説明

建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法

【課題】蓄電部からの電力放電を効率よく行うことが可能な建物用電力供給システムを提供する。
【解決手段】自然エネルギーを利用して発電する発電部及び商用電源の少なくとも一方から供給される電力を蓄電するとともに、建物内での負荷に対して電力を供給する際に蓄電した電力を放電する蓄電部を備えた建物用電力供給システムにおいて、負荷での消費電力を計測して、消費電力を示す消費電力データを取得するデータ取得部と、データ取得部が取得した消費電力データを記憶するデータ記憶部と、データ記憶部から読み出した消費電力データに基づき、1日の中で、負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定する指定部と、蓄電部による電力の蓄電及び放電を切り替える切り替え部と、を備え、切り替え部は、1日のうち、指定部が指定した指定時間帯の始めに相当する時刻から、蓄電部に蓄電された電力の連続放電を開始し、放電開始後は、蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内で発生する負荷へ電力を供給する建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法に係り、特に、蓄電部を備え、当該蓄電部に、自然エネルギーを利用して発電した発電電力、及び、商用電源からの電力のうち、少なくとも一方の電力を蓄電させるとともに、負荷に対して電力を供給する際に蓄電部に蓄電した電力を放電させる建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーム・エネルギー・マネジメントシステム(HEMS)をはじめとして、建物からのCO2排出量を低減して環境負荷を小さくすることを目的とした建物用電力供給システムの開発が、現在、積極的に行われている。その一環として、建物内に設置された蓄電池等の蓄電部における電力の充放電に関する制御技術が開発され、既に数件紹介されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、受電電力の需要増大が生じると予測される需要増大期間に合せて蓄電池の充放電深度を他の期間に対して相対的に深くするという技術が開示されている。当該技術によれば、深い充放電深度で蓄電池が充放電される期間を短くして蓄電池の寿命の長期化を図りつつ、需要増大期間における蓄電池の高出力を実現することが可能になる。
【0004】
一方、特許文献2には、太陽電池での発電量及び電力負荷での需要電力量の予測値と、蓄電池における充電電力量の計測値とに基づいて、蓄電池による充放電の計画を立てて、当該計画に従って、蓄電池による電力の充電と放電とを切り替える技術が開示されている。当該技術によれば、余剰電力を蓄える効率を向上させることを可能にし、更には、商用電力系統からの電力のピークカットを行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−194947号公報
【特許文献2】特開2009−284586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、充放電深度の調整により浅い深度での充放電が繰り返される期間には、充放電が頻繁に切り替わる結果、蓄電池からの電力の放電が効率よく行われない虞がある。また、特許文献2に開示の技術では、太陽電池での発電量及び電力負荷での需要電力量の予測値に基づいて蓄電池からの電力の放電量を調整することから、当該放電量が上記の予測値に応じて変動することになる。この結果、特許文献2に開示の技術においても、特許文献1に開示の技術と同様、充放電が頻繁に切り替わる可能性があり、蓄電池からの電力放電が効率よく行われない虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電部からの電力放電を効率よく行うことが可能な建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の建物用電力供給システムによれば、自然エネルギーを利用して発電する発電部と、該発電部及び商用電源の少なくとも一方から供給される電力を蓄電するとともに、建物内での負荷に対して電力を供給する際に蓄電した電力を放電する蓄電部と、前記負荷での消費電力を計測して、該消費電力を示す消費電力データを取得するデータ取得部と、該データ取得部が取得した前記消費電力データを記憶するデータ記憶部と、該データ記憶部から読み出した前記消費電力データに基づき、1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定する指定部と、前記蓄電部による電力の蓄電及び放電を切り替える切り替え部と、を備え、前記切り替え部は、1日のうち、前記指定部が指定した前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電された電力の連続放電を開始し、放電開始後は、前記蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する、ことにより解決される。
上記の構成によれば、消費電力データに基づいて、蓄電部に蓄電された電力を連続放電する時間帯を指定し、当該時間帯の始めに相当する時刻から連続放電を開始し、放電開始後は、蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する。これにより、蓄電部における蓄電・放電の切り替えが頻繁になるのを避け、蓄電部に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。すなわち、上記の構成により、蓄電部からの電力放電を効率よく行うことが可能な建物用電力供給システムが実現されることになる。
【0009】
また、上記の建物用電力供給システムにおいて、前記データ記憶部は、特定日に取得された前記消費電力データと、非特定日に取得された前記消費電力データと、を分けて記憶し、前記指定部は、前記データ記憶部に記憶された前記消費電力データのうち、特定日に取得された前記消費電力データに基づき、特定日1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、特定日用の前記指定時間帯として指定するとともに、非特定日に取得された前記消費電力データに基づき、非特定日1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、非特定日用の前記指定時間帯として指定し、前記切り替え部は、特定日には、特定日用の前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電した電力の連続放電を開始し、非特定日には、非特定日用の前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電した電力の連続放電を開始すると、好適である。
