説明

変性共役ジエン系重合体及びその製造方法、並びに重合体組成物

【課題】無機充填剤の種類によらず良好な親和性を発揮し、タイヤトレッド用材料として用いられた場合には優れたウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスを示す変性共役ジエン系重合体の製造方法と得られる変性重合体及びその組成物の提供。
【解決手段】共役ジエン系重合体の活性末端に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を反応させ、さらに残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を反応させることを特徴とする変性共役ジエン系重合体の製造方法と得られる変性共役ジエン系重合体及びその組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは共役ジエン系重合体の活性末端に、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を反応させ、さらに1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を反応させることを特徴とする変性共役ジエン系重合体の製造方法、得られる変性共役ジエン系重合体並びに無機充填剤を含む重合体組成物である。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出の抑制などの社会的要請から近年、自動車に対する低燃費化要求が高まっており、自動車用タイヤ、特に地面と接するタイヤトレッドとして転がり抵抗のより小さい材料が求められている。それと同時に安全性の観点からウェットスキッド抵抗に優れ、耐摩耗性、破壊特性にも優れたタイヤが望まれている。
タイヤの転がり抵抗を低減するためには、加硫ゴムのヒステリシスロスを小さくすればよく、ヒステリシスロスの小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴムまたはポリブタジエンゴムなどが知られている。しかし、これらはウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。ウェットスキッド抵抗を損なうことなくヒステリシスロスを低減する方法として、炭化水素溶媒中において有機リチウム開始剤で重合された種々の構造のスチレン−ブタジエン共重合体の重合体末端に変性基を導入し、補強性充填剤との相互作用を高め充填剤の分散性を高める方法が多く提案されている。現在タイヤトレッド用に一般的に用いられている補強性充填剤としてはカーボンブラックやシリカなどが挙げられる。シリカを用いると低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性が向上するため、近年その使用が増えているが、ドライスキッド抵抗性や走行性能とのバランスのため、カーボンブラックも併用されることが多い。変性ゴムとしては、シリカとカーボンブラックの両方に対して効果のあるものが求められ、例えばグリシジルアミノ基を有する変性剤を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴムが好適に用いられる(特許文献1、2参照)。しかしながら低燃費化要求の高まりとともに、補強性充填剤との相互作用がさらに高い変性ゴムが求められてきている。
【0003】
一方、重合体末端基に1級アミノ基及びアルコキシシリル基を有する変性重合体が補強性充填剤との相互作用において優れた効果があることは知られているが、アミノ基を保護するための保護基を外す工程が必要であり、更に脱保護時にトリアルキルシラノール等の保護残基が生成し脱溶媒後の溶媒に混入するため、重合溶媒として再利用する場合に重合工程に悪影響を及ぼすなどの欠点があった(特許文献3参照)。
【特許文献1】国際公開87/05610号パンフレット
【特許文献2】国際公開01/23467号パンフレット
【特許文献3】特開2003−171418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、タイヤトレッド用材料として用いられた場合、配合する充填剤の種類および組み合わせによらず、ウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れたタイヤトレッドを得ることができる変性共役ジエン系重合体、その製造方法及びその組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究検討した結果、重合体の活性末端を特定の化合物を用いて2段階で変性することによって、シリカやカーボンブラックなどの無機充填剤と良好な親和性を発揮し、タイヤトレッド用材料として用いられた場合にウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れた変性共役ジエン系重合体が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は共役ジエン系重合体の活性末端に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を反応させ、さらに残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を反応させることを特徴とする変性共役ジエン系重合体の製造方法と得られる変性共役ジエン系重合体及びその組成物である。
【0006】
詳しくは以下のとおりである。
1.アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を開始剤として用いて共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を(共)重合した後、その活性末端に、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を反応させ、さらに残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を反応させることを特徴とする変性共役ジエン系重合体の製造方法。
2.2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)が一般式(1)で表される前記1.に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(ここでR1およびRは炭素数1〜10の炭化水素基またはエーテルおよび/または3級アミンを有する炭素数1〜10の炭化水素基、RおよびRは、水素、炭素数1〜20の炭化水素基、またはエーテルおよび/または3級アミンを有する炭素数1〜20の炭化水素基、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、またはエーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、ハロゲンのうち少なくとも1種の基を有する炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは1〜6の整数である。)
【0009】
