説明

妨害電磁波制御方法、妨害電磁波制御プログラム及びロボット

【課題】電磁波放出レベルを抑制する。
【解決手段】規制レベル検出手段12は、対象装置の現在位置を取得し、地図情報に基づいて現在位置を含む対象領域の電磁波規制レベルを検出する。動作状態選択手段13は、形状別電磁波レベル情報及び部位別電磁波レベル情報に登録されている動作状態から検出した電磁波規制レベルに適合する電磁波放出レベルに対応する動作状態を選択する。そして、駆動制御手段14は、選択した動作状態に応じて複数の部位を駆動する駆動指示を出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の部位を駆動して動作を行う装置の妨害電磁波制御方法、妨害電磁波制御プログラム及びロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や無線機器の普及に伴って、電磁波の発生する環境範囲が拡大しており、日本をはじめとする多くの国々で、各機器から放出される不要な電磁波(電磁妨害、EMI:Electro Magnetic Interference)に関する規約が制定されている。
【0003】
このような妨害電磁波は、特に、心臓のペースメーカーや精密な測定機器等、電磁波の影響を受けやすい人や機器がある医療施設のような場所では大きな問題となっている。このため、例えば、携帯型の通信機器では、自身の位置を検出し、その場所が電磁波の制限エリアであることを検出したときは、送信電力を制限するものがある。また、制限が必要な場所に制御信号送信装置を置いておき、制御信号送信装置から信号を受けた場合には、その方向を避けるように出力電波を制御する方法もある。さらに、ユーザが人為的に電波を停止することができる機能選択スイッチを設けたものもある。
【0004】
また、近年では、人に代わって様々な作業を行うロボットの普及も進んでいるが、このようなロボットについても妨害電磁波に関して制定された規約を満たすことが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−163631号公報
【特許文献2】特開2008−187435号公報
【特許文献3】特開2002−305583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の妨害電磁波を規格内に抑制するための方法では、コスト増や性能低下が起きるという問題点があった。
電磁波放出レベルの抑制のため、対象装置にフェライトコアやフィルタ、シールド材等、対策部品を設置する方法がある。しかしながら、対策部品は、高価になりがちであり、コストが増大してしまう。さらに、設計変更を伴う場合には、そのためのコストがさらにかかる。
【0007】
また、妨害電磁波対策のため、本来であれば可能なパフォーマンスを犠牲にすることが必要になる場合もある。例えば、送信電力を制限したり、装置のクロックを落としたりすることによって電磁波の放出を抑制することができるが、本来であれば実行可能なパフォーマンスができなくなってしまう恐れがある。
【0008】
このような点に鑑み、コスト増や性能低下を抑制しつつ、電磁波放出レベルの規制に適合することが可能な妨害電磁波制御方法、妨害電磁波制御プログラム及びロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、複数の部位を駆動して動作を行う装置の妨害電磁波制御方法が提供される。この妨害電磁波制御方法によれば、コンピュータは、領域ごとに設定されている電磁波規制レベルを領域に対応付けた地図情報を地図情報記憶手段に記憶しておく。そして、対象装置の現在の位置を取得して対象装置の現在の位置が含まれる対象領域を特定し、地図情報に基づいて地図情報に設定されている対象領域に対応する対象領域の電磁波規制レベルを検出する。また、対象装置の動作状態に応じて変化する複数の部位を組み合わせた形状及び機能に対応して変動する妨害電磁波放出レベルを動作状態に対応付けた電磁波放出レベル情報を電磁波放出レベル情報記憶手段に記憶しておく。そして、電磁波放出レベル情報に設定されている妨害電磁波放出レベルを対象領域の電磁波規制レベルと順次比較し、対象領域の電磁波規制レベルを満たす妨害電磁波放出レベルに対応する動作状態を選択する。こうして、選択した動作状態に基づいて複数の部位を駆動する駆動指示を行う。
【0010】
また、上記課題を解決するために、上記の妨害電磁波制御方法と同様の処理手順をコンピュータに実行させる妨害電磁波制御プログラムと、この処理手順を実行するロボットと、が提供される。
【発明の効果】
【0011】
開示の妨害電磁波制御方法、妨害電磁波制御プログラム及びロボットによれば、現在位置に基づいて周囲の電磁波規制レベルを取得し、電磁波規制レベルを満たす動作状態を選択し、動作状態に基づいて複数の部位を駆動する。これにより、高価な対策部品を必要とすることなく、その場に応じた規制レベル内に妨害電磁波を抑制する制御が可能となり、コストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態の妨害電磁波制御装置の構成図である。
【図2】第2の実施の形態のロボットの一例を示した図である。
【図3】ロボット制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図4】ロボット制御部のソフトウェア構成例を示すブロック図である。
【図5】ロボットのサービス領域の一例を示した図である。
【図6】図5のサービス領域の地図情報を示した図である。
【図7】対人許容レベル情報の一例を示した図である。
【図8】ロボットの形状の一例を示した図である。
【図9】図8の測定結果に基づく形状別電磁波レベル情報を示した図である。
【図10】部位別電磁波レベル情報の一例を示した図である。
【図11】サービスモード情報の一例を示した図である。
【図12】妨害電磁波制御処理全体の手順を示したフローチャートである。
【図13】規制外領域の駆動制御処理の手順を示したフローチャートである。
【図14】規制領域の駆動制御処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施の形態の妨害電磁波制御装置の構成図である。
