説明

平面ループアンテナ

【課題】例えばRFID関連の機器のアンテナとして、小型で安価に構成することができ、複数周波帯で動作する平面ループアンテナを提供する。
【解決手段】誘電体基板と、誘電体基板の一方の面上に形成され、一部にギャップを有する第1ループ導体14と、誘電体基板の他方の面上に形成され、一部にギャップを有し、第1ループ導体と導通する第2ループ導体24と、誘電体基板から所定距離離反して配置されて、第1ループ導体との間で第1周波数での不平衡給電がなされる反射板20と、誘電体基板内で第1ループ導体と第2ループ導体との間に配置されて、前記第1周波数と異なる周波数帯で動作し電磁誘導方式による伝送を行うコイル状導体34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばRFID関連の機器のアンテナとして、小型で安価に構成することができ、複数周波帯で動作する平面ループアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードや無線ICタグなどを使用した技術が盛んに使用されるようになっており、例えば、セキュリティ応用として入退出管理やオフィスセキュリティ管理などでの使用が多くなり、据え置き型または機器組み込み型のRFIDリーダライタ機器の用途が広がってきている。
【0003】
RFIDリーダライタ機器用のアンテナとしては、13.56MHzのHF帯用プリントループコイル、950MHz帯用の共振型のダイポールアンテナ、2.45GHz用のパッチアンテナが知られている。
【0004】
従来は、それぞれの帯域用として別個の機器として使用されていたが、これらを一体化したリーダライタ機器が必要不可欠となっており、そのため、複数周波帯域で動作することができ、小型で安価な一体型の平面アンテナの実用化が望まれている。
【0005】
ところで、従来の平面ループアンテナとしては、例えば、特許文献1〜3記載のアンテナが知られている。
【0006】
特許文献1記載のものでは、円偏波用ループアンテナにおいて、接地板とループ導体とを誘電体を挟んで対峙させて、ループ導体の所定位置からループ内に所定距離に亘って延長するL字形素子を備え、給電用同軸線路の中心導体をL字形素子に接続し、外部導体を接地板に接続している。
【0007】
特許文献2記載のものでは、円偏波用ループアンテナにおいて、接地板とループ導体とを誘電体を挟んで対峙させて、ループ導体の内側にループ導体に近接して、ループ導体に対して非接触の給電部導体パターンを設け、給電用同軸線路の中心導体を給電部導体パターンに接続し、外部導体を接地板に接続している。
【0008】
特許文献3記載のものでは、裏側が地導体となった第2誘電体の表側には第2直線部が装荷された第2ループ素子が形成され、第2ループ素子の上方に距離をおいて第1誘電体が配置されて、第1誘電体の表側には第1直線部が装荷された第1ループ素子が形成されて、給電用同軸線路の中心導体を第2直線部と第1直線部に接続し、給電用同軸線路の外部導体を地導体に接続しており、第1ループ素子と第2ループ素子とのループ長さを異ならせることにより、広帯域化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−214304号公報
【特許文献2】特開平5−110334号公報
【特許文献3】特開平7−183721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2記載のものでは、一周波数で動作するアンテナであり、特許文献3記載のものでは、2周波数で動作するアンテナであるものの、これらのアンテナでは電磁誘導方式での伝送を行うことはできない、という問題がある。
【0011】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、小型で安価に構成することができ、電磁誘導方式での伝送も行うことができる平面ループアンテナを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明による平面ループアンテナは、
誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面上に形成され、一部にギャップを有する第1ループ導体と、
前記誘電体基板の他方の面上に形成され、一部にギャップを有し、第1ループ導体と導通する第2ループ導体と、
誘電体基板から所定距離離反して配置されて、前記第1ループ導体との間で第1周波数での不平衡給電がなされる反射板と、
誘電体基板内で第1ループ導体と第2ループ導体との間に配置されて、前記第1周波数と異なる周波数帯で動作し電磁誘導方式による伝送を行うコイル状導体と、
