説明

導電性組成物の製造方法及びその導電性組成物を用いた透明導電膜、有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、平滑性の劣化が少なく、安定性、発光均一性に優れ、かつ発光均一性の劣化が少なく発光寿命に優れる有機EL素子を与える透明電極を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される構造単位を有する高分子化合物を含有する導電性組成物の製造方法において、Q−A−OHを側鎖に有する高分子化合物の存在下で、一般式(I)のモノマー単位を酸化重合させることを特徴とする導電性組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、太陽電池、電磁波シールド、電子ペーパー、タッチパネル等の各種分野において好適に用いることができる透明電極、さらに該透明電極を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型TV需要の高まりに伴い、液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス・フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なるいずれのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。また、テレビ以外でも、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない技術要素となっている。
【0003】
従来透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基板上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。しかし、ITOに用いられているインジウムはレアメタルであり、且つ価格の高騰により、脱インジウムが望まれている。また、ディスプレイの大画面化、生産性向上に伴い、フレキシブル基板を用いたロールtoロールが所望されている。
【0004】
脱インジウム導電性材料として、ポリ酢酸ビニル中における塩素イオン、過塩素酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオンをドーパントとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)の製造法が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかしここで得られた組成物で成膜した導電膜では、絶縁体であるポリ酢酸ビニルにより導電性パスが寸断され、所望の導電性が得られないという課題を有していた。
【0005】
また近年大面積、且つ低抵抗値が要求される製品にも対応出来るよう、パターン状に形成された金属細線に導電性ポリマー等の透明導電膜を積層し、電流の面均一性と高い導電性を併せ持つ透明導電フィルムが開発されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、このような構成では、有機電子デバイスのリークの原因となる金属細線の凹凸を、導電性ポリマー等の透明導電膜でなだらかにする必要があり、導電性ポリマーの厚膜化が必須となる。しかし導電性ポリマーは可視光領域に吸収を有するため、厚膜化すると、透明電極の透明性が著しく低下してしまうという課題を有していた。
【0006】
また、導電性と透明性を両立する方法として、導電性繊維上へ導電性高分子と水溶性バインダー樹脂の混合物を積層する技術が開示されている(例えば、特許文献4)。しかし、導電性高分子の水溶液中へ水溶性バインダーを添加した場合、充分な導電率が得られないばかりでなく、導電性ポリマーへの相溶性の観点から、ポリマー添加量が制限され、充分な透過率を維持することが困難であるという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2721700号明細書
【特許文献2】特開2005−302508号公報
【特許文献3】特開2009−87843号公報
【特許文献4】特開2010−244747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、透明性、導電性、平滑性に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、配かつ性の劣化が少なく、安定性、発光均一性に優れ、かつ発光均一性の劣化が少なく発光寿命に優れる有機EL素子を与える透明電極を提供することにある。
【0009】
さらに、当該電極を用いた発光均一性が高く、発光均一性の劣化が少なく寿命に優れる有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これまで透明導電膜塗布液としては、導電性と透過率を両立させるために3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)等の水分散性ポリマーとバインダー樹脂を含有する組成物が開発されてきた。
【0011】
ここにおいて、バインダー樹脂としては水分散性導電性ポリマーとの相溶性の点から、親水性のバインダー樹脂が検討されてきた。
【0012】
しかし、透明基板としてフレキシブル性の要求が高まり、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを使用すると、フィルム変形を避けるとの観点から乾燥温度がガラス基板よりも低温となる。
【0013】
また、PEDOT/PSSと相溶することが知られている水酸基含有バインダー樹脂は、酸性条件下で水酸基が脱水反応を起こしポリマー鎖間で架橋するが、低温での乾燥では架橋進行率が低く、保存中に徐々に架橋反応が進行する。その結果所望の保存安定性が得られず、透明導電膜を用いた素子性能を著しく劣化させていた。
【0014】
これらの現象を改良すべく鋭意検討した結果、重合中に、PEDOTの分散安定性に優れ、かつ、PEDOTポリマー鎖を効率よくほぐし、導電性パスを形成する水酸基含有バインダー樹脂を含有させることで、達成できることが判明し本発明に至った。
【0015】
即ち、本発明の課題が、本発明構成の如く、PEDOTの製造時より水酸基含有バインダー樹脂を含有させることにより達成できることが判明し、本発明に至った。
【0016】
本発明はPEDOTの製造時より水酸基含有バインダー樹脂を含有させることにより、透明導電膜の透明性と導電性を両立し、かつ、膜強度に優れ、さらに高温、高湿度環境下における環境試験後でも高い導電性と透明性及び良好な膜強度を併せ持ち、バインダー樹脂由来の水の発生を抑制することで、安定性に優れた透明電極及び該透明電極を用いた長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子ともいう)が得られることを見いだしたものである。
【0017】
本発明は以下の構成により達成される。
【0018】
1.下記一般式(I)で表される構造単位を有する高分子化合物を含有する導電性組成物の製造方法において、下記一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物の存在下で、下記一般式(I−a)を酸化化学重合させることを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−、または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子またはアルキル基を表し,Aは置換若しくは無置換のアルキレン基、または−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。)
2.前記酸化化学重合に用いる酸化剤として、有機酸の第二鉄塩を用いることを特徴とする前記1記載の導電性組成物の製造方法。
【0025】
3.前記一般式(Z)において、Rは水素原子、Qは−C(=O)O−、Aはエチレン基であることを特徴とする前記1または2に記載の導電性組成物の製造方法。
【0026】
4.基材上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層と、前記1〜3のいずれか1項に記載の導電性組成物の製造方法により作成された導電性組成物を含有する第2導電層を有することを特徴とする透明導電膜。
【0027】
5.前記4に記載の透明導電膜を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、透明性、導電性、平滑性に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、平滑性の劣化が少なく、安定性、発光均一性に優れ、かつ発光均一性の劣化が少なく発光寿命に優れる有機EL素子を与える透明電極が提供できる。
【0029】
さらに、当該電極を用いた発光均一性が高く、発光均一性の劣化が少なく寿命に優れる有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の導電性組成物を用いた透明導電膜の構成の一例を図解した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0032】
先ず、本発明の導電性組成物を用いた透明導電膜の構成の一例を図解した概略図を示すと図1の如くである。
【0033】
図1において、1はパターン状に形成された例えば金属材料からなる第1導電層、2は導電性高分子化合物(ポリマー)、水酸基含有バインダー樹脂を含有する本発明の導電性組成物を含有する第2導電層、3は基材を示す。上面図及び断面図を示した。第2導電層に、一般式(Z)で表される構造単位を繰り返し有する高分子化合物である水酸基含有バインダーの存在下で製造した、一般式(I)で表される構造単位を繰り返し有する高分子化合物を含有する導電性組成物を含有することが好ましい。
