説明

太陽光発電システム

【課題】個々の太陽電池モジュールの最大出力動作電圧が異なる場合における電力取り出し効率を向上させ、かつ計測器等を太陽電池モジュール毎に設置する必要がない太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】複数の太陽電池モジュール11と、第一および第二のDCDCコンバータ31、32と、共通電源線16と主電源線14と副電源線15と、複数のダイオード素子と、複数のスイッチング素子と、太陽電池モジュールの電圧電流特性を測定するための電子負荷装置33と、制御装置34とを備える太陽光発電システムである。制御装置により、複数の太陽電池モジュールを全て並列接続したときのアレイ最大出力動作電圧を検出し、副電源線に接続された電子負荷装置でアレイ最大出力動作電圧近傍における電力微分値を順次取得し、電力微分値に基づいて、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールから取り出される電力を最大にするための太陽光発電システムに関する。特に、環境変化や個々の特性ばらつきによって、個々の太陽電池モジュールの最大出力動作電圧が異なる場合での電力取り出し効率向上に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、一般的に、太陽光エネルギーを電力に変換する多数の太陽電池モジュールと、モジュールが出力する電力を回収し、商用電源あるいは蓄電池に供給するためのパワーコンディショナ(PCS)とで構成される。
【0003】
図15に従来の太陽光発電システムの構成の一例を示す。図15のように、太陽光発電システムは、太陽電池アレイ200とパワーコンディショナ203を備える。太陽電池アレイ200は、複数の太陽電池モジュール201が、並列に接続されて構成されている。太陽電池モジュール201の出力電圧を高くするために、太陽電池モジュール201は直列に複数個接続されている場合も多い。また、太陽電池モジュール201の出力部には、逆方向電流を防止するためのダイオード202が接続されている。パワーコンディショナ203は主に、DCDCコンバータ204、インバータ205と、それらを制御するための制御装置206から構成される。
【0004】
DCDCコンバータ204は、コイル207、ダイオード208、キャパシタ209、スイッチング素子210から成る昇圧チョッパ回路で構成されている。DCDCコンバータ204で昇圧された直流電流はインバータ205によって交流電流に変換され、商用の系統電源211へと供給される。
【0005】
制御装置206は、電圧計212が計測した電圧値と電流計213が計測した電流値の積から、太陽電池アレイ200より取り出される電力値を推定し、その電力値が最大になるようにスイッチング素子210をPWM制御することによって、DCDCコンバータに最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を行わせている。
【0006】
太陽電池モジュールの表面に、おおよそ均一な太陽光が照射されている場合、太陽電池モジュールの電力−電圧特性(P−V特性)は、一般的に図16に示すような傾向を示す。MPPT制御の代表的な方法としては山登り法が知られており、これは、DCDCコンバータによって、太陽電池アレイより取り出される電力が大きくなる方向に逐次太陽電池モジュールの電圧を変化させていくことで、電力ピークの動作点を追跡する手法である。太陽電池アレイから最大の電力が得られるときの太陽電池アレイの電圧を、アレイの最大出力動作電圧と呼ぶ。また、個々の太陽電池モジュールも図16と同様の特性があり、太陽電池モジュールから最大の電力が得られるときの太陽電池モジュールの電圧も、モジュールの最大出力動作電圧と呼ぶことができる。
【0007】
ところで、太陽電池モジュールの最大出力動作電圧は、様々な要因によってモジュール毎に異なる場合がある。その原因の例としては、太陽電池モジュールへの日射量(太陽光の照射強度)、モジュール温度、あるいは、モジュール個々の電圧電流特性のばらつきがある。太陽電池アレイを構成する太陽電池モジュール間で最大出力動作電圧が大きく異なる場合は、1つのDCDCコンバータでそれら異なる最大出力動作電圧を同時に追従することはできないので、太陽電池モジュールの発電能力を完全には発揮することができない。
【0008】