を備える、ことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の平面ループアンテナにおいて、前記第1ループ導体の所定部位からループ内部に向かって第1給電用導体が延びており、前記第1給電用導体に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続される、ことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の平面ループアンテナにおいて、前記第1ループ導体と平行に第1給電用導体が設けられ、第1給電用導体に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続され、電磁結合により第1給電用導体から前記第1ループ導体に給電がなされる、ことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載の平面ループアンテナにおいて、前記第1ループ導体の所定部位からループ内部に向かって第1給電用導体が延び、前記第2ループ導体の所定部位からループ内部に向かって第2給電用導体が延びており、前記第1ループ導体と前記第2ループ導体とは同じ構成を成して対向しており、前記第1給電用導体と前記第2給電用導体とは、対向せずにずれて配置され、第1給電用導体と第2給電用導体のいずれか一方に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続されて、第1周波数において円偏波特性を持つことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1に記載の平面ループアンテナにおいて、前記第1ループ導体と前記第2ループ導体とは同じ構成を成して対向しており、前記第1ループ導体及び第2ループ導体に平行に第1給電用導体と第2給電用導体とが設けられ、第1給電用導体と第2給電用導体とが第1ループ導体及び第2ループ導体に対して異なる位置にずれて配置され、第1給電用導体と第2給電用導体のいずれか一方に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続されて、電磁結合により第1ループ導体と第2ループ導体に給電がなされて、第1周波数において円偏波特性を持つことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の平面ループアンテナにおいて、前記第2ループ導体と前記反射板との間で第1周波数とは異なる周波数である第2周波数での不平衡給電がなされることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の平面ループアンテナにおいて、前記第2ループ導体の所定部位からループ内部に第2給電用導体が延びており、前記第2給電用導体に第2給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第2給電用同軸線路の外部導体が接続される、ことを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の平面ループアンテナにおいて、前記第2ループ導体と平行に第2給電用導体が設けられ、第2給電用導体に第2給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第2給電用同軸線路の外部導体が接続され、電磁結合により第2給電用導体から前記第2ループ導体に給電がなされる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型で安価に構成することができ、2周波以上の周波数で動作可能なアンテナを実現することができる。コイル状導体を第1ループ導体と第2ループ導体の間に挟むことで、第1ループ導体と第2ループ導体をグランドしたときの、電磁誘導方式のコイル状導体に対する静電シールドを行うことができる。そのため、コイル状導体の電力を大きくしたときにも、遠方の電界を減衰させることができ、コイル状導体による電界が周囲に与える影響を低減することができる。
【0021】
また、本発明の平面ループアンテナは、RFID関連の機器のアンテナとして、13.56MHz、950MHzまたはその近傍のUHF帯の周波数で動作するアンテナとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の基本構成1に係る平面ループアンテナの分解斜視図である。
【図2】基本構成1の平面図である。
【図3】基本構成1の側面図である。
【図4】基本構成1において第1周波数を950MHzとしたときの950MHz付近のそれぞれVSWR特性のシミュレーション結果である。
【図5】基本構成1において第1周波数を950MHzとしたときの950MHzの放射特性のシミュレーション結果である。
【図6】本発明の基本構成2に係る平面ループアンテナの分解斜視図である。
【図7】基本構成2の平面図である。
【図8】基本構成2の側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る平面ループアンテナの分解斜視図である(誘電体基板は図示省略している)。
【図10】本発明の第1実施形態に係る平面ループアンテナの誘電体基板の底面図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る平面ループアンテナの側面図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係る平面ループアンテナのブロック図である。
【図12A】本発明の第1実施形態に係る平面ループアンテナの変形例を表す側面図である。
【図12B】本発明の第1実施形態に係る平面ループアンテナの変形例の平面図とその一部部品の平面図と側面図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係る平面ループアンテナの分解斜視図である(誘電体基板は図示省略している)。
