説明

工作機械

【課題】部品点数の少ない工作機械を提供する。また、タレット部材に取付けられた工具の位置を細かく調整できる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械は、タレット部材46の回転軸部46bに、ビルトインモータ48のロータ48bを直接に取付けるダイレクトドライブをもつ。また、工作機械は、タレット部材46に取付けられた複数の工具Tから所望の工具Tを割り出してワークWを加工するときに、油圧機構54を駆動してブレーキディスク51をブレーキパッド52で挟んで摩擦力によってタレット部材46をハウジング42に対して回転不能に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関し、詳しくは複数の工具が取付けられるタレット部材を有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の工作機械として、バイトやドリルなどの複数の工具が取付けられた回転板(タレット部材)が基台に回転可能に取付けられ、タレット部材を回転させることにより、複数の工具のうちから被加工物(ワーク)を加工する工具を選択できるものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された工作機械では、タレット部材を回転させるモータは、タレット部材を支持するハウジングの外に設けられ、タレット部材とモータとは、多数の歯車を介して連結されている。また、タレット部材の回転軸の端部に第1の係合歯が形成され、基台に設けられたカップリング機構に第2の係合歯が形成されている。そして、モータの駆動によってタレット部材の回転位置が所望の回転位置付近に至ったときに、タレット部材の回転軸を軸方向に移動させ、タレット部材とカップリング機構との係合歯同士を係合させることでタレット部材の回転を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−179511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした工作機械では、部品点数が少ないほど、工作機械全体を小型化したり、工作機械の製造や組立を容易にしたり、工作機械の製造コストを低減することができるため、少ない部品点数で工作機械が構成されることが望ましい。また、上述の工作機械では、タレット部材の回転軸の係合歯とカップリング機構の係合歯に従った角度でタレット部材が固定されるため、タレット部材の回転角度を微調整することができず、ワークに対して、選択した工具の位置がズレていても、工具の位置を調整することは困難であった。特に、タレット部材に対して工具を着脱できるものでは、工具をタレット部材に正確に取付けないとワークと工具との位置にズレが生じてワークの加工精度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、部品点数の少ない工作機械を提供することを第1の目的とし、タレット部材に取付けられた工具の位置を細かく調整できる工作機械を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工作機械は、
ハウジングと、
前記ハウジングに対して回転可能に取付けられ、複数の工具が取付けられるタレット部材と、
前記ハウジングに固定された固定部と、前記タレット部材に一体に取付けられた回転部と、を有し、前記回転部を回転させることによって前記タレット部材を前記ハウジングに対して回転させるモータと、
を備える。
【0007】
また、前記タレット部材と一体に回転する所定部位との摩擦力により前記タレット部材を前記ハウジングに対して回転不能に固定することによって、前記複数の工具のうちの1つの工具と被加工物とを位置合わせするとともに、前記位置合わせした工具による前記被加工物の加工中に前記タレット部材が前記ハウジングに対して回転することを禁止する固定手段、
を更に備えてもよい。
【0008】
さらに、前記タレット部材の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記検出された回転位置に基づいて前記タレット部材が目標位置で停止するよう前記モータと前記固定手段とを制御する制御手段と、
を更に備えてもよい。
【0009】
また、前記所定部位は、前記タレット部材と一体に回転するブレーキディスクであり、
