説明

導電性材料およびその製造方法

【課題】電気化学センサー用電極として、電極上へ滴下した液の不必要な拡がりを起こさない電気化学センサー用プレナー型電極を提供する。
【解決手段】基材上に導電性パターンE1、E2を形成した材料において、基材の導電性パターン形成面の導電性パターン部分以外の表面Bにフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする導電性材料を用いることにより、電極上へ滴下した液の不必要な拡がりを起こさない電気化学センサー用プレナー型電極を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレナー型電極等に用いる導電性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基材上に導電性材料をパターニングすることにより形成されるプレナー型電極は、電気化学センサー用途として好ましく用いられる。電気化学センサーの主たるものにはバイオセンサーが挙げられる。バイオセンサーとは、定量したい基質と特異的に化学反応を起こす生体基質を電極へ固定化したものである。該基質との化学反応を電流に変換し、この電流値は基質濃度に依存するので、電流値を測定することにより基質濃度を定量できる。バイオセンサーの開発においては、基質と特異的に化学反応を起こす生体材料の種類や固定化方法の検討が必要であり、数多くの条件を試験するには、安価かつ使い捨て可能なプレナー型電極が適している。電気化学センサーに用いられるプレナー型電極としては、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1には、プリント配線板の各電極に白金等の貴金属でめっき処理を施したプレナー型電極が記載されており、各電極上に生体材料(酵素)を固定することで、血糖測定等を行う際のバイオセンサーとして使用されるものである。
【0003】
プレナー型電極を上記バイオセンサー等の電気化学センサー用電極として使用するには、上述したように生体材料の固定化の必要がある。固定化の方法としてはこの生体材料の溶液を滴下、乾燥させる方法が挙げられる。溶液の滴下量が少なすぎれば、固定化する生体材料が不足するため測定基質のセンシングが正確にできない。また、滴下量が多すぎる場合には、滴下溶液が電極部分のみにとどまらず、基材部分にまで濡れ拡がってしまい測定電流値にばらつきが生じてしまう。この問題点を解決する方法として特許文献2には電極部に対し、基材部の溶液の親和性を低くする技術が開示されている。しかし、銀塩写真法でパターン作製した電極においては特に基材への濡れ拡がりが生じやすく、この場合においては濡れ拡がりの抑制が不十分であった。従って、銀塩写真法で作製したパターン電極においても、十分に不必要な濡れ拡がりが抑制されたプレナー型電極が望まれている。
【特許文献1】特開昭61−270652号公報
【特許文献2】特開2007−278981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、電気化学センサー用電極として、電極上へ滴下した液の不必要な拡がりを起こさない電気化学センサー用プレナー型電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基材上に導電性パターンを形成した材料において、基材の導電性パターン形成面の導電性パターン部分以外の表面にフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする導電性材料によって本発明の目的を達成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、電極上へ滴下した溶液の電極部以外への濡れ拡がりが制御されたプレナー型電極を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、基材の導電性パターン形成面の導電性パターン部分以外の表面にフッ素系界面活性剤を配し、該部分の撥水性を高めることにより、滴下した溶液が導電性パターン部分以外へ濡れ拡がることを抑制するものである。実際に導電性パターン部分以外の表面にフッ素系界面活性剤を配するには、パターン形成後に導電性パターン部分以外にのみフッ素系界面活性剤を設置するよりも、導電性パターン形成前に基材全体をフッ素化合物で覆った上にパターン形成を行う方が工程上は容易であり好ましい。また導電性パターン形成方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって基材上に金属薄膜を形成させる方法、及び、基材に金属箔を貼り合わせた上に、レジストパターン層を設け、エッチングを行い、導電性パターンを得る方法、または、金属や導電性カーボン等の導電性物質を印刷する事により、パターン形成する方法等が知られている。
【0008】
上記導電性材料に用いられる基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0009】
上記方法以外に、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する銀塩感光材料を導電性材料前駆体とし、パターン露光、現像処理することで導電性パターンを形成する方法は、導電性パターンの画質および作製の簡便性を兼ね備えており、本発明には好ましい。
【0010】
上記導電性材料前駆体は露光後、(A)銀塩拡散転写法に従う現像処理、(B)硬化現像法に従う現像処理の2つの方法により画像形成される。(A)の方法は例えば特公昭42−23745号公報に記載される方法であり、物理現像核層にフッ素系界面活性剤を含有させることにより本発明の目的を達成できる。(B)の方法は例えばJ.Photo.Sci.誌11号 p 1、A.G.Tull著(1963)或いは「The Theory of the photographic Process(4th edition,p326−327)」T.H.James著等に記載されており、ハロゲン化銀乳剤層の下に、フッ素系界面活性剤を含有する下引き層を設けることにより本発明の目的を達成できる。
【0011】