【図14】本発明の第2実施形態に係る平面ループアンテナの誘電体基板の平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る平面ループアンテナの側面図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る平面ループアンテナの分解斜視図である(誘電体基板は図示省略している)。
【図17】本発明の第3実施形態に係る平面ループアンテナの誘電体基板の平面図である。
【図18】本発明の第3実施形態に係る平面ループアンテナの側面図である。
【図19】第3実施形態において、第1周波数を950MHzとしたときの950MHz付近の利得と軸比のシミュレーション結果である。
【図20】第3実施形態において、第1周波数を950MHzとしたときの放射特性のシミュレーション結果である。
【図21】本発明の第4実施形態に係る平面ループアンテナの分解斜視図である(誘電体基板は図示省略している)。
【図22】本発明の第4実施形態に係る平面ループアンテナの誘電体基板の平面図である。
【図23】本発明の第4実施形態に係る平面ループアンテナの側面図である。
【図24】第4実施形態において、第1周波数を950MHzとしたときの950MHz付近の利得と軸比のシミュレーション結果である。
【図25】第4実施形態において、第1周波数を950MHzとしたときの放射特性のシミュレーション結果である。
【図26】本発明の第5実施形態に係る平面ループアンテナの分解斜視図である(誘電体基板は図示省略している)。
【図27】本発明の第5実施形態に係る平面ループアンテナの誘電体基板の平面図である。
【図28】本発明の第5実施形態に係る平面ループアンテナの側面図である。
【図29】本発明の第6実施形態に係る平面ループアンテナの分解斜視図である(誘電体基板は図示省略している)。
【図30】本発明の第6実施形態に係る平面ループアンテナの誘電体基板の平面図である。
【図31】本発明の第6実施形態に係る平面ループアンテナの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(基本構成1)
図1〜図3は、本発明の基本構成1に係る平面ループアンテナを表す。図において、平面ループアンテナ10は、誘電体基板12の一方の面に形成された第1ループ導体14を有している。
【0025】
第1ループ導体14は、具体的には、第1横辺部14A(長さL1、幅W)と、第1横辺部14Aに対して直交する第1縦辺部14B(長さL2、幅W)及び第2縦辺部14C(長さL2、幅W)と、第1縦辺部14B及び第2縦辺部14Cに直交し第1横辺部14Aに平行な第2横辺部14D(長さL1、幅W)とからなる矩形ループの放射エレメントからなり、銅箔エッチングから形成される。縦横のアスペクト比は、約2.0(1.5〜2.5)程度とするとよい。
【0026】
第2横辺部14Dの中央部には、ギャップ15(距離d)が形成されており、そのため、第2横辺部14Dは、第1部分14D1(長さL3、幅W)と、第2部分14D2(長さL4、幅W)とにさらに分かれている。そして、長さL1+2L2+L3+L4は、第1周波数(例えば、950MHz)の波長λ1に対して、誘電体基板12の誘電率による波長の短縮率を考慮した波長λgの1波長分に相当している。
【0027】
第1横辺部14Aの中央からは、第1給電用導体16(幅a、長さb)がループ内部に向かって延びており(第1縦辺部14B及び第2縦辺部14Cからの距離c1、c2)、第1給電用導体16の遊端部は、ギャップ15の方向に向かっている。但し、ギャップ15の横方向位置と第1給電用導体16の横方向位置とは厳密に一致している必要はない。また、第1給電用導体16の基端部は、第1横辺部14Aに向かって幅狭になるテーパ部16a(長さg)となっている。
【0028】
誘電体基板12から離反して金属反射板20が誘電体基板12と平行に配置されている。この距離h1は、0.1λ1程度とするとよい。
【0029】
そして、第1給電用同軸線路22の中心導体22aが第1給電用導体16の遊端部付近に接続され(第1横辺部14Aからの距離f)、第1給電用同軸線路22の外部導体22bが金属反射板20に接続される。
【0030】
以上のように構成される平面ループアンテナ10において、給電用同軸線路22から第1周波数の不平衡給電を行うことにより、第1ループ導体14がその1波長に相当することから、第1周波数の直線偏波の放射を行うことができる。このときに、第1給電用導体16によりインピーダンス整合を行うことができる。
【0031】
図4及び図5には、第1周波数を950MHzとしたときの950MHz付近のそれぞれVSWR特性及び950MHzの放射特性のFDTD法によるシミュレーション結果を示す(Z軸方向で絶対利得3dBiである。)。このときの各種のパラメータは、L1=104mm、L2=57mm、L3=L4=48.5mm、W=8mm、ギャップ15の距離d=7mm、a=12.5mm、b=32mm、c1=c2=44mm、f=31.5mm、g=2.5、誘電体基板12の厚みh=1.6mmであり、誘電体基板12の誘電率は4.3である。
【0032】