かかる構成であれば、建物内での負荷における電力消費パターンが特定日と非特定日との間で相違することを反映して、蓄電部に蓄電された電力を連続放電する時間帯(指定時間帯)が特定日と非特定日に分けて設定されるので、特定日及び非特定日の各々の電力消費パターンに応じて、日別に、蓄電部に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。
【0010】
また、上記の建物用電力供給システムにおいて、前記データ取得部は、前記消費電力データを毎日取得し、前記データ記憶部は、前記消費電力データを所定の日数分だけ蓄積し、前記指定部は、前記データ記憶部から読み出した所定の日数分の前記消費電力データに基づき、所定の日数分の、前記負荷での消費電力の経時変化を平均化し、平均化した該経時変化の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を前記指定時間帯として指定すると、さらに好適である。
かかる構成であれば、建物内での負荷における電力消費パターンの日々の変動(例えば、季節的な変動)等を考慮して、蓄電部に蓄電された電力を連続放電する時間帯(指定時間帯)が設定されるので、電力消費パターンの日々の変動に応じて、蓄電部に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。
【0011】
また、上記の建物用電力供給システムにおいて、前記指定部は、1日のうち、前記商用電源からの電力の使用単価が最も高くなる期間の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、前記指定時間帯として指定すると、さらに一段と好適である。
かかる構成であれば、蓄電部に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させつつ、経済的メリットを増大させることが可能になる。
【0012】
また、上記の建物用電力供給システムにおいて、前記蓄電部としての蓄電池に電力を蓄電させるための蓄電回路と、前記蓄電池に蓄電された電力を放電させるための放電回路と、前記蓄電回路及び前記放電回路の各々の開閉を行うリレー装置と、を備え、前記切り替え部は、前記リレー装置を制御することにより、前記蓄電池による電力の蓄電及び放電を切り替えると、より好適である。
かかる構成であれば、本発明の効果がより有意義なものとなる。すなわち、上述したように、本発明の効果により、蓄電池における電力の蓄電・放電の頻繁な切り替えが抑えられることにより、リレー装置による各回路の開閉動作が頻繁に繰り返されることがなくなる。この結果、リレー装置の短寿命化を抑制することが可能になる。
【0013】
さらに、前述した課題は、本発明の建物用電力供給方法によれば、自然エネルギーを利用して発電する発電部、及び、商用電源の少なくとも一方から供給される電力を蓄電部に蓄電させるとともに、建物内での負荷に対して電力を供給する際に蓄電部に蓄電した電力を放電させる建物用電力供給方法であって、前記負荷での消費電力を計測して、該消費電力を示す消費電力データを取得するデータ取得工程と、該データ取得工程にて取得した前記消費電力データを記憶するデータ記憶工程と、該データ記憶工程にて記憶した前記消費電力データを読み出して、前記消費電力データに基づき、1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定する指定工程と、前記蓄電部による電力の蓄電及び放電を切り替える切り替え工程と、を備え、1日のうち、前記指定工程にて指定した前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電された電力の連続放電を開始し、放電開始後は、前記蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持するように、前記切り替え工程を実行する、ことにより解決される。
かかる方法によれば、蓄電部における蓄電・放電の切り替えが頻繁になるのを避け、蓄電部に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。すなわち、上記の手順により、蓄電部からの電力放電を効率よく行うことが可能な建物用電力供給方法が実現されることになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法によれば、消費電力データに基づいて、蓄電部に蓄電された電力を連続放電する時間帯を指定し、当該時間帯の始めに相当する時刻から連続放電を開始し、放電開始後は、蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する。これにより、蓄電部における蓄電・放電の切り替えが頻繁になるのを避け、蓄電部に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。すなわち、上記の構成により、蓄電部からの電力放電を効率よく行うことが可能な建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法が実現されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る建物用電力供給システムのうち、電力供給機器群を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る建物用電力供給システムのうち、制御機器群を示す図である。
【図3】サーバの構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る建物用電力供給方法を示す説明図である。
【図5】指定工程の手順を示す流れ図である。
【図6】1日における消費電力の経時変化についての説明図である。
【図7】蓄電池における電力の蓄電・放電の切り替えパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<建物用電力供給システムの概略構成>>
先ず、本発明の一実施形態に係る建物用電力供給システムの概略構成について、図1及び2を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る建物用電力供給システムのうち、電力供給機器群を示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る建物用電力供給システムのうち、制御機器群を示す図である。
