒドリド錯体[3b](CFSOH NMR分光法により分析した結果を示す。
【図6】図6は、X線解析により得られたロジウムターピリジン二核錯体[4b](CFSOのORTEP図を示す。
【図7】図7は、X線解析により得られたロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOのORTEP図を示す。
【図8】図8(a)はロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOのラマンスペクトル、図8(b)はロジウムターピリジンペルオキソ錯体[18Oでラベル化された5b](CFSOのラマンスペクトルを示す。また、図8(a)と図8(b)は、532nmレーザーで励起された、それぞれ16及び18をもって生成されたロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]のラマンスペクトルを記載したものであって、図8(c)は、図8(a)と図8(b)との間の差スペクトルである。
【図9】図9は、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]と酸素との反応時のUV−visスペクトルによる経時変化を示す。
【図10】図10は、水素・酸素混合ガスを用いるトリフェニルホスフィンの酸化反応における反応スキームを示す。(比較例1)
【図11】図11は、トリフェニルホスフィンの連続した酸化反応における反応スキームを示す。(実施例7)
【図12】図12は、トリフェニルホスフィンの酸化反応における収率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
〈ロジウムターピリジンアクア錯体〉
本発明の基質の酸化方法は、出発物質として、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)を用いる。
【0059】
【化21】

【0060】
式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。以下、XおよびYがHOの場合を[1a]とし、XがOHであり、YがHOの場合を[1b]とする。また、XおよびYがOHの場合を[1c]とし、[1c]のHO配位子がOHに置き換わった場合を[1d]とする。
【0061】
前記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体[1a]は、次の方法により調製することができる。文献(Inorg.Chem.,1998,37,5733−5742)に記載の方法によりRhIII(terpy)Clを調製する。RhIII(terpy)Cl溶液をN下で好ましくは6〜12時間、窒素雰囲気下、室温で攪拌し、沈澱するAgClを濾過によって除去することによりロジウムターピリジンアクア錯体[1a]が得られる。
【0062】
ロジウムターピリジンアクア錯体[1b]を構造解析する場合、実施例において後述するように、HO中のRhIII(terpy)ClおよびAgNOの溶液(pH7)をN下で好ましくは6〜12時間、窒素雰囲気下、室温で攪拌し、沈澱するAgClを濾過によって除去することにより[1b](NOを得て、構造解析することができる。
【0063】
また、ロジウムターピリジンアクア錯体[1a]を構造解析する場合、実施例において後述するように、0.1質量%の硝酸を添加したMeOH中の[1b](NOの溶液に、エーテルをゆっくり添加することにより、[1a](NOを得て、構造解析することができる。
【0064】
図1に示すように、式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体[1a]は、ターピリジン配位子に固定されたRhIIIコアをベースとしており、3つのアクア配位子(または、pHによっては図2に示すように、2つのアクア配位子と1つのヒドロキソ配位子)を有している。
【0065】
また、図3に示すように、ロジウムターピリジンアクア錯体[1a]はpH滴定において3つの変曲点を持ち、それぞれのpKaは
【0066】
【数1】

【0067】
【数2】

【0068】
【数3】

【0069】
である。
【0070】
〈ロジウムターピリジン低原子価錯体〉
前記ロジウムターピリジンアクア錯体に水素分子(H)を作用させることにより、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)(以下、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2a]ともいう)が生成する。
2H+2M→4H+2[M+2e
【0071】
【化22】

【0072】
式(2)において、XはHOである。
【0073】
ロジウムターピリジン低原子価錯体が生成するメカニズムは、前記ロジウムターピリジンアクア錯体が水素分子(H)をヘテロリティックに活性化し、後述するロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)が生成した後、該ロジウムターピリジンヒドリド錯体の作用により、ロジウムターピリジン低原子価錯体が生成するものと考えられる。
【0074】
ロジウムターピリジン低原子価錯体は、実施例において後述するように、HO中のロジウムターピリジンアクア錯体の溶液(3ml)のpHを、好ましくは0.01〜1.0M NaOH/HOの添加によって好ましくは2.0〜13.0に調整した後、得られた溶液を好ましくは15〜35℃、好ましくは0.1〜0.8MPaの水素と反応させることにより得られる。
【0075】
ロジウムターピリジン低原子価錯体を構造解析する場合、実施例において後述するように、式(3)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体[2a]にNOを付加した[2a](NO)の固体サンプルをNaOTfのCHCN溶液に溶解し、得られる紫色の溶液にジエチルエーテルを添加する。
【0076】
その結果、得られる溶液を数日間放置し、式(2)においてXがCHCNであるロジウムターピリジン低原子価錯体(以下、[2b]ともいう)の紫色の結晶{[2b](CFSO)}を得て、該結晶について構造解析をすることができる。
【0077】
ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b](CFSO)は、NOの対アニオンをアセトニトリル中においてCFSOに置換することにより得られる。図4に、X線解析により得られる、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b](CFSO)の構造を示す。図4に示すように、ロジウムターピリジン低原子価錯体におけるロジウムイオンは、一つのターピリジンおよび一つのCHCN配位子から成る平面正方形構造の中心に位置している。
【0078】
〈ロジウムターピリジンヒドリド錯体〉
ロジウムターピリジンヒドリド錯体[3b](CFSOは、下記反応式に示すように、前記ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b](CFSO)のアセトニトリル溶液にプロトン源としてトリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)を添加することにより、得られる。
【0079】
【化23】