【0034】
〔一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(水酸基含有バインダー樹脂)〕
本発明の導電性組成物を含有する第2導電層は、水酸基含有バインダー樹脂として、少なくとも前記一般式(Z)で表される構造単位を含む高分子化合物を含有する。このような高分子化合物は導電性高分子化合物と容易に混合可能であり、また、導電性パス形成補助や第二ドーパントと同様な効果も有するため、導電性高分子化合物と混合しても第2導電層の抵抗値を大幅には劣化させず、条件によっては寧ろ抵抗値を下げることも可能である。
【0035】
本発明において一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(水酸基含有バインダー樹脂)は、水溶性で、かつ、25℃の水100gに0.001g以上溶解するバインダー樹脂を意味する。前記溶解は、ヘイズメーターや濁度計で測定することができる。
【0036】
本発明に係る一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物は、少なくとも前記一般式(Z)で表される構造単位を含む構造を有し、前記一般式(Z)で表されるホモポリマーであっても良いし、他の成分が共重合されていても良い。他の成分を共重合する場合は、前記一般式(I)で表される構造単位を10モル%以上含有することが好ましい。
【0037】
また、一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物は、第2導電層の固形分中に30質量%以上、95質量%以下含まれていることが好ましく、40質量%以上、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
一般式(Z)で表される水酸基を有する構造単位において、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、Qは−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表し、Raは水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていても良い。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されても良い。これらのうち好ましくは、水酸基、アルキルオキシ基である。
【0039】
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が含まれる。
【0040】
上記アルキル基は分岐を有していてもよく、炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜8であることがさらに好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が含まれる。
【0041】
上記シクロアルキル基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることがさらに好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。
【0042】
上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。
【0043】
上記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。
【0044】
上記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。
【0045】
上記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。
【0046】
上記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。
【0047】
上記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。
【0048】
上記ヘテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることがさらに好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。
【0049】
上記ヘテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。ヘテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。上記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
【0050】
上記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。
【0051】
上記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。
【0052】
上記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる。
【0053】
上記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。
【0054】
上記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。
【0055】
上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。
【0056】
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。
【0057】
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。
【0058】
上記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0059】
上記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。
【0060】
上記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。
【0061】
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。
【0062】
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。
【0063】
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。
【0064】
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。
【0065】
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
【0066】
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。
【0067】
置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基が更に置換されても良い。
【0068】
本発明の前記一般式(Z)で表される水酸基を有する構造単位において、Aは置換或いは無置換アルキレン基、または−(CHCHRbO)x−(CHCHRb)−を表す。アルキレン基は、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていても良い。また、Rbは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていても良い。さらに、xは平均繰り返しユニット数を表し、1〜100の正数が好ましく、より好ましくは1〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記しても良い。
【0069】
以下に、一般式(Z)で表される構造単位の代表的具体例を示すが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0070】
【化4】

【0071】
〔導電性組成物〕
本発明において、「導電性」とは、電気が流れる状態を指し,JIS K 7194の「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が10Ω/□より低いことをいう。
【0072】
本発明に係る導電性高分子化合物は、上記一般式(I)で表される構造単位を繰り返し有する高分子化合物の酸化化学重合時に使用される酸化剤のアニオン化合物や別途添加されるポリスチレンスルホン酸等のアニオンと対をなすことで導電性を発現する高分子化合物である。
【0073】
本発明に係る導電性組成物は、一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(水酸基含有バインダー樹脂)の存在下で、導電性高分子化合物を酸化重合形成した、導電性高分子化合物と一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(水酸基含有バインダー樹脂)とを含有する組成物である。
【0074】
即ち、下記一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物の存在下で、下記一般式(I−a)を酸化化学重合させることを特徴とする。
【0075】
(一般式(I)で表される構造単位を有する高分子化合物)
本発明の導電性組成物中において形成される導電性高分子化合物は、主鎖がπ共役系で構成されるカチオン性の高分子化合物を有し、上記酸化剤のアニオンやPSS等のポリアニオンを対アニオンとして有する複合体構成を有する。
【0076】