図4から950MHzにおける共振特性が得られ、VSWRの2以下となる比帯域幅は5%となることが分かる。また、各種の寸法を変化させると、共振周波数の調整を図ることができる。例えば、第1給電用導体16の位置(c1、c2)を横方向に中心からずらすことで、共振周波数が高い方へ変動し、また、第1給電用導体16の長さ(b)、給電位置(f)を短くすると、インピーダンスが変化し、共振周波数が高い方へと変動する。よって、目的とする第1周波数よりも低い周波数に対して第1ループ導体14の寸法を共振するように設定し、第1給電用導体16の位置、長さ、給電位置を調整することで、目的とする第1周波数に共振周波数を一致させることが可能になる。また、矩形ループの長手方向の長さである第1横辺部14Aの長さL1、誘電体基板12の誘電率、厚みを調整することでも、共振周波数を調整することができる。
【0033】
尚、この基本構成においてギャップ15が無い場合であっても特性への影響は少ない。
【0034】
以上の第1ループ導体14と平行に、HF帯(13.56MHz)用のコイルを設けることで、2周波対応のアンテナとすることができる。また、低グレードの誘電体基板を利用することができ、全体として安価で且つ小型なアンテナとすることができる。
【0035】
(基本構成2)
図6〜図8は、本発明の基本構成2に係る平面ループアンテナを表す。この例では、基本構成1の同軸給電の代わりに、電磁結合給電を行うもので、第1給電用導体16の代わりに、第1ループ導体14と平行にループ外からループ内へと延びる第1給電用導体17が設けられている。第1給電用導体17の基端部には、第1給電用同軸線路22の中心導体22aが接続され、第1給電用同軸線路22の外部導体22bが金属反射板20に接続される。
【0036】
このような構成においても、基本構成1と同様に動作させることができ、第1周波数における直線偏波を放射することができる。
【0037】
第1給電用導体17の幅を変えることで、インピーダンスが変化する。基本構成1と同様に、第1給電用導体17の調整を行うことで、目的とする第1周波数に一致させることが可能になる。
【0038】
以上の第1ループ導体14及び第1給電用導体17と平行に、HF帯(13.56MHz)用のコイルを設けることで、2周波対応のアンテナとすることができる。
【0039】
(第1実施形態)
次に、図9〜図11は、本発明の第1実施形態による平面ループアンテナを表す。この例では、基本構成1の平面ループアンテナに加えて、誘電体基板12の他方の面に第2ループ導体24を有している。
【0040】
第2ループ導体24も第1ループ導体14と同様に構成され、具体的には、第1横辺部24Aと、第1横辺部24Aに対して直交する第1縦辺部24B及び第2縦辺部24Cと、第1縦辺部24B及び第2縦辺部24Cに直交し第1横辺部24Aに平行な第2横辺部24Dとからなる矩形ループの放射エレメントからなり、銅箔エッチングから形成される。第2横辺部24Dの中央部には、ギャップ25が形成されて、第1部分24D1と第2部分24D2とに分かれている。各部の長さと幅は、第1ループ導体14と同じとなっているとよい。
【0041】
そして、第1ループ導体14と第2ループ導体24とは、誘電体基板12を貫通する接続導体28によって第1横辺部14Aと第1横辺部24Aとが繋がることによって、互いに導通している。
【0042】
また、誘電体基板12内の第1ループ導体14と第2ループ導体24との間には、第1ループ導体14及び第2ループ導体24と平行に、HF帯(13.56MHz)のためのコイル状導体34が埋設される。
【0043】
以上のように構成される第1実施形態においては、基本構成と同様に、第1周波数における直線偏波を放射することができる。
【0044】
さらに、コイル状導体34に給電を行うことによって、13.56MHzにおける電磁誘導方式による伝送を行うことができる。
【0045】
コイル状導体34は、第1ループ導体14と第2ループ導体24とによって上下が挟まれており、第1ループ導体14と第2ループ導体24をグランドしたときに、コイル状導体34の静電シールドをすることができる。よって、コイル状導体34の電力を大きくしたときにも、遠方の電界を電波法規制値内に減衰させることができ、電界が周囲に与える影響を低減することができる。コイル状導体34によって発生する磁界は、第1ループ導体14及び第2ループ導体24にギャップ15、25を設けることにより減衰せずに、外部に発生させることができる。
【0046】
第1ループ導体14による電波方式と、コイル状導体34による電磁誘導方式の2つの方式との互いの影響に関しては、コイル状導体34は、磁界動作であるために、周囲の電波方式の電界の影響は少なく、共振周波数の変動もそれほどない。一方の電波方式は、コイル状導体34の影響を受け、共振周波数がずれ、また、放射パターンも変化するおそれがある。しかしながら、図12に示すように、第1給電用導体16に接続される第1周波数用の送受信回路36と、コイル状導体34に接続される電磁誘導方式用の送受信回路40とのグランドを別々にして、両者を絶縁することで、第1周波数における放射パターンへの影響を無くすることができる。共振周波数のずれに対しては、第1ループ導体14及び第2ループ導体24の長さ、誘電体基板12の誘電率、基板厚を調整することで、第1周波数において共振周波数となるような調整をすることができる。
