説明

導電膜用エッチング液および導電膜のエッチング方法

【課題】エッチングの際に発泡抑制効果および濡れ性が優れており、エッチング残りのない高精度の導電性パターンが得られるエッチング液およびエッチング方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも硝酸第二セリウムアンモニウムと、過塩素酸、硝酸および酢酸から選ばれる少なくとも1種とを有する導電膜用エッチング剤(a)と、下記の一般式(1)で表される化合物(b)とを含有することを特徴とする導電膜用エッチング液、および該エッチング液を使用した導電膜のエッチング方法。
(Rf1SO2)(Rf2SO2)NX (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に使用される導電膜からなるゲート配線やゲート電極などの導電性パターンの製造に使用される導電膜用エッチング液(以下、単に「エッチング液」という場合がある)に関し、さらに詳しくは、発泡抑制効果および濡れ性が優れており、エッチング残りのない高精度の導電性パターンが得られるエッチング液およびエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶テレビ、プラズマテレビ、パーソナルコンピューターなどの大型化、薄型化、軽量化に伴い、これらに使用されているゲート配線や電極などは、ガラスなどの基板上の導電膜をパターン化した導電性パターンが急速に普及してきている。上記の導電性パターンの製造に使用されるエッチング液は、より高性能化が必要になってきている。とくに、高性能化において上記エッチング液は、得られる導電性パターンの安定した電気特性を維持するために、エッチングの際に、導電膜のエッチング残りのないエッチングができ高精度の導電性パターンが得られる性能が求められている。
【0003】
上記の導電性パターンは、基板上に形成された導電膜を用いて、フォトリソグラフィー法あるいは印刷法により所望のパターン状のエッチングマスクを形成し、酸性エッチング液により、エッチングマスクで覆われていない導電膜をスプレーエッチング法あるいは浸漬エッチング法などの方法でエッチング除去し、エッチング後、エッチングマスクをアルカリ水溶液や有機溶剤などによって除去することにより得られる。
【0004】
上記の酸性エッチング液は、一般に、ある種の導電膜用のエッチング剤と、均一なエッチングを行うために、濡れ性の向上を目的として界面活性剤が配合されている。しかしながら、従来の界面活性剤は、上記のエッチング剤中の強酸化性化合物に対する耐酸化性が劣るために、充分な濡れ性および液切れ性効果を発揮することができない。また、上記界面活性剤は、エッチング液調製時、あるいはエッチングの際に起泡を誘因する。とくに、エッチング液の泡の発生は、エッチング液を循環濾過しながら使用する循環過程や、スプレー法によるエッチング工程で発生しやすい。
【0005】
上記のエッチング液の泡の発生は、導電性パターンの製造工程において、基板上に形成された導電膜やエッチングマスク面にそれらの泡が付着し、付着した部分がエッチング阻害されることにより、導電膜のエッチング残りを生じる。このことは、高精度の導電性パターンが得られないために、得られるパターン化されたゲート配線あるいは電極の電気特性(導電性)が不安定になる。さらに、上記の泡の発生を極力抑制するために、新しいエッチング液を追加補充する必要があり、エッチング液の補充設備を含めエッチング装置設備がかなり大きなものとなり生産効率が悪くなる。
【0006】
また、前記のエッチング液の濡れ性および液切れが不充分であると、スプレーエッチング法により導電性パターンを製造した場合に、被エッチング基材を、ローラーコンベアなどにより水平方向へ移動しながら、公知のコンピューター制御されたスプレー装置を使用して、複数のスプレーノズルから、ノズルを首振しながらまた吐出液量を調整しながらエッチングすると、被エッチング基材の中央部にエッチング液の滞留によるオーバーエッチング、あるいは濡れ不良に伴うエッチングむらが発生し、得られるゲート配線または電極などの線幅や開口部は、その線幅が細り、また、その開口部の寸法が増大して高微細精度の導電性パターンが得られない。このことは、上記のゲート配線や電極が断線したり、電気抵抗などに変化が生じ、安定した導電性が得られない。
【0007】
