説明

多条植付装置を備えた苗移植機

【課題】必要に応じて随時使用できるように苗規制体としての取扱いを確保した上で、使用しない場合の待機状態における障害を解消して効率的な取扱いを可能とする多条植付装置を備えた苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、苗を傾斜案内する案内通路を構成した苗載台51と、苗を移送する移送体51bと、苗を押さえつつ案内するガイド体302と、その始端部および終端部をそれぞれ支持する始端支持部303および終端支持部304とを設けて構成され、上記終端支持部304には、その上流側で苗の下端部と対向可能な受板部306を形成した苗規制体305を着脱可能に備え、また、上記始端支持部303には、同苗規制体305を着脱可能に保持するとともに、苗をガイド体302の始端まで案内可能に受板部306の姿勢を確保する規制体保持部307を設けた多条植付装置を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多条並列植付用の苗載台から苗を株分けしつつ植付けする多条植付装置を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多条並列植付用の苗載台により苗(マット苗)を株分けしつつ植付けする多条植付装置を備えた苗移植機が知られており、また、多条植付装置の植付け条数の調節のために、個々の苗載台に苗規制体を備える。特許文献1の例は、傾斜姿勢の苗載台に苗規制体を個々に備える。
【0003】
詳細には、苗載台は、株分け用の取出口を備えた苗受枠まで苗を傾斜案内する案内通路を形成し、苗受枠の近くに苗規制体を回動可能に備える。この苗規制体は、苗載台上の苗の下端部に干渉して苗受枠方向への移送動作を規制する受板部を形成したものであり、使用しないときのために、上方の待機位置まで跳ね上げるように回動して保持することにより、圃場端における植付け幅に合うように、必要に応じて植付け条数を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−46623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記苗規制体は、上方の待機位置に回動保持した状態においては、苗の幼葉が規制体に干渉して移送障害を招くことがあり、また、左右に往復動作する苗載台を受ける苗受枠について、苗から適正な株分けを確保するための取出口の周辺のメンテナンス作業に邪魔となり、作業能率上においても問題を内包するものであった。
【0006】
解決しようとする問題点は、必要に応じて随時使用できるように苗規制体としての取扱いを確保した上で、使用しない場合の待機状態における障害を解消して効率的な取扱いを可能とする多条植付装置を備えた苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、株分け用の取出口を備えた苗受枠まで苗を傾斜案内する苗載台と、この苗載台の底部で苗を苗受枠に対して歩進移送する移送体と、この移送体上の苗を押さえつつ案内するロッド状のガイド体と、このガイド体の始端部および終端部を苗載台の案内壁上部にそれぞれ支持する始端支持部および終端支持部とを設けて苗を株分けしつつ植付けする多条植付装置を備えた苗移植機において、上記終端支持部には、その上流側で苗の下端部と対向可能な受板部を形成した苗規制体を着脱可能に備え、また、上記始端支持部には、同苗規制体を着脱可能に保持するとともに、苗をガイド体の始端まで案内可能に受板部の姿勢を確保する規制体保持部を設けたことを特徴とする。
【0008】
上記苗規制体は、終端支持部に装着した場合は、受板部が苗の下端部に干渉して移送体による歩進移送動作を規制して苗の供給が停止されることから、植付条数の調節が可能となり、また、苗規制体を始端支持部に装着した場合は、受板部を案内通路の底側に向けた姿勢とすることにより、受板部がガイド体まで案内可能な導入口となることから、苗の投入操作支援の役を果たす。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明の多条植付装置を備えた苗移植機は、その苗規制体により、植付け走行に必要となる2つの相補的な機能、すなわち、植付け停止と植付け支援のための機能が単一部材に集約されるとともに、簡易な着脱操作によって機能切替えが随時可能であることから、使用しない場合の待機時における取扱いの問題等の単機能部材による非効率性を排して合理的かつ効率的な取扱いが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図
【図2】図1の乗用型田植機の平面図
【図3】乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構の平面図(a)および側面図(b)
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大図
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図
【図6】図1の乗用型田植機の制御ブロック図
【図7】図1の乗用型田植機の旋回連動制御の考え方を示す図
【図8】制御処理の動作区分図
【図9】図7の旋回連動制御のフローチャート
【図10】旋回連動制御のフローチャート
【図11】図1の乗用型田植機の操作盤のポンピングクラッチ調節ダイヤル部分の平面図
【図12】図1の乗用型田植機の操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図
【図13】図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動用の油圧回路図
【図14】本発明の一実施例の乗用田植機の変速レバーのリップ部の側面図(a)と背面図(b)
【図15】苗載台の側面図
【図16】苗規制体の拡大側面図(a)および上面図(b)
【図17】移送体の伝動系統展開図
【図18】灯火装置の作用範囲を表す機体正面図(a)および要部拡大斜視図(b)