妨害電磁波制御装置10は、地図情報記憶手段11a及び電磁波放出レベル情報記憶手段11bの各記憶手段と、規制レベル検出手段12、動作状態選択手段13及び駆動制御手段14の各処理手段と、を有する。妨害電磁波制御装置10は、複数の部位を駆動して動作を行う装置、例えばロボットの駆動制御を行う。各処理手段は、コンピュータが妨害電磁波制御プログラムを実行することにより、その処理機能を実現する。なお、妨害電磁波とは、装置から放射される意図しないあるいは不要な電磁波であるとする。
【0014】
地図情報記憶手段11aは、対象の装置が移動または設置される領域の位置を特定する位置情報と、この領域に設定されている電磁波規制レベルとを関連付けた地図情報を記憶する。位置情報として、この領域の座標等が登録されている。また、電磁波規制レベルとして、予め複数段階に設定した規制レベルが登録されている。例えば、電磁波の影響を非常に受けやすい人や精密機器の有無や、与える影響の大きさ等によって規制レベルを決める。規制レベルに応じて電磁波放射の最大許容値が決まる。
【0015】
電磁波放出レベル情報記憶手段11bは、対象の装置の動作状態に応じた妨害電磁波放出レベルを、動作状態に対応付けた電磁波放出レベル情報を記憶する。対象の装置は複数の可動部位を有しており、この複数の部位を動かして予め決められた所定の動作を行う。動作状態によって、動作を行った複数の部位で形成される対象装置の形状、処理に必要のない部位の機能縮退等が変わり、これに伴って対象装置が放出する妨害電磁波のレベルが変動する。電磁波放出レベル情報は、例えば、装置の形状ごとの妨害電磁波放出レベル、または各部位を機能縮退したときの妨害電磁波放出レベルを予め測定しておき、その測定値に基づいて予め生成し、電磁波放出レベル情報記憶手段11bに記憶しておく。
【0016】
規制レベル検出手段12は、対象の装置の現在位置を取得し、地図情報記憶手段11aに記憶されている地図情報から現在位置が含まれる対象領域の地図情報を抽出する。そして、この対象領域に設定されている電磁波規制レベルを検出する。
【0017】
動作状態選択手段13は、規制レベル検出手段12が検出した現在位置が含まれる領域の電磁波規制レベルを、電磁波放出レベル情報記憶手段11bに記憶される電磁波放出レベル情報の電磁波放出レベルと順次比較する。そして、電磁波規制レベルを満たす電磁波放出レベルに対応する動作状態を選択する。
【0018】
駆動制御手段14は、動作状態選択手段13が選択した動作状態に基づき、各部位の駆動部に対し駆動指示を出力する。駆動指示では、部位を動かす指示に加え、駆動部の機能縮退を指示する。機能縮退には、該当部位の機能停止(電源オフ)や、クロックを落とす等が含まれる。
【0019】
このような妨害電磁波制御装置10の動作及び妨害電磁波制御方法について説明する。妨害電磁波については、国際無線障害特別委員会(CISPR:Comite International Special des Perturbations Radioelectriques)によって装置の種別ごとに規格が定められている。例えば、CISPR22規格では、情報技術装置の放射雑音について、水平偏波及び垂直偏波の限度値が使用場所ごとに定められている。一般に、放射電磁波は、その装置の形状に大きく影響され、縦に長いものは垂直偏波、横に長いものは水平偏波の電磁波が出やすい。
【0020】
この妨害電磁波制御装置10の対象装置は、このような規格が適用される装置であり、複数の可動部位を駆動して動作を行う装置である。このため、動作状態に応じて可動部位を駆動することにより、装置の形状は相対的に縦方向が長くなったり、横方向が長くなったりし、形状の変化に応じて電磁波の放出レベルが変動する。例えば、アーム部位を有し、アームを駆動して動作を行う装置であるとする。アームを下に下ろした動作状態のときは、垂直方向の長さに対して水平方向の長さが短い状態となり、放射される電磁波は、垂直偏波が高く、水平偏波が低くなる。逆に、アームを水平方向に伸ばしている動作状態では、垂直方向の長さに対して水平方向が長くなり、放射される電磁波は、垂直偏波が低く、水平偏波が高くなる。また、各部位をオフすれば、その分放出される電磁波は減少する。このように動作状態を選択し、対象装置の形状と機能縮退を組み合わせ、妨害電磁波を規定レベル内に抑制する制御を行う。
【0021】
電磁波放出レベル情報記憶手段11bには、装置の動作状態と、その動作状態における電磁波放出レベルとを対応付けた電磁波放出レベル情報を記憶させておく。地図情報記憶手段11aには、領域の位置情報と領域に設定される電磁波規制レベルとを対応付けた地図情報を記憶させておく。
【0022】
規制レベル検出手段12は、対象装置の現在位置を取得すると、地図情報記憶手段11aの地図情報に基づいて、対象装置の現在位置が含まれる領域の電磁波規制レベルを検出する。動作状態選択手段13は、電磁波放出レベル情報記憶手段11bに記憶する電磁波放出レベル情報に基づいて、規制レベル検出手段12が検出した規制レベルを満たす動作状態を選択する。駆動制御手段14は、動作状態選択手段13が選択した動作状態となるように、対象装置を駆動する駆動部に駆動指示を出力する。このように、動作状態を変更し、可動できる部位を駆動して形状を変えたり、一部の機能をオフまたは性能を低下させたりすることにより、妨害電磁波が規制レベル内に収まるように制御を行う。この結果、高価な対策部品による電磁波放出対策を省略することができ、かつ、設計変更時間が軽減されることにより、大幅なコストダウンが可能となる。
【0023】
以下、第2の実施の形態として、妨害電磁波制御装置を、地図情報に基づき決められた経路を移動し、動作を行うロボットに適用した場合について説明する。
図2は、第2の実施の形態のロボットの一例を示した図である。
【0024】