また、従来の酸性エッチング液を使用して、液晶表示装置のゲート配線あるいは電極を製造した場合に、エッチング液により溶解された導電膜の溶解物、あるいはエッチング剤組成物の加水分解した生成物などが残渣としてガラス基板表面に付着しやすい。これらの残渣は、上記のゲート配線や電極を有するガラス基板の透明性を阻害する。
【0008】
前記の導電膜用エッチング液として、ある種の特許文献1が開示されている。特許文献1に開示のエッチング液は、界面活性剤として直鎖のフッ化炭素基を有するパーフルオロアルキルスルホン酸塩と分岐鎖のフッ化炭素基を有するパーフルオロアルキルスルホン酸塩との混合物を配合したエッチング液である。
【0009】
上記開示の特許文献1のエッチング液は、従来の炭化水素系の界面活性剤を配合したエッチング液に比べて、耐酸化性の化学的安定性は優れており、また、被エッチング材やレジストに対する濡れ性および液切れ性が向上しているために、エッチングの際に、高精度でエッチング液の消耗を少なくしてエッチングすることができる。
【0010】
しかしながら、上記エッチング液は、エッチング液を循環濾過しながら繰り返して循環して使用している間に徐々に泡立つ傾向がある。また、時間が経過した該エッチング液を使用して、スプレー法にてエッチングしながら配線や電極などの導電性パターンを製造する場合、泡立ちがより増加するために必要に応じて新しいエッチング液を追加補充する必要があり、エッチング液の補充設備を含めエッチング装置設備がかなり大きなものとなり生産効率が悪くなる。
【0011】
上述のことから、エッチングに際して、泡の発生に伴うエッチング残りを生じないで、安定した電気特性を有する高精度の導電性パターンが得られるエッチング液およびエッチング方法が要望されている。
【0012】
【特許文献1】特開2008−294054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、エッチングの際に発泡抑制効果および濡れ性が優れており、エッチング残りのない高精度の導電性パターンが得られるエッチング液およびエッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の導電膜用エッチング剤(a)と一般式(1)で表される化合物(b)とを含有するエッチング液が、エッチングの際に発泡抑制効果および濡れ性が優れており、エッチング残りのない高精度の導電性パターンが得られるエッチング液であることを見出した。
【0015】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも硝酸第二セリウムアンモニウムと、過塩素酸、硝酸および酢酸から選ばれる少なくとも1種とを有する導電膜用エッチング剤(a)と、下記の一般式(1)で表される化合物(b)とを含有することを特徴とする導電膜用エッチング液を提供する。
(Rf1SO2)(Rf2SO2)NX (1)
(上記式中のRf1およびRf2は、アルキル基の水素の全部をフッ素で置き換えた炭素数が1〜6の直鎖のフッ化炭素基、または炭素数が1〜6の分岐を有するフッ化炭素基であり、Xは、カリウムイオン、リチウムイオン、またはナトリウムイオンである。)
【0016】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記硝酸第二セリウムアンモニウムの配合量が、前記導電膜用エッチング剤(a)総量中に50質量%〜90質量%を占める量であり、前記導電膜用エッチング剤(a)の濃度が、10質量%〜30質量%であり、前記化合物(b)の濃度が、0.01質量%〜0.1質量%であり、表面張力が、15mN/m〜30mN/mであり、および消泡時間が、20秒以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記の本発明のエッチング液を使用して、導電膜用基板上に形成された導電膜をエッチングすることを特徴とする導電膜のエッチング方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエッチング液は、より安定した導電性を有する高精度の導電性パターンを製造するのに有効である。また、エッチングの際の発泡抑制効果は、泡発生を防止するために頻繁に新しいエッチング液を追加補充する必要がないために、エッチング装置をよりコンパクトに設定できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に発明を実施するための好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明を主として特徴づける化合物(b)は、下記の一般式(1)で表される化合物である。