本発明で使用されるフッ素系界面活性剤は、例えば、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有硫酸エステル塩、パーフルオロアルキル基含有燐酸塩等のアニオン性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル基含有アミン塩、パーフルオロアルキル基含有4級アンモニウム塩等のカチオン性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル基含有カルボキシルベタイン、パーフルオロアルキル基含有アミノカルボン酸塩等の両性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテル、その他パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマーエステル、パーフルオロアルキル基含有スルホンアミドポリエチレングリコール付加物等が挙げられる。好ましくは、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマーエステルのノニオン性のものである。これらはAGCセイミケミカル(株)よりサーフロンシリーズ、大日本インキ化学工業(株)よりメガファックシリーズ、(株)ジェムコよりエフトップシリーズ、(株)ネオスよりフタージェントシリーズなど市販品として入手できる。
【0012】
フッ素系界面活性剤の含有量については、0.1〜50mg/m2が好ましく、1〜20mg/m2がより好ましい。少なすぎると所望の効果が得られず、多すぎると起泡が多くなり製造工程での不具合の原因となる。
【0013】
次に本発明の導電性材料について説明する。前述の通り本発明の導電性材料前駆体を現像処理する方法としては(A)銀塩拡散転写法に従う現像処理、(B)硬化現像法に従う現像処理の2つの方法を用いることができる。以下、本発明における(A)の現像処理方法を用いる導電性材料をタイプA、(B)の現像処理方法を用いる導電性材料をタイプBと略して、順に説明する。
【0014】
<タイプA>
導電性材料はハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体を露光し、次に未露光部である画像部のハロゲン化銀粒子を可溶性銀錯塩形成剤で溶解して可溶性銀錯塩として溶解させ、物理現像核上まで拡散してきた可溶性銀錯塩をハイドロキノン等の還元剤(現像主薬)で還元して金属銀を析出させて画像を形成する。その後水洗除去して、ハロゲン化銀乳剤層などを洗い流し、基材上に像様に銀画像のついたパターンを形成する。
【0015】
導電性材料前駆体は基材上に少なくとも物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤層を基材に近い方からこの順で有し、物理現像核層にはフッ素系界面活性剤を含有する。さらには、非感光性層を基材から最も遠い最外層及びまたは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層として有していても良い。これらの非感光性層は、水溶性高分子を主たるバインダーとする層である。ここでいう水溶性高分子とは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0016】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい水溶性高分子は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0017】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0018】
タイプAの導電性材料前駆体における物理現像核層の物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられるが、銀コロイド及び硫化パラジウム核が好ましい。これらの物理現像核の微粒子層は、コーティング法などによって基材上に設けることができる。本発明のフッ素系界面活性剤はコーティング液に添加することにより、物理現像核層へのフッ素系界面活性剤の導入が可能となる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0019】
物理現像核層には、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子量は物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子としては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。好ましい水溶性高分子は、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。
【0020】
水溶性高分子としてタンパク質を用いる場合には、物理現像核層には、例えばクロムミョウバンのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキサール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々タンパク質の架橋剤(硬膜剤)の一種もしくは二種以上を含有することは好ましい。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキサール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、下記の下引き層及び物理現像核層に含まれる合計のタンパク質に対して0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0021】
タイプAの導電性材料前駆体においては、物理現像核層と基材の間にタンパク質からなる下引き層(タンパク質含有下引き層;以降、単に下引き層と云う)を有することは好ましい。基材と下引き層の間には、更に塩化ビニリデンやポリウレタン等の易接着層を有することは好ましい。下引き層に用いられるタンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。下引き層におけるタンパク質の含有量は1平方メートル当たり10〜300mgが好ましい。
【0022】
物理現像核層や下引き層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
【0023】
タイプAの導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0024】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されているような公知の手法を用いることができる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0025】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩若しくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0026】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(硝酸銀換算)とバインダーとの質量比(硝酸銀/総バインダー)が2.0以上、より好ましくは2.4〜5.5である。
