説明

平行リンク装置

【課題】安価なコイルばねを使用して、従来の直線コイルばねに比較して平行リンクの変位に対する作用フレーム押圧力の均一化を飛躍的に改善させる。
【解決手段】ボルト取付けフレームに上下横リンクの基端側を所定間隔を隔てて枢着し、平行にした前記上下横リンクの先端側を縦長の作用フレームに枢着した上下変位自在の平行リンクを備え、前記平行リンクの下死点変位位置において前記取付けフレームの上部と平行リンクの上下可動部間に引っ張りコイルばねを所望曲率の円弧状に湾曲させた状態で架設し、これにより、平行リンクの上下移動に連動して作用フレームの下方押圧力が均一的に制御されるようにする。前記取付けフレームの上部と平行リンクの上下可動部間に、両端取付け部を外側同方向へ折り曲げた引っ張りコイルばねを架設してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平行リンク装置の改良に関し、詳細には上下動する平行リンクの変位に連動して、作用フレームに弾力的な下方押圧力ができるだけ均一に作用するようにした平行リンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平行リンクを利用した上下支持装置は、平行リンクの変位に対し、作用フレームの弾力的な下方押圧力ができるだけ一定に作用することが要求される場合がある。
例えば、図11に示すように、カルチベータ等の作業機に取り付ける除草装置1の平行リンク装置2は、平行リンク作用フレーム3の下方に連結する除草アタッチメント(除草輪4)が地面の凹凸面に対応して上下変位する際に、作物廻りの地面に対してできるだけ一定の弾力的押圧力が作用する支持手段を備え、凹凸面にかかわらず、地表から一定の深さのところ(例えば地面から1〜3cm)で地面を攪拌して雑草を分離する必要がある。
【0003】
平行リンク機構を使用したこの種の除草装置は、地表の凹凸面に追従して地表から1〜3cmのところを撹拌する必要があるため、作用フレーム3は地表の凹凸面に沿って自動的に上下動する平行リンクで構成するとともに、平行リンクに所定の下方圧力をかけるための押圧支持手段を備えている。
【0004】
従来の押圧支持手段には、平行リンクを構成する上部横リンクの一端側にカウンタウエイトを取付けるとともに、別途用意した錘を他端側に着脱自在に懸下し、カウンタウエイトと錘のバランスで所望の押圧力を付与するものがある。しかしながら、このものは平行リンクの一端側に重いカウンタウエイトを固定してあり、また、平行リンクのバランスを取るための錘を積載しておく必要があるため、除草装置の重量が大きくなるという欠点がある。また、押圧力の調節は錘の増減によって行われるため押圧力に段階が生じ、各段階の中間の押圧力を付与することができない。
【0005】
他の押圧支持手段として、平行リンク装置の取付けフレーム上部と横リンクの可動部間にコイルばねを直線状に架設したものが知られているが、直線状のコイルばねは平行リンクの変位、すなわち、上方から下方へ、あるいは、下方から上方へ移動する際にコイルばねの伸縮変形により押圧力が大きく変化してしまうため地表の凹凸面に均一な押圧力を与えることができないという欠点がある。
【0006】
さらに、本願出願人の発明に係る特許第3532876号(特開2002−305905)に示されているように、平行リンクの取付けフレームの上部と横フレーム可動部間にガススプリングを架設したものが開発されている。
このガススプリング使用のものは平行リンクの変位に対して円滑に対応し、押圧力が無段階で一定に制御されるという優れた作用を有するが、ガススプリングが高価であり、特に、カルチベータに使用する除草装置は平行リンク装置を利用した除草アタッチメントを横方向に多数配設するため除草装置全体の製造コストが高くなるという問題があった。
