説明

増幅回路ならびにそれを用いた受信回路,受信装置および通信装置

【課題】 発振の防止および出力信号のレベルの安定化が可能な増幅回路ならびにそれを用いた受信回路,受信装置および通信装置を提供する。
【解決手段】 入力された第1信号S1を増幅して第2信号S2を出力する可変利得増幅回路3と、第1信号S1を包絡線検波して第3信号S3を出力する第1回路4と、第2信号S2を包絡線検波して第4信号S4を出力する第2回路5と、入力された第3信号S3および第4信号S4をベクトル加算して、可変利得増幅回路3の利得を制御する第5信号S5を出力する第3回路6と、第2信号S2および第5信号S5が入力されて、第2信号S2の位相を180°シフトさせるとともに第5信号S5の電圧に応じて振幅を変化させて得られる第6信号S6と第2信号S2とを加算して第7信号S7を出力する第4回路7とを少なくとも有している増幅回路とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利得が自動的に制御される増幅回路ならびにそれを用いた受信装置および通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、受信回路において、復調器への入力信号のレベルを一定に保つために、利得が自動的に制御される増幅回路が用いられている。このような増幅回路としては、増幅回路からの出力信号を利用して利得を制御するフィードバック回路を用いるものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−174340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィードバック回路を用いる従来の増幅回路は、入力信号の周波数が変化してフィードバック回路における移相量が変化すると発振が生じ易くなるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、発振の防止および出力信号のレベルの安定化が可能な増幅回路ならびにそれを用いた受信回路,受信装置および通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の増幅回路は、入力された第1信号を増幅して第2信号を出力する可変利得増幅回路と、前記第1信号を包絡線検波して第3信号を出力する第1回路と、前記第2信号を包絡線検波して第4信号を出力する第2回路と、入力された前記第3信号および前記第4信号をベクトル加算して、前記可変利得増幅回路の利得を制御する第5信号を出力する第3回路と、前記第2信号および前記第5信号が入力されて、前記第2信号の位相を180°シフトさせるとともに前記第5信号の電圧に応じて振幅を変化させて得られる第6信号と前記第2信号とを加算して第7信号を出力する第4回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の受信回路は、前記増幅回路と、受信信号の周波数を変換して前記第1信号として出力する周波数変換回路と、前記第7信号を復調する復調回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の受信装置は、前記受信回路と、該受信回路に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の通信装置は、前記受信回路と、該受信回路に接続されたアンテナと、該アンテナに接続された送信回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の増幅回路によれば、発振の防止および出力信号のレベルの安定化が可能な増幅回路を得ることができる。
【0011】
本発明の受信回路によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な受信回路を得ることができる。
【0012】
本発明の受信装置によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な受信装置を得ることができる。
【0013】
本発明の通信装置によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の第2の例の受信装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の第3の例の通信装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の増幅回路ならびにそれを用いた受信回路,受信装置および通信装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態の第1の例)
図1は本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路を示す回路図である。本例の増幅回路は、図1に示すように、端子1と、端子2と、可変利得増幅回路3と、第1回路4と、第2回路5と、第3回路6と、第4回路7とを備えている。
【0017】
端子1には、図示せぬ外部回路から第1信号S1が入力される。可変利得増幅回路3は、端子1,第2回路5および第4回路7に接続されている。そして、可変利得増幅回路3は、入力された第1信号S1を増幅して第2信号S2を生成し、第2信号S2を第2回路5および第4回路7へ出力する。
【0018】
第1回路4は、端子1と、第3回路6とに接続されており、端子1から第1信号S1が入力される。第1回路4は、第1信号S1を包絡線検波するミキサ8で構成されており、第1信号S1を包絡線検波して、第1信号S1の振幅に応じた電圧を有する第3信号S3を出力する。なお、本例の増幅回路においては、第1回路4(ミキサ8)は、第1信号S1の振幅の増減に対して逆に増減する電圧を有する第3信号S3を出力する。
【0019】
