説明

導電性粘着テープ

【課題】外観に優れながら、導電性および耐久性に優れる導電性粘着テープを提供すること。
【解決手段】導電性粘着テープ1は、導体層2と、導体層2の厚み方向一方側に形成され、粘着剤および導電性充填材を含有する粘着剤層3と、導体層2および粘着剤層3の間に介在する金属層4とを備え、ヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下であり、抵抗値上昇率が100%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、導電性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電気機器の接続端子間の接続に、導電性および粘着性を併有する導電性粘着テープが用いられている。
【0003】
例えば、金属箔と、その上面に設けられ、導電性粒子を含有する接着剤からかる接着剤層とを備える接着テープが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1では、接続端子には、接着剤層が接着するとともに、接着剤に含有される導電性粒子が接触することによって、接着テープおよび接続端子間の導通が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭63−46980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、各種電気機器の耐久性向上が図られ、それに伴って、導電性粘着テープの導電性を長期にわたって維持することが要求されている。
【0007】
しかし、特許文献1の接着テープでは、上記した要求を満足することができないという不具合がある。
【0008】
さらに、特許文献1の接着テープでは、金属箔が腐食する場合があり、その場合には、外観不良を生じる場合がある。
【0009】
本発明の目的は、外観に優れながら、導電性および耐久性に優れる導電性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の導電性粘着テープは、導体層と、前記導体層の厚み方向一方側に形成され、粘着剤および導電性充填材を含有する粘着剤層と、前記導体層および前記粘着剤層の間に介在する金属層とを備え、下記ヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下であり、下記の抵抗値上昇率が100%以下であることを特徴としている。
【0011】
(ヒートサイクル試験)
前記導電性粘着テープを厚み5μmの銀めっき層に、貼付面積が6mmとなるように貼り付けて、耐久評価用の端子基板を作製する。その後、耐久評価用の端子基板を恒温槽内に入れて、恒温槽内の温度を25℃から−40℃まで降温して冷却し、続いて、恒温槽内の温度を−40℃で10分間保持し、次いで、恒温槽内の温度85℃まで昇温して加熱し、続いて、85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとし、このサイクルを繰り返しながら、前記導電性粘着テープと前記銀めっき層に2Aの定電流を流して、貼付部分の抵抗値を測定する。また、抵抗値上昇率を、200サイクル目の抵抗値の最大値と1サイクル目の抵抗値の最大値から、下記式を用いて算出する。
【0012】
[抵抗値上昇率]=100×([200サイクル目の抵抗値の最大値]−[1サイクル目の抵抗値の最大値])/[1サイクル目の抵抗値の最大値]
また、本発明の導電性粘着テープでは、前記金属層の厚みが、0.5〜30μmであることが好適である。
【0013】
また、本発明の導電性粘着テープでは、前記金属層が、低融点金属からなる低融点金属層であることが好適である。
【0014】
また、本発明の導電性粘着テープでは、前記低融点金属の融点が、180℃以下であることが好適である。
【0015】
また、本発明の導電性粘着テープでは、前記低融点金属が、ビスマス含量30〜80質量%のビスマス合金であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の導電性粘着テープでは、金属層が導体層および粘着剤層の間に介在するので、導体層の腐食を抑制し、それによって、外観に優れている。
【0017】
さらに、導通対象と接続するときに、金属層を導電性充填材に親和させることができる。そのため、導電性充填材が含有される粘着剤層における導電性を向上させることができる。そのため、導体層と導通対象とを確実に電気的に接続することができる。
【0018】
その結果、外観に優れながら、導電性を長期にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の導電性粘着テープの一実施形態の平面図を示す。
