説明

小型散布装置

【課題】薬剤タンクと散布部との間に薬剤を調量するためのシャッターを設けた散布装置であって、粒径の異なる様々な薬剤を散布することができるように構成したシャッターを有する散布装置を提供する。
【解決手段】プレート羽根式シャッター32は繰出モータ33によって駆動され、前記プレート羽根式シャッター32は前記繰出モータ33の出力軸33aに一体回転可能に固設される本体部と、該本体部の周囲に形成される複数枚の繰出羽根とを有し、前記プレート羽根式シャッター32は、前記繰出羽根の径方向の長さが異なる細粒用プレート羽根式シャッターと交換可能に構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場等に薬剤や肥料等の散布物を散布するために用いられる小型散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場等に薬剤や肥料等の散布物を散布するため、所定の駆動源を有する動力散布装置が用いられている。動力散布装置は、概略的には次のような構成を有する。すなわち、動力散布装置は、散布物を散布するための散布部と、この散布部に供給される散布物を繰り出すための繰出部とを有する。散布部においては、所定のケースに内装され、モータやエンジン等を駆動源として機体前後方向を回転軸方向として回転可能に設けられるファンやスピンナーやインペラ等と称される回転体が備えられる。そして、この回転体の回転による送風や遠心力が用いられることにより、散布物が所定の散布口(吐出口)から散布される。
【0003】
このような動力散布装置に関しては、繰出部において薬剤タンクからの散布物の量を調節して散布物に供給するものであり、その形状としては、円盤状のスライドシャッターや、曲面開口部の下に円筒側面を当接させた半円筒を水平軸に軸支して回動させたロータリーシャッターや、平板開口部の下に設けた板を水平軸に軸支して上下に回動させるダンパーシャッターや、前記形状のシャッターを複合して構成するシャッターなどが公知となっている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、ロータリーシャッターとダンパーシャッターとを複合した複合シャッターが用いられている。かかる構成においては、ロータリーシャッターとダンパーシャッターとを繰出部に設けることとなるため、繰出部の容積が大きいことが必要であった。また、コスト面においても、ロータリーシャッターとダンパーシャッターとを設けることとなるため、単独のシャッターよりも多くのコストがかかっていた。
【0004】
また、繰出部の形状として、曲面開口部の下に円筒側面を当接させた半円筒を水平軸に軸支して回動させたロータリーシャッターのみからなる構成が公知となっている(例えば特許文献2参照)。特許文献2には、シャッターは駆動手段となるモータにより開閉駆動されている。
【0005】
しかし、従来のロータリーシャッターは繰り出す薬剤の粒径によっては詰まり等が発生して散布をすることが困難となっていた。つまり、薬剤の粒径が大きい場合には前記繰出羽根と前記繰出羽根を内装する繰出ケースとの間にできた空間に薬剤が入ることができず、ロータリーシャッターで詰まりが発生していた。他方、薬剤の粒径が小さい場合には前記繰出羽根と繰出ケースとの間に大量の薬剤が入り込むこととなり、少量の薬剤のみを繰り出すことが困難であった。
【0006】
また、繰り出す薬剤の粒径が大きい場合には回転する際に繰出羽根と、前記繰出羽根を内装する繰出ケースとの間に薬剤の粒が挟まって薬剤が破壊されたり、繰出羽根及び繰出ケースが損傷したりすることがあった。
【0007】
また、従来の動力散布装置のシャッターは、前記繰出ケースとの間に隙間を設けていることから、シャッターの回転停止時に薬剤が散布部へ漏れていた。そこで、繰出ケースと散布部との間には薬剤の漏れを防ぐ漏れ防止シャッターが別に設けられていた。このため、漏れ防止シャッターを設けるコストがかかり、また、小型散布装置の容積も大きくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−4762号公報
【特許文献2】特開2005−803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、薬剤タンクと散布部との間に薬剤を調量するためのシャッターを設けた散布装置であって、粒径の異なる様々な薬剤を散布することができるように構成したシャッターを有する散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