ロボット100は、人型の形状を有し、頭部101、右アーム103、左アーム105、走行移動部107、カメラ部108a及び人検出センサ108bを有する。頭部101は、頭部駆動部102によって駆動する。右アーム103は、肩に相当する部分を駆動させる右アーム駆動部104aと、ひじに相当する部分を駆動させる右アーム駆動部104bを有する。右アーム駆動部104a,104bによって右アーム103を駆動することにより、人間の腕の動きを模す。左アーム105は、肩に相当する部分を駆動させる左アーム駆動部106aと、ひじに相当する部分を駆動させる左アーム駆動部106bを有する。走行移動部107は、ロボット100を移動させる。また、走行距離を検出する距離センサを具備し、検出した走行距離をロボット制御部へ通知する。頭部駆動部102、右アーム駆動部104a,104b、左アーム駆動部106a,106b及び走行移動部107は、ロボット制御部からの駆動指示で駆動する。カメラ部108aは、周囲を撮影し、撮影した画像信号を、ロボット100の動作を制御するロボット制御部へ送る。人検出センサ108bは、周囲に人がいる場合には、人を検出し、人までの距離を計測し、ロボット制御部へ送る。
【0025】
ここで、ロボット制御部について説明する。図3は、ロボット制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
ロボット制御部110は、ロボット全体を制御するCPU(Central Processing Unit)111を有する。CPU111には、バス117を介してRAM(Random Access Memory)112、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)113、入力インタフェース114、駆動部インタフェース115及び音声処理部116が接続されている。
【0026】
RAM112には、CPU111に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの少なくとも一部が一時的に格納される。また、RAM112には、CPU111による処理に必要な各種データが格納される。HDD113には、OSやアプリケーションのプログラムが格納される。なお、HDD113の代わりに、ROM(Read Only Memory)を用いるとしてもよい。入力インタフェース114には、カメラ部108aや人検出センサ108bが接続されており、カメラ部108aや人検出センサ108bから送られてくる信号を、バス117を介してCPU111に送信する。駆動部インタフェース115は、頭部駆動部102、右アーム駆動部104、左アーム駆動部106及び走行移動部107に接続されており、CPU111から送られてくる駆動指示を各駆動部に送信する。音声処理部116は、スピーカ109に接続しており、CPU111から送られてくる信号を音声信号に変換し、スピーカ109に出力する。
【0027】
このようなハードウェア構成によって、ロボットの処理機能を実現することができる。
次に、ロボット制御部のソフトウェア構成について説明する。図4は、ロボット制御部のソフトウェア構成例を示すブロック図である。
【0028】
ロボット制御部110は、規制レベル検出部130、動作モード選択部140及び駆動制御部150が、記憶部120に記憶する各種情報に基づいて動作モードを選択し、ロボット100の動作を制御する。
【0029】
記憶部120は、地図情報121、対人許容レベル情報122、形状別電磁波レベル情報123、部位別電磁波レベル情報124及びサービスモード情報125を記憶する。地図情報121には、ロボット100が移動する領域に関する情報を設定する。対人許容レベル情報122には、ロボット100に人が近づいた場合の妨害電磁波の許容値を設定する。形状別電磁波レベル情報123及び部位別電磁波レベル情報124は、ロボット100から放射される電磁波放出レベル情報に関する情報である。形状別電磁波レベル情報123には、形状ごとに放射される妨害電磁波レベルを設定する。部位別電磁波レベル情報124は、各部位(頭部101、右アーム103、左アーム105及び走行移動部107)の放射電磁波レベルを設定する。サービスモード情報125は、ロボット100が提供するサービスモードと、そのときの不要部位とを設定する。各情報の詳細は後述する。
【0030】
規制レベル検出部130は、ロボット100の現在位置を取得し、地図情報121に基づいて、現在位置が含まれる領域の電磁波規制レベルを検出する。
動作モード選択部140は、動作状態選択手段として機能し、形状選択部141と機能縮退部142とを有する。形状選択部141は、形状別電磁波レベル情報123に基づき、規制レベル検出部130が取得した電磁波規制レベルを満たす形状を選択する。機能縮退部142は、部位別電磁波レベル情報124に基づいて、規制レベル検出部130が取得した電磁波規制レベルを満たすように機能を縮退する。動作モード選択部140では、ロボット100が放出する妨害電磁波が、電磁波規制レベル内となるように、形状選択部141による形状の変更、機能縮退部142による機能縮退をそれぞれ、または同時に行う。このとき、さらに、人検出センサ108bが検出する人との距離に応じた対人電磁波規制レベルも満たすように形状及び機能縮退を行い、妨害電磁波の放出レベルを調整する。
【0031】
駆動制御部150は、動作モード選択部140が選択した動作モード(形状及び機能縮退)に基づき、各駆動部に駆動指示を行う。
次に、記憶部120に記憶している地図情報121、対人許容レベル情報122、形状別電磁波レベル情報123、部位別電磁波レベル情報124及びサービスモード情報125について説明する。まず、ロボット100がサービス処理を行う領域と、地図情報について説明する。
【0032】
図5は、ロボットのサービス領域の一例を示した図である。
ロボット100は、建屋Aを巡回し、道案内等、人とのコミュニケーションをとるサービスを提供する。ここでは、建屋Aの領域を、エリア1(210)、エリア2(220)及びエリア3(230)の3つに分割して管理する。エリアの分割は任意に行うことができる。図5では、一例として、電磁波規制レベルごとに分割している。エリア1(210)は、妨害電磁波の影響をあまり受けない電磁波影響小エリアである。エリア1(210)では、ロボット100は人にサービスを提供する処理を行う。例えば、スピーカ109を介して案内の放送を行うとともに、必要に応じて音声とともにアームを動かして方向を示すジェスチャを行う等のサービス処理を実行する。エリア2(220)は、妨害電磁波の影響を最も強く受ける電磁波影響大エリアである。人の入室が制限される領域で、人にサービスを提供することはない。ロボット100は、ただ単に、通過するだけの領域である。エリア3(230)は、妨害電磁波の影響が、上記の2つの間の中程度の電磁波影響中エリアである。人300を検出したときには、人にサービスを提供する。ロボット100は、矢印の順に建屋Aを巡回し、人300とであったとき、サービス処理を行う。