【0080】
式(3)において、XはCHCNである。以下、式(3)においてXがCHCNであるロジウムターピリジンヒドリド錯体をロジウムターピリジンヒドリド錯体[3b]ともいう。
【0081】
ロジウムターピリジンヒドリド錯体は、H NMRで確認することができる。図5に示すように、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]のアセトニトリル溶液にトリフルオロメタンスルホン酸を添加すると溶液の色が黄色に変化し、H NMRでヒドリド領域にロジウム−ヒドリドに由来すると考えられるピークを確認することができる。
【0082】
前記ヒドリド基のピークはロジウム1価(核スピン1/2)とのカップリングによってダブレットに分裂していることからもロジウム−ヒドリド基に由来するものであると考えられる。さらに、生成したロジウムターピリジンヒドリド錯体[2b]に水を添加すると溶液の色が緑色に変化し、ヒドリド基のピークの消失を確認することができる。図5における−16.97ppmでのダブレットのシグナルは、1/2の核スピンを保有するRhIII中心に配位されているこのヒドリド配位子に典型的なシグナルである。
【0083】
〈ロジウムターピリジン二核錯体〉
前記ロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)(以下、[4a]ともいう)が生成する。
【0084】
【化24】

【0085】
[式(4)において、XはHOである。]
【0086】
ロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)は、下記反応式に示すように、前記ロジウムターピリジンヒドリド錯体からの水素分子(H)の還元的脱離によっても生成する。
【0087】
【化25】

【0088】
式(3)および(4)において、XはCHCNである。還元的脱離によるHの定量的な生成は、GC分析によって決定することができる。
【0089】
ロジウムターピリジン二核錯体を構造解析する場合、実施例において後述するように、ロジウムターピリジンヒドリド錯体[3b]を、ゆっくり分解して、Hの還元的脱離を介してロジウムターピリジン二核錯体[4b](CFSOを生成し、X線解析およびH NMR分光法により解析することができる。
【0090】
図6に、X線解析により得られるロジウムターピリジン二核錯体[4b](CFSOの構造を示す。図6に示すように、ロジウムターピリジン二核錯体は、そのロジウム中心同士が金属−金属結合によって連結した二重の歪んだ8面体構造を形成する。ロジウムターピリジン二核錯体におけるRh1−Rh2金属−金属結合の距離{2.6897(7)Å}は、[Rh(CHCN)10][BFにおける2.624(1)のRh−Rh一重結合の距離と類似している(Dunbar,K.R.J.Am.Chem.Soc.1988,110,8247.)。
【0091】
〈ロジウムターピリジンペルオキソ錯体〉
前記ロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させることにより、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(以下、[5a]ともいう)が生成する。
[M+2e]+O→[M+2e
【0092】
【化26】

【0093】
ロジウムターピリジンペルオキソ錯体を構造解析する場合、式(5)においてXがCHCNであるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(以下[5b]ともいう)の結晶である[5b](CFSOについてX線解析およびラマン分光法により構造解析することができる。
【0094】
図7はX線構造解析によるロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOのORTEP図である。図7に示すように、ロジウムターピリジンペルオキソ錯体は、Rh中心がトランスμ−1,2−ペルオキソ架橋によってリンクされた歪んだ8面体を有している。
【0095】
図8(a)はロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOのラマンスペクトル、図8(b)はロジウムターピリジンペルオキソ錯体[18Oでラベル化された5b](CFSOのラマンスペクトルを示す。
【0096】
図8(a)と図8(b)は、532nmレーザーで励起された、それぞれ16及び18をもって生成されたロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]のラマンスペクトルを記載したものである。また、図8(c)は、図8(a)と図8(b)との間の差スペクトルである。
【0097】
図8(c)に示すように、ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]のラマンスペクトルは、v(O−O)に帰属される816cm−1の吸収を持つことを示しており、O−O伸縮モードについてフックの法則の計算によって予測される通りに、16Oの代わりに18Oの同位体置換によって770cm−1にダウンシフトされている(Nakamoto,K.In Infrared and Raman Spectra of Inorganic and Coordination Compounds,6th ed.;Wiley:New York,2008,and references therein.)。
【0098】
本発明の基質の酸化反応は、下記工程A〜Eを含む。
(工程A)水素分子(H)に、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)を作用させ、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)に電子を保持させる工程
2H+2M→4H+2[M+2e
(工程B)下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)にプロトンを反応させることで、下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)を経由して水素の還元的脱離により下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程
2[M+2e]+2H→2[MH]→H+[M+2e
(工程C)下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程
2[M+2e]→2e+[M+2e
(工程D)下記反応式で表されるように、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させて、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する工程
[M+2e]+O→[M+2e
(工程E)下記反応式で表されるように、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)を基質(Q)と反応させて、基質を酸化する工程
[M+2e]+Q+2H+HO→2M+QO
【0099】
本発明の基質の酸化反応は、下記反応式に示すように、工程Aは、水素下で行い、工程C〜Eは酸素下で行う。このように、本発明の基質の酸化反応は、還元剤である水素と酸素を別々に系内に導入する反応系であるため、還元剤(水素)の単純な酸化を防ぐとともに、爆発の危険を回避できるという利点を有する。
【0100】
【化27】

