説明

外型枠構造

【課題】コンクリート製構造物から外型枠を離型させることができ、かつ移動も可能であって作業性に優れ、しかもコストの上昇を抑制することができる外型枠構造を提供する。
【解決手段】アーチ状のコンクリート製構造物を、内型枠2の外側に配して形成するための外型枠構造1において、天井部分で2分割され、その分割部の各端面13、23どうしが接離可能に設けられた2つの半割外型枠10、20と、該2つの半割外型枠10、20の各端面13、23どうしを接離可能に連結する連結手段30と、各半割外型枠10、20の下端に設けられた車輪40、41と、各車輪40、41の下側に設けられたレール42、43とを具備し、上記連結手段30の連結状態を緩めて両半割外型枠10、20の端面13、23どうしを少し離すことで、両半割外型枠10、20が、自重でその下端が外方へ広がって上記コンクリート製構造物に対して離型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネルや倉庫等のアーチ状をしたコンクリート製構造物を、内型枠の外側に配して形成するための外型枠構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した外型枠構造は、従来多数のパネル板をアーチ状に連結する構成のものが一般的である(例えば特許文献1参照)。そして、このような構成の外型枠構造は、コンクリート製構造物が長い場合にはその全長にわたって形成するのではなく、一定長さ毎にパネル板の組立てと分解とを繰返し、コンクリート製構造物の全長分を形成するように用いられる。なお、アーチ状の内型枠は、内型枠の両下端に設けた車輪とレールから構成される移動機構によりレールに沿って移動可能となったものが知られている。
【特許文献1】特開2005−126918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したように外型枠構造において多数のパネル板の組立てと分解とを繰返した場合には、その作業が繁雑で作業性が悪く、しかも時間的に大きなロスが生じる。そこで、内型枠のように、その下端に車輪を取付け、レール上を移動可能にする移動機構を設けることで、コンクリート製構造物の長さ方向の一部に対応する大きさ・形状で作製した外型枠を用い得るようにすることが考えられる。しかしながら、このような外型枠に対して内型枠の移動機構を同様に設けても、外型枠とコンクリート製構造物との間での離型が困難であった。
【0004】
そこで、外型枠の外側に外型枠の全体を支持する支持構造体を設けるとともに、外型枠自体を上部枠と下部枠とに分けて両者をヒンジにより連結し、下部枠の下側にシリンダを設けるとともに更にそのシリンダの下側に車輪が設けられた構成の外型枠構造が提案され、使用されている。この外型枠構造の場合には、ジャーナル・ジャッキにより外型枠全体を持ち上げるとともに下部枠の下端を外側に広げることでコンクリート製構造物から離型させ、その後下部枠の下側に設けた車輪を介して移動させることができる。
【0005】
しかしながら、この外型枠構造による場合には、外型枠の外側に頑丈な上記支持構造体を必要とするために、コストが大幅に上昇するという問題があった。
【0006】
本発明は、このように従来技術の課題を解決するためになされたものであり、コンクリート製構造物から外型枠を離型させることができ、かつ移動も可能であって作業性に優れ、しかもコストの上昇を抑制することができる外型枠構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る外型枠構造は、アーチ状のコンクリート製構造物を、内型枠の外側に配して形成するための外型枠構造において、天井部分で2分割され、その分割部の各端面どうしが接離可能に設けられた2つの半割外型枠と、該2つの半割外型枠の各端面どうしを接離可能に連結する連結手段と、各半割外型枠の下端に設けられた車輪と、各車輪の下側に設けられたレールとを具備し、上記連結手段の連結状態を緩めて両半割外型枠の端面どうしを少し離すことで、両半割外型枠が、自重でその下端が外方へ広がって上記コンクリート製構造物に対して離型するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る外型枠構造は、請求項1に記載の外型枠構造において、前記連結手段は、両端に逆向きの雌ねじを有するターンバックルと、一端に上記雌ねじに螺合される雄ねじを有する一対の棒部材とを有し、両棒部材の他端が、各半割外型枠に対して揺動可能に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外型枠構造による場合には、連結手段により両半割外型枠の端面どうしを当接させた状態の外型枠と内型枠との間にコンクリート材料を入れることでコンクリート製構造物の作製が可能となる。また、連結手段により両半割外型枠の端面どうしを離すと、両半割外型枠が自重により下端側を外側に広げる状態に傾き、コンクリート製構造物から離型させ得る。この離型に伴い、両半割外型枠は車輪を介してレールに沿った移動が可能となり、従来のようにパネル板の組立ておよび分解を繰返す必要がなく、作業性を大幅に向上させ得る。更に、従来のように外型枠を支持するための大型の支持構造体を外型枠の外側に必要としないため、コストの上昇を抑制することができる。
【0010】
請求項2の外型枠構造による場合には、ターンバックルを正方向または逆方向に回動させると、両棒部材を同時に締めたり緩めたりすることが可能となり、これにより作業性を向上させ得る。加えて、両棒部材の他端が半割外型枠に揺動可能に支持されているので、両棒部材およびターンバックルに、両半割外型枠の傾きに伴うねじ曲げ力が作用するのを防止でき、連結手段の破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る外型枠構造を示す正面図である。
