説明

平板スピーカおよび内装パネル

【課題】振動板が対称的な形状を保ったまま、分割共振を分散させて、周波数特性を平坦にすることができる平板スピーカ、および、この平板スピーカを用いた内装パネルを提供する。
【解決手段】本発明の平板スピーカ100は、外周端部101aより中心側が窪むとともにこの窪んだ部分から上方に突出した凸部101bが設けられたフレーム101と、幾何学的中心Oに関して対称に形成され、中央部に伝達部材104のフランジ部121が結合され、外側の端部がフレーム101の外周端部101aに支持され、凸部101bに結合され、磁気回路102とボイスコイル103aから発生する駆動力によって振動する平板振動板106とを備え、凸部101bは、平板振動板106の幾何学的中心Oを通るいずれの直線上にも2箇所あり、凸部101bの一の箇所と他の箇所とは平板振動板106の幾何学的中心Oに関して非対称に配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板スピーカおよび内装パネルに関するものであり、特に住宅やマンション、オフィスビル等の建築物に使用される平板スピーカおよび内装パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカの振動板について図面を用いて説明する。
【0003】
図7(a)はエッジを貼り合わせた状態を示す振動板の平面図である。図7(b)は同側断面図である。図7に示されるように、スピーカ用の振動板11は、形状を非同心円状にする、もしくは振動板11とロールエッジ12の貼り合わせ形状を非円形状にすることで、振動板上で発生する分割共振を分散させて周波数特性を平坦化していた(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平11−205895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、住宅などの建築物の壁や天井にスピーカを取り付ける際には、建築物の装飾性が損なわれることを防ぐために振動板の形状を対称的にする必要があった。このため、建築物の壁や天井に取り付けられるスピーカは、特定の周波数で固有の共振が発生し、周波数特性に激しいピーク・ディップが生じるという課題を有していた。
【0005】
本発明の目的は、振動板の対称的な形状を保ったまま、振動板上で発生する分割共振を分散させて、周波数特性を平坦にすることができる平板スピーカ、および、この平板スピーカを用いた内装パネルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の平板スピーカは、外周端部より中心側が窪むとともにこの窪んだ部分から上方に突出した凸部が設けられたフレームと、このフレームに固定され、磁気空隙を有する磁気回路と、この磁気回路の磁気空隙内に配挿されたボイスコイルと、このボイスコイルが下端側に巻回されたボイスコイルボビンと、このボイスコイルボビンの上端側と結合された部分と、これから外側に張り出したフランジ部が形成された伝達部材と、外側の端部が前記フレームの外周端部に支持され、幾何学的中心部が前記伝達部材のフランジ部と結合され、前記フレームの凸部に結合され、前記磁気回路とボイスコイルから発生する駆動力によって振動する平板振動板とを備え、前記フレームの凸部は、前記平板振動板の幾何学的中心を通るいずれの直線上にも少なくとも1箇所あり、前記直線上に前記フレームの凸部が2箇所ある場合、前記フレームの凸部の一の箇所と他の箇所とは前記平板振動板の幾何学的中心に関して非対称に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平板振動板が円形や矩形といった対称的な形状を保ったまま、その幾何学的中心部を駆動して、平板振動板上で発生する分割共振を分散させて周波数特性を平坦化したスピーカを提供できるので、スピーカを住宅の天井や壁に設置した際に、部屋の外観を損ねることなく良質な音質で音楽を楽しむことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における平板スピーカ100について図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態1における平板スピーカ100の平面図である。図2は、図1における平板スピーカ100の線A−A’に沿う断面を矢印Bの方向から見たときの断面図である。図3は、本発明の実施の形態1の変形例における平板スピーカ100の平面図である。
【0010】
図1、図2に示されるように、平板スピーカ100は、フレーム101と、このフレーム101に載置される磁気回路102と、この磁気回路102の磁気空隙内に配挿されるボイスコイル103aと、このボイスコイル103aが巻回されるボイスコイルボビン103bと、このボイスコイルボビン103bに結合される円筒状の伝達部材104と、ボイスコイルボビン103bおよびフレーム101に結合されるダンパー105と、フレーム101および円筒状の伝達部材104と結合する平板振動板106とを備える。