3.共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物からなる(共)重合体の末端に、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)が少なくとも1つのエポキシ基の開環により結合しており、さらに化合物(A)の他のエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)がエポキシ基の開環により結合している、ムーニー粘度(100℃、1+4分)が20〜100である変性共役ジエン系重合体。
4.前記3.に記載の変性共役ジエン系重合体を含む重合体100質量部と、充填剤1〜200質量部を含むことを特徴とする変性共役ジエン系重合体組成物。
5.前記充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカを含む前記4.に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明で得られた変性共役ジエン系重合体は無機充填剤との親和性に優れ、タイヤトレッド用材料として用いられた場合、配合する充填剤の種類および組み合わせによらず、ウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れたタイヤトレッドを得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の製造方法において用いられるアルカリ金属系開始剤またはアルカリ土類金属系開始剤としては、重合開始の能力がある全てのアルカリ金属系開始剤またはアルカリ土類金属系開始剤が使用可能であり、中でも、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましく用いられる。
有機アルカリ金属化合物としては、特に有機リチウム化合物が好適である。有機リチウム化合物としては、低分子量のもの、可溶化したオリゴマーの有機リチウム化合物、また、1分子中に単独のリチウムを有するもの、1分子中に複数のリチウムを有するもの、有機基とリチウムの結合様式において、炭素−リチウム結合からなるもの、窒素−リチウム結合からなるもの、錫−リチウム結合からなるもの等を含む。
【0012】
具体的には、モノ有機リチウム化合物としてn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどが、多官能有機リチウム化合物として1,4−ジリチオブタン、sec−ブチルリチウムとジイソプロペニルベンゼンの反応物、1,3,5−トリリチオベンゼン、n−ブチルリチウムと1,3−ブタジエンおよびジビニルベンゼンの反応物、n−ブチルリチウムとポリアセチレン化合物の反応物などが、また、窒素−リチウム結合からなる化合物としてリチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジ−n−ヘキシルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリドなどが挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。特に好ましいものは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムである。これらの有機リチウム化合物は1種のみならず2種以上の混合物として用いても良い。
【0013】
他の有機アルカリ金属化合物としては有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機ルビジウム化合物、有機セシウム化合物などが挙げられる。具体的には、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレンがあり、その他にリチウム、ナトリウム、カリウムのアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミドなどが用いられる。また他の有機金属化合物と併用して用いても良い。
一方、アルカリ土類金属化合物としては、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、有機ストロンチウム化合物が代表的なものである。具体的には、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、プロピルブチルマグネシウムなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、アミドなどの化合物が用いられる。これらの有機アルカリ土類金属化合物は有機アルカリ金属系開始剤その他有機金属化合物と併用して用いても良い。
【0014】
本発明において、共役ジエン系重合体は、前述したアルカリ金属系開始剤及び、またはアルカリ土類金属系開始剤により重合され、アニオン重合反応で成長して得られることが好ましく、特にリビングアニオン重合による成長反応によって得られる活性末端を有する重合体であることが好ましい。製造方法として重合は回分式又は1個の反応器あるいは2個以上の連結された反応器での連続式等の重合様式で行うことができる。
共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物の重合体又は、共重合体、更には共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物の共重合体である。共役ジエン系重合体の重合反応において、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合する目的で、また共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、更には重合速度の改善などの目的で少量の極性化合物を添加することも可能である。
【0015】
極性化合物としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンなどのようなエーテル類、テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどのような第三級アミン化合物、カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラートなどのようなアルカリ金属アルコキシド化合物、トリフェニルホスフィンなどのようなホスフィン化合物等が用いられる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
極性化合物の使用量は、目的と効果の程度に応じて選択される。通常、開始剤1モルに対して0.01〜100モルが好ましい。このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体ジエン部分のミクロ構造調節剤として所望ビニル結合量に応じ、適量使用できる。多くの極性化合物は同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として使用出来る。ランダム化する方法は特開昭59−140211号公報記載のように、共重合の途中に1.3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法でも良い。
共役ジエン化合物の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いても良い。好ましい化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。また、芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いても良い。好ましい化合物としては、スチレンが挙げられる。