そこで、複数のDCDCコンバータで複数の最大出力動作電圧を追従する太陽光発電システムが、知られている(特許文献1参照)。図17に、該太陽光発電システムを示す。図17の太陽光発電システムは、複数の太陽電池モジュール221、DCDCコンバータ222、223、インバータ224に加え、複数の電流計225と複数のスイッチング素子226、制御回路227で構成されている。複数の電流計225は、各太陽電池モジュールの出力に接続されており、制御回路227は、各出力の電流値を計測することができる。これらの電流値より、制御回路227は、各モジュールの最大出力動作電圧を推測し、スイッチング素子226を切り替えることで最大出力動作電圧が近い2つのグループに分け、その2つのグループに対してDCDCコンバータがMPPT制御を行うことで、動作電圧が最大出力動作電圧からずれることによる損失をより少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−267106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来は、特許文献1のように、太陽電池モジュールが出力する電流の絶対量と最大出力動作電圧に相関があることを利用して、グループ分けをしていた。図18に特性が異なる2つのモジュールA、Bの電力−電圧特性(P−V特性とも呼ぶ)の例を示す。図18(a)は、太陽電池モジュールへの日射量(太陽光の照射強度)が異なるモジュールA、BのP−V特性の例である。この場合、太陽電池モジュールが出力する電流の絶対量と最大出力動作電圧には、ある程度の相関があるので、例えば、特許文献1のように、太陽電池モジュール毎に電流計を設け、その電流値から最大出力動作電圧を推定し、最大出力動作電圧の値が近い太陽電池モジュール毎にグループ分けをし、選択スイッチを使用してグループの太陽電池モジュールを並列接続することが可能である。
【0011】
しかしながら、モジュール温度、あるいは、モジュール電圧電流特性のばらつきによって、最大出力動作電圧が異なる場合には、図18(b)のように、太陽電池モジュールが出力する電流の絶対量と最大出力動作電圧に、明確な相関が表れないことがある。この場合は、太陽電池モジュール毎に設けられた電流計の電流値だけで、各太陽電池モジュールの最大出力動作電圧を推定することが難しくなるという問題がある。
【0012】
一方で、太陽電池モジュールに多くの回路素子を設けることは、信頼性の低下やコストアップにつながるため、太陽電池モジュール毎に設ける回路素子は、少数でかつ単純であることが望ましい。よって、各太陽電池モジュールの最大出力動作電圧を算出するための計測器や、並列接続のためのスイッチング素子はできるだけ少ない個数が設置されることが好ましい。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、環境変化や個々の特性ばらつきによって、個々の太陽電池モジュールの最大出力動作電圧が異なる場合での電力取り出し効率を向上させることを目的とするものである。また、本発明は、計測器等の回路素子を太陽電池モジュール毎に設置する必要がなく素子の個数を削減させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電源線に取り付けられた1個の電子負荷装置によって電流値、電圧値を測定することによって、太陽電池モジュール毎への電流センサを設置する必要が無く、かつ、スイッチング素子の必要な個数を1モジュールあたり1素子とすることができる。また、本発明は、電子負荷装置が各太陽電池モジュールの電圧電流特性の微分値を記録することによって、図18(b)のように、太陽電池モジュールが出力する電流の絶対量と最大出力動作電圧に、明確な相関が表れない場合でも、最大出力動作電圧の推定を可能にするものである。
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有するものである。
【0016】
本発明は、太陽光発電システムであって、複数の太陽電池モジュールと、第一および第二のDCDCコンバータと、前記太陽電池モジュールが発生する電力を前記第一または第二のDCDCコンバータに送るための共通電源線と主電源線と副電源線と、複数のダイオード素子と、複数のスイッチング素子と、太陽電池モジュールの電圧電流特性を測定するための電子負荷装置と、前記第一および第二のDCDCコンバータと前記スイッチング素子と前記電子負荷装置とを制御する制御装置とを具備することを特徴とする。本発明の前記制御装置は、前記太陽電池モジュールのアレイ最大出力動作電圧近傍における電力微分値を順次取得し、前記電力微分値に基づいて、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定することを特徴とする。より具体的には、本発明の前記制御装置は、次の3段階の制御を行うことを特徴とする。第一段階として、前記第一のDCDCコンバータに最大電力点探索をさせることにより、前記複数の太陽電池モジュールを全て並列接続したときのアレイ最大出力動作電圧を検出する。第二段階として、前記第一のDCDCコンバータに前記アレイ最大出力動作電圧よりも高い電圧を主電源線に発生させつつ、前記スイッチング素子の1つずつを順次ONにさせることによって、前記副電源線に接続された前記電子負荷装置で、前記太陽電池モジュールの前記アレイ最大出力動作電圧近傍における電力微分値を順次取得する。