なお、以下では、建物の一例として住宅Hを挙げ、住宅H向けの建物用電力供給システムについて説明する。ただし、あくまでも住宅Hは建物の一例に過ぎず、本発明の建物用電力供給システムは、他の建物、例えば、オフィスビル、工場内の建屋、店舗等においても利用可能なものである。
【0017】
本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る建物用電力供給システム(以下、本システムSとも言う)は、住宅H内で発生する負荷Lに対して電力を供給するシステムであり、具体的には、住宅H内で使用される電力消費機器に対して電力を供給する。
より詳しく説明すると、本システムSは、自然エネルギーとしての太陽光エネルギーを利用して発電することが可能であり、発電した電力(発電電力)を、蓄電部としての蓄電池3に蓄電しておくことが可能である。また、本システムSは、商用電源2からの電力(いわゆる系統電力)を受電して、商用電源2からの電力を蓄電池3に蓄電しておくことも可能である。そして、本システムSは、発電電力、系統電力、及び、蓄電池3に蓄電された電力(蓄電電力)を負荷Lに対して供給することが可能である。
【0018】
なお、本システムSは、発電電力の一部又は全部を商用電源2に逆潮流させることが可能である。すなわち、本システムSは、系統連系により、発電電力を電気事業者(商用電源2の保有者)の電力系統へ供給(いわゆる売電)することが可能である。
【0019】
以上までに説明してきた性能を具備する本システムSは、図1に示す電力供給機器群と、図2に示す制御機器群とを主たる構成要素として備えている。
先ず、電力供給機器群について説明すると、住宅H内での負荷Lに対して電力を供給するために住宅H内に設置された機器群であり、具体的には、発電部としての発電ユニット1と、蓄電池3と、電力を所定の供給先に供給するための配電ユニット100とを備えている。
【0020】
発電ユニット1は、自然エネルギーとしての太陽光エネルギーを利用して発電するものであり、具体的には、住宅Hに取り付けられた太陽電池1aにより構成されている。発電ユニット1が発電した電力は、直流電力であり、負荷Lに供給される際や商用電源2に逆潮流される際には、DC−ACインバータ4によって交流電力に変換される。また、発電ユニット1が発電した電力については、蓄電池3に蓄電するにあたり、コンバータ5によって降圧される。
【0021】
蓄電池3は、発電ユニット1及び商用電源2の少なくとも一方から供給される電力を蓄電するとともに、住宅H内での負荷に対して電力を供給する際に蓄電した電力を放電するものであり、本実施形態では、リチウムイオン電池である。ここで、商用電源2からの電力である系統電力を蓄電池3に蓄電する際には、双方向インバータ6により交流電力から直流電力に変換し、所定の電圧値まで降圧してから蓄電池3に蓄電することとなる。一方、蓄電池3に蓄電された電力を負荷Lへの供給のために放電する場合には、上記手順とは逆に、上記の双方向インバータ6により直流電力から交流電力に変換し、更に、所定の電圧値まで昇圧した上で負荷Lに供給することとなる。
【0022】
なお、図1には、本システムS内に蓄電池3が1つのみ備えられている構成が示されているが、これに限定されるものではなく、本システムS内に蓄電池3が複数備えられている構成であってもよい。かかる場合には、複数の蓄電池3のうち、一部の蓄電池3に蓄電された電力を放電している間に、残りの蓄電池3に電力を蓄電することが可能になる。
【0023】
また、蓄電池3の陰極側には、図1に示すように、蓄電池3に蓄電された電力が意図せずに放電してしまうのを防止するために逆流防止ダイオード3aが接続されている。この逆流防止ダイオード3aにより、蓄電池3から電流が流れる場合(換言すると、蓄電池3に蓄電された電力が放電される場合)は必ず陽極側から流れるようになっている。なお、逆流防止ダイオード3aの、蓄電池3が位置する側とは反対側の端子Taには、後述の第2スイッチSW2が接触可能である。
【0024】
配電ユニット100は、各電源(発電ユニット1、商用電源2、及び、蓄電池3)からの電力を供給先に供給するために敷設されたものであり、不図示の配線及び分電盤によって構成される。本実施形態に係る配電ユニット100は、主に、発電ユニット1と負荷Lとの間に敷設された第1ラインと、発電ユニット1と商用電源2との間に敷設された第2ラインと、商用電源2と負荷Lとの間に敷設された第3ラインと、商用電源2と蓄電池3との間に敷設された第4ラインと、蓄電池3と負荷Lとの間に敷設された第5ラインと、発電ユニット1と蓄電池3との間に敷設された第6ラインとによって構成される。
【0025】
第1ラインは、発電ユニット1から負荷Lへの電力供給回路であり、その中途位置には、発電ユニット1から流れる直流電流を交流電流に変換するDC−ACインバータ4が設置されている。
第2ラインは、発電ユニット1から商用電源2に向けて電力を供給する逆潮流用の回路である。また、発電ユニット1からDC−ACインバータ4の下流に位置する地点(図1中、記号Xにて示す地点)に至るまでの区間において、第1ラインと第2ラインとは、共通回路となっており、当該地点Xにて分岐する。したがって、第2ラインの中途位置には、上記のDC−ACインバータ4が配置されていることになる。
【0026】
第3ラインは、商用電源2から負荷Lへの電力供給回路である。なお、本実施形態では、第3ラインのうち、系統電力の受電設備(不図示)から上記地点Xに至るまでの区間については、前述の第2ラインと共通の回路になっており、地点Xよりも下流側の区間については、前述の第1ラインと共通の回路になっている。
【0027】
第4ラインは、商用電源2からの電力(系統電力)を蓄電池3に蓄電するための回路である。本実施形態では、第4ラインのうち、地点Xよりもやや下流側の地点(図1中、記号Yにて示す地点)に至るまでの区間については、前述の第3ラインと共通の回路になっており、地点Yにて分岐して蓄電池3に向かっている。
そして、第4ラインは、蓄電池3に対して接続可能に構成されており、図1に示すように、蓄電池3の直前位置に第2スイッチSW2が設置されている。この第2スイッチSW2は、前述の如く逆流防止ダイオード3aの端子Taに接触可能であり、第2スイッチSW2が逆流防止ダイオード3aの端子Taに接触した際、第4ラインが通電状態(電流が流れる状態)となる。反対に、第2スイッチSW2が逆流防止ダイオード3aの端子Taから離れた際、第4ラインは、遮断状態(電流が流れなくなる状態)となる。
なお、図1に示すように、第4ラインの中途区間には双方向インバータ6が設置されており、系統電力を蓄電池3に蓄電する際、この双方向インバータ6が交流電流から直流電流に変換するとともに、電圧を所定の電圧値まで降圧する。
【0028】
第5ラインは、蓄電池3に蓄電された電力を放電して負荷Lに供給するための回路であり、蓄電池3の陽極から延出して負荷Lに向かっている。具体的に説明すると、図1に示すように、蓄電池3の陽極から延出した回路は、その端部に、前述の第2スイッチSW2と接触可能な端子Tbが設置されている。