【図2】図2は、本発明の導電性粘着テープの他の実施形態(導体層が突出部を備える態様)の断面図を示す。
【図3】図3は、実施例の評価(ヒートサイクル試験)に用いられる耐久評価用の端子基板の平面図を示す。
【図4】図4は、実施例の評価(ヒートサイクル試験)における温度のプロファイル(1サイクル目から2サイクル目まで)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の導電性粘着テープの一実施形態の平面図を示す。
【0021】
図1において、導電性粘着テープ1は、導体層2と、導体層2の上(厚み方向一方側))に形成される粘着剤層3と、導体層2および粘着剤層3の間に介在する金属層4とを備えている。なお、金属層4は、導体層2の下面にも形成されている。
【0022】
導体層2は、長手方向に延びる長尺状のシート(テープ)である。
【0023】
導体層2の厚みは、例えば、10〜100μm、好ましくは、20〜80μm、さらに好ましくは、30〜60μmである。
【0024】
また、導体層2を形成する導体材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、鉄、鉛、または、それらの合金などが挙げられる。これらのうち、導電性、コスト、加工性の観点から、銅、アルミニウムが挙げられ、さらに好ましくは、銅が挙げられる。
【0025】
粘着剤層3は、導体層2の上面全面を被覆するように、金属層4の上面全面に形成されている。
【0026】
粘着剤層3の厚みは、例えば、10〜100μm、好ましくは、20〜80μm、さらに好ましくは、25〜60μmである。
【0027】
粘着剤層3の厚みが上記範囲内にあれば、金属層4を形成する金属(好ましくは、低融点金属(後述))と導電性充填材との親和性を十分に確保して、粘着剤層3に優れた導電性を付与することができる。
【0028】
粘着剤層3は、粘着剤および導電性充填材を含有する導電性粘着剤組成物から形成されている。
【0029】
粘着剤は、粘着剤層3の粘着成分であり、また、導電性充填材を分散するマトリクス成分でもある。粘着剤としては、特に限定されず、例えば、感圧性粘着剤、熱硬化型粘着剤(接着剤)、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などの各種粘着剤が挙げられ、これら粘着剤は適宜選択される。
【0030】
そのような粘着剤として、具体的には、アクリル系粘着剤(具体的には、アクリル系感圧接着剤)、ゴム系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ポリイミド系粘着剤、フェノール系粘着剤、ユリア系粘着剤、メラミン系粘着剤、不飽和ポリエステル系粘着剤、ジアリルフタレート系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。
【0031】
とりわけ、粘着剤として、貼付作業の簡便性の観点から、好ましくは、感圧性粘着剤が挙げられ、粘着信頼性または耐久性の観点から、さらに好ましくは、アクリル系粘着剤(アクリル系感圧接着剤)が挙げられる。
【0032】
アクリル系粘着剤は、例えば、アクリルポリマーを主成分として含有する。
【0033】
アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル)を主成分として含有し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性モノマーを副成分として含有するモノマーを重合することにより得られる。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどのアルキル部分の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0035】
好ましくは、アルキル部分の炭素数が2〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、さらに好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸n−ブチルが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、モノマー総量に対して、例えば、70〜99質量%、好ましくは、90〜98質量%である。
【0038】
共重合性モノマーとしては、例えば、極性基含有モノマー、多官能性モノマー(例えば、ポリアルカンオールポリアクリレート)などが挙げられる。
【0039】