【0011】
フレーム101は、鉄鋼材等の金属や、硬質の樹脂で構成される。このフレーム101は、外周端部101a以外、すなわち外周端部101aより中心側の部分が窪むとともにこの窪んだ部分から上方に突出した凸部101bが設けられている。フレーム101の中央部には、磁気回路102が固定される。磁気回路102は、磁気空隙を有する。円筒状の伝達部材104は、両端を開放して筒状に構成された筒状部120と、この筒状部120の上端側から外側に張り出す方向に伸びた水平で平坦なフランジ部121とを備える。この筒状部120の下端側には、ボイスコイルボビン103bの一端が結合される。また、ボイスコイルボビン103bの他端には、ボイスコイル103aが結合される。ボイスコイルボビン103bの他端と、このボイスコイルボビン103bの他端に結合されたボイスコイル103aは、磁気回路102の磁気空隙内に配挿される。そして、ボイスコイルボビン103bの外周側の側面は、ダンパー105の内周と結合される。ダンパー105の外周は、フレーム101に接合される。フランジ部121は、平板振動板106の幾何学的な中心近傍の領域である幾何学的中心部と接合される。図1に示されるように、平板振動板106の形状は、当実施例の場合四角形状である。本実施の形態の平板振動板106における幾何学的中心は、平板振動板106の各辺に引いた垂直2等分線の交点を意味する。なお、本実施の形態では、平板振動板106は四角形状であったが、円形や多角形であってもよい。平板振動板106の形状が円形であった場合、幾何学的中心は、平板振動板106を構成する円のいずれの外周からの距離も等しくなる点を意味する。また、平板振動板106の形状が多角形であった場合、幾何学的中心は、各頂点から引いたいずれの直線の距離も等しくなる点を意味する。
【0012】
図1に示されるように、平板振動板106は、幾何学的中心Oに関して対称である。ここで、幾何学的中心Oに関して対称とは、平板振動板106を180°回転しても同じ形状になっていることをいう。図2に示されるように、平板振動板106は、磁気回路102とボイスコイル103aから発生する駆動力によってフランジ部121を介して振動する。磁気回路102の幾何学的中心の位置と、フランジ部121の中心の位置と、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置とは一致するのが音圧確保上望ましい。平板振動板106の外側の端部は、フレーム101の外周部と接合される。なお、伝達部材104とボイスコイルボビン103bとを一体にすることで、部品点数の削減が可能となり、低コスト化を図ることができる。
【0013】
図2に示されるように、フレーム101の凸部101bは、一続きに設けられて磁気回路102を囲んでいる。凸部101bは、平板振動板106の下面に結合されている。
【0014】
図1に示されるように、平板振動板106の幾何学的中心Oを通る仮想的な直線L11を引いた場合、この直線L11は、凸部101bと2箇所で交わる。直線L11をどのように引いても、直線L11上には、常に凸部101bがある。ここで、直線L11が凸部101bと、幾何学的中心O側で交わる2箇所の点をそれぞれ点C11、点C12とすると、凸部101bは、幾何学的中心Oから点C11までの距離と、幾何学的中心Oから点C12までの距離とが常に異なるように配置される。したがって、いずれの直線L11を引いても、凸部101bの点C11と点C12とは、平板振動板106の幾何学的中心Oに関して非対称に配置されている。
【0015】
このように、凸部101bが平板振動板106の幾何学的中心Oに関して非対称に配置されることにより、フランジ部121により駆動された平板振動板106上では、分割共振が効果的に分散される。したがって、以上の構成により住宅用の壁や天井に使用される平板スピーカであっても、平板振動板106を幾何学的中心Oに関して対称的な形状としたまま、分割共振を分散させて、周波数特性を平坦にすることができる。
【0016】
なお、本実施の形態では、平板振動板106の形状を矩形としたが、円形状や六角形状など、幾何学的中心に関して対称であればどのような形状でもよい。また、凸部101bで囲まれた領域の重心の位置と、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置とが一致するように、凸部101bを設けてもよい。これにより、平板振動板106の重量バランスが崩れてローリングと呼ばれる横揺れ現象により異常音が発生することを防止することができる。
【0017】