すなわち、請求項1においては、回転可能に設けられその回転により散布物を散布させる散布回転体と、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部に貯溜されている散布物を前記散布回転体に向けて繰り出す繰出回転体と、前記繰出回転体を収容する繰出収容部とを備え、前記散布回転体の回転を用いて散布物を散布する小型散布装置であって、前記繰出回転体は繰出駆動源によって駆動され、前記繰出回転体は前記繰出駆動源の出力軸に一体回転可能に固設される本体部と、該本体部の周囲に形成される複数枚の繰出羽根とを有し、前記繰出回転体は、前記繰出羽根の突出した部分の長さが異なる繰出回転体と交換可能に構成されたものである。
【0012】
請求項2においては、前記繰出回転体の径方向最外部と前記繰出収容部の内壁との隙間を散布物の粒径よりも小さく構成したものである。
【0013】
請求項3においては、前記繰出回転体の繰出羽根を弾性部材で構成したものである。
【0014】
請求項4においては、前記散布回転体は回転駆動源によって駆動され、前記繰出回転体は繰出駆動源によって回転駆動され、前記回転駆動源及び繰出駆動源を制御装置に接続し、散布量及び散布距離を決定する調整ダイヤルを制御装置に接続し、調整ダイヤルに応じて回転駆動源及び繰出駆動源を制御したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
すなわち、請求項1においては、散布物の粒径に合わせて繰出回転体を交換することにより、粒径の異なる様々な散布物を散布することができる。
【0017】
請求項2においては、前記繰出回転体と前記繰出収容部の内壁との隙間から散布物が漏れることがなくなるため、漏れを防止するシャッターを設ける必要が無くなり、コストの削減を図ることが可能となる。また、粒径の異なる様々な散布物を散布することができる。
【0018】
請求項3においては、前記繰出回転体と前記繰出収容部の内壁との間に散布物の粒が挟まったときであっても、繰出羽根が変形するため、散布物を破壊することなく、また、繰出羽根及び繰出収容部の内壁を損傷することもない。また、粒径の異なる様々な散布物を散布することができる。
【0019】
請求項4においては、作業者が調整ダイヤルの操作をするだけで、散布物の調量及び散布をすることができる。これにより、変形圃場のように頻繁に散布量や散布速度を変更しなければならない場所で散布物を散布する場合であっても煩雑な操作がなくなり効率よく散布作業を行うことができる。また、前記散布物の粒径が変更された場合であっても、調整ダイヤルの操作をするだけで、効率よく散布物の調量及び散布を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る小型散布装置の全体構成を示す正面図。
【図2】同じく背面図。
【図3】同じく左側面図。
【図4】同じく右側面図。
【図5】同じく上方斜視図。
【図6】小型散布装置の内部構造を示す側面一部切欠断面図。
【図7】シャッター収容部の内部構造を示す側面一部断面図。
【図8】シャッター収容部の内部構造を示す側面一部断面図。
【図9】小型散布装置の散布制御を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る小型散布装置の全体構成を示す正面図、図2は同じく背面図、図3は同じく左側面図、図4は同じく右側面図、図5は同じく上方斜視図、図6は小型散布装置の内部構造を示す側面一部切欠断面図、図7はシャッター収容部の内部構造を示す側面一部断面図、図8はシャッター収容部の内部構造を示す側面一部断面図、図9は小型散布装置の散布制御を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態に係る小型散布装置3は、圃場等に薬剤や肥料等の散布物を散布するための動力散布装置である。本実施形態に係る小型散布装置3は、作業者の前に掛けられた状態で用いられる前掛け方式のものである。すなわち、小型散布装置3は、バンド等が用いられることによって作業者の前側にて吊り下げられ抱えられたような状態で用いられ、作業者による歩行によって移動させられながら散布物を散布する。なお、以下の説明においては、小型散布装置3が散布する散布物を粒状の薬剤とし、図3における左方向を前方向として、小型散布装置3における前後方向および左右方向を定義する。したがって図2における左右方向が、小型散布装置3における左右方向に対応することとなる。また、図1等における上下方向を、小型散布装置3における上下方向とする。
【0023】
小型散布装置3は、散布する薬剤を吐出するための散布口21を有する。小型散布装置3は、薬剤を散布する散布部20と、この散布部20に供給される薬剤を繰り出すための繰出部30とを有する。散布部20は、所定の回転駆動源により回転させられるインペラ22を有し、このインペラ22の回転を用いて薬剤を散布口21から散布する。繰出部30は、薬剤タンク31内に貯溜されている薬剤を、所定の繰出機構を介して、散布部20のインペラ22の部分に供給する。すなわち、小型散布装置3においては、薬剤タンク31内に貯溜されている薬剤が、所定の繰出機構を介して薬剤の吐出経路に繰り出される。この吐出経路は、散布部20においてインペラ22が収容される空間に連通する。そして、吐出経路を介してインペラ22の部分に供給された薬剤が、インペラ22の回転による送風と遠心力によって散布口21から放出されることで散布される。