【特許文献1】特許第3532876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、安価なコイルばねを使用しながら、従来の直線コイルばねに比較して平行リンクの変位に対する作用フレーム押圧力の均一化が飛躍的に改善される構造の平行リンク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の平行リンク装置は、取付けフレームの下部に上下横リンクの基端側を所定間隔を隔てて枢着し、平行にした前記上下横リンクの先端側を縦長の作用フレームに枢着した上下変位自在の平行リンクを備え、前記平行リンクの下死点変位位置において前記取付けフレームの上部と平行リンクの上下可動部間に引っ張りコイルばねを所望曲率の円弧状に湾曲させた状態で架設し、これにより、平行リンクの上下移動に連動して作用フレームの下方押圧力が均一的に制御されるようにしたことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、上記の引っ張りコイルばねに、コイルの湾曲変形に追従して撓むやわらかいゴム、プラスチックなどの可撓性カバー又はカラーを嵌合し、湾曲したコイルばねの張り出し側コイル巻き線間に異物が挟み込まれないようにする。このカバー又はカラーはコイル全周に遊嵌してよいが、少なくともコイルの撓みによって巻き線が開閉するコイル張り出し湾曲側に嵌合する。
【0010】
コイルばねの張り出し湾曲側はどの方向に湾曲させてもよいが、走行作業車に牽引される除草機の平行リンクのように前後方向へ移動する平行リンク装置にあっては湾曲張り出し側を進行方向とは逆の後方へ向けて配設し、張り出し湾曲側の巻き線間が作物の葉や枝によって干渉されないようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の平行リンク装置は、ガススプリングのような高価な部品を使わずに、安価なコイルばねを使用して平行リンクの変位に連動して作用フレームの下方押圧力をガススプリングに近い均一な圧力に制御することができ、従来の直線ばねに比較して作用フレームの変位による下方押圧力の均一制御が飛躍的に向上する。
コイルばねを可撓性材質のカバーを嵌合し、あるいはコイルの張り出し湾曲側を進行方向の後へ向けて配置することにより、湾曲巻き線間への異物介入による干渉が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を添付の図1乃至図5に基づいて詳述する。なお、図1乃至図5において、図11と同じ参照符号は同一の部材を示している。
図1乃至図3に示すように、本発明の平行リンク装置2は、作業車(図は省略)に固定される縦長の取付けフレーム5と、この取付けフレーム5に上下動自在に組付けられた平行リンク6を具備している。
平行リンク6は、取付けフレーム5の下部に上下横リンク7a、7bの基端側を所定の上下間隔で枢着するとともに、平行に配した前記上下横リンク7a、7bの先端側を縦長の作用フレーム3に枢着した上下動可能な四点リンクで構成されており、図の実施例は除草装置1に使用される平行リンク装置として作用フレーム3の下部に除草輪4などの作業アタッチメントが結合されている。
【0013】
かくして、この平行リンク装置は作用フレーム3にかかる上方からの荷重、あるいは下方からの荷重により、上下横リンク7a、7bが図1の水平位置から図2の上方位置へ、あるいは図3の下方位置へ変形し、これに伴って作用フレーム3が上下に変位するように構成されている。
【0014】
ちなみに、図の実施例は除草装置の除草輪4の上下位置を制御する目的で使用されているので、除草輪4が地面の凹凸に沿って下方からの押圧力と自重により作用フレーム3を上下に変位させるようになっている。
【0015】
除草輪4は地面の凹凸によって変位しても、除草の目的で地表面を撹拌する深さはできるだけ均一であることが必要である。本発明は低コストで調達できる部材を用いてこの目的を合理的に達成しようとするもので、そのために図3に示すように、前記平行リンクが下方への下死点へ変位させた位置で、前記取付けフレーム5の上部8と平行リンク6の上下可動部9間に、引っ張りコイルばね10の軸体11を側方へ所望曲率の円弧状に湾曲させた状態で架設したことを特徴とする。
なお、図4は、平行リンク下死点位置において円弧状に湾曲させた状態で架設する前のコイルばねの一例を示している。また、図5は、平行リンク6の下死点変位位置において、コイルばね10を取付けフレーム5の上部8と平行リンク6の上下可動部9間に円弧状に湾曲させて架設する際のコイルばね側面である。
ここで、平行リンク6の下死点位置とは、四点リンクの構造上最下位に係止する位置のほか、何らかのストッパに下降係止させる位置を包含する。
