説明

外付けストロボ光源装置を利用した電子内視鏡システム

【課題】外付けのストロボ光源装置を用いる電子内視鏡システムにおいて、ストロボ光源装置のオン状態に連動して電子シャッタ機能を自動停止する。
【解決手段】電子スコープ11のライトガイド22をストロボ光源装置14の光源部23に接続する。プロセッサ装置12の映像信号処理回路17から直流電圧分離回路29、接続ケーブル28を介して映像信号を出力する。接続ケーブル28をストロボ光源装置14の直流電圧重畳回路31を介して垂直同期信号検出回路33に接続し、垂直同期信号を検出する。直流電圧重畳回路31を介して接続ケーブル28にストロボ光源装置14の直流電源電圧を印加する。接続ケーブル28の直流電圧成分は、直流電圧分離回路29において分離され、直流電圧検出回路30において検出される。直流電圧検出回路30において直流電圧が検出されたとき、メイン制御部19がスコープ制御部20の電子シャッタ機能を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロボ光源装置を接続して、ストロボ撮影・観察を行う電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発声時の声帯の静止状態やスローモーション映像を撮影、観察する電子内視鏡では、声帯の音声振動ピッチに合わせたストロボ光を照明に用いる(特許文献1)。通常のプロセッサ装置を用いてストロボ撮影を行う場合、外付けのストロボ光源装置に電子スコープのライトガイドを接続してストロボ撮影が行われるが、一般には、ストロボ発光のタイミングと、電子シャッタのタイミングは合わないので、電子シャッタ機能を使用したままストロボ撮影を行うと、撮影中にストロボ発光が行われるコマと行われないコマが生まれ、ビデオ映像が明滅する。したがって、ストロボ撮影が行われている間は、電子スコープの電子シャッタ機能を停止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−229222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、外付けのストロボ光源装置を照明に利用する際、ストロボ光源装置のオン操作に対応して電子スコープやプロセッサ装置において、電子シャッタ機能をオフすることは煩雑であり、切り忘れることも多い。電子シャッタ機能を利用したままストロボ発光が開始されると、上述したようにビデオ映像に明滅が発生し、観察が難しくなるとともに故障と間違われる恐れがある。
【0005】
本発明は、外付けのストロボ光源装置を用いる電子内視鏡システムにおいて、ストロボ光源装置の接続状態あるいはオン状態に連動して電子シャッタ機能を自動停止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子内視鏡システムは、ストロボ光源装置を利用する電子内視鏡システムであって、電子スコープの挿入部先端に設けられる撮像素子の電子シャッタ機能を停止する電子シャッタ機能停止手段と、撮像素子からの映像信号の垂直同期信号を含む信号を出力する信号出力手段と、信号出力手段と接続ケーブを介して接続され垂直同期信号に基づきストロボ光源装置の光源部におけるストロボ発光のタイミングを制御するストロボ発光制御手段と、接続ケーブルにストロボ光源装置の電源電圧に対応する直流電圧を印加する直流電圧重畳手段と、信号出力手段に設けられ、直流電圧を分離・検出する電源電圧分離検出手段とを備え、電子シャッタ機能停止手段が、電源電圧分離検出手段において直流電圧が検出されたときに電子シャッタ機能を停止することを特徴としている。
【0007】
上記信号が映像信号であって、ストロボ発光制御手段は、垂直同期信号を検出する垂直同期信号検出手段、および直流電圧重畳手段を介して接続ケーブルに接続される。接続ケーブルは例えば同軸ケーブルであって、直流電圧重畳手段は、接続ケーブルと垂直同期信号検出手段との間に介装されるコンデンサと、接続ケーブルと直流電圧を供給する電源との間に介装されるインダクタとを備える。更に、電源電圧分離検出手段は、直流電圧分離回路と直流電圧検出回路とを備え、直流電圧分離回路が、接続ケーブルと信号出力手段との間に介装されるコンデンサと、接続ケーブルと直流電圧検出回路の間に介装されるインダクタを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外付けのストロボ光源装置を用いる電子内視鏡システムにおいて、ストロボ光源装置の接続状態あるいはオン状態に連動して電子シャッタ機能を自動停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】直流電圧分離回路および直流電圧重畳回路の周辺の構成のみ取り出したブロック図である。