第三段階として、前記電力微分値に基づいて、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定する。第1段階は、後述するフローチャートのS102(アレイ最大出力動作電圧探索)に対応し、第2段階は、S103(電力微分値取得)に対応し、第3段階はS104(グループ分け)及びS105(最大電力点追従)に対応する。本発明は、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループと決定された前記太陽電池モジュールに接続された前記スイッチング素子をオンにすることによって、前記第一のDCDCコンバータは、高い最大出力動作電圧でDCDC変換動作を行い、前記第二のDCDCコンバータは、低い最大出力動作電圧でDCDC変換動作を行うことを特徴とする。具体的には、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループは、アレイ最大出力動作電圧VPMAより高い電圧が、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループはアレイ最大出力動作電圧VPMAより低い電圧が、動作点電圧となる。
【0017】
本発明の太陽光発電システムは、前記太陽電池モジュールの出力端子と前記主電源線は、前記ダイオード素子を介して接続され、さらに、該出力端子と前記副電源線は、前記スイッチング素子を介して接続され、前記主電源線は、前記第一のDCDCコンバータに接続し、前記副電源線は、前記第二のDCDCコンバータと前記電子負荷装置とに接続し、前記共通電源線は、前記太陽電池モジュールのもう一方の出力端子、第一および第二のDCDCコンバータに接続されていることが、好ましい。
【0018】
本発明の太陽光発電システムにおいて、前記電力微分値の正負の極性によって、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定することが好ましい。また、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記複数のスイッチング素子を駆動するための複数のスイッチ制御回路を具備し、前記スイッチ制御回路と前記制御装置間の通信に無線通信を用いることが好ましい。また、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記太陽電池モジュールの出力端子と前記副電源線は、前記スイッチング素子および前記ダイオード素子の直列接続を介して接続されていることが好ましい。また、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記電子負荷装置は、前記制御装置によって電圧設定が可能なシャントレギュレータ定電圧回路を用いて構成することが好ましい。また、本発明の太陽光発電システムにおいて、前記第一および第二のDCDCコンバータは、前記制御装置によって通流率の制御が可能な昇圧チョッパ回路で構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、電子負荷装置が各太陽電池モジュールの電力電圧特性の微分値を測定することによって、太陽電池モジュールが出力する電流の絶対量と最大出力動作電圧に、明確な相関が表れない場合でも、各モジュールの最大出力動作電圧が推定でき、それに従って最大出力動作電圧が近い2つのグループに分けることができる。また、本発明は、決定された2つのグループに対してDCDCコンバータがMPPT制御を行うことで、動作電圧が最大出力動作電圧からずれることによる損失をより少なくすることができる。
【0020】
さらに、本発明は、電源線に取り付けられた1個の電子負荷装置によって電流値、電圧値を測定することによって、太陽電池モジュール毎への電流センサを設置する必要が無く、かつ、スイッチング素子の必要な個数を1モジュールあたり1素子としているため、コストダウンやシステムの信頼性向上を図ることができる。
【0021】
本発明は、太陽電池モジュールに部分的な日陰が発生した場合、太陽電池モジュール間で特性のばらつきがある場合、また、温度の違いがある場合に発電効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の太陽光発電システムの構成図である。
【図2】本発明の太陽光発電システムにおけるDCDCコンバータおよびそれら周辺の回路構成を示した図である。
【図3】本発明の太陽光発電システムにおける電子負荷装置およびその周辺の回路構成を示した図である。
【図4】本発明の太陽光発電システムにおけるスイッチ制御信号発生回路のブロック図である。
【図5】本発明の太陽光発電システムにおけるスイッチ制御回路とその周辺の回路構成を示した図である。
【図6】本発明の太陽光発電システムにおける制御装置に搭載されるメインプログラムのフローチャートである。