前記固定手段は、前記ブレーキディスクを挟むブレーキパッドを含んでもよい。
【0010】
本発明の第2の観点に係る工作機械は、
ハウジングと、
前記ハウジングに対して回転可能に取付けられ、複数の工具が取付けられるタレット部材と、
前記タレット部材と一体に回転する所定部位との摩擦力により前記タレット部材を前記ハウジングに対して回転不能に固定することによって、前記複数の工具のうちの1つの工具と被加工物とを位置合わせするとともに、前記位置合わせした工具による前記被加工物の加工中に前記タレット部材が前記ハウジングに対して回転することを禁止する固定手段と、
を備える。
【0011】
本発明の第1の観点に係る工作機械によれば、工作機械の部品点数を少なくすることができる。また、本発明の第2の観点に係る工作機械によれば、タレット部材に取付けられた工具の位置を細かく調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略構成図である。
【図2】タレット装置の概略図である。
【図3】タレット部材を回転軸方向から見た様子の一例を示す図である。
【図4】図2中装置の断面を示すハッチングに代えて、ハウジングに対して回転する部位にハッチングを施した図である。
【図5】変形例のタレット部材を回転軸方向から見た様子の一例を示す図である。
【図6】変形例のタレット部材を回転軸方向から見た様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械20の概略構成図である。実施形態の工作機械20は、被加工物(ワーク)Wを加工する多機能旋盤として構成されている。工作機械20は、図示するように、工作機械20全体の台であるベッドSと、ワークWを保持して回転させるワーク保持部22と、ワークWを加工するための複数の工具を有する加工部30と、工作機械20全体を制御する制御部60と、を備える。
【0014】
ワーク保持部22は、ベッドS上に載置され、ベッドSに固定されたレール23と、レール23に係合するスライダ(図示せず)を有するワーク保持機構26と、ワーク保持機構26をレール23上で移動させるワーク移動用モータ29と、を備える。ワーク保持機構26には、ワークWを保持するチャック27が設けられ、ワーク保持機構26の内部には、チャック27で保持したワークWを回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が設けられている。こうしたワーク保持部22では、ワークWを、チャック27で保持した状態でワーク回転用モータによって回転させながら、ワーク移動用モータ29によってワークWの回転軸方向(以下、「Z軸方向」という)に往復運動させることができる。
【0015】
加工部30は、ベッドSに固定されてワーク保持機構26が移動する方向(Z軸方向)と垂直な方向(以下、「X軸方向」という)に伸びるレール31と、レール31に係合するスライダ(図示せず)を有するタレット装置40と、タレット装置40をレール31上で移動させるタレット移動用モータ32と、を備える。
【0016】
図2に、タレット装置40の概略図を示し、図3に、タレット装置40のタレット部材46をZ軸方向から見た様子(図2において、右側からタレット部材46を見た様子)の一例を示す。また、図4に、図2中装置の断面を示すハッチングに代えて、ハウジング42に対して回転する部位にハッチングを施した図を示す。タレット装置40は、図2から図4に示すように、ハウジング42と、ハウジング42に回転可能に支持されたタレット部材46と、タレット部材46を回転させるビルトインモータ48と、タレット部材46を回転不能に固定するブレーキ機構50とを備える。なお、図示は省略するが、ハウジング42は、レール31と係合するスライダ(図示せず)に連結されている。
【0017】
タレット部材46は、正多角形(図3の例では、正十角形)に形成されて複数の工具Tが取付けられる工具保持部46aと、この工具保持部46aに連結され、軸受け43によってハウジング42内にZ軸回りに回転可能なように軸支された回転軸部46bとを有する。工具保持部46aは、周面にバイトやドリルなどの工具Tをそれぞれに着脱可能に取付けることができ、実施形態では、ドリルを取付けるドリルホルダ47aが工具保持部の正多角形上の1面に設けられ、バイトを取付けるバイトホルダ47b〜47jがその他の面に設けられている。回転軸部46bには、タレット部材46の後方(図2中、左側)に、ブレーキディスク51が取付けられている。ブレーキディスク51は、回転軸部46bからフランジ状に凸となるディスク形状に形成され、タレット部材46と一体に回転する。