【0017】
重合温度はリビングアニオン重合が進行する温度であれば特に制限はないが、生産性の観点から0℃以上で、また重合終了後の活性末端への化合物(A)の反応を充分に確保する観点から120℃以下で重合を行うことが好ましい。
又共役ジエン系重合体のコールドフローを防止するために、分岐をコントロールする観点からジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物を使用することもできる。
製造される共役ジエン系重合体の分子量(重量平均分子量:ポリスチレン換算)は、加工性や物性を考慮すれば10万から200万が好ましい。
重量平均分子量の測定方法は、例えば、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラム3本を連結して用いたGPCを使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により分子量を計算して求めることができる。具体的には、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を使用し、カラムとして、ガードカラム:東ソー TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用し、オーブン温度40℃、THF流量1.0ml/分の条件で東ソー製 HLC8020(検出器:RI)を用いて測定を行うことができる。試料は20mlのTHFに対して分子量分布の狭い重合体の場合には10mgを、広い重合体の場合には20mgを溶解し、200μl注入して測定するのが好適である。
【0018】
共役ジエン系重合体の製造方法において用いられる炭化水素溶媒としては、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられ、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素を用いることができる。共役ジエン化合物や芳香族ビニル化合物、及び炭化水素溶媒において、それぞれ単独に或いはそれぞれの混合液を重合反応に供する前に不純物であるアレン類やアセチレン類を有機金属化合物で処理することは、高濃度の活性末端を有する重合体を得ることができ、更には高い変性率を達成することができるので好ましい。
【0019】
本発明の優れた効果が特に発揮されるためには、好ましくは官能基成分を有する重合体が5質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、一層好ましくは50質量%以上含有する重合体となるように、共役ジエン系重合体を製造することが好ましい。官能基成分を有する重合体の定量方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定可能である。このクロマトグラフィーの方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたGPCカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が好適である。
共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体としては、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体が挙げられる。ランダム共重合体としては統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、テーパ−状に組成に分布があるテーパーランダム共重合体などがある。また、単一モノマー組成のホモ重合体であっても、そのモノマー結合様式、すなわち1,4結合と1,2結合などにより均一な組成の重合体であったり、組成に分布があったり、ブロック状(ブロック結合を有する)であったり、種々の構造が可能である。
【0020】
ブロック結合としてはホモポリマーブロックが結合したもの、ランダムポリマーからなるブロックが結合したもの、テーパーランダムポリマーからなるブロックが結合したものなどがある。また、これらのブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体などがある。ブロックポリマーの例としてスチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBであらわすと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体などがある。
【0021】
ブロックポリマーの例としてより一般的には、例えば(S−B)k、S−(B−S)k、B−(S−B)kのような構造が挙げられる。
(上式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、またはテーパー状に分布していてもよい。またブロックBには、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。またブロックBには、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。又、kは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。)ブロックポリマーとしては、上記一般式で表される構造を有するものの任意の混合物でも良い。
【0022】
本発明においては、前記共役ジエン化合物、あるいは前記共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を(共)重合させた後、その得られた活性末端に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を反応させる。
化合物(A)として、具体的には、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ジグリシジル化ビスフェノールAなどの2個以上のフェニル基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル、1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエンなどのポリエポキシ化合物、4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミンなどのエポキシ基含有3級アミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物、エポキシ変成シリコーン、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油などのエポキシ基と他の官能基を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は単独あるいは、2種類以上併用してもかまわない。さらに好ましくは一般式(1)で表される分子中にジグリシジルアミノ基を有する化合物である。
【0023】
【化2】

【0024】
