説明

広口チューブ体容器と成形方法と成形装置

【課題】 本発明は、インモールド材の端の各部分とゲートとの距離の差が大きい場合でも、インモールド材の端のカール部に対して成形樹脂の圧力を設定した方向から作用するようにし、もってインモールド材の端のカール部への湾曲成形を確実に達成することを目的とする。
【解決手段】 合成樹脂チューブ体である胴部2に口筒部3と底部8をインサート成形により設け、底部8の成形空間のカール部端縁2cに対向した部分に規制堰片21を設けて、成形樹脂Sの流動に対して規制域Kを形成し、この規制域Kの規制作用により、胴部2の下端に対して成形樹脂Sの圧力が外側から作用するようにして、カール部2bの確実な湾曲成形を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の主体部分である胴部を、径の大きいチューブ体で構成した広口チューブ体容器と、成形方法と成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器の主体部分である胴部をチューブ体で構成した容器としては、例えば特許文献1が知られている。この特許文献1に示されたチューブ体容器は、柔軟性を有する薄肉な可撓性の合成樹脂製のスリーブであるチューブ体を押し出し成形によりシームレスに形成し、チューブ体の下端に、インサート成形によって当該チューブ体の外径寸法に納まる寸法で剛性を有する合成樹脂製の底部品を一体成形し、チューブ体の上端に、チューブ体内に嵌装される嵌装部とチューブ体の上端から外方へ張り出される鍔部とを備え、剛性を有する首部品を装着するとともに、チューブ体に、その下端から上端に向かってスライド自在に挿入されて嵌装部との間でチューブ体を挟み込みかつ鍔部と接合される剛性を有する押さえリングを装着する、構成となっている。
【0003】
この特許文献1に示された従来技術は、柔軟性を有するチューブ体の上端および下端に、剛性を有する嵌装部と押さえリングとの組合せ物および底部品を装着したので、容器の主体部分である胴部を柔軟なチューブ体としていても、形態が安定的で通常の容器として取扱うことができ、またチューブ体に対して底部品はインサート成形により、嵌装部と押さえリングとの組合せ物は挿入挟持によりそれぞれ装着するので、組立てが簡単である、と云う利点を発揮する。
【0004】
この従来技術にあっては、底部品をチューブ体の下端内に位置させているので、インサート材としてのチューブ体と、このチューブ体内に挿入されるコア金型との間に底部品成形のためのキャビティの一部を形成しなければならず、その分、底部品をインサート成形する金型の構造が複雑となり、またチューブ体に対する嵌装部と押さえリングの組合せ物の挿入組付け作業は、チューブ体に対する底部品のインサート成形による組付けを行なった後、チューブ体に対して嵌装部と押さえリングを別々に挿入組付けし、かつチューブ体と嵌装部と押さえリングの三者を接合するものとなるので、成形組立作業が煩雑である、と云う不満点があった。
【0005】
この不満点を解消するものとして、インモールドラベル容器に関する特許文献2に示される技術は、インモールドラベルの上端を、射出される成形樹脂の圧力を利用して成形型面に押付けて湾曲したカール部に成形し、もってインモールド材の端部と、このインモールド材に対して折れ曲がり状に位置するフランジ状成形部分との組付きを強固に達成するようにしている。
【0006】
この特許文献2に示された技術は、底部中央に設けられたゲートとインモールド材のカール部に湾曲成形される端の各部分との間の距離の差が殆どないので、ゲートから射出された成形樹脂は、インモールド材の端に対して、殆ど同時に一定方向から到達し、このインモールド材の端を成形型面に押付けてカール部に成形することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−008170号公報