(Rf1SO2)(Rf2SO2)NX (1)
(上記式中のRf1およびRf2は、アルキル基の水素の全部をフッ素で置き換えた炭素数が1〜6の直鎖のフッ化炭素基、または炭素数が1〜6の分岐を有するフッ化炭素基であり、Xは、カリウムイオン、リチウムイオン、またはナトリウムイオンである。)
上記の化合物(b)は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
上記の化合物(b)は、前記一般式(1)に示されるようにそれらを構成するフッ化炭素基の炭素数が1〜6のものであり、好ましくはRf1およびRf2のフッ化炭素基の炭素数が、いずれも1、2、3、4および6である化合物から選ばれる少なくとも1種であり、とくに好ましくはRf1およびRf2のフッ化炭素基の炭素数が、いずれも4である化合物が挙げられる。
【0021】
また、前記の化合物(b)を構成する金属Xは、カリウムイオン、リチウムイオン、またはナトリウムイオンであり、好ましくはカリウムイオンである。これらの金属Xから構成される化合物(b)は、得られるエッチング液に対する溶解性が良好で、かつ、得られるエッチング液に白濁を生じないために、得られる導電性パターンに白シミが発生しない。上記の白シミは、液晶表示装置の液晶パネルの薄膜トランジスターが形成されたガラス基板の透明性を阻害する。
【0022】
前記の化合物(b)としては、例えば、前記の炭素数からなるフッ化炭素基を有するビスペルフルオロアルキルスルフォンイミドのカリウム塩、リチウム塩、およびナトリウム塩など、好ましくはビスペルフルオロブタンスルフォンイミドのカリウム塩、リチウム塩、およびナトリウム塩など、とくに好ましくは(C49SO22NKであるビスペルフルオロブタンスルフォンイミドのカリウム塩が挙げられる。上記の化合物(b)は、単独でも、あるいは2種以上を混合した混合物として使用することができる。
【0023】
前記化合物(b)の濃度は、得られるエッチング液中において、好ましくは0.01質量%〜0.1質量%、より好ましくは0.01質量%〜0.05質量%である。上記化合物(b)の濃度が高過ぎると、得られるエッチング液の消泡時間が長くなり発泡抑制効果が低下する。一方、その濃度が低過ぎると、得られるエッチング液の消泡時間が短くなり発泡抑制効果が向上するが、逆に導電膜やレジストに対する濡れ性効果が低下してむらのないエッチングができないために高精度の導電性パターンが得られない。
【0024】
本発明のエッチング液は、必須成分として前記の化合物(b)以外に導電膜用エッチング剤(a)を含有する。上記の導電膜用エッチング剤(a)は、少なくとも硝酸第二セリウムアンモニウムと、過塩素酸、硝酸および酢酸から選ばれる少なくとも1種とを有するものである。すなわち、硝酸第二セリウムアンモニウムを必須成分として、過塩素酸、硝酸および酢酸から選ばれる成分のいずれか単独、あるいは2種以上の成分を適宜に配合したものである。
【0025】
上記の導電膜用エッチング剤(a)としては、好ましくは、例えば、硝酸第二セリウムアンモニウム/過塩素酸/硝酸;硝酸第二セリウムアンモニウム/硝酸;硝酸第二セリウムアンモニウム/過塩素酸;硝酸第二セリウムアンモニウム/酢酸などが挙げられる。
【0026】
前記導電膜用エッチング剤(a)において、硝酸第二セリウムアンモニウムの配合量は、好ましくは前記導電膜用エッチング剤(a)総量中に50質量%〜90質量%を占める量である。上記の硝酸第二セリウムアンモニウムの配合量が多過ぎると、得られるエッチング液中に硝酸第二セリウムアンモニウムが析出し易くなり、一方、その配合量が少な過ぎると、導電性パターンを形成する導電膜に対するエッチング速度が遅く、また、エッチング速度の安定性が悪くなる。
【0027】
前記の導電膜用エッチング剤(a)の濃度は、得られるエッチング液中において好ましくは10質量%〜30質量%、より好ましくは20質量%〜28質量%である。上記導電膜用エッチング剤(a)の濃度が、上記範囲内であると、前記化合物(b)との相乗効果により安定した導電膜用エッチング液として優れたエッチング効果を発揮する。
【0028】
本発明のエッチング液は、前記の導電膜用エッチング剤(a)と化合物(b)とを水に適宜に、好ましくは前記濃度範囲内になるように配合して公知の方法で均一に混合溶解して調製する。上記の水としては、イオン交換水、軟水、蒸留水など、好ましくはイオン交換水が挙げられる。