【図3】音声ピッチと光源部の発光タイミング、撮像における1コマ(1フィールド)のタイミング、および電子シャッタの駆動タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【0011】
電子内視鏡システム10は、主に、電子スコープ11、プロセッサ装置12、モニタ13と、ストロボ光源装置14を備える。電子スコープ11は、プロセッサ装置12に着脱自在に接続され、プロセッサ装置12は、ビデオケーブルを介してモニタ13に接続される。
【0012】
電子スコープ11の挿入部先端に設けられた撮像部15で撮像された映像は、電子スコープ11内の映像信号処理回路16において例えばスコープ特有の処理が施された後、プロセッサ装置12の映像信号処理回路17に送られる。映像信号処理回路17では、電子スコープ11からの映像信号に対して所定の信号処理、あるいはプロセッサ装置12に設けられるパネルスイッチ18の操作で指示される処理等が施された後、モニタ13に出力され、表示される。
【0013】
プロセッサ装置12にはメイン制御部19が設けられ、メイン制御部19では、プロセッサ装置12や、電子内視鏡システム10の全体の制御が行われる。例えば、電子スコープ11のスコープ制御部20は、メイン制御部19からの指示に基づいて、撮像部15に設けられた撮像素子の駆動(電子シャッタ機能のオン/オフを含む)を制御する。また、プロセッサ装置12には、例えば、通常撮影用の光源を備えた光源部21が設けられ、メイン制御部19により制御される。
【0014】
なお、図1では、光源に外付けのストロボ光源装置14を用いてストロボ撮影を行う場合が示されるため、電子スコープ11に設けられたライトガイド22は、ストロボ光源装置14の光源部23に接続される。しかし、ライトガイド22は光源部に着脱自在であり、通常の撮影を行う場合には、プロセッサ装置12の光源部21に接続される。
【0015】
ストロボ光源部23は、一定のタイミングで発光を繰り返すストロボ光源であり、その発光タイミングや光量は、ストロボ光源装置14のメイン制御部24によって制御される。光源部23の発光周期は、声帯の発する音声の振動ピッチに基づいて決定されるもので、患者や被験者が発する声を音声マイクロホン25で集音し、音声ピッチ検出回路26においてその音声ピッチが検出される。検出された音声ピッチはメイン制御部24に入力される。
【0016】
すなわち、メイン制御部24は、検出された音声ピッチに同期させて光源部23の発光タイミングを調整する。これにより、撮像部15では、発声時の声帯の静止画像を撮影することができる。また、パネルスイッチ27のキー操作により、発光タイミングを検出された音声ピッチから僅かにずらすことも可能であり、これにより、撮像部15では声帯のスローモーション映像を撮影することができる。
【0017】
また、本実施形態のプロセッサ装置12およびストロボ光源装置14は、接続ケーブル28(例えば同軸ケーブル)により接続される。プロセッサ装置12では、映像信号処理回路17が直流電圧分離回路29を介して接続ケーブル28に接続される。また、直流電圧分離回路29には直流電圧検出回路30が接続され、直流電圧検出回路30は、メイン制御部19に接続される。
【0018】
一方、ストロボ光源装置14では、直流電圧重畳回路31に接続ケーブル28が接続される。直流電圧重畳回路31には、ストロボ光源装置14の直流電源32が接続されるとともに、垂直同期検出回路33が接続され、垂直同期検出回路33は、ストロボ光源装置14のメイン制御部24に接続される。接続ケーブル28には、例えばモニタ13へ出力される映像信号(例えばコンポジットビデオ信号)と同じ映像信号が供給されるとともに、ストロボ光源装置14の直流電源32から直流電圧信号が印加される。
【0019】
すなわち、映像信号処理回路17からの映像信号は、直流電圧分離回路29を介して接続ケーブル28に供給され、ストロボ光源装置14の直流電圧重畳回路31、垂直同期検出回路33へと伝送される。垂直同期検出回路33は、プロセッサ装置12から伝送された映像信号から垂直同期信号を検出し、メイン制御部24へと出力する。なお、メイン制御部24において、垂直同期信号は、音声ピッチなどとともに、ストロボ発光のタイミング制御に用いられる(後述)。