【図19】ブレーキペダル装置の平面図(a)、背面図(b)および回動動作時の平面図(c)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明の一実施例である乗用型田植機の側面図と平面図である。この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して多条用の植付装置4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0012】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0013】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって植付装置4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0014】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になって畦クラッチペダル109等が配置されている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0015】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に植付装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として植付装置4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、植付装置4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0016】
植付装置4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a…に供給すると苗送りベルト51b…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける植付機構52…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ等を備えている。植付装置4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55〜57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に植付機構52…により苗が植付けられる。各フロート55〜57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて植付装置4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0017】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62…でフロート55〜57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62…に吹き込まれ、施肥ホース62…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0018】
植付装置4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は植付装置4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0019】
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0020】
フロート55〜57との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0021】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
【0022】
また、植付装置4を圃場に下げたときに、植付装置4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0023】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで植付装置4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0024】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式変速装置23に伝えられ、油圧式変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0025】
植付装置4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と植付装置4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した植付装置4が上下動されるように構成されている。
【0026】
(サイドクラッチと間欠制御)
図3(a)の展開平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示し、図3(b)には、図3(a)の側面図を示す。また、図4には、図3(b)のミッションケース12周辺の拡大図を示し、図5には、図3(a)の平面図に油圧式無段変速装置23を図示した場合を示している。
【0027】
左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0028】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5,図13)を備えている。上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37(図13にも図示)によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0029】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0030】
(苗植付部制御)
次に、後進時に植付装置4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、チェンジレバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図6)の植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0031】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に植付装置4は最大位置まで上昇しているので、植付装置4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0032】