【0029】
本発明のエッチング液は、好ましくはその表面張力が15mN/m〜30mN/m、より好ましくは17mN/m〜25mN/mである。上記の表面張力が上記上限値を超えると、導電膜および導電膜上に形成されたパターン状のエッチングマスクに対する湿潤濡れ性が劣り、充分なエッチングを行えないために、エッチングむらのない高精度の導電性パターンが得られない。なお、本発明における表面張力は、下記の[表面張力測定方法]により求めた値である。
[表面張力測定方法]:エレクトロ平衡式法(白金板吊下げ法)による25℃条件下にて測定する。
【0030】
本発明のエッチング液は、発泡抑制効果を示す消泡時間が、好ましくは20秒以下である。上記の消泡時間が上記範囲を超えると、発泡抑制効果が低下して、導電性パターンの製造工程におけるエッチングの際に、基板上に形成された導電膜やエッチングマスクに発生したエッチング液の泡が付着するために、泡が付着した部分がエッチング阻害されることにより、導電膜のエッチング残りを生じる。このことは、高精度の導電性パターンが得られないために、得られるゲート配線あるいは電極などの電気抵抗などに変化が生じ安定した導電性が得られない。さらに、上記の泡の発生を極力抑制するために、新しいエッチング液を追加補充する必要があり、エッチング液の補充設備を含めエッチング装置設備がかなり大きなものとなり生産効率が悪くなる。なお、本発明における消泡時間は、下記の[消泡時間測定方法]により求めた値である。
【0031】
[消泡時間測定方法]
得られたエッチング液20mlを50mlの試験瓶(スクリューバイアル)に入れ、50回振とうして起泡させ、上記試験瓶の上部に発生した泡の消泡するまでの時間を測定する。
【0032】
本発明のエッチング液は、液晶表示装置に用いられるゲート配線および電極、光学デバイスなどの電子部品として用いられる導電性パターンを製造するために使用することができる。とくに液晶表示装置に用いられるゲート配線および電極の導電性パターンを製造するのに有効である。
【0033】
本発明のエッチング液を使用して、導電膜用基板上に形成された導電膜をエッチングして導電性パターンを製造するエッチング方法について説明する。上記の本発明のエッチング液を使用したエッチング方法としては、例えば、次の工程(1)〜(5)からなっている。まず工程(1)では、導電膜用基板に形成された導電性を有するクロム系金属薄膜上に公知のポジ型感光性樹脂組成物を公知の塗布方法で塗布、乾燥し、0.5μm〜1.2μm(乾燥厚み)の感光性樹脂の塗膜を形成する。上記の導電膜用基板としては、例えば、液晶ディスプレイ用のアルカリガラス、ソーダライムガラス、フロートガラスなどのガラス基板、シリコーン基板、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリメタアクリル、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリイミドなどのプラスチック基板などが挙げられる。
【0034】
上記の導電性を有するクロム系金属薄膜としては、好ましくは上記の導電膜用基板上に、公知の蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などの方法により、導電性のクロム金属からなる150nm〜300nmの導電薄膜を形成したものである。上記のクロム金属は、クロム窒化物、クロム酸化物、クロム窒化酸化物、クロム酸化炭化物などの導電性を損なう不純物を含まないものであり、上記導電薄膜を形成の際にこれらの生成物の混入を抑えなければならない。
【0035】
また、前記のポジ型感光性樹脂組成物としては、前記クロム系金属薄膜を用いた導電性パターンの製造に使用される公知のポジ型感光性樹脂組成物であればいずれのものも使用することができ、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ社製のAZ−TFP−210K、あるいはロームアンドハース社製のマイクロポジットSC−500などのポジ型感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0036】
前記工程(2)では、前記の導電性を有するクロム系金属薄膜上に形成された感光性樹脂の塗膜に所望のゲート配線用などの導電性パターンをフォトマスクを介して紫外線などの活性エネルギーにより露光描画させる。