【0024】
以下では、本実施形態の小型散布装置3の詳細構成について説明する。前述したように、小型散布装置3は、散布部20と繰出部30とを有する。散布部20は、インペラ22と、このインペラ22を回転させる所定の回転駆動源としての散布モータ23とを有する。
【0025】
散布モータ23は、散布部20が有する散布部ハウジング24内に収容された状態で設けられる。散布モータ23は、散布部ハウジング24内において、出力軸(回転軸)の軸方向が前後水平方向となる姿勢で支持される。
【0026】
インペラ22は、インペラケース25に内装された状態で設けられる。インペラ22は、前後水平方向を回転軸方向として回転可能に設けられる。インペラ22は、複数枚(本実施形態では六枚)の拡散羽根22aを有する。拡散羽根22aは、前後方向およびインペラ22の径方向に略平行となる薄板状の部分である。六枚の拡散羽根22aは、インペラ22の円周方向に等角度間隔を隔てた状態で設けられ、正面視等において放射状となるように配される。なお、インペラ22が有する拡散羽根22aの枚数や形状等は、特に本実施形態に限定されるものではない。
【0027】
インペラ22は、散布部ハウジング24内に収容された状態の散布モータ23において前方に向けて突出する出力軸に対して固定されることにより、散布モータ23に連結される。つまり、散布部20においては、散布モータ23の前方にインペラ22が設けられる。したがって、インペラ22を内装するインペラケース25は、散布モータ23を収容する散布部ハウジング24の前側に設けられることとなる。インペラケース25は、インペラ22を収容する内部空間に対する開口部を有し、この開口部が、散布される薬剤が吐出される散布口21となる。
【0028】
インペラ22は、その回転方向が切り替えられるように設けられる。つまり、インペラ22を回転駆動させる散布モータ23の回転方向の切替えにより、インペラ22の回転方向が切り替えられる構成となっている。
【0029】
このような構成を備える散布部20においては、回転するインペラ22の中心部に向けて繰出部30から落下させられた粒状の薬剤が、拡散羽根22aの移動によりインペラケース25の内周面に沿って上方に向けて搬送され、インペラ22の回転による送風と遠心力によって付勢されて散布口21からインペラケース25外に放出されることで散布される。ここで、インペラ22の回転数、つまり散布モータ23の回転数(回転速度)の調整により、薬剤の散布距離が調整される。例えば、インペラ22の回転数(散布モータ23の回転数)が増加することにより、送風量および遠心力が増加し、散布距離が長くなる。このように、散布部20においては、インペラ22の回転による送風と遠心力が用いられることにより、薬剤が所定の散布口21から散布される。
【0030】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、回転可能に設けられその回転により散布物を散布させる散布回転体としてのインペラ22と、このインペラ22を収容するケース部材としてのインペラケース25とが備えられる。
【0031】
繰出部30は、インペラ22に向けて薬剤を繰り出す。繰出部30は、散布部20の上方に構成される。繰出部30は、薬剤を貯溜する薬剤タンク31と、薬剤タンク31内の薬剤を散布部20に対して繰り出すための繰出回転体としてのプレート羽根式シャッター32と、プレート羽根式シャッター32を駆動するための繰出モータ33とを有する。
【0032】
繰出モータ33は、繰出部30が有する繰出部ハウジング34内に収容された状態で設けられる。繰出モータ33は、繰出部ハウジング34内において、出力軸(回転軸)33aの軸方向が左右水平方向となる姿勢で支持される。具体的には、本実施形態では、繰出部ハウジング34は、正面視等において略十字形状に形成される。そして、その繰出部ハウジング34の略十字形状における左側の部分に、繰出モータ33が内装される。また、本実施形態では、繰出部ハウジング34は、散布部ハウジング24と一体的に構成されている。つまり、繰出部ハウジング34に対して、その下方に散布部ハウジング24が一体的に存在する。
【0033】