【0018】
ビルトインモータ48は、同期電動機や誘導電動機などの周知のモータで構成され、全体がハウジング42内に設けられている。ビルトインモータ48は、ハウジング42に固定されたステータ48aと、タレット部材46の回転軸部46bに直接に取付けられたロータ48bとを備える。このビルトインモータ48では、ギヤなどを介することなくタレット部材46に直接にロータ48bが取付けられるダイレクトドライブとしているから、ギヤなどによるエネルギ損失や騒音,振動を防止して、ビルトインモータ48からの出力によって効率よくタレット部材46を回転させることができると共に、装置全体を小型化することができる。また、ビルトインモータ48には、ロータ48bの回転位置、つまり、タレット部材46の回転位置を検出する回転位置検出センサ49も備えられている。この回転位置検出センサ49は、タレット部材46の回転軸部46bに形成された凹凸パターンを光学的に読み込んでタレット部材46の回転位置を検出するロータリーエンコーダや、電磁ピックアップ式、レゾルバなど、種々のセンサを用いることができる。
【0019】
ブレーキ機構50は、ハウジング42内に設けられたブレーキパッド52と、ブレーキパッド52に付勢力を作用させるバネ53と、ブレーキパッド52に油圧を作用させる油圧機構54と、を備える。ブレーキパッド52は、2つの環状の部材によって形成され、ブレーキディスク51のZ軸方向の両側に位置する。また、ブレーキパッド52のブレーキディスク51に面する面と反対側には、ブレーキパッド52とハウジング42の内壁面とによって、油圧室44が構成されている。油圧室44は、油圧機構54に連結され、内部がオイルで満たされている。油圧機構54は、例えば電動ポンプなどによって油圧を発生させ、発生させた油圧を継手55から油圧室44に作用させるように構成されている。こうしたブレーキ機構50では、油圧機構54から油圧室44に油圧を作用させていないときには、バネ53の付勢力によってブレーキパッド52がブレーキディスク51から離れる方向に付勢され、ブレーキパッド52とブレーキディスク51は接しない。これにより、ブレーキディスク51にはブレーキパッド52から力は作用せず、ブレーキディスク51及びタレット部材46はハウジング42に対して自由に回転できる状態となる。一方、油圧機構54から油圧室44に油圧を作用させたときには、バネ53の付勢力に抗してブレーキパッド52がブレーキディスク51に近付く方向に移動し、ブレーキディスク51がブレーキパッド52で挟まれる。これにより、ブレーキディスク51とブレーキパッド52とに摩擦力が作用し、ブレーキディスク51及びタレット部材46はハウジング42に対して回転不能に固定される。
【0020】
制御部60は、プロセッサや記憶部を有する周知のコンピュータで構成される。制御部60は、予め記憶部に記憶された制御シーケンスに従って工作機械20全体を制御する。制御部60には、例えば回転位置検出センサ49からタレット部材46の回転位置が入力されるなど、工作機械20の制御に必要な各種情報が入力され、ワーク移動用モータ29やワーク回転用モータ,タレット移動用モータ32,ビルトインモータ48,油圧機構54などに制御信号を送信する。また、制御部60には、操作者が各種指令を入力できるキーボードなどの入力部(図示せず)も設けられている。
【0021】
次に、上述のように構成された工作機械20を用いたワークWの加工について説明する。以下、まず、タレット装置40による工具Tの割り出し(選択、変更)について説明する。ワークWを加工する工具Tを割り出すときには、操作者の入力部への指令に基づいて、制御部60は、まず、油圧機構54からの油圧がブレーキパッド52に作用しないように油圧機構54を駆動する。つまり、ブレーキパッド52とブレーキディスク51とが接していない状態となるようにブレーキ機構50を駆動する。これにより、ブレーキディスク51及びタレット部材46は、ハウジング42に対して自由に回転することができる。続いて、制御部60は、ビルトインモータ48を駆動してタレット部材46を回転させる。このとき、制御部60は、回転位置検出センサ49によって検出されたビルトインモータ48のロータ48bの回転位置(つまり、タレット部材46の回転位置)に基づいて、所望の工具TがワークWを加工するための位置(目的位置)に割り出されて停止するようにタレット部材46を回転させる。そして、タレット部材46が目的とする回転位置に至ったら、制御部60は、油圧機構54を駆動して、油圧室44に油圧を作用させてブレーキディスク51をブレーキパッド52で挟む。これにより、タレット部材46が目的位置に割り出された状態で、ブレーキパッド52とブレーキディスク51との摩擦力によってブレーキディスク51及びタレット部材46が回転不能に固定される。