また、前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に図6に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0033】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に植付装置4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に植付装置4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0034】
一方、操作盤33には、植付装置4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図6)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に植付装置4は制御装置163の植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても植付装置4は自動上昇されない。
【0035】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても植付装置4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0036】
なお、自動リフト切替スイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても植付装置4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても植付装置4が自動上昇しないので、植付装置4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に植付装置4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に植付装置4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても植付装置4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0037】
また、上記構成からなる田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0038】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0039】
(制御動作)
この制御の考え方を図7と図8に示す。
すなわち、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切れた状態で、左右ドライブシャフトの回転数を検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数が設定値N1を超えると植付装置4を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具126の作動が「切り」状態に入って(=植付装置4が上げ状態に移って)からステアリングハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると植付「入り」にする機構である。
【0040】
(旋回連動制御)
上記旋回連動制御のフローを図9に示す。
まず、左右の後輪11,11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
【0041】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図6)により、補正値n0を設定する。
【0042】
植付装置4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図6)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0043】
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので植付装置4を下げる。この植付装置4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0044】
本実施例の田植機では、自動植付開始モードが設定された時にのみ自動的に旋回外側の後輪11の回転数に応じて、旋回内側の後輪11の駆動を断続的にサイドクラッチを伝動することからなるポンピングブレーキ旋回(ポンピングクラッチ旋回ともいう)を行うことができる。このようにポンピングブレーキ旋回を行うことにより、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。前記旋回内側の後輪11のクラッチをオン/オフするポンピングブレーキ旋回において、車速が遅ければ遅い程ポンピングの周期を短く、速ければ速いほどポンピングの周期を長くすることで、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができる。
【0045】
例えば、車速0m/sで旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず:クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)の作動周期(オン/オフを含む)が0.5秒、車速0.5m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.0秒、車速1.0m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.5秒となるように一次関数的に車速に応じて旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ作動周期を変更する。
【0046】
高速走行時は特に後輪11の伝動軸のクラッチをオンするときでも、オフするときでも衝撃が大きい。そこで上記のように、ポンピングブレーキによる衝撃を少なくするために、高速走行時ほどポンピングブレーキ(クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)のオン/オフの周期を長めにする。
【0047】