【0013】
この外型枠構造1は、アーチ状のコンクリート製構造物を、内型枠2の外側に配して形成するためのものであり、本実施形態では後述する車輪を介して前後方向に移動可能としている。
【0014】
上記内型枠2は、コンクリート製構造物の内面に対応するように、外型枠構造1よりも全体的に少し小さいアーチ状に形成され、内側には内型枠2を所定形状に保持するための支持骨格3が縦横に配置されている。その支持骨格3の両下端4、4にはそれぞれ車輪5、5が回動自在に設けられ、これら車輪5、5の下側には前後方向にレール6、6が基礎8の上に敷設されている。よって、内型枠2も、車輪5、5を介してレール6、6に沿って前後方向へ移動可能に構成されている。
【0015】
上記外型枠構造1は、アーチ状の天井部分で2分割された2つの半割外型枠10、20を有する。左側の半割外型枠10は下部フレーム11の上端と上部フレーム12の下端とを連結して一体に形成された左側フレームを有し、この左側フレームの内側にコンクリート製構造物を形作るための型枠用パネル10aが取付けられた構成となっている。なお、上部フレーム12の上端部はパネル10aの取付けが省略された開放状態になっている。
【0016】
一方の右側の半割外型枠20も、下部フレーム21の上端と上部フレーム22の下端とを連結して一体に形成された右側フレームを有し、この右側フレームの内側にコンクリート製構造物を形作るための型枠用パネル20aが取付けられた構成となっている。なお、上部フレーム22の上端部はパネル20aの取付けが省略された開放状態になっている。
【0017】
そして、半割外型枠10の上部フレーム12の上側端面13と、半割外型枠20の上部フレーム22の上側端面23とは、天井部分に沿って多数設けた連結手段30を介して接離可能になっている。図1中の24は、半割外型枠10、20の外側に設けた、手摺り付き足場を示す。なお、半割外型枠10および半割外型枠20は、この例では下部フレーム11、21と上部フレーム12、22との2つのフレームを組み合わせて構成しているが、1つのフレームにより、或いは3つ以上のフレームにより構成することもある。
【0018】
図2(a)は連結手段を示す正面図であり、同(b)はその平面図(部分断面図)である。各連結手段30は、図2に示すように、ターンバックル31と一対の棒部材32、33とを有する公知のものであり、ターンバックル31は、長手方向の両端に逆向きの雌ねじ31a、31bが形成されており、例えば雌ねじ31aは左ねじに、雌ねじ31bは右ねじに形成されている。また、ターンバックル31の外側には、ラチェット38が設けられている。このラチェット38は、図示しない操作棒の端が挿入される挿入穴38aと力伝達方向を決めるためのレバー39とを有し、上記挿入穴38aに前記操作棒を挿入して図の前後方向に揺動させると、レバー39の図手前側又は奥側への切換えにより、ターンバックル31を正・逆方向の一方のみに回動させる構成となっている。
【0019】
棒部材32は、一端側に上記雌ねじ31aに螺合される雄ねじ32aを有し、棒部材32の他端側に連結孔32bを有する構成で、上部フレーム12側に設けた支持部材34に形成された水平方向の取付孔34aと連結孔32bとにボルトを通し、ナット止めすることで揺動可能に支持されている。棒部材33は、棒部材32と同様に、一端側に上記雌ねじ31bに螺合される雄ねじ33aを有し、棒部材33の他端側に連結孔33bを有する構成で、上部フレーム22側に設けた支持部材35に形成された水平方向の取付孔35aと連結孔33bとにボルトを通し、ナット止めすることで揺動可能に支持されている。そして、上記支持部材34は上部フレーム12の上に設けた高さ調整部材36の上に固定されており、支持部材35は上部フレーム22の上に設けた高さ調整部材37の上に固定されている。
【0020】
よって、この連結手段30にあっては、ターンバックル31を正・逆方向の一方に回動させると、両棒部材32、33を同時に締めたり緩めたりすることができる。両棒部材32、33を締めると、半割外型枠10の上側端面13と半割外型枠20の上側端面23とが当接する状態になり、両棒部材32、33を緩めると、半割外型枠10の上側端面13と半割外型枠20の上側端面23とが離隔する状態になる。
【0021】
半割外型枠10の下部フレーム11の下端には、車輪40が前後方向に複数個設けられており、半割外型枠20の下部フレーム21の下端には、車輪41が前後方向に複数個設けられている。各車輪40、41の下側には、レール42、43が前後方向に敷設されている。
【0022】
車輪40は、図3(a)に示すように、その軸心方向の両側に径方向に突出した内側フランジ40aと外側フランジ40bが形成されている。一方の車輪41は、図3(a)とは対称であるが、その軸心方向の両側に径方向に突出した内側フランジ41aと外側フランジ41bが形成されている。内側フランジ40a、41aは、上側端面13、23側に配したもので、外側フランジ40b、41bはそれとは逆側に配したものである。
【0023】
車輪40は、下部フレーム11の下側に取付けた支持部材44に水平に固定された軸45に正逆方向へ回動可能に支持されていて、支持部材44の空洞44aの内側を軸45に沿ってスライド可能となっている。一方の車輪41も、下部フレーム21の下側に取付けた支持部材46に水平に固定された軸47に正逆方向へ回動可能に支持されていて、支持部材46の空洞46aの内側を軸47に沿ってスライド可能となっている。