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー(無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマーを含む)が挙げられ、さらに、例えば、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、複素環含有ビニル系モノマー、アルコキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、マレイミド基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
【0040】
共重合性モノマーとして、好ましくは、極性基含有モノマーが挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシル基含有モノマー、とりわけ好ましくは、アクリル酸が挙げられる。
【0041】
共重合性モノマーの配合割合は、モノマー総量に対して、例えば、1〜30質量%、好ましくは、2〜10質量%である。
【0042】
モノマーの重合方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合などが挙げられる。好ましくは、溶液重合が挙げられる。
【0043】
溶液重合では、公知の重合開始剤、重合溶媒などが適宜の割合でモノマーに配合される。
【0044】
重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤(具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなど)、過酸化物系重合開殆剤などの油溶性重合開始剤が挙げられる。
【0045】
好ましくは、アゾ系重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0046】
重合溶媒としては、例えば、エステル(酢酸エチルなど)、例えば、芳香族炭化水素(トルエンなど)、脂肪族炭化水素(n−ヘキサンなど)、脂環族炭化水素(シクロヘキサンなど)、ケトン(メチルエチルケトンなど)などの溶媒が挙げられる。好ましくは、エステル、芳香族炭化水素が挙げられる。重合溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0047】
そして、上記したモノマー、重合開始剤および重合溶媒を配合してモノマー溶液を調製し、調製したモノマー溶液を、例えば、50〜70℃に加熱することにより、モノマーを重合し、これによって、アクリルポリマーを得る。
【0048】
また、溶液重合が採用される場合には、アクリルポリマーを粘着剤溶液として調製する。なお、調製された粘着剤溶液に溶媒(濃度調整用溶媒)を追加して、粘着剤溶液におけるアクリルポリマーの濃度(固形分濃度)を調整することもできる。
【0049】
導電性充填材は、粘着剤層3に導電性を付与する粒子(導電性粒子)であって、そのような導電性粒子としては、例えば、例えば、ニッケル粒子、鉄粒子、クロム粒子、コバルト粒子、アルミニウム粒子、アンチモン粒子、モリブデン粒子、銅粒子、銀粒子、白金粒子、金粒子などの金属粒子、例えば、それらの合金粒子または酸化物粒子、例えば、カーボンブラックなどのカーボン粒子、例えば、ポリマービーズ(樹脂粒子)に上記した金属、合金および/または酸化物が被覆された被覆粒子などが挙げられる。
【0050】
好ましくは、金属粒子が挙げられ、長期導通信頼性の観点から、さらに好ましくは、銀粒子が挙げられる。
【0051】
導電性充填材の形状は、特に限定されず、例えば、球状、板状(鱗片状)、スパイク状、フィラメント状、フレーク状などが挙げられ、耐久性の観点から、好ましくは、球状、板状、さらに好ましくは、球状である。
【0052】
導電性充填材が球状であれば、粘着剤に対して均一分散され易くなり、そのため、導電性粘着テープ1の導電性および粘着性を両立し易くすることができる。
【0053】
導電性充填材の最大長さの平均値(球状である場合には、平均粒子径)は、例えば、0.1〜100μm、好ましく、1〜50μmである。
【0054】
なお、平均粒子径は、50%粒径(D50、メジアン径)として算出される。
【0055】
また、導電性充填材が球状である場合には、導電性充填材の95%粒径(D95)が例えば、1〜200μm、好ましくは、10〜100μmである。
【0056】
上記した最大長さの平均値(D50およびD95を含む)は、例えば、マイクロトラック(日機装製)によって測定される。
【0057】
また、導電性充填材は、市販品を用いることができる。
【0058】
導電性充填材の含有割合は、粘着剤100質量部に対して、例えば、25〜250質量部、好ましくは、30〜150質量部、さらに好ましくは、35〜100質量部である。
【0059】
導電性充填材の含有割合を上記範囲内に設定することにより、導電性充填材の凝集が抑制され、粘着剤層3の表面(上面を含む)が粗くなり過ぎることを防止して、長期導通信頼性と粘着性とを両立することができる。さらに、製造コストを低減することもできる。