(ここでR1およびRは炭素数1〜10の炭化水素基またはエーテルおよび/または3級アミンを有する炭素数1〜10の炭化水素基、RおよびRは、水素、炭素数1〜20の炭化水素基、またはエーテルおよび/または3級アミンを有する炭素数1〜20の炭化水素基、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、またはエーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、ハロゲンのうち少なくとも1種の基を有する炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは1〜6の整数である。)
【0025】
ここでnが2または3の化合物が特に好ましく、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
化合物(A)は、化合物中のエポキシ基と共役ジエン系重合体の活性末端との反応後にそのエポキシ基の一部が残存する程度に添加する。化合物(A)の添加量をAモル、化合物(A)のエポキシ基の個数をf(2種類以上用いる場合はモル平均の個数)、開始剤として添加したアルカリ(土類)金属の総量をMモルとしたときに、A/Mの値が1/f以上1以下となるように添加するのが好ましく、3/2f以上1以下となるように添加することがさらに好ましい。後の工程で化合物(B)が反応するエポキシ基を確保するために1/f以上とすることが好ましく、コストの観点から1以下とすることが好ましい。
化合物(A)を活性末端に付加させる温度には特に制限はなく、共役ジエン系重合体の重合後に特に加除熱することなく添加することで付加することができる。反応時間も特に制限はないが、十分な反応率を得るために化合物(B)を添加するまで30秒以上の反応時間を確保することが好ましい。
【0026】
本発明においては、共役ジエン系重合体に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を付加させた後に残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を反応させる。
1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)としてアミノアルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、アミノアルキルジアルキルアルコキシシラン、N−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン、N−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、N−(アミノアルキル)アミノアルキルジアルキルアルコキシシラン、(トリアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、(アルキルジアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、(ジアルキルアルコキシシリルアルキル)ジアルキレントリアミン、N−アルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン、N−アルキルアミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、N−アルキルアミノアルキルジアルキルアルコキシシラン、N−アリールアミノアルキルトリアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(アルキルジアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)エチレンジアミン、N−[(トリアルコキシシシリル)−アルキル]−ピペラジン、N−[(アルキルジエトキシシリル)−アルキル]−ピペラジン、N−[(トリアルコキシシリル)−アルキル]−イミダジリジン、N−[(アルキルジアルコキシシリル)−アルキル]−イミダジリジン、N−[(ジアルキルアルコキシシリル)−アルキル]−イミダジリジン、N−[(トリアルコキシシリル)−アルキル]−ヘキサヒドロピリミジン、N−[(アルキルジアルコキシシリル)−アルキル]−ヘキサヒドロピリミジン、N−[(ジアルキルアルコキシシリル)−アルキル]−ヘキサヒドロピリミジン等が挙げられ、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
【0027】
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジメチルメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェンエチレントリメトキシシラン、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ピペラジン、N−[3−(メチルジエトキシシリル)−プロピル]−ピペラジン、N−[3−(ジメチルメトキシシリル)−プロピル]−イミダジリジン、N−[3−(エチルジメトキシシリル)−プロピル]−ヘキサヒドロピリミジン等である。特に1級アミノ基を有する化合物を用いた場合にはエポキシ基との反応により2級アミノ基を生成し、無機充填剤、特にカーボンブラックとのよりよい相互作用を期待できるため好ましい。好ましい化合物としては3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0028】
これらの化合物は単独あるいは2種以上併用して、共役ジエン系重合体の活性末端に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を付加させた後に残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して反応させる。化合物(A)を付加した後に、溶液中に化合物(B)を混合して反応させても良いし、いったん脱溶媒して得られた重合体に化合物(B)をインターナルミキサー等で混合して反応させても良いが、反応効率などの観点から化合物(A)を反応させて得られた変性共役ジエン系重合体溶液に化合物(B)を添加して混合することで反応させることが好ましい。その際の反応温度、反応時間等には特に制限はないが、0℃以上120℃以下で30秒以上反応させることが好ましい。
【0029】
この方法によれば、共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物からなる(共)重合体の末端に、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)が少なくとも1つのエポキシ基の開環により結合しており、さらに化合物(A)の他のエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)がエポキシ基の開環により結合している変性共役ジエン系重合体を得ることができる。さらに、重合体の活性末端は、アルコキシシリル基を潰すことなく、重合体の末端にアルコキシシリル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等の官能基を炭素数50個以内、好ましくは30個以内の狭い範囲に存在する末端変性重合体とすることができる。
【0030】
例えば、共役ジエン系重合体の活性末端に対して下式に示したテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