【0047】
また、図12A及び12Bに示したように、誘電体基板12と反射板20との間に13.56MHzの送信スパイラルコイル42を設けて、コイル状導体34に非接触給電することで、電波方式のアンテナに影響を与えないようにすることもできる。コイル状導体34にキャパシタCを接続し、コイル状導体によるインダクタンスLとキャパシタCとで共振状態(f=1/2π√LC=13.56MHz)にすることで、スパイラルコイル42からの13.56MHz送信誘起電力が磁界共鳴により増幅されQ倍されて電流に比例する磁界がコイル状導体34から発生する。
【0048】
こうして、図1〜3に示した基本構成1に加えて、コイル状導体34を設けることにより、2周波対応のアンテナとすることができる。誘電体損失による放射効率の影響が小さいため、誘電体基板12をFR−4のような低グレードで実現することができて、安価で小型のアンテナとすることができる。そして、13.56MHz近傍のHF帯、950MHzまたはその近傍のUHF帯の周波数で動作するRFID関連の機器として、例えばリーダ側アンテナとして、または、ICチップと組み合わせることによりタグ側またはカード側のアンテナとして、使用することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、図13〜図15は、本発明の第2実施形態による平面ループアンテナを表す。この例では、基本構成2の平面ループアンテナと異なり、誘電体基板12の他方の面に第2ループ導体24を有しており、誘電体基板12に積層された誘電体基板12A(厚みh2=0.8mm〜1.6mm、誘電率は誘電体基板12と同じ)を介して第1ループ導体14及び第2ループ導体24と平行に且つループ外からループ内に向かって延びる第1給電用導体17が設けられる。
【0050】
また、誘電体基板12内の第1ループ導体14と第2ループ導体24との間には、HF帯(13.56MHz)のためのコイル状導体34が埋設される。
【0051】
以上のように構成される第2実施形態においては、基本構成と同様に、第1周波数における直線偏波を放射することができる。
【0052】
さらに、コイル状導体34に給電を行うことによって、13.56MHzにおける電磁誘導方式による伝送を行うことができる。
【0053】
このとき、コイル状導体34は、第1ループ導体14と第2ループ導体24とによって上下が挟まれて静電シールドされることで、第1実施形態と同様の作用をさせることができる。
【0054】
こうして、図6に示した基本構成2に加えて、コイル状導体34を設けることにより、2周波対応のアンテナとすることができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1給電用導体17は、コイル状導体34への給電も兼用するように使用することが可能になる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、図16〜図18は、本発明の第3実施形態による平面ループアンテナを表す。この例では、第1実施形態の平面ループアンテナに対して、さらに、第2ループ導体24の第1横辺部24Aから第2給電用導体26が延びており、その基端部はテーパ部26aとなっている。
【0056】
第1ループ導体14及び第1給電用導体16と、第2ループ導体24及び第2給電用導体26は、図示したように、誘電体基板12の表側と裏側とでほぼ同じ形状と大きさとなっているが、第1給電用導体16と第2給電用導体26の位置は左右中心からずれており、結果として、誘電体基板12を上から透過して見たときに、第1給電用導体16と第2給電用導体26とは、互いに位置がずれている。
【0057】
そして、第2給電用導体26の遊端部付近に給電点が設定されて、給電用同軸線路22の中心導体22aが接続される。
【0058】
この第1給電用導体16と第2給電用導体26の位置を左右にずらし、第1ループ導体14及び第2ループ導体24にそれぞれギャップ15、25を設けることで、位相差90度の2つの共振周波数特性が現れて、第1周波数における円偏波を放射させることが可能となる。
【0059】
図19及び図20は、第1周波数を950MHzとしたときの950MHz付近の利得と軸比、第1周波数950MHzとしたときの放射特性のFDTD法によるシミュレーション結果を示す。このときの各種のパラメータは、L1=101mm、L2=57mm、L3=48mm、L4=48mm、W=8mm、ギャップの距離d=5mm、a=10mm、b=32mm、c1=34mm、c2=34mm、f=30.5mm、g=2.5、誘電体基板12の厚みh=1.6mmであり、誘電体基板12の誘電率は3.8である。また、h1=0.1λ1である。
【0060】
950MHzにおいて左旋回円偏波特性が得られた。また、軸比の3dB以下となる比帯域幅は5.8%であった。
【0061】
また、給電点を、第2給電用導体26から第1給電用導体16に変えると、右旋回円偏波特性が得られ、同等の特性を示す。
【0062】