本発明に係るカチオン性導電性高分子化合物は下記一般式(I)で表される構造単位を繰り返し含む高分子化合物が好ましく、本発明に係る導電性高分子化合物が下記一般式(I)で表される構造単位を繰り返し含む態様が好ましい態様である。
【0077】
【化5】

【0078】
一般式(I)中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。アルキレン部分は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性および相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基を有機高分子に導入することができる。
【0079】
一般式(I)で表される構造単位を含む高分子化合物は、同一の構造単位を繰り返し含んでもよいし、異なる2種類以上の構造単位を繰り返し含んでいても良い。
【0080】
一般式(I)で表される構造単位は一般式(I−a)を酸化化学重合することで合成することができる。
【0081】
【化6】

【0082】
一般式(I−a)中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。Aは置換基を有しても良いメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンを表すが、無置換のエチレンが好ましい。また、Qは2つとも酸素であることが好ましい。
【0083】
一般式(I−a)で表される構造単位であるチオフェン化合物の酸化重合は、例えば下記のようにして行うことができる。
【0084】
一般式(I−a)においてQが酸素原子である3,4−ジオキシアルキレン置換チオフェンは、3,4−ジオキシチオフェン−2,5−ジカルボン酸エステルのアルカリ金属塩と適当なアルキレンジハライドとを反応させ、次いで遊離3,4−(アルキレンジオキシ)−チオフェン−2,5−ジカルボン酸を脱カルボン酸にして得ることができる(例えば、Tetrahedron,1967,23,2437−2441およびJ.Am.Chem.Soc.,1945,67,2217−2218参照)。また、CLEVIOS M V2(ヘレウス社製)等市販の3,4−ジオキシチオフェンを使用しても良い。
【0085】
本発明においては、このような酸化重合反応を一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(水酸基含有バインダー樹脂)の存在下で、行うものである。
【0086】
例えば、一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(水酸基含有バインダー樹脂)を、ポリアニオンと共に、所定の溶媒(例えば水)に溶解し、更に過硫酸カリウム、硫酸鉄(III)等の酸化剤と共に溶解し、溶液中に、攪拌下、チオフェン化合物等を添加し、重合させる。
【0087】
本発明に係る一般式(I)で表される構造単位を有する導電性高分子化合物の合成について、3,4−アルキレンジオキシチオフェン構造を有するカチオン性高分子化合物を有する場合を例にして、ポリアニオン酸を使用する場合と使用しない場合に分けて説明する。
【0088】
〈ポリアニオンを使用する場合〉
本発明で用いられるポリアニオンは、高分子カルボン酸、高分子スルホン酸及びこれらの塩の各誘導体からなる群より選ばれる化合物等を挙ることができ、好ましくは高分子スルホン酸及びその塩である。ポリアニオンは単独に含有してもよいし、2種類以上を組み合わせて含有してもよい。また、ポリアニオンは、カルボン酸、スルホン酸を有する構造単位と酸残基を有していないモノマー、例えばアクリレート、メタクリレート及びスチレン等と共重合体を形成してもよい。
【0089】
高分子カルボン酸、高分子スルホン酸及びこれらの塩の具体例としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸及びこれらの塩であり、好ましくは、ポリスチレンスルホン酸及びその塩である。
【0090】
本発明に係る導電性組成物中、導電性高分子化合物は、前記一般式(I)で表される構造単位を繰り返し有する高分子化合物であって、一般式(II)で表される構造単位を繰り返し有する高分子アニオン化合物(以下ポリアニオンとも称する。)を対アニオンとして有しても良い。
【0091】
【化7】

【0092】
本発明の一般式(II)で表されるスチレンスルホン酸残基からなるスチレンスルホン酸構造単位において、Mはプロトン、アルカリ金属イオン、アンモニウム塩を示し、好ましくはプロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンであり、より好ましくはプロトン、ナトリウムイオンである。
【0093】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの合成は、塊状、溶液、沈澱、懸濁または(逆)乳化重合法によって実施することができる。適当な分子量を得るには溶液重合法が好ましい。
【0094】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの合成に使用する開始剤としては、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド類、過硫酸塩、アゾ化合物またはレドックス触媒等を用いることができる。過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過流酸塩、2,2′−アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物が好ましく使用される。
【0095】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの合成に使用する重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、水が好ましい。溶液重合は1〜80質量%、好ましくは10〜60質量%の総モノマー濃度で実施することができる。
【0096】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの合成を実施する重合温度は、使用する開始剤、溶媒によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。出発材料は溶剤中に最初に導入しても、溶剤中に別々に導入してもまたは一緒に導入してもよい。場合によっては適当な溶剤に溶解した遊離基開始剤の添加は、出発材料の添加前、添加と同時にまたは添加後に実施することができる。重合の妨害を回避するために、反応は還流下にまたは保護ガス雰囲気、好ましくは窒素ガスまたはアルゴン中で実施することが好ましい。
【0097】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの合成に使用するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる、これらは単独で使用しても、複数使用して共重合体を合成しても良い。
【0098】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの別途合成法としては、ポリスチレンのスルホン化が挙げられる。この場合のスルホン化率は50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは90%以上である。
【0099】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの分子量は好ましくは1,000〜2,000,000の範囲、より好ましくは2,000〜500,000、さらに好ましくは3000〜100000の範囲内である。
【0100】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンの分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーまたは浸透圧測定の様な慣用の方法で測定することができる。
【0101】
一般式(II)で表される構造単位を有するポリアニオンとカチオン性高分子化合物の質量比は、一般式(I)で表される構造単位を有する高分子化合物が1に対し0.1以上8.0以下が好ましく、より好ましくは0.2以上3.0以下であり、更に好ましくは0.3以上2.0以下である。
【0102】
重合に用いる有機溶剤としては、反応条件化で不活性であり、例えば脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノールおよびプロパノール;脂肪族ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン;脂肪族カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル;芳香族炭化水素、例えばトルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサン;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタンおよびジクロロエタン;脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル;脂肪族スルホキシドおよびスルホン、例えばジメチルスルホキシドおよびスルホラン;脂肪族カルボキシアミド、例えばメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミド;脂肪族および芳香族エーテル、例えばジエチルエーテルおよびアニソール等が挙げられる。さらに水又は水と上記有機溶剤との混合物も溶媒として使用することができる。好ましくは水である。
【0103】
酸化化学重合に用いられる溶媒の量としては、合成された導電性組成物の分散性の面から、本発明に係る導電性組成物が、0.1〜80質量%、好ましくは0.5〜50質量%の固体含有量を有するような溶媒の量が好ましい。