【0060】
導電性粘着剤組成物を調製するには、例えば、粘着剤に、上記で例示した濃度調整用溶媒を加えて、粘着剤溶液を調製する。粘着剤溶液における粘着剤の濃度(固形分濃度)は、例えば、1〜80質量%、好ましくは、10〜50質量%である。
【0061】
その後、調製した粘着剤溶液と導電性充填材とを配合する。
【0062】
これによって、導電性粘着剤組成物を調製する。
【0063】
なお、粘着剤を溶液重合によって粘着剤溶液として調製している場合には、重合溶媒を、濃度調整用溶媒として兼用することができ、あるいは、別途、重合溶媒に、濃度調整用溶媒をさらに追加することもできる。
【0064】
なお、導電性粘着剤組成物および粘着剤溶液には、必要に応じて、架橋剤、粘着付与樹脂、さらには、架橋促進剤、老化防止剤、充填材、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を適宜の割合で添加することができる。
【0065】
架橋剤は、粘着剤を架橋して、導電性粘着剤組成物の凝集力を向上させるために、必要により配合される。
【0066】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤(例えば、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体など)、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤が挙げられる。好ましくは、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0067】
粘着付与剤は、導電性粘着剤組成物の粘着性を向上させるために、必要により配合され、例えば、ロジンエステルなどが挙げられる。
【0068】
金属層4は、少なくとも、導体層2と、粘着剤層3との間に形成されている。詳しくは、導体層2の上面全面と、粘着剤層3の下面全面との間に形成されている。これにより、金属層4は、厚み方向において、導体層2と粘着剤層3との間に挟まれている。
【0069】
なお、金属層4は、導体層2の下面(厚み方向他方面、粘着剤層3が形成される面とは反対側の面、つまり、背面)にも形成されている。
【0070】
つまり、図1の実施形態では、金属層4は、導体層2の上面および下面の両面に形成されている。
【0071】
金属層4の厚みは、例えば、0.5〜30μm、好ましくは、3〜20μmである。
【0072】
金属層4の厚みが上記した範囲を超えると、金属層4が低融点金属(後述)からなる場合には、融解する低融点金属の量が過多となり、粘着剤層3の粘着性が低減する場合がある。
【0073】
一方、金属層4の厚みが上記した範囲に満たないと、金属層4が低融点金属(後述)からなる場合には、融解する低融点金属の量が過少となり、粘着剤層3の導電性および長期信頼性を向上させることができない場合がある。
【0074】
金属層4を形成する金属としては、例えば、亜鉛、ニッケル、錫、クロム、金、銀、ビスマス、インジウム、または、それらの合金(はんだなどを含む)などが挙げられる。
【0075】
金属層4を形成する金属として、長期信頼性を確保する観点から、好ましくは、低融点金属が挙げられる。その場合には、金属層4は、低融点金属層とされる。
【0076】
低融点金属としては、例えば、錫、ビスマスおよびインジウムから選択される少なくとも2種の金属の合金が挙げられる。低融点金属として、具体的には、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金などの錫を含有する錫合金が挙げられ、さらに好ましくは、錫−ビスマス合金などのビスマス合金が挙げられる。
【0077】
ビスマス合金におけるビスマス含量は、例えば、30〜80質量%、好ましくは、45〜70質量%である。
【0078】
ビスマス合金におけるビスマス含量が上記した範囲外にある場合には、金属層4の融点が高くなる場合がある。
【0079】
また、ビスマス含量が上記範囲を超える場合には、上記の場合に加え、さらに、低融点金属が脆くなり、低融点金属層において割れ(クラック)が発生する場合がある。
【0080】
なお、錫−インジウム合金などのインジウム合金におけるインジウム含量は、例えば、40〜65質量%である。
【0081】
低融点金属の融点は、合金を構成する各金属(錫単体、ビスマス単体、インジウム単体など)の融点よりも低く、具体的には、例えば、180℃以下、好ましくは、110〜180℃、さらに好ましくは、120〜150℃である。低融点金属の融点は、DSC(示差走査熱量測定、Differential scanning calorimetry)によって測定される。
【0082】
低融点金属の融点が上記温度を超える場合には、粘着剤層3と導通対象とを接合するときの、低温の加熱によって、低融点金属を融解させることができず、そのため、金属層4を介した導体層2と導通対象との接合が困難となる場合がある。