【0027】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0028】
タイプAの導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーションあるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記した下引き層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または基材を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、たとえばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり、約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として0.5以上である。
【0029】
タイプAにおいては基材上にハロゲン化銀写真乳剤層との接着性を向上させるための下引き層や帯電防止層などを必要に応じて設けることもできる。
【0030】
上記タイプAの導電性材料前駆体を用い、導電性材料を作製するための方法は、露光方法として、電極などの各パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることができる。
【0031】
任意の形状パターンの透過原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記前駆体に走査露光した後、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して形状パターンの銀薄膜を得ることができる。一方、露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層及び中間層、保護層は水洗除去されて、形状パターンの銀薄膜が表面に露出する。
【0032】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラー等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等を基材から剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0033】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0034】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0035】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0036】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0037】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0038】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0039】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0040】
現像液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、燐酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0041】
タイプAの銀錯塩拡散転写現像を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯流された現像液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられた導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上に現像液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0042】
現像処理条件については、現像温度は18〜22℃であり、処理時間時間は20秒〜3分程度が好ましい。この態様は、特に浸漬方式の場合に好適である。
【0043】
<タイプB>
硬化現像処理法を用いる方法である。この方法においては光センサーのハロゲン化銀粒子を像様に露光して潜像を形成し、これを触媒としてハロゲン化銀を還元する時に、ハイドロキノン等のその酸化体がゼラチンの硬化作用を持つ還元剤を用い、金属銀を形成すると同時に金属銀周囲のゼラチンを硬化させ、画像を形成させた後、水洗除去して非硬化部を洗い流す。
【0044】
本発明に用いるタイプBの導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が基材上に設けられる。さらに、ハロゲン化銀乳剤層より基材側にフッ素系界面活性剤含有下引き層を設ける。
【0045】
本発明におけるハロゲン化銀としてはタイプAの導電性材料前駆体に用いるのと同様のハロゲン化銀を用いることが出来る。
【0046】
本発明においてハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。本発明においては非水溶性ポリマー及び水溶性高分子のいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性高分子を用いることが好ましい。本発明における好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼインなどのタンパク質類、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これら水溶性ポリマーの中でもゼラチンなどのタンパク質が好ましい。
【0047】