【特許文献2】特開2003−312678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カール部に成形されるインモールド材の端に対してゲートが近くに位置して、インモールド材の端の各部分とゲートとの間の距離の差が大きい場合(図3と図4参照)には、ゲートに近いインモールド材の端部分には、確実にゲート側から成形樹脂が圧力を作用させてカール部に成形するのであるが、ゲートから離れたインモールド材の端部分には、成形樹脂の流動状態により、ゲートが位置している側から成形樹脂の圧力が作用するとは言い切れず、成形樹脂の圧力が反対側から作用したり、ゲートが位置している側からの成形樹脂の圧力作用が不十分となり、インモールド材の端のカール部への成形が不良となる恐れがある、と云う問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、インモールド材の端の各部分とゲートとの間の距離の差が大きい場合でも、インモールド材の端のカール部に対して成形樹脂の圧力を設定した方向から作用するようにすることを技術的課題とし、もってインモールド材の端のカール部への湾曲成形を確実に達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の説明においては、広口チューブ体容器の仮想される中心軸を基準として、近い側を内側、遠い側を外側とし、また広口チューブ体容器の口部側を上、底部側を下と定義する。
上記技術的課題を解決するための本発明の成形方法の主たる構成は、
合成樹脂チューブ体製胴部の外表面上端に口筒部を、また胴部の外表面下端に底部を、それぞれインサート成形により設けて容器本体を構成し、口筒部に着脱する蓋体で開閉される広口チューブ体容器の成形方法であること、
胴部の直線筒状となった部分の外表面が位置する仮想される外接面よりも外側に位置する筒片部と、底面を形成して、胴部の下端の内側に湾曲したカール部が位置する底板部を有する底部の成形に際して、
筒片部にゲートを設けること、
カール部の端縁付近で、少なくともこの端縁よりの内側に位置するリング状の成形空間域を、射出された成形樹脂の通過に規制力を作用させる規制域とすること、この規制域により成形空間を外側成形空間と内側成形空間に区画して、規制域の全域で、外側成形空間に対する成形樹脂の充填が内側成形空間に先立って達成されるようにすること、
にある。
なお、広口チューブ容器における「広口」とは、インサート成形される口筒部が、チューブ製胴部を支持する金型部分から型抜きの可能な口径寸法を意味する。
【0011】
筒片部に設けられたゲートから射出された成形樹脂は、外側成形空間を通って、間近の胴部下端部分に到達し、この胴部下端部分に圧力を作用させてカール部に成形するが、規制域で流動に対して規制力を受けるので、一部が規制された状態で内側成形空間に流入し、他の部分は規制域に沿って左右に拡がって外側成形空間に充填されて行く。
【0012】
それゆえ、規制域に到達する成形樹脂は、必ず外側成形空間側の成形樹脂が先となり、内側成形空間側の成形樹脂はそれより遅れることになる。このため、胴部の端は外側成形空間側からの成形樹脂の力を受けることになり、これにより必ずカール部に成形されることになる。
【0013】
成形方法の別の発明は、主たる構成に、ゲートを、周方向に沿って等間隔に複数設け、この各ゲートから成形樹脂を同一条件で射出する、ことを加えたものである。
【0014】
ゲートを、周方向に沿って等間隔に複数設けたものにあっては、ゲートから胴部下端各部までの距離の差が小さくなるので、その分、胴部下端各部に到達する成形樹脂は外側成形空間側の成形樹脂が先となる状態が維持され、内側成形空間側の成形樹脂はそれより遅れる動作状態が確実に得られることになる。
【0015】
本発明の広口チューブ容器の主たる構成は、
合成樹脂チューブ体製胴部の外表面上端に口筒部を、また胴部の外表面下端に底部を、それぞれインサート成形により設けて容器本体を構成し、口筒部に着脱する蓋体で開閉される広口チューブ体容器であること、
底部は、胴部(2)の直線筒状となった部分の外表面が位置する仮想される外接面よりも外側に位置する筒片部と、底面を形成し、胴部の下端の内側に湾曲したカール部が位置する底板部を有して構成されること、