プレート羽根式シャッター32は、繰出部ハウジング34に内装された状態で設けられ、繰出手段と落下停止手段を兼ねる。つまり、従来では薬剤の散布量が多い散布機の場合では、シャッターの開閉量を調節して散布量を調節する構成とし、散布量が少ない散布機では繰出ロールを回転させて、繰出ロールの回転数を調節して散布量を調節していた。しかし、シャッターを開閉する構造では、ブリッジができ易く、一定量づつ散布することは難しく、攪拌装置等が必要となっていた。一方、繰出ロールを用いる場合、繰出ロール外周上に設ける凹部を大きくするには限界があり、確実に薬剤の落下を停止させるために繰出ロールの下方にシャッターを設けていた。
本発明では繰出量を少量から多量まで調節でき、シャッターも兼用できるプレート羽根式シャッター32として、左右水平方向を回転軸方向として回転可能に設けられる。即ち、図6に示すように、プレート羽根式シャッター32は、略紡錘形状(樽状)の本体部32aと、この本体部32aの周囲に形成される複数枚(本実施形態では八枚)の繰出羽根32bとを有する。繰出羽根32bは、左右方向およびプレート羽根式シャッター32の径方向に略平行となる薄板状の部分である。八枚の繰出羽根32bは、プレート羽根式シャッター32の周方向に等角度間隔を隔てた状態で設けられ、側面視において放射状となるように配される。なお、プレート羽根式シャッター32が有する繰出羽根32bの枚数や形状等は、特に本実施形態に限定されるものではない。
【0034】
プレート羽根式シャッター32は、繰出部ハウジング34内に収容された状態の繰出モータ33において側方(右方)に向けて突出する出力軸33aに対して固定されることにより、繰出モータ33に連結される。つまり、繰出部30においては、繰出モータ33の右方にプレート羽根式シャッター32が設けられる。プレート羽根式シャッター32は、繰出部ハウジング34内に形成されるシャッター収容部34aに設けられ(図6参照)、本体部32aと繰出羽根32bと繰出部ハウジング34のシャッター収容部34a内面との間に囲まれる空間内に薬剤を収容して、回転しながら下方へ搬送して落下させるのである。このプレート羽根式シャッター32の回転数(回転速度)を前記繰出モータ33により制御することにより変更でき、インペラ22に向けて繰り出す薬剤の量を調節することが可能となっている。つまり、前記繰出モータ33の回転速度を遅くすることにより、前記プレート羽根式シャッター32の回転数を減じて、単位時間あたりの繰り出す薬剤の量を少なくすることができ、また、前記繰出モータ33の回転速度を速くすることにより、前記プレート羽根式シャッター32の回転数を増やして、単位時間あたりの繰り出す薬剤の量を多くすることができる。
【0035】
以上のようにプレート羽根式シャッター32を回転させて薬剤を散布部20へ繰り出す構成の場合、プレート羽根式シャッター32の回転により繰出ケース部35内の薬剤を攪拌することになり、ブリッジ(薬剤の固まり)の発生が防止され均一に調量することができる。すなわち、本実施形態の小型散布装置3は、プレート羽根式シャッター32を設けたことにより、繰出羽根32b上でブリッジが壊される構成となっている。これにより、均一に調量することが可能となっている。また、従来の繰出ロールの場合、凹部内に入ることができない薬剤を除去するためのブラシ等が必要であったが、プレート羽根式シャッター32では繰出羽根32bの先端がシャッター収容部34a内面と当接することで、薬剤の収納空間を閉じて余分な薬剤が入ることを防止でき、ブラシをなくすことができる。ここで、プレート羽根式シャッター32の回転を停止させると繰出を停止させることができ、シャッターもなくすことができる。
【0036】
プレート羽根式シャッター32は、繰出モータ33に向けて突出する出力軸33aに、一体回転可能に固設されている。プレート羽根式シャッター32は出力軸33aから取り外し可能に構成しており、繰出羽根32bの大きさ及び本体部32aの大きさの異なる細粒用プレート羽根式シャッター42に取り替えることが可能となっている。例えば、前記出力軸33aとプレート羽根式シャッター32とにキー溝を設けてキー40を嵌合することにより固設し、プレート羽根式シャッター32を取り替える際にはキー40を取り外し、異なる細粒用プレート羽根式シャッター42を出力軸33aに嵌合して固設することができるようにしたものである。その他、羽根の枚数が異なるプレート羽根式シャッター42や羽根の厚さ、つまり、図7に示すように、羽根と羽根の間の凹部の大きさが異なるプレート羽根式シャッター42と交換可能としている。
【0037】
図7に示すように、細粒用プレート羽根式シャッター42は、略紡錘形状(樽状)の本体部42aと、この本体部42aの周囲に形成される複数枚(本実施形態では八枚)の繰出羽根42bとを有する。細粒用プレート羽根式シャッター42の繰出羽根42bは細粒用プレート羽根式シャッター42の周方向に等角度間隔を隔てた状態で設けられ、側面視において放射状となるように配される。また、前記繰出羽根42bは繰出羽根32bと比較して本体部42aから突出した部分の長さが短くなるように構成している。そして、出力軸33a中心から繰出羽根42bの径方向最外部までの距離は、プレート羽根式シャッター32と同じ距離となるように構成している。つまり、本体部42aの最大直径を大きくすることにより、繰出羽根42bの突出した部分の長さを短く構成するものである。なお、プレート羽根式シャッター32及び細粒用プレート羽根式シャッター42の出力軸33aに対する固設方法は、例えばスプライン嵌合により固設することも可能である。