【0101】
前記式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。前記式(2)〜(5)において、XはHOである。以下、工程毎に詳述する。
【0102】
(工程A)ロジウムターピリジン低原子価錯体を生成する工程
工程Aは、下記反応式で表されるように、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)と水素分子(H)とを作用させ、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)に電子を保持させる工程である。
2H+2M→4H+2[M+2e
【0103】
【化28】

【0104】
式(1)および(2)においてXおよびYは前述したものと同義である。
【0105】
工程Aは、水素を系内に導入して反応させる。工程Aの反応時間は好ましくは0.5〜12時間、反応温度は好ましくは15〜35℃、反応圧力は好ましくは0.1〜0.8MPaとすることが好ましい。
【0106】
(工程B)ロジウムターピリジンヒドリド錯体を経由してロジウムターピリジン二核錯体を生成する工程
工程Bは、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)にプロトンを反応させることで、下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)を経由して水素の還元的脱離により下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程である。
2[M+2e]+2H→2[MH]→H+[M+2e
【0107】
【化29】

【0108】
式(2)、(3)および(4)においてXは前述したものと同義である。
【0109】
(工程C)ロジウムターピリジン二核錯体を生成する工程
工程Cは、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程である。
2[M+2e]→2e+[M+2e
【0110】
【化30】

【0111】
式(2)および(4)においてXは前述したものと同義である。
【0112】
(工程D)ロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する工程
工程Dは、下記反応式で表されるように、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させて、酸素を還元的に活性化し、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する工程である。
[M+2e]+O→[M+2e
【0113】
【化31】

【0114】
式(4)および(5)においてXは前述したものと同義である。
【0115】
(工程E)基質を酸化する工程
工程Eは、下記反応式で表されるように、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)を基質(Q)と反応させて、基質を酸化する工程
[M+2e]+Q+2H+HO→2M+QO
【0116】
【化32】