【0033】
図6は、図5のサービス領域の地図情報を示した図である。
地図情報1210は、建屋1211、エリア1212、電磁波規制レベル1213、サービス種別1214及び位置情報1215の情報項目を有する。建屋1211は、地図情報1210が設定されている建屋を示している。エリア1212は、管理単位に分割された領域の識別情報である。図6の例では、それぞれエリア1、エリア2、エリア3に対応する識別番号「1」、「2」、「3」が設定されている。
【0034】
電磁波規制レベル1213には、そのエリアに設定されている電磁波規制レベルが、最も許容値が低いL1から最も許容値が高いL3までの3段階で設定されている。L1は、電磁波影響大エリアに適用される電磁波規制レベルであり、以下の説明では、最も高い電磁波規制レベルに適用される許容値を「規定値」とする。L2は、電磁波影響中エリアに適用される電磁波規定レベルであり、許容値は「規定値+10dB」に設定される。L3は電磁波影響小エリアに適用される電磁波規定レベルであり、許容値は「規定値+20dB」に設定される。地図情報1210の例では、エリア1(210)は電磁波影響小エリアであり、電磁波規制レベル「L3」が設定されている。エリア2(220)は電磁波影響大エリアであり、電磁波規制レベル「L1」が設定されている。エリア3(230)は電磁波影響中エリアであり、電磁波規制レベル「L2」が設定されている。
【0035】
サービス種別1214には、各エリアで実行するサービスの種類や駆動する部位等の情報が設定されている。ここでは、人に対するサービスの有無でサービス種別を分けている。人に対するサービスがあるときは、「対人」、ないときは「運搬」を設定する。なお、「運搬」は、該当領域では移動のみを行うことを意味し、物を運ぶかどうかは問題ではない。サービス種別1214には、エリア1(210)とエリア3(230)のサービス種別は、対人サービスを行う「対人」、エリア2(220)のサービス種別は「運搬」としている。ここでは2種類に分けたが、さらに、サービスを細かく分類して登録するとしてもよい。
【0036】
位置情報1215には、各エリアの位置を特定する座標等の情報が設定される。現在位置の座標と比較することにより、ロボット100が現在居る領域を知ることができる。
図7は、対人許容レベル情報の一例を示した図である。
【0037】
対人許容レベル情報1220には、レベルに対応付けて人との距離1221及び電磁波放射許容範囲1222が設定される。
人との距離1221は、人検出センサ108bが検出する人との距離を示している。電磁波放射許容範囲1222は、人との距離に応じて認められる電磁波放射許容範囲を示している。予め決められた規定値に対し、電磁波放射許容範囲1223の値を加えた値が、このレベルの許容値になる。図7の例では、レベルが大きくなるに従って人との距離が短くなり、電磁波放射許容範囲が狭くなる。
【0038】
ロボット制御部110は、以上の地図情報1210と、対人許容レベル情報1220とに基づいて、ロボット100に適用する電磁波規制レベルを決める。
図8は、ロボットの形状の一例を示した図である。図8では、一例として4つの形状と、その形状をとったときの妨害電磁波(垂直偏波と水平偏波)と、アーム保持電流との測定結果の例を示している。
【0039】
(1)形状Aは、右アーム103及び左アーム105をともに下に下ろしている。この状態では、水平方向の長さに対し、垂直方向の長さが長いので、垂直偏波が高くなる。図8の例では、垂直偏波が「+20dB」、水平偏波が「−20dB」、アーム保持電流が「+0A」になる。
【0040】
(2)形状Bは、右アーム103及び左アーム105を形状Aの状態から少し上方向に持ち上げている。この状態では、垂直方向の長さに対し、水平方向の長さが形状Aよりは長くなるので、形状Aの妨害電磁波に対し、垂直偏波が低く、水平偏波が高くなる。図8の例では、垂直偏波が「+10dB」、水平偏波が「−10dB」、アーム保持電流が「+0.5A」になる。
【0041】
(3)形状Cは、右アーム103及び左アーム105を、肩からひじまでを水平に持ち上げ、ひじからアームの先までを垂直方向に持ち上げている。また、垂直方向の高さを少し下げている。この状態では、垂直方向の長さに対し、水平方向の長さが相対的に形状Bよりさらには長くなるので、形状Bの妨害電磁波に対し、垂直偏波及び水平偏波とも低くなる。図8の例では、垂直偏波が「+5dB」、水平偏波が「−7dB」、アーム保持電流が「+0.5A」になる。
【0042】
(4)形状Dは、右アーム103及び左アーム105を、水平に持ち上げている。この状態では、垂直方向の長さに対し、水平方向の長さが最も長くなるので、垂直偏波は低くなり、水平偏波は高くなる。図8の例では、垂直偏波が「0dB」、水平偏波が「0dB」、アーム保持電流が「+1.0A」になる。
【0043】
この数値は、この形状をとったときの最悪値であるとする。
図9は、図8の測定結果に基づく形状別電磁波レベル情報を示した図である。
形状別電磁波レベル情報1230は、形状ごとの妨害電磁波レベルの垂直偏波1231、水平偏波1232及びアーム保持電流1233と、駆動部操作1234の情報項目を有する。垂直偏波1231、水平偏波1232及びアーム保持電流1233には、形状に対応付けて図8に示した測定値を設定する。駆動部操作1234には、それぞれの形状をとるために、頭部、右肩、右ひじ、左肩、左ひじの各駆動部がどうのように駆動するのかを設定する。「−」は、初期状態であることを示している。角度は、形状Aの状態からアームを持ち上げたときの角度を示している。
【0044】
図10は、部位別電磁波レベル情報の一例を示した図である。
部位別電磁波レベル情報1240には、部位1241に対応し、この部位を停止させたときの水平偏波1242及び垂直偏波1243を示している。部位1241には、頭部、右アーム、左アーム及び走行移動部が設定されている。水平偏波1242及び垂直偏波1243の値は、対応する部位を停止したときに変動する電磁波レベルの変動量を示している。また、それぞれの値は、最悪形状・最大駆動時における測定に基づく、規定値に対する最低保証値を示している。
