説明

多機能性コンクリート組成物

【課題】マイナスイオン放出と同時放射の遠赤外線による抗菌、消臭及び水質浄化の各作用、更に光触媒材料によりこれら作用を増加させた多機能性コンクリート組成物である。【解決手段】コンクリート材料に、1)稀有元素類を含む天然鉱物粉体の混合物、2)稀有元素類を含む天然鉱物粉体とトルマリン粉体若しくは遠赤外線セラミック粉体の何れか一方を含む混合物、3)稀有元素類を含む天然鉱物粉体と光触媒機能材料を添加配合した混合物、4)稀有元素類を含む天然鉱物粉体とトルマリン粉体若しくは遠赤外線セラミック粉体の何れか一方を含む混合物と、光触媒機能材料を配合した混合物の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート組成物に関し、コンクリート材料に、マイナスイオン放出の持続的維持並びに同時放射する遠赤外線の利用で、抗菌作用及び消臭作用及び水質浄化作用を図り、更に光触媒作用で抗菌作用及び消臭作用を増加させた養殖魚用の水槽及び生簀並びに漁場育成用の漁礁及び消液ブロックに有用な多機能性コンクリート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にコンクリートは、セメントに小石と水を混ぜた物で、建材、道路、水槽、消波ブロック、漁礁等としてて広く使われている。特に、養殖魚用の水槽、生 の場合、養殖魚の育成及び水質浄化及び抗菌及び消臭が日々の管理として、必要不可欠なものとなっている。また、漁場育成用の施設き場合、漁礁及び消波ブロックがある。近年、河川や海岸線の多い日本の海は、人間の生活廃水で汚染され、魚介類の増殖を脅かしている。その為、海岸線の海を魚介類の増殖に必要な綺麗な環境が必要不可欠になってきた。近年、空気及び水環境に対する関心が非常に高まり、特に人間の生活空間における悪細菌類の除去や水質浄化が必要不可欠の時代になってきた。そのような背景の中で、モルタル材に、銅イオンをリン酸カルシウムに吸着させた粒子を配合させた抗菌性モルタル組成物子菌モルタル組成物が、市場で販売されるようになってきた。
【0003】
一方、悪臭の除去及び抗菌効果の方法として、注目されるようになってきたマイナスイオン効果を図った製品や、光触媒二酸化チタンを使った製品が多く市場に見られるようになってきた。
【0004】
マイナスイオンを発生させる方法として、電気機械的に電子を発生させてマイナスイオンを発生させる方法と、放射性物質を含む希有元素鉱物を用いて、空気をイオン化させる方法が知られている。そのような背景のなか、抗菌性モルタル組成物や、マイナスイオンの抗菌性及び消臭性を併せ持つ組成物や太陽光の光で消臭作用と抗菌作用が得られる光触媒機能材料の先行技術がま特許や出願或いは市場に販売されている。そのなかで代表的な下記の5件が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開平07−172896 抗菌性銀イオンを吸着した非質リン酸カルシウム粒子からなる抗菌性粒子を含むことを特徴とする抗菌性モルタル組成物。
【0006】
【特許文献2】特開平06−24919 銀を担持しているリン酸カルシウム系化合物からなる抗菌・防カビ剤を含有していることを特徴とする、抗菌・防カビ性セメント系目地モルタル材。
【0007】
【特許文献3】特許第3035279号 静電気に帯電しにくい高分子化合物、並びに希有元素類を含む鉱物、及び少なくともトルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含むマイナスイオンを放出すると同時に、遠赤外線を放射する樹脂組成物。
【0008】
【非特許文献1】光触媒 株式会社ナツメ社,2004年8月3日発行. 光触媒といわれる数〜数百nmの酸化チタンが、太陽光の紫外線が当たると、光電効果で電子が励起、電子と正孔が発生し、電子は、空気中の酸素を還元しスーパーオキサイドイオンに、正孔は、表面の水分を酸化して水酸化ラジカルに変える。このスーパーオキサイドイオンと水酸化ラジカルは、強い酸化力を示し、この状態でチタニア表面に有機物が付着すると、スーパーオキサイドイオンが有機物の炭素を、水酸化ラジカルが水素を奪って分解、こうした自浄作用が、抗菌作用及び消臭作用となるメカニズムとなっている。
【0009】