本発明においてハロゲン化銀乳剤層には上記水溶性高分子の他に非水溶性ポリマーとしての高分子ラテックスを用いる事もできる。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等がある。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0048】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤層に含有する水溶性ポリマーと高分子ラテックスの総量、すなわち総バインダー量については、バインダー量が少ないと塗布性に悪影響を及ぼし、また安定したハロゲン化銀粒子も得られなくなる、一方、多過ぎると導電性が得られ難くなり、生産性を落としてしまうなど、品質に大きな影響を与える。好ましいハロゲン化銀(銀換算)と総バインダーとの質量比(銀/総バインダー)は0.5以上、より好ましくは1.5〜3.5である。また、好ましい総バインダー量は0.05〜3g/m2以上、更に好ましくは0.1〜1g/m2である。
【0049】
ハロゲン化銀乳剤層にはタイプAの導電性材料前駆体同様、種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。
【0050】
タイプBの導電性材料前駆体には必要に応じて基材のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層などを設けることができる。またタイプA、の導電性材料前駆体同様ハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を含有することができる。
【0051】
タイプBの導電性材料前駆体の下引き層について、バインダーとしては例えば、特開昭56−140343号公報に記載されているようなスチレン・ブタジエン系ラテックス、特開昭51−135526号、特開平1−180537号等に記載の塩化ビニリデンラテックス、特開2000−229396号公報に記載の、自己乳化性イソシアネート化合物および水性ポリウレタンとの併用などが知られている。本発明のフッ素系界面活性剤は下引き塗液に添加することにより、下引き層へのフッ素系界面活性剤の導入が可能となる。好ましいバインダー量は0.05〜2.0g/m2である。さらに下引き層には本発明のフッ素系界面活性剤以外に公知の界面活性剤、現像抑制剤、イラジエーション防止色素、顔料、マット剤、滑剤などを含有することができる。
【0052】
タイプBの導電性材料前駆体のオーバー層についてはハロゲン化銀乳剤層と同様のバインダーを用いることができる。好ましいバインダー量は、特に硬化現像処理を利用して画像状にそれらの層を硬化させ、必要な部分のみ残したい場合、例えばオーバー層に無電解めっきの触媒核を含有させる場合などでは、ハロゲン化銀乳剤層中で起きる硬化反応を利用するので、できるだけ薄いほうが好ましく、好ましい使用量は0.1g/m2以下、更に好ましくは0.05〜0.001g/m2である。さらにオーバー層には公知の界面活性剤、現像抑制剤、イラジエーション防止色素、顔料、マット剤、滑剤などを含有することができる。
【0053】
タイプBの導電性材料前駆体には硬化現像薬を含有することが特に好ましい。硬化現像薬としては、ポリヒドロキシベンゼン、例えばハイドロキノン、カテコール、クロロハイドロキノン、ピロガロール、ブロモハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、トルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジクロロハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジブロモハイドロキノン、2,5−ジヒドロキシ−1−アセトフェノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、4−フェニルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−s−ブチルピロガロール、4,5−ジブロモカテコール、2,5−ジエチルハイドロキノン、2,5−ベンゾイルアミノハイドロキノンなどがある。また、アミノフェノール化合物、例えばN−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール−2,4−ジアミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノール、2−メチル−p−アミノフェノール、2−ヒドロキシメチル−p−アミノフェノールなど、また、その他にも例えば特開2001−215711号公報、特開2001−215732号公報、特開2001−312031号公報、特開2002−62664号公報記載の公知の硬化現像薬を用いることができるが、特にベンゼン核の少なくとも1,2位または1,4位にヒドロキシル基が置換したベンゼンが好ましい。また、これらの硬化現像薬を併用して用いることも可能である。さらに、3−ピラゾリドン類、例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、および1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドンなどの公知の写真現像液に用いる還元剤を上記硬化現像薬に併せて用いることも可能である。
【0054】
これら硬化現像薬は導電材料前駆体のどの層に含有されても良いが、ハロゲン化銀乳剤層もしくは下引き層に含有されることが好ましく、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。含有する好ましい量はハロゲン化銀乳剤層の水溶性バインダーを耐水化できるだけの量であるため、使用する水溶性バインダーの量に応じて変化する。好ましい硬化現像薬の量は0.01〜0.5mモル/水溶性バインダー1g、更に好ましくは0.1〜0.4mモル/水溶性バインダー1gである。これら硬化現像薬は塗液に溶解させても各層に含有させても良いし、オイル分散液に溶解させて各層中に含有させることも可能である。
【0055】