【0104】
酸化化学重合においては、使用する酸化剤、溶媒によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0105】
出発材料は溶剤中に最初に導入しても、溶剤中に別々に導入してもまたは一緒に導入してもよい。場合によっては適当な溶剤に溶解した酸化剤の添加は、出発材料の添加前、添加と同時にまたは添加後に実施することができる。重合の妨害を回避するために、反応は還流下にまたは保護ガス雰囲気、好ましくは窒素ガスまたはアルゴン中で実施することが好ましい。
【0106】
本発明に係る導電性組成物中の導電性高分子化合物は、一般式(II)で表される構造単位以外にアニオン基を有する構造単位を有してもよいが、全体のアニオン基を有する構造単位のうち50%(モル)以下であることが好ましく、特に25%以下が一般式(II)で表される構造単位以外のアニオン基を有する構造単位であることが好ましい。
【0107】
〈ポリアニオンを使用しない場合〉
適切な酸化剤は例えばJ.Am.Soc.85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適するいずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価で且つ取扱い易い酸化剤例えば鉄(III)塩例えばFeCl、Fe(ClO、無機酸の鉄(III)塩(例えば、Fe(SO)、またはH、KCr、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウムおよび銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデンおよびバナジウムイオンの存在下における空気および酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸および有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例にはC1〜20アルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩の例えばラウリル硫酸のFe(III)塩がある。有機酸の鉄(III)塩の例として次のものが挙げられる:C1〜20アルキルスルホン酸例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族C1〜20カルボン酸例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸例えばトリフルオロ酢酸およびパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時C1〜20−アルキル置換されたスルホン酸例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩、また上記の有機酸のFe(III)塩の混合物も使用することができる。中でもp−トルエンスルホン酸のFe(III)塩が好ましい。
【0108】
理論的にはチオフェン1モル当り2.25当量の酸化剤が対応するチオフェンの酸化重合に必要である[例えばJ.Polym.Sci.PartA、Polymer Chemistry,第26巻、1287頁(1988)参照]。しかしながら実際には、酸化剤はある過剰量で、例えばチオフェン1モル当り0.1〜2当量の過剰で用いる。
【0109】
酸化化学重合においては、使用する酸化剤、溶媒によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0110】
重合時間はバッチの大きさ、重合温度および酸化剤に依存して数分乃至30時間の間であり得る。より好ましくは一般に30分乃至24時間の間である。
【0111】
本発明に係る導電性高分子化合物を含有する導電性組成物は、前記の一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物の存在下、酸化剤を用い、溶媒中で3,4−アルキレンジオキシチオフェンの酸化化学重合により得られる。この際、3,4−アルキレンジオキシチオフェンは酸化化学重合により正に荷電されるが、その数および位置を明確に求めることは困難である。
【0112】
本発明に係る導電性組成物において、一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物と3,4−アルキレンジオキシチオフェンの酸化化学重合で得られる導電性高分子化合物の質量比は、導電性高分子化合物を1とした場合、0.4以上20.0以下が好ましく、より好ましくは0.6以上10.0以下であり、更に好ましくは1.0以上6.0以下である。
【0113】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る導電性組成物中には、透明なバインダー材料や添加剤を含んでいてもよい。透明なバインダー材料としては、塗布液を形成できる透明な樹脂であれば特に制限はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール系樹脂等を単独または複数併用して用いることができる。セルロース系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0114】
透明なバインダー材料としては、天然ポリマー、合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体であれば、特に限定はない。これらのパインダー材料のうち、水溶性バインダーが好ましく用いることができる。水溶性バインダーとしては、例えば:ゼラチン、カゼイン、デンプン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルエーテルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルエーテルセルロース等のセルロース類、キトサン、デキストラン、グアーガム、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アクリルアミド−アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ブタジエン−無水マレイン酸)、ポリ(n−ブチルアクリレート−2−メタクリロイルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−2−メタクリロキシトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(2−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル付加体、ポリ(エチレングリコール)ビス2−アミノエチル、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノカルボキシメチルエーテルモノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリエチレンイミン、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(1−グリセロールメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−エチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(N−イソ−プロピルアクリルアミド)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(2−ビニル−1−メチルピリジニウムブロミド)、ポリ(リン酸)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(ビニルスルホン酸)等が挙げられる。
【0115】
上記バインダー材料において、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等を有するポリマーは、リチウム、ナトリウム、カリウム等の塩を有していてもよく、窒素原子を有するポリマーは塩酸塩等の構造を有していても良い。上記バインダー材料は1種でも複数種でも使用することができる。
【0116】
前記図1に示した透明導電層を構成する場合、本発明に係る導電性組成物を用いた第2導電層は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明に係る導電性高分子化合物の他に、他の導電性高分子化合物を含有してもよい。
【0117】
(塗布、加熱、乾燥)
第2導電層は、上記の導電性高分子化合物、一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物を含有する塗布液を、第1導電層が形成された基材上に塗布し、加熱、乾燥して形成する。
【0118】
第2導電層は、パターン形成された第1導電層を完全に被覆してもよいし、一部を被覆または接触してもよい。
【0119】
第2導電層用の塗布液の塗布は、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。
【0120】
また、第1導電層の一部を、第2導電層が被覆または接触している透明電極を作製する手段としては、転写フィルムに第1導電層を後述の方法で形成し、さらに第2導電層を下述の方法で積層したしたものを、上述のフィルム基板に転写する方法が挙げられる。
【0121】
また、第1導電層の非導電部にインクジェット法等で公知の方法で、第2導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0122】
第2導電層は、一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物(ヒドロキシ基含有非導電性高分子化合物)の存在下で導電性高分子化合物を酸化重合形成した導電性組成物を含むことが好ましい。これにより、高い導電性、高い透明性、強い膜強度を得ることができる。