しかしながら、上記の光触媒は、太陽光の紫外線が当たらなければ光電効果が生じず、また、チタン表面の作用効果である為、離れたところでの抗菌作用及び消臭作用の効果は全く得られない大きな欠点のあるものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする問題点は、(1)養殖魚用の施設の場合、養殖魚を養魚から生魚として養殖する為に、いかに短時間に効率よく、採算性のとれたものにするかが重要な課題でもある。その為に、日々の水質浄化は勿論のこと、水中の細菌類の殺菌をも薬剤等で殺菌するのが一般的になり、例えば、河豚の養殖によく使用されるホルマリンガ一例であるが、安全であると認定されていても、元々ホルマリンは、人体に害があると安全衛生法でうたっているもののうえ、ホルマリンを使った養殖河豚は、市場では受け入れされないようになってきた。また、光触媒の欠点である離れたところでも抗菌効果が促進されるような素材になってきた点であり、養殖魚用の水槽及び生簀をつくるコンクリート素材が必要になってきた。
(2)漁場育成用の施設の場合、漁礁及び消波ブロックがある。近年、水質の汚染は、河川のみならず海岸線にも及び汚染されている為、議類の増殖に必要な環境が脅かされている。その為、海岸線の多い日本の海の環境を護岸によって環境改善するような海岸線に使用するコンクリート及びコンクリート建造物である漁礁及び消波ブロックに、水質浄化を図れ、魚類の増殖に必要な良環境が得られるコンクリート素材が必要になってきた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点にかんがみて、(1)希有元素類含む鉱物粉体。(2)希有元素類を含む天然鉱物と、トルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含む混合物。(3)希有元素類を含む鉱物粉体に、光触媒機能材料を混合させた混合物。(4)希有元素類を含む鉱物粉体と、トルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含む混合物に、光触媒機能材料を混合させた混合物。その(1)、(2)、(3)、(4)の混合物をコンクリート材に配合することによって、マイナスイオンの持続的放出と、遠赤外線の放射の同時作用で、抗菌効果及び消臭効果、並びに水質浄化を発揮でき、更に光触媒作用で抗菌作用を増加させて、太陽光が当たらないところや夜間でも効果が発揮できるという多機能性の機能を見出し、(1)養殖魚の育成効果のある、また、衛生的な養殖魚用の水槽及び生簀用のコンクリート組成物が得られた。(2)漁場の水質浄化を図り、魚類の増殖に必要な良環境になる漁礁及び消波ブロックのコンクリート組成物に到達した。また、(1)及び(2)のコンクリート素材を使用することにより、水質浄化材、抗菌剤やそれに付随する作業が不要になり、大幅なコストダウンができることになった。
【0012】
本発明において、コンクリート材として、セメントに砂と砂利の骨材と水を混合したもので、セメントとして、ポルトランドセメント、スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント等のいずれでも使用することができる。最も好ましくは、ポルトランドセメントが一般的であり有益である。また、セメントの製造過程において、予めセメント原料に、モナズ石粉体或いは遠赤外線セラミック粉体を配合し、焼成して混合セメントとして使用することもできる。
【0013】
セメントと砂と砂利の配合比率として、容積比として、1対2対4〜1対3対4の何れも配合比率を使用することができる。これを重量比率で表すと、1立方メートルのコンクリートを作るのに、セメント対砂対砂利の単位量は、例えば、1対2対4の容積比のコンクリートでは、約320kg対約640kg対1280kgとなる。また、1対3対6の容積比のコンクリートでは、約250kg対750対約1500kgとなり、そのいずれも使用することができる。コンクリート材の水の配合として、水/コンクリートの比は、40〜60%の配合比率のいずれも使用することができる。
【0014】
本発明において、稀有元素類を含む鉱物として、フェルグソン石、モナズ石、ゼノタイム、コルンブ石、ベタホ石、サマルスキー石、タンタル石、ウラン石、方トリウム石、ゴム石、ガドリン石等がある。これらの鉱物のうち、極微弱な放射線を放出し、人体に悪影響を及ぼさないとされる鉱物として、最も好ましい鉱物は、モナズ石である。上記天然鉱物の粒径として、1mm以下に粉砕したものを用いることができる。最も好ましくは、平均粒径30ミクロン以下に粉砕されたものが、施工表面の美観とマイナスイオンの生成を減少させないうえで有益である。上記配合部数として、コンクリート材100重量部数に対し、50重量部数以下を配合することができる。最も好ましくは、30重量部数以下の方が、水槽表面の美観とマイナスイオンの生成のバランスが図れて有益である。