【0024】
上記車輪40の両フランジ40a、40bの間の距離はレール42の幅寸法よりも大きく設定され、また、同様に、車輪41の両フランジ41a、41bの間の距離もレール43の幅寸法よりも大きく設定されている。
【0025】
以上のように構成された本実施形態の外型枠構造1と内型枠2とは、以下のように用いられる。
【0026】
作製すべきコンクリート製構造物の長さ方向の一端側に、内型枠2を移動させて位置せしめ、その内型枠2の外側に、外型枠構造1を移動させて位置せしめる。そして、内型枠2と外型枠構造1とに掛け渡して多数のセパレータ7を設け、内型枠2の外面と外型枠構造1の内面との距離を各部位に応じて調整する。このとき、車輪40、41およびレール42、43の位置関係は、図3(a)に示したように、車輪40、41は、その軸心方向の中心がレール42、43の幅方向の中心に一致し、かつ、車輪40、41の外側が支持部材44、46における外側の内壁44b、46bに当接するように設定されている。
【0027】
そして、この状態において、コンクリート材料(例えばセメントと砂と小石と水との混合物など)を、内型枠2と外型枠構造1との間の内部空間に入れて硬化させることで、コンクリート製構造物の一部が作製される。
【0028】
その後、外型枠構造1のターンバックル31を所定方向に回動させ、両棒部材32、33を緩め、半割外型枠10の上側端面13と半割外型枠20の上側端面23とを離隔させる。すると、両半割外型枠10、20は、各重心が、下部フレーム11、21の下端よりも上側端面13、23寄りに位置するので、各半割外型枠10、20の自重により、下端側を外側に広げる状態に傾いていき、コンクリート製構造物から離型する。
【0029】
このとき、図3(b)に示すように、車輪40、41の内側フランジ40a、41aが、支持部材44、46における内側の内壁44c、46cに当接し、かつレール42、43の内側端部に当接するようにして、上記離型の際に広げる寸法を規制している。これにより、各半割外型枠10、20の下端が基礎8の側面8aからより離れ、側面8aからの距離が、例えば図3(a)のときの55mmから108mmとなり、両半割外型枠10、20がコンクリート製構造物から確実に離型し得るようになっている。
【0030】
そして、以上のようにして離型した両半割外型枠10、20は、図示しない牽引装置を用いて車輪40、41を介してレール42、43に沿って移動させることで、コンクリート製構造物の次の一部の作製が可能となる。なお、内型枠2の移動は、例えば支持骨格3を緩めてコンクリート製構造物の内面から離型させることで可能である。
【0031】
したがって、本実施形態による場合には、両半割外型枠10、20を移動させ得るので、従来のようにパネル板の組立ておよび分解を繰返す必要がなく、作業性を大幅に向上させ得る。更に、従来のように外型枠を支持するための大型の支持構造体を外型枠の外側に必要としないため、コストの上昇を抑制することができる。
【0032】
なお、上述した実施形態では内型枠も車輪を介して移動可能としているが、本発明の外型枠構造はこれに限らず、車輪の無い移動しない内型枠に対しても適用することができる。この場合の内型枠は、作製すべきコンクリート製構造物の全長にわたって形成しておけばよいからである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る外型枠構造を示す正面図である。
【図2】図1の外型枠構造に備わった連結手段を示し、(a)はその正面図、(b)はその平面図(部分断面図)である。
【図3】(a)および(b)は共に車輪とレールとの位置関係の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 外型枠構造
2 内型枠
10、20 半割外型枠
13、23 上側端面
30 連結手段
31 ターンバックル
32、33 棒部材
31a、31b 逆向きの雌ねじ
40、41 車輪
42、43 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーチ状のコンクリート製構造物を、内型枠の外側に配して形成するための外型枠構造において、
天井部分で2分割され、その分割部の各端面どうしが接離可能に設けられた2つの半割外型枠と、
該2つの半割外型枠の各端面どうしを接離可能に連結する連結手段と、
各半割外型枠の下端に設けられた車輪と、
各車輪の下側に設けられたレールとを具備し、
上記連結手段の連結状態を緩めて両半割外型枠の端面どうしを少し離すことで、両半割外型枠が、自重でその下端が外方へ広がって上記コンクリート製構造物に対して離型するように構成されていることを特徴とする外型枠構造。
【請求項2】
請求項1に記載の外型枠構造において、
前記連結手段は、両端に逆向きの雌ねじを有するターンバックルと、一端に上記雌ねじに螺合される雄ねじを有する一対の棒部材とを有し、両棒部材の他端が、各半割外型枠に対して揺動可能に支持されていることを特徴とする外型枠構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−92403(P2007−92403A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283434(P2005−283434)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(599145029)株式会社エムケーエンジニアリング (3)
【Fターム(参考)】