【0038】
また、別実施例にかかるプレート羽根式シャッター52は、略紡錘形状(樽状)の本体部52aと、この本体部52aの周囲に形成される複数枚(本実施形態では八枚)の繰出羽根52bとを有し、前記繰出羽根52bは弾性部材を用いて構成している。前記繰出羽根52bは例えばゴムなどにより構成している。前記繰出羽根52bはシャッター収容部34aとの間に薬剤の粒が挟まった場合であっても、図8に示すように弾性部材である繰出羽根52bが曲がることにより、薬剤の粒を破壊することがない。更に、薬剤の流動により粒と粒とが擦れたり、粒と繰出羽根52bまたはケースとの摩擦等により粉が発生するが、弾性部材の繰出羽根52bの先端がシャッター収容部34a内面を摺接するときにスクレーパとして作用して、付着した粉剤を掻き取ることができる。更に、繰出羽根52bをフッ素樹脂などの低摩擦部材または撥水性の部材で構成することにより、薬剤自体の付着を防止することができる。
【0039】
シャッター収容部34aは、繰出部ハウジング34においてその略十字形状における中央部分に形成される空間部分である。図6に示すように、プレート羽根式シャッター収容部34aは、プレート羽根式シャッター32の回転形状に沿うような形状を有する。また、シャッター収容部34aは、その内側にプレート羽根式シャッター32を設けるものである。また、前記プレート羽根式シャッター32の繰出羽根32bの径方向最外部とシャッター収容部34aの内壁との間の隙間は、薬剤の粒径よりも小さく構成している。また、繰出部ハウジング34の略十字形状における上側の部分は、繰出ケース部35として構成されている。繰出ケース部35は、上側に向けて開口する略円筒形状の部分である。つまり、繰出ケース部35により形成される空間(繰出ケース部35の内部空間)は、上側が開口する略円柱形状を有する。また、繰出ケース部35の内部空間は、下方にかけて円錐状(漏斗状)に縮径するとともにシャッター収容部34aに連通する。シャッター収容部34aは、繰出ケース部35の内部空間に臨んだ状態で開口することにより、繰出ケース部35の内部空間と連通する。
【0040】
シャッター収容部34aにおける繰出ケース部35側と反対側、つまり下側には、繰出通路34bが形成されている。繰出通路34bは、シャッター収容部34aから、斜め前下方に向けて形成される。繰出通路34bは、前記のとおり一体的に構成される繰出部ハウジング34および散布部ハウジング24にわたって形成され、インペラ22の中心部近傍に向けてインペラケース25の内部空間に開口する。つまり、繰出通路34bは、上端側がシャッター収容部34aを介して繰出ケース部35の内部空間に連通するとともに、下端側がインペラケース25の内部空間に連通するように形成される。
【0041】
薬剤タンク31は、繰出部ハウジング34の上側に設けられる。薬剤タンク31は、繰出部ハウジング34を構成する繰出ケース部35に取り付けられた状態で設けられる。具体的には、薬剤タンク31の一端部には、繰出ケース部35の内部空間に沿う形状を有する円筒形状を有する接続部31b(図6参照)が形成されている。薬剤タンク31は、その接続部31bが繰出ケース部35に対して上方から挿入されることにより、繰出ケース部35に対して取り付けられる。薬剤タンク31は、繰出ケース部35に取り付けられた状態で、繰出ケース部35の内部空間と連通した状態となる。かかる構成により、薬剤タンク31内に貯溜されている薬剤が、重力によって繰出ケース部35内に導かれる。また、薬剤タンク31は、繰出ケース部35に取り付けられた状態において上側となる位置に形成される開口部を有し、この開口部が、蓋31aの着脱によって開閉される構成となっている。つまり、薬剤タンク31に対する薬剤の補給は、蓋31aが取り付けられる開口部を介して行われる。
【0042】
このような構成を有する繰出部30においては、薬剤タンク31から繰出ケース部35内に導かれた薬剤が、プレート羽根式シャッター32の回転によって、所定量ずつ繰出通路34bに送り出される。すなわち、プレート羽根式シャッター32を収容するシャッター収容部34aは、前記のとおりプレート羽根式シャッター32の回転形状に沿うような形状を有するとともに繰出ケース部35に向けて開口する。このため、プレート羽根式シャッター32が回転していない状態では、繰出ケース部35から繰出通路34bへの薬剤の落下が規制される。一方、プレート羽根式シャッター32が回転することにより、隣り合う繰出羽根32b間において受けられている薬剤が、繰出通路34bに対して送り出される。これにより、薬剤タンク31内の薬剤が、プレート羽根式シャッター32の回転によって、繰出通路34bに対して所定量ずつ繰り出される。そして、プレート羽根式シャッター32の回転により繰り出された薬剤は、繰出通路34bを介してインペラ22の中心部に導かれる。