【0123】
このような構造を有する導電膜を形成することで、第1導電層である金属または金属酸化物細線、あるいは導電性ポリマー層単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
【0124】
第2導電層の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0125】
第2導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。
【0126】
例えば、80〜120℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。これにより電極の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、有機EL素子においては、駆動電圧の低減、寿命の向上といった効果が得られる。
【0127】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0128】
本発明において、透明導電層の表面の平滑性を表すRyとRaは、Ry=最大高さ(表面の山頂部と谷底部との高低差)とRa=算術平均粗さを意味し、JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる値である。本発明の透明電極は、透明導電層の表面の平滑性がRy≦50nm、また、併せて透明導電層の表面の平滑性はRa≦10nmであることが好ましい。本発明においてRyやRaの測定には、市販の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)を用いることができ、例えば、以下の方法で測定できる。
【0129】
AFMとして、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位で捉える。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域80×80μmを、走査周波数1Hzで測定する。
【0130】
本発明において、Ryの値は50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましい。同様に、Raの値は10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0131】
本発明に係る透明導電層を透明電極として用いるとき、透明電極は、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。全光透過率は、分光光度計等を用いた公知の方法に従って測定することができる。また、本発明の透明電極における透明導電層の電気抵抗値としては、表面抵抗率として1000Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましい。さらには、電流駆動型オプトエレクトロニクスデバイスに適用するためには、50Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることが特に好ましい。103Ω/□以下であると各種オプトエレクトロニクスデバイスにおいて、透明電極として機能することができて好ましい。前記表面抵抗率は、例えば、JIS K 7194:1994(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0132】
本発明に係る透明電極の厚みには特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的に10μm以下であることが好ましく、厚みが薄くなるほど透明性や柔軟性が向上するためより好ましい。
【0133】
《第1導電層形成工程》
第1導電層形成工程では、基材上に、金属材料を有する第1導電層を形成する。
【0134】
(基材)
基材は、第1導電層および第2導電層を担持しうる板状体であり、透明導電膜を得るためには、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が80%以上のものが好ましく用いられる。
【0135】
基材としては、フレキシブル性に優れており、誘電損失係数が十分小さくて、マイクロ波の吸収が導電層よりも小さい材質であるものが好ましく用いられる。
【0136】
基材としては、例えば、樹脂基板、樹脂フィルム等が好適に挙げられるが、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。透明樹脂フィルムとは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率が50%以上のものをいう。
【0137】
好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0138】
上記全光線透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に用いられるフィルム基板として好ましく用いられる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムがより好ましい。
【0139】
用いられる基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については、従来公知の技術を使用できる。
【0140】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0141】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0142】
また、フィルム基板の表面または裏面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定した水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定した酸素透過度が、1×10−3cm/m・24h・atm以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0143】
高バリア性フィルムとするためにフィルム基板の表面または裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0144】
(金属材料)
金属材料は、導電性を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属微粒子または金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は導電性の観点から銀であることが好ましい。
【0145】
本発明に係る第1導電層は、透明導電膜を形成するために、開口部を有するパターン状に基板上に形成される。開口部は、基板上に金属材料を有さない部分であり透光性窓部である。
【0146】
パターン形状には特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状、メッシュ状あるいはランダムな網目状であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。
【0147】
開口率とは、光不透過の導電部が全体に占める割合である。例えば、導電部がストライプ状あるいはメッシュ状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。
【0148】
パターンの線幅は10〜200μmが好ましい。細線の線幅が10μm未満では、所望の導電性が得られず、また200μmを超えると透明性が低下する。細線の高さは、0.1〜10μmが好ましい。細線の高さが0.1μm未満では、所望の導電性が得られず、また10μmを超えると有機電子デバイスの形成において、電流リークや機能層の膜厚し分布不良の要因となる。
【0149】
導電部がストライプ状またはメッシュ状の電極を形成する方法としては、特に、制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の一或いは二以上の物理的または化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、或いは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状或いはメッシュ状に加工できる。
【0150】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法がある。
【0151】
金属微粒子を含有インクとしては公知のものを利用できる。金属微粒子としては、例えば、銀、金、銅、などの金属微粒子、または、この金属を含む合金の微粒子を挙げることができる。特に銀が好ましい。
【0152】
金属微粒子の粒径は1nm以上1μm以下の金属ナノ粒子を含有するインクであることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。
【0153】
有機保護コロイドとしてアミン、また高級脂肪酸等含んでも良い、また、分散媒を含みインクとする。また分散媒としては、炭化水素類例えば、また、デカノール等の高級アルコール類が好ましい。そしてこのようにして調製した銀ペースト(インク)は、前記スクリーン印刷といったパターン様版を用い基板等の表面に印刷することができる。
【0154】
また、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、あるいは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]、及び実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