【0029】
そして、第5ラインは、第2スイッチSW2が端子Tbに接触した際に通電状態となり、第2スイッチSW2が端子Tbから離れた際に遮断状態となる。また、第5ラインは、第2スイッチSW2の下流側から地点Yまでの区間において第4ラインと回路を共有する。したがって、第5ラインの中途位置には、前述の双方向インバータ6が配置されていることとなる。また、第5ラインは、地点Y以降の区間を、第1ラインや第3ラインと共有している。
【0030】
第6ラインは、発電ユニット1から蓄電池3に向かって電流が流れる回路であり、換言すると、発電電力を蓄電池3に蓄電するための回路である。第6ラインは、図1に示すように、蓄電池3の陰極に接続された逆流防止ダイオード3aに接続されている。また、図1に示すように、第6ラインには、コンバータ5と第1スイッチSW1とが設けられている。コンバータ5は、DC−DCコンバータであり、発電ユニット1による発電電力を蓄電池3に蓄電する際に入力電圧を所定の電圧値まで降圧して出力する。第1スイッチSW1は、開閉自在に構成されており、第1スイッチSW1の開閉状態を切り替えることで第6ラインの状態を通電状態及び遮断状態の間で切り替えることが可能となっている。
【0031】
以上までに説明してきた通り、本実施形態では、発電ユニット1及び商用電源2の少なくとも一方から供給される電力を蓄電池3に蓄電させるための蓄電回路が備えられ、具体的には上述の第4ライン及び第6ラインとして構成されている。同様に、本実施形態では、負荷Lへ電力を供給するために蓄電池3に蓄電された電力を放電するための放電回路が備えられ、具体的には第5ラインとして構成されている。
【0032】
また、本実施形態では、蓄電回路及び放電回路の各々の開閉を行うために、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が配電ユニット100内に組み込まれており、特に、本実施形態では、これらのスイッチSW1、SW2を構成要素として含むリレー装置7が配電ユニット100内に組み込まれている(図1参照)。すなわち、本実施形態では、リレー装置7の動作により、上記の蓄電回路及び放電回路の各々の開閉を切り替え、これに伴って、蓄電池3における電力の蓄電及び放電を切り替えることが可能である。
【0033】
次に、制御機器群について説明すると、上述した電力供給機器群の各々の運転状態を制御するために設置されたものであり、具体的には、負荷Lへの電力の供給源を切り替える制御を行うためのものである。特に、本実施形態では、前述のリレー装置7の動作を制御して、蓄電池3による電力の蓄電・放電を切り替えるためのものである。
【0034】
制御機器群は、図2に示すように、システムサーバ(以下、単にサーバという)10と、宅内ネットワークTNを介してサーバ10と通信可能に接続されたCTセンサ20とを有する。サーバ10は、通信用インターフェース11、CPU12、ROM及びRAM等のメモリ13、及び、ハードディスクドライブ(以下、HDD)14を主たる構成要素として有し、メモリ13には、上述の制御を実行するためにインストールされたプログラム(以下、制御プログラム)が記憶されている。なお、本実施形態に係るサーバ10は、住宅H内に設置されているホームサーバであるが、これに限定されるものではなく、住宅H外、例えば、住宅Hの管理会社に設置されているものであってもよい。
【0035】
一方、本システムSでは、負荷Lでの消費電力を所定時間毎に計測するために、公知のCTセンサ20が住宅H内において負荷Lの直前位置にある地点(図1中、記号Zにて示す地点)に設置されている。この地点Zは、例えば分電盤の設置位置であり、CTセンサ20は、当該地点Zにて一括して住宅H全体での総消費電力を計測する。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、住宅H内に存在する電力消費機器毎にCTセンサ20が設けられている構成であってもよい。
【0036】
そして、本実施形態において、サーバ10は、通信用インターフェース11を通じてCTセンサ20から計測データを受信し、所定の電力供給モードにて負荷Lに電力を供給するために、上記計測データに基づいた制御を実行する。特に、サーバ10は、宅内ネットワークTNを通じて前述のリレー装置7を上記計測データに基づいて制御することにより、蓄電池3による電力の蓄電・放電を切り替える。
【0037】
ここで、本システムSにおいて選択可能な電力供給モードとしては、売電優先モードと、買電回避モードとが挙げられる。売電優先モードとは、蓄電池3に蓄電された電力を放電して負荷Lに供給するとともに、発電ユニット1が発電した電力(発電電力)を商用電源2へ逆潮流させるモードである。他方、買電回避モードとは、発電電力、系統電力、及び蓄電池3に蓄電された電力のうち、系統電力以外の電力を優先的に負荷Lに供給するモードである。
【0038】
以上のように、本システムSの稼動形態として、例えばユーザ(本システムSの利用者であり、換言すると、住宅Hの居住者)は、経済的メリットを重視した売電優先モードと、環境負荷の削減を重視した買電回避モードとのうちから、自己の価値観やライフスタイルに基づいて最適な電力供給モードを選択することが可能となる。さらに、例えば、フィードインタリフ制度の終了等により、発電ユニット1が発電した電力を逆潮流することができず住宅H内で消費するようになった場合にも、システムの見直しを図る必要がなくなる。
【0039】
なお、本実施形態において発電ユニット1が発電可能な時間帯は、いわゆる朝時間帯(具体的には10時から17時までの間)に設定されている。ただし、かかる時間帯は任意に設定可能であり、例えば、季節に応じて変更することとしてもよい。また、本実施形態において、いわゆる深夜時間帯(23時から7時までの間)は、商用電源2からの電力(系統電力)の使用単価が最も安くなる時間帯であり、かかる時間帯には、蓄電池3に系統電力を蓄電することとしている。ただし、蓄電池3への電力の蓄電は、上記の時間帯以外の時間帯に設定されていることとしてもよい。
【0040】
ところで、建物用電力供給システムの仕様としては、蓄電池3に蓄電された電力を一定の出力で放電し続けることが、効率上望ましい。しかしながら、従前のシステム仕様では、負荷Lでの消費電力の変動に応じて放電出力を調整することが行われ、この結果、蓄電池3での電力の蓄電・放電の切り替えが頻繁に行われることになっていた。そして、蓄電・放電の切り替えが頻繁に行われると、放電出力が安定しないので、蓄電池3からの電力放電が効率よく行われなくなってしまう。また、頻繁な蓄電・放電の切り替えは、リレー装置7を頻繁に動作させることにつながり、リレー装置7の短寿命化を併発し兼ねない。