【0083】
そして、この導電性粘着テープ1を得るには、まず、導体層2を用意し、次いで、用意した導体層2の上面および下面に、例えば、めっき、蒸着、溶着、塗装、溶射などの薄膜形成方法などによって、金属層4を形成する。
【0084】
その後、導体層2の上面に形成される金属層4の上面に、粘着剤層3を形成する。
【0085】
粘着剤層3を形成するには、例えば、上記した導電性粘着剤組成物(溶媒が配合される場合には、導電性粘着剤組成物の溶液)を、公知の離型シート5(図1の仮想線参照)の表面に塗布し、その後、必要により、溶媒を、加熱により除去して、離型シート5の表面に粘着剤層3を形成する。その後、粘着剤層3を金属層4の上面に転写する。なお、離型シート5は、例えば、シリコーンなどによって表面処理されている。
【0086】
あるいは、上記した導電性粘着剤組成物を、上記した金属層4の上面に直接塗布し、その後、溶媒を除去することにより、粘着剤層3を形成することもできる。
【0087】
その後、粘着剤層3に架橋剤が配合されている場合には、熟成処理(エージング)により、架橋反応させる。
【0088】
これにより、粘着剤層3が形成される。
【0089】
このようにして得られる導電性粘着テープ1は、ヒートサイクル試験において測定される、1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下であり、かつ、下記で定義される抵抗値上昇率が100%以下である。
【0090】
1サイクル目の抵抗値の最大値が上記上限以下であれば、十分な電気伝導性を発揮することができる。
【0091】
また、抵抗値上昇率は、導電性粘着テープ1を長時間使用した場合や過酷な環境条件下で使用した場合に、どれだけ安定した電気伝導性を発揮するかの指標である。抵抗値上昇率が上記した上限以下であると、安定的に通電させ続けることが可能であり、導電性粘着テープ1を用いた製品は高い信頼性を発揮することができる。一方、抵抗値上昇率が上記した上限を超えると、長時間の使用や過酷な環境条件下での使用においては、急激に抵抗値が上昇して導通不良を起こす危険性があり、製品の信頼性が低下する。
【0092】
次に、導電性粘着テープ1のヒートサイクル試験について図3を参照して説明する。
【0093】
ヒートサイクル試験は、銀めっき層が形成された導体パターン41に導電性粘着テープ50を貼付して形成された電気回路を有する評価用基板(耐久評価用の端子基板)45において、電気回路に定電流を流しながら、耐久評価用の端子基板45を低温と高温とを周期的に変化させる温度雰囲気条件下に暴露し、導電性粘着テープ1と銀めっき層との間の抵抗(即ち、導電性粘着テープ50と銀めっき層が形成された導体パターン41との貼り付け部分(貼付部分)42の接触抵抗)を測定する試験である。
【0094】
耐久評価用の端子基板45は、図3に示すように、表面が銀めっき層(厚み5μm。図3において図示されず)が施された導体パターン(以下、「端子」とも称す)41が形成されたガラスエポキシ基板(耐久評価用基板、以下、「耐久評価用の端子基板」とも称す)45を用い、導体パターン41に導電性粘着テープ50を貼り合わせ、さらに、導体パターン41に定電流電源36および電位計38を配線37を介して接続することによって電気回路を形成して、耐久評価用の端子基板45を作製する。
【0095】
詳しくは、耐久評価用の端子基板45は、ガラス−エポキシ樹脂からなる基板43と、その上に所定パターンに形成される端子44とを備えている。端子44は、左右方向に間隔を隔てて4つ設けられており、各端子44(第1端子46、第2端子47、第3端子48および第4端子49)は、前後方向に延びている。なお、第1端子46、第2端子47、第3端子48および第4端子49は、左側から右側に向かって順次配置される。
【0096】
次いで、導電性粘着テープ50を、2mm×50mmの大きさに切り出し、これを、図3に示すように、各端子44の後端部に貼り付ける。
【0097】
なお、第2端子47および第4端子49の後端部の幅(左右方向長さ)が3mmであり、導電性粘着テープ50の幅(図3における前後方向長さ)が2mmであることから、第2端子47の後端部と導電性粘着テープ50との貼付面積、および、第4端子49の後端部と導電性粘着テープ50との貼付面積は、それぞれ、6mm(=3mm×2mm)である。
【0098】
また、第2端子47および第4端子49の前端部と、定電流電源36とを配線37を介して接続するとともに、第1端子46および第2端子47の前端部を、電位計38に配線37を介して接続することにより、電気回路を形成する。
【0099】
これにより、耐久評価用の端子基板45を作製する。
【0100】