【0155】
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
【0156】
別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
【0157】
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0158】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの目付け量は0.005〜0.5g/mが好ましく、0.01〜0.2g/mがより好ましい。
【0159】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては、銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0160】
金属ナノワイヤの製造方法には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837、Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
【0161】
また、第1導電層の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、大面積化するには20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0162】
また、第1導電層はフィルム基板にダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、第1導電層の高導電化するため、特に好ましい。
【0163】
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明の透明電極を有することを特徴とする。
【0164】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機発光層を含む有機層および本発明の透明電極を有する。
【0165】
本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明の透明電極を陽極として用いることが好ましく、有機発光層、陰極については有機エレクトロルミネッセンス素子に一般的に使われている材料、構成等の任意のものを用いることができる。
【0166】
有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構成としては、
陽極/有機発光層/陰極、陽極/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、
陽極/ホール注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/陰極、
陽極/ホール注入層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
陽極/ホール注入層/有機発光層/電子注入層/陰極、
等の各種の構成のものを挙げることができる。
【0167】
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、および各種蛍光色素および希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。
【0168】
有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
【0169】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、自発光型ディスプレイ、液晶用バックライト、照明等に用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、均一にムラなく発光させることができるため、照明用途で用いることが好ましい。
【0170】
本発明の透明電極は高い導電性と透明性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、透明電極表面の平滑性が厳しく求められる有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子の透明電極として特に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0171】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」或いは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」或いは「質量%」を表す。
【0172】
[一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物の合成(本発明)]
合成例1
〔ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート(P−1)の合成〕
300mlナスフラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成社製)5.0g(43.1mmol、Fw.116.12)、2,2′−アゾビス(2−メチルイソプロピオニトリル)0.7g(4.3mmol、Fw.164.21)及びテトラヒドロフラン100mlを加え、8時間加熱環流した。その後、溶液を室温まで冷却し、激しく攪拌されたメチルエチルケトン2.0l中へ滴下した。反応溶液を1時間攪拌後、メチルエチルケトンをデカンテーションし、メチルエチルケトン100mlで壁面に付着した重合体を3回洗浄した。ポリマーはテトラヒドロフラン100mlに溶解し、200mlフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターによりテトラヒドロフランを減圧留去した。その後、80℃3時間減圧することで、残留しているTHFを留去し、数平均分子量57,800分子量分布1.24のP−1を4.1g(収率82%)得た。
【0173】
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
装置:Waters2695(Separatins Mpdule)
検出器:Waters 2414(Refractive Index Detecter)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr含有)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
合成例2
〔ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(P−2)の合成〕
300mlナスフラスコに2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(東京化成社製)5.0g(43.1mmol、Fw.115.06)、2,2′−アゾビス(2−メチルイソプロピオニトリル)0.7g(4.3mmol、Fw.164.21)及びテトラヒドロフラン100mlを加え、8時間加熱環流した。その後、溶液を室温まで冷却し、桐山ロート(φ60mm、No.4濾紙(桐山製作所製))にて固形分を濾別した。得られた固形分を100mlの水に溶解し、激しく攪拌されたアセトニトリル2.0l中へ滴下した。反応溶液を1時間攪拌後、5.5cmヌッチェにて固形分を濾別し、アセトニトリルにて洗浄した。80℃3時間減圧することで、残留しているアセトニトリルを留去し、数平均分子量63,200分子量分布1.44のP−2を4.38g(収率88%)得た。
【0174】
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0175】
合成例3
〔ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド)(P−3)の合成〕
300mlナスフラスコに2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(東京化成社製)4.0g(34.4mmol、Fw.115.06)、N−アクリロイルモルホリン(東京化成社製)1.2g(8.6mmol、Fw.141.08)、2,2′−アゾビス(2−メチルイソプロピオニトリル)0.7g(4.3mmol、Fw.164.21)及びテトラヒドロフラン100mlを加え、8時間加熱還流した。その後、溶液を室温まで冷却し、桐山ロート(φ60mm、No.4濾紙(桐山製作所製))にて固形分を濾別した。得られた固形分を100mlの水に溶解し、激しく攪拌されたアセトニトリル2.0l中へ滴下した。反応溶液を1時間攪拌後、5.5cmヌッチェにて固形分を濾別し、アセトニトリルにて洗浄した。80℃3時間減圧することで、残留しているアセトニトリルを留去し、数平均分子量54,900、分子量分布1.35のP−3を4.2g(収率86%)得た。
【0176】
構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0177】
[本発明導電性組成物の合成]
以下に、本発明に係る導電性組成物及び比較の導電性高分子化合物の合成の例を示す。
【0178】
合成例4
導電性組成物CP−1(P−1/PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PSS、PEDOT/PSS=1/1(質量比))の合成(本発明)