【0045】
図11は、サービスモード情報の一例を示した図である。サービスモード情報1250は、サービスモード1251と、電源・機能断可能箇所1252の情報項目を有する。
サービスモード1251には、機能縮退時に、ロボット100が実行可能なサービスモードを設定する。サービスの種別には、人へのサービスを提供しない運搬サービスモードと、人へサービスを提供する対人サービスモードとがある。電源・機能断可能箇所1252には、このサービスモードを選択したときに、電源もしくは機能断とすることができる部位を設定する。
【0046】
「運搬サービスモードA」は、走行に加え、頭部101に搭載する機能を使うことができるモードである。走行移動部107と頭部101を除く「右アーム、左アーム」をオフすることができる。「運搬サービスモードB」は、走行のみできればよいときに選択可能なモードで、走行移動部107を除く「頭部、右アーム、左アーム」をオフすることができる。運搬サービスモードA→運搬サービスモードBの順に、オフする部位が増え、妨害電磁波の放出レベルは低くなる。
【0047】
「対人サービスモードA」は、ジェスチャ・表情による人とのコミュニケーションが必要なときに選択するモードであり、「走行移動部」のみをオフすることができる。「対人サービスモードB」は、コミュニケーションをアームのみで行うときに選択することができるモードであり、「頭部、走行移動部」をオフすることができる。「対人サービスモードC」は、ジェスチャは左アーム105のみで行えればよいときに選択するモードであり、「走行移動部、右アーム」をオフすることができる。「対人サービスモードD」は、頭部のみでコミュニケーションができればよいときに選択するモードであり、「右アーム、左アーム、走行移動部」をオフすることができる。対人サービスモードA→対人サービスモードB→対人サービスモードC→対人サービスモードDの順に、妨害電磁波の放出レベルは低くなる。
【0048】
次に、ロボット100が、図5に示した経路を順に移動する場合を例に、妨害電磁波制御処理について詳細に説明する。ロボット100は、図5に示したエリア1(210)内の位置から移動を開始する。
【0049】
規制レベル検出部130は、現在位置を取得し、地図情報1210の位置情報1215と照合し、領域を検出する。ここでは、エリア1(210)に居ることを検出する。また、地図情報1210から、エリア1(210)の電磁波規制レベル「L3(電磁波影響小)」と、サービス種別「対人」と、が設定されていることを検出する。動作モード選択部140は、人検出センサ108bによって人が検出されたかどうかを判定する。検出されていなければ、電磁波規制レベル「L3」の規定である「規定値+20dB」を満たす形状を形状別電磁波レベル情報1230より検索する。最大が形状Aの垂直偏波の「+20dB」であるので、すべての形状で「L3」の規定を満たす。ここでは、便宜的に、アーム保持電流の最も少ない形状Aを選択する。なお、機能縮退も必要ない。駆動制御部150は、形状Aとなるように、各駆動部に駆動指示を行う。一方、エリア1(210)内に人300がいるときは、人検出センサ108bが人300を検出し、その人300との距離を計測する。動作モード選択部140は、対人許容レベル情報1220から、人検出センサ108bから取得した人300との距離に応じた電磁波放射許容範囲を取得する。人との距離が「10メートル(以下、mとする)以上」であれば、電磁波放射許容範囲が「+20dB」であり、前述のように、形状別電磁波レベル情報1230における妨害電磁波レベルの最大値に相当するので、特に妨害電磁波レベルの制限は行わない。人との距離が「5m〜10m未満」のときは電磁波放射許容範囲が「+15dB」になるので、電磁波規制レベルを満たすように動作モードを選択する。例えば、サービスモード情報1250に基づき、対人サービスモードAから順に電磁波放射許容範囲を満たすサービスモードを探す。なお、人にサービスを提供する際には、ジェスチャ等を行う場合があるので、形状の変動ではなく、機能縮退で対応する。もちろん、アームを動かすジェスチャを行わないときは、形状で対応するとしてもよい。ここでは、まず、対人サービスモードAを選択し、部位別電磁波レベル情報1240に基づいて妨害電磁波検出レベルの変動分を算出する。対人サービスモードAでは、走行移動部107を停止するので、「−7.5dB」低下する。これにより、水平偏波、垂直偏波とも減少し、形状別電磁波レベル情報1230における妨害電磁波レベルの最大値の形状をとったとしても、電磁波放射許容範囲の「+15dB」を満たすことができる。電磁波放射許容範囲を満たさないときは、次の対人サービスモードBを調査し、電磁波放射許容範囲が満たされるかどうかを判定する。こうして、順次繰り返し、サービスモードを決定する。なお、提供するサービスによっては、どうしても停止できない部位がある。このような場合には、地図情報1210に予め選択できない動作モードを設定しておく。動作モード選択部140では、地図情報に不可と設定された動作モードは選択しない。また、停止する部位の順番を地図情報1210に予め登録しておいてもよい。登録された順に、電磁波放射許容範囲を満たすまで機能縮退を行う。検出した距離が異なる場合も同様に、電磁波放射許容範囲を満たすようにサービスモードを選択して、動作モードを決定する。妨害電磁波には、水平偏波と垂直偏波があるが、電磁波放射規制はその両方を規定するものであるので、最悪値側が規定を満たすように動作モードを決定する。
【0050】
なお、走行移動部107を停止した場合は、人へのサービス処理が終了し、人が離れ、電磁波放出レベルを上げてもよくなったときに再起動し、移動を開始する。他の部位も必要時に再起動を行う。
【0051】
次に、ロボット100は電磁波影響大のエリア2(220)に進む。現在位置を取得し、地図情報1210の位置情報1215と照合し、領域を検出する。ここでは、エリア2(220)を検出する。また、地図情報1210から、エリア2(220)の電磁波規制レベル「L1(電磁波影響大)」と、サービス種別「運搬」とが設定されていることを検出する。動作モード選択部140は、ここでは、電磁波規制レベルは、「規定値」であることが求められるので、形状選択部141は、形状Dを選択する。また、機能縮退部142によって、「運搬サービスモードA」を選択するとしてもよい。動作モード選択部140は、形状選択部141が選択した形状、または機能縮退部142が選択したサービスモードのいずれかを選択する。どちらを選択するのかは、予め優先順位として決めておく。エリア2(220)では、人と出会わないので、人検出センサ108bによる動作モードの設定は行わない。