【0015】
本発明において、トルマリンとして、ショールトルマリン、リチウムトルマリン、ドラバイトトルマリン、ルベライトトルマリン、ピンクトルマリン、インデコライト、バライバトルマリン、ウォーターメロン等を使用することができる。上記トルマリンの粒径として、0.1ミクロンから1mmに粉砕したものを使用することができる。最も好ましくは平均粒径30ミクロン以下が混合するうえで有益である。上記配合部数として、コンクリート材100重量部数に対し、50重量部数以下を配合することができる。最も好ましくは、30重量部数以下の方が、水槽表面の美観、マイナスイオンと遠赤外線をより放出のバランスの生成が図れるうえで有益である。
【0016】
本発明において、遠赤外線セラミックとして、2〜50ミクロンの波長をもつ遠赤外線を放射率50%以上放射している遠赤外線セラミックを使用することができる。遠赤外線セラミックの成分として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄などを2種以上含む混合物を使用することができる。前記市販品として、商品名セラジット,OKトレーディング製があり、マイナスイオンを増幅し、遠赤外線を高放射するうえで有益である。上記の配合部数として、コンクリート材100重量部数に対し、50重量部数配合することができる。最も好ましくは、30重量部数以下が、水槽の美観、調湿性、マイナスイオンと遠赤外線をより放出するうえで有益である。
【0017】
本発明において、光触媒機能材料として、アナターゼ型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン、アパタイト被覆二酸化チタン、無機セラミック包含二酸化チタン等をいずれも使用することができる。アナターゼ型二酸化チタン及びブルッカイト型二酸化チタン粒径として、5〜200nmに粉砕されたものを使用することができる。最も好ましくは、6〜30nmの方が電子を励起するうえで有益である。アパタイト被覆二酸化チタンの粒径として、上記二酸化チタンをアパタイト、すなわちリン酸カルシウムで被覆したものを使用することができる。市販品として、例えば、商品名アパタイト被覆二酸化チタンNSP−001ナノウェーブ製を使用することができる。
【0018】
無機セラミック含包二酸化チタンとして、無機セラミックの成分が、シリカ、アルミナ、酸化クロム、酸化ジルコニウム、ジルコニア、酸化イットリウム等の1種の合成セラミック或いは2種以上含む合成セラミックであり、また上記成分を含む天然鉱物である。上記の粒径として、平均30ミクロン以下のものを使用することができる。市販品として、例えば、商品名ライオナイト ライオン製を使用することができる。前記配合部数として、コンクリート材100重量部数に対し、50重量部数以下配合することができる。最も好ましくは、30重量部数以下が、水槽表面の美観、マイナスイオンの生成を減少させないうえで有益である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンクリート材に、稀有元素類を含む天然鉱物粉体、或いは希有元素類を含む鉱物粉体と、トルマリン若しくは遠赤外線放射セラミックのいずれか一方を含む混合物、或いは希有元素類を含む鉱物粉体に光触媒機能材料を添加配合した混合物、或いは希有元素類を含む鉱物粉体と、トルマリン若しくは遠赤外線セラミックのいずれか一方を含む混合物に、さらに光触媒機能材料を混合したコンクリート組成物が、マイナスイオンを持続的に放出し、同時に遠赤外線を放射する健康的な快適空間と、消臭作用と抗菌作用が得られ、さらに光触媒作用で、紫外線のあたるところでは消臭作用と抗菌作用が増加するという多機能のコンクリート組成物として優れた効果を奏する。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
【0021】
実施例の配合処方として、表1及び表2に示した。遠赤外線セラミックとして、市販品のセラジットAL−F9を使用した。光触媒機能材料として、市販品の光触媒二酸化チタンPC−101 チタン工業製を使用した。表1及び表2の所定量を配合した各々の混合物を、10リットルの攪拌機で1時間攪拌して、実施例1,2,3,4,5,6のコンクリート組成物を得た。実施例の試料の作成方法として、50cm角、厚さ5cmの型枠に、各々の実施例のコンクリート組成物を流し込み、48時間常温で乾燥、養生して、実施例1から6のコンクリート板を作成した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