【0117】
式(5)および(1)においてXおよびYは前述したものと同義である。
【0118】
工程C〜Eは、酸素を系内に導入して反応させる。工程C〜Eの反応時間は好ましくは1〜12時間、反応温度は好ましくは15〜35℃、反応圧力は好ましくは0.1〜0.8MPaとすることが好ましい。
【0119】
本発明の酸化反応の対象である基質としては、特に限定されないが、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類、アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、アミン類などに加えて、チオール類、スルフィド類、アミド類、ホスフィン類などであることが好ましく、ホスフィン類であることがより好ましい。基質としては、具体的には、例えば、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0120】
本発明の基質の酸化方法は、工程Eにおいて基質を酸化するとともに、出発物質であるロジウムターピリジンアクア錯体を得ることができる。したがって、本発明の基質の酸化方法によれば、ロジウムターピリジンアクア錯体を出発物質として、工程Aにおいて水素を添加し、工程C〜Eにおいて酸素を添加することにより、酸素を還元的に活性化し、基質を連続して酸化することができる。
【実施例】
【0121】
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0122】
(材料および方法)
全ての実験は、標準のシュレンク技術及びグローブボックスを用いることによってN又はAr雰囲気下で実施した。
【0123】
CHCNは、使用の前にCaH上で蒸留した。
【0124】
RhIII(terpy)Clは、文献(Inorg.Chem.,1998,37,5733−5742)において記述されている方法によって調製した。
【0125】
ガスは、太陽東洋酸素株式会社から購入した。DO(99.9%D)は、ケンブリッジ・アイソトープ・ラボラトリーズ・インクから購入し、HOは、和光純薬工業株式会社から購入した;これらは、更に精製することなしに使用した。
【0126】
H NMRスペクトル
H NMRスペクトルは、JEOL JNM−AL300分光計で測定した。そのHケミカルシフトは、3−(トリメチルシリル)プロピオン−2,2,3,3−d酸ナトリウム塩(TSP、0.00ppm)及びテトラメチルシラン(TMS、0.00ppm)を基準とした。
【0127】
・赤外スペクトル
KBrディスク中に含まれる固体化合物の赤外スペクトルは、25℃で2cm−1の標準解像度を用いて400から4000cm−1までの領域をサーモ・ニコレー NEXUS6700FR−IR計器で測定した。
【0128】
・ラマンスペクトル
ラマンスペクトルは、532nmの波長励起において、Raman Jasco NRS−3100スペクトロメーターを用いて測定した。
【0129】
・紫外線可視スペクトル
紫外線可視スペクトルは、25℃にてJASCO V−670 UV−Visible−NIR分光計(セル長さ1.0cm)で測定した。
【0130】
・元素分析データ
元素分析データは、パーキンエルマー2400IIシリーズCHNS/O分析器によって得た。
【0131】
・X線光電子スペクトル
X線光電子スペクトル(X−ray photoelectron spectroscopy、XPS)は、Mg−Kα放射線の使用によってVGサイエンティフィックESCALAB MK II電子分光計で得た。その結合エネルギーは、試料におけるその配位子の炭素原子のC ls結合エネルギーを284.5eVと仮定することによって補正した(Handbook of X−ray Photoelectron Spectroscopy,Physical Electronics,Inc.,Minnesota,1995)。
【0132】
3.0〜10.0のpH範囲において、それらの溶液のpH値は、pH複合電極(型式:TOA GST−5725C)を備えたpHメータ(型式:TOA HM20J)によって決定した。
【0133】
pDの値は、その観察された値に0.4を加えることによって補正した(pD=pH計読取値+0.4)(J.Phys.Chem.1960,64,p.632−637)。
【0134】
・X線結晶学的解析
それぞれ、[1a](NO及び[1b](NOのメタノール溶液へのエーテルの時間を掛けた拡散によって[1a](NO及び[1b](NOのX線品質結晶を作製し、そして[2b](CFSO)、[4b](CFSO、及び[5b](CFSOのCHCN溶液へのエーテルの時間を掛けた拡散によって[2b](CFSO)、[4b](CFSO、及び[5b](CFSOのX線品質結晶を作製した。
【0135】
測定は、共焦点単色化Mo−Ka放射光(l=0.7107Å)を備えたリガク/MSCサターンCCD回析装置で行った。データを集め、CrystalClaerプログラム(リガク社)を用いて処理した。全ての計算は、モレキュラー・ストラクチャー・コーポレーションのteXsan結晶学ソフトウェア・パッケージを用いて実施した。
【0136】
[1b](NO、[2b](CFSO)、[4b](CFSOおよび[5b](CFSOについての結晶学的データは、ケンブリッジ結晶構造データ・センター(CCDC)にCCDC基準番号838746、838747、838748及び838749として預託した。それらのデータのコピーは、CCDC(12,Union Road,Cambridge CB2 1EZ,UK)に申し込めば入手できる。
【0137】
[実施例1]ロジウムターピリジンアクア錯体の合成および解析
(1)ロジウムターピリジンアクア錯体[RhIII(terpy)(HO)](NO{[1a](NO}の合成
RhIII(terpy)Cl(443mg、10.0μモル、terpy=2,2:6,2’’−ターピリジン)及びAgNO(51.3mg、30.3μモル)の水溶液(10ml、その溶液のpHは約2.0に調整)をN下、室温で12時間に亘って攪拌し、沈澱するAgClを濾過によって除去した。その溶媒を濃縮することにより、[1a](NOの黄色粉末が得られ、この粉末を真空下で乾燥させた{RhIII(terpy)Clをベースとする収率98%}。
【0138】
H NMR(300MHz、DO中、TSP基準、25℃):δ−8.10−9.20(m、11H、terpy)。
Anal.Calcd.for[1a](NO:C151712Rh:C、31.27;H、2.97;N、14.58%。
Found:C、31.39;H、2.98;N、14.42%。
【0139】
(2)ロジウムターピリジンアクア錯体[RhIII(terpy)(OH)(HO)](NO{[1b](NO}の合成
[1a](NO(75mg、121μモル)のメタノール溶液(5ml)に、エーテル(20ml)をゆっくり添加して、[1b](NOの黄色の結晶を得た。その結晶は濾過によって集め、真空下で乾燥させた{[1a](NOをベースとする収率67%}。
【0140】
H NMR(300MHz、DO中、TSP基準、25℃):δ−8.00−9.05(m、11H、terpy)。
Anal.Calcd.for[1b](NO:C1516Rh;C、35.10;H、3.14;N、13.65%。
Found:C、34.92;H、3.12;N、13.61%。
【0141】
(3)ロジウムターピリジンアクア錯体[1a]のX線解析
出発錯体[RhIII(terpy)(OH](NO{[1a](NO}は、水中においてRhIII(terpy)ClにAgNOを添加し、処理することにより合成した。0.1質量%の硝酸を添加したメタノール中での[1a](NOの再結晶化によって、X線解析に適した黄色の結晶を得た。
【0142】
図1に、X線解析により得られた50%確率の楕円を有する[1a](NOのORTEP図を示す。明瞭化のためにterpyのカウンター・アニオン(NO)、溶媒(メタノール)及び水素原子は省略してある。
【0143】
図1における主な原子間距離(Å)は、Rh1−N1=2.033(2)、Rh1−N2=1.922(2)、Rh1−N3=2.037(2)、Rh1−O1=2.013(2)、Rh1−O2=2.049(2)、Rh1−O3=2.023(2)、であった。
【0144】