【0041】
これに対して、本実施形態に係る建物用電力供給システム(すなわち、本システムS)では、蓄電池3に蓄電された電力を安定的に放電し続けるための構成を有しており、かかる構成を以って、蓄電池3からの電力放電の高効率化、及び、リレー装置7の短寿命化の抑制を図っている。
【0042】
<<蓄電池に蓄電された電力を安定的に放電し続けるための構成及び方法>>
以下、本システムSに備わった、蓄電池3に蓄電された電力を安定的に放電し続けるための構成について、図3〜図7を参照しながら行う。図3は、サーバ10の構成を示す図である。図4は、本発明の一実施形態に係る建物用電力供給方法を示す説明図である。図5は、指定工程の手順を示す流れ図である。図6は、1日における消費電力の経時変化についての説明図である。図7は、蓄電池3における電力の蓄電・放電の切り替えパターンを示す図である。
【0043】
本システムSにおいて、蓄電池3に蓄電された電力を安定的に放電し続けるための構成は、既述のサーバ10により具現化されている。説明を分かり易くするために、サーバ10の構成を機能面から再び説明すると、サーバ10は、図3に示すように、データ取得部16aと、データ記憶部16bと、指定部16cと、リレー装置制御部16dとを有する。
【0044】
データ取得部16aは、サーバ10の通信用インターフェース11、CPU12、メモリ13、及び、予めインストールされた制御プログラムにより構成されており、負荷Lでの消費電力を計測するものである。具体的には、宅内ネットワークTNを通じてCTセンサ20に向けて、負荷Lでの消費電力の計測命令を発信する一方で、消費電力を示す消費電力データをCTセンサ20から受信して、当該消費電力データを取得する。なお、本実施形態において、データ取得部16aは、毎日、0時から24時までの間、60分(1時間)毎に消費電力データを取得するものである。ただし、これに限定されるものではなく、データ取得間隔については任意に設定することが可能である。
【0045】
データ記憶部16bは、主にサーバ10のメモリ13やHDD14により構成され、データ取得部16aが取得した消費電力データを記憶するものである。そして、本実施形態において、データ記憶部16bは、特定日に取得された消費電力データと、非特定日に取得された消費電力データと、を分けて記憶する。ここで、特定日及び非特定日とは、例えば、平日及び土日祝日を意味するが、これに限定されるものではなく、所定の曜日とそれ以外の曜日、晴天日と雨天日、在宅日と外出日等、他のケースについても採用可能である。
【0046】
より具体的に説明すると、前述したように、データ取得部16aは、毎日、0時から24時までの間、60分(1時間)毎に消費電力データを取得する(換言すると、毎日24個分の消費電力データを取得する)。データ記憶部16bは、1日分の消費電力データ(24個分のデータ)をまとめて記憶する。さらに、データ記憶部16bは、1日分の消費電力データを、特定日(本実施形態では平日)と非特定日(本実施形態では土日祝日)とに分けて、それぞれ、所定の日数分(本実施形態ではX日分)蓄積する。そして、データ取得部16aが新たに平日(あるいは土日祝日)1日分の消費電力データを取得した場合、データ記憶部16bは、その新たに取得したデータを記憶する一方で、平日(あるいは土日祝日)のデータのうち、最も古い日のデータを破棄する。
【0047】
指定部16cは、CPU12、メモリ13、及び、予めインストールされた制御プログラムにより構成されており、データ記憶部16bから読み出した消費電力データに基づき、1日の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定するものである。指定部16cが指定した指定時間帯は、後述するように、蓄電池3に蓄電された電力を連続放電する時間帯に相当する。
【0048】
なお、本実施形態において、指定部16cは、データ記憶部16bに記憶された消費電力データのうち、特定日に取得された消費電力データに基づき、特定日1日の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、特定日用の指定時間帯として指定する。同様に、指定部16cは、非特定日に取得された消費電力データに基づき、非特定日1日の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、非特定日用の指定時間帯として指定する。指定部16cによる指定時間帯の指定に関する手順については、後述する。
【0049】
リレー装置制御部16dは、本発明の切り替え部に相当し、サーバ10の通信用インターフェース11、CPU12、メモリ13、及び、制御プログラムにより構成されており、リレー装置7を制御することで蓄電池3による電力の蓄電・放電を切り替えるものである。つまり、リレー装置制御部16dがリレー装置7に、前述の第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオンオフ動作を実行させることにより、蓄電回路及び放電回路の開閉状態が切り替わるようになる。この結果、蓄電池3による電力の蓄電・放電が切り替わる。
【0050】
そして、本実施形態において、リレー装置制御部16dは、1日のうち、指定部16cが指定した指定時間帯の始めに相当する時刻から、リレー装置7を動作させて、蓄電池3に蓄電された電力の連続放電を開始する。また、リレー装置制御部16dは、連続放電の開始後には、蓄電池3に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する(すなわち、放電回路を通電状態に保持する)。
【0051】
以上のような構成により、消費電力データに基づいて、蓄電池3に蓄電された電力を連続放電する時間帯を指定し、当該時間帯の始めに相当する時刻から連続放電を開始し、放電開始後は、蓄電池3に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する。これにより、蓄電池3における蓄電・放電の切り替えが頻繁になるのを避け、蓄電池3に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。さらに、蓄電池3における蓄電・放電の切り替えが頻繁になるのを避けることにより、リレー装置7による蓄電回路及び放電回路の各々の開閉動作(換言すると、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2のオンオフ動作)が頻繁に繰り返されることがなくなる。この結果、リレー装置7の短寿命化を抑制することが可能になる。
【0052】
次に、上記構成を備えた本システムSによる建物用電力供給方法について説明する。なお、説明を分かり易くするために、以下では、蓄電池3の容量が4kWhであり、最大出力2kWであるケースを具体例に挙げて説明する。かかるケースでは、蓄電池3による電力の放電を、2kWの出力にて2時間連続して実施する場合が、最も効率の良い放電形態となる。