【0022】
タレット装置40によって工具Tを割り出したときに、割り出された工具Tの位置にズレが生じていたときには、操作者による入力部へ指令に基づいて、制御部60は、タレット部材46の回転位置を微調整する。実施形態の工作機械20では、ワークWを割り出しして固定するときに、タレット部材46とハウジング42の一方に形成された凹部と他方に形成された凸部とを係合させることでタレット部材46を回転不能に固定するのではなく、つまり、例えばタレット部材46とハウジング42に形成された係合歯同士を係合させてカップリングによりタレット部材46を回転不能に固定するのではなく、ブレーキディスク51をブレーキパッド52で挟んで摩擦力によりタレット部材46を回転不能に固定するから、任意の角度でタレット部材46を固定することができ、ワークWを加工するときのワークWと工具Tとの位置を微調整することができる。このときの工具Tの位置の微調整としては、例えば、操作者が制御部60にズレを補正するための角度を入力して制御部60が入力された角度に応じてタレット部材46を回転させたり、制御部60がタレット部材46をゆっくりと回転させて操作者が停止指令を制御部60に入力するなど種々の方法を用いることができる。なお、こうしてタレット装置40の工具Tの位置の微調整が完了したときには、制御部60は、タレット部材46の回転位置を記憶して、割り出した工具Tの位置を記憶することが望ましい。また、複数の工具Tを用いて連続してワークWを加工する際には、予め全ての工具Tに対してこうした調整を行って結果を記憶し、その後、記憶した情報を用いて制御部60がワークWを加工すれば、加工精度を高めることができると共にスムーズに加工を行うことができる。
【0023】
また、実施形態の工作機械20では、タレット部材46を回転させることで工具TのX軸方向の位置と鉛直方向(以下、「Y軸方向」という)の位置とが移動するが、このうちのX軸方向の移動を、タレット移動用モータ32を駆動することでキャンセルすることにより、工具TのY軸方向の位置を任意に調整することもできる。例えば、図3でタレット部材46の真下に位置するドリルT(D)について考えると、タレット部材46を時計回りに回転させると、ドリルT(D)は、X軸方向である左に移動すると共にY軸方向である上に移動する。ここで、タレット部材46の回転によるドリルT(D)のX軸方向の移動分は、タレット移動用モータ32を駆動してタレット装置40を右に移動させることで調整してキャンセルすることができる。したがって、ビルトインモータ48とタレット移動用モータ32とを制御することで、タレット装置40をY軸方向に移動させる機構を設けることなく、工具TのX軸方向およびY軸方向の位置を任意に調整することができる。
【0024】
続いて、タレット装置40によって割り出された工具TによるワークWの加工全体の流れについて説明する。ワークWを加工するときには、操作者が、ワーク保持機構26のチャック27内にワークWを配置してチャック27によりワークWを保持させる。続いて、操作者の入力部への指令に基づいて、制御部60がワーク回転用モータを駆動してワークWを回転させる。次に、前記指令に基づいて、制御部60は、ワーク移動用モータ29を駆動してワークWをZ軸方向に移動させると共にタレット移動用モータ32を駆動してタレット装置40をX軸方向に移動させ、工具TをワークWに当接させる。これにより、回転するワークWに工具Tが当てられてワークWが加工される。そして、加工が終了したら、制御部60は、ワーク移動用モータ29とタレット移動用モータ32とを駆動してタレット装置40をワークWから遠ざからせる。タレット部材46に設けられた他の工具Tで続けてワークWを加工するときには、制御部60は、タレット装置40を駆動することによって工具Tを変更し、再びワークWの加工を行う。また、他の工具TでワークWを加工しないときには、制御部60はワーク回転用モータを停止し、操作者がワーク保持機構26によるワークWの保持を解除する。