タイプBの導電性材料前駆体には膨潤抑制剤を含有することが好ましい。本発明における膨潤抑制剤とは導電性材料前駆体を硬化現像液で処理する際に水溶性バインダーが膨潤するのを防ぎ、画像のぼけを防ぎ、また導電性を上げるために用いる。膨潤抑制剤として作用するかどうかはpH3.5の5質量%ゼラチン水溶液に膨潤抑制剤0.35モル/Lになるよう加えてゼラチンの沈澱が発生するかどうかで調べられ、この試験でゼラチンの沈澱が発生するような薬品は全て膨潤抑制剤として作用する。膨潤抑制剤の具体例としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化マンガン、燐酸マグネシウムなどの無機塩類、あるいは例えばベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールジスルホン酸、α−ナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸、1−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、ジナフチルメタンスルホン酸などのスルホン酸類、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸、無水マレイン酸とビニルスルホン酸の共重合物、ポリビニルアクリルアミドなどの高分子沈澱剤として用いられる化合物などが挙げられる。これら膨潤抑制剤は単独でも組合わせて用いても良いが、無機塩類、特に硫酸塩類を使用することが好ましい。これら膨潤抑制剤は導電性材料前駆体のどの層に含有されていても良いが、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。これら膨潤抑制剤の好ましい含有量は0.01〜10g/m2、更に好ましくは0.1〜2g/m2である。
【0056】
タイプBの導電性材料前駆体にはさらに無電解めっき触媒や導電性物質などを含有させることも可能である。
【0057】
上記タイプBの導電性材料前駆体を用い導電性材料を作製するための方法は、例えば電極などの各パターンの銀薄膜の形成が挙げられるが、これは前述のタイプAで説明した方法で露光することができる。
【0058】
タイプBでは導電性材料前駆体を露光した後に硬化現像を行う。硬化現像液にはアルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセスロース、現像助薬、例えば3−ピラゾリジノン類、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤等を含ませることができる。現像液のpHは通常10〜14である。通常の銀塩写真現像液に用いる保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウムなどは硬化現像による硬化反応を停める作用があるので、本発明における硬化現像液では保恒剤は少なくとも20g/L以下の使用量、好ましくは10g/L以下の使用量が好ましい。
【0059】
タイプBの硬化現像液には導電性材料前駆体に硬化現像薬を含有させない場合は硬化現像薬を含有する。硬化現像薬としては導電性材料前駆体に含有させるのと同様の硬化現像薬を用いることができる。好ましい硬化現像薬の含有量は1〜50g/Lである。硬化現像薬を現像液中に含有させる場合、保恒性が悪く、直ぐに空気酸化してしまうので、使用の直前にアルカリ性水溶液に溶解することが好ましい。
【0060】
タイプBの硬化現像液には膨潤抑制剤を含有することが好ましい。膨潤抑制剤としては導電性材料前駆体に含有させるのと同様の膨潤抑制剤を用いることができる。好ましい膨潤抑制剤の含有量は50〜300g/L、好ましくは100〜250g/Lである。
【0061】
タイプBの硬化現像処理を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えば導電性材料前駆体上に処理液を1平方メートル当たり40〜120mL程度塗布するものである。特に硬化現像薬含有硬化現像液を用いる場合には塗布方式にし、硬化現像を繰り返し用いないようにするほうが好ましい。
【0062】
タイプBの硬化現像処理条件については、以下の通りである。現像温度は2℃〜30℃であり、10℃〜25℃がより好ましい。現像時間は5秒〜30秒であり、好ましくは5秒〜10秒である。
【0063】
タイプBの導電性材料を製造する工程には、非画像部のハロゲン化銀乳剤層を除去し、基材面を露出させる工程が含まれる。本工程はハロゲン化銀乳剤の除去を主目的としているので、本工程で用いられる処理液は水を主成分とする。処理液は緩衝成分を含有してもよい。また、除去したゼラチンの腐敗を防止する目的で、防腐剤を含有することができる。ハロゲン化銀乳剤を除去する方法としては、スポンジ等で擦り取る方法、ローラーを膜面に当ててスリップさせることによってはがしとる方法、ローラーを膜面に接触させてローラーに巻き付ける方法等がある。処理液流をハロゲン化銀乳剤面に当てる方法としては、シャワー方式、スリット方式等を単独、あるいは組み合わせて使用できる。また、シャワーやスリットを複数個設けて、除去の効率を高めることもできる。
【0064】
タイプBにおいて非画像部ハロゲン化銀乳剤層を除去してレリーフ画像を作製した後に、当業者で周知の硬膜剤を含有した液で処理することでより強固なレリーフ画像を作製することが出来る。硬膜剤としては、クロムミョウバン、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、ジアセチル等のケトン類、ムコクロル酸類等、種々のものを用いることが出来る。
【0065】
タイプBにおいて硬化現像処理後にハロゲン化銀溶剤を含む物理現像液で導電性材料前駆体を処理し、硬化現像で硬化されたレリーフ像中にある銀量を増大させ、導電性を得ることもできる。物理現像工程は非画像部のハロゲン化銀乳剤層の除去工程の前であっても、後であっても良いが、非画像部のハロゲン化銀も銀の供給源として使用できることから除去前に物理現像工程を行うことが好ましい。また、物理現像液に銀塩を加えるなど、さらなる銀イオンの供給を行い、物理現像工程でより銀を多くすることもできる。
【0066】
物理現像液に用いられる還元剤は、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0067】
物理現像液のpHは8以上が好ましく、更に9〜11が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、燐酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の物理現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0068】
物理現像液には、臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物を加えることが好ましい。適量の臭化物の存在下で現像を行うと、得られた金属銀画像部の導電性が良化するからである。好ましい臭化物濃度は1×10-4モル/L以上1×10-2モル/L以下である。
【0069】
物理現像液のカリウムイオン濃度は物理現像液中の全アルカリ金属イオンの70モル%以上が好ましい。カリウムイオン濃度を70モル%以上にすることである程度前駆体を物理現像処理した状態であっても、得られる金属銀画像部の導電性が比較的良好であるからである。カリウムイオンはいかなる形態及び方法で供給されても良い。例えば、水酸化物塩、亜硫酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩等として予め物理現像液に添加しておく方法が挙げられる。