【0043】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部である薬剤タンク31に貯溜されている薬剤をインペラ22に向けて繰り出す繰出回転体としてのプレート羽根式シャッター32が備えられる。そして、小型散布装置3における薬剤の繰出機構においては、プレート羽根式シャッター32の回転数が変更されることにより、繰出ケース部35からの薬剤の繰出量が調整される。このように、プレート羽根式シャッター32は、繰出部30が有する繰出量調整部材として機能する。また、プレート羽根式シャッター32については、繰出羽根32bの形状や大きさや数等が互いに異なるものとの交換により、粒の大きさや形状の異なる複数種類の薬剤の散布が可能となる。
【0044】
以上のように、本実施形態の小型散布装置3においては、繰出部30は、回転可能に設けられその回転数によってインペラ22に対する薬剤の繰出量を調整するための繰出量調整部材としてのプレート羽根式シャッター32と、このプレート羽根式シャッター32を回転させるための繰出駆動源としての繰出モータ33とを含む。そして、繰出部30から繰出通路34bを介して散布部20のインペラ22の中心部に導かれた薬剤、つまり繰出部30から散布部20に対して繰り出された薬剤は、散布部20において、前述したようにインペラ22の回転による送風と遠心力が用いられることにより、散布口21から散布される。
【0045】
また、小型散布装置3においては、散布用バッテリ36が設けられている。散布用バッテリ36は、散布部20を構成する散布モータ23と、繰出部30を構成する繰出モータ33とに電力を供給する。散布用バッテリ36は、バッテリケース36a内に収容された状態で設けられる。バッテリケース36aは、散布部ハウジング24の下側にて、散布部ハウジング24と一体的に構成される。
【0046】
また、小型散布装置3においては、図4及び図5に示すように、薬剤の散布量および散布距離を調整するための調整ダイヤル37が設けられている。小型散布装置3は、調整ダイヤル37の操作により、散布モータ23および繰出モータ33の回転数(回転速度)が調整されるように構成される。すなわち、散布モータ23および繰出モータ33の回転数は、調整ダイヤル37の操作によって段階的にあるいは連続的に調整可能となっており、調整ダイヤル37によって所望される薬剤の散布量および散布距離に応じた回転数に調整される。調整ダイヤル37は、前記のとおり繰出部ハウジング34が有する略十字形状における右側の部分において、右方に突出した状態で設けられる。
【0047】
前記調整ダイヤル37による繰出モータ33と散布モータ23の制御について説明する。
図9に示すように、プレート羽根式シャッター32と連結する繰出モータ33は制御装置であるコントローラ60に接続されている。また、散布モータ23はコントローラ60に接続されている。一方コントローラ60には、入力装置としての調整ダイヤル37が接続されており、作業者は薬剤の散布量及び散布距離を設定することができる。
【0048】
前記調整ダイヤル37からの情報をコントローラ60に入力し、コントローラ60は前記情報を元にしてプレート羽根式シャッター32と連結する繰出モータ33及び散布モータ23の回転速度を決定する。例えば、散布量が少なくまたは散布距離が短い場合には、前記プレート羽根式シャッター32と連結する繰出モータ33の回転速度を遅くすることで繰り出す薬剤の量を減じて、さらに、それに合わせて散布モータ23の回転速度を遅くすることによって、減じた薬剤の量に対応した速度、散布距離、及び散布量で散布する。
【0049】
また、散布量が多くまたは散布距離が長い場合には、前記プレート羽根式シャッター32と連結する繰出モータ33の回転速度を速くすることで繰り出す薬剤の量を増やして、さらに、それに合わせて散布モータ23の回転速度を速くすることによって、増やした薬剤の量に対応した速度、散布距離、及び散布量で散布する。
【0050】
また、小型散布装置3においては、支持フレーム38が設けられている。支持フレーム38は、一体の棒状の部材が折曲げ形成されることにより構成される。支持フレーム38は、図1〜図5に示すように、その両端部が繰出ケース部35の左右両外側の位置にて支持された状態で、この支持部分から散布部20の下側(小型散布装置3の下側)にかけて、背面視略V字状かつ側面視略コ字状となるように配される。支持フレーム38は、その支持される両端部が、繰出ケース部35の外側において左右両側に突出する支持ステー38aに対して支持ステー38aを前後方向に貫通した状態で支持固定される。