【0025】
以上説明した本発明の実施形態に係る工作機械20では、タレット部材46の回転軸部46bにビルトインモータ48のロータ48bを直接に取付けるダイレクトドライブとしたから、歯車やベルトなどの間接的機構部品を必要とせず、部品点数を少なくすることができ、工作機械全体を小型化したり、工作機械の製造コストを低減することができる。また、タレット部材46の回転軸部46bに直接にロータ48bを取付けることにより、ギヤの歯車同士に設けられた隙間(バックラッシュ)のためにズレが生じることもないから、ビルトインモータ48を駆動してタレット部材46の回転位置を適正に制御することができる。さらに、実施形態の工作機械20では、油圧機構54を駆動してブレーキディスク51をブレーキパッド52で挟むことで摩擦力によってタレット部材46をハウジング42に対して回転不能に固定することにより、タレット部材46に取付けられた工具Tのうちの1つの工具TとワークWとを位置合わせすると共に、位置合わせした工具TによるワークWの加工中にタレット部材46がハウジング42に対して回転することを禁止するから、タレット部材46を任意の角度で固定することができ、ワークWを加工するときにタレット部材46の工具TとワークWとの位置を細かく調整することができる。
【0026】
上述した工作機械20では、回転するワークWに対してタレット装置40で割り出された工具Tを当接させることによりワークWを加工する多機能旋盤としたが、ワークWの回転に代えて、工具Tを駆動する駆動源を設けて回転工具によりワークWを加工してもよい。この場合、上述したように、実施形態の工作機械20では、ビルトインモータ48でタレット部材46を回転させると共にタレット移動用モータ32で回転工具のX軸方向の位置を調整することで、回転工具を任意にX軸方向およびY軸方向に移動させることができるから、新たにY軸に移動させるアクチュエータを設けることなく、ワークWの任意の場所を加工することができる。したがって、部品点数を少なくすることができ、工作機械全体の小型化や軽量化,製造コストの低下などを図ることができる。
【0027】
上述した工作機械20では、タレット部材46には、1つのドリルホルダ47aと9つのバイトホルダ47b〜47jが設けられるものとしたが、こうした数に限定されるものではなく、また、ダイスやタップなど他の工具を取付けるホルダが設けられてもよい。さらに、図5や図6に示すように、タレット部材46の工具保持部46aの一辺に複数のドリルT(D)を装着できるドリルホルダ147a,247aを設けてもよく、種々の構成を採用することができる。この場合においても、ビルトインモータ48でタレット部材46を回転させると共にタレット移動用モータ32でドリルT(D)のX軸の位置を調整することで、複数のドリルT(D)の位置合わせを行うことができる。
【0028】
上述した工作機械20では、ワーク移動用モータ29とタレット移動用モータ32とにより、ワークWをZ軸方向(ワークWの回転軸に沿った方向)に移動させると共にタレット装置40をX軸方向(Z軸に垂直な水平方向)に移動させるものとしたが、ワークWをX軸方向に移動させると共にタレット装置40をZ軸方向に移動させる構成としたり、ワークWとタレット装置40との少なくとも一方をX軸方向およびZ軸方向に移動できる構成としてもよい。また、ワークWとタレット装置40との少なくとも一方をY軸方向(垂直方向)に移動させるアクチュエータを設けても構わない。また、こうしたモータなどのアクチュエータを設けずに、手動によってワーク保持機構26やタレット装置40を移動させる構成としてもよい。
【0029】
上述した工作機械20では、制御部60が、回転位置検出センサ49によって検出される検出値に基づいてタレット部材46の回転位置を制御するものとしたが、制御部60を備えずに、操作者がワーク回転用モータやワーク移動用モータ29,タレット部材回転用モータ,タレット移動用モータ,ブレーキ機構50を駆動する構成としても構わない。
【0030】
上述した工作機械20では、油圧機構54による油圧を油圧室44に作用させてブレーキディスク51を2つの環状の部材で構成されたブレーキパッド52で挟むブレーキ機構50を備えるものとしたが、摩擦力によってタレット部材46が回転不能に固定される構成であれば如何なる構成としてもよく、例えば、ブレーキパッド52は、ブレーキディスク51の一方だけの面に押し当てられるものとしたり、環状以外の形状に形成されてもよい。また、ブレーキ機構50は、油圧に代えてまたは加えて他の作動流体を用いてもよく、例えば、油圧に代えて空圧を用いるものでもよく、油圧と空圧を併用するものでもよい。さらには、作動流体を用いる機構に代えてまたは加えて、電磁的な機構によってブレーキパッド52をブレーキディスク51に押し当てる構成としてもよい。