カール部の端縁に対向する底板部の下面に周溝を周設し、この周溝の少なくとも内側溝面をカール部端縁よりも内側に位置させること、
にある。
【0016】
広口チューブ容器の主たる構成にあっては、底板部の下面に形成された周溝は、この周溝が位置した底板部部分の厚み幅を他の部分の厚みよりも小さくするので、この周溝を設けた底板部部分に規制域を形成することになる。
【0017】
また、この周溝の有無を認識することにより、規制域の作用によりカール部を成形した製品であると判断することができる。
【0018】
本発明の広口チューブ容器の成形装置の主たる構成は、
合成樹脂チューブ体製胴部の外表面上端に口筒部を、また胴部の外表面下端に底部を、それぞれインサート成形により設けて容器本体を構成し、口筒部に着脱する蓋体で開閉される広口チューブ体容器の、底部を、胴部の直線筒状となった部分の外表面が位置する仮想される外接面よりも外側に位置する筒片部と、底面を形成し、胴部の下端の内側に湾曲したカール部が位置する底板部を有する構成とした成形装置であること、
この成形装置をコア金型とキャビティ側の金型を有する構成とすること、
円柱状のコア金型は、周面と底面との角部を角取り状にアール加工した湾曲面としていること、
キャビティ側の金型は、筒片部の成形型部分にゲートを設け、コア金型の型面に沿って湾曲成形されたカール部の端縁付近のコア金型とキャビティ側の金型のいずれか一方の型面部分に規制堰片を突周設すること、
この規制堰片の少なくとも内側の堰側面を、カール部端縁よりも内側に位置させたこと、
にある。
【0019】
規制堰片は、コア金型の型面とキャビティ側の金型の型面との間の間隔を狭めることになるので、この規制堰片が位置する成形空間部分の高さ幅を小さくし、これにより規制域を形成することになる。このように、規制堰片は規制域を形成するので、底部の成形空間をゲートが位置する筒片部成形空間が位置する外側成形空間と内側成形空間とに区画することになる。
【0020】
規制堰片の内側の堰側面は、カール部端縁よりも内側に位置しているので、内側成形空間内に侵入した成形樹脂は、カール部端縁に到達する前に、必ず規制域に達し、カール部端縁に到達する流動動作が規制される。これに対して。外側成形空間に射出された成形樹脂は、規制域からの規制作用を受けることなく、カール部端縁に到達することができる。
【0021】
成形装置の別の発明は、主たる構成に、キャビティ側の金型を、側方に型開きする一対のキャビティ金型と、容器本体の底面の成形型面を提供すると共に、規制堰片の成形型面を形成している底金型とから構成したことを、加えたものである。
【0022】
キャビティ側の金型を、一対のキャビティ金型と、規制堰片を有する底金型とから構成したものにあっては、型開きにより、成形された容器本体の金型からの離型に、規制堰片が邪魔となることがない。
【0023】
また、成形装置の別の発明は、主たる構成に、一対のキャビティ金型の側方に位置する両型合せ面に、ゲートを形成したことを、加えたものである。
【0024】
一対のキャビティ金型の側方に位置する両型合せ面に、ゲートを形成したものは、容器本体の離型と一緒にスプールの離型させることができ、無駄のない離型動作を得ることができ、このことにより容器本体の多数個取りを有利に実施できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
成形方法の主たる構成にあっては、規制域に到達する成形樹脂は、必ず外側成形空間側の成形樹脂が先となり、内側成形空間側の成形樹脂はそれより遅れることになるので、胴部の端を必ずカール部に成形することができ、カール部の確実な成形を得ることができる。
【0026】
成形方法の別の発明のゲートを、周方向に沿って等間隔に複数設けたものにあっては、ゲートから胴部下端各部に到達する成形樹脂は、外側成形空間側の成形樹脂が先となり、内側成形空間側の成形樹脂はそれより遅れる動作状態が確実に得られることになるので、カール部の成形が安定して達成される。
【0027】
広口チューブ容器の主たる構成にあっては、周溝により底板部部分に規制域を形成することが簡単にでき、この周溝の有無を認識することにより、規制域の作用によりカール部を成形した製品であると判断することの一助となる。