【0051】
また、小型散布装置3においては、ガード板39が設けられている。ガード板39は、略矩形状の板状部分を有する部材であり、薬剤タンク31の左右両側において水平方向に配され、インペラケース25の上方に位置するように設けられる。ガード板39は、散布口21から吐出される薬剤の不要な方向に対する散布を規制するとともに、その散布を規制した薬剤(ガード板39に対して下方から当たった薬剤)を下側(作業者の手前)に落とす機能を有する。
【0052】
ガード板39は、薬剤タンク31の外側の下部において左右両側に突出する支持板部31cに対して固定されることで支持される。すなわち、ガード板39は、略矩形状の板状部分の一端部に、薬剤タンク31に対して支持されるための支持ステー39aを有し、この支持ステー39aが薬剤タンク31の支持板部31cに対して固定されることにより、薬剤タンク31に対して支持される。
【0053】
また、本実施形態の小型散布装置3においては、ガード板39の一端に、小型散布装置3が前掛け方式として用いられるためのフック部39bが設けられている。フック部39bは、ガード板39の後端部から後方に向けて突出する板状の部分であり、小型散布装置3が作業者の前側に吊り下げられるためのバンド等が引掛けられる孔部39cを有する。つまり、薬剤タンク31の左右両側に設けられるガード板39に形成されるフック部39bが用いられ、前掛け用の小型散布装置3がバンド等により作業者の前側で吊った状態で支持される。
【0054】
以上の構成を備える本実施形態の小型散布装置3は、散布部20において、散布口21から吐出される薬剤の散布方向が複数の方向に切り替えられるように構成されている。以下、小型散布装置3において散布口21から吐出される薬剤の散布方向が切り替えられるための構成(以下「散布方向切替構成」という。)について、散布部20が備える構成とともに説明する。
【0055】
散布方向切替構成においては、インペラ22を収容するインペラケース25の回動により、散布口21から吐出される薬剤の散布方向が複数の方向に切り替えられる。
【0056】
すなわち、インペラケース25は、インペラ22の回転軸方向と略同じ方向を回動軸方向として回動可能に設けられる。具体的には、インペラケース25は、散布部ハウジング24の前端側において、散布部ハウジング24に対して回動可能に嵌合された状態で支持されることにより、前後水平方向を回動軸方向として左右方向に回動可能に設けられる。また、インペラケース25は、インペラ22を収容する空間部分と連通するとともにインペラ22の回転によって付勢される薬剤が吐出される開口部である散布口21を形成する。つまり、インペラケース25の一端に、散布口21が形成される。
【0057】
このように、本実施形態の小型散布装置3においては、インペラ22を収容するインペラケース25が、散布口21を形成する散布口形成部材として機能する。そして、インペラケース25が回動させられることにより、散布口21の向きが変化する。インペラケース25の回動には、切替ハンドル41が用いられる。切替ハンドル41は、インペラケース25の前面に前方に向けて突出する略円柱状の把持部分として構成される。切替ハンドル41は、インペラケース25に対して一体的に設けられる。つまり、インペラケース25は、切替ハンドル41の回動操作により、切替ハンドル41と一体的に回動する。このように、切替ハンドル41の操作により、インペラケース25が回動させられ、散布口21の方向、つまり散布方向が切り替えられる。
【0058】
以上説明した本実施形態に係る小型散布装置3は、散布する散布物を粒状の薬剤とするものであるが、これに限定されるものではない。つまり、小型散布装置3が散布する散布物としては、薬剤のほか肥料等であってもよい。また、本実施形態に係る小型散布装置3は、作業者に持たれた状態でとなる前掛け方式として用いられるものであるが、走行車輪等を有する移動台車に搭載された状態で用いられてもよい。
【0059】
以上のように、小型散布装置3は、回転可能に設けられその回転により薬剤を散布させるインペラ22と、回転可能に設けられその回転により薬剤タンク31に貯溜されている薬剤を前記インペラ22に向けて繰り出すプレート羽根式シャッター32と、前記プレート羽根式シャッター32を収容するシャッター収容部34aとを備え、前記インペラ22の回転を用いて薬剤を散布する小型散布装置3であって、前記プレート羽根式シャッター32は繰出モータ33によって駆動され、前記プレート羽根式シャッター32は前記繰出モータ33の出力軸33aに一体回転可能に固設される本体部32aと、該本体部32aの周囲に形成される複数枚の繰出羽根32bとを有し、前記プレート羽根式シャッター32は、前記繰出羽根32bの径方向の長さが異なる細粒用プレート羽根式シャッター42と交換可能に構成されたものである。