【図7】本発明の太陽光発電システムにおけるアレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102のフローチャートである。
【図8】本発明の太陽光発電システムにおける電力計測のサブルーチンのフローチャートである。
【図9】本発明の太陽光発電システムにおけるアレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102によるDCDCコンバータ31の最大電力点追従動作を表した図である。
【図10】本発明の太陽光発電システムにおける電力微分値取得サブルーチンS103のフローチャートである。
【図11】本発明の太陽光発電システムにおけるグループ分けサブルーチンS104のフローチャートである。
【図12】本発明の太陽光発電システムにおけるモジュールの電力−電圧特性と、アレイ最大出力動作電圧VPMA近傍におけるモジュールの電力微分値P’[k]の極性との関係を示した図である。
【図13】本発明の太陽光発電システムにおける最大電力点追従サブルーチンS105のフローチャートである。
【図14】本発明の太陽光発電システムにおけるメインプログラムの制御動作により発生する主電源線と副電源線の電圧、スイッチ制御信号S[1]〜S[n]の状態のタイミングチャートである。
【図15】従来の太陽光発電システム構成の一例を示した図である。
【図16】一般的な太陽電池モジュールの電力−電圧特性を示した図である。
【図17】複数のDCDCコンバータで複数の最大出力動作電圧を追従する従来の太陽光発電システムの構成である。
【図18】特性が異なる2つのモジュールA、BのP−V特性の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0024】
(実施例)
本発明の実施例を図1〜14を参照して説明する。図1に本実施例の太陽光発電システムの構成図を示す。本実施例の太陽光発電システムは、太陽電池モジュール11と、該太陽電池モジュールに付属するスイッチ回路12、パワーコンディショナ13によって構成される。太陽電池モジュール11とスイッチ回路12は1対1で接続され、スイッチ回路12は、主電源線14、副電源線15、共通電源線16の3本の電源線によって並列に接続されている。さらに、主電源線14、副電源線15、共通電源線16は、パワーコンディショナ13とも接続している。図1では簡単のために3個のモジュールと3個のスイッチ回路だけを記載しているが、実際には、必要な発電量に応じて並列数を増やしてよい。太陽電池モジュール11の正極から出力される電流は、主電源線14および副電源線15を通してパワーコンディショナ13に供給され、帰還する電流は共通電源線16を通して太陽電池モジュール11の負極に流入する。以下、電圧についての記載は、ことわりがない限り、共通電源線16の電位を基準として説明する。
【0025】
スイッチ回路12は、太陽電池モジュールの11の正極から出力される電流を、主電源線14あるいは副電源線15のいずれかに振り分ける働きをする。スイッチ回路12は、ダイオード素子21、22、スイッチング素子23、スイッチ制御回路24で構成されている。ダイオード素子21は、太陽電池モジュール11の正極と主電源線14間を接続し、ダイオード素子22とスイッチング素子23で構成される直列回路は、太陽電池モジュール11の正極と副電源線15の間を接続している。複数のスイッチング素子23は半導体トランジスタを用いるとよい。スイッチ制御回路24はスイッチング素子23の開閉を制御する。以上のようなスイッチ回路12の構成により、太陽電池モジュール11の正極から出力される電流は、スイッチング素子23がOFFの時には、主電源線14に、スイッチング素子23がONの時には副電源線15に流れる。また、副電源線15の電位を太陽電池モジュール11の正極の電位より常時低くして扱う場合には、ダイオード素子22を省略して、太陽電池モジュール11の正極と副電源線15の間はスイッチング素子23のみで接続しても同じ制御が可能である。
【0026】
パワーコンディショナ13は、DCDCコンバータ31、32および電子負荷装置33、制御装置34、スイッチ制御信号発生回路35、インバータ36で構成されている。DCDCコンバータ31は主電源線14から入力される直流電流を昇圧して出力し、DCDCコンバータ32は副電源線15から入力される直流電流を昇圧して出力する。DCコンバータ31および32で昇圧された直流電流はインバータ36によって交流電流に変換され、商用の系統電源17へと供給される。
【0027】
DCDCコンバータ31、32および電子負荷装置33は、制御装置34によって制御される。
【0028】