【0016】
図1乃至図3の実施例の平行リンク装置2は、上記のように平行リンク6の下死点変位位置において取付けフレーム5の上部8と平行リンク6の上下可動部9(例えば、上側横リンク7a)間に、コイルばね10の軸体11を側方へ所望曲率の円弧状に湾曲させた状態で架設したことにより、平行リンク6の作用フレーム3の変位、すなわち、本実施例においては作用フレーム3に結合された除草輪4の変位に対して除草輪4の地面に対する接地圧力(下方押圧力)が直線状コイルばねに比較して著しく均一化される。
【0017】
上記の荷重特性を、平行リンク6の変位量と作用フレーム3の垂直方向荷重量の関係を示す下記の表1(荷重特性比較表)を用いて説明する。
【0018】
【表1】

【0019】
表1において、A−A線はカウンタウエイトと錘を使用した平行リンク装置、B−B線はガススプリングを使用した平行リンク装置の各々の荷重特性を示すもので、線は略水平であり、平行リンク6の変位に対して作用フレーム3の垂直方向荷重が略一定であることを示している。
他方、コイルばねを直線状に架設した平行リンク装置の荷重特性を示すC−C線は、平行リンクの変位に対して作用フレームの垂直方向荷重が大きく変化する右上がりの急勾配を示している。
これに対し、本発明による平行リンク装置2の荷重特性を示すD−D線は、平行リンク6が下方位置では作用フレームの垂直方向荷重は平均値(水平線)よりやや高く、平行リンク6が上方位置へ変位するにしたがってやや低くなるゆるい下降勾配を示している。この荷重特性は定荷重が得られるガススプリングやカウンタウエイトを使用したA−A線に近い定荷重特性であり、直線状コイルばねを使用した平行リンク装置に比較して平行リンクの変位に対する作用フレームの押圧力が著しく均一化されていることが一目瞭然である。
【0020】
本発明による平行リンク装置の上記荷重特性は、作用フレーム3が下方位置にあるときは円弧状に架設されたコイルばね10の軸体11の曲率が比較的大きく(すなわち、撓みが小さく)、軸体11に垂直方向の荷重がかかる割合が高いため、作用フレーム3に比較的大きな垂直方向荷重(下方押圧力)が作用するものと考えられる。
他方、平行リンク6が円弧状コイルばね10に抗して上方へ変位すると、円弧状コイルばね10が圧縮されて撓み、撓み曲率に応じて湾曲部が側方へより大きく張り出す(すなわち、撓みが大きくなる)ため、円弧状コイルばね10の側方膨出側コイル巻き間隔が開き、他方、コイルの内側巻き線間は当接し、弾力性が働かなくなる、このためコイルばね軸体11全体の弾圧力(反力)が側方へ分散されて小さくなることによって作用フレームの垂直方向荷重量が逆にわずかづつ逓減され、作用フレームの垂直方向荷重は直線状コイルばねとは逆に緩やかな下降勾配を呈するものと考えられる。
【0021】
図1乃至図3の実施例は、図4のように直線状コイルばね10の両端枢着片11a、11bがコイルばね10の軸体11の中心線状にある直線状コイルばねを平行リンク下死点変位位置において円弧状に湾曲させて架設した実施例を示したものである。
【0022】
本発明の平行リンク装置2は取付けフレーム上部8と上下可動部9間に引っ張りコイルばね10の軸体11を湾曲させた状態で架設しているので、コイルばね10が湾曲したとき湾曲張り出し側のコイル巻き線間が開閉し、異物が挟み込まれ、ばねの弾力が干渉されてしまうおそれがある。
この問題を解決するために、好ましくは図6に示すように、コイルばね10にコイルばね10の湾曲に追従して撓み、復元するゴム又は軟質プラスチック等のカバー(又はカラー)17を嵌合する。
【0023】
引っ張りコイルばね10の軸体11は平行リンク装置の前後方向、横方向のいずれへ湾曲張り出させてもよいが、走行作業車の除草機に取付けて使用する場合は、湾曲張り出し側を進行方向の後方へ向けて配設するのが望ましい。この理由は、コイルの湾曲開閉巻き線側が進行方向側に向いていると、作物の葉や枯れ枝などが開閉巻き線間に挟まれ易いからである。
【0024】
図7は図1乃至図3実施例による平行リンク装置の組付け・分解を示す図であり、上部横リンク7aの長手方向に支持フレーム12を固設し、この支持フレーム12の長手方向にねじ送りロッド13を回転自在に枢支するとともに、このねじ送りロッド13の軸体に、移動駒14を螺合し、取付けフレーム5の上部に枢着したコイルばね10の一端を前記移動駒14の係合ピン15に枢着してある。