本実施例の8条植の田植機のように、大型の走行車両は旋回時には比較的大回りをする必要がある。しかし、旋回中に旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切ったままでおくと、小回りになり過ぎる。しかし、本実施例のように そこで旋回内側の後輪11の伝動軸をポンピングブレーキ制御すると、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができ、オペレータの希望する適切な旋回半径で8条植の田植機に相応しい比較的大回りの旋回が可能となる。
【0048】
(調節ダイヤル)
前記旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチの接続は、図11に示すように操作盤33に設けているポンピングクラッチ調節ダイヤル210で設定された回転数(回転角度)に旋回内側の後輪11の回転数が達するまでなされる。
【0049】
ポンピングクラッチ調節ダイヤル210は、後輪回転角度(=後輪11の伝動軸の回転角度)で11度〜27度の間で調整を行う。なお、前記ポンピングクラッチ調節ダイヤル210を後輪11(後輪11の伝動軸)の回転角度でなく、後輪11の伝動軸作動用のクラッチ(図示せず)の作動時間、例えば210msから510msまでの時間で設定できる構成にして、このポンピングクラッチ調節ダイヤル210で設定された時間の間、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず)が接続される構成としても良い。
【0050】
また、路上走行などで高速走行しているときには、ポンピングクラッチ旋回を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、路上走行などの高速走行中には、前記ポンピングクラッチ旋回は不要である。そこで、走行車両が一定車速、例えば1.0m/s以上で高速走行しているときには、クラッチのポンピングが行われないようにしている。
【0051】
本実施例の田植機において、ステアリングハンドル34を回して旋回する場合に、旋回外側の後輪11の回転数(a1)に応じて旋回内側の後輪11の回転数(b1;b1<a1)を決めるように前記ポンピングクラッチ制御を行う構成としても良い。
【0052】
(内側間欠伝動制御)
上記ポンピングクラッチ旋回のための制御(以下において「内側間欠伝動制御」という。)は、モード切替えによって内側クラッチを切ったままの単純旋回制御と何れかを選択可能に制御装置163を構成するとともに、内側間欠伝動制御への切替えと対応して、作業部4を下降および再稼動するべき基準距離である設定値N1,N2を小さくするように補正することにより、内側間欠伝動制御を選択した場合は、旋回走行の過程において、旋回内側の後輪11に外側と同速の走行動力が間欠伝動されることによって機体旋回が安定化されるとともに、間欠伝動と対応するように設定値N1,N2が補正されることによって作業部4の下降および再稼動の制御が適正化されることから、操向内側の後輪11のスリップの影響を極力抑えて作業部4の動作位置を適正に制御でき、未作業域の発生を防止したり過作業域を小さくしたりできる。
なお、間欠伝動は設定パルス幅を調節可能とし、この設定パルス幅に応じて、設定値N1,N2を補正をするようにしてもよい。
【0053】
また、別の内側間欠伝動制御のフローチャートを図10に示すように、機体旋回のためのステアリング操作が行われた場合に、旋回内側のサイドクラッチの「切」出力のステップ1(以下においてS1の如く略記する。)、および、外側後輪11の回転数に基づく閾値の算出(S2)を行い、この閾値に対して内側後輪11の回転数が小さい場合について、所定時間のサイドクラッチの「入」出力と設定値N1,N2の補正(S3a〜S3c)とを行うようにして旋回連動制御を行う。上記閾値は、ポンピング調節ダイヤル210により設定(例えば、外側駆動後輪の回転速度の5分の1)する。
【0054】
上記制御により、内側後輪11のスリップの発生が閾値に基づいて検出され、このスリップ発生に応じた内側後輪の駆動によって操向内側の後輪11のスリップが抑えられて操向性が確保されるとともに、内側の後輪駆動と対応して設定値N1,N2が補正されることから、連動する作業部4の動作精度を向上することができる。
【0055】
この場合において、閾値に対して内側後輪11の回転数が小さい範囲に限定してサイドクラッチの「入」および設定値N1,N2の補正を行うことにより、内側の後輪駆動と設定値N1,N2の補正がスリップの検出範囲と対応することから、操向内側の後輪11のスリップが最小限度に抑えられて操向内側の後輪11を適正な回転速度で回転させて円滑に操向できるとともに、機体の旋回動作と連動する作業部4の動作精度を更に向上することができる。
【0056】
次に、機体旋回に伴う関連制御について説明する。
ポンピングクラッチ旋回が「オン」になった場合、すなわち、内側サイドクラッチが「入」のとき、ポンピング調節ダイヤル210による切替スイッチが「入」のときは、前輪デフロック作動ソレノイド101を制御装置163により制御してフロントオートデフロックを作動させることにより、機体の旋回動作を助けることができる。
また、フロアステップ35に配置された片ブレーキペダル102の踏込み操作によってポンピングを終了することにより、ポンピング時におけるブレーキの踏込みを可能とし、ポンプの破損を防止することができる。
【0057】
ポンピングパルスが大きい場合は、旋回が大廻りとなることから、フロントアクスルに可動式のステアリング切れ角ストッパを設け、ポンピングパルスが大きい程、ステアリングストッパ用ソレノイド103により切れ角を小さくすることにより、小回りが可能となる。
また、ポンピングパルス幅が大きくなると揺れが大きくなり過ぎ、リンクの破損を招くことから、パルス幅が大きいときは、変速規制ソレノイド104により速度規制をする。
【0058】
変形圃場で機体を旋回するためには、畦クラッチが「切」のときは、畦クラッチレバーセンサー105の信号によってオートリフト動作開始のステアリング切れ角を大きくすることにより、誤作動を防止することができる。
枕地処理の際は、操作盤33のマーカスイッチ106(図12)の操作によってオートマーカが「切」のときに、オートリフト動作を開始するステアリング切れ角を大きくすることにより、オートマーカの「切」と対応する枕地処理における作業に入ったときの機体旋回による植付部の上昇を防止することができる。
【0059】
ステアリング34の切り速度が速く、機体が傾いている場合は、傾斜センサ107の信号によって自動で植付部4を下降することにより、機体の転倒を防止して安全性を向上することができる。