図2に、DCDCコンバータ31、32およびそれら周辺の回路構成を示す。DCDCコンバータ31および32は、制御装置34によって通流率の制御が可能な昇圧チョッパ回路で構成されている。DCDCコンバータ31、32は、コイル41,42、ダイオード素子43、44、スイッチング素子45、46を使った昇圧回路で構成されている。制御装置34から送信される通流率α1、α2のデータに応じて、PWM回路47、48は、通流率に応じたPWM波形をスイッチング素子45、46に供給し、昇圧回路の通流率は、α1およびα2に制御される。DCDCコンバータ31、32の出力部には出力部の直流電圧を平滑化するための平滑コンデンサ49と、電流計50、電圧計51が設置されている。電流計50で計測された直流電流値Ioutと、電圧計51で計測された直流電圧値Voutは、ADコンバータ52、53で数値化されて、制御装置34に送信され、それらの値は出力電力の算出や、通流率α1、α2へフィードバックとして利用される。さらに、DCDCコンバータ31の入力部には、電圧計54が設置されている。電圧計54で計測された直流電圧値V1Mesは、ADコンバータ55で数値化され、制御装置34に送信され、その値は主電源線14の電圧計測に利用される。
【0029】
図3に電子負荷装置33およびその周辺の回路構成を示す。電子負荷装置33は、前記制御装置によって電圧設定が可能なシャントレギュレータ定電圧回路を用いて構成されている。図3のように、電子負荷装置33は、電界効果トランジスタ61、シャント抵抗62、分圧抵抗器63、64、OPアンプ65で構成される。制御装置34から送設される電圧設定値V2ALは、DAコンバータ66でアナログ電圧に変換される。電界効果トランジスタ(FET)61、分圧抵抗器63、64、OPアンプ65とは、定電圧回路を形成しており、電圧設定値V2ALに比例した電圧を副電源線15に発生させている。また、その際に副電源線15から共通電源線16に流れる電流に比例した電圧がシャント抵抗62の両端に発生し、その電圧をADコンバータ67で数値化して測定電流値I2ALとして制御装置34に送信する。
【0030】
図4にスイッチ制御信号発生回路35のブロック図を示す。制御装置34から送信されるスイッチ状態信号S[1]〜S[n]はエンコーダ72でコード化され、さらに無線送信機73で変調された後、アンテナ74を通じて各スイッチ制御回路24に無線送信される。
【0031】
図5にスイッチ制御回路24とその周辺の回路構成を示す。スイッチ制御回路24は、アンテナ75を通じて受信した、スイッチ制御信号発生回路35からの無線信号を復調する受信機76、受信信号から有効信号のみを解読するエンコーダ77、エンコーダ77の出力信号に基づいてスイッチング素子23のON/OFF制御をするドライブ回路78から構成される。さらに、スイッチ制御回路24には、絶縁型のDCDCコンバータ79を内蔵しており、太陽電池モジュール11が発電する電力のごく一部を、受信機76、エンコーダ77、ドライブ回路78を駆動するための電力に変換して供給している。なお、スイッチ状態信号S[1]〜S[n]とスイッチング素子23のON/OFFの関係は、S[1]〜S[n]が1のときON、スイッチ状態S[1]〜S[n]が0のときにOFFとなる関係になっている。
【0032】
図6に、制御装置34に搭載されるメインプログラムのフローチャートを示す。プログラム起動時には初期設定S101が行われ、DCDCコンバータ31、32の通流率α1、α2を0%に、全てのスイッチ回路12のスイッチング素子23をOFFにする。
【0033】
初期設定S101後、アレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102、電力微分値取得サブルーチンS103、グループ分けサブルーチンS104、最大電力点追従サブルーチンS105の4つのサブルーチンが繰り返し行われる。なお、複数の太陽モジュールが並列に接続されて構成されている太陽電池アレイの最大出力動作電圧をアレイ最大出力動作電圧VPMAと呼ぶ。
【0034】
図7にアレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102のフローチャートを示す。S111で図8に示した電力計測のサブルーチンを実行する。電力計測のサブルーチンでは、P1、P2、V2、I2のグローバル変数を使用し、これらは、呼び出しプログラムからも参照できる。S121では、変数P2の値を変数P1に移動させ、S122では、DCDCコンバータ出力部の電圧計51の電圧計測値VoutをV2に、電流計50の電流計測値IoutをI2に代入し、S123では、変数V2と変数I2を乗算した結果をP2に代入する。ゆえに、リターン時にはP1は1回前に計測した電力値、P2は今回計測した電力値、V2には今回計測した電圧値、I2には今回計測した電流値が代入される。
【0035】
図7において電力計測S111終了後、S112で通流率α1を増加させ、S113で再度電力計測を行う。S114でP1とP2を比較し、P2の方がP1より大きかった場合、S112に戻って、さらに通流率α1を増加させることを繰り返す。P1の方がP2より大きかった場合、S115で通流率α1を減少させ、S116で再度電力計測を行う。SS17でP1とP2を比較し、P2の方がP1より大きかった場合、S115に戻って、さらに通流率α1を減少させることを繰り返す。