【0037】
前記工程(3)では、露光描画後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの公知のアルカリ現像水溶液を使用してスプレー法、あるいは浸漬法などの公知の現像方法により現像を行い、上記のフォトマスクパターンの形状のエッチングマスクを形成する。必要に応じて、得られたエッチングマスクをベーキング硬化する。
【0038】
前記工程(4)では、本発明のエッチング液を使用して、クリーンルーム温度(20〜30℃)雰囲気下にてエッチング液を循環濾過しながら、スプレー法、浸漬法などの公知のエッチング法により、エッチングマスクで覆われていない導電性クロム金属薄膜をエッチングし、該薄膜を溶解除去してガラスなどの導電膜用基板を露出させる。上記のスプレー法によるスプレーエッチングの条件は、スプレー圧0.1〜0.2MPaの条件で30秒〜130秒間エッチングする。
【0039】
前記工程(5)では、エッチング後、前記のエッチングマスクが剥離できる公知のアルカリ性剥離液を使用してエッチングマスクを除去し、さらに水洗して導電膜用基板上に導電性パターンを露出させ、液晶表示装置に用いられる導電性のクロム金属薄膜からなるゲート配線、あるいは電極とすることができる。
【実施例】
【0040】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1〜5](エッチング液J1〜J5)
表1に示すように導電膜用エッチング剤(a)、と化合物(b)と、イオン交換水とを配合し、均一に撹拌混合して本発明のエッチング液J1〜J5を調製した。なお、上記化合物(b)は下記の通りである。
・化合物(b)
(C49SO22NK(ビスペルフルオロブタンスルフォンイミドのカリウム塩)
【0042】
[比較例1〜3](エッチング液K1〜K3)
実施例の化合物(b)の換わりに界面活性剤Yを使用し、表1に示すように各々の成分を配合し、均一に撹拌混合してエッチング液K1〜K3を調製した。なお、上記の界面活性剤Yは下記の通りである。
・界面活性剤Y(ペルフルオロアルキルスルフォン酸塩)
Y1:直鎖のフッ化炭素基を有するC817SO3Kの70部と分岐鎖のフッ化炭素基を有するC817SO3Kの30部との混合物。
Y2:直鎖のフッ化炭素基を有するC817SO3Naの70部と分岐鎖のフッ化炭素基を有するC817SO3Naの30部との混合物。
Y3:直鎖のフッ化炭素基を有するC817SO3K単体。
【0043】

上記表中の数値は配合部数を表し、硝酸、過塩素酸および酢酸の配合部数は100%成分に換算した値である。
【0044】
前記の実施例および比較例のエッチング液を使用して下記のエッチング方法により導電膜用基板上に形成された導電膜をエッチングして液晶ディスプレイ用のゲート配線用導電性パターンを形成し、エッチングの際のエッチング液の発泡抑制状態、濡れ性、および上記の導電性パターンのエッチング残り、エッチング精度について下記の測定方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0045】
(エッチング方法)
液晶ディスプレイ用ガラス基板(導電膜用基板)の表面にスパッタリング方法により170nmの導電性クロム金属の導電膜を形成し、該導電膜表面にナフトキノンジアジドタイプのポジ型レジスト(ロームアンドハース社製、マイクロポジットSC−500)を1μm(乾燥厚み)になるように塗布し、乾燥後、該塗膜面を液晶表示装置用のゲート配線用のフォトマスクパターンを介して超高圧水銀灯により露光描画し、露光後、アルカリ現像水溶液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)にてスプレー現像しゲート配線用のエッチングマスクを形成した。次に上記エッチングマスクを23℃に調整された前記の実施例または比較例のエッチング液を使用して、エッチング液を循環濾過しながらスプレーエッチング装置(滝沢産業(株)製のNE−7000)を使用して、ノズルスキャン80回/min、基板回転数150rpm、エッチング液流量250g/minのスプレー条件にて90秒間(ジャストエッチ80秒+オーバーエッチ10秒)エッチングを行い、エッチングマスクで覆われていない導電膜をエッチングおよび水洗除去してゲート配線用導電性パターンを形成した。
【0046】
(エッチング液の発泡抑制状態)