また、植え仕舞いにおいては、変速レバー117(図14)に設けた「チョイ上げ」のための任意昇降スイッチ117cの信号によりオートローリングを「切」にするように制御する。一般に圃場出口は傾斜していることが多く、そのような場所でオートローリングによって無理に水平にすると浮苗が発生し、泥落としも大きくなるので、そのような事態を回避することができる。
【0060】
(モード設定)
前記自動植付開始モードの設定は植始め調節ダイヤル212(図12)で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、図12に示す植始め調節ダイヤル212を回して設定する。
前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0061】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記ポンピングクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。
【0062】
これは湿田での旋回走行中では、車輪10,11がスリップし易く、自動植付開始モードで苗の植え付け開始位置が予定した位置になり難いため、前記ポンピングクラッチ旋回を選定するが、このときのみ連動してポンピングクラッチ制御をすることができる。
こうしてスリップし易い条件下での車両の旋回走行を容易に行うことができるようになる。
【0063】
また、自動植付開始モードが設定されていない時、例えば路上走行時には前記ポンピングクラッチ旋回をしないで、通常の旋回内側の車輪(後輪11)の伝動軸のサイドクラッチを切りながら旋回する通常の旋回モードとすることもできる。
【0064】
(油圧系)
昇降バルブ161の下げPWM(Pulse Wide Modulation)制御時の騒音の対応策として次のような構成を採用することができる。すなわち、図13に示す油圧回路図において昇降バルブ161より昇降シリンダ46側にあるチェックバルブ162のスプールの後方から出る作動油を利用して、スプールがストロークしすぎるとスプールのポートを閉める構成でダンパー効果を得るようにして昇降バルブ161の下げPWM制御時の騒音を小さくする。
【0065】
現行の前記チェックバルブ162では、昇降バルブ161の下げのPWM制御時にスプールが高速にプラグ等に当たることにより騒音が発生する。個々の部品の精度などの違いにより大きな音が発生するものがあり問題となっているが、騒音が発生する箇所としてチェックバルブ162のスプールがそのストッパになっているプラグに当たる時に大きい音となることが分かったのでチェックバルブ162のスプールがプラグに当たる前にポートを閉めてダンパー効果によりプラグに当たらないようにして騒音の発生を防ぐことができた。
【0066】
(変速レバーグリップ)
また、図14に示すように、変速レバー117のグリップの側面上側に親指で押し操作して苗植付クラッチの入切を切り替えるための植付スイッチ117aを設け、該グリップの側面下側に親指で上下に操作して植付装置4の昇降操作をするためのトグルスイッチ式の昇降スイッチ117bを設け、該グリップの後面に親指で押し操作して植付装置4を任意の高さに下降させるための任意下降スイッチ117cを設けたものにおいて、グリップの前面に人差し指で左右に操作して苗植付位置の指標となるマーカの左右切換をするためのマーカ切換スイッチ117dを設けた構成を採用しても良い。この場合にはオペレータが変速レバー117を握ったままでマーカの左右の切り換えができる。
【0067】
(苗載台)
次に、苗載台51の苗送り規制について説明する。
苗載台51は、その側面図を図15に示すように、植付条毎に株分け用の取出口51aを備えて車幅方向に延びる苗受枠301までマット苗を傾斜案内する植付条数の案内通路を並列に形成し、それぞれ底部51sでマット苗を苗受枠301に対して歩進移送する周回動作可能な無端ベルトによる移送体51bと、この移送体51b上のマット苗を押さえつつ案内するロッド状のガイド体302と、このガイド体302の末端で車幅方向に屈曲する始端部と終端部を案内壁51w上部でそれぞれ支持する始端支持部303、終端支持部304とを備えて構成することにより、植付機構52にマット苗を供給することができ、また、マット苗の供給を停止するために、終端支持部304に略コの字状の苗規制体305を着脱可能に設ける。
【0068】
上記苗規制体305は、図16の拡大側面図(a)および上面図(b)に示すように、ガイド体302の屈曲端部に嵌合しうる填込部305bをそれぞれ形成した左右の側板部305a,305aをを含め、合成樹脂材によって一体成形することにより、上記終端支持部304の上手側の苗載台51のマット苗の下端部と対向して干渉可能に受板部306を設けるとともに、ガイド体302を避けるための溝306a…を形成し、必要により、ガイド体302の端部を支軸としてマット苗の通過を可能とする待機姿勢まで回動可能に構成する。また、上記始端支持部303には、同苗規制体305を着脱可能に保持するとともに、受板部306を案内通路の底側に向けてマット苗をガイド体302の上端まで案内可能な姿勢を確保するためのスタッド部材等による規制体保持部307を設ける。
【0069】
上記苗規制体305は、終端支持部304に装着した場合は、受板部306がマット苗の下端部に干渉して移送体51bによる歩進移送動作を規制することによりマット苗の供給が停止されることから、畦際等における植付条数の調節が可能となる。また、苗規制体305を始端支持部303に装着した場合は、受板部306を案内通路の底側に向けた姿勢とすることにより、受板部306がガイド体302の上端まで案内可能な導入口となることから、マット苗の投入操作支援の役割を果たす。
【0070】
したがって、上記植付装置4を備えた苗移植機は、その苗規制体305により、植付け走行に必要となる2つの相補的な機能、すなわち、植付け停止と植付け支援のための機能が単一部材に集約されるとともに、簡易な着脱操作によって機能切替えが随時可能であることから、単機能部材による非効率性を排して合理的かつ効率的な取扱いが可能となる。
【0071】
次に、苗載台51の移送体51bの伝動系について説明する。
移送体51bの伝動系は、図17の伝動系統展開図に示すように、苗載台51を左右に区分してそれぞれの下端側の駆動ローラ311を系統別に左右の苗送り駆動軸311a,311aと連結する。各苗送り駆動軸311aは、ワンウェイクラッチ312を介して一方向に回動させる中継リンク313と連結し、その他端を中継アーム314と連結し、この中継アーム314を一体の中継軸314aを介して一定角度内を揺動動作可能に軸支するとともに、中継軸314aに一体に左右の従動アーム315,315を設ける。