また、図1に示されるように、本実施の形態において、フランジ部121のうち、平板振動板106と結合する部分は、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置に関して対称な略円形状に形成されているが、図3に示されるように、フランジ部122のうち、平板振動板106と結合する部分は、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置に関して非対称な形状に形成されてもよい。ここで、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置に関して非対称な形状に形成されるとは、平板振動板106の幾何学的中心Oを通るいずれの直線上にもフランジ部122が2箇所あり、フランジ部122の一の箇所と他の箇所とは平板振動板106の幾何学的中心に関して非対称な形状に形成されていることを意味する。そして、いずれの直線L31を引いた場合にも、直線L31とフランジ部122の外周との2つの交点について、点C31側の交点を点C33、点C32側の交点を点C34としたとき、点C31から点C33までの距離と点C32から点C34までの距離とが異なる。これにより、分割共振をさらに分散させ、周波数特性のピーク・ディップを抑えることができる。
【0018】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における平板スピーカ200について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一部分は同一番号を付し、説明を省略する。
【0019】
図4は、本発明の実施の形態2における平板スピーカ200の平面図である。図4における平板スピーカ200の線D−D’に沿う断面を矢印Eの方向から見たときの断面図は、図1と同様であるので省略する。図5は、本発明の実施の形態2の変形例における平板スピーカ200の平面図である。
【0020】
図4に示されるように、凸部201bは、一続きになっておらず、複数設けられている。
【0021】
図4に示されるように、平板振動板106の幾何学的中心Oを通る仮想的な直線L41や直線L42を引いた場合、この直線L41は、凸部201bと2箇所で交わり、直線L42は、凸部201bと1箇所で交わる。したがって、直線L41や直線L42をどのように引いても、直線L41や直線L42上には、常に凸部201bがある。
【0022】
ここで、直線L41が凸部201bと2箇所で交わるとき、実施の形態1と同様に幾何学的中心O側で交わる2箇所の点をそれぞれ点C41、点C42とすると、凸部201bは、幾何学的中心Oから点C41までの距離と、幾何学的中心Oから点C42までの距離とが常に異なるように配置される。
【0023】
また、直線L42が凸部201bと1箇所でのみ交わるとき、この交点を点C43、直線L42と平板振動板106との交点をC44とすると、幾何学的中心Oから点C43までの距離と、幾何学的中心Oから点C44までの距離とは常に異なる。
【0024】
したがって、いずれの直線L41を引いても、凸部201bの点C41と点C42は、平板振動板106の幾何学的中心Oに関して非対称に配置されている。また、いずれの直線L42を引いても、点C43と点C44とは、平板振動板106の幾何学的中心Oに関して非対称に配置されている。
【0025】
これにより、平板振動板106の外側の端部まで振動させることができるので、住宅用の壁や天井に使用される平板スピーカであっても、平板振動板106による大きな音圧を維持し、平板振動板106を幾何学的中心Oに関して対称的な形状としたまま、分割共振を分散させて、周波数特性を平坦にすることができる。
【0026】
また、図4に示されるように、本実施の形態において、フランジ部121のうち、平板振動板106と結合する部分は、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置に関して対称な略円形状に形成されているが、図5に示されるようにフランジ部123のうち、平板振動板106と結合する部分は、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置に関して非対称な形状に形成されてもよい。ここで、平板振動板106の幾何学的中心Oの位置に関して非対称な形状に形成されるとは、平板振動板106の幾何学的中心Oを通るいずれの直線上にもフランジ部123が2箇所あり、フランジ部123の一の箇所と他の箇所とは平板振動板106の幾何学的中心に関して非対称な形状に形成されていることを意味する。そして、直線L51が凸部201bと2箇所で交わる場合、直線L51とフランジ部123の外周との2つの交点について、点C51側の交点を点C55、点C52側の交点を点C56としたとき、いずれの直線L51を引いても点C51から点C55までの距離と点C52から点C56までの距離とが異なる。あるいは、直線L52が凸部201bと1箇所で交わる場合、直線L52とフランジ部123の外周との2つの交点について、点C53側の交点を点C57、点C54側の交点を点C58としたとき、いずれの直線L52を引いても点C53から点C57までの距離と点C54から点C58までの距離とが異なる。これにより、分割共振をさらに分散させ、周波数特性のピーク・ディップを抑えることができる。