図1に示すように、ロジウムターピリジンアクア錯体[1a]は、ターピリジン配位子にが結合したRhIII中心をベースとしており、3つのアクア配位子(又はpHによっては2つのアクア配位子と1つのヒドロキソ配位子)を有していた。また、Rh原子は3つのアクア配位子によって囲まれている歪んだ8面体配位を採っていた。
【0145】
(4)ロジウムターピリジンアクア錯体のpH挙動の解析
[RhIII(terpy)(OH3+[1a]の脱プロトン化によってロジウムターピリジンアクア錯体[1b]が形成され、[1b]の脱プロトン化により[RhIII(terpy)(OH)(HO)][1c]が生成した。
【0146】
1aの連続的な脱プロトン化プロセスを、pH滴定実験によってモニタリングして、アクア配位子のpK値を決定した。その結果を図3に示す。[1a](NOのpH滴定実験は、25℃において1M NaOH/HOを用いて行った。
【0147】
図3に示すように、1a及び1bのpK値はそれぞれ4.6及び7.6であった。また、これらの変化は可逆的である。同様に、1cを脱プロトン化することにより、pH10.3で対応するトリヒドロキソ錯体[RhIII(terpy)(OH)][1d]が形成した。
【0148】
[実施例2]ロジウムターピリジン低原子価錯体の合成および解析
(1)ロジウムターピリジン低原子価錯体[Rh(terpy)(HO)](NO){[2a](NO)}の合成
[1b](NO(6.2mg、12.0μモル)の水溶液(3ml)のpHを0.01M NaOH/HOの添加によって7.0に調整した。得られた溶液を25℃でH(0.1MPa)と反応させたところ、該溶液の色がその反応中に30分以内に濃い青色に変化した。その溶媒を濃縮して、真空下で乾燥させた{収率:[1b](NOをベースとして98%}。
【0149】
Anal.Calcd.for[2a](NO:C1513Rh:C、43.29;H、3.15;N、13.46%。
Found:C、43.40;H、3.25;N、13.63%。
【0150】
(2)ロジウムターピリジン低原子価錯体[Rh(terpy)(CHCN)](CFSO){[2b](CFSO)}の合成
[2a](NO)(50.0mg、95.0μモル)の固体サンプルをNaOTf(80mg、232.5μモル)のCHCH溶液(80mL)に溶解することで紫色の溶液が得られ、これにジエチルエーテル(200mL)を添加した。その結果得られた溶液を数日間放置し、[2b](CFSO)の紫色の結晶を得た。それらの結晶は濾過によって集め、真空下で乾燥させた{収率:[2a](NO)をベースとして83%}。
【0151】
H NMR(300MHz、CDCN中、TMS基準、25℃):δ−6.50−8.20(m、11H、terpy)。
Anal.Calcd.for[3b](CFSO:C1814RhS:C、41.08;H、2.68;N、10.65;S、6.09%。
Found:C、40.83;H、2.38;N、10.39;S、6.04%。
【0152】
(3)ロジウムターピリジン低原子価錯体のX線解析
[Rh(terpy)(CHCN)](CFSO){[2b](CFSO)}のX線品質紫色結晶は、アセトニトリル中において、[2a](NO)中のNOカウンター・アニオンをCFSOへ置換することにより得た。
【0153】
図4に、X線解析により得られた50%確率の楕円を有する[2b](CFSO)のORTEP図を示す。図4において、明瞭化のためにカウンター・アニオン(CFSO)及び水素原子は省略してある。
【0154】
図4における主な原子間距離(Å)は、Rh1−N1=2.030(2)、Rh1−N2=1.912(2)、Rh1−N3=2.019(2)、Rh1−N4=2.019(2)、であった。
【0155】
図4に示すように、ロジウムターピリジン低原子価錯体におけるロジウムイオンは、一つのターピリジンおよび一つのCHCN配位子から成る平面正方形構造の中心に位置していた。
【0156】
[実施例3]ロジウムターピリジンヒドリド錯体の合成および同定
(1)ロジウムターピリジンヒドリド錯体[RhIII(terpy)(CHCN)(H)](CFSO{[3b](CFSO}の合成
[3b](CFSO(10.0mg、190μモル)のCHCN溶液(0.5ml)にCFSOH(10μL)を添加して、ヒドリド錯体[3b]を生成させた。その際、その溶液の色が濃い紫色から淡い黄色に直ちに変化した{H NMRから算出した収率:[2b](CFSOをベースとして99%}。
【0157】
H NMR(300MHz、CDCN中、TMS基準、25℃):δ−16.97{d、JRh.H=14.9Hz、1H、Rh−H}、7.50−9.00(m、11H、terpy)。
【0158】
(2)ロジウムターピリジンヒドリド錯体のH NMR分光法による同定
25℃、CDCN中において、ロジウムターピリジンヒドリド錯体{[2b](CFSO}をH NMR分光法により分析した。その結果を図3に示す。
【0159】
図3における−16.97ppmでのダブレットのシグナルは、1/2の核スピンを保有するRhIII中心に配位されているヒドリド配位子に典型的である。
【0160】
[実施例4]ロジウムターピリジン二核錯体の合成および解析
(1)ロジウムターピリジン二核錯体[RhII(terpy)(CHCN)](CFSO{[4b](CFCN}の合成
[3b](CFSO(30mg、57.0μモル)のCHCN溶液(3mL)を数時間放置したところ、その溶液の色が黄色から赤色に変化した。その結果得られた溶液にジエチルエーテル(10mL)をゆっくり添加し、数日放置したところ、[4b](CFSOの赤色結晶を得た。この結晶を濾過によって集め、真空下で乾燥させた{単離収率:[3b](CFSOをベースとして90%}。
【0161】
H NMR(300MHz、CDCN中、TMS基準、25℃):7.50−9.00(m,22H,terpy)。
Anal.Cald.for[4b](CFSO・CHCN:C4437121112Rh:C、35.86;H、2.53;N、10.45;S、8.70%。
Found:C、35.94;H、2.54;N、10.36;S、8.83%。
【0162】
(2)ロジウムターピリジン二核錯体のX線解析
[4b](CFSOのCHCN溶液に、エーテルをゆっくり拡散させることで[4b](CFSOのX線品質赤色結晶を得た。図6にX線解析により得られた50%確率の楕円を有する[4b](CFSOのORTEP図を示す。図6において、明瞭化のためにカウンター・アニオン(CFSO)、溶媒(CHCN)及び水素原子は省略してある。
【0163】
図5における主な原子間距離(Å)は、Rh1−Rh2=2.6897(7)、Rh1−N1=2.052(2)、Rh1−N2=1.943(2)、Rh1−N3=2.051(2)、Rh1−N4=2.025(2)、Rh1−Ni5=2.170(3)、Rh2−N6=2.056(2)、Rh2−N7=1.935(2)、Rh2−N8=2.048(2)、Rh2−N9=2.046(2)、Rh2−N10=2.203(3)、であった。
【0164】
図5に示すように、ロジウムターピリジン二核錯体[4b]は、そのRh中心が金属−金属結合によってリンクされた二重の歪んだ8面体構造を形成していた。
【0165】
ロジウムターピリジン二核錯体[4b]は、ロジウム低原子価錯体[2b]と0.25等量のOを反応させることによっても生成する。この結果から、このように限られた量のOの使用によって、その後のロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]への酸化が防止され、早い段階でその反応サイクルが停止することが分かった。
【0166】
[実施例5]ロジウムターピリジンペルオキソ錯体の合成および解析
(1)ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[RhIII(terpy)(CHCN)(μ−η:η−O)](CFSO{[5b](CFSO}の合成
[4b](CFSO(30mg、57.0μモル)のCHCN溶液(3mL)をO分子と反応させたところ、その溶液の色が直ちに赤色から赤茶色に変化した。得られた溶液にジエチルエーテル(10mL)をゆっくり添加し、数日間放置して、[5b](CFSOの赤色の結晶を得た。それらの結晶を濾過によって集め、真空下で乾燥させた{単離収率:[4b](CFSOをベースとして40%}。
【0167】