【0036】
以上に説明したアレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102によるDCDCコンバータ31の最大電力点動作を図9に示す。縦軸が電力P、横軸が電圧V、カーブは太陽電池モジュールの電力−電圧(P−V)特性を表している。初期状態では動作点はQstの位置にあり、電力は0、電圧は開放電圧VOCである。S112〜S114による通流率増加によって、動作点は矢印の方向に移動し、やがて最大電力点QPMAに到達する。このとき主電源線14の電圧はアレイの最大出力電圧VPMAとなっているので、S118で電圧V1Mesを計測することで電圧VPMAを取得し、その値をS119にて電圧V1Mesを戻り値VPMAとしている。
【0037】
図10に、電力微分値取得サブルーチンS103のフローチャートを示す。サブルーチンS103では、カウンタ変数kを使って、S131からS143のフローがk回繰り返される。ここでnはスイッチ回路12の個数であり、図1ではn=3である。S131ではスイッチ制御信号S[k]を1にすることで、k番目のスイッチ回路12のスイッチング素子23をONにする。S132では電子負荷装置の動作電圧V2ALをVPMAに設定する。すると、k番目の太陽電池モジュール11は副電源線15と接続状態となり、さらに、副電源線15の電圧VPMAは主電源線14の電圧VPMA+ΔV1より低くなるため、ダイオード素子21、22の整流作用によって、太陽電池モジュール11の正極から出力される電流は全て副電源線15および電子負荷装置33に流れ、その電流の値は電子負荷装置33内のシャント抵抗62の電圧降下より電流値I2ALとして測定することができる。
【0038】
また、k番目のスイッチ回路12のスイッチング素子23をONにすることによって、主電源線14およびDCDCコンバータ31に流れる電流量が変化するため、通流率α1を調節する必要がある。S133〜S137では、電圧計54の電圧を監視しながら、電流量変化後の主電源線14の電圧をVPMA+ΔV1になるように通流率α1を調整する。
【0039】
S139では電流値I2ALを測定し、変数IMes1[k]に代入する。S140では電子負荷装置33の電圧V2ALをアレイ最大出力動作電圧VPMAよりわずかに低い電圧VPMA−ΔV2に設定し、S141では、電子負荷装置33では再び電流I2ALを測定し、変数IMes2[k]に代入する。S142ではスイッチ制御信号S[k]をLowにし、k番目のスイッチ回路12のスイッチング素子23をOFFにする。
【0040】
S143において、アレイ最大出力動作電圧VPMA近傍における電力の微分値P’[k]を計算する。P’[k]は次式により計算される。
【0041】
P’[k]
={IMes1[k]×VPMA−IMes2[k]×(VPMA−ΔV2)}/ΔV
【0042】
以上に説明した電力微分値取得サブルーチンS103の動作によって、各太陽電池モジュール11に対して、アレイ最大出力動作電圧VPMA近傍における電力微分値P’[k]を取得することができる。
【0043】
図11に、グループ分けサブルーチンS104のフローチャートを示す。S104においてもサブルーチンS103と同様に、カウンタ変数kを使ってS153〜S155をn回繰り返す。S153では求められた微分値P’[k]の極性によって分岐する。P’[k]が負の場合は、S154で、スイッチ制御信号S[k]を1にし、k番目のスイッチ回路12のスイッチング素子23をONにする。そうでない場合は、S155で、スイッチ制御信号S[k]を0にし、k番目のスイッチ回路12のスイッチング素子23をOFFにする。以上の動作は、S156、S157に記載の繰り返しループによって全てのスイッチ制御信号S[k]に対して行なわれる。
【0044】
図12に、太陽電池モジュールの電力−電圧(P−V)特性と、アレイ最大出力動作電圧VPMA近傍における太陽電池モジュールの電力微分値P’[k]の極性との関係を示す。図12(a)は、P’[k]の値が負の場合のP−V特性を示している。この場合、太陽電池モジュールの最大電力点QPMは、アレイ最大出力動作電圧VPMAのラインより左側にある。つまり、太陽電池モジュールの最大出力動作電圧VPMは、アレイ最大出力動作電圧VPMAより低い。一方、図12(b)は、P’[k]の値が正の場合のP−V特性を示している。この場合、太陽電池モジュールの最大電力点QPMは、アレイ最大出力動作電圧VPMAよりも右側にある。つまり、太陽電池モジュールの最大出力動作電圧VPMは、アレイ最大出力動作電圧VPMAより高い。
【0045】
したがって、図11に示したグループ分けサブルーチンS104では、アレイ最大出力動作電圧VPMA近傍における電力微分値P’[k]が負であるか否かによって、k番目の太陽電池モジュールの最大出力動作電圧VPMがVPMAより低いか否かを判別し、スイッチ制御信号S[k]の0/1論理値によってのグループ分けを行っている。