【0053】
本システムSによる電力供給は、売電優先モード及び買電回避モードのうち、ユーザが選択した方のモードに従って行われる。一方、図4に示すように、本システムSでは、定期的に(具体的には60分毎に)、データ取得部16aによるデータ取得工程が実行される(S001)。本工程S001は、毎日実行され、本工程S001においてCTセンサ20を通じて負荷Lにおける消費電力を計測し、消費電力を示す消費電力データを取得する。
【0054】
1日分の消費電力データを取得した時点で、当該1日分の消費電力データをデータ記憶部16bに記憶するデータ記憶工程が実行される(S002)。本工程S002は、例えば、1日の終了時刻、すなわち、24時に行われるが、これに限定されるものではなく、本工程S002の実行時刻については任意に設定可能である。また、消費電力データを取得した時点で、データ記憶工程S002を随時実行することとしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、前述したように、1日分の消費電力データを記憶する際には、平日と土日祝日とに分けて記憶し、データ記憶部16bには、平日分と土日祝日分について、それぞれX日分消費電力データが蓄積される。
【0056】
次に、蓄積された消費電力データに基づき、指定部16cによる指定工程が実行される(S003)。本工程S003では、消費電力データに基づいて、1日の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を特定し、当該時間帯を指定時間帯として指定する。特に、本実施形態では、前述したように、平日に取得された消費電力データに基づき、平日1日の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、平日用の指定時間帯として指定し、土日祝日に取得された消費電力データに基づき、土日祝日1日の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、土日祝日用の指定時間帯として指定する。
【0057】
以下、本工程S003の手順について、平日用の指定時間帯を例に挙げて説明する。なお、土日祝日用の指定時間帯については、下記の手順と略同様なので、説明を省略する。
本工程S003は、図5に示すように、データ記憶工程S002にて記憶された消費電力データを指定部16cが読み出すところから始まる(S011)。ここで、読み出すデータは、データ記憶部16bに記憶された消費電力データのうち、平日X日分の消費電力データである。
【0058】
次に、指定部16cは、読み出した平日X日分の消費電力データから、平日X日における各日の消費電力の経時変化を特定する(S012)。これにより、各日の消費電力の経時変化を示す電力需要曲線TCがX日分得られることになる(図6参照)。その後、指定部16cは、X日分の電力需要曲線TCに基づき、X日分の消費電力の経時変化を平均化する(S013)。ここで、経時変化を平均化するとは、X日分の消費電力の経時変化の各々について、対応する時刻(具体的には、各日のデータ取得工程の実行時)毎に消費電力の相加平均値を求め、当該消費電力の相加平均値の経時変化を特定することである。
【0059】
そして、X日分の消費電力の経時変化を平均化することにより、平日X日分について、平均的な電力需要曲線TCaveが得られることになる(図6参照)。
【0060】
以上のように、本実施形態では、平日X日における各日の消費電力の経時変化を特定した上で、X日分の消費電力の経時変化を平均化する。これにより、後に、消費電力の経時変化に応じて蓄電池3からの電力を連続放電する時間帯(指定時間帯)を設定する際には、住宅H内での負荷Lにおける電力消費パターンの日々の変動(例えば、季節の変化に伴う電力消費パターンの変動)を考慮して設定することができる。この結果、本実施形態では、電力消費パターンの変動に応じて蓄電池3に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。
【0061】
次に、指定部16cは、平均化した経時変化の中で、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持されている時間帯を特定する(S014)。具体的に説明すると、本実施形態では、上述した平均的な電力需要曲線TCaveにおいて、2kW以上の消費電力が2時間以上維持されている時間帯を特定する。ここで、2kW以上の消費電力が2時間以上維持されることは、前述したように、当該消費電力を蓄電池3からの放電電力で賄う際に最も効率よく放電を行うことができることを意味する。すなわち、指定部16cが上記要件を満たす時間帯を特定する目的は、蓄電池3からの放電を最も効率よく行うことができる時間帯を特定するためである。
【0062】
そして、上記要件を満たす時間帯がある場合、当該時間帯を指定時間帯として指定する(S015)。より具体的に説明すると、上記要件を満たす時間帯の開始時刻から2時間経過するまでの時間帯を指定時間帯として指定する。なお、図6に示す例では、平均的な電力需要曲線TCaveを参照すると、11時から13時までの時間帯において負荷Lでの消費電力が2kW以上となっているため、平日11時から13時までの時間帯が、指定時間帯として指定されることとなる。
【0063】
一方、上記要件を満たす時間帯がない場合(例えば、2kW以上の消費電力が維持される時間がばらつく場合)には、消費電力の基準を幾分緩和した上で、緩和後の条件を満たす時間帯を特定する。具体的には、平均化した経時変化の中で、1kW以上の消費電力が2時間以上維持されている時間帯を特定し、特定した当該時間帯を指定時間帯として指定する(S016)。ただし、消費電力の基準の下げ幅については、上記の例(すなわち、1kW)に限定されるものではなく、任意に設定することが可能であるが、好ましくは0〜1kWの範囲内で下げ幅を設定した方がよい。
【0064】
なお、本実施形態では、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持されている時間帯を特定する際、1日のうち、商用電源2からの電力(系統電力)の使用単価が最も高くなる期間(具体的には、10時から17時までの間)から特定する。つまり、指定部16cは、1日のうち、系統電力の使用単価が最も高くなる期間の中で、負荷Lでの消費電力が2kW以上にて2時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定することになる。
【0065】