【0031】
【化3】

【0032】
を反応させた後に3−アミノプロピルトリエトキシシランを反応させた場合に得られる変性重合体の構造の一例として以下の構造が考えられる。
【0033】
【化4】

【0034】
(ここでDは共役ジエン系重合体鎖を表す。)実際の変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体鎖がテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンの4個のエポキシ基のうち1〜4個に結合し、さらに残存するエポキシ基の一部または全部に3−アミノプロピルトリエトキシシランが結合した混合物として得られる。共役ジエン系重合体が結合した際に生成する−OLiは、反応停止剤のアルコールや水などとの反応あるいはスチームストリッピングなどの過程において−OHに転換される。化合物(B)が1級アミノ基を有していてその部分がエポキシ基と反応した場合には2級アミノ基と水酸基を有する変性構造を形成し、2級アミノ基を有していてその部分がエポキシ基と反応した場合には3級アミノ基と水酸基を有する変性構造を形成する。
【0035】
変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、重合体の不活性溶剤の溶液に、必要により反応停止剤を添加することができる。反応停止剤としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノ−ルなどのアルコール類、ステアリン酸、ラウリン酸、オクタン酸などの有機酸、水などが使用される。反応停止剤の添加は化合物(B)の添加前あるいは添加後に行うことができる。
また、必要により、重合体に含まれる金属類を脱灰することができる。通常、脱灰の方法としては水、有機酸、無機酸、過酸化水素等の酸化剤などを重合体溶液に接触させて金属類を抽出し、その後水層を分離する方法で行なわれる。
【0036】
また、重合体の不活性溶剤の溶液に、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などがある。
重合体溶液から重合体を取得する方法は、公知の方法で行うことができる。例えば、スチームストリピングなどで溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水および乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機などで脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法などが採用できる。
変性基を有する共役ジエン系重合体および共役ジエン系重合体組成物に、シリカ、カーボンブラック、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群から選ばれる充填剤を分散させると、従来にない優れた効果が得られる。特に、好ましくはシリカとして一次粒子径が50nm以下である合成ケイ酸を用いる方法である。その場合に、充填剤は短時間の混練によって速やかに均一かつ微粒子状に、再現性よく分散し、得られる物性は極めて好ましいものとなる。
【0037】
本発明について、好ましい実施形態の一つとして共役ジエン系ランダム共重合体を製造する場合について、さらに詳細に説明する。
モノマーとして共役ジエンまたは、共役ジエンとスチレンの組み合わせを用い、有機モノリチウム化合物を開始剤として不活性溶媒中でリビング共役ジエンホモ重合体または共役ジエンとスチレンのリビングランダム共重合体を得る。重合体はガラス転移温度が−100℃から0℃の範囲であり、共役ジエン部の1,4−結合対1,2または3,4結合の比率は10/90〜90/10である。共重合体中の結合スチレン量は0〜50質量%であり、共重合体中のスチレンの連鎖分布は完全ランダム構造がより好ましい。すなわち、オゾン分解法による単離スチレン(スチレンが1個単位)が全結合スチレンの40質量%以上で、かつ連鎖スチレン(スチレンが8個以上の連なりとなっている)が全結合スチレンの5質量%以下、好ましくは2.5質量%以下である。スチレン単位が1個のスチレン単連鎖、及びスチレン単位が8個以上連なったスチレン長連鎖の含率は田中らの方法(Polymer,22,1721(1981))に従って、スチレン−ブタジエン共重合ゴムをオゾンによって分解した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分析することができる。リビング重合体の溶液に、エポキシ基を2個以上有する化合物(A)を添加、攪拌して均一に混合し活性末端に反応させた後、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を添加、混合して、残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して反応させる。
【0038】
また、別の好ましい実施形態としては共役ジエン系ブロック共重合体を製造する場合がある。
一般的に、重合体の分子量は用途、目的に応じてコントロールされる。本発明の変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(100℃ 1+4分)は、20〜100にコントロールされる。好ましくは40〜90、さらに好ましくは45〜80である。ムーニー粘度が高い場合は、製造時における仕上げ工程での容易性を考慮して又、混練時の加工性向上、充填剤の分散性向上、分散性の向上による諸物性の向上のため通常伸展油で油展してこの範囲とする。伸展油としては、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油、さらに、IP346の方法による多環芳香族化合物(PCA)3質量%以下のアロマ代替油が好ましく用いられる。アロマ代替油としては、Kautschuk Gummi Kunststoffe52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated distillate aromatic extracts)、MES(Mildly extracted solvate)などの他、ジャパンエナジー社製のS−RAEなどがある。伸展油の使用量は任意であるが、通常は、重合体100質量部に対し、10〜50質量部である。一般的には20〜37.5質量部用いられる。
【0039】
本発明の製造方法により得られる重合体が、タイヤ、防振ゴムなどの自動車部品、靴等の加硫ゴム用途に用いられる場合は、該重合体100質量部に対して、1〜200質量部の充填材を含む変性共役ジエン系重合体組成物とすることが好ましい。充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の充填剤、またポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの短繊維充填剤を使用することができる。これらの充填剤は単独でも併用して使用しても構わない。これらの中でも、シリカが好適に用いられ、特に一次粒子径が50nm以下である合成ケイ酸が好適である。合成ケイ酸としては、湿式シリカ、乾式シリカが好ましく用いられ、湿式シリカがより好ましく用いられる。
充填剤としては、また、カーボンブラックを好適に用いることができる。カーボンブラックとしては特に制限されず、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらの中でも、特にファーネスブラックが好ましい。