【0046】
図13に、最大電力点追従サブルーチンS105のフローチャートを示す。S161でDCDCコンバータ32内のトランジスタ46の通流率α2を100%とする。あるいは100%に近い値でも良い。すると、副電源線15の電圧は0V近くまで低下するため、S[k]=1にグループ分けされた太陽電池モジュール11の出力電流は、ダイオード22およびスイッチング素子23を通して補助電源線15に流れることになる。一方、S[k]=0にグループ分けされた太陽電池モジュール11の出力電流は、スイッチング素子23がOFFであるので、主電源線14に流れることになる。この状態で、S[k]=0にグループ分けされた太陽電池モジュール11の出力電流はDCDCコンバータ31へ、S[k]=1にグループ分けされた太陽電池モジュール11の出力電流はDCDCコンバータ32へ流れるようになった。
【0047】
続いて、DCDCコンバータ31および32がそれぞれのS[k]=0、1のグループに対して最大電力点探索を行う。S162およびS163〜S168では、アレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102と同様に、α1を調整してDCDCコンバータ31の最大電力点を探索する。169〜S174では、アレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102と同様に、α2を調整してDCDCコンバータ32の最大電力点を探索する。その後、S163〜S168によるDCDCコンバータ31の最大電力点探索と、169〜S174によるDCDCコンバータ32の最大電力点探索を繰り返す。
【0048】
上記のS163〜S174のループを繰り返す状態によって、DCDCコンバータ31によるVPMが高いグループの太陽電池モジュールに対する最大電力点追従、及びDCDCコンバータ32によるVPMが低いグループの太陽電池モジュールに対する最大電力点追従が実現できている。これによって、アレイ全体で1つの電圧VMPAで駆動する場合よりも、より個別の太陽電池モジュールの最大出力動作電圧VMPに近い電圧で駆動できるようになるため、効率を向上させることができる。
【0049】
時間が経過すると、日照、気温などの環境が変化するため、グループ分けを見直す必要がある。そこで、一定時間経過後にS175の分岐によってS163〜S174のループから脱出し、終了する。
【0050】
その後は、メインプログラムのループにより、図7に示したアレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102に戻り、以降、繰り返しとなる。
【0051】
図14に、メインプログラムの制御動作により発生する主電源線14と副電源線15の電圧、スイッチ制御信号S[1]〜S[n]の状態のタイミングチャートを示す。アレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102において、DCDCコンバータ31がアレイ全体の最大電力点探索を行うため、主電源線14の電位VAはVOCを開始点として徐々に低下し、アレイ最大出力動作電圧VPMAに到達する。電力微分値取得サブルーチンS103において、最初に主電源線14の電位VAは電圧ΔV1だけ増加される。スイッチ制御信号S[1]〜S[n]はパルス状に順次1になり、その間に、副電源線15の電位VBは電圧VPMAと、VPMA−ΔVとの間を往復し、タイミングt11、t12、t21、t22…tn1、tn2で電流計測が行われる。グループ分けサブルーチンS104ではグループ分けが行われ、図14では、例として、S[1]とS[n]が1になる。最大電力点追従サブルーチンS105では、高い最大出力動作電圧VMPを持つグループの太陽電池モジュール11が主電源線14に接続し、低い最大出力動作電圧VMPを持つグループの太陽電池モジュール11が副電源線15に接続し、それぞれDCDCコンバータ31、32によって最大電力点追従が行われるため、主電源線14の電圧はVPMAより高く、副電源線15の電圧はVPMAより低い電圧が動作点電圧となる。一定時間経過後、アレイ最大出力動作電圧VPMA探索サブルーチンS102に戻り、以降繰り返される。
【0052】
なお、上記実施例で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の太陽光発電システムは、高発電効率で高信頼性かつ小型化された太陽発電システムとして有用である。
【符号の説明】
【0054】
11、201、221 太陽電池モジュール
12 スイッチ回路
13、203 パワーコンディショナ
14 主電源線
15 副電源線
16 共通電源線
17、211 商用の系統電源
21、22、43、44、202、208 ダイオード素子
23、45、46、210、226 スイッチング素子