【0028】
広口チューブ容器の成形装置の主たる構成にあっては、規制堰片により規制域を形成するので、底部の成形空間をゲートが位置する筒片部成形空間が位置する外側成形空間と内側成形空間とに明確に区画することができ、これにより規制堰片による成形樹脂の充填動作に、外側成形空間と内側成形空間とで明らかな差を与え、もって胴部下端のカール部への成形を確実なものとすることができる。
【0029】
成形装置の別の発明のキャビティ側の金型を、一対のキャビティ金型と、規制堰片を有する底金型とから構成したものにあっては、成形された容器本体の金型からの離型に、規制堰片が邪魔となることがないので、成形された容器本体の円滑な離型動作を得ることができる。
【0030】
成形装置のさらに別の発明の一対のキャビティ金型の側方に位置する両型合せ面に、ゲートを形成したものにあっては、容器本体の無駄のない離型動作を得ることができ、このことにより容器本体の多数個取りを有利に実施でき、成形された容器本体の良好な離型処理を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、全体正面図である。
【図2】図1に示した一実施形態例の、全体縦断面図である。
【図3】図2に示した実施形態例の、要部拡大断面図である。
【図4】図1に示した実施形態例の、底面図である。
【図5】本発明の一実施形態例の成形装置を示す、要部拡大縦断面である。
【図6】本発明の成形動作の説明に供する、成形の初期を示すものである。
【図7】本発明の成形動作の説明に供する、成形の中期を示すものである。
【図8】本発明の成形動作の説明に供する、成形の後期を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照しながら説明する。
本発明による広口チューブ体容器(図1、図2参照)は、容器本体1と蓋体13とから構成され、容器本体1は、径の大きい合成樹脂チューブ体製の胴部2と、この胴部2の上端開放部にインサート成形により取付けられて、胴部2の内径と略等しい口径の開口部を形成する口筒部3と、胴部2の下端開放部にインサート成形により取付けられた底部8とから構成され、蓋体13は、口筒部3に着脱して容器本体1を開閉する。
【0033】
容器本体1の胴部2は、合成樹脂積層シートを丸めて成形されたチューブ体で形成されており、この合成樹脂積層シートを構成する各層を選択して組合せることにより、胴部2に所望する物性を簡単に附与することができる。また、胴部2は、柔軟性を有するチューブ体製であるので、強引な潰し変形が可能であり、それゆえ廃棄時には上下から押し潰すとか、捻りながら押し潰す等することにより容器の十分な減容化を得ることができ、これにより容器の廃棄を効率良く達成できる。特に、胴部2を形成するチューブ体の径が大きい場合は、上記した潰し変形を適正にかつ簡単に得ることができる。
【0034】
例えば、胴部2を形成するチューブ体として、アルミ箔を用いた合成樹脂積層シートを用いた場合は、アルミ箔が発揮する各種のバリヤー機能、例えば各種の気体に対するガスバリヤー性、液体成分に対するバリヤー性、さらに遮光性を得ることができ、優れた内容物保存効果を得ることがでる。また、胴部2を形成するチューブ体として、シリカ蒸着層や透明なバリヤー樹脂フィルムを用いた透明合成樹脂積層シートを用いた場合は、ガスバリヤー性を得ることができる状態で、容器外から内容物を直接観察することができるので、商品である容器を安心して購入することができる。
【0035】
口筒部3および底部8は、変形し難いすなわち剛性を有しているので、柔軟性を有する胴部2の上端部および下端部を、安定して一定形状に保持することができ、これにより容器として要求される一定形状を維持することになる。また、胴部2よりも大きい外径を有しているので、容器を並列配置して取扱う際には、隣接する容器同士は、口筒部3および底部8が突き当ったり擦れ合ったりすることはあっても、柔軟性のある胴部2が接触したり擦れ合ったりすることがなく、これにより胴部2に施された表示の状態が劣化するのを、効果的に防止することになる。