以上までの一連の手順にて指定時間帯が指定されてからは、平日1日のうち、当該指定時間帯の始めに相当する時刻(具体的には、11時)になると、当該指定時間帯中、所定の形態の電力供給がなされるように、リレー装置制御部16dによる切り替え工程が実行される(S004)。本工程S004は、蓄電池3による電力の蓄電・放電を切り替える工程である。そして、本実施形態では、1日のうち、指定工程S003にて指定した指定時間帯の始めに相当する時刻から、蓄電池3に蓄電された電力の連続放電を開始し、放電開始後は、蓄電池3に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持するように、切り替え工程S004を実行する。
【0066】
さらに、本実施形態では、指定工程S003にて平日用の指定時間帯と土日祝日用の指定時間帯とが、それぞれ指定されており、切り替え工程S004についても、平日には、平日用の指定時間帯の始めに相当する時刻から連続放電を開始し、土日祝日には、土日祝日用の指定時間帯の始めに相当する時刻から連続放電を開始する。これは、住宅H内での負荷Lにおける電力消費パターンが平日と土日祝日との間で相違することを反映したものである。上記のように、蓄電池3に蓄電された電力を連続放電する時間帯(指定時間帯)を平日と土日祝日とに分けて設定することにより、平日及び土日祝日の各々の電力消費パターンに応じて、日別に、蓄電池3に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。
【0067】
以上までに説明してきたように、本システムSでは、ユーザが選択した運転モードに従って負荷Lへ電力を供給しつつ、1日の中で、指定工程S003において指定した指定時間帯の開始時刻になると、強制的に蓄電池3の電力を放電させるべく、切り替え工程S004が実行される。すなわち、図7に示すように、1日のうち、指定時間帯以外の時間帯(図7中、非指定時間帯)には蓄電池3に電力が蓄電される一方で、指定時間帯の開始時刻になると蓄電池3からの電力放電が開始され、蓄電池3に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電が続行される。
【0068】
ここで、指定時間帯は、前述したように、蓄電池3からの放電を最も効率よく行うことができる時間帯である。ゆえに、指定時間帯の開始時刻から蓄電池3に蓄電された電力の放電を開始し、当該時間帯に放電し続けることにより、指定時間帯中、一定の出力にて安定的に放電が行われるようになる。この結果、蓄電池3における蓄電・放電の切り替えが頻繁になるのを回避し、蓄電池3に蓄電された電力の放電(出力)の効率を向上させることが可能になる。
【0069】
なお、例えば、指定時間帯内において、負荷Lでの実際の消費電力が、予想された消費電力(具体的には、指定工程S003においてX日分の消費電力の経時変化を平均化したときの、指定時間帯に相当する期間中の消費電力)を下廻る場合には、指定時間帯が経過した後であっても、蓄電池3に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持する。
【0070】
また、前述したように、本実施形態では、1日のうち、系統電力の使用単価が最も高くなる期間の中で、負荷Lでの消費電力が2kW以上にて2時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定する。これにより、系統電力の使用単価が最も高くなる期間において、負荷Lへの電力供給を蓄電池3からの電力放電によって賄うので、使用単価の高くなる時期に系統電力の受電量(買電量)を極力減らして経済的メリットを増大させることが可能になる。すなわち、上記の構成により、蓄電池3に蓄電された電力の放電の効率を向上させつつ、経済的メリットを増大させることが可能になる。
【0071】
ただし、上記の構成に限定されるものではなく、系統電力の使用単価に拘泥されずに、1日全体を通じて、負荷Lでの消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持されている時間帯を特定し、当該時間帯を指定時間帯として指定することとしてもよい。また、系統電力の使用単価が最も高くなる期間以外の期間(例えば、17時以降の期間)の中から指定時間帯を指定した場合であっても、経済的メリットを優先させる目的から、系統電力の使用単価が最も高くなる期間中、具体的には、当該期間の終了1時間前(すなわち、16時)から、蓄電池3からの電力の連続放電を開始することとしてもよい。
【0072】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、主として本発明の建物用電力供給システム及び建物用電力供給方法について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0073】
また、上記の実施形態では、毎日、0時から24時までの間、定期的(60分毎)に消費電力データを取得することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、蓄電池3に電力を蓄電する時間帯として予め設定された時間帯(例えば、系統電力の使用単価が最も安くなる深夜時間帯)には、消費電力データの取得を行わないこととしてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、特定日(平日)に取得された消費電力データと、非特定日(土日祝日)に取得された消費電力データと、を分けて記憶することとした。そして、記憶された消費電力データのうち、特定日に取得された消費電力データに基づき、特定日1日の中で、特定日用の指定時間帯として指定すべき時間帯を特定するとともに、非特定日に取得された消費電力データに基づき、非特定日1日の中で、非特定日用の指定時間帯として指定すべき時間帯を特定することとした。ただし、これに限定されるものではなく、特定日と非特定日を区別せずに、消費電力データを記憶してもよい。また、特定日と非特定日を区別せず、特定日及び非特定日共通の指定時間帯として指定すべき時間帯を特定することとしてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、消費電力データを毎日取得し、消費電力データを所定の日数分だけ蓄積することとした。そして、所定の日数分の、負荷Lでの消費電力の経時変化を平均化し、平均化した経時変化の中で、指定時間帯として指定すべき時間帯を特定することとした。但し、これに限定されるものではなく、例えば、消費電力データを所定日(あるいは、所定の週、所定の月)にのみ取得することとしてもよい。あるいは、消費電力データを日々更新する(すなわち、蓄積せずに上書きする)こととしてもよい。また、消費電力データを所定の日数分だけ蓄積する場合には、所定の日数分のデータのうち、所定の要件を満たした日のデータに基づき、指定時間帯として指定すべき時間帯を特定することとしてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では、発電部の一例として、太陽光エネルギーを利用して発電する構成の発電ユニット1について説明したが、これに限定されるものではなく、電気エネルギーに変換可能な自然エネルギー(例えば、風力、地熱等)を利用して発電するものである限り、制限なく利用することが可能である。さらに、上記の実施形態では、蓄電部の一例として、リチウムイオン電池について説明したが、これに限定されず、鉛蓄電池やキャパシタであってもよく、それ以外にも、電力を蓄電(充電)でき、かつ、蓄電された電力を自在に放電することができるものであれば、制限なく利用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 発電ユニット、1a 太陽電池、2 商用電源、