次いで、図4で示される耐久(ヒートサイクル)条件、つまり、チャンバー(恒温槽)を使用し、−40℃と85℃との間を200回往復させるヒートサイクル条件にて、2Aの定電流を電気回路に流すことにより、耐久評価用の端子基板45についてヒートサイクル試験を実施する。
【0101】
具体的には、定電流電源36から導体パターン41に2Aの定電流を流しながら、チャンバーの開始温度を25℃とし、25℃から100℃/時間の速度で−40℃まで降温し、−40℃で10分間保持する。次に、チャンバー内の温度を−40℃から100℃/時間の速度で85℃まで昇温し、85℃で10分間保持する。その後、再び100℃/時間の速度で降温し、25℃に達するまでを1サイクルとし、これを少なくとも200回繰り返す設定とする。なお、1サイクルに要する時間は170分である。図4には、上記のチャンバー内の設定温度(ヒートサイクル条件)の、2サイクル目までのプロファイルを示す。なお、この設定温度(ヒートサイクル条件)は、IEC規格のIEC61215(第2版)、IEC61646(第2版)に準じたものである。
【0102】
上記のチャンバー(恒温槽)としては、公知慣用のチャンバーを用いることができ、特に限定されないが、例えば、商品名「PL−3KP」(エスペック社製)、商品名「PWL−3KP」(エスペック社製)などの市販品を用いることができる。
【0103】
また、2Aの定電流が流れる電気回路において、ヒートサイクル試験中に、電位計38によって電圧を、例えば、サンプリング周期:5〜10回/10分で、定期的に測定する。これにより、貼付部分42の抵抗値を定期的に取得し、これにより、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、および、200サイクル目の抵抗値の最大値を測定し、それらから下記式を用いて抵抗値上昇率を算出する。
【0104】
[抵抗値上昇率]=100×([200サイクル目の抵抗値の最大値]−[1サイクル目の抵抗値の最大値])/[1サイクル目の抵抗値の最大値]
なお、1サイクル目の抵抗値の最大値は、好ましくは、0.0001〜0.1Ω、さらに好ましくは、0.003〜0.1Ωである。
【0105】
一方、抵抗値上昇率は、好ましくは、80%以下である。
【0106】
そして、この導電性値着テープ1は、間隔を隔てて配置される導通対象の電気的な導通などに用いられる。より具体的には、例えば、プリント配線基板の接地、電子機器の外装シールドケースの接地、静電気防止用の接地、電源装置または電子機器(例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置、太陽電池など)などの内部配線に用いられる。
【0107】
次に、この導電性粘着テープ1を用いて、導通対象を電気的に導通するには、まず、図1の仮想線で示すように、離型シート5を粘着剤層3から引き剥がし、次いで、導電性粘着テープ1の粘着剤層3を粘着対象に貼着(圧着)する。
【0108】
その後、導電性粘着テープ1を、例えば、金属層4が低融点金属層からなる場合には、低融点金属の融点またはそれ以上の温度に、加熱する。加熱温度は、例えば、110〜180℃である。
【0109】
これによって、金属層4の低融点金属が融解し、金属層4と粘着剤層3の導電性充填材とが親和するとともに、導通対象が粘着剤層3に接合される。そして、導通対象が、粘着剤層3および導体層2を介して、電気的に接続されて、互いに導通する。
【0110】
そして、この導電性粘着テープ1によれば、導通対象と接続するときに、導電性粘着テープ1を低温で加熱すれば、金属層4を融解させて、金属層4を導電性充填材に親和させることができる。そのため、導電性充填材が含有される粘着剤層3における導電性を向上させることができる。
【0111】
そのため、導体層2と導通対象とを確実に電気的に接続することができる。
【0112】
その結果、導電性を長期にわたって維持することができる。
【0113】
とりわけ、金属層4が、低融点金属からなる低融点金属層である場合には、導通対象と接続するときに、導電性粘着テープ1を低温で加熱すれば、低融点金属層4を融解させて、低融点金属層4を導電性充填材に親和させることができる。そのため、導電性充填材が含有される粘着剤層3における導電性を向上させることができる。
【0114】
そのため、導体層2と導通対象とを一層確実に電気的に接続することができる。
【0115】
その結果、導電性を長期にわたって一層維持することができる。
【0116】
なお、図1の実施形態では、金属層4を、導体層2の上面および下面の両面(厚み方向両側面)に形成しているが、図示しないが、例えば、導体層2の上面(厚み方向一方側面)のみに形成することもできる。
【0117】
図2は、本発明の導電性粘着テープの他の実施形態(導体層が突出部を備える態様)の断面図を示す。なお、上記した各部に対応する部材については、図2おいて同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0118】