H NMR(300MHz、CDCN中、TMS基準、25℃):7.60−8.70(m、22H、terpy)。
Anal.Calcd.for[5b](CFSO・2CHCN:C4640121214Rh:C、35.72;H、2.61;N、10.87:S、8.29%。
Found:C、35.57;H、2.70;N、10.68;S、8.25%。
【0168】
(2)ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]と酸素との反応時のUV−visスペクトルによる経時変化。
ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]は水への溶解性が低いため、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]をアセトニトリルに溶解させ、酸素との反応を行い、その経時変化をUV−visスペクトルによって確認した。
【0169】
スペクトルの測定は、セプタムキャップを取り付けた石英セル中で、10μMのロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]のアセトニトリル溶液を攪拌しながら、セプタムに25Gの針で穴を開けて徐々に酸素と反応させながら、溶液の色の変化をUV−visを用いて150秒間隔で測定した。
【0170】
その結果を図9に示す。図9に示すように、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]と酸素との反応により、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2b]に起因する320nmにおける強い吸収帯及び400〜700nm付近のブロードな吸収帯は減衰し、その時点において、溶液の色が紫色から赤茶色に変化した。
【0171】
(3)ロジウムターピリジンペルオキソ錯体のX線解析
ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOの構造をX線解析により分析した。図7に、X線解析により得られた50%確率の楕円を有するロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOのORTEP図を示す。図7において、明瞭化のためにカウンター・アニオン(CFSO)及び水素原子は省略してある。
【0172】
図6おける主な原子間距離(Å)及び角度(°)は、O1−O1=1.456(4)、Rh1−O1=1.951(2)、Rh1−N1=2.042(2)、Rh1−N2=1.936(2)、Rh1−N3=2.048(3)、Rh1−N4=2.050(2)、Rh1−N5=2.043(2)、Rh1−O1−O1=108.3(2)、であった。
【0173】
図6に示すように、ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOは、Rh中心がトランスμ−1,2−ペルオキソ架橋によってリンクされた歪んだ8面体を有していた。
【0174】
ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOにおけるO1−O1結合距離(1.456(4)Å)は、超酸化物種(O)について通常言及されている値である1.28Åよりも過酸化物種(O2−)について通常言及されている値である1.49Åに近い値であった[(a)Jones,R.D.;Sommerville,D.A.;Basolo,F.Chem.Rev.1979,79,139−179.(b)Niederhoffer,E.C.;Timmons,J.H.;Martell,A.E.Chem Rev.1984,84,p.137−203.]。
【0175】
また、ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOにおけるRh1−O1角度、108.3(2)°は、他のペルオキソ錯体について観察された値に比べて小さかった(Mishra,B.K.;Sathyamurthy,N.J.Phys.Chem.A 2005,109,p.6−8.)。
【0176】
後述するラマン分析による結果から、ペルオキソ架橋配位子についてのこの短い結合長はターピリジン配位子の間のπ−π間の親和的相互作用の結果であると考えられた。このことは、ターピリジン配位子が互いにねじれていることによっても結論付けられた。
【0177】
(4)ロジウムターピリジンペルオキソ錯体のラマン分光法による解析
ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOの構造をラマン分光法により分析した。その結果を図8(a)〜(c)に示す。
【0178】
図8(a)にロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b](CFSOのラマンスペクトル、図8(b)にロジウムターピリジンペルオキソ錯体[18Oでラベル化された5b](CFSOのラマンスペクトルを示す。
【0179】
図8(a)と図8(b)は、532nmレーザーで励起された、それぞれ16及び18をもって生成されたロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]のラマンスペクトルを記載したものであって、図8(c)は、図8(a)と図8(b)との間の差スペクトルである。
【0180】
図8(c)に示すように、ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]のラマンスペクトルは、v(O−O)に帰属される816cm−1の吸収を持つことを示しており、O−O伸縮モードについてフックの法則の計算によって予測される通りに、16Oの代わりに18Oの同位体置換によって770cm−1にダウンシフトされていた。
【0181】
[実施例6]ロジウムターピリジンペルオキソ錯体による基質の酸化
雰囲気下でバイアルにロジウムターピリジン低原子価錯体[2a](NO)(5.0mg、3.0μモル)、PPh(2.6mg、10.0μモル)及びHO(3mL)/CDCl(1mL)二相系溶媒を入れ、更に攪拌子を入れた後、セプタムでキャップした。その気相をOによって置換し、2時間、25℃で攪拌した。
【0182】
得られた生成物をCDClで抽出し、H NMRで分析した。その結果、OPPhの収率は、ロジウムターピリジン低原子価錯体[2a](NO)ベースで98%であった。
【0183】
[比較例1]水素・酸素混合ガスを用いるトリフェニルホスフィンの酸化反応
ロジウムターピリジントリアクア錯体1aを出発錯体として、水素の混合割合を爆発範囲外に調整した水素・酸素の混合ガス(H:1.3%、O:1.7%、残りN)を用いてトリフェニルホスフィンの酸化反応が触媒的に進行するかどうかの確認を行った。反応は図10に示すスキームのようにして行った。
【0184】
容積50mLの耐圧容器にロジウムターピリジンアクア錯体[1a]の水溶液(4mM,3mL,pH7.0)とトリフェニルホスフィンのクロロホルム溶液(10mM,1mL)を入れ、容器内を混合ガスで置換した。この混合溶液を室温で12時間攪拌後クロロホルム相を抜き取り、H NMRで酸化生成物であるトリフェニルホスフィンオキシド(OPPh)の生成量を確認した。
【0185】
その結果、反応後の溶液中のOPPh生成量は、反応前及びブランク(触媒なし・混合ガス雰囲気下で反応、OPPh≦1%)と差がないことから、水素・酸素の両存在下ではOPPhの酸化反応が進行しないことがわかった。
【0186】
[実施例7]トリフェニルホスフィンの連続した酸化反応
トリアクア錯体1aを出発錯体として、PPhの酸化反応を連続で行い、触媒活性が落ちないかどうかの確認を行った。反応は図11に示すスキームのようにして行った。
【0187】
反応は、まずトリアクア錯体1a(4mM,3mL,pH7.0)と水素(0.1MPa)との反応を行い(6時間)、低原子価錯体3aを生成させた。水素をパージ後、錯体1aと等モル量のPPhのクロロホルム溶液(7.5mM,1mL)を加えて酸素(0.1MPa)雰囲気下で2時間攪拌し、下記反応式によりPPhをロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5b]により酸化し、OPPhを生成した。
【0188】
【化33】