【0036】
口筒部3および底部8は、胴部2の外表面にインサート成形されており、口筒部3(図1参照)は、主体部分である円筒状の本体筒4と、この本体筒4の上端に内鍔状に位置して、胴部2の上端面を覆う内鍔6とから構成され、本体筒4は、上半部分外周面に蓋体13の装着機能部分である螺条5を刻設し、下半部分を外方に肉厚に膨出した膨出下部7としている。この膨出下部7は、容器の最も大きい外径部分を形成するので、容器の取扱い時には、他の物品が蓋体13に擦れ状に接触するのを邪魔することになり、これにより蓋体13の螺着組付きを安定させ、また蓋体13の着脱操作時には、容器本体1側の支持部として安定して機能する。
【0037】
底部8(図1、図2、図3、図4参照)は、短円筒状の筒片部9と、胴部2の下端開放部を閉塞する平板状の底板部10とから構成されている。この底部8の筒片部9は、胴部2の直線筒状となった外表面部分が位置する仮想される外接面2aよりも外側に位置しており、この筒片部9にはゲートGが位置することになる。また。筒片部9に内側に位置する底板部10には、カール部2bに湾曲成形された胴部2の下端が位置しており、この底板部10の下面には、カール部2bの端縁2cに対向して四角溝状の周溝10aがカール部2bの内側に形成されている。この周溝10aの配設位置は、少なくとも内側溝面10bがカール部端縁2cよりも内側に位置していれば良く、外側溝面10cの位置は特に限定されることはなく、カール部端縁2cを越えて外側に位置しても構わない。
【0038】
図示実施形態例の場合、底部8の底板部10をリング板状に構成し、インモールド材である底フィルム12で底板部10の開放部11を閉塞するように構成している。また、射出成形された底部8の離型後における収縮変形により、底フィルム12に撓み変形が発生することがあり、この底フィルム12の撓み変形は、容器内に発生した減圧に伴う底フィルム12の変位をし易くするように作用するので、底フィルム12による減圧吸収効果は、高められることになる。この底フィルム12を設けた構成にあっては、底部8の消費樹脂材量の省資源化を得ることができることになる。
【0039】
なお、図示実施形態は、周溝10aを底板部10の下面に設けた構成例を示したが、これに限定されることはなく、底板部10の上面に周溝10aを設けることも可能である。
【0040】
また、この実施形態例において、胴部2をバリヤー性が附与された合成樹脂積層チューブ体で形成した場合には、底フィルム12にも同様のバリヤー性を附与するのが望ましいので、底フィルム12をバリヤー性が附与された合成樹脂積層フィルムで構成するのがよい。このように、薄肉部分となっている合成樹脂積層チューブ体製の胴部2および底フィルム12にバリヤー性を附与することにより、容器全体のバリヤー性を高めることができる。
【0041】
このように、口筒部3および底部8は、胴部2を構成するインサート材であるチューブ体の外表面にインサート成形されるので、インサート材であるチューブ体は、その内表面全域をコア金型18(図5参照)に密接させ、成形装置の金型は、チューブ体の外側だけにキャビティを形成すればよく、その構造がきわめて簡単なものとなる。
【0042】
この成形装置のコア金型18は、円柱状金型の周面と底面との角部を角取り状にアール加工した湾曲面としており、キャビティ側の金型は、筒片部9の成形型面部分にゲートGを設け、コア金型18の型面に沿って湾曲成形されたカール部2bの端縁2cに対向する型面部分に矩形突条状の規制堰片21を設けており、この規制堰片21の少なくとも内側の堰側面を、カール部端縁2cよりも内側に位置させている。規制堰片21をコア金型18側に設ける場合は、コア金型18のカール部成形型面部分の内側に設けることになる。
【0043】
キャビティ側の金型は、図示実施形態例の場合(図5参照)、規制堰片21の近くまでは、一対の割り金型であるキャビティ金型19で成形型面を形成しており、規制堰片21を含めた底部8の下面部分は、底金型20で成形型面を形成している。この底金型20に形成された規制堰片21は、底部8の下面との間隔を狭める部分となるので、底部8の下面との間に規制域Kを形成し、底部8の成形空間を、ゲートGが位置する外側成形空間E1と内側成形空間E2とに区画する。