【0052】
次に、ロボット100は電磁波影響中のエリア3(230)に進む。現在位置を取得し、地図情報1210の位置情報1215と照合し、領域を検出する。ここでは、エリア3(230)を検出する。また、地図情報1210から、エリア3(230)の電磁波規制レベル「L2(電磁波影響中)」と、サービス種別「対人」とが設定されていることを検出する。電磁波規制レベルは、「規定値+10dB」であることが求められるので、形状選択部141は、形状Bを選択する。一方、エリア3(230)内で人検出センサ108bが人を検出したときは、その人との距離を取得する。動作モード選択部140の処理は、エリア1(210)と同様であるので、説明は省略する。
【0053】
続いて、ロボット100は、電磁波影響小のエリア1(210)に戻ってくる。以降、順に上記の処理手順を繰り返す。
なお、上記では、妨害電磁波が規制される規制領域での処理について説明したが、ロボット100は、規制外領域を移動する場合もある。規制外領域とは、地図情報1210の電磁波規制レベルにレベルが設定されていない領域を言う。このような規制外領域であっても、人が検出されたときは、対人許容レベル情報1220に基づいて動作モードを選択し、妨害電磁波レベルを規制値以下にする処理を行う。その処理手順は、上記のロボット100がエリア1(210)を移動していた場合と同様であるので、説明は省略する。
【0054】
このように、ロボット100は、予め設定された地図情報1210に基づいて、妨害電磁波放出レベルを規定値内に抑制することができる。以上の説明では、形状の変化によって放出する妨害電磁波レベルを許可値内にすることを優先するとしているが、これは、一旦駆動部を停止してしまうと、再起動に時間がかかることによる。形状の変化で妨害電磁波レベルを調整した場合には、すぐに次の動作を行うことが可能となるという利点がある。
【0055】
次に、ロボット100による妨害電磁波制御方法の処理手順を、フローチャートを用いて説明する。
図12は、妨害電磁波制御処理全体の手順を示したフローチャートである。
【0056】
[ステップS01] ロボット制御部110は、ロボット100の現在位置を検出する。現在位置は、距離センサや、カメラ部108aから入力する画像を解析して特定する。
[ステップS02] ロボット制御部110は、地図情報1210に基づき、ステップS01で検出した現在位置が含まれるエリアを特定し、それが電磁波規制エリアであるかどうかを判定する。電磁波規制エリアであれば、処理をステップS03に進める。電磁波規制エリアでなければ、処理をステップS06に進める。
【0057】
[ステップS03] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波規制エリアであれば、このエリアが電磁波影響大(電磁波規制レベルL1)のエリアであるかどうかを判定する。電磁波影響大エリアでなければ、処理をステップS04に進める。電磁波影響大エリアであれば、処理をステップS07に進める。
【0058】
[ステップS04] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波影響大エリアでなければ、このエリアが電磁波影響中(電磁波規制レベルL2)のエリアであるかどうかを判定する。電磁波影響中エリアでなければ、処理をステップS05に進める。電磁波影響中エリアであれば、処理をステップS08に進める。
【0059】
[ステップS05] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波影響中エリアでなければ、このエリアが電磁波影響小(電磁波規制レベルL3)のエリアであるかどうかを判定する。電磁波影響小エリアでもなければ、ステップS01に戻って現在位置の獲得からの処理を繰り返す。電磁波影響小エリアであれば、処理をステップS09に進める。
【0060】
[ステップS06] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波規制エリアでなければ、規制外領域駆動制御処理を行う。処理終了後、ステップS01に戻って、現在位置の獲得からの処理を繰り返す。処理の詳細は後述する。
【0061】
[ステップS07] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波影響大エリアであれば、地図情報1210から電磁波影響大エリアに設定されている許容値を読み出し、処理をステップS10に進める。
【0062】
[ステップS08] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波影響中エリアであれば、地図情報1210から電磁波影響中エリアに設定されている許容値を読み出し、処理をステップS10に進める。
【0063】
[ステップS09] ロボット制御部110は、現在位置が電磁波影響小エリアであれば、地図情報1210から電磁波影響小エリアに設定されている許容値を読み出し、処理をステップS10に進める。
【0064】
[ステップS10] ロボット制御部110は、規制領域駆動制御処理を行う。その後、ステップS01に戻って現在位置の獲得からの処理を繰り返す。処理の詳細は後述する。
【0065】
図13は、規制外領域の駆動制御処理の手順を示したフローチャートである。
[ステップS41] ロボット制御部110は、人検出センサ108bによって人が検出されたかどうかを判定する。人が検出されたときは、人検出センサ108bから人との距離を取得し、処理をステップS42に進める。人が検出されていないときは、処理をステップS43に進める。
【0066】
[ステップS42] ロボット制御部110は、人が検出されたときは、人との距離が10m以上であるかどうかを判定する。10m以上であるときは、処理をステップS43に進める。10m以上でないときは、処理をステップS44に進める。