【0070】
本発明における物理現像液は可溶性銀錯塩形成剤を含有する。可溶性銀錯塩形成剤は、非感光性銀塩を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物である。物理現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0071】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0072】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0073】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、処理液1リットル当たり0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は処理液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0074】
タイプBにおいて物理現像液はさらに銀イオンを含有することも可能である。銀イオンの好ましい含有量は0.01〜1モル/L、更に好ましくは0.02〜0.5モル/Lである。あるいは物理現像液に銀イオンを含有させる替わりに、導電性材料前駆体に感度の低いハロゲン化銀乳剤を含有させてもよい。感度の低いハロゲン化銀乳剤とは導電性材料前駆体に使われているハロゲン化銀乳剤(以下高感度乳剤と略す)の70%以下の感度を有するハロゲン化銀乳剤のことを意味し、該低感度ハロゲン化銀乳剤(以下低感度乳剤と略す)は好ましくは銀で換算して0.5〜5g/m2、より好ましくは1〜3g/m2導電性材料前駆体に含有される。高感度銀乳剤と低感度乳剤の比率は特に限定する必要はないが、好ましい範囲は銀で換算して高感度乳剤:低感度乳剤=1:10〜2:1、更に好ましくは1:5〜1:1である。
【0075】
タイプBにおいて物理現像処理を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、導電性材料前駆体を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えば導電性材料前駆体上に処理液を1平方メートル当たり40〜120mL程度塗布するものである。
【0076】
導電性及び金属光沢を向上させるための好ましい物理現像処理条件については、以下の通りである。現像温度は2〜25℃であり、10〜20℃がより好ましい。現像時間は30〜180秒であり、好ましくは40〜120秒である。
【0077】
本発明においてタイプA、タイプB何れの方法で作製した導電性材料でもさらに高い導電性を得るためや、あるいは銀画像の色調を変えるためなどの種々の目的でめっき処理を行うことが可能である。本発明におけるめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。めっき処理によりどの程度導電性を付与するかは用いる用途に応じて異なる。
【0078】
本発明において無電解めっき処理を施す場合、無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形態でも良いし,また金属パラジウムであっても良い。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることが良い。
【0079】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき,無電解コバルトめっき、無電解金めっき、無電解銀めっき、無電解銅めっきなどを用いることができるが、上記の必要な導電性や更には必要に応じて透明性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0080】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルムアルデヒドやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール4酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることも出来る。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行う事が好ましい。
【0081】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響する、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基材の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することが出来る。
【0082】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法などを用いる事ができる。
【0083】
本発明においては電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法などが好ましい。
【0084】
本発明においてはめっき処理並びに定着処理の後、酸化処理を行う事も可能である。特にめっき処理の後に定着処理を行い、かつ漂白定着液で処理しない場合は酸化処理を行う事が好ましい。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いる事ができる。酸化処理液には酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩などの各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩などを用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄塩を用いる事が好ましい。酸化剤の使用量は0.01〜1モル/L、好ましくは0.1〜0.3モル/Lである。その他に促進剤として臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド塁、へテロ環メルカプト類など公知のものを用いる事もできる。
【0085】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0086】