【0040】
本発明の重合体及び重合体の組成物は、該重合体100質量部に対して、1〜100質量部のシリカ、1〜100質量部のカーボンブラックを単独或いは併用系で配合した組成物として用いることが好ましい。さらに、該重合体100質量部に対して20〜100質量部のシリカ、1〜80質量部のカーボンブラックを併用して配合した組成物として用いることがより好ましい。その場合に本発明の効果として、特にシリカの分散性がよく、安定して加硫ゴムの性能が優れる。具体的には、シリカ及びカーボンブラックが均一に分散し、加硫ゴムとした場合に、貯蔵弾性率のひずみ依存性が少ないゴムが得られる。タイヤトレッド用途においては従来以上の低転がり抵抗性と耐ウエットスキッド性のバランスの向上および耐摩耗性の向上、さらに、強度の向上等がはかられ、タイヤ用ゴム、防振ゴム、履物用などにも好適な組成物となる。
【0041】
本発明の重合体及び重合体の組成物は、単独で、または必要に応じて他のゴムと混合して用いることもできる。他のゴムと混合して用いられる場合、本発明に係る重合体の割合が過度に少ないと、本発明の改質の効果が十分に発揮されず好ましくない。他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5〜50質量%、ブタジエン結合単位部分の1,2−ビニル結合量10〜80%)、高トランスSBR(ブタジエン結合単位部分の1,4−トランス結合量70〜95%)、低シスポリブタジエンゴム、高シスポリブタジエンゴム、高トランスポリブタジエンゴム(ブタジエン結合単位部分の1,4−トランス結合量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、溶液重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合ランダムスチレン−ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共合ゴム、およびポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体などのようなブロック共重合体等が挙げられる。これらは、要求特性に応じて適宜選択できる。
【0042】
ゴム成分として本発明に係る重合体と他のゴムが用いられる場合における各成分の割合は、重量比で、通常10/90〜95/5、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは30/70〜80/20の範囲である。また、ゴム配合剤として、例えば、さらに、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、オイルなどを用いることができる。
加硫剤としては、特に限定はないが、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などのような硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄などのようなハロゲン化硫黄、ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどのような有機過酸化物などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。
加硫剤の配合割合は、ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部の範囲である。
【0043】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チオウレア系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸系、キサントゲン酸系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤の配合割合は、ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部の範囲である。
加硫助剤としては、特に制限はないが、例えばステアリン酸や酸化亜鉛などを用いることができる。
オイルとしては、例えば、アロマ系、ナフテン系、パラフィン系、シリコーン系などの伸展油が用途に応じて選択される。伸展油の使用量は、ゴム成分100質量部あたり、通常1〜150質量部、好ましくは2〜100質量部、更に好ましくは3〜60質量部の範囲である。オイルの使用量がこの範囲にある時には、充填剤の分散効果、引張強度、耐摩耗性、耐熱性等が高値にバランスされる。
【0044】
本発明の重合体及び重合体の組成物をゴム成分として用いる組成物は、上記成分以外に、常法に従って、アミン系やフェノール系の老化防止剤、オゾン劣化防止剤、シランカップリング剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、加工助剤、粘着付与剤、ワックス等のその他の配合剤をそれぞれ必要量含有することができる。
本発明の重合体及び重合体の組成物をゴム成分として用いる組成物は、上記各成分を公知のゴム用混練機械、例えばロール、バンバリーミキサー等を用いて混合することによって製造される。
また、本発明の変性共役ジエン系重合体は、前述した変性共役ジエン系重合体の製造方法によって得られるものである。そして、本発明の重合体はかかる構成からなるため、前述したような優れた効果を有するものである。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、実施例における試料の分析は以下に示す方法によって行った。
(1)結合スチレン量
試料をクロロホルム溶液とし、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した((株)島津製作所製:UV−2450)。
(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて赤外線スペクトルを600〜1000cm−1の範囲で測定して所定の吸光度よりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた(日本分光(株)製:FT−IR230)。
(3)ムーニー粘度
JIS K 6300によって100℃、予熱1分で4分後の粘度を測定した。
【0046】
(4)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び分子量5000の標準ポリスチレン(ポリスチレンはカラムに吸着しない)を含む試料溶液を用い、ポリスチレン系ゲルカラム(ガードカラム:東ソー TSKguardcolumn HHR−H、カラム:東ソー TSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHR、オーブン温度40℃、THF流量1.0ml/分)のGPC(東ソー製 HLC−8020)と、シリカ系カラム(ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60S、オーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分)のGPC(東ソー製CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021)の両クロマトグラムをRI検出器を用いて測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。試料は20mlのTHFに対して分子量分布の狭い重合体の場合には10mgを、広い重合体の場合には20mgを標準ポリスチレン5mgとともに溶解し、200μl注入して測定した。具体的手順としては、ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、変性率(%)は[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100で求めることができる。