【0044】
蓋体13(図1、図2参照)は、頂壁14と筒壁15とを有する有頂短円筒形状をしていて、頂壁14の下面周端部には、シール筒片16とシール条17とが垂下突片状に設けられており、シール筒片16は、容器本体1に組付いた状態で、容器本体1の上端開孔部に密嵌入し、シール条17は、容器本体1に組付いた状態で、容器本体1の上端面に、全周に亘って密に弾接し、このシール筒片16およびシール条17により、蓋体13による容器本体1の密閉が確保される。また、筒壁15の内周面には、口筒部3の螺条5に螺合する螺条が刻設されていて、この筒壁15の口筒部3に対する螺着により、容器本体1の密閉が維持される。なお、この筒壁15の外周面には細かい縦条であるローレットが形成されて、蓋体13の容器本体1に対する着脱操作が行い易くしており、また筒壁15の外径は、口筒部3の膨出下部7の外径よりも小さく設定されている。
【0045】
図6〜図8は、成形空間内に射出された成形樹脂Sの流動充填動作を説明するもので、射出の初期には、ゲートGから、図6の小さい矢印で示すように、拡がりながら外側成形空間E1に侵入するが、内側成形空間E2への侵入は、規制域Kにより規制されて、その侵入が遅れる。この状態から成形樹脂Sの射出が進んで射出の中期となると、図7に示すように、外側成形空間E1における成形樹脂Sの拡がりは、周方向に沿って急速に進むが、内側成形空間E2における成形樹脂Sの拡がりは、規制域Kで受けた規制力作用分だけ、外側成形空間E1における成形樹脂Sの拡がりに対して遅れて進行する。
【0046】
このため、図8に示すように、内側成形空間E2における成形樹脂Sの拡がりは、外側成形空間E1における成形樹脂Sの拡がりに対して遅れた状態のまま最後まで進行し、このため胴部2の下端に、内側成形空間E2の成形樹脂Sが外側成形空間E1の成形樹脂Sよりも早く到達することはなく、これにより胴部2の下端のカール部2bへの成形樹脂Sによる成形は確実にかつ安定して達成されることになる。
【0047】
なお、規制堰片21は、その断面形状が矩形に特定されることはなく、台形や円弧形状であってもよいのであるが、断面形状が矩形の場合、規制堰片21の側面が、成形型面に対して略垂直に立ち上がる姿勢となるので、流動してくる成形樹脂Sに対して強い規制力を発揮することになる。また、容器本体1に対する蓋体13の着脱は、螺合組付き構造に限定されることはなく、他の適当な密な組付けを得ることのできる組付け手段を採用してもよい。さらに、口筒部3の膨出下部7は、その全体が大きな肉厚である必要はなく、一部を大きな肉厚にした構成で、他の部分は把持力を支えることができる剛性を発揮できる程度の小さい肉厚にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、広口チューブ体容器の主体部分である胴部を構成する合成樹脂チューブ体の端部のカール部への成形樹脂による湾曲成形を、安定して確実に達成できるものであり、容器本体の主体部分である胴部をチューブ体で構成した広口チューブ体容器の成形に関して幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0049】
1 ;容器本体
2 ;胴部
2a ;胴部外接面
2b ;カール部
2c ;カール部端縁
3 ;口筒部
4 ;本体筒
5 ;螺条
6 ;内鍔
7 ;膨出下部
8 ;底部
9 ;筒片部
10 ;底板部
10a;周溝
10b;内側溝面
10c;外側溝面
11 ;開放部
12 ;底フィルム
13 ;蓋体
14 ;頂壁
15 ;筒壁
16 ;シール筒片
17 ;シール条
18 ;コア金型
19 ;キャビティ金型
20 ;底金型
21 ;規制堰片
G ;ゲート
E1 ;外側成形空間
E2 ;内側成形空間
K ;規制域