【0027】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における内装パネル300について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1、実施の形態2と同一部分は同一番号を付し、説明を省略する。
【0028】
図6は、本発明の実施の形態3における内装パネル300の断面図である。図6に示されるように、内装パネル300は、桟301と、この桟301に埋め込まれた平板スピーカ100とを備える。なお、本実施の形態における平板スピーカ100では、平板振動板106の代わりに、壁や天井などに用いられる化粧板306が用いられる。なお、実施の形態2の平板スピーカ200が桟301に埋め込まれてもよい。この場合も、化粧板306が振動板として用いられる。内装パネル300は、住宅などの建築物において、壁や天井のように空間を仕切るものとして用いられる。
【0029】
桟301は、複数用いられる。複数の桟301は、井桁状に組まれるのが補強の観点から望ましい。桟301が井桁状に組まれたことによって形成された四角の空間には、化粧板306と一体に成型された平板スピーカ100が埋め込まれる。桟301は、フレーム101と結合する。これにより、内装パネル300は、住宅などの建築物用の壁や天井として違和感のないデザインを保ったまま、音響性能を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の平板スピーカは、住宅やマンション、オフィスビル等の建築物に設置する音響機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1における平板スピーカの平面図
【図2】図1における平板スピーカの線A−A’に沿う断面を矢印Bの方向から見たときの断面図
【図3】本発明の実施の形態1の変形例における平板スピーカの平面図
【図4】本発明の実施の形態2における平板スピーカの平面図
【図5】本発明の実施の形態2の変形例における平板スピーカの平面図
【図6】本発明の実施の形態3における内装パネルの断面図
【図7】(a)従来のスピーカのエッジを貼り合わせた状態を示す振動板の平面図、(b)従来のスピーカのエッジを貼り合わせた状態を示す振動板の側断面図
【符号の説明】
【0032】
100、200 平板スピーカ
101 フレーム
101a 外周端部
101b、201b 凸部
102 磁気回路
103a ボイスコイル
103b ボイスコイルボビン
104 伝達部材
105 ダンパー
106 平板振動板
120 筒状部
121 フランジ部
300 内装パネル
301 桟
306 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周端部より中心側が窪むとともにこの窪んだ部分から上方に突出した凸部が設けられたフレームと、
このフレームに固定され、磁気空隙を有する磁気回路と、
この磁気回路の磁気空隙内に配挿されたボイスコイルと、
このボイスコイルが下端側に巻回されたボイスコイルボビンと、
このボイスコイルボビンの上端側と結合された部分と、これから外側に張り出したフランジ部が形成された伝達部材と、
外側の端部が前記フレームの外周端部に支持され、幾何学的中心部が前記伝達部材のフランジ部と結合され、前記フレームの凸部に結合され、前記磁気回路とボイスコイルから発生する駆動力によって振動する平板振動板とを備え、
前記フレームの凸部は、前記平板振動板の幾何学的中心を通るいずれの直線上にも少なくとも1箇所あり、前記直線上に前記フレームの凸部が2箇所ある場合、前記フレームの凸部の一の箇所と他の箇所とは前記平板振動板の幾何学的中心に関して非対称に配置されたことを特徴とする平板スピーカ。
【請求項2】
前記伝達部材のフランジ部は、前記平板振動板の幾何学的中心を通るいずれの直線上にも2箇所あり、前記フランジ部の一の箇所と他の箇所とは前記平板振動板の幾何学的中心に関して非対称に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の平板スピーカ。
【請求項3】
前記平板振動板の平面のうち前記フレームの凸部で囲まれた領域の重心位置と、前記平板振動板の幾何学的中心の位置とが一致することを特徴とする請求項1に記載の平板スピーカ。
【請求項4】
請求項1に記載の平板スピーカと、この平面スピーカの周囲を取り囲むように配設された天井板または壁面板としての桟からなる内装パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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