イオン測定
上記実施例1,2,3,4,5,6のイオン測定を行った。試料の大きさは、20cm角とした。イオン測定方法は、小イオン測定方法として、イオンテスターKST−900 神戸電波製を使用し、室温25℃、湿度60%の雰囲気で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の平均生成数/ccを測定した。総イオン測定方法は、空気イオンテスターIC−1000を使用し、同じ雰囲気で、マイナスイオンとプラスイオンを3分間の平均生成数/ccを測定した。遠赤外線測定は、FTIR測定機,JIR−E500を使用し、試料温度35℃の遠赤外線放射率を測定した。その結果を、表3に示した。
【0024】
【表3】

実施例のイオン測定の結果、実施例1〜6は、プラスイオンよりもマイナスイオンの方が、大量に多く生成したものとなった。一方、遠赤外線は、実施例2,3,5,6と同じく、高放射するものとなった。
【0025】
実施例で作成した試料を使用して、抗菌試験及び消臭試験、並びに水質浄化試験をして本発明をより明らかにする。
【0026】
消臭試験
試料の作成として、小型の水槽を作成した。内面の寸法として、横100cm、縦50cm、高さ30cmの厚み5cmの実施例1〜6の配合処方で、水槽を各々作成した。
消臭試験方法として、ガスクロマトグラフ法を用いた。試験方法として、所定濃度のアンモニア水或いはトリミチルアミン水を、実施例の水槽に、100リッター入れて1時間静置させた。環境条件として、(1)ブラックライト照射時、(2)証明無しの2方法で行った。その試料水をガスクロマト機で分析して、濃度を求めて、脱臭率を算出した。アンモニア水の初期濃度として、0.2mg/Lとした。その結果を示す表4では、(1)ブラックライト照射時、(2)照明無しの暗黒を示した。消臭試験から明らかなように、実施例1,2,3,4,5,6では、高能率でアンモニア及びトリメチルアミンを消臭していた。また、光触媒作用で、ディライト照射時では、さらに消臭力が増加していた。
【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

抗菌試験
試料として、[0013]で作成した同じ試料を切断して、直径9cm、厚み3mmの円盤状の試料を作成した。抗菌試験として、JIS−L1902定量試験法を準拠した。試験菌株として、MRSA(耐性黄色ぶどう球菌)を使用した。環境条件として、(1)ディライト照射時、(2)照射無しの暗黒の2方法で行なった。その結果を、表6では、(1)ディライト照射時。表7では、(2)照無しの暗黒を示した。
【0029】
抗菌試験結果から明らかなように、実施例1,2,3,4,5,6は、殺菌活性値及び静菌活性値とも高い抗菌性が得られた。さらに、光触媒作用で、ディライト照射時では抗菌性がさらに増加することが明らかとなった。
【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

水質浄化試験
試料として、消臭試験で用いた実施例1〜6の水槽に水道水を100リッター入れた。水道水の遊離塩素濃度を測定する方法として、オルトトリジン法による簡易遊離塩素測定キット(井内盛栄堂製)を用いて、10秒後の水道水中の遊離塩素濃度を測定した。その結果を表8に示した。id/dqに実施例の試料を浸漬し、5秒後に注入して測定した。その結果を表8に示した。
【0032】
【表8】

水道水中の遊離塩素濃度を測定した結果、実施例1〜6とも、10秒後という短時間で遊離塩素を分解することが明らかとなった。この反応は、大量にマイナスイオンが放出することによる遊離塩素のアルカリ還元による分解反応であることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクート材料に、希有元素類を含む天然鉱物粉体を混合させたマイナスイオンを持続的に放出し、抗菌作用及び消臭作用及び水質浄化作用のあることを特徴とする多機能性コンクリート組成物。
【請求項2】
コンクリート材料に、希有元素類を含む天然鉱物粉体と、トルマリン粉体若しくは赤外線セラミック粉体いずれか一方を含む混合させたマイナスイオンを持続的に放出すると同時に遠赤外線を放射し、抗菌作用及び消臭作用及び水質浄化作用のあることを特徴とする多機能性コンクリート組成物。
【請求項3】
コンクリート材料に、希有元素類を含む天然鉱物粉体を混合させた混合物に、さらに光触媒機能材料を混合させた抗菌作用及び消臭作用を増加させた多機能性コンクリート組成物。
【請求項4】
コンクリート材料に、希有元素類を含む天然鉱物粉体と、トルマリン、若しくは遠赤外線放射セラミックのいずれか一方を含む混合物に、さらに光触媒機能材料を混合させた抗菌作用及び消臭作用を増加させたことを特徴とする多機能性コンクリート組成物。

【公開番号】特開2007−126316(P2007−126316A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319075(P2005−319075)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000153410)株式会社日野樹脂 (26)
【Fターム(参考)】