S ;成形樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂チューブ体製胴部(2)の外表面上端に口筒部(3)を、また前記胴部(2)の外表面下端に底部(8)を、それぞれインサート成形により設けて容器本体(1)を構成し、前記口筒部(3)に着脱する蓋体(13)で開閉される広口チューブ体容器において、前記胴部(2)の直線筒状となった部分の外表面が位置する仮想される外接面(2a)よりも外側に位置する筒片部(9)と、底面を形成し、前記胴部(2)の下端の内側に湾曲したカール部(2b)が位置する底板部(10)を有する底部(8)の成形に際して、前記筒片部(9)にゲート(G)を設け、前記カール部(2b)の端縁(2c)付近で、少なくとも該端縁(2c)よりの内側に位置するリング状の成形空間域を、射出された成形樹脂(S)の通過に規制力を作用させる規制域(K)とし、該規制域(K)により成形空間を外側成形空間(E1)と内側成形空間(E2)に区画し、前記規制域(K)の全域で、前記外側成形空間(E1)に対する成形樹脂(S)の充填が内側成形空間(E2)に先立って達成されるようにしたことを特徴とする広口チューブ体容器の成形方法。
【請求項2】
ゲート(G)を、周方向に沿って等間隔に複数設け、該各ゲート(G)から成形樹脂(S)を同一条件で射出する請求項1に記載の広口チューブ体容器の成形方法。
【請求項3】
合成樹脂チューブ体製胴部(2)の外表面上端に口筒部(3)を、また前記胴部(2)の外表面下端に底部(8)を、それぞれインサート成形により設けて容器本体(1)を構成し、前記口筒部(3)に着脱する蓋体(13)で開閉される広口チューブ体容器において、前記底部(8)は、前記胴部(2)の直線筒状となった部分の外表面が位置する仮想される外接面(2a)よりも外側に位置する筒片部(9)と、底面を形成し、前記胴部(2)の下端の内側に湾曲したカール部(2b)が位置する底板部(10)を有して構成され、前記カール部(2b)の端縁(2c)に対向する底板部(10)の下面に周溝(10a)を周設し、該周溝(10a)の少なくとも内側溝面(10b)を端縁(2c)よりも内側に位置させたことを特徴とする広口チューブ体容器。
【請求項4】
合成樹脂チューブ体製胴部(2)の外表面上端に口筒部(3)を、また前記胴部(2)の外表面下端に底部(8)を、それぞれインサート成形により設けて容器本体(1)を構成し、前記口筒部(3)に着脱する蓋体(13)で開閉される広口チューブ体容器の、前記底部(8)を、前記胴部(2)の直線筒状となった部分の外表面が位置する仮想される外接面(2a)よりも外側に位置する筒片部(9)と、底面を形成し、前記胴部(2)の下端の内側に湾曲したカール部(2b)が位置する底板部(10)を有する構成とした容器本体(1)の成形装置であって、該成形装置をコア金型(18)とキャビティ側の金型を有する構成とし、円柱状のコア金型(18)は、周面と底面との角部を角取り状にアール加工した湾曲面としており、キャビティ側の金型は、前記筒片部(9)の成形型部分にゲート(G)を設け、前記コア金型(18)の型面に沿って湾曲成形されたカール部(2b)の端縁(2c)付近のコア金型(18)とキャビティ側の金型のいずれか一方の型面部分に規制堰片(21)を突周設しており、該規制堰片(21)の少なくとも内側の堰側面を端縁(2c)よりも内側に位置させたことを特徴とする広口チューブ体容器の成形装置。
【請求項5】
キャビティ側の金型を、側方に型開きする一対のキャビティ金型(19)と、容器本体(1)の底面の成形型面を提供すると共に、規制堰片(21)の成形型面を形成した底金型(20)とから構成した請求項4に記載の広口チューブ体容器の成形装置。
【請求項6】
一対のキャビティ金型(19)の側方に位置する両型合せ面に、ゲート(G)を形成した請求項5に記載の広口チューブ体容器の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250378(P2012−250378A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122938(P2011−122938)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】