このように構成することにより、薬剤の粒径に合わせてプレート羽根式シャッター32を交換することにより、粒径の異なる様々な薬剤を散布することができる。
【0060】
また、前記小型散布装置3は、前記プレート羽根式シャッター32の径方向最外部と前記シャッター収容部34aの内壁との隙間を薬剤の粒径よりも小さく構成したものである。
このように構成することにより、前記プレート羽根式シャッター32と前記シャッター収容部34aの内壁との隙間から薬剤が漏れることがなくなるため、繰出通路34bに漏れを防止するシャッターを設ける必要が無くなり、コストの削減を図ることが可能となる。また、粒径の異なる様々な散布物を散布することができる。
【0061】
また、前記小型散布装置3は、前記プレート羽根式シャッター32の繰出羽根32bを弾性部材で構成したものである。
このように構成することにより、前記プレート羽根式シャッター32と前記シャッター収容部34aの内壁との間に薬剤の粒が挟まったときであっても、繰出羽根32bが変形するため、薬剤を破壊することなく、また、繰出羽根32b及びシャッター収容部34aの内壁を損傷することもない。また、粒径の異なる様々な薬剤を散布することができる。
【0062】
また、前記インペラ22は散布モータ23によって駆動され、前記プレート羽根式シャッター32は繰出モータ33によって回転駆動され、前記散布モータ23及び繰出モータ33をコントローラ60に接続し、散布量及び散布距離を決定する調整ダイヤル37をコントローラ60に接続し、調整ダイヤル37に応じて散布モータ23及び繰出モータ33を制御したものである。
このように構成することにより、作業者が調整ダイヤル37の操作をするだけで、薬剤の調量及び散布をすることができる。これにより、変形圃場のように頻繁に散布量や散布速度を変更しなければならない場所で薬剤を散布する場合であっても煩雑な操作がなくなり効率よく散布作業を行うことができる。また、前記散布物の粒径が変更された場合であっても、調整ダイヤル37の操作をするだけで、効率よく散布物の調量及び散布を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
3 小型散布装置
20 散布部
21 散布口
22 インペラ(散布回転体)
23 散布モータ(回転駆動源)
25 インペラケース(ケース部材)
30 繰出部
31 薬剤タンク(貯溜部)
32 プレート羽根式シャッター(繰出回転体)
33 繰出モータ(繰出駆動源)
36 散布用バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられその回転により散布物を散布させる散布回転体と、回転可能に設けられその回転により所定の貯溜部に貯溜されている散布物を前記散布回転体に向けて繰り出す繰出回転体と、前記繰出回転体を収容する繰出収容部とを備え、前記散布回転体の回転を用いて散布物を散布する小型散布装置であって、
前記繰出回転体は繰出駆動源によって駆動され、前記繰出回転体は前記繰出駆動源の出力軸に一体回転可能に固設される本体部と、該本体部の周囲に形成される複数枚の繰出羽根とを有し、前記繰出回転体は、前記繰出羽根の突出した部分の長さが異なる繰出回転体と交換可能に構成された、
ことを特徴とする小型散布装置。
【請求項2】
前記繰出回転体の径方向最外部と前記繰出収容部の内壁との隙間を散布物の粒径よりも小さく構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の小型散布装置。
【請求項3】
前記繰出回転体の繰出羽根を弾性部材で構成した
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の小型散布装置。
【請求項4】
前記散布回転体は回転駆動源によって駆動され、前記繰出回転体は繰出駆動源によって回転駆動され、前記回転駆動源及び繰出駆動源を制御装置に接続し、散布量及び散布距離を決定する調整ダイヤルを制御装置に接続し、調整ダイヤルに応じて回転駆動源及び繰出駆動源を制御した、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の小型散布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239909(P2010−239909A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93277(P2009−93277)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】