上記で調製したP−1(0.7g(6.0mmol;モノマー換算)、モノマー分子量116.12)をポリスチレンスルホン酸(PSS)(2.8g、2.7mmol;モノマー換算、モノマー分子量184.02)18%水溶液へ添加し、更に過硫酸カリウム(0.46g、1.7mmol、分子量270.32、関東化学社製)及び硫酸鉄(III)・n水和物(2.6mg、4.5×10−3mmol(純度70%換算)、分子量399.88、関東化学社製)、純水80mlを加え溶解した。ホモジナイザー(本体:ウルトラタテックス T−25、シャフトジェネレーター:S25N−10G(IKA社製))を溶液の液面下に設置、作動させた後、前記溶液中へ3.4−エチレンジオキシチオフェン(0.2g、1.4mmol、分子量142.18、アルドリッチ社製)を添加し、室温で24時間重合させた。続いて、陰イオン交換体(Bayer AG Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG Lewatit S100)5.0gを溶液へ添加し、8時間攪拌した。イオン交換体を濾過によって取り除き、得られた溶液に対し71kPa、ノズル直径0.1mm、5〜10℃の条件下、高圧ホモジナイザーを用いて2回均質化し、本発明に係る導電性組成物CP−1を得た(固形分濃度:1.7%)。CP−1の平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ118nm、98nmであった。
【0179】
合成例5
導電性組成物CP−2(P−1/PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PSS、PEDOT/PSS=1/1(質量比))の合成(本発明)
合成例4の導電性組成物CP−1の合成において、P−1、ポリアニオンであるポリスチレンスルホン酸(PSS)の添加量を各々0.4g(3.4mmol、分子量116.12)、1.1g(1.1mmol、18%水溶液、分子量184.02)に変更した以外は合成例4と同様な方法により導電性組成物CP−2を得た(固形分濃度:0.5%)。CP−2の平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ67nm、83nmであった。
【0180】
合成例6
導電性組成物CP−3(P−2/PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PSS、PEDOT/PSS=1/1(質量比))の合成(本発明)
合成例5の導電性高分子化合物CP−2の合成において、P−1をP−2、0.4g(3.5mmol、Fw.115.06)に変更した以外は合成例5と同様な方法により導電性組成物CP−3を得た(固形分濃度:0.5%)。CP−3の平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ88nm、103nmであった。
【0181】
合成例7
導電性組成物CP−4(P−3/PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PSS、PEDOT/PSS=1/1(質量比))の合成(本発明)
合成例5の導電性組成物CP−2の合成において、P−1をP−3、0.4gに変更した以外は合成例5と同様な方法により導電性組成物CP−4を得た(固形分濃度:0.5%)。CP−4の平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ91nm、84nmであった。
【0182】
合成例8
導電性組成物CP−5(P−1/PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/p−トルエンスルホン酸)の合成(本発明)
P−1(0.4g、3.4mmol、分子量116.12)をCLEVIOS C−W(p−トルエンスルホン酸の鉄(III)塩)(11.8g、7.0mmol、34%水溶液、分子量568.97)へ添加し、更に純水20mlを加え溶解した。攪拌された前記溶液中へ3,4−エチレンジオキシチオフェン(0.2g、1.4mmol、分子量142.18、アルドリッチ社製)を添加し、室温で12時間重合させた。その後、50℃で5時間攪拌後、室温まで冷却した。続いて、陰イオン交換体(Bayer AG Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG Lewatit S100)5.0gを溶液へ添加し、2時間攪拌した。イオン交換体を濾過により除去後、再度陰イオン交換体(Bayer AG Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG Lewatit S100)5.0gを溶液へ添加し、2時間攪拌した。この操作を計3回繰り返した後、イオン交換体を濾過によって取り除き、本発明に係る導電性組成物CP−5を得た(固形分濃度:2.5%)。
【0183】
CP−5の平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ153nm、132nmであった。
【0184】
合成例9
導電性組成物CP−6(P−1/PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/クロリド)の合成(本発明)
ドライボックス中でシュレンク管に無水塩化鉄(III)(0.5g、2.8mmol、分子量162.20)を添加後、三方コックを設置し、ドライボックスから出し、窒素ラインを接続後、ドライクロロフォルム10mlにP−1(0.4g、3.4mmol、分子量116.12)を溶解した溶液を窒素下で加え溶解した。攪拌された前記溶液中へ3,4−エチレンジオキシチオフェン(0.2g、1.4mmol、分子量142.18、アルドリッチ社製)を添加し、室温で24時間重合させた。溶媒をロータリーエバポレーターにて減圧留去後、純水50mlを投入した。続いて、陰イオン交換体(Bayer AG Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG Lewatit S100)5.0gを溶液へ添加し、2時間攪拌した。イオン交換体を濾過により除去後、再度陰イオン交換体(Bayer AG Lewatit MP62)5.0g、陽イオン交換体(Bayer AG Lewatit S100)5.0gを溶液へ添加し、2時間攪拌した。この操作を計3回繰り返した後、イオン交換体を濾過によって取り除き、本発明に係る導電性組成物CP−6を得た(固形分濃度:0.9%)。
【0185】
CP−6の平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ189nm、157nmであった。
【0186】
合成例10
導電性高分子化合物(ポリマー)CP−A(PEDOT/PSS)の合成(比較例)
合成例4の導電性組成物CP−1の合成において、P−1を使用しない以外は合成例4と同様な方法により導電性ポリマーCP−A(比較例)を得た(固形分濃度:0.8%)。
【0187】
CP−Aの平均粒径及び粒子の90質量%の粒径を示すd90はそれぞれ94nm、175nmであった。
【0188】
実施例1
《透明導電膜(透明電極)の作製》
〈第1導電層の形成〉
上記で得られたガスバリア性を有する透明電極用フィルム基板上のバリアのない面に、以下の方法で第1導電層を形成した。
【0189】
(細線格子(グリッド))
細線格子(金属材料)については以下に示す、グラビア印刷または銀ナノワイヤにより作製した。
【0190】
(グラビア印刷)
銀ナノ粒子ペースト1(M−Dot SLP:三ツ星ベルト製)をRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いて線幅50μm、高さ1.5μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、5分の乾燥処理を行った。
【0191】
〈透明電極TC−101の作製〉
ガスバリア性を有する透明電極用のフィルム基板上にグラビア印刷にて第1導電層を形成した透明電極上に、導電性組成物CP−1中のPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)質量の10倍量のジメチルスルホキシドを添加した溶液を、押し出し法を用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隔を調整して塗布し、110℃、5分で加熱乾燥し、導電性組成物からなる第2導電層を形成し、得られた電極を8×8cmに切り出した。得られた電極を、オーブンを用いて110℃、30分加熱することで透明電極TC−101を作製した。
【0192】
〈透明電極TC−102〜TC−104の作製〉
透明電極TC−101の作製において、導電性組成物CP−1を、導電性高分子化合物CP−2〜CP−4に変更した以外は透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−102〜TC−104を作製した。
【0193】
〈透明電極TC−105、TC−106の作製〉
透明電極TC−101の作製において、導電性組成物CP−1を、導電性組成物CP−5〜CP−6に変更し、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(アルドリッチ社製)をP−1質量の3%添加したこと以外は同様にして、透明電極TC−105、TC−106を作製した。
【0194】
〈透明電極TC−107の作製〉
(ランダムな網目構造)
銀ナノワイヤ分散液は、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、ポリビニルピロリドン K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
【0195】
ランダムな網目構造については以下に示すように銀ナノワイヤを用いて作製した。
【0196】
銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液を、バーコート法を用いて塗布し110℃、5分乾燥加熱し、銀ナノワイヤ基板を作製した。
【0197】