【0072】
これら左右の従動アーム315,315は、苗載台51の左右移動のそれぞれのストロークエンドにおいて苗植付伝動ケース50の側に配置した苗送りカム316と干渉する位置に配置し、その作用を受けることにより、移送体51bを歩進動作させる。
【0073】
(Zロータ制御)
次に、Zローター27については、昇降用のモータ317を側辺部材65bに取付け、機体旋回に伴って植付部4が左右に大きく揺れた場合に、後輪11,11と整地ローター27が干渉しないように、ポンピングクラッチの動作オンと対応して整地ローター27を収納位置まで上昇させるように動作制御する。
【0074】
(灯火装置)
次に、灯火装置については、その作用範囲を表す機体正面図(a)および要部拡大斜視図(b)を図18に示すように、乗用田植機(特に、大型機)は、実際の車幅Wが苗タンク51や補助苗タンク38,38の幅となることから、夜間等はその大きさが他から視認されにくくて危険であり、また、前照灯321もフロント中央部Xのみで前方視界が余り良くなく危険であることから、苗タンク51のフレーム部に補助ライトとして車幅灯とガイドビューランプを兼ねるワークランプ322,322にそれぞれ泥よけカバー322aを設けて装備する。
【0075】
(ブレーキペダル)
次に、ブレーキペダル装置については、図19の平面図(a)と背面図(b)に示すように、運転席の右側位置のフロアステップ35に左右の片ブレーキのペダルプレート102,102を並列に配置するとともに、右側のペダルプレート102の左端にヒンジ部331を形成し、このヒンジ部331をそのブレーキステー332に溶接支持し、回動時は、図19の平面図(c)に示すように、左のペダルプレート102の上に重なってマグネットで固定可能に構成する。
【0076】
田植機の場合は、使わない時や、路上走行時に、右側のペダルプレート102を左側に重ねることにより、路上走行のためのロック機構が不要になるとともに、ペダルプレートの外側張出しがなくなってロアステップ35を歩き易くなり、右側の苗補給関係の作業が楽になる。また、ブレーキ付設仕様の左右連結ロッドが不要となる。
【0077】
(パワステ制御)
次に、パワステ制御について説明する。後輪ローリングセンサー336の信号により、後輪ローリングの頻度が多いときは、パワステリリーフバルブ335を制御してリリーフ圧を上げることにより直進性をアップさせることができる。また、植付部ローリングセンサ54により、植付オートローリングの頻度が多いときについても、パワステリリーフ圧を上げることによって前記同様に直進性をアップさせることができる。
【0078】
さらに、畦クラッチレバーセンサー105により畦クラッチ切のときにリリーフ圧を上げることにより、畦際で多用される切り返し操作を楽にすることができる。また、マーカスイッチ106により、オートマーカ切のときにもリリーフ圧を上げることにより、上記同様にして、畦際の切り返し操作を楽にすることができ、そのほか、自動切替えスイッチ337によりZターン切と対応してリリーフ圧を上げることにより、切り返しの多い変形圃場における操作を楽にすることができる。
【0079】
(エンジン制御)
次に、エンジン制御については、座席31に着座検出のシートセンサ(スイッチ)341を設け、作業中に苗補給や肥料補給のために座席31を離れたときに、エンジン回転をアイドリングにするように燃料噴射弁338を制御することにより、エンジン停止による再始動の煩わしい操作を要することなく、燃費の向上が可能となる。この場合において、座席31を離れたときにエンジンを停止とし、次の着席によってエンジンを再始動するように制御部を構成することにより、さらに燃費を向上することができる。
【0080】
(映像モニタ)
次に、映像モニタについて説明する。
運転台のメータパネルに画像モニタ342を設け、苗タンクサイドに左右のカメラを設け、畦際の情報を映し出す。詳細には、苗タンクサイドにカメラを設け、カメラは下向きで畦とガードを写す。画像モニタ342は、4〜5インチ程度の液晶式等の画像表示部であり、畦とガードを写すことで、煩雑な操作を要する機体旋回時等において、振り返らずに、上下の視線移動だけで植付部サイドの状態を見ることができる。
【0081】
モニター画面はLとRを並べて同時に写すか、LとRの一方を選択して写し、手動操作でモニタ342をオンオフ可能に構成する。この場合において、カメラを苗タンクに設置することで、水平ローリングで常に地面との距離を一定にでき、ピントずれを防止できる。
【0082】
また、カメラ343を線引きマーカ344に別途設置し、サイドマーカ345をその視野に入れ、隣接条を写してモニター342に画像表示することにより、視線移動を最小にして隣接条までの距離を見ることができる。
【符号の説明】
【0083】
4 植付装置
51 苗載台
51a 取出口
51b 移送体
51s 底部
51w 案内壁
301 苗受枠
302 ガイド体
303 始端支持部
304 終端支持部
305 苗規制体
306 受板部
307 規制体保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
株分け用の取出口(51a)を備えた苗受枠(301)まで苗を傾斜案内する苗載台(51)と、この苗載台(51)の底部(51s)で苗を苗受枠(301)に対して歩進移送する移送体(51b)と、この移送体(51b)上の苗を押さえつつ案内するロッド状のガイド体(302)と、このガイド体(302)の始端部および終端部を苗載台(51)の案内壁(51w)上部にそれぞれ支持する始端支持部(303)および終端支持部(304)とを設けて苗を株分けしつつ植付けする多条植付装置を備えた苗移植機において、
上記終端支持部(304)には、その上流側で苗の下端部と対向可能な受板部(306)を形成した苗規制体(305)を着脱可能に備え、また、上記始端支持部(303)には、同苗規制体(305)を着脱可能に保持するとともに、苗をガイド体(302)の始端まで案内可能に受板部(306)の姿勢を確保する規制体保持部(307)を設けたことを特徴とする多条植付装置を備えた苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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