図1の実施形態では、粘着剤層3を、金属層4の上面全面に形成しているが、例えば、図2に示すように、金属層4の上面の一部に形成することもできる。
【0119】
図2において、導体層2は、断面視において、長手方向に長い略矩形状の平坦部分7と、平坦部分7から上側に突出する突出部分8とを一体的に備えている。
【0120】
突出部分8は、平面視において、略円形状または略矩形状に形成されており、長手方向および幅方向(幅方向に直交する方向)に間隔を隔てて整列配置されている。
【0121】
金属層4は、平坦部分7の上面と、突出部分8の上面および側面とに連続して形成されている。
【0122】
粘着剤層3は、突出部分8の上面に形成される金属層4を露出し、かつ、平坦部分7の上面に形成される金属層4を被覆するように形成されている。
【0123】
図2に示す導電性粘着テープ1についても、図1に示す導電性粘着テープ1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0124】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何らそれらに限定されない。
【0125】
実施例1
アクリル酸2−エチルヘキシル70質量部、アクリル酸n−ブチル30質量部、アクリル酸3質量部を配合して、モノマー混合物を調製し、セパラブルフラスコに投入した。
【0126】
次いで、調製したモノマー混合物100質量部に対して、重合開始剤としての2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、および、重合溶媒として酢酸エチル186質量部をセパラブルフラスコに投入して、モノマー溶液を調製し、モノマー溶液を窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。重合系内の酸素を除去した後、モノマー溶液を、63℃に昇温し、10時間反応させた後、濃度調整用溶媒としてのトルエンをさらに加えて、固形分濃度30質量%のアクリルポリマー溶液を得た。アクリルポリマー溶液におけるアクリルポリマーの重量平均分子量は、GPCによって測定したところ、標準ポリスチレン換算値として、約52万であった。
【0127】
その後、アクリルポリマー溶液に、アクリルポリマー100質量部に対して、架橋剤としての「コロネートL」(イソシアネート系架橋剤、目本ポリウレタン工業社製)2質量部、および、粘着付与樹脂として重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学社製、「ペンセルD−125」)30質量部を配合し、アクリル系粘着剤組成物の溶液(固形分濃度46.8質量%)を調製した。
【0128】
その後、アクリル系粘着剤組成物の溶液の固形分100質量部に対して、導電性充填材としての「Ag−HWQ−400」(球状の銀粒子、D50:13.2μm、D95:43.0μm、福田金属箔粉工業社製)35質量部を配合し、攪拌機で10分間混合して、導電性粘着剤組成物を調製した。
【0129】
上記で得られた導電性粘着剤組成物を、厚さ163μmの剥雛シート(「110EPS(P)ブルー」、王子製紙社製)上に、乾燥後の厚みが20μmになるように流延塗布し、常圧下、120℃で5分間、加熱乾燥して粘着剤層を形成した。
【0130】
別途、長尺状の、銅からなる厚み35μmの導体層を用意し、続いて、導体層の表面(上面)および裏面(下面)に、錫−ビスマス合金(ビスマス含量57±5質量%、融点139℃)からなる厚み12μmの金属層(低融点金属層)をめっきにより積層することにより、積層体を作製した。
【0131】
次いで、形成した粘着剤層の上面(一方面)に、用意した積層体を貼り合わせ、40℃で1日間エージングし、その後、幅2mmにカットして、導電性粘着テープを得た。
【0132】
実施例2
導電性充填材の配合量を70質量部に変更し、粘着剤層の厚みを30μmに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、導電性粘着テープを得た。
【0133】
実施例3
積層体の作製において、錫(融点232℃)からなる厚み1μmの金属層をめっきにより積層した以外は、実施例1と同様に処理して、導電性粘着テープを得た。
【0134】
比較例1
積層体の作製において、金属層(低融点金属層)を積層せず、粘着剤層の厚みを28μmに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、導電性粘着テープを得た。
【0135】
(評価)
1. ヒートサイクル試験
図3に示すように、耐久評価用の端子基板45を用意した。
【0136】