銀ナノワイヤによりランダムな網目構造を形成した透明電極上に、導電性組成物CP−1中のPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)質量の10倍量のジメチルスルホキシドを添加した溶液を、押し出し法を用いて、乾燥膜厚300nmになるように押し出しヘッドのスリット間隔を調整して塗布し、第2導電層を形成し、8×8cmに切り出した。得られた電極を、オーブンを用いて110℃、30分加熱することで透明電極TC−107を作製した。
【0198】
〈透明電極TC−108の作製〉
透明電極TC−101の作製において、導電性組成物CP−1を、導電性高分子化合物CP−Aに変更したこと、また、上記で調製したP−1を合成例4で使用した量と同量添加した以外は、透明電極TC−101の作製と同様にして、透明電極TC−108を作製した。
【0199】
《透明電極の評価》
得られた透明電極のフィルム形状、透明性、表面抵抗(導電性)及び膜強度を下記のように評価した。また、透明電極の安定性を評価するため、80℃90%RHの環境下で10日間置く強制劣化試験後の透明電極試料のフィルム形状、透明性、表面抵抗及び表面粗さ評価を行った。
【0200】
(透明性)
JIS K 7361−1:1997に準拠して、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。有機電子デバイスに用いるため、75%以上であることが好ましい。
【0201】
◎:80%以上
○:75%〜80%未満
△:70%〜75%未満
×:70%未満
(表面抵抗)
JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。表面抵抗は100Ω/□以下であることが好ましく、有機電子デバイスを大面積にするには、30Ω/□以下であることが好ましい。
【0202】
(表面粗さ(Ra、Ry))
AFM(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニット)を使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を用いて、JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準じ測定した。
【0203】
《有機ELデバイスの作製》
作製した透明電極基板を超純水で洗浄後、パターン辺長20mmの正方形タイル状透明パターン一個が中央に配置されるように30mm角に切り出し、アノード電極に用いて、以下の手順でそれぞれ有機ELデバイスを作製した。正孔輸送層以降は蒸着により形成した。透明電極TC−101〜TC−108を用い、それぞれ有機EL素子OEL−201〜OEL−208を作製した。
【0204】
市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に必要量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0205】
まず、正孔輸送層、有機発光層、正孔阻止層、電子輸送層からなる有機EL層を順次形成した。
【0206】
〈正孔輸送層の形成〉
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層を設けた。
【0207】
〈有機発光層の形成〉
次に、以下の手順で各発光層を設けた。
【0208】
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13.0質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で正孔輸送層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0209】
次いで、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で緑赤色燐光発光の有機発光層と同じ領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光の有機発光層を形成した。
【0210】
〈正孔阻止層の形成〉
さらに、形成した有機発光層と同じ領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着して正孔阻止層を形成した。
【0211】
〈電子輸送層の形成〉
引き続き、形成した正孔阻止層と同じ領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0212】
【化8】

【0213】
〈カソード電極の形成〉
形成した電子輸送層の上に、陽極外部取り出し端子及び15mm×15mmの陰極形成用材料としてAlを5×10−4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陰極及び陽極外部取り出し端子を形成した。
【0214】
さらに、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAlを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機EL素子を作製した。
【0215】
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子について発光均一性及び寿命を下記のように評価した。
【0216】
(発光均一性)
発光均一性は、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させた。1000cd/mで発光させた有機EL素子OEL−201〜OEL−208について、50倍の顕微鏡で各々の発光輝度ムラを観察した。また、有機EL素子OEL−201〜OEL−208をオーブンにて60%RH、80℃10時間加熱したのち、再び前記23±3℃、55±3%RHの環境下で1時間以上調湿した後、同様に発光均一性を観察した。
【0217】
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:ほとんど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面にわたって発光ムラが見られ、許容できない
(寿命)
得られた有機EL素子の、初期の輝度を5000cd/mで連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。別途アノード電極をITOとした有機EL素子を上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、以下の基準で評価した。100%以上が好ましく、150%以上であることがより好ましい。
【0218】
◎:150%以上
○:100〜150%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
評価の結果を表1に示す。
【0219】
【表1】

【0220】
表1に示した結果から、透明電極TC−108に対して、透明電極TC−101〜1−7は、透明性、導電性、平滑性に優れると共に、高温、高湿度環境下においても透明性、導電性、平滑性の劣化が少なく、安定性に優れることがわかる。また、比較の有機EL素子OEL−208は80℃、30分の加熱後、発光均一性が著しく劣化するのに対し、本発明の有機EL素子OEL−202〜OEL−207の発光均一性は加熱後でも安定しており、耐久性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0221】
1 第1導電層
2 第2導電層
3 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される構造単位を有する高分子化合物を含有する導電性組成物の製造方法において、下記一般式(Z)で表される構造単位を有する高分子化合物の存在下で、下記一般式(I−a)を酸化化学重合させることを特徴とする導電性組成物の製造方法。
【化1】

(式中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。)
【化2】

(式中、Aは置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Qは酸素原子または硫黄原子を表す。)
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Qは−C(=O)O−、または−C(=O)NRa−を表す。Raは水素原子またはアルキル基を表し,Aは置換若しくは無置換のアルキレン基、または−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表す。Rbは水素原子またはアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。)
【請求項2】
前記酸化化学重合に用いる酸化剤として、有機酸の第二鉄塩を用いることを特徴とする請求項1記載の導電性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(Z)において、Rは水素原子、Qは−C(=O)O−、Aはエチレン基であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性組成物の製造方法。
【請求項4】
基材上にパターン状に形成された金属材料からなる第1導電層と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性組成物の製造方法により作成された導電性組成物を含有する第2導電層を有することを特徴とする透明導電膜。
【請求項5】
請求項4に記載の透明導電膜を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−216450(P2012−216450A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81533(P2011−81533)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】