第2回路5は、可変利得増幅回路3と、第3回路6とに接続されており、可変利得増幅回路3から第2信号S2が入力される。第2回路5は、可変利得増幅回路3に接続されたミキサ9と、ミキサ9および第3回路6に接続された積分回路10とを備えている。ミキサ9は、入力された第2信号S2を包絡線検波して、第2信号S2の振幅の増減と逆に増減する電圧を有する信号を出力する。積分回路10は、ミキサ9の出力信号を時間積分して第4信号S4を出力する。このようにして、第2回路5は、入力された第2信号S2を包絡線検波するとともに時間積分して、第4信号S4を出力する。
【0020】
第3回路6は、加算器11によって構成されている。また、第3回路6は、第1回路4と、第2回路5と、可変利得増幅回路3とに接続されており、第3信号S3および第4信号S4が入力される。そして、第3回路6は、入力された第3信号S3および第4信号S4をベクトル加算して、可変利得増幅回路3の利得を制御する第5信号S5を出力する。第5信号S5は、可変利得増幅回路3の図示せぬ制御端子に入力され、第5信号S5によって可変利得増幅回路3の利得が制御される。
【0021】
第4回路7は、可変利得増幅器12と、移相器13と、加算器14と、分配器15とを有している。分配器15は、可変利得増幅回路3に接続されており、可変利得増幅回路3から第2信号S2が入力される。分配器15は、入力された第2信号S2の殆どを加算器14へ出力するとともに、一部を可変利得増幅器12へ出力する。また、可変利得増幅器12の図示せぬ制御端子には、第3回路6から第5信号S5が入力される。よって、可変利得増幅器12は、入力された第2信号S2を第5信号S5の電圧に応じて増幅した信号を移相器13へ出力する。移相器13は、入力された信号の位相をシフトさせて、第2信号S2の位相を180°シフトさせた位相を有する第6信号S6を出力する。よって、第6信号S6は、第5信号S5の電圧が小さくなると振幅が小さくなり、第5信号S5の電圧が大きくなると振幅が大きくなる。加算器14は、分配器15および移相器13に接続されており、第2信号S2および第6信号S6が入力される。加算器14は、入力された第2信号S2および第6信号S6をベクトル加算して第7信号S7を生成し、第7信号S7を端子2へ出力する。
【0022】
すなわち、第4回路7は、可変利得増幅回路3および第3回路6に接続されており、第2信号S2および第5信号S5が入力される。そして、第4回路7は、第2信号S2の位相を180°シフトさせるとともに第5信号S5の電圧に応じて振幅を変化させて得られる第6信号S6と第2信号S2とを加算して第7信号S7を生成して、第7信号S7を端子2へ出力する。
【0023】
このような構成を有する本例の増幅回路によれば、発振の防止および出力信号のレベルの安定化が可能な増幅回路を得ることができる。この効果が得られるメカニズムを以下に説明する。
【0024】
フィードバック回路によって出力レベルを一定にする従来の増幅回路では、出力レベルを一定にするために負帰還のフィードバックループを構成する。ところが、入力信号の周波数変化によりフィードバックループ全体の移相量が180°変化すると、正帰還になって発振が生じやすくなるという問題があった。
【0025】
本例の増幅回路では、フィードバック信号である第4信号S4をそのまま用いて可変利得増幅回路3の利得を制御するのではなく、フィードバック信号である第4信号S4と、フィードフォワード信号である第3信号S3とをベクトル加算して第5信号S5を生成し、第5信号S5を用いて可変利得増幅回路3の利得を制御する。これにより、入力信号の周波数変化等によってフィードバックループ全体の移相量が180°変化し、第3信号S3と第4信号S4との位相差が180°になってしまった場合においても、第3信号S3と第4信号S4のベクトル和である第5信号S5の大きさが小さくなることによって、発振を生じ難くすることができる。
【0026】
この場合、第2信号S2の振幅が同じであっても、第3信号S3と第4信号S4との位相差によって可変利得増幅回路3の利得が変化するため、入力信号の周波数変化等によってフィードバックループの移相量が変化すると第2信号S2の出力信号のレベルが安定しないという問題が生じる。しかしながら、本例の増幅回路では、第4回路7によって出力信号のレベルを安定化させることができる。
【0027】
すなわち、第4回路7の分配器15は、入力された第2信号の殆どを加算器14へ出力するとともに、一部を可変利得増幅器12へ出力する。可変利得増幅器12で振幅が変化した第2信号S2は、移相器13で位相がシフトされて第6信号S6となり、加算器14に入力される。加算器14は、入力された第2信号S2と第6信号S6とを加算して第7信号S7を生成し、第7信号S7を端子2へ出力する。ここで、第6信号S6は、第2信号S2に対して振幅が小さく、且つ第2信号S2と逆相の信号である。よって、第2信号
S2の振幅が一定の場合は、第6信号S6の振幅が小さくなると第7信号S7の振幅は大きくなり、第6信号S6の振幅が大きくなると第7信号S7の振幅は小さくなる。
【0028】
可変利得増幅器12の利得は第5信号S5によって制御されるため、第6信号S6の振幅は、第5信号S5の電圧が小さくなると小さくなり、第5信号S5の電圧が大きくなると大きくなる。また、可変利得増幅回路3の利得も第5信号S5によって制御されるため、可変利得増幅回路3から出力される第2信号S2の振幅も、第5信号S5の電圧が小さくなると小さくなり、第5信号S5の電圧が大きくなると大きくなる。
【0029】
よって、第5信号S5の電圧が小さくなって、可変利得増幅回路3から出力される第2信号S2の振幅が小さくなったときには、第2信号S2と打ち消し合う第6信号S6の振幅も小さくなる。また、第5信号S5の電圧が大きくなって、可変利得増幅回路3から出力される第2信号S2の振幅が大きくなったときには、第2信号S2と打ち消し合う第6信号S6の振幅も大きくなる。このようにして、端子2から出力される第7信号S7の振幅が一定に保たれる。よって、本例の増幅回路によれば、発振の防止および出力信号のレベルの安定化が可能な増幅回路を得ることができる。
【0030】
なお、本例の増幅回路において、可変利得増幅回路3および可変利得増幅器12としては、既知の可変利得増幅器を用いることができる。ミキサ8およびミキサ9としては、既知のミキサを用いることができる。また、積分回路10としては、例えばローパスフィルタを用いた積分回路のような、既知の積分回路を用いることができる。加算器11,14としては、既知の加算器を用いることができる。移相器13としては、既知の移相器を用いることができる。