【0067】
[ステップS43] ロボット制御部110は、人が検出されなかったとき、または、人は検出されたが距離が10m以上であるときは、対人許容レベル情報1220に基づき、電磁波放射許容範囲「+20dB」を得る。どのような形状でもこの電磁波放射許容範囲を満たすことができるので、動作モードを「通常モード」とし、処理をステップS51に進める。通常モードは、機能縮退を行っていない動作モードである。
【0068】
[ステップS44] ロボット制御部110は、人との距離が10m未満であったときは、その距離が5m以上であるかどうかを判定する。5m以上であるときは、処理をステップS45に進める。5m以上でないときは、処理をステップS46に進める。
【0069】
[ステップS45] ロボット制御部110は、人との距離が5m以上10m未満であるときは、対人許容レベル情報1220に基づき、電磁波放射許容範囲「+15dB」を得る。この電磁波放射許容範囲を満たすことができる動作モードとして「対人サービスモードA」を選択し、処理をステップS51に進める。対人サービスモードAは、走行移動部107のみを停止するジェスチャ・表情によるコミュニケーションが可能な動作モードである。
【0070】
[ステップS46] ロボット制御部110は、人との距離が5m未満であったときは、その距離が3m以上であるかどうかを判定する。3m以上であるときは、処理をステップS47に進める。3m以上でないときは、処理をステップS48に進める。
【0071】
[ステップS47] ロボット制御部110は、人との距離が3m以上5m未満であるときは、対人許容レベル情報1220に基づき、電磁波放射許容範囲「+10dB」を得る。この電磁波放射許容範囲を満たすことができる動作モードとして「対人サービスモードB」または「対人サービスモードC」を選択し、処理をステップS51に進める。対人サービスモードBは、走行移動部107と、頭部101を停止し、アームによるジェスチャのみでコミュニケーションが可能な動作モードである。対人サービスモードCは、右アーム103と走行移動部107を停止し、左アーム105のみを用いたジェスチャと、表情によるコミュニケーションが可能な動作モードである。どちらを選択するかは、対象領域のサービス内容に応じて、または予め決めた優先順位に基づいて決定する。
【0072】
[ステップS48] ロボット制御部110は、人との距離が3m未満であったときは、その距離が1m以上であるかどうかを判定する。1m以上であるときは、処理をステップS49に進める。1m未満のときは、処理をステップS50に進める。
【0073】
[ステップS49] ロボット制御部110は、人との距離が1m以上3m未満であるときは、電磁波放射許容範囲「+4dB」を得る。この電磁波放射許容範囲を満たすことができる動作モードとして「対人サービスモードC」を選択し、処理をステップS51に進める。
【0074】
[ステップS50] ロボット制御部110は、人との距離が1m未満であるときは、対人許容レベル情報1220に基づき、電磁波放射許容範囲「0dB」を得る。この電磁波放射許容範囲を満たすことができる動作モードとして「対人サービスモードD」を選択する。対人サービスモードDは、頭部101以外をすべて停止し、表情によるコミュニケーションのみが可能な動作モードである。
【0075】
[ステップS51] ロボット制御部110は、決められた動作モードに基づいて、各部に対し駆動指示、または駆動停止指示を行い、処理を終了する。
以上の処理手順が実行されることにより、規制該領域における動作モードを決定し、人との距離に応じて妨害電磁波の放出レベルを制御することができる。
【0076】
図14は、規制領域の駆動制御処理の手順を示したフローチャートである。
[ステップS101] ロボット制御部110は、地図情報1210に基づき、対象エリアのサービス種別が対人サービスであるかどうかを判定する。対人サービスであれば、処理をステップS102に進める。対人サービスでなければ、処理をステップS106に進める。
【0077】
[ステップS102] ロボット制御部110は、対象エリアのサービス種別が対人サービスであれば、人検出センサ108bが人を検出したかどうかを判定する。人を検出したときは、処理をステップS103に進める。人を検出したのでなければ、処理をステップS106に進める。
【0078】
[ステップS103] ロボット制御部110は、人検出センサ108bが人を検出したときは、人との距離を取得し、対人許容レベル情報1220に基づき、人との距離に応じた電磁波放射許容範囲を抽出する。
【0079】
[ステップS104] ロボット制御部110は、ステップS103で抽出した電磁波放射許容範囲と、対象エリアに設定されている電磁波規制レベルのうち、小さい方を選択する。
【0080】
[ステップS105] ロボット制御部110は、ステップS104で選択した電磁波規制レベルに適合する対人サービスモードをサービスモード情報1250から抽出し、処理をステップS107に進める。
【0081】
[ステップS106] ロボット制御部110は、対人サービスでないとき及び人が検出されないときは、形状別電磁波レベル情報1230に基づいて、対象エリアの電磁波規制レベルを満たす形状を選択する。動作モードは、「通常モード」とする。この例では、形状を変化させることによって、すべての電磁波規制レベルを満たすことができるが、できない場合は、さらに、動作モードに基づき、機能縮退を行う。また、双方を組み合わせるとしてもよい。こうして、形状と動作モードとが決定する。
【0082】
[ステップS107] ロボット制御部110は、決定された形状及び動作モードに基づいて、各駆動部に対し駆動指示を行い、処理を終了する。
以上の処理手順が実行されることにより、規制領域における形状及び動作モードを決定し、既成領域に設定されている規制レベル及び人との距離に応じて妨害電磁波の放出レベルを制御することができる。
【0083】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、ロボットが有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。