【0189】
反応後クロロホルム相を抜き取り、OPPhの生成をH NMRにて確認した。錯体が含まれる水相は溶存の酸素を除くため脱気を行い、図11に示すように、さらに水素→酸素・基質との反応を繰り返し行なった。
【0190】
収率は、2電子酸化剤として挙動する能力のあるロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5a]をベースに算出した。その結果を図12に示す。
【0191】
図12に示すように、ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5a]は、少なくとも4回に亘って再使用できた。すなわち、前記反応後にH、O及び更なる基質がこの順序で添加された時に、その反応サイクルが再開された。
【0192】
ロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5a]はゆっくりと不活性化された。OPPhの全収率は、その4回目の使用時には400%ではなかった。これは、各々のサイクルの収率が、通常2電子酸化剤であると考えられるロジウムターピリジンペルオキソ錯体[5a]をベースとすると84〜90%であったからである。
【0193】
この結果から、本発明の基質の酸化方法によれば、ロジウムターピリジンアクア錯体を用い、水素を還元剤として用いることで、均一系において酸素分子を還元的に活性化し、当該酸素分子により基質を連続して酸化することができることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程A〜Eを含む基質の酸化方法。
(工程A)水素分子(H)に、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)を作用させ、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)に電子を保持させる工程
2H+2M→4H+2[M+2e
(工程B)下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)にプロトンを反応させることで、下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)を経由して水素の還元的脱離により下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程
2[M+2e]+2H→2[MH]→H+[M+2e
(工程C)下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する工程
2[M+2e]→2e+[M+2e
(工程D)下記反応式で表されるように、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させて、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する工程
[M+2e]+O→[M+2e
(工程E)下記反応式で表されるように、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)を基質(Q)と反応させて、基質を酸化する工程
[M+2e]+Q+2H→2M+QO+H
【化1】


