説明

天ぷら衣ミックス、天ぷら衣バッター及び天ぷら

【課題】衣の吸油量を低減することができ、しかもサクミが大きく、衣のボリュームのある天ぷらの提供。
【解決手段】小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類を含む天ぷら衣ミックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷら衣ミックス、天ぷら衣バッター及び天ぷらに関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらはサクミが良好で、べたつかないことが強く望まれる食品であるため、従来よりサクサクした食感が得られ、しかも吸油量が少ない天ぷら衣ミックスの検討が種々なされている。
例えば、吸油量が少ない天ぷらを得るために、必須成分として小麦粉及び澱粉を含有する殻粉粒からなる天ぷら衣ミックス中の澱粉の配合比率を30〜95質量%とし、かつ膨張剤、脂質及び動植物蛋白から選ばれる添加剤を2種以上配合した天ぷら衣ミックスが既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記の如き従来天ぷら衣ミックスによっても、未だ吸油量低減に関しては十分満足できるものではなく、また、サクミが大きく、衣のボリュームのある天ぷらを得ることができなかったのが実状であった(試験例22参照)。
【特許文献1】特開平5−336912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯かる従来の実状に鑑みてなされたもので、衣の吸油量を低減することができ、しかもサクミが大きく、衣のボリュームのある天ぷらを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、種々研究を重ねた結果、少なくとも必須成分として、小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類を併用すれば、極めてよい結果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類を含有することを特徴とする天ぷら衣ミックスにより上記課題を解決したものである。
【0007】
また、本願発明は上記天ぷら衣ミックス100質量部及び水50〜150質量部を含有することを特徴とする天ぷら衣バッターにより上記課題を解決したものである。
【0008】
また、本願発明は、上記天ぷら衣ミックス又は上記天ぷら衣バッターを用いて製造された天ぷらにより上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸油量の少ない、しかもサクミが大きく、衣のボリュームのある天ぷらを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の天ぷら衣ミックスは、小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類の必須成分の他、膨張剤、増粘剤、乳化剤、油脂、食塩、調味料等の任意成分を適宜配合し、均一に混合することにより調製することができる。
【0011】
本発明で使用される小麦粉は、従来の天ぷら衣ミックスに用いられている薄力粉、中力粉、強力粉等を用いることができ、一般的な天ぷら粉として用いられている薄力粉が好ましい。この小麦粉は、ミックス全量中に、10〜30質量%配合することが好ましい。
【0012】
本発明で使用される澱粉としては、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、米澱粉等が挙げられるが、特に小麦粉澱粉が好ましい。
この澱粉は、ミックス全量中に、37〜92質量%、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは50〜75質量%、特に好ましくは65〜75質量%配合するのがよい結果を得られる。澱粉の配合量が、37質量%未満であると、十分な吸油低減効果が得られにくく、他方92質量%を超えると、天ぷらとして好ましくないぼさぼさとした食感になり易い。
【0013】
本発明で使用される卵白粉としては、卵白粉を含む全卵粉をも使用し得るが、卵白粉そのものを使用するのが望ましい。
この卵白粉は、ミックス全量中に、0.2〜12質量%、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.2〜3質量%配合するのが良い結果が得られる。卵白粉の配合量が、0.2質量%未満であると、十分な吸油低減効果が得られにくく、他方12質量%を超えると、天ぷらとして好ましくないぱりぱりとしすぎた食感になり易い。
【0014】
本願発明で使用される糖類としては、単糖類、少糖類、多糖類、糖アルコール類、少多糖類の加水分解物、これらの異性化糖等を挙げることができる。
ここに、単糖類としては、例えばリボース、キシロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フラクトース等が挙げられる。また、少糖類としては、例えばショ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、ラフノース等が挙げられる。また、多糖類としては、例えばグリコーゲン、セルロース、イヌリン等が挙げられる。また、糖アルコール類としては、例えばマルチトール、キシリトール等が挙げられる。これらの糖類のうち、少糖類が好適に使用され、就中、トレハロースを用いるのが、サクサクとした食感を得る上で特に好ましい。
尚、これらの糖類は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