24 スイッチ制御回路
31、32、79、204、222、223、 DCDCコンバータ
33 電子負荷装置
34、206、227 制御装置
35 スイッチ制御信号発生回路
36、205、224 インバータ
47、48 PWM回路
49 平滑コンデンサ
50、213、225 電流計
51、54、212 電圧計
62 シャント抵抗
63、64 分圧抵抗器
65 OPアンプ
72、77 エンコーダ
78 ドライブ回路
200 太陽電池アレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池モジュールと、第一および第二のDCDCコンバータと、
前記太陽電池モジュールが発生する電力を前記第一または第二のDCDCコンバータに送るための共通電源線と主電源線と副電源線と、
複数のダイオード素子と、複数のスイッチング素子と、太陽電池モジュールの電圧電流特性を測定するための電子負荷装置と、
前記第一および第二のDCDCコンバータと前記スイッチング素子と前記電子負荷装置とを制御する制御装置とを具備し、
前記制御装置は、前記太陽電池モジュールのアレイ最大出力動作電圧近傍における電力微分値を順次取得し、前記電力微分値に基づいて、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定することを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
第一段階として、前記第一のDCDCコンバータに最大電力点探索をさせることにより、前記複数の太陽電池モジュールを全て並列接続したときのアレイ最大出力動作電圧を検出し、
第二段階として、前記第一のDCDCコンバータに前記アレイ最大出力動作電圧よりも高い電圧を主電源線に発生させつつ、前記スイッチング素子の1つずつを順次オンにさせることによって、前記副電源線に接続された前記電子負荷装置で、前記太陽電池モジュールの前記アレイ最大出力動作電圧近傍における電力微分値を順次取得し、
第三段階として、前記電力微分値に基づいて、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定し、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループと決定された前記太陽電池モジュールに接続された前記スイッチング素子をオンにすることによって、前記第一のDCDCコンバータは、高い最大出力動作電圧でDCDC変換動作を行い、前記第二のDCDCコンバータは、低い最大出力動作電圧でDCDC変換動作を行うことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールの出力端子と前記主電源線は、前記ダイオード素子を介して接続され、さらに、該出力端子と前記副電源線は、前記スイッチング素子を介して接続され、
前記主電源線は、前記第一のDCDCコンバータに接続し、
前記副電源線は、前記第二のDCDCコンバータと前記電子負荷装置とに接続し、
前記共通電源線は、前記太陽電池モジュールのもう一方の出力端子、第一および第二のDCDCコンバータに接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記電力微分値の正負の極性によって、最大出力動作電圧値の高いモジュールのグループと、最大出力動作電圧値の低いモジュールのグループを決定していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記複数のスイッチング素子を駆動するための複数のスイッチ制御回路を具備し、前記スイッチ制御回路と前記制御装置間の通信に無線通信を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記太陽電池モジュールの出力端子と前記副電源線は、前記スイッチング素子および前記ダイオード素子の直列接続を介して接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の太陽光発電システム。
【請求項7】
前記電子負荷装置は、前記制御装置によって電圧設定が可能なシャントレギュレータ定電圧回路を用いて構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の太陽光発電システム。
【請求項8】
前記第一および第二のDCDCコンバータは、前記制御装置によって通流率の制御が可能な昇圧チョッパ回路で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−208725(P2012−208725A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73785(P2011−73785)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】