【0031】
また、本例の増幅回路においては、第1回路4および第2回路5が、第1信号S1および第2信号S2の振幅の増減に対して逆に増減する電圧を有する第3信号S3および第4信号S4を出力する例を示したが、これに限定されるものではない。第1回路4および第2回路5が、第1信号S1および第2信号S2の振幅の増減と同じように増減する電圧を有する第3信号S3および第4信号S4を出力するようにしても構わない。このような場合には、例えば、第3信号S3および第4信号S4を加算した信号を基準信号から減算することにより、第1信号S1および第2信号S2の振幅の増減と逆に増減する電圧を有する第5信号S5を生成して、第3回路6から出力すれば良い。
【0032】
さらに、本例の増幅回路においては、分配器15で分配された信号を可変利得増幅器12で増幅して移相器13へ入力する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、第5信号S5の電圧が大きくなると移相器13へ入力される信号の振幅が大きくなるように、分配器15における第2信号S2の分配比率を変化させるようにしても構わない。
【0033】
(実施の形態の第2の例)
図2は本発明の実施の形態の第2の例の受信装置を示すブロック図である。本例の受
信装置は、図2に示すように、アンテナ71と、該アンテナに接続された受信回路72とを備えている。受信回路72は、高周波増幅回路73と、周波数変換回路74と、本発明の実施の形態の第1の例の増幅回路75と、復調回路76とを備えている。
【0034】
高周波増幅回路73は、アンテナ71に接続されており、受信信号を増幅して出力する。周波数変換回路74は、増幅された受信信号の周波数を変換して第1信号S1として出力する。増幅回路75は、第1信号S1を増幅して、振幅が一定の第7信号S7を出力する。復調回路76は、入力された第7信号S7を復調する。このような構成を有する本例の受信回路および受信装置によれば、アンテナ71で受信された信号の振幅が変動しても
、復調回路76に入力される信号のレベルを一定に保つことができるので、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な受信回路および受信装置を得ることができる。
【0035】
なお、本例の受信回路72においては、アンテナ71からの受信信号が高周波増幅回路73で増幅されてから周波数変換回路74に入力される例を示したが、これに限定されるものではない。受信信号の強度が充分な場合には、アンテナ71からの受信信号がそのまま周波数変換回路74に入力されるようにしても構わない。また、それぞれの回路の間に他の回路が介在するようにしても構わない。
【0036】
(実施の形態の第3の例)
図3は本発明の実施の形態の第3の例の通信装置を示すブロック図である。なお、本
例においては、前述した実施の形態の第2の例の受信装置と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
本例の通信装置は、図3に示すように、受信回路72と、受信回路に接続されたアンテナ71と、アンテナ71に接続された送信回路77とを備えている。なお、受信回路72および送信回路77とアンテナ71との間には、アンテナ共用回路78が挿入されている。すなわち、受信回路72および送信回路77は、アンテナ共用回路78を介してアンテナ71に接続されている。このような構成を有する本例の通信装置によれば、受信信号の振幅が変動しても受信信号を正確に復調することが可能な通信装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
3:可変利得増幅回路
4:第1回路
5:第2回路
6:第3回路
7:第4回路
71:アンテナ
72:受信回路
74:周波数変換回路
75:増幅回路
76:復調回路
77:送信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1信号を増幅して第2信号を出力する可変利得増幅回路と、
前記第1信号を包絡線検波して第3信号を出力する第1回路と、
前記第2信号を包絡線検波して第4信号を出力する第2回路と、
入力された前記第3信号および前記第4信号をベクトル加算して、前記可変利得増幅回路の利得を制御する第5信号を出力する第3回路と、
前記第2信号および前記第5信号が入力されて、前記第2信号の位相を180°シフトさせるとともに前記第5信号の電圧に応じて振幅を変化させて得られる第6信号と前記第2信号とを加算して第7信号を出力する第4回路とを少なくとも有していることを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記第6信号は、前記第5信号の電圧が小さくなると振幅が小さくなることを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の増幅回路と、
受信信号の周波数を変換して前記第1信号として出力する周波数変換回路と、
前記第7信号を復調する復調回路とを少なくとも有していることを特徴とする受信回路。
【請求項4】
請求項3に記載の受信回路と、
該受信回路に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とする受信装置。
【請求項5】
請求項3に記載の受信回路と、
該受信回路に接続されたアンテナと、
該アンテナに接続された送信回路とを少なくとも有していることを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115498(P2013−115498A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257836(P2011−257836)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】