こうして、第1実施形態の効果に加えて、本実施形態では、円偏波放射の電波方式と、コイル状導体34による電磁誘導方式による2周波対応のアンテナとすることができる。円偏波特性を持たせることで、平面ループアンテナ10に対して対象物(タグまたはカード)との向きを考慮する必要がなくなる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、図21〜図23は、本発明の第4実施形態による平面ループアンテナを表す。この例では、第2実施形態の平面ループアンテナに対して、さらに、誘電体基板12Aに第2給電用導体27が設けられている。
【0064】
第1給電用導体17と第2給電用導体27の位置は左右中心からずれて左右中心に対して対称に配置されており、結果として、誘電体基板12を上から透過して見たときに、第1給電用導体16と第2給電用導体26とは、第1ループ導体14及び第2ループ導体24に対して互いに位置がずれている。
【0065】
そして、第1給電用導体17の基端部付近に、給電用同軸線路22の中心導体22aが接続される。
【0066】
この第1給電用導体17と第2給電用導体27の位置を左右にずらし、第1ループ導体14及び第2ループ導体24にそれぞれギャップ15、25を設けることで、位相差90度の2つの共振周波数特性が現れて、第1周波数における円偏波を放射させることが可能となる。
【0067】
図24及び図25は、第1周波数を860MHzとしたときの860MHz付近の利得と軸比、第1周波数860MHzとしたときの放射特性のFDTD法によるシミュレーション結果を示す。このときの各種のパラメータは、L1=104mm、L2=57mm、L3=48mm、L4=48mm、W=8mm、ギャップの距離d=5mm、a=13mm、b=32mm、c1=32mm、c2=32mm、g=2.5、誘電体基板12、12Aの厚みh+h2=2.4mmであり、誘電体基板12の誘電率は3.4である。またh1=0.1λ1である。
【0068】
860MHzにおいて右旋回円偏波特性が得られた。また、軸比の3dB以下となる比帯域幅は3%であった。
【0069】
また、給電点を、第1給電用導体17から第2給電用導体27に変えると、左旋回円偏波特性が得られ、同等の特性を示す。
【0070】
こうして、第2実施形態の効果に加えて、本実施形態では、円偏波放射の電波方式と、コイル状導体34による電磁誘導方式による2周波対応のアンテナとすることができる。円偏波特性を持たせることで、平面ループアンテナ10に対して対象物(タグまたはカード)との向きを考慮する必要がなくなる。
【0071】
(第5実施形態)
図26〜図28は、本発明の第5実施形態による平面ループアンテナを表す。この例では、第1実施形態の平面ループアンテナに対して、さらに、第2ループ導体24の第1横辺部24Aから第2給電用導体26が延びている。
【0072】
そして、第2給電用同軸線路32の中心導体32aが第2給電用導体26の遊端部付近に接続され、第2給電用同軸線路32の外部導体32bが金属反射板20に接続される。
【0073】
第1給電用導体16と同じように、第2給電用導体26の位置、長さ、給電位置のパラメータを調整することで、共振周波数を変化させることができるので、第2ループ導体24及び第2給電用導体26によって第2周波数(例えば、915MHz)に共振するように、第2給電用導体26のパラメータを設定する。
【0074】
以上のように構成される平面ループアンテナ10において、第1給電用同軸線路22から第1周波数の不平衡給電を行うことにより、第1ループ導体14から、第1周波数の直線偏波の放射を行うことができると共に、第2給電用同軸線路32から第2周波数の不平衡給電を行うことにより、第2ループ導体24から第2周波数の直線偏波の放射を行うことができる。
【0075】
また、誘電体基板12内の第1ループ導体14と第2ループ導体24との間には、HF帯(13.56MHz)のためのコイル状導体34が埋設されることで、第1実施形態と同様に静電シールド効果を持たせることができる。
【0076】
こうして、第1実施形態の効果に加えて、2周波の直線偏波放射の電波方式と、コイル状導体34による電磁誘導方式による3周波対応のアンテナとすることができる。
【0077】
(第6実施形態)
図29〜図31は、本発明の第6実施形態による平面ループアンテナを表す。この例では、第2実施形態の平面ループアンテナに対して、さらに、誘電体基板12Aに第2給電用導体27が設けられている。
【0078】
また、誘電体基板12内の第1ループ導体14と第2ループ導体24との間には、HF帯(13.56MHz)のためのコイル状導体34が埋設される。
【0079】
以上のように構成される第6実施形態においては、第5実施形態と同様に、2周波の直線偏波放射の電波方式と、コイル状導体34による電磁誘導方式による3周波対応のアンテナとすることができ、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、第1給電用導体17または第2給電用導体27は、コイル状導体34への給電を兼用するように使用することが可能になる。
【符号の説明】
【0081】
10 平面ループアンテナ
12 誘電体基板
14 第1ループ導体
16 第1給電用導体
17 第1給電用導体
20 反射板
22 第1給電用同軸線路
22a 中心導体
22b 外部導体
24 第2ループ導体
26 第2給電用導体
27 第2給電用導体
32 第2給電用同軸線路
32a 中心導体
32b 外部導体
34 コイル状導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面上に形成され、一部にギャップを有する第1ループ導体と、