【0084】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0085】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【符号の説明】
【0086】
10 妨害電磁波制御装置
11a 地図情報記憶手段
11b 電磁波放出レベル情報記憶手段
12 規制レベル検出手段
13 動作状態選択手段
14 駆動制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部位を駆動して動作を行う装置の妨害電磁波制御方法において、
コンピュータが、
領域ごとに設定されている電磁波規制レベルを前記領域に対応付けた地図情報を地図情報記憶手段に記憶しておき、対象装置の現在の位置を取得して前記対象装置の現在の位置が含まれる対象領域を特定し、前記地図情報に基づいて前記地図情報に設定されている前記対象領域に対応する対象領域の電磁波規制レベルを検出し、
前記対象装置の動作状態に応じて変化する前記複数の部位を組み合わせた形状及び機能に対応して変動する妨害電磁波放出レベルを前記動作状態に対応付けた電磁波放出レベル情報を電磁波放出レベル情報記憶手段に記憶しておき、前記電磁波放出レベル情報に設定されている前記妨害電磁波放出レベルを前記対象領域の電磁波規制レベルと順次比較し、前記対象領域の電磁波規制レベルを満たす前記妨害電磁波放出レベルに対応する前記動作状態を選択し、
選択した前記動作状態に基づいて前記複数の部位を駆動する駆動指示を行う、
ことを特徴とする妨害電磁波制御方法。
【請求項2】
前記電磁波放出レベル情報には、前記動作状態ごとに前記複数の部位の動きを組み合わせて形成する形状が指定され、前記形状と、前記形状を形成したときの前記妨害電磁波放出レベルとが対応付けられており、
選択した前記動作状態に基づいて前記複数の部位を駆動し、前記複数の部位を組み合わせて形成する形状を前記電磁波放出レベル情報に設定される該動作状態に指定される形状にする、
ことを特徴とする請求項1記載の妨害電磁波制御方法。
【請求項3】
前記電磁波放出レベル情報には、前記動作状態ごとに前記複数の部位のいずれかの機能停止を含む機能縮退が指定され、前記機能縮退と、前記機能縮退を行ったときの前記妨害電磁波放出レベルとが対応付けられており、
選択した前記動作状態に基づいて指定された前記部位の機能縮退を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の妨害電磁波制御方法。
【請求項4】
前記地図情報には、前記領域において前記装置が実行するサービスの種別が前記領域に対応付けて設定されており、
前記対象領域の電磁波規制レベルを満たす前記妨害電磁波放出レベルに対応する前記動作状態を選択する際に、前記地図情報に基づいて該対象領域において該対象装置が実行する前記サービスの種別を特定し、前記対象領域の電磁波規制レベルを満たし、かつ、前記サービスの種別に対応する処理が実行可能な前記動作状態を選択する、
ことを特徴とする請求項1記載の妨害電磁波制御方法。
【請求項5】
前記対象装置は、人に対するサービスを実行する対人サービス装置であり、人との距離を検出する人検出センサを有しており、前記人検出センサによって測定された前記人との距離に応じて設定される対人電磁波規制レベルを前記人との距離に対応付けた対人許容レベル情報を対人許容レベル情報記憶手段に記憶しておき、
前記対象領域の電磁波規制レベルを満たす前記妨害電磁波放出レベルに対応する前記動作状態を選択する際に、前記人検出センサが人を検出したときは前記人との距離を取得し、前記対人許容レベル情報に基づいて、前記人との距離に対応する前記対人電磁波規制レベルを検出し、前記対象領域の電磁波規制レベル及び前記対人電磁波規制レベルをともに満たす前記電磁波規制レベルを設定し、前記動作状態の選択を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の妨害電磁波制御方法。
【請求項6】
複数の部位を駆動して動作を行う装置の妨害電磁波を制御する妨害電磁波制御プログラムにおいて、
コンピュータを、
領域ごとに設定されている電磁波規制レベルを前記領域に対応付けた地図情報を地図情報記憶手段に記憶しておき、対象装置の現在の位置を取得して前記対象装置の現在の位置が含まれる対象領域を特定し、前記地図情報に基づいて前記地図情報に設定されている前記対象領域に対応する対象領域の電磁波規制レベルを検出する規制レベル検出手段、
前記対象装置の動作状態に応じて変化する前記複数の部位を組み合わせた形状及び機能に対応して変動する妨害電磁波放出レベルを前記動作状態に対応付けた電磁波放出レベル情報を電磁波放出レベル情報記憶手段に記憶しておき、前記電磁波放出レベル情報に設定されている前記妨害電磁波放出レベルを前記対象領域の電磁波規制レベルと順次比較し、前記対象領域の電磁波規制レベルを満たす前記妨害電磁波放出レベルに対応する前記動作状態を選択する動作状態選択手段、
選択した前記動作状態に基づいて前記複数の部位を駆動する駆動指示を行う駆動制御手段、
として機能させることを特徴とする妨害電磁波制御プログラム。
【請求項7】
複数の部位を駆動して動作を行うロボットにおいて、
領域ごとに設定されている電磁波規制レベルを前記領域に対応付けた地図情報と、自身の動作状態に応じて変化する前記複数の部位を組み合わせた形状及び機能に対応して変動する妨害電磁波放出レベルを前記動作状態に対応付けた電磁波放出レベル情報と、を記憶する記憶手段と、
現在の位置を取得して前記現在の位置が含まれる対象領域を特定し、前記地図情報に基づいて前記地図情報に設定されている前記対象領域に対応する対象領域の電磁波規制レベルを検出する規制レベル検出手段と、
前記電磁波放出レベル情報に設定されている前記妨害電磁波放出レベルを前記対象領域の電磁波規制レベルと順次比較し、前記対象領域の電磁波規制レベルを満たす前記妨害電磁波放出レベルに対応する前記動作状態を選択する動作状態選択手段と、
選択した前記動作状態に基づいて前記複数の部位を駆動する駆動制御手段と、
を有することを特徴とするロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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