【0031】
上述した工作機械20では、タレット部材46の回転軸部46bにロータ48bが一体に取付けられたビルトインモータ48を備えるものとしたが、タレット部材46の回転軸部46bにギヤなどを介してロータ46bが連結される構成としてもよい。また、ビルトインモータ48に代えて、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関など、タレット部材46を回転させる他の機構を備えてもよい。さらに、こうしたタレット部材46を回転させる動力を出力する機構を備えない構成としても構わない。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
20 工作機械
22 ワーク保持部
23 レール
26 ワーク保持機構
27 チャック
29 ワーク移動用モータ
30 加工部
31 レール
32 タレット装置移動用モータ
40 タレット装置
42 ハウジング
43 軸受け
44 油圧室
46,146,246 タレット部材
46a 工具保持部
46b 回転軸部
47a,147a,247a ドリルホルダ
47b〜47j バイトホルダ
48 ビルトインモータ
48a ステータ
48b ロータ
49 回転位置検出センサ
50 ブレーキ機構
51 ブレーキディスク
52 ブレーキパッド
53 バネ
54 油圧機構
55 継手
60 制御部
S ベッド
T 工具
T(D) ドリル
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに対して回転可能に取付けられ、複数の工具が取付けられるタレット部材と、
前記ハウジングに固定された固定部と、前記タレット部材に一体に取付けられた回転部と、を有し、前記回転部を回転させることによって前記タレット部材を前記ハウジングに対して回転させるモータと、
を備える工作機械。
【請求項2】
前記タレット部材と一体に回転する所定部位との摩擦力により前記タレット部材を前記ハウジングに対して回転不能に固定することによって、前記複数の工具のうちの1つの工具と被加工物とを位置合わせするとともに、前記位置合わせした工具による前記被加工物の加工中に前記タレット部材が前記ハウジングに対して回転することを禁止する固定手段、
を更に備える請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記タレット部材の回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記検出された回転位置に基づいて前記タレット部材が目標位置で停止するよう前記モータと前記固定手段とを制御する制御手段と、
を更に備える請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記所定部位は、前記タレット部材と一体に回転するブレーキディスクであり、
前記固定手段は、前記ブレーキディスクを挟むブレーキパッドを含む、
請求項2又は3に記載の工作機械。
【請求項5】
ハウジングと、
前記ハウジングに対して回転可能に取付けられ、複数の工具が取付けられるタレット部材と、
前記タレット部材と一体に回転する所定部位との摩擦力により前記タレット部材を前記ハウジングに対して回転不能に固定することによって、前記複数の工具のうちの1つの工具と被加工物とを位置合わせするとともに、前記位置合わせした工具による前記被加工物の加工中に前記タレット部材が前記ハウジングに対して回転することを禁止する固定手段と、
を備える工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161902(P2012−161902A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26113(P2011−26113)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000133593)株式会社ツガミ (28)
【Fターム(参考)】