この糖類は、ミックス全量中に、0.2〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%配合するのが良い結果が得られる。糖類の配合量が、0.2質量%未満であると、天ぷらとして好ましくない衣が薄すぎるものになり易く、他方20質量%を超えると、天ぷらとして好ましくない衣が厚過ぎるものになり易く、また、十分な吸油低減効果が得られにくくなる。
【0015】
膨張剤としては、通常食品に使用されるものであればよく、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、これら単独で又は2種以上を混合して用いることができる。更に、これらに酸性剤、例えば焼ミョウバン、酒石酸及びその塩、リン酸及びその塩、グルコノデルタラクトン等を1種又は2種以上を添加して用いることもできる。
【0016】
増粘剤としては、通常食品に使用されるものであればよく、例えば、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
油脂としては、通常食品に使用されるものであればよく、例えば、菜種油、大豆油、ひまわり油、サフラワー油、綿実油、オリーブ油、カカオ脂、パーム油、コーン油及び小麦胚芽油等の植物性油脂や、魚油、牛脂、豚脂、バター、ショートニング、マーガリン等の動物性油脂及びこれらの硬化性油脂が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
乳化剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
本発明の天ぷら衣バッターは、上記天ぷら衣ミックス100質量部に水50〜150質量部を加え、均一に攪拌して調製される。本発明の天ぷらは、具材に上記で得られた天ぷら衣バッターをつけ、油で揚げることによって得られる。
【0020】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
実施例1
薄力粉29質量部、小麦澱粉65質量部、卵白粉1質量部、トレハロース2.5質量部、油脂0.5質量部、ベーキングパウダー2質量部で調製した天ぷら衣ミックス100質量部に、水100質量部を加えて調製したバッターを具材につけ、175℃のサラダ油で3分間油ちょうして、海老天ぷらを得た。
【0022】
実施例2
薄力粉19質量部、小麦澱粉75質量部、卵白粉1質量部、トレハロース2.5質量部、油脂0.5質量部、ベーキングパウダー2質量部で調製した天ぷら衣ミックス100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、海老天ぷらを得た。
【0023】
試験例
下記の表1〜3に示す配合で調製した天ぷら衣ミックス100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、海老天ぷらを得た。
【0024】
得られた各海老天ぷらの衣をはがし、衣質量(g)を測定した。その後、衣に含まれる油を抽出して、吸油量(g)を測定すると共に、吸油率(%)を、以下の式で求めた。その結果は下記の表1〜3に示したとおりであった。同様に実施例1で得られた海老天ぷらの衣の衣質量(g)、吸油量(g)及び吸油率(%)についての測定の結果を併せて表1に示した。
吸油率(%)=吸油量(g)÷衣質量(g)×100
【0025】
また、得られた各海老天ぷらの衣のサクミ及び衣のボリュームを、10名のパネラーにより、以下の評価基準で評価した。その結果は下記表1〜3に示したとおりであった。同様に実施例1及び2で得られた海老天ぷらの衣のサクミ及び衣のボリュームについての評価の結果を併せて表1に示した。
尚、表中、点数は、10名のパネラーの平均値である。
【0026】
◎サクミの評価基準
1点 サクミ(クリスピーさ)を感じない
2点 サクミ(クリスピーさ)を少し感じる
3点 サクミを感じる
4点 ややサクミを強く感じる
5点 非常にサクミが強い
【0027】
◎衣のボリュームの評価基準
1点 衣が薄すぎ、もしくは厚すぎ
2点 衣が少し薄い薄すぎ、もしくは少し厚い
3点 衣がやや薄い、もしくはやや厚い
4点 衣が適度なボリュームである
5点 衣が非常に適度なボリュームである
【0028】
表1〜3から明らかなように、小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類を含有する天ぷらミックス衣を用いれば、より良好なサクミと衣のボリューム感があり、しかも少ない吸油率の天ぷらが得られるが、澱粉と卵白粉と糖類の何れを欠いてもサクミと衣のボリュームがあり、しかも吸油率の少ない天ぷらを得ることはできない。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、澱粉、卵白粉及び糖類を含有することを特徴とする天ぷら衣ミックス。
【請求項2】
ミックス全量中に、澱粉37〜92質量%、卵白粉0.2〜12質量%、糖類0.2〜20質量%が含有されていることを特徴とする請求項1記載の天ぷら衣ミックス。
【請求項3】
請求項2記載の天ぷら衣ミックス100質量部及び水50〜150質量部を含有することを特徴とする天ぷら衣バッター。
【請求項4】
請求項2記載の天ぷら衣ミックス又は請求項3記載の天ぷら衣バッターを用いて製造された天ぷら。

【公開番号】特開2008−295360(P2008−295360A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144543(P2007−144543)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】