3 蓄電池、3a 逆流防止用ダイオード、4 DC−ACインバータ、
5 コンバータ、6 双方向インバータ、7 リレー装置、
10 サーバ、11 通信用インターフェース、12 CPU、
13 メモリ、14 HDD、
16a データ取得部、16b データ記憶部、
16c 指定部、16d リレー装置制御部、
20 CTセンサ、100 配電ユニット、
H 住宅、L 負荷、S 本システム、
SW1 第1スイッチ、SW2 第2スイッチ、
Ta,Tb 端子、TC 電力需要曲線、TCave 平均的な電力需要曲線、
TN 宅内ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用して発電する発電部と、
該発電部及び商用電源の少なくとも一方から供給される電力を蓄電するとともに、建物内での負荷に対して電力を供給する際に蓄電した電力を放電する蓄電部と、
前記負荷での消費電力を計測して、該消費電力を示す消費電力データを取得するデータ取得部と、
該データ取得部が取得した前記消費電力データを記憶するデータ記憶部と、
該データ記憶部から読み出した前記消費電力データに基づき、1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定する指定部と、
前記蓄電部による電力の蓄電及び放電を切り替える切り替え部と、を備え、
前記切り替え部は、1日のうち、前記指定部が指定した前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電された電力の連続放電を開始し、放電開始後は、前記蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持することを特徴とする建物用電力供給システム。
【請求項2】
前記データ記憶部は、特定日に取得された前記消費電力データと、非特定日に取得された前記消費電力データと、を分けて記憶し、
前記指定部は、前記データ記憶部に記憶された前記消費電力データのうち、特定日に取得された前記消費電力データに基づき、特定日1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、特定日用の前記指定時間帯として指定するとともに、非特定日に取得された前記消費電力データに基づき、非特定日1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、非特定日用の前記指定時間帯として指定し、
前記切り替え部は、特定日には、特定日用の前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電した電力の連続放電を開始し、非特定日には、非特定日用の前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電した電力の連続放電を開始することを特徴とする請求項1に記載の建物用電力供給システム。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記消費電力データを毎日取得し、
前記データ記憶部は、前記消費電力データを所定の日数分だけ蓄積し、
前記指定部は、前記データ記憶部から読み出した所定の日数分の前記消費電力データに基づき、所定の日数分の、前記負荷での消費電力の経時変化を平均化し、平均化した該経時変化の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を前記指定時間帯として指定することを特徴とする請求項2に記載の建物用電力供給システム。
【請求項4】
前記指定部は、1日のうち、前記商用電源からの電力の使用単価が最も高くなる期間の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、前記指定時間帯として指定することを特徴とする請求項3に記載の建物用電力供給システム。
【請求項5】
前記蓄電部としての蓄電池に電力を蓄電させるための蓄電回路と、前記蓄電池に蓄電された電力を放電させるための放電回路と、前記蓄電回路及び前記放電回路の各々の開閉を行うリレー装置と、を備え、
前記切り替え部は、前記リレー装置を制御することにより、前記蓄電池による電力の蓄電及び放電を切り替えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物用電力供給システム。
【請求項6】
自然エネルギーを利用して発電する発電部、及び、商用電源の少なくとも一方から供給される電力を蓄電部に蓄電させるとともに、建物内での負荷に対して電力を供給する際に蓄電部に蓄電した電力を放電させる建物用電力供給方法であって、
前記負荷での消費電力を計測して、該消費電力を示す消費電力データを取得するデータ取得工程と、
該データ取得工程にて取得した前記消費電力データを記憶するデータ記憶工程と、
該データ記憶工程にて記憶した前記消費電力データを読み出して、前記消費電力データに基づき、1日の中で、前記負荷での消費電力が所定範囲の大きさにて所定時間以上維持される時間帯を、指定時間帯として指定する指定工程と、
前記蓄電部による電力の蓄電及び放電を切り替える切り替え工程と、を備え、
1日のうち、前記指定工程にて指定した前記指定時間帯の始めに相当する時刻から前記蓄電部に蓄電された電力の連続放電を開始し、放電開始後は、前記蓄電部に蓄電された電力が放電され尽くすまで連続放電を維持するように、前記切り替え工程を実行することを特徴とする建物用電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−257406(P2012−257406A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129384(P2011−129384)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】