前記のエッチング液の[消泡時間測定方法]により、各々のエッチング液のエッチングの際に発生するエッチング液の発泡抑制状態を測定した。上記の測定結果から、その消泡時間が短いほど発泡抑制効果が優れており、一方、その消泡時間が長いほど発泡抑制効果が劣り、エッチング液の泡の発生が多いことを示す。
【0047】
(濡れ性)
前記のエッチング液の[表面張力測定方法]により、各々のエッチング液のエッチングの際の導電膜およびエッチングマスクに対する濡れ性を測定した。上記の測定結果から、その測定値が小さいほど濡れ性がよく、一方、その測定値が大きいほど濡れ性が低下することを示す。
【0048】
(導電性パターンのエッチング残り)
得られた導電性パターンを1000倍の顕微鏡で目視し、導電性パターン以外の液晶ディスプレイ用ガラス基板上に残った不要の導電性クロム金属薄膜を測定し、下記の評価方法により評価した。
○:不要の導電性クロム金属薄膜が存在せず、導電性パターンのエッチング残りが認められない。
△:不要の導電性クロム金属薄膜が部分的に存在し、導電性パターンのエッチング残りが部分的に認められる。
×:不要の導電性クロム金属薄膜が全体に存在し、導電性パターンのエッチング残りが全面に認められる。
【0049】
(エッチング精度)
前記エッチング方法により得られたゲート配線用導電性パターンの設計寸法8μmのラインの線幅のばらつきの絶対値σ(μm)をレーザ顕微鏡(オリンパス(株)製、OLS1100)にて測定した。
【0050】

【0051】
上記の評価結果より、本発明のエッチング液は、エッチング液の発泡抑制効果および濡れ性が優れており、導電性パターンのエッチング残りがない高精度の導電性パターンが得られることが実証された。一方、比較例に見られる従来のエッチング液はエッチング液の発泡抑制効果が劣るために泡の発生に伴う導電性パターンのエッチング残りが発生する危険性があった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のエッチング液は、良好な導電性と高精度を有する導電性パターンが得られることから、液晶表示装置に用いられるゲート配線やゲート電極などに用いられる導電性パターンの製造に使用されるエッチング液として有効に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硝酸第二セリウムアンモニウムと、過塩素酸、硝酸および酢酸から選ばれる少なくとも1種とを有する導電膜用エッチング剤(a)と、下記の一般式(1)で表される化合物(b)とを含有することを特徴とする導電膜用エッチング液。
(Rf1SO2)(Rf2SO2)NX (1)
(上記式中のRf1およびRf2は、アルキル基の水素の全部をフッ素で置き換えた炭素数が1〜6の直鎖のフッ化炭素基、または炭素数が1〜6の分岐を有するフッ化炭素基であり、Xは、カリウムイオン、リチウムイオン、またはナトリウムイオンである。)
【請求項2】
前記硝酸第二セリウムアンモニウムの配合量が、前記導電膜用エッチング剤(a)総量中に50質量%〜90質量%を占める量である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
前記導電膜用エッチング剤(a)の濃度が、10質量%〜30質量%である請求項1または2に記載のエッチング液。
【請求項4】
前記化合物(b)の濃度が、0.01質量%〜0.1質量%である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項5】
表面張力が、15mN/m〜30mN/mである請求項1〜4のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項6】
消泡時間が、20秒以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のエッチング液。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエッチング液を使用して、導電膜用基板上に形成された導電膜をエッチングすることを特徴とする導電膜のエッチング方法。

【公開番号】特開2010−165887(P2010−165887A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7219(P2009−7219)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】