[式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。]
【化2】


[式(2)において、XはHOである。]
【化3】


[式(3)において、XはHOである。]
【化4】


[式(4)において、XはHOである。]
【化5】


[式(5)において、XはHOである。]
【請求項2】
請求項1に記載の酸化方法に用いる下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)。
【化6】


[式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。]
【請求項3】
請求項1に記載の酸化方法に用いる下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)。
【化7】


[式(2)において、XはHOである。]
【請求項4】
請求項1に記載の酸化方法に用いる下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)。
【化8】


[式(3)において、XはHOである。]
【請求項5】
請求項1に記載の酸化反応に用いる下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e
【化9】


[式(4)において、XはHOである。]
【請求項6】
請求項1に記載の酸化方法に用いる下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)。
【化10】


[式(5)において、XはHOである。]
【請求項7】
水素分子(H)に、下記式(1)で表されるロジウムターピリジンアクア錯体(M)を作用させ、該水素分子から電子を抽出し、下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)に電子を保持させる方法。
2H+2M→4H+2[M+2e
【化11】


[式(1)において、XおよびYはそれぞれHOまたはOHである。]
【化12】


[式(2)において、XはHOである。]
【請求項8】
下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)にプロトンを反応させることで、下記式(3)で表されるロジウムターピリジンヒドリド錯体(MH)を経由して水素の還元的脱離により下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する方法。
2[M+2e]+2H→2[MH]→H+[M+2e
【化13】


[式(2)において、XはHOである。]
【化14】


[式(3)において、XはHOである。]
【化15】


[式(4)において、XはHOである。]
【請求項9】
下記反応式で表されるように、下記式(2)で表されるロジウムターピリジン低原子価錯体(M+2e)の酸化により、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)を生成する方法。
2[M+2e]→2e+[M+2e
【化16】


[式(2)において、XはHOである。]
【化17】


[式(4)において、XはHOである。]
【請求項10】
下記反応式で表されるように、下記式(4)で表されるロジウムターピリジン二核錯体(M+2e)と酸素(O)とを反応させて、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体を生成する方法。
[M+2e]+O→[M+2e
【化18】


[式(4)において、XはHOである。]
【化19】


[式(5)において、XはHOである。]
【請求項11】
下記反応式で表されるように、下記式(5)で表されるロジウムターピリジンペルオキソ錯体(M+2e)を基質(Q)と反応させて、基質を酸化する方法。
[M+2e]+Q+2H+HO→2M+QO
【化20】


[式(5)において、XはHOである。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−56865(P2013−56865A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197332(P2011−197332)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】