端子基板45は、ガラス−エポキシ樹脂からなる基板43と、その上に所定パターンに形成される端子44とを備えている。端子44の表面には、厚み5μmの銀めっき層が形成されている。端子44は、左右方向に間隔を隔てて4つ設けられており、各端子44(第1端子46、第2端子47、第3端子48および第4端子49)は、前後方向に延びている。なお、第1端子46、第2端子47、第3端子48および第4端子49は、左側から右側に向かって順次配置される。
【0137】
別途、実施例1〜3で得られた導電性粘着テープを、2mm×50mmの大きさに切り出し、剥離シートを剥離して、これを耐久評価用の端子基板50とした。
【0138】
なお、第2端子47および第4端子49の後端部の幅(左右方向長さ)が3mmであり、導電性粘着テープ50の幅(図3における前後方向長さ)が2mmであることから、第2端子47の後端部と導電性粘着テープ50との貼付面積、および、第4端子49の後端部と導電性粘着テープ50との貼付面積は、それぞれ、6mm(=3mm×2mm)であった。
【0139】
また、第2端子47および第4端子49の前端部と、定電流電源36とを配線37を介して接続するとともに、第1端子46および第2端子47の前端部を、電位計38に配線37を介して接続することにより、電気回路を形成した。
【0140】
これにより、耐久評価用の端子基板を作製した。
【0141】
この耐久評価用の端子基板に2Aの電流を電気回路に流して、耐久評価用の端子基板の抵抗値を測定した。
【0142】
次いで、図4で示される耐久(ヒートサイクル)条件、つまり、−40℃と85℃との間を200回往復させるヒートサイクル条件にて、耐久評価用の端子基板についてヒートサイクル試験を実施した。そして、1サイクル目の抵抗値の最大値(初期抵抗値)、200サイクル目の抵抗値の最大値および抵抗値上昇率を得た。
【0143】
その結果を表1に示す。
2. 外観観察
耐久性試験後の導電性粘着テープの外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
【0144】
<基準>
○:導電性粘着テープの導体層に変化がないことを確認した。
×:導電性粘着テープの導体層に腐食や変色があったことを確認した。
【0145】
その結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【符号の説明】
【0147】
1 導電性粘着テープ
2 導体層
3 粘着剤層
4 金属層
42 貼付部分
45 耐久評価用の端子基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と、
前記導体層の厚み方向一方側に形成され、粘着剤および導電性充填材を含有する粘着剤層と、
前記導体層および前記粘着剤層の間に介在する金属層と
を備え、
下記ヒートサイクル試験において測定される1サイクル目の抵抗値の最大値が0.1Ω以下であり、下記の抵抗値上昇率が100%以下である
ことを特徴する、導電性粘着テープ。
(ヒートサイクル試験)
前記導電性粘着テープを厚み5μmの銀めっき層に、貼付面積が6mmとなるように貼り付けて、耐久評価用の端子基板を作製する。その後、耐久評価用の端子基板を恒温槽内に入れて、恒温槽内の温度を25℃から−40℃まで降温して冷却し、続いて、恒温槽内の温度を−40℃で10分間保持し、次いで、恒温槽内の温度85℃まで昇温して加熱し、続いて、85℃で10分間保持し、再び降温して25℃に達するまでを1サイクルとし、このサイクルを繰り返しながら、前記導電性粘着テープと前記銀めっき層に2Aの定電流を流して、貼付部分の抵抗値を測定する。また、抵抗値上昇率を、200サイクル目の抵抗値の最大値と1サイクル目の抵抗値の最大値から、下記式を用いて算出する。
[抵抗値上昇率]=100×([200サイクル目の抵抗値の最大値]−[1サイクル目の抵抗値の最大値])/[1サイクル目の抵抗値の最大値]
【請求項2】
前記金属層の厚みが、0.5〜30μmであることを特徴とする、請求項1に記載の導電性粘着テープ。
【請求項3】
前記金属層が、低融点金属からなる低融点金属層であることを特徴とする、請求項1または2に記載の導電性粘着テープ。
【請求項4】
前記低融点金属の融点が、180℃以下であることを特徴とする、請求項3に記載の導電性粘着テープ。
【請求項5】
前記低融点金属が、ビスマス含量30〜80質量%のビスマス合金であることを特徴とする、請求項3または4に記載の導電性粘着テープ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40254(P2013−40254A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176786(P2011−176786)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】