前記誘電体基板の他方の面上に形成され、一部にギャップを有し、第1ループ導体と導通する第2ループ導体と、
誘電体基板から所定距離離反して配置されて、前記第1ループ導体との間で第1周波数での不平衡給電がなされる反射板と、
誘電体基板内で第1ループ導体と第2ループ導体との間に配置されて、前記第1周波数と異なる周波数帯で動作し電磁誘導方式による伝送を行うコイル状導体と、
を備える、ことを特徴とする平面ループアンテナ。
【請求項2】
前記第1ループ導体の所定部位からループ内部に向かって第1給電用導体が延びており、前記第1給電用導体に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続される、ことを特徴とする請求項1記載の平面ループアンテナ。
【請求項3】
前記第1ループ導体と平行に第1給電用導体が設けられ、第1給電用導体に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続され、電磁結合により第1給電用導体から前記第1ループ導体に給電がなされる、ことを特徴とする請求項1記載の平面ループアンテナ。
【請求項4】
前記第1ループ導体の所定部位からループ内部に向かって第1給電用導体が延び、前記第2ループ導体の所定部位からループ内部に向かって第2給電用導体が延びており、前記第1ループ導体と前記第2ループ導体とは同じ構成を成して対向しており、前記第1給電用導体と前記第2給電用導体とは、対向せずにずれて配置され、第1給電用導体と第2給電用導体のいずれか一方に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続されて、第1周波数において円偏波特性を持つことを特徴とする請求項1に記載の平面ループアンテナ。
【請求項5】
前記第1ループ導体と前記第2ループ導体とは同じ構成を成して対向しており、前記第1ループ導体及び第2ループ導体に平行に第1給電用導体と第2給電用導体とが設けられ、第1給電用導体と第2給電用導体とが第1ループ導体及び第2ループ導体に対して異なる位置にずれて配置され、第1給電用導体と第2給電用導体のいずれか一方に第1給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第1給電用同軸線路の外部導体が接続されて、電磁結合により第1ループ導体と第2ループ導体に給電がなされて、第1周波数において円偏波特性を持つことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の平面ループアンテナ。
【請求項6】
前記第2ループ導体と前記反射板との間で第1周波数とは異なる周波数である第2周波数での不平衡給電がなされることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の平面ループアンテナ。
【請求項7】
前記第2ループ導体の所定部位からループ内部に第2給電用導体が延びており、前記第2給電用導体に第2給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第2給電用同軸線路の外部導体が接続される、ことを特徴とする請求項6記載の平面ループアンテナ。
【請求項8】
前記第2ループ導体と平行に第2給電用導体が設けられ、第2給電用導体に第2給電用同軸線路の中心導体が接続され、前記反射板に第2給電用同軸線路の外部導体が接続され、電磁結合により第2給電用導体から前記第2ループ導体に給電がなされる、ことを特徴とする請求項6記載の平面ループアンテナ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12A】
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【図12B】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図1】
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【図6】
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【図9】
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【図13】
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【図16】
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【図21】
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【図26】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−217203(P2011−217203A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84596(P2010−84596)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【Fターム(参考)】