本発明の製造方法の実施例を以下に示す。本発明に使用される導電性材料前駆体を作製するために、基材として、厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この基材上に下記のようにして作製した硫化パラジウムを含有する物理現像核層塗液A−1〜A−7をそれぞれ塗布、乾燥した。
【0087】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0088】
<物理現像核層塗液の調製>各1m2当たり
<A−1>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
メガファックF−470(大日本インキ化学工業社製) 2mg
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0089】
<A−2>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
メガファックF−470(大日本インキ化学工業社製) 10mg
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0090】
<A−3>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
メガファックF−477(大日本インキ化学工業社製 10mg
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0091】
<A−4>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
サーフロンS−141(セイミケミカル社製) 10mg
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0092】
<A−5>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
サーフロンS−381(セイミケミカル社製 10mg
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0093】
<A−6>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
界面活性剤(S−1) 10mg
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0094】
<A−7>
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキサール水溶液 0.08ml
ポリエチレンイミン(エポミンSP−200:日本触媒社製)50mg
【0095】
【化1】

【0096】
続いて、基材に近い方から順に下記組成の中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、及び最外層1を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0097】
<中間層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0098】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0099】
<最外層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0100】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、図1のパターンの原稿を密着させて露光した。
【0101】
続いて下記の拡散転写現像液を作製した。その後、先に露光した導電性材料前駆体を下記現像液中に15℃で90秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層および非感光性層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。露光したサンプルからは図1の電極パターン状に銀薄膜が形成された導電性材料を得た。
【0102】
<拡散転写現像液>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mLとする
pH=12.2に調整する。
【0103】
上記のようにして得られた導電性材料に下記ニッケルめっき液を使って温度45℃、電流密度4A/dm2にてニッケルめっきを行った。
【0104】
<ニッケルめっき液処方>
硫酸ニッケル 240g/L
塩化ニッケル 45g/L
硼酸 30g/L
pH=4.5
【0105】
上記のようにして得られた図1の電極パターン状の導電性材料にE1、E2を十分に覆う水5μl滴下し、液滴がE2から外側へ拡がり、基材へ進行するかを観察した。液滴がE2外周で完全に収まっている場合を「○」、一部外周から基材側へ拡がっている場合を「△」、全周に渡って外周から基材側まで拡がってしまう場合を「×」とした。結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1の結果から明らかなように物理現像核層にフッ素系界面活性剤を含有させることにより、電極パターン内に滴下した液の不必要な拡がりが抑制された。
【実施例2】
【0108】
実施例1同様、厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この基材上に下記のようにして作製した下引き層塗液B−1〜B−8をそれぞれ塗布、乾燥した。
【0109】
<下引き層塗液の調製>各1m2当たり
<B−1>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
メガファックF−470(大日本インキ化学工業社製) 2mg
【0110】
<B−2>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
メガファックF−470(大日本インキ化学工業社製) 10mg
【0111】
<B−3>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
メガファックF−477(大日本インキ化学工業社製) 2mg
【0112】
<B−4>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
サーフロンS−141(セイミケミカル社製) 10mg
【0113】
<B−5>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
サーフロンS−381(セイミケミカル社製) 10mg