【0047】
[実施例1]
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去したブタジエン777g、スチレン273g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.81gを反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム9.5mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は73℃に達した。重合反応終了後、反応器にテトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン4.3mmolを添加し、72℃で2分間攪拌して変性反応を実施した後にさらに3−アミノプロピルトリエトキシシランを4.3mmol添加して71℃で5分間変性反応を実施した。この重合体溶液に酸化防止剤(BHT)2.1gを添加後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機で乾燥して、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料A)を得た。回収された溶媒には水以外の重合に有害な物質は含まれていなかった。
試料Aを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74%であり、重合体のムーニー粘度は75であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は56%であり、またシリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は79%であった。
【0048】
[実施例2]
3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を8.6mmolとした以外は試料Aを得るのと全く同様な方法で変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料B)を得た。
試料Bを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74%であり、重合体のムーニー粘度は77であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は56%であり、またシリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は81%であった。
【0049】
[比較例1]
3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加しないこと以外は試料Aを得るのと全く同様な方法で変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料C)を得た。
試料Cを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74%であり、重合体のムーニー粘度は74であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は56%であり、またシリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は82%であった。
【0050】
[比較例2]
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを付けた温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、不純物を除去したブタジエン777g、スチレン273g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.59gを反応器へ入れ、反応器内温を43℃に保持した。重合開始剤としてn−ブチルリチウム7.1mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は73℃に達した。重合反応終了後、反応器にN−メチル−2−ピロリドン7.1mmolを添加し、72℃で5分間変性反応を実施した。この重合体溶液に酸化防止剤(BHT)2.1gを添加後、溶媒を除去し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料D)を得た。
試料Dを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74%であり、重合体のムーニー粘度は52であった。赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は57%であり、またシリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は83%であった。
以上の調製結果を表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
[実施例3、4及び比較例3、4]
表1に示す試料(試料A〜試料D)を原料ゴムとして、以下に示す配合でゴム組成物を得た。
変性共役ジエン系重合体 70.0質量部
ポリブタジエンゴム(UBEPOL−150) 30.0質量部
シリカ(デグサ社製 Ultrasil VN3) 75.0質量部
カーボンブラック(N339) 5.0質量部
シランカップリング剤(デグサ社製Si69) 7.5質量部
S−RAEオイル
(ジャパンエナジー社製JOMOプロセスNC140) 37.5質量部
亜鉛華 2.5質量部
ステアリン酸 2.0質量部
老化防止剤
(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン) 2.0質量部
硫黄 1.7質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド)1.7質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン) 1.5質量部
合計 236.4質量部
【0053】
混練り方法は以下の方法で行なった。
温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム、充填材(シリカおよびカーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。この際、密閉混合機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