【0025】
ねじ送りロッド13の基端にはナットなどの回転操作手段16が取付けられており、この回転操作手段16でねじ送りロッド13を正逆回転させることにより、図8乃至図10のように、移動駒14を上部横リンク7aと平行のねじ送りロッド13に沿って移動させ、移動駒14の設定位置により、平行リンク6に対する下方押圧力が変化するようにしてある。
【0026】
すなわち、コイルばね10の下端に係合させた移動駒14の固定位置が作用フレーム3側へ移動するにつれて、テコの原理でコイルばね10の押圧力は次第に大きくなる。また、移動駒14が回動支点を超えて図の右方向へ移動するとコイルばね10の押圧力は逆に平行リンク6の自重よりも小さくなる。
なお、図の実施例では移動駒14の下面に係合溝18を形成し、この係合溝18を上部横リンク7aの上辺ガイドに嵌め入れ、上部横リンク7aに沿って円滑に摺動するようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の平行リンク装置は平行リンクの変位に対して荷重を均一に制御する装置に広く使用できる。
図の実施例は、主としてカルチベータなどの除草機に使用される平行リンク装置を例示して説明したが、本発明の平行リンク装置はこれに限るものではなく、平行リンク機構一般に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による平行リンク装置の側面図
【図2】本発明による平行リンク装置の変位側面図
【図3】本発明による平行リンク装置の変位側面図
【図4】図1乃至図3実施例の平行リンク装置に使用されるコイルばねの側面図
【図5】図1乃至図3実施例の平行リンク装置に使用されるコイルばねの湾曲側面図
【図6】本発明の他の実施例の平行リンク装置の側面図
【図7】図1実施例による平行リンク装置の組付け・分解図
【図8】コイルばねの作用点変更図
【図9】コイルばねの作用点変更図
【図10】コイルばねの作用点変更図
【図11】平行リンク装置の使用例説明図
【符号の説明】
【0029】
1…除草装置
2…平行リンク装置
3…作用フレーム
4…除草輪
5…取付けフレーム
6…平行リンク
7a…上部横リンク
7b…下部横リンク
8…取付けフレーム上部
9…上下可動部
10…コイルばね
11…コイルばね軸体
11a…枢着片
11b…枢着片
12…支持フレーム
13…ねじ送りロッド
14…移動駒
15…係合ピン
16…回転操作手段
17…カバー
18…係合溝
19…ボルト
20…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付けフレームの下部に上下横リンクの基端側を所定間隔を隔てて枢着し、平行にした前記上下横リンクの先端側を縦長の作用フレームに枢着した上下変位自在の平行リンクを備え、前記平行リンクの下死点変位位置において前記取付けフレームの上部と平行リンクの上下可動部間に引っ張りコイルばねを所望曲率の円弧状に湾曲させた状態で架設し、これにより、平行リンクの上下移動に連動して作用フレームの下方押圧力が均一的に制御されるようにしたことを特徴とする平行リンク装置
【請求項2】
前記引っ張りコイルばねに、コイルの湾曲変形に追従して撓み、円弧状湾曲の少なくとも張り出し側面側を覆うカバー又はカラーを嵌合したことをさらに特徴とする請求項1記載の平行リンク装置
【請求項3】
走行作業機に取付けて使用される請求項1又は2記載の平行リンク装置であって、前記取付けフレームの上部と平行リンクの上下可動部間に引っ張りコイルの円弧状湾曲張り出し側を進行方向の後方に向けて配向させたことを特徴とする平行リンク装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−14063(P2009−14063A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175060(P2007−175060)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000117272)
【出願人】(000117283)
【Fターム(参考)】