【0020】
一方、直流電源32の直流電圧は、直流電圧重畳回路31において映像信号に重畳される。接続ケーブル28の直流電圧成分は、プロセッサ装置12において、直流電圧分離回路29で分離され、直流電圧検出回路30のみに供給される。直流電圧検出回路30は、直流電源32からの直流電圧信号を検出すると、その結果をメイン制御部19へと出力する。
【0021】
すなわち、メイン制御部19は、接続ケーブル28を通してストロボ光源装置14の接続状態あるいは直流電源のオン/オフを検出することができ、メイン制御部19は、ストロボ光源装置14の接続状態あるいは直流電源のオン/オフに基づいて、スコープ制御部20における電子シャッタ機能のオン/オフを切り替えることができる(後述)。
【0022】
次に図2を参照して、本実施形態の直流電圧分離回路29および直流電圧重畳回路31の構成について説明する。図2は、直流電圧分離回路29および直流電圧重畳回路31の周辺の構成のみ取り出したブロック図である。
【0023】
図2に示されるように、直流分離回路29は、例えばコンデンサ29Aとインダクタ29Bから構成され、映像信号処理回路17の後段回路を構成するビデオ信号出力回路17Aは、コンデンサ29Aを介して接続ケーブル28が接続されるビデオ信号出力端子に接続される。また、直流電圧検出回路30は、インダクタ29Bを介してビデオ信号出力端子に接続される。
【0024】
一方、直流電圧重畳回路31もコンデンサ31Aとインダクタ31Bから構成される。垂直同期信号検出回路33は、コンデンサ31Aを介して接続ケーブル28が接続されるビデオ信号入力端子に接続され、直流電源32はインダクタ31Bを介してビデオ信号入力端子に接続される。以上の構成により、接続ケーブル28の映像信号には、直流電源32の電圧が直流電圧重畳回路31において重畳され、映像信号に重畳された直流成分は直流電圧分離回路29において分離され、直流電圧検出回路30にのみ供給される。
【0025】
次に図1、図3を参照して、本実施形態の電子内視鏡システム10のストロボ撮影動作について説明する。図3は、音声ピッチと光源部23の発光タイミング(図3(a))、撮像における1コマ(1フィールド)のタイミング(図3(b))、および電子シャッタの駆動タイミング(図3(c))を示すタイミングチャートである。
【0026】
図3(a)において、光源部23の発光のタイミングは星印で示される。図3(a)に示されるように、ストロボ光源装置14の光源部23は、略一定周期で振動する音声振動のピッチに合わせて瞬間的に発光する。図示例では音声振動の立ち上がりにおけるゼロクロス点において発光が行われる。
【0027】
通常の撮影のように、電子シャッタを用いた撮影では、撮像期間は電子シャッタがオン状態のときに対応し、1コマの一部の期間のみが撮像期間として利用される。例えば図3において3、4、5コマ目では、ストロボ発光と撮像期間のタイミングが合わず、撮像期間内に被写体が照明されることがないので、画像は真っ暗なものとなる。
【0028】
このように、通常撮影のときのように、電子シャッタ機能をオン状態にしたままストロボ撮影を行うと、撮影されないコマが発生するのでモニタ13に表示される画像は明滅し、視認性が悪化する。したがって、ストロボ撮影の際には、電子シャッタ機能をオフ状態とし、図3(b)に示されるように、1コマの略全て(電荷転送期間等を除く)の期間を撮像期間として利用することで、全てのコマの撮像期間においてストロボ発光が行われるようにする必要がある。
【0029】
本実施形態では、上述したように、映像信号(垂直同期信号)を送る接続ケーブル28に、ストロボ光源装置14の直流電源電圧を印加し、プロセッサ装置12において、この直流電源電圧を分離・検出しているので、プロセッサ装置12は、ストロボ光源装置14の接続状態あるいはオン/オフ状態を常時把握することができる。これにより、プロセッサ装置12のメイン制御部19は、ストロボ光源装置14の接続状態あるいは直流電源がオン状態のとき(直流電源電圧が検出されたとき)、スコープ制御部20に対して電子シャッタ機能を停止するように指示し、撮像部15での電子シャッタ機能が停止される。
【0030】