ついで、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を混練した。
これを成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫し、物性を測定した。物性測定結果を表2に示した。
【0054】
各物性の測定方法は以下の方法で実施した。
1)バウンドラバー量:第2段混練り終了後の配合物約0.2グラムを約1mm角状に裁断し、ハリスかご(100メッシュ金網製)へ入れ、重量を測定。その後トルエン中に24時間浸せき後、乾燥、重量を測定し、非溶解成分を考慮し、充填剤に結合したゴムの量を計算し、最初の配合物中のゴム量に対する充填剤と結合したゴムの割合を求めた。
2)配合物ムーニー粘度:ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1により、130℃で、予熱を1分間行った後にローターを毎分2回転で回転させ4分後の粘度を測定した。
3)引張強さ:JIS K6251の引張試験法により測定した。
4)粘弾性パラメータ:レオメトリックス・サイエンティフィック社製粘弾性試験装置「ARES」を用い、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットグリップ性能の指標とした。値の大きいほどウェットグリップ性能が良好であることを示す。また50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費特性の指標とした。値の小さいほど省燃費性能が良好であることを示す。またひずみ0.1%と10%でのG’の差をΔG’としてペイン効果の指標とした。値の小さいほどシリカ等充填剤の分散性が良い。
5)耐摩耗性:アクロン摩耗試験機を使用し、荷重6ポンド、1000回転の摩耗量を測定し、指数化した。指数の大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2の実施例3、4に示されるように、本発明によって製造された共役ジエン系重合体はシリカ配合組成物においてバウンドラバー量が増加し、ペイン効果が小さくシリカの分散性が優れ、高温のtanδの低くヒステリシスロスが少なく、タイヤの低転がり抵抗性、即ち、低燃費性に優れる。また、低燃費性とウェットスキッド抵抗のバランスが優れていることがわかる。また耐摩耗性及び引張り強さも良好である。
【0057】
[実施例5、6及び比較例5、6]
表1に示す試料(試料A〜試料D)を原料ゴムとして、以下に示す配合でゴム組成物を得た。
変性共役ジエン系重合体 100.0質量部
シリカ(デグサ社製Ultrasil VN3) 25.0質量部
カーボンブラック(N339) 20.0質量部
シランカップリング剤(デグサ社製Si69) 2.5質量部
S−RAEオイル(ジャパンエナジー社製JOMOプロセスNC140) 5.0質量部
亜鉛華 3.0質量部
ステアリン酸 2.0質量部
老化防止剤
(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン) 1.0質量部
硫黄 1.9質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド)1.0質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン) 1.5質量部
合計 162.9質量部
混練り、成型及び加硫は実施例3、4と全く同じ方法で実施した。物性測定結果を表3に示した。
【0058】
【表3】

【0059】
表3の実施例5、6に示されるように、本発明によって製造された共役ジエン系重合体はシリカ、カーボンブラックを同程度配合した組成物においてもバウンドラバー量が増加し、ペイン効果が小さくシリカの分散性が優れ、高温のtanδの低くヒステリシスロスが少なく、タイヤの低転がり抵抗性、即ち、低燃費性に優れる。また、低燃費性とウェットスキッド抵抗のバランスが優れていることがわかる。また耐摩耗性及び引張り強さも良好である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の変性共役ジエン系重合体は無機充填剤との親和性に優れ、優れた性能のゴム組成物が得られる。タイヤトレッド用材料として用いられた場合、配合する充填剤の種類および組み合わせによらず、ウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度といった物性バランス及び加工性にも優れたタイヤトレッドを得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を開始剤として用いて共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を(共)重合した後、その活性末端に、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)を反応させ、さらに残存しているエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)を反応させることを特徴とする変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)が一般式(1)で表される請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】

(ここでR1およびRは炭素数1〜10の炭化水素基またはエーテルおよび/または3級アミンを有する炭素数1〜10の炭化水素基、RおよびRは、水素、炭素数1〜20の炭化水素基、またはエーテルおよび/または3級アミンを有する炭素数1〜20の炭化水素基、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、またはエーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、ハロゲンのうち少なくとも1種の基を有する炭素数1〜20の炭化水素基であり、nは1〜6の整数である。)
【請求項3】
共役ジエン化合物、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物からなる(共)重合体の末端に、2つ以上のエポキシ基を有する化合物(A)が少なくとも1つのエポキシ基の開環により結合しており、さらに化合物(A)の他のエポキシ基の全てまたは一部に対して、1級又は2級アミノ基及び1つ以上のアルコキシシリル基を有する化合物(B)がエポキシ基の開環により結合している、ムーニー粘度(100℃、1+4分)が20〜100である変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
請求項3記載の変性共役ジエン系重合体を含む重合体100質量部と、充填剤1〜200質量部を含むことを特徴とする変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項5】
前記充填剤がカーボンブラック及び/又はシリカを含む請求項4記載の変性共役ジエン系重合体組成物。

【公開番号】特開2009−227858(P2009−227858A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76292(P2008−76292)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】