【0114】
<B−6>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
界面活性剤(S−1) 10mg
【0115】
<B−7>
塩化ビニリデンラテックスL−536B(旭化成工業社製) 1.0g
【0116】
続いて、下引き層上にハロゲン化銀乳剤層2を塗布した。ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀40モル%と臭化銀60モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。また、ハロゲン化銀乳剤の保護バインダーの一部に分子量1万以下の低分子ゼラチンを用いることで混合後の脱塩処理工程で低分子ゼラチンが水洗除去時に除去されるようした。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0117】
<ハロゲン化銀乳剤層組成2/1m2あたり>
ゼラチン 1.0g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
4−フェニルカテコール 20mg
硫酸ナトリウム 0.05g
【0118】
このようにして得た導電性材料前駆体を、図2のパターンの原稿を用い、密着させて実施例1と同様にして露光した。
【0119】
続いて、下記処方の硬化現像液で23℃30秒浸漬処理して硬化現像し、その後下記物理現像液で25℃40秒処理し、その後35℃の温水で非画像部の水洗除去処理を行った。
【0120】
<硬化現像液>
水酸化ナトリウム 20g
臭化カリウム 1g
亜硫酸ナトリウム 1g
【0121】
<物理現像液>
リン酸3カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 50g
N−メチルエタノールアミン 10g
臭化カリウム 0.5g
全量を水で1000mLとする
リン酸を加えpH=10.5に調整する。
【0122】
上記のようにして得られた導電性材料に実施例1と同様のニッケルめっき液を使って温度45℃、電流密度4A/dm2にてニッケルめっきを行った。
【0123】
上記のようにして得られた図1と同様の電極パターン状の導電性材料にE1、E2を十分に覆う水5μl滴下し、液滴がE2から外側へ拡がり、基材へ進行するかを観察した。液滴がE2外周で完全に収まっている場合を「○」、一部外周から基材側へ拡がっている場合を「△」、全周に渡って外周から基材側まで拡がってしまう場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
表2の結果から明らかなように下引き層にフッ素系界面活性剤を含有させることにより、電極パターン内に滴下した液の不必要な拡がりが抑制された。
【実施例3】
【0126】
実施例1同様、厚み100μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この上に以下のC−1〜C−4の方法で電極パターンを作製した。
【0127】
<C−1>
実施例1のNo.2同様。
【0128】
<C−2>
実施例1のNo.7同様。
【0129】
<C−3>
実施例2のNo.2同様。
【0130】
<C−4>
実施例2のNo.7同様。
【0131】
<C−5>
基材上に実施例2の下引き層塗液B−2を塗布乾燥した。続いて、塩化パラジウムで前処理を行った後、下記処方のニッケルめっき浴にて温度50℃で2分間無電解ニッケルめっきを全面に施した。この上にドライフィルムレジストを貼合し、図2のパターンの原稿を用い、密着させて実施例1と同様にして露光した後、現像処理を行い、未露光レジストを除去した。続いて未露光レジスト除去部分のニッケルをソフトエッチング処理により除去した後、剥離液で露光部のニッケル上レジストも除去した。さらに実施例1と同様のニッケルめっき液を使って温度45℃、電流密度4A/dm2にてニッケルめっきを行った。
【0132】
<ニッケルめっき液処方>
硫酸ニッケル 20g/L
次亜リン酸ニッケル 10g/L
乳酸 3g/L
クエン酸ナトリウム 5g/L
酢酸ナトリウム 5g/L
pH=5.0
【0133】
<C−6>
C−5において、下引き層塗液をB−7に変更する以外は同様とした。
【0134】
上記のようにして得られた図1と同様の電極パターン状の導電性材料にE1、E2を十分に覆う水5μl滴下し、液滴がE2から外側へ拡がり、基材へ進行するかを観察した。液滴がE2外周で完全に収まっている場合を「○」、一部外周から基材側へ拡がっている場合を「△」、全周に渡って外周から基材側まで拡がってしまう場合を「×」とした。結果を表3に示す。
【0135】
【表3】

【0136】
表3の結果から明らかなように、銀塩写真法を用いて作製したパターン電極においては、電極パターン内に滴下した液の不必要な拡がり抑制効果が非常に大きいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明実施例の原稿パターンを示す平面図。
【図2】本発明実施例の原稿パターンを示す平面図。
【符号の説明】
【0138】
B 基材部
E1 作用電極部
E2 対電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電性パターンを形成した材料において、基材の導電性パターン形成面の導電性パターン部分以外の表面にフッ素系界面活性剤を含有することを特徴とする導電性材料。
【請求項2】
請求項1記載の導電性材料の製造方法であって、基材上に少なくとも物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該物現像核層がフッ素系界面活性剤を含有し、この導電性材料前駆体を露光、現像処理することを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の導電性材料の製造方法であって、基材上に少なくとも下引き層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する導電性材料前駆体において、該下引き層がフッ素系界面活性剤を含有し、この導電性材料前駆体を露光、現像処理することを特徴とする導電性材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−244105(P2009−244105A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90968(P2008−90968)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】