また、本実施形態では、各コマの撮像期間におけるストロボ発光の回数を一定数(例えば1回)に固定し、各コマの明るさを一定に保つ。すなわち、ストロボ光源装置14は、プロセッサ装置12から映像信号(例えばコンポジットビデオ信号)を受信し、1コマ(1フィールド)の区切りに対応する垂直同期信号を検出してコマ毎の発光回数が異なることを防止する。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、外付けのストロボ光源装置を用いる電子内視鏡システムにおいて、垂直同期信号を伝送する接続ケーブルを利用して、ストロボ光源装置のオン状態に連動して電子シャッタ機能を自動停止することができる。すなわち、接続ケーブルを伝達される垂直同期信号を含む信号に、ストロボ光源装置の電源電圧に対応する直流電圧を重畳することで、新たな接続ケーブルを用いることなく、ストロボ光源装置の接続状態あるいはオン/オフ状態をプロセッサ装置で検知可能とし、電子シャッタ機能をストロボ光源装置の接続状態あるいはオン状態に連動して停止することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態では、接続ケーブルを介して映像信号が伝送されたが、垂直同期信号そのものを伝達する構成とすることもでき、その場合、垂直同期検出回路は省略することもできる。また、本実施形態では、接続ケーブルにストロボ光源装置の直流電源電圧を印加したが、直流電源電圧を分圧したものを印加する構成にすることもできる。また、本実施形態において、通常の光源部は、プロセッサ装置に内蔵されていたが、通常の光源部も外付けであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 電子内視鏡システム
11 電子スコープ
12 プロセッサ装置
13 モニタ
14 ストロボ光源装置
15 撮像部
19 メイン制御部(プロセッサ装置)
20 スコープ制御部
21 光源部(プロセッサ装置)
22 ライトガイド
23 光源部(ストロボ光源装置)
24 メイン制御部(ストロボ光源装置)
25 音声マイクロホン
26 音声ピッチ検出回路
29 直流電圧分離回路
30 直流電圧検出回路
31 直流電圧重畳回路
32 直流電源電圧(ストロボ光源装置)
33 垂直同期検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロボ光源装置を利用する電子内視鏡システムであって、
電子スコープの挿入部先端に設けられる撮像素子の電子シャッタ機能を停止する電子シャッタ機能停止手段と、
前記撮像素子からの映像信号の垂直同期信号を含む信号を出力する信号出力手段と、
前記信号出力手段と接続ケーブを介して接続され前記垂直同期信号に基づき前記ストロボ光源装置の光源部におけるストロボ発光のタイミングを制御するストロボ発光制御手段と、
前記接続ケーブルに前記ストロボ光源装置の電源電圧に対応する直流電圧を印加する直流電圧重畳手段と、
前記信号出力手段に設けられ、前記直流電圧を分離・検出する電源電圧分離検出手段とを備え、
前記電子シャッタ機能停止手段が、前記電源電圧分離検出手段において前記直流電圧が検出されたときに前記電子シャッタ機能を停止する
ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
前記信号が映像信号であって、前記ストロボ発光制御手段が、前記垂直同期信号を検出する垂直同期信号検出手段および前記直流電圧重畳手段を介して前記接続ケーブルに接続されることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システム。
【請求項3】
前記接続ケーブルが同軸ケーブルであって、前記直流電圧重畳手段が、前記接続ケーブルと前記垂直同期信号検出手段との間に介装されるコンデンサと、前記接続ケーブルと前記直流電圧を供給する電源との間に介装されるインダクタとを備えることを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡システム。
【請求項4】
前記電源電圧分離検出手段が、直流電圧分離回路と直流電圧検出回路とを備え、前記直流電圧分離回路が、前記接続ケーブルと前記信号出力手段との間に介装されるコンデンサと、前記接続ケーブルと前記直流電圧検出回路の間に介装されるインダクタを備えることを特徴とする請求項3に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−62249